特別支援教育における授業のユニバーサルデザイン 化の意義
著者 山元 薫
雑誌名 静岡大学教育学部研究報告. 教科教育学篇
巻 47
ページ 67‑76
発行年 2016‑03
出版者 静岡大学教育学部
URL http://doi.org/10.14945/00009539
静岡大学教育学部研究報告
(教科教育学篇 )第 47号 (20163)67〜 76
特別支援教育における授業のユニバーサルデザイン化の意義
The signttcance of ttversal design of the class h the speclal needs educatlon
山 元 薫 Kaoru YAMAMOTO
(平 成 27年 10月 1日 受理
)I 問題 と目的
「共生社会の形成 に向けたインクルーシブ教育 システム構築のための特別支援教育の推進 (報
告 )J(文 部科学省 ,2012a)で は
,「共生社会の形成 に向けて J「 就学相談・就学先決定の在 り方」
「障害のある子 どもが十分 に教育 を受け られるための合理的配慮及びその基礎 となる環境整備」
「多様 な学 びの場の整備 と学校 間連携等の推進」「特別支援教育 を充実 させ るための教職員の専 門性の向上」の 5つ の項 目について報告が された。 このことにより ,平 成 19年 度に始 まった特 別支援教育の理念の具現化 とその推進が さらに求め られ ,中 で も ,通 常の学級 における発達障 害等のある特別な教育的ニーズのある児童生徒 を包括す る就学や就学後の指導方法の開発 を含 め ,教 員の特別支援教育 を充実 させ るための専門性が向上が急務 となった。
小 中学校 の通常の学級 には平均 65%の 「学習面」「行動面」 「 コミュニケーシ ョン面」 に何 らかの支援 を必要 とす る児童生徒が在籍 している (文 部科学省 ,2012b)こ とも明 らかになっ ている。 インクルーシブ教育 システム構築に向けて ,特 に発達障害 に関す る一定の知識 ・技能 は ,発 達障害の可能性のある児童生徒の多 くが通常の学級 に在籍 している通常の学級の担任 こ そ ,最 も必要性が高いことが分かる。 また ,同 報告では ,知 的発達 に遅れはない ものの「学習 面」又 は「行動面」で著 しい困難 を示す とされた児童生徒 のうち ,校 内委員会 において特別な 教育的支援が必要 と判断 されている児童生徒 は 184%,い ずれの支援 も受けていない児童生徒 は 386%,授 業時間内に教室内で個別の配慮 ・支援 を行 つていない児童生徒 は 499%で あ り
,十分 な支援が実施 されているとは言いがたい状況が明 らかになった。
発達障害等の困難 さか ら学習に参加で きなかった り友達 との関係が上手 く築けなかった りす る児童生徒 は通級 による指導 を受けることがで きる。 しか し ,通 級 による指導 を利用 している 児童生徒 は 082%で ある (文 部科学省 ,2015)。 通常の学級担任 は学級経営や集団における授 業の中で対応す るこを基本 とし ,全 ての児童生徒が「学 びの実感」 (静 岡県 ,2010)が 得 られ
るように指導の工夫 を図ることが必要である。
そ こで注 目されているのが
,「ユニバーサルデザイン (unlversal design)」 である。ユニバー サルデザインは ,日 本においては障害者基本計画 (平 成 14年 12月 閣議決定 )及 びバ リアフリー・
ユニバーサルデザイ ン推進要綱 (平 成 20年 3月 関係閣僚会議決定 ),バ リアフリニ新法 (国 土交 通省・警察庁・総務省 ,2006)に おける定義の もと ,一 般的に建造物 ,交 通・移動 ,通 信 ,商
7
αυ
学校教育系列
山
元
品 とその考 えが社会 に浸透 しつつある。教育において も ,学 校周辺のバ リアフリー化 ,校 舎の バ リアフリー等はすでに進んでいる。近年 ,建 物等のユニバーサルデザイン化か ら ,物 理的な 環境か ら指導や支援 に至 る質的な内容 も包括 して学使教育を■ニバーサルデザイン化す る取組 が全国的に起 こってきている。
本稿 においては , ここ数年で増加 しているユニバーサルデザインの活か し方やそれに基づい た教育実践 に関する論文 を整理す ることで ,イ ンクルーシブ教育システムの構築に向けて推進 が求め られている特別支援教育において ,ユ ニバーサルデザインが どのような効果 もたらすの か展望 したい と考える。
コ 学校教育におけるユニパーサルデザインに関する全国の研究動向
1.論 文検索による研究の動向
国内の学校教育 におけるユニバ ーサルデザ インに関す る論文 を ,「 ユニバ ーサルデザ イン」
「授業」をキーヮー ドに国内学術論文検索サイ トCN五 で論文検索すると ,該 当数は 125本 であつ た (検 索 日 :2015年 8月 25日
)。論文 を総覧すると ,20114年 に佐藤 ,大 田氏の提言 を始 ま りとし て現在 に至 るまでを論文の内容 によつて 3つ の期間 (初 期 ,中 期 ,後 期 )と 分 けることがで き た。 まずは ,こ の 3つ の期 を中心 にユニバーサルデザインに関する動向を述べ る。
2111M年 か ら 20118年 までを初期 としたし この期間の論文数は 13本 で ,そ のほとんどがユニバー サルデザインの必要性や有効性 を提言 という形でまとめた ものである。唯一 ,漆 澤 (2u17)は 授業改善の方法 として ,視 覚的な情報 を用υ
)ることや授業の展開 (導 入 ,展 開, まとめ )を 構 造化す ることを国語科 の授業 (題 材名かん じのひろば「にているかん字」 )を 例 に して報告 し ている。 また ,花 熊 (2CX18)は ,個 別的な配慮の必要性 と共に学級経営・授業づ くりの全体 を 見直す必要性 を指摘 し ,学 校規模での取 り組みの必要性 を併せて示 した。柘植 (2008)は ,授
業づ くりにおける指導 のポイン トをこれまでの実践 を俯厳 し ,授 業構成の工夫 ,指 示 ,机 間支 援 ,板 書 などについて示 した。
2009年 か ら 2011年 まで を中期 とした。 この時期の論文数は 14本 で ,提 言 とユニバーサルデザ インに関す る実践報告が出て きた時期である。
21109年 では 4本 のうちの 2本 力Ⅵヽ 学校での実践報告に ,2010年 ではすべてが実践報告 になっ ている。内容 は ,個 別の支援 を全体 の中に取 り入れるといった手法が報告 され ,学 級規模の授 業改善にまでは至 っていない。 2011年 には ,桂 氏による子 どもの困 り感に寄 り添 った ,教 材 に おける「 しかけ」を中心 に国語の授業の実践報告が されている。 これは困 り感のある子 どもヘ の配慮 を授業全体 の指導工夫の手法 として ,全 体 の中に包括 してい く形である。 また ,湯 浅 (2011)は ,「 通常学校の改革 と授業づ くり」の中で ,子 どもが参加で きる学級づ くり ,多 様 な 学 びの場 とホールスクールアプローチ ,イ ンクルーシブ授業論の展望の中で学習の共同化 につ いて指導の基礎技術 と照 らし合わせて述べた。
21112年 か ら 2015年 まで を実践期 とした。 この時期の論文数は 98本 となる。
2012年 は論文数が前年度の3倍 以上 とな 16本 にな り ,2012年 か ら 2015年 8月 までの論文の内
592%が 実践報告 となっている。 21112年 には ,涌 井が協同学習 を教育方法 に位置づけた実践 を
,21113年 には ,福 井県特別支援教育セ ンタ■や京都府総合教育セ ンター等 の研究紀要 に研究協力
校 の実
ll■報告が されている。あわせて ,2012年 までは ,主 として実践報告の教科 は国語科で あったが ,算 数科 ,図 画工作 による授業実践の報告 もされるようになる。 2013年 後半は ,授 業
68 薫
特別支援教育における授業のユニバーサルデザイン化の意義
のユニバーサルデザイン研究会の小貫や村田等がインタビュー記録や実践報告等でユニバーサ ルデザインの授業のつ くり方 として提案 した「焦点化」「視覚化」共有化」 を引用する実践が 増 え ,個 】」の支援 を全体の指導の中に位置づけるといった実践か ら授業全体 も構想 し直 し指導 の工夫 を図る実践が出始める。
2014年 は ,468%が 実践報告であ り ,そ の うちの 570%が 小学校 ,290%が 中学校 ,140%が
高等学校の報告 とな り ,高 等学校 まで実践が広がつていることが分かる。
2015年 は ,授 業改善の視点 として「焦点化」「視覚化」「共有化」 を活用 している研究が多い 傾向にあ り ,2015年 8月 で 780%が 実践報告 となっている。
69
50 45 40 35 30 25 20
15 10 50 1
2004 2008 2012 2014 (4F)
‑緻
2010
‑鶏 報 告
図 1 論文数
2 書籍等による研究の動向
書籍横断検索 システムと Google scholarを 使って 「授業」 「ユニバーサルデザイン」をキーワー ドに検索 を行い集計 した (検 索 日 :2015年 8月 25日
)。廣瀬・桂 (2009)は 「通常の学級担任がつ くる授業のユニバーサルデザイン」で, どの子 も
「わかる」授業 を目指 し,国 語 と算数の題材や単元 ごとに実践例 を示 した。同年 ,高 山は「あっ たか クラスづ くり通常の学級で無理 な くで きるユニバーサルデザイン」で ,発 達障害のある児 童生徒 の対人関係 にお ける困難 さに配慮 した ソー シ ャルスキル トレーニ ング (SOcial skill
Trahhg)を 盛 り込んだ学級経営 におけるユニバーサルデザインの実践方法 を示 した。
2010年 には ,東 京都 日野市公立小 中学校全教師・教育委員会 と小貫 による「通常学級での特 別支援教育のスタンダー ド」が出版 され ,学 級担任や教科担任等の子 どもに関わる手立てや特 別支援教育 コーデ イネーターの校内委員会 をスムーズに運営する方法 ,学 校管理職の学校経営 上でのポイン トが示 され ,後 に各学校が参考 とす る書籍の一つ となる。 また ,授 業のユニバー
サルデザイン研究会か ら「授業のユニバーサルデザイン」が出版 され ,教 科教育 と特別支援教 育の融合 としてユニバーサルデザインの考 え方 を取 り入れた教科の授業づ くりへの認知度が高
まる。
2011年 桂 は「論理が身につ く考える音読の授業」で ,す べての子 どもたちが論理的思考 を身
70
山元
に付 けることがで きる国語の授業における「 しかけ」 を掲載 したも同年 ,花 熊 は ,「 小学校ユ ニバーサルデザインの授業づ くり 学級づ くり」で学級経営 と授業づ くりの両方か らのアプロ ーチで ,す べての児童生徒の授業参加につながることを述べている。
2012年 は ,授 業のユニバーサルデザイン研究会編著 ,桂 ,石 塚編 著の「授業のユニバーサル デザイン」 シリーズで授業だけでな く ,校 内研修の進め方が例示 された。
2013年 は ,授 業のユニバーサルデザイン研究会編者の指導ガイ ドを中心に授業設計に関する 本が国語科 について全学年出版 された。
2014年 か らは ,授 業のユニバーサルデザイン研究会か ら ,国 語科 だけでな く ,算 数科 ,社 会 科 ,道 徳 ,音 楽科の各教科等 におけるユニバニサルデザインの考え方 と実践例が示 された本が 出版 された。
Ⅲ ,授 業のユニパーサルデザイン化に向けた実践の特徴
表 1は , Iの 論文の実践内容か らキーワー ドを抽出 し整理 した ものである。「授業の焦点化・
視覚化・共有化」に関する実践 281%(27本 ),集 団指導の中における個ワ」の支援 に関す る実 践 167%(16本 ),授 業の基礎技術の徹底が 125%(12本 ),CASTに 基づ く実践カリ 4%(9本 ),ソ ー シ ャルス キル トレーニ ングを活用 した学級づ くリカお 3%(8本 ),各 学校が独 自に開発 した チ ェック リス ト等 を用いた実践力 83%(8本 ),学 級環境 の調整が 63%(6本 ),指 導方法 に協 同学 習 を取 り入 れい る方 法 が 42%(4本 ),PASS理 論 (Planning Attentlon,論 ultaneous, and Successlve Processes theory)に 基づ く授業づ くりが 20%(2本 )と なった。以下 ,一 つ
ずつ実践の内容 について外観する。
表 1 実践の取組 内容
授業の焦点ィ ヒ・視覚化・共有化 集 団における個別の支援 授業の基礎技術
CAST(UDLの 原 則
)SST
学校 で独 自に開発 したデザイ ン 学級環境 の調整
協 同学習
PASS理 論 に基づ く授業づ く り その他
7
6
2
9
8
8
6
4
2
4
28 1
167
12.5
94 83 83 63
4:2
20 42
「焦点化」「視覚化」「共有化」とは,小 貫 (2013)が授業 をユニバーサルデザイ ンにするキー ワー ドとして用い ,指 導の工夫 を図る方法である。これは ,児 童生徒のつまず きを把握 し ,全
ての児童生徒が授業の 目標 を達成するために活動 に参加で きるように 目標や活動 を焦点化 し
,情報 を視覚化 し ,学 んだことを共有化する場面 を設定す るなどの授業のづ くりを実践 している。
集団における個別の支援では ,読 字障害や算数障害の児童生徒への支援支援方法の具体が示
されてい る。 この報告は ,集 団の中で特 別 な教育的ニーズのある児童生徒 に対 して, ワータ
シー トや板書量の工夫 ,タ プレッ トの利用 などを行 うことで ,集 団の中で学習す ることが可能
特別支援教育における授業のユニバーサルデザイン化の意義
になったことを報告 している。特 に多層指導モデル MmI(読 みのアセスメン ト・指導パ ッケー ジ )の 活用 によ り学習のつ まず きを早期 に発見 し ,集 団指導の中で個別の支援 を実践 している 実践 と ,通 級指導教室 を活用 しなが ら特別な教育的ニーズのある児童生徒の学び方 を明 らかに
し担任 と共有 しなが ら集団の中での学習活動 を可能にす る実践 も含 まれている。
授業の基礎技術では ,発 達障害の特性 を踏 まえ ,授 業の基礎技術 (発 問 ,指 示 ,板 書 ,教 材・
教具 )に ついて見直 しを図 り授業を実践することで特別な教育的ニーズのある児童生徒の授業 への参加 を促進することが可能になったことを報告 している。
「学 びのユニバーサルデザイン (Umversal Design for LeammguDL)」 とは ,提 示 に関する
多様 な方法の提供 (表 象 ),取 組 に関する多様 な方法の提供 (参 加 ),行 動 と表出に関する多様 な方法の提供 (表 現 )の 3つ の原理 に基づいて ,柔 軟 な教材 ,柔 軟 な指導方略 を用いることに よつて ,児 童生徒 の多様 なニーズ に応 える ことがで きる授業づ くりであ る と定義 してい る (CAST,2011:Garglhlo&Metcalf2013)。 この UDLの ガイ ドラインに対応 した手立てや支援方 法 を立案 し指導実践 している。
ソーシャルスキル トレーニ ングでは ,学 級の実態 に対応 して ,定 期的に「あい さつに関する スキル」「 自己認知スキル」「相互理解のための言葉 表現スキル」「相互理解やセルフコン ト ロールのための気持ち認知スキル
J「セルフマネジメン トスキル
J「コミュニケーションスキル
J(USST ソーシャルスキルワーク日本標準 に基づ く )の 中か ら必要な内容 を実践 し ,学 級全
体のスキルの向上 を図ることで ,特 別な教育的ニーズのある児童生徒の授業への参加率が改善 する実践である。
学校独 自に開発 したデザインでは, まず ,学 校独 自のガイ ドラインに基づいて ,チ ェックリ
ス トを作成 し ,学 級集団 と特別な教育的ニーズのある児童生徒 の実態把握 をす る。その後 ,学
習上のつまず きを踏 まえ授業の改善 を図ることで ,全 ての児童生徒の授業への参加率 を改善す る実践である。
学級環境の調整では ,教 室の整理整頓 ,構 造化 ,前 面黒板周 りのシンプル化 などが多 く報告 されている。先述の中期 に多い実践である。
協 同学習は ,UDLの 指導方法の一つ として用い られている実践である。涌井 (2012)は 「一 人ひとりの学び方の違いに応 じて ,い ろいろな学 び方が選べ る授業」 と定義 している。
PASS理 論 に基づ く授業づ くりでは ,PASS理 論 を用いた実態把握 ,授 業仮説 を立案 し授業 実践 を通 して検証す る方法 をとっている。 PASS理 論 を用いることで ,特 別な教育的ニーズの ある児童生徒の学 び方に対応 した手立てや支援方法 を実践することがで きた としている。
Ⅳ 実践の背景にある基本となる考え方
実践報告書で用い られている基礎 となる考え方 をを引用文献及び参考文献の使用頻度か ら捉 えてみる。
1 集計か らみるユニパ =サ ルデザイン
引用数 を集計すると ,書 籍では ,「 通常学級での特別支援教育のスタンダー ド」 11,「 授業の ユニバーサルデザイン VOL l〜
6」9,授 業のユニバ ーサルデザ インを目指す国語授業の全 時間指導 ガイ ド (ユ ニバーサルデザイン研究会・桂・廣瀬 ,2013)6,「 通常学級の授業ユニバー サルデザイン」 (佐 藤 ,2010)5,「 国語授業のユニバーサルデデザイン全員が楽 しく分かるで きる国語授業づ くり」 (桂 ,2011)5,「 通常の学級担任がつ くる授業のユニバーサルデザイン」
′ワ
山
元
(廣 瀬・桂 ,2m8)5,「 小学校ユ■バ ーサルデザ イ ンの授業づ くり・学級づ くり」 (花 熊
,21111)4と なっている。 また ,論 文数では ,「 学びのユニバーサルデザイン」 8,「 選べ る !ユ ニバ ‐サルデザインな授業づ くり」 (涌 井 ,2012)4,「 通常の学級の授業ユニバーサルデザイ
ンー「特別」ではない支援教育のために」 (佐 藤・深澤・全 日本特別支援教育研究連盟,2010) 4で あつた。
のスタンダー ド 授 業のユニバーサルデザイ ン VOL l〜 6
授 業 のユ ニバ ー サル デ ザイ ンを 目指す 国語授 業 の全 時 間 指 導ガイ ド
通常学級 の授業ユニバーサルデザイ ン
国語授 業 のユ ニバー サル デデ ザイ ン全員 が楽 しく分 か る で きる国語授 業づ く り
通 常の学級担任 がつ くる授 業のユニバーサルデザイ ン 小学校ユニバニサルデザイ ンの授業づ くり 。学級づ く り
5 5 5 4
表 2 実践報告に見 られる引用数
引用 回数 学びのユニバーサルデザイ ン
選べ る !ユ ニバ‐サルデザインな授業づ くり
通常の学級の授業ユニバーサルデザイ ンー 「特別 Jで はな い支援教育のために
このことか ら ,ユ ニバーサルデザインの実践の背景 としてある基礎 となる考え方 としては
,小貫・ 日野市教師・教育委員会 (2010)の 包み込むモデルと環境整備等のスタンダー ド ,ユ ニ
バーサルデザイン研究会・桂・廣瀬 (2013)の 「授業のユニバーサルデザイン」 ,佐 藤
(21114)が述べている通常の学級 におけるユニバーサルデザイン 7つ の原則 (導 入の工夫 ,学 習への見 通 し ,明 確 なルールや約束 ,多 様 な感覚 を生か して学べ る場 ,教 師の指示や発問 ,友 達 との学
びの場や選択場面の設定 ,板 書やワークシ ,卜 ),花 熊 (2011)が 述べている 5点
(「教室環境 や学習環境の整備」「学習や行動のルールの明示 J「 視覚的てがか り・分か りやすい指示 による 見通 しの立てやすい授業」 「複数の学習方法や教材 の準備」「教 師の支援技術 の向上」 ),涌 井
(2012)の 協同学習の設定が中心的であると言 える。
2 各基礎 となる考え方
一つずつ基礎 となる考 え方に触れる。小貫 。日野市教師・教育委員会 (2010)の 包み込むモ デル と環境整備等のス タンダー ドは,子 どもを取 り巻 く「個別的配慮」 「指導方法」「学級環境」
「学校環境」「地域環境」と階層的に捉え ,そ の層ごとどのような工未や整備をすべ きかをスタ ンダー ドとして示 している。この考え方の特徴 としては ,従 来の特別支援教育の視点である 個々の支援や指導に留まらず子どもを取 り巻 く環境において一人一人の教育的ニーズに配慮又 は対応 していこうとするところである。そして ,発 達障害のある子にとつて学びやすい環境は
,どの子にとっても学びやすい環境 と定義 している。
ユニバーサルデザイン研究会・桂・廣瀬 (21113)の 「授業のユニバーサルデザイン」では
,8 4 4
72
特別支援教育における授業のユニバーサルデザイン化の意義
小貫の提案する授業のユニバーサルデザ インを基本的な考え方 とし ,国 語科 においては桂 を中 心 に ,社 会科 については村 田を中めに ,他 教科の実践 と共 に実践例 を紹介 している。全ての児 童生徒が授業に参加す るための指導の工夫 として「焦点化」 「視覚化」 「共有化」 をキーワー ド
とし ,指 導の工夫 を図る手法である。 また ,授 業 をユニバーサルデザ イン化す るプロセス も明 らかにし ,授 業 をつ くる手続 きが明確 になっている。
佐藤 (2010)は ,ユ ニバーサルデザインを「発達障害等 を含む配慮 を要する子 どもには「な い と困る支援」であ り, どの子 どもにも「あると便利で 役 に立つ支援」 を増やす。その結果 として ,全 ての子 どもたちの過 ご しやす さと学びやす さが向上する」 と定義 し ,通 常の学級 に おけるユニバーサルデザイン 7つ の原則 (導 入の工夫 ,学 習への見通 し ,明 確 なルールや約束
,多様 な感覚 を生か して学べる場 ,教 師の指示や発問 ,友 達 との学びの場や選択場面の設定 ,板
書やワークシー ト )を 提案 している。
花熊 (2014)は ,実 態把握 と学習面での支援での不十分 さを述べ てお り ,「 教室環境や学習 環境の整備」 「学習や行動のルールの明示」「視覚的てがか り・分か りやすい指示 による見通 し の立てやすい授業」「複数の学習方法や教材の準備」「教師の支援技術の向上」の 5点 を学校全 体で取 り組むことの大切 さを指摘 している。
涌井は ,ユ ニバーサルデザ インな授業 とは「すべての子がわかる・できることを目指 した授 業であ り ,一 人ひとりの学び方の違いに応 じて ,い ろいろな学び方が選べ る授業である」 と定 義 している。いろいろな学び方が選べ る授業のつ くり方の一つ として ,協 同学習 (cooperajve leaming)を 指導技法 としてる。 また ,協 同学習 と共 に学び方 を学ぶ ことを通 して ,ユ ニバー
サルデザインな支援 をすべてを教員一人が用意するのではな く ,子 どもたちの支 え合いを育て ることがで きるとしている。
V 実践論文に見られるユニパーサルデザイン化による効果
実践の効果として挙げられていた内容をキーワー ド化 して集計すると ,表 3と なった。
まずは ,授 業における指導の工夫
(「焦点化「視覚化」 「共有化」 )に より授業改善が図られ た 19本 ,個 別の支援が充実 した 13本 ,特 別な教育的ニーズのある児童生徒の授業に参加率が上 がつた 13本 ,教 材・教具の改善が進んだ 12本 ,教 員の指導技術 (発 問 ,指 示 ,板 書 )が 向上 し た 9本,学 級種運段の授業内容の理解が深まった 7本,実 態把握を丁寧に行 うようになった6 本 ,学 級環境の整備が進んだ 5本 ,学 級経営が改善された 4本 ,特 別な教育的ニーズのある児 童生徒の自己理解が進んだ 3本 ,学 級集団の「聞 く力」が向上 した ,校 内研修の活性化を図る
ことができた 1本 である。
基本 となる考えに小貫 と授業のユニバーサルデザイン研究会の提案する「焦点化」「視覚化」
「共有化」による指導の工夫を図る方法を活用 し ,授 業改善に効果をもたらしている実践が多 いと言える。また ,児 童生徒のつまず きに配慮 した指導の工夫をすることにより ,「 特別な教 育的ニーズのある児童生徒の授業参加度」が上が り ,「 教材・教具 Jの 改善が図られ ,「 指導技 術の向上」 ,「 学級集団の授業理解」の推進に効果があったと考える。あわせてユニバーサルデ ザインによる全ての児童生徒 という意識を強調することにより ,個 別の支援 も熟考されるよう になり ,実 態把握 ,支 援の実施 ,評 価が授業づ くりのプロセスに入 り ,効 果が見 られるように なったと考える。
│
73
74
山元
表 3 実践論文の成果内容 成果 内容
の工夫 個別の支援 の充実
特別 な教育的ニーズのある児童生徒の授業参カロ 度 教材・教具のェ夫
教員の指導技術の向上 学級集団の授業内容 の理解 実態把握
学級環境の整備
学級経営 :
特別 な教育的ニーズのある児童生徒の 自己理解 学級集団の 「聞 く力」
校 内研修の活性化
Ⅵ 総合考察
1 実践の広が り
論文や書籍が増加するのに伴い学校 における実践数 も増加 し ,授 業改善や個別の支援の充実 に成果 を出 している。 これは ,学 校教育での授業のユニバーサルデザイン化やユニバーサルデ ザインの考え方を活か した学校経営の基本的な考 え方が整理 されシステム化 されることで ,各
学校 において実情に合 わせて取 り組みやす くなって きていると考えられる。特 に ,小 貫 (2013)
の授業のユニバーサルデザインのモデルや個への配慮 ,補 充指導の構造図 ,桂 の国語科 におけ
るユニバーサルデザインな授業 については全国的な広が りがあ り ,現 在の実践の中心的な考 え 方 とならていると言える。
このユニバーサルデザインの実践の広が りには ,県 や市町教育委員会 によるユニバーサルデ ザイ ンの啓発 も貢献 していると考 える。北海道 ,埼 玉県 ,千 葉県 ,神 奈り
│1県,山 形県 ,大 阪府
,京都府 ,岡 山県 :静 岡県 ,佐 賀県 ,大 分県等では先行研究 を引用 し啓発用冊子や リーフレッ ト を作成 して ,特 別な支援 を要する児童生徒の増加や学力向上 を目的 として小 中学校での実践 を 推進 している。このような行政の介入 も ,小 中学校での実践が増加 している重要な要因である
と考える。
2.ユ ニパーサルデザインの限界
柘植 (2011)が授業のユニバーサルデザインという考えと手法は始まったばか りで ,そ の有 効性や限界がまだ整理されているわけではない ,同 じく柘植 (2015)は ユニバーサルデザイン
という手法で, どんなに障害が重 くとも ,通 常学級の中で ,障 害のない他の児童生徒 と同じ内 容を習得できる ,と 勘違いしているような声を聞 くと述べ ,ユ ニバーサルデザインに対する誤 解 も指摘 している。桂 (2011)は ,授 業のユニバーサルデザインにおける支援のレベルを ,指
導の工夫 ,個 別の配慮さらに個別の配慮の中に特化 した配慮が必要な場合 もあると説明 してい る。実際に桂は実践の中で ,展 開の工夫や教材のしかけだけでは授業の目標を達成で きない児 童生徒には ,個 別に対応をしている。また ,小 貫 (2013)も 授業の 3段 構えとし, まずは全体 への指導の工夫 ,全 体の中での個別の支援 ,そ してそれでも難 しい場合は個別に指導 と ,指 導 の階層性を指摘 している。さらに ,花 熊 (2015)や 石塚・京極・廣瀬 (2014)は ヱちの学級が
9
3
3
2
9
7
6
5
4
3
2
1