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1.緒言

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Academic year: 2021

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(1)

長崎大学教育学部自然科学研究報告 第30号 37‑40 (1979)

芳香族アルデヒドの空気酸化反応に関する研究

Ⅳ. ベンズアルデヒドの空気酸化反応に及ぼす 介在物芳香族炭化水素の影響

竹友 一成

(長崎大学教育学部化学教室) (昭和53年10月31日受理)

Air Oxidation of Aromatic Aldehyde

IV. Effect of Aromatic Hydrocarbon on the Air Oxidation of Benzaldehyde

Kazushige TAKETOMO

Chemical Laboratory Faculty of Education, Nagasaki University, Nagasaki, Japan

(Received, October 31, 1978)

Abstract

Benzaldehyde was converted into phenol, benzoic acid and others, when passed throu‑

gh a reaction tube kept at 235℃ in an atmosphere of air.

The addition of aromatic hydrocarbon (C6H5R) as an inclusion to benzaldehyde resulted in an increase in the formation of benzoic acid, and in a decrease in the formation of phenol.

The formation of benzoic acid increased in the order :

R=H>CH3>CH3CH2>(CH3)2CH.

1.緒言

筆者は,前報1)において,ベンズアルデヒドの空気酸化にベンゼンが介在すれば,安息香酸の 生成が促進され,ペソズアルデヒドの酸化分解によるフェノールの生成が抑制されることを報告

した。一方, p‑トルアルデヒドおよびクミンアルデヒドの空気酸化を試み,フェノール生成の の順が,置換基Rに関して, H >CH3 > (CH3)2CHであることを報告し2),この成績がI効

(2)

38 竹友一成

果など電子移動効果に関係するものか,置換基RからのH・の生成によるものかについては,

今後の研究に待つとした。

 そこで,今回は芳香族炭化水素を介在させるベンズアルデヒドの空気酸化を試み,その影響を 検討するとともに,上記フェノール生成の機構について簡単な考察を加えた。

2.実験材料及ぴ方法

 2.1試  料

 ベンズァルデヒド(特級)は無水硫酸ナトリウムで乾燥後,窒素雰囲気下に減圧蒸留して用い た。芳香族炭化水素(特級)は金属ナトリウムで乾燥後,常圧蒸留して用いた。

 2.2 空気酸化反応

 反応装置は既報3)のものを用い,反応は次の如く行なった。

 内径20mmのガラス反応管(パイレックス)を所定の反応温度(235。C)に加熱しておき,試料

(ベンズアルデヒド・芳香族炭化水素混合液)20gを一定の速度で120分間をようして滴下せし めた。試料は気化器により気化され,乾燥空気とともに反応管内を流通する。空気の総流通量 は161で,空気はガスだめびん2本を交互に用いて連続的かつ一定の速さで反応管中を流通せしめ た。反応生成物はコンデンサーを経て氷冷された受器に捕集された。

 2.3分  析

分析はガスク・マトグラフィーにより行なった。ガスク・マトグラフ装置は島津製作所のGC−

5A(検出器:TCD)である。 フェノール,安息香酸,ベンズアルデヒド,および芳香族炭化水 素の分析には,充てん剤P:EG6000(TPA,Chromosorb W,60〜80mesh),内部標準試薬n一オ

クチルアルコールを用いた。安息香酸の分析には,充てん剤DEGS−H3PO4(Shimalite,60〜80 mesh),内部標準試薬o一クロルフェノールを用いた。カラムはガラスカラム(PEG6000:2。5m

×3φmm,DEGS−H3PO4:2m×3φmm),キャリヤーガスはヘリウム,キャリヤーガス速度は 43ml/min,カラム温度は190。Cである。

 フェノールの同定は,その誘導体2,4,6一トリブロムフェノールを調製し,その混融試験によ り,また安息香酸の同定は混融試験によりそれぞれ行なった。芳香族炭化水素およびベンズァル デヒドについては,反応生成物成分の保持時間から推定した。

3.実験結果およぴ考察

 ベンズァルデヒドの空気酸化による生成物が,フェノール,ベンゼン,および安息香酸である ことは既報1)の通りである。

 介在試料たる芳香族炭化水素としては,ベンゼン,トルエソ,エチルベソゼン,およびクメン を用いた。酸化反応は,ベンズアルデヒド・芳香族炭化水素混合液のモル比1:1の試料,およ び同混合液の質量比11.5:8.5の試料についてそれぞれ試みた。酸化反応の結果をTable1に

示す。

 ベソズァルデヒドのみを試料とする酸化反応(No.1)と比較するに,芳香族炭化水素の介在 により,フェノールの生成が減少し,安息香酸の生成が著しく増大した。芳香族炭化水素の側鎖 Rでフェノールの生成傾向をみるに,生成物組成では,H>CH3>CH:3CH2>(CH3)2CH

の順でフェノールは減少したが,ベンズアルデヒドからの変化率(モル%)でこれをみれば,

(3)

芳香族アルデヒドの空気酸化反応に関する研究 39

Table1 Ef五ect of aromatic hydrocarbon on themral decomposition of benzaldehyde in the presence of air

     (Reaction temp.:2350C)

Sample Reaction con(lition Yield

of Composition of product(%)

No, Benz−  Aromatic*

  aldehyde hydrocarbon

    (9)   (9)

Time

(min)

Air

(z)

product Phenol Benzene

(%)

Benzoic Benz−  Aromatic acid    aldehyde hydrocarbon

20.00 11.50 11.50 10.35 11.50 10.09 11.50 9.54

0

8.50*1 8.50*2 9.36*2 8.50*3 10.02*3

8.50*4 10.65*4

120 120 120 125 125 120 135 130

16.0 15.3 16.0 16.5 16.1 15.2 16.2 16.4

79.9   7.3    3.8 84,9   1.4    − 86.8  1.4 89.1  1.3 88.5  1.2

88.3   1.0     − 90.7  trace   trace 92.6   trace   trace

12.7    72.5 49.0    11。4 43.6   18.5 38。3    20.1 33.2    29.6 21。4    33.1

11.3   49.2 7.1  43.1

36.4 36.4 37.8 35.1 42.5 36.6 46.7

*Aromatic hydrocarbon  *1Benzene,*2ToIuene,*3Ethyl benzene,*4Cumene

側鎖Rによるフェノール生成の差を殆んど認め得なかった。同様に,安息香酸の生成傾向を検討 するに, 生成物組成においても,またベソズァルデヒドからの変化率(モル%)においても,

(CH:3)2CH<CH3CH2<CH3<Hの順で安息香酸生成の傾向は増大した。特に,CH3およびH による安息香酸生成の増大が顕著であった。

 試料混合液の質量比11.5:8。5(ベンズアルデヒド:芳香族炭化水素)の酸化反応について,

芳香族炭化水素の影響を示せば,Fig1のようであった。試料混合液のモル比1;1(ベンズァ ルデヒド:芳香族炭化水素)の酸化反応についても、Fig1に示される生成パターンと大略同様

であった。

 芳香族炭化水素を介在せしめた場合の,ベンズアルデヒドの空気酸化によるフェノールおよび 安息香酸の生成は,両者の間に生成の競合関係があるとはいい難い。

Fig,1

一1

§

9

α

.0

5奉1.5

α

 1.0  0.5

  0

  50 葦↑、。

o

.9

8

.2

0N

Φ

30

20

10

0

Pheno1

Benzoic aci(1

      BenzeneT・iuene誌誌eCumene        H    CH3  CH2CH3 CH(C■3)2        1   1   1    1        C6H5 C6H5 C6H5   C6H5

Effect of aromatic hydrocarbon on thermal decomposition of benzaldehyde  (Sample:Benzaldehyde11.5g,Aromatic hydrocarbon8.5g)

(4)

40 竹友一成

 触媒的作用を有すると考えられる無水ホウ酸などの場合には,フェノールと安息香酸生成との 間に僅かながら競合関係が認められている1)・4)。 この結果を参考にし,前報2)において,芳香族 アルデヒド類の酸化の場合,置換基RからのH・の生成による安息香酸類生成の増加,つまリ パラドキシカリィにはフェノール類生成の減少という考えを,全く無視することはでぎないこと を述べた。

 しかし,今回の実験においては競合関係はないものと見徴してよいから,芳香族炭化水素の側 鎖RからのH・の生成による安息香酸生成の増大は考慮する必要がない。この考えは,Rが大 きいほど安息香酸の生成が減少することと矛盾しない。

 芳香族炭化水素の側鎖Rの一1効果と安息香酸の生成との間には負の相関がある。側鎖の1効 果と安息香酸の生成との関係を,今回の実験結果のみをもって結論づけることは難しいが,側鎖 に+1効果をもつ芳香族化合物を介在物とする酸化反応により,これを明らかにすることも可能 であろう。

4.要

芳香族炭化水素を介在物とするベンズアルデヒドの空気酸化を試み次の結果を得た。

(1)芳香族炭化水素の存在は安息香酸の生成を著しく増大せしめた。他方,フェノールの生成  は抑制された。

(2)芳香族炭化水素の側鎖Rと安息香酸生成との関係は,H>CH3>CH3CH2>(CH3)2CH  であって,規則性が認められた。

(本研究は,城台隆光および溝上淳両氏のご協力におうところ大であった。稿をおえるにあた り深謝の意を表します。)

1)竹友一成,長崎大学教育学部自然科学研究報告,第29号,p.45(1978)

2)竹友一成,同上報告,第28号,p.29(1977)

3)竹友一成,同上報告,第21号,p.43(1970)

4)竹友一成,同上報告,第27号,p.23(1976)

参照

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