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4 発達障害児の リハ ビリテーシ ョン

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Academic year: 2021

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4 発達障害児の リハ ビリテーシ ョン

( 1 ) 発達 障書 とは

鶴崎 俊哉, 田原 弘幸

①発達 とは

ヒ トの発達 に関 しては,現在 その一生 を通 しての経時的変化 を 「 生涯発達」 ととらえる概念 もあるが,一般 には ヒ ト が形態的 ・機能的にほぼ完成す るまでの時期,つ ま り胎児期か ら 1 8 歳頃 までを 「 発達期」 としている。 この間の個体 の 変化の うち,身長や体重の ような形態的 ・量的変化 を 「 発育 」 もしくは 「 成長」 ,機能的 ・質的変化 を 「 発達 」 と呼ぶ傾 向にあるが, この両者は互いに関連が深 く, また明確 な区別 もなされていない。 ここで も両者 を区別 しないで用 いるこ

とにす る。

( 診発達障害

発達障害は,人生の初期 の段階 ( 発達期)で受けた障害が個人の一生涯にわたって さまざまな能力に重篤 な影響 を及 ぼす もので,身体機能の発達,精神機能の発達のいずれにおいて もおこ りうるし,両者 ともに障害 されている場合 も少 な くない。

発達障害 とい う用語 は AAMD ( Ame r i c a n As s o c i a t i o no n Me nt a l De f i c i e nc y 米国精神薄弱学会)の用語 の

de ve l o p me nt al di s a bi l i t i e s の邦訳で,同学会 では「 精神遅滞,脳性麻棒,てんかん, さらには精神遅滞 と密接 に関連 し た別の神経学的障害の結果,精神遅滞類似の扱いを必要 とす るもの, もしくは,児童期 に始 ま り最終的には実質的な発 達遅滞にいたる状態 を示す もの 」 ( 1 97 3) と定義 されている。

ここで注意すべ きは,発達障害が何 らかの神経学的障害 をこおむった時点で発生す るのではな く,本来経時的に起 こ るべ き発達が神経学的障害 を原因 として遅滞す るとい うことである。つ ま り,患児の年齢や環境が変化す るにつれ,塞 準 となる発達段階が変化 し, その障害像や患児のニー ズ も変化す る。 これこそが,発達障害の特徴 といえる。

( 2 ) 正 常発達

発達障害 を考 えるとき, その基盤 となるのは正常発達 であ り,数 多 くの報告がなされている。発達 は もともと遺伝的 に決定 され ると考 えられていたが,近年 では環境要 因 との相互作用による学習の影響が色濃 く反映 され ることがわかっ ている。例 えば,環境要 因が少 ない と考 えられ る胎児期 であってさえ,胎児の中枢神経の分化 は胎動 によ り生 じた未熟 な求心性 インパルスによるフィー ドバ ックによ り促 されている。 このフィー ドバ ックの繰 り返 しに よ り,胎児はすでに 出世以前に基本的な運動パ ター ンを身につけている。 また,呼吸様運動や吸畷 ・嚇下 も観察 され,分娩による著 しい環 境変化 に適応す るための学習 を進めている

1)

0

出生後の発達 については多 くの発達理論が報告 されてお り,詳細は成書にゆだね るが,各々の立場か ら発達段階 をと らえ,発達評価 のためのマイルス トー ンを提示 している。 ( 表 12 ) )

例 えば, Ge s e l lは,みずか らの発達理論 を発達形態学的原理 として

①発達方向の原理 :行動の発達 は生理学的 ・解剖学的勾配に平行す る。 これには, a 嶺部‑尾部 ( 外腫菓)勾配 ( 頭部

‑ 1 4 9‑

(2)

Ge s el i:発達 スケジュール 運動

粗大 巧 毒 致 適応

言 語

個 人‑社会 Pi age t: Fr e ud: Er i k s o n: HaVi ghur s t: Re i l l y: Sear s: Ayr e s:

認知発達 精神分析的 発達 発達 自我の 発達課題 】発達 作業行動の 学習の発達 感覚統合 の 発達

( ) 頭がたれ 把握 反射 目で追 うが ベルの音に 顔 をじっ と 感覚運動期 口唇期 基本的信 歩行 の学 習,言 探索的行動 コンピテンス 基本的行動 触覚 . 前庭覚 . る○首 が 横木 をつ 限 られてい 注 意 す るoみ るo足 や 前概念期 (0‑ 2) (0‑l 肛門期 l / 2 ) 頼の段階 の段階 . 固有受容 覚 .

座 る かむ 1 梢 の塔 をつ くる f3 5蓋 2 走 る

3 片足で立 10 個 の る○積 木 を 持 ちかえる かに積木 を 落 とす 円をまねて 欲 しい もの コップのな 単語 または 絵 を名 ぎす 簡単 な命令 玩具で遊ぶ に声 を出す それ以上 を い つ 着衣に応ず 便意 を教 え る 信頼/不 伝 自律感の ( 0‑2) 排推 コン トロー 性 差 の 学 習,両 葉 の 学 習,樹 形 食物 摂 取 の 類, ルの学習 2 (0 次的動機 視覚 . ‑ 1) 姿 勢,眼球 運 動,筋緊張,バ 関係 激 ラ ン ス, 身体 図 式,逮 聴 覚 刺 母 子

描 く 3 個 の積木 協同遊 び を 靴がはける る 直感的思考 (2‑4) (1‑4) 男根期 段階 恥 主導感の 自律性/ ( 2‑4) づ け の 段 づ け の 段 階 :家族 中 心の学習 階 :家族外 の学習 2 (1‑6) (6‑1 次的動機 3 ) 動 企 画,両 側 統合,注意 目 と手 の 協 つ 塔 をつ く る

4 片足で と で橋 をつ く 人物 を描 く 1 る を数 える 0 個 の銅貨 がわか る 接続詞 を使 正 . 親 との関係 を学 普 不正 の 区別 行動 ( 達成行動 有能性)

Jミ 5 i 互に とぶ 両足で交 6 毒 7!

8 9 1 0

・ + 1 2 1 3 1 4一 項

… ≡ ぎ I i I i 赤ちゃん言 葉 を使 わな いで話す つ ≡ す る を着 る 自分で着物 期 具体的操作 期 (7‑ll (4 ‑ 7) ) 形式的操作期 (4‑6) (6‑1 潜在期 性器期 ( ( l 1 l‑) 2‑) 2 ) 段階 段階 積極性/ 罪悪感 勤勉感の 生産性/ 劣等感 段階 敬 同一性の 同一性/ 同一性拡 (4‑6) ( ( 1 6‑1 3 ‑1 2 8 ) ) 概念の形成 の学 習,良 心 の 発 達,読 み 書 き 算数の基本技能 の学習 同年輩 との交流 ゲーム技能の学 普, 男女の性的役割 の達成 両 親 か らの 独 立, 独立 を学習 と準備,経 済 的 健 全 な 自己 職 業 の選 択 大脳半球 の特 殊 化,抽 象 的 思考,自尊心 応, 視知覚

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Ⅰ Ⅴ リ‑ ビ リテ‑ シ ョン

か ら尾部へ向か う発達) , b 尾部一頭部 ( 中腰菓)勾配, C体幹‑四肢 ( 内膳菓)勾配 ( 中心か ら周辺に向か う発達。 こ れには,尺側か ら横側‑向か う発達 も含む)が含 まれ る。

②反対相互交差の原理 :た とえば,乳児の運動発達 において,手足の屈 曲 ・伸展 とい う反対の活動が交替 を繰 り返 しな が ら,徐々に高次の形態に至 るとい う原理 である。

③機能非相称の原理 :人間の行動発達 は身体の左右 の機能が対称的にではな く,常にいずれか‑側 が優位 に発達す るこ とが行動の均衡,迅速,適応の基礎 となるとい う原理 で,非相称が強ければ強いほ ど,協応動作が発達 し, よ り高次の もの となる。

④個別化 ・成熟の原理 :行動 の発生的形態化 は全体的な活動体系のなかの個別的分化 として,一定の順序 で進行す る.

外的刺激による機能の促進や条件づ け もこの成熟の基礎 の うえに行 われ るものである。

⑤ 自己規制 ・動揺の原理 :安定 した形態はそれ 自体が規制的機構の現れである不安定 な動揺の繰 り返 しのなかで形成 さ れる。

と要約 し,運動発達 を中枢神経系の成熟 と関連 させ なが ら,

①運動的特質 :姿勢,把握,移動運動,協応動作 ( 特殊 な運動能力) 0

②適応的行動 :各種の適応性 ( 知覚的 ・定位的 ・言語的 ・手指の能力,新経験 を獲得 し過去の経験 を利用す る能力) ,注 意,知能,構成力,探求力。

③言語的行動 :独語,模倣, コ ミュニケー ション,理解力。

④個人的一社会的行動 :他人‑の反応,文化的圧力‑の反応,家庭生活,所有物,集団生活,社会 的習慣 な どに対す る 適応など。

の 4 つの側面に分類 している

3)

。彼の発達検査 はこれ ら 4 側面に沿って基準年齢 を求めた ものである。これ以後,これに 準拠 した発達検査が数 多 く開発 されている。

Ke phar t の知覚 ・運動理論 によれば,基本的な運動パ ター ンの習得が,環境か らの知覚情報に合 った運動の協応 を可 能に し, これが基盤 となって高次の概念化へ と発達が進む と提言 している。すなわち,環境‑の運動 コン トロールに関 す る,感覚入力 ( 特 に,重力,触覚, 固有受容覚) と運動表出のあいだの皮質 におけ る神経処理過程の発達理論 といえ

るものである。 その主な原則 をまとめ ると以下のようになろう。

( 丑運動パ ター ンの発達原則

a 頭部か ら尾部‑,近位部か ら遠位部‑

b 特定刺激の反射活動の統合 を通 して, よ り一般的 な運動パ ター ン‑

C 運動技能の発達前に運動パ ター ンの発達があ り, それはよ り複雑 で 目的的な運動技能 を遂行す るうえで,広 く柔 軟性 をもって活用 され る。

②運動の汎化 ( 運動パ ター ンの応用) 汎化のための発達要素

a ラテラ リティー ( 側性化)の発達

b デイレタショナ リティー ( 方向性)の発達

C 身体 図式の発達 汎化のための方法

a バ ランス と姿勢の維持

‑ 1 5 1‑

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C 移動 d 受容 と推進

なお, Ke phar は上記の原理 に基づ いて一定 の知覚運動評価法 を提示 している4 ) 。

いずれに して も,発達 は各発達段階 を階段状 にステ ップア ップす るわけではな く,発達 の様 々 な側面がバ ランスを取 りなが ら連続的 な過程 をた どる。

( 3 ) (リ) ハ ビリテーシ ョン

通常,発達障害児においては, リ‑ ビ リテ‑ シ ョンではな く,‑ ビ リテ‑ シ ョンお よび療育 とい う言葉が用 い られ る

これは, リ‑ ビ リテ‑ シ ョンがいったん確立 した身体機能や社会的 な位 置 を失 い, これ を回復す るとい う意味 を持つの に対 し,発達 障害がその確 立の過程 において生 じたために,患児の回復 を目指すのみではな く, さらなる発達 を促す必 要がある′ ため に区別 されている。

発達障害 をきた している原因が何 であれ,その発達 障害が個 人の発達全般 に どの ような影響 を及ぼすか とい うことと, 発達 の段階 に よって障害の もつ意味が どの よ うであ るか とい うことを考 えあわせ る必要がある。 これは障害についての

多角 的 。総合 的 な理解 であ り, その理解 の しか たには, い くつかの異 なる次元があ る。国連 は, 1 9 8 1 年の国際障害者年 に先立 って表明 した行動計画の中で,障害 を理解す るためには, ai mpai r me nt ( 精神 的身体 的不全) , bdi s abi l i t y ( 能 力の不全) , chandi c ap ( 不利)。の 3 つの レベ ル を区別す る必要がある としてい る。

i mpai r me nt とは,障害 その ものの科学的な内容 を意味す る。 di s a bi l i t y とは ,i mpai r me nt の結果 として認め られ る 具体的 な能力の内容 である。 handi c ap とは, di s a bi l i t y のゆえにこ うむ るさまざまの不利 を意味す る。

発達障害児の場合, その年齢 に応 じて障害構造が変化す る

ここでは,年齢 を就学前期,学童期,学童期以降に大別 して述べ る。

①就学前期

現在発達 障害児に対 しては,早期発見 ・早期療育の取 り組みが進み,新生児期か らアプ ローチがなされ るこ とも多 く なって きた。この時,新生児の心 身機能 は未熟であ るため di s a bi l i t y レベ ル ,handi c ap レベ ルの障害 は表面化 しに くい。

また,この時期 は脳 の可塑性が大 きいため ,i mpai r me nt レベ ル‑のアプ ローチが有効 である。乳幼児期 になると,定額

や渡返 り等,特 に運動機能面の発達 が顕著 なため di s a bi l i t y レベ ルの障害が表面化 して くる。発達 障害が最 も多 く発見 さ

れ るのが この時期 であ り,患児の発達段階に応 じた個別的 な対応が必要 とされ る。また,発達 の多面性 を考慮 し,医師,

看護婦,理学療法士,作業療法士,言語療法士,臨床心理士等 多職種 に よるチームアプ ローチが望 まれ る。具体的な治

療 アプ ローチ として,運動発達 障害に対 しては現在,神経発達学的治療 ( Ne ur o‑ De ve l opme nt alTr e at me nt:NDT)

や ポイタ法 な ど, いわゆ る神経生理学的促通手技が主流 となってい る

これ らは姿勢や運動 に操作 を加 え,全体 の運動

調節機構 を改善 しようとす ももので,神経発達学的概 念 を元に,感覚入力によ り中枢神経活動の促通 ・ 抑制 ををはか り,

全 身の協調性 のあ る運動 に重点 をおいて,学習理論 を応用 しなが ら連続 した変化 の過程 を迫 った治療 を行 う。学習障害

や行動障害等 に対 しては,感覚統合理論 に基づ いた治療 も行 われている。 これは, さまざまな感覚情報が中枢神経にお

いて,運動布動や思考,学習が適切 に行 われ るように組織化 お よび統合 され る処理過程 を,感覚 入力 を操作す ることに

(5)

Ⅰ Ⅴ リ‑ ビ リテ‑ シ ョン

よ り調整 し,発達過程 での学習 を可能 とさせ るものであ る。他 に も, さまざまな治療 アプ ロー チが行 われているが,詳 細は成書にゆだね る。 この よ うな治療法や早期発見 ・ 早期介入が可能 となって きたこ と,周産期 医療 の進歩な どに よ り, 発達障害乳幼児の障害像 は軽症 と重症 に 2 極化 し, また複雑化 して きている。

②学童期

handi c ap レベ ルの障害が発生 しやすいのは,患児が学齢 に達 し就学す る時点であ る。発達障害児に対 しては,通 園・

通所施設の整備や統合保育等の就学前か らの取 り組みが なされているが,主に医療機 関 を中心 として行 われ る。学齢期 ではその生活の中心が学校 に移 り,教育的 な取 り組みが行 われ る。 その際問題 となるのが,普通学級,特殊学級,養護 学校等の就学先 の決定 である。就学先の決定 にあたっては,就学相談 ・就学指導が行 われ るが,各地方 自治体 に よ り対 応が異なってい る。最終的には,養育者,教育委月会,受け入れ校 の 3 着の合意に よって決定がな され るが,養育者の 持つ情報は少 な く, また地域 によっては統合教育 に対す る壁が厚 く就学指導に沿 った形 で決定 され るこ とが多い。就学 指導に関す る問題 は,文部省が開催す る心 身障害児指導研究協議会や 国立特殊教育総合研究所 の研 究で も検討 されてい

る。

発達障害児に対す る学校教育 においては,「 個 に応 じた指導」が求め られ,一人ひ とりに応 じた指導計画の実践研究が 活発化 している。具体 的には個別 の指導計画の立案 と実施,支援 ・指導 を最適化す る個別化 と集団化,保護者 と連携 を 図 る個別教育計画, これに応 じた教育課程 等が取 り上 げ られている。

この時期 において も, 多職種 に よるチー ムアプ ローチの継続が必要 であるが,現実 的には小児施設に併設す る養護学 校等の ような一部 を除いて,専 門職 の関与が少 な く連携 も十分 とはいえない。対象 となる発達障害児の障害像 が,重度 化,重複化,複雑化す る中で,早期 の改善 が望 まれ る。

③学童期以降

発達障害は,発達期 に生 じた障害がその後の一生 に強い影響 を持つ こ とであ り, その対象は小児に限定 されない。言 い換 えれば,発達障害 を持つ成人が存在す るわけである。義務教育 を終 えた発達障害児は,それぞれ進学,就労,在宅, 施設生活等へ生活の場 を移 してい く。特 に進学,就労に進んだ場合, そこは競争原理 が働 いてお り,比較的に保護的な 環境 で育 って きた ものに とり大 きな handi c ap を背負 うこ とになる。現在養護学校等の高等部 では,職業教育が積極 的に 行 われ始め, また高等部‑の進学率 も上昇 している。政府や行政 も障害者の雇用 を促進す る取 り組 み を行 ってい るが, 障害が重度 な場合,在宅お よび施設での生活 を余儀 な くされている。 ただでさえ発達 障害児は,侍 に障害が重度 である ほ ど, ともすればいつ まで も小児 としての扱 いを受け るこ とが多い。発達障害があろ うとなか ろ うと,年 を重ねそ して 死 を迎 えるこ とにかわ りはな く,一人の ヒ トとしての 自我,個性 を認め るこ とは当然 である。

近年, QOL ( Qual i t yofLi f e ) とい う言葉が よ く使用 され るようになって きた。邦訳では生活の質 と訳 され ること が多いが, Li f e とい う単語 には,生命や人生 といった意味があ り,発達 障害児 ( 者)に とって も,広 くその人生 を視野 に入れ, QOL を高め ることが求め られている。 しか しなが ら, この QOL は,一人ひ とりの経験や価値観等に よって 変化す るきわめて主観的な ものであるため,画一的なアプ ローチでは対応が困難 であ る。 いかに個 人 を尊重 し,個別的

な対応で QOL を高めてい くかが今後の検討 に不可欠である。

‑ 1 5 3‑

(6)

発達障害児の療育 に とって,養育者 ( 両親) とりわけ母親 は重要 な役割 を担 っている。 それは,療育が子育 てに他 な らず,母子関係 の確 立はあ らゆ るアプ ローチの基盤 となるか らであ る。周産期 医療 が進歩 し,超未熟児の生存が可能 と なった現代 においては, 医療が優先 され るがために母性の確立に重要 な時期 を長期 にわたる母子分離の状態で過 ごす こ とも多い。超未熟児では成熟児に比べ,発達 に何 らかの問題 を持つ ものが多いこ とも指摘 されてお り,子 どもに対す る アプ ローチだけでな く,母子関係確 立のために養育者 ( 両親)への早期介入 も必要 である。

反面,我が子の障害 を告 げ られた母親 たちの中には,我が子の障害があたか も自分の責任 であるかの ように 自分の生 活のすべ て を子 どものため に犠牲 にす る傾 向が ある。 あるものは我が子の回復 ・発達 を信 じ, あ らゆ る治療機 関や宗教 を渡 り歩 き, あ るものは我が子は無力だ と思 いこみ,何 か ら何 まですべ ての世話 を焼 き,結果的には子 どもの発達 を阻 害 して しま う。 この責任 の一端 は,発達 障害 児にかかわ るあ らゆ る専 門職 に もあ ると考 える。 それは,専 門職 の 目が対 象 となる子 どもたちに向け られた もので, まだ まだ母親 をは じめ とす る養育者に向いていないか らである。福祉行政等 において も,障害 を持つ ものに対す る配慮 に比べ て,介護者に対す る施策 はあま りに も貧弱であ る。発達障害児の QOL

を高め るこ とが重要 であ るように, その養育者の QOL も高め られなければな らない。

小林 は, 「 21 世 紀の子 どもたち 」 とい うシンポジェ‑ ムの中で,「子 どもは育つ力 をもって生れ,親 ・家庭, そ して社 会 は,子 どもを育 て る力 をもっている。 この育つ力 と育て る力 とが, うま く噛み合 う時,子 どもはす くす く育つのであ る。 この育つ力 と育て る力 をうま く噛み合 わせ るには,子 どもは生 きる喜 び一杯 の状態で生活 していなければな らない と思 うのである。 その様 にす るには,親や子 どもをとりま く大人達 の優 しさが, まず必要 である。」 と述べ てい る 5) 。 こ れは,発達障害児の療育 に も, その まま当ては まるこ とであろ う。

社会 が子 どもの個性 を尊重 しつつ育て る力 を持つ こ とが,発達 障害児の養育者 を支援 し,療育 をよ り良好 な ものにで きると考 える。

文 献

1) Ts ur us akiT. ,Taha r aH.:TheFunc t i o nalDe vel opme nto fFe t usBe ha vi o ri nEa r l yPr e gna nc y. J .Phys .The r .S ° i . 9:713 ,1 9 9 7

2) 社団法人 日本件業療法士協会編著 :作業療法学全書 6 発達障害 作業治療学 3.共同医書出版社,4 2‑ 4 3 ,1 9 9 3 .

3) 社団法人 日本作業療法士協会編著 :作業療法学全書 6 発達障害 作業治療学 3.共同医書出版社,7 2 ‑ 7 4 ,1 9 9 3 .

4) 社団法人 日本作業療法士協会編著 :作業療法学全書 6 発達障害 作業治療学 3.共同医書出版社,5 0 ‑ 5 2 ,1 9 9 3 .

5) 小林登,優 しさで,子 ども達 を生 きる喜び一杯に.小児保健研究,5 5( 3 ) ,3 9 0 ‑ 3 9 3 ,1 9 9 6 .

参照

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