首都大学東京 博 士(工 学)学 位論文
サー ボプ レスの打抜 き振動 メカニズムの解 明 と 振動低減 に関す る研 究
平 成29年(2017年)3,月
首都 大 学東 京 大 学 院
シス テ ムデ ザ イ ン研 究 科 シ ステ ムデ ザ イ ン専 攻 ヒュー マ ン メカ トロニ ク ス シ ステ ム学 域
村上 智広
目次
第1章 序 論 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ …
1.1サ ー ボ プ レ ス の 現 状 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ …
12サ ー ボ プ レ ス の 概 要 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ …
1.2.1プ レ ス 加 工 と プ レ ス 機 械 ・ ・ …
1.2.2サ ー ボ プ レ ス の 定 義 ・ ・ …
12.3ス ラ イ ド位 置 の 制 御 方 式 ・ ・ …
12.4サ ー ボ プ レ ス の ス ラ イ ド モ ー シ ョ ン ・ ・ …
1.3ス ラ イ ド モ ー シ ョ ン の 最 適 化 に お け る 問 題 点 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ …
1.4先 行 研 究 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ …
1.4.1打 抜 き 振 動 に 関 す る 問 題 点 …
1.42機 械 プ レ ス に お け る 打 抜 き 振 動 と 騒 音 の 関 係 に 関 す る 研 究
1.4.3機 械 プ レ ス に お け る 打 抜 き 振 動 の 解 析 に 関 す る 研 究 ・ ・
1.4.4サ ー ボ プ レ ス の 打 抜 き 振 動 に 関 す る 研 究 ・ ・
1.4.5打 抜 き 振 動 の 低 減 に 関 す る 研 究 ・ ・
1.4.5.1破 断 荷 重 の 低 減 に よ る 打 抜 き 振 動 の 低 減 ・ ・
1.4.5.2振 動 制 御 に よ る 打 抜 き 振 動 の 低 減 ・ ・
1.4.6打 抜 き 以 外 の 塑1生 加 工 へ の ス ラ イ ドモ ー シ ョ ン 利 用 技 術
1.5研 究 の 目 的 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ …
1.5.1サ ー ボ プ レ ス 加 工 の 高 度 化 に 関 わ る 学 術 的 課 題 ・ ・
1.52研 究 目 的 …
1.6論 文 の 構 成 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ …
12∠06802699922556944891111112222223333
第1章 参考文献 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ …41
第2章 ね じ 駆 動 サ ー ボ プ レ ス に お け る 打 抜 き 振 動 の 増 大 現 象 の 実 験 的 検 証 ・ ・ …
2.1緒 言 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ …
2.2実 験 方 法 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ …...
2.2.1実 験 装 置 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ …
2.2.1.1プ レ ス 機 械 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ …
22.12被 加 工 材 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ …
22.1.3プ レ ス 金 型 ・ …...
2.2.2打 抜 き 騒 音 と 打 抜 き 振 動 の 測 定 方 法 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ …
2.23実 験 条 件 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ …
2.3実 験 結 果 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ … ● ● ● ●'● ●'●
2.3.1打 抜 き 騒 音 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ …
2.3.2打 抜 き 時 の パ ン チ 刃 先 の 変 位 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ …
2.3.3打 抜 き 時 の 破 断 振 動 量 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ …
2.3.4破 断 振 動 量 と 打 抜 き 騒 音 の 関 係 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ …
2.3.5打 抜 き 時 の 破 断 荷 重 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ …
2.3.6打 抜 き 速 度 と 破 断 位 置 の 関 係 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ …
2.4考 察 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ …
2.4.1破 断 荷 重 と 破 断 振 動 の 関 係 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ …
2.4.2打 抜 き 振 動 の 増 大 現 象 の 有 無 に 関 す る 検 討 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ …
2.4.3打 抜 き 振 動 を 構 成 す る 振 動 要 素 の 検 討 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ …
2.4.3.1破 断 荷 重 に 起 因 す る 降 下 量 ・ ・ ・ ・ …
123337815558260377999555555566666778888888
2.4.3.2ス ラ イ ド速 度 に 起 因 す る 降 下 量
2.4.3.3制 御 系 に 起 因 す る 降 下 量
2.4.4低 速 打 抜 き の 適 用 に よ る 破 断 振 動 の 低 減 率
2.5結 言 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ …
第2章 参 考 文 献 ・ ・ …
AUO16つ4‑0/90/99
第3章 ね じ 駆 動 サ ー ボ プ レ ス の 打 抜 き 振 動 解 析 と 打 抜 き 振 動 メ カ ニ ズ ム の 解 明 …
3.1緒 言 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ …
32ね じ 駆 動 サ ー ボ プ レ ス の 打 抜 き 振 動 解 析 一 力 と 変 位 の 解 析 モ デ ル ー ・ ・ …
32.1解 析 モ デ ル ・ ・"● ● ● ● ● ● ●"● ● ●'
32.1.1モ デ リ ン グ の 観 点 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ …
32.12モ デ リ ン グ の 詳 細 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ …
3.2.2解 析 条 件 お よ び 解 析 方 法 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ …
32.3解 析 モ デ ル を 構 成 す る モ デ ル の 評 価 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ …
32.3.1機 械 構 造 系 に 起 因 す る 変 位 の 解 析 モ デ ル ・ ・ ・ ・ …
32.3.2制 御 系 に 起 因 す る 変 位 の 解 析 モ デ ル ・ ・ ・ ・ …
3.2.4評 価 の た め の 実 験 方 法 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ …
3.3打 抜 き 振 動 の 解 析 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ …
3.3.1解 析 結 果 と 実 験 結 果 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ …
3.3.1.1解 析 結 果'● ● ● ● ● ●
3.3.1.2実 験 結 果 ● ● ○ ○ ● ● ●
3.3.2解 析 結 果 と 実 験 結 果 の 整 合 性 の 検 証 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ …
5〆07'7'7'0/Q/Q/0/0ノ 050011 弓1弓1001﹂■■ AU(∠llll
ll2 112 112
115 116
3.32.1外 乱 入 力 時 の ス ラ イ ド挙 動 の メ カ ニ ズ ム ・ …
3.3.2.2外 乱 解 除 時 の ス ラ イ ド挙 動 の メ カ ニ ズ ム ・ ・
3.3.2.3打 抜 き 振 動 の 増 大 現 象 ・ ・
3.4振 動 増 大 回 避 の た め の 最 適 打 抜 き 時 間 の 予 測 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ …
3.4.1解 析 モ デ ル に よ る 予 測 ・ ・ ・ …
3.4.2最 適 打 抜 き 時 間 の 実 証 ・ ・ ・ …
3.4.3最 適 打 抜 き 時 間 の 効 果 ・ ・ ・ …
3.4.3.1破 断 振 動 量 の 低 減 ・ ・ ・ …
3.4.32消 費 電 力 の 低 減 ・ ・ ・ …
3.5打 抜 き 振 動 メ カ ニ ズ ム ース ラ イ ドの 変 位 挙 動 と 破 断 振 動 量 の 影 響 因 子 一
3.5.1解 析 モ デ ル が 明 ら か に し た ス ラ イ ドの 変 位 挙 動 ・ …
35.2打 抜 き 破 断 振 動 量 の 影 響 因 子 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ …
3.6結 言 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ …
第3章 参 考 文 献 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ …
〆001(∠ll 121 つ﹂つ﹂(∠(∠14■■ /00ノ(∠(∠1¶■■ 0ノー(∠弓﹂﹂■■1 (∠(∠つ32Jll 4‑/0つ﹂つ﹂¶■■1 731
第4章 ク ラ ン ク サ ー ボ プ レ ス の 打 抜 き 振 動 解 析 と そ の 能 動 的 振 動 制 御 に よ る
打 抜 き 振 動 の 低 減 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ …
4.1緒 言 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ …
4.2ク ラ ン ク サ ー ボ プ レ ス の 打 抜 き 振 動 解 析 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ …
4.2.1解 析 モ デ ル''''''''"
42.2解 析 条 件 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ …
42.3評 価 の た め の 実 験 方 法 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ …
831 39404043唱lll11
4.3解 析 モ デ ル の 妥 当 性 評 価 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ …
4.3.1解 析 結 果 ・ ・ …
4.3.2実 験 結 果 ・ ・ ・ …
4.33解 析 結 果 と 実 験 結 果 の 整 合 性 の 検 証 ・ …
4.3.3.1打 抜 き 時 の 破 断 振 動 量 ・ ・ …
4.3.3.2ス ラ イ ド変 位 の 構 成 因 子 ・ ・ ・ …
4.4能 動 的 な 打 抜 き 振 動 制 御 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ …
4.4.1打 抜 き 振 動 制 御 の 方 法 ・ ・
4.4.2打 抜 き 振 動 制 御 の 効 果 の 予 測 ・
4.4.3打 抜 き 振 動 制 御 の 実 証 実 験 ・
4.4.4打 抜 き 振 動 制 御 に 関 す る 考 察 ・
4.4.4.1打 抜 き 振 動 制 御 に よ る 振 動 低 減 効 果
4.4.42解 析 結 果 と 実 験 結 果 の 比 較 検 討
4.5結 言 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ …
第4章 参 考 文 献 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ …
0/0/4‑4‑i■■1 (∠4‑4‑︽﹂︽﹂戸)4■■ll 湘4〆0〆0︽﹂︽﹂くJ14■■1 81︽4/Oll 6つ6つ4‑/0∠0/Ol¶■■1 〆0弓1∠0∠0
¶■■¶■■
第5章 結 論 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ …
5.1本 研 究 の 結 論 ・
5.2本 研 究 の 意 義 と 今 後 の 展 望 ・
5.2.1学 術 的 意 義 と今 後 の 展 望
5.2.2工 業 面 で の 今 後 の 展 望
● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ●
861 961 271 271 471
謝辞
記 号一 覧
打抜 き,被 加 工材
V:打 抜 き速度(破 断直前 のスライ ドまたはパ ンチ の降下速度)[rms]
V、:カ ウンタパル ス速度(時 間帯t、、〜tceの ス ライ ドまたはパ ンチの平均速度)[mm/s]
pl:加 工開女籠 置(外 乱開始位 置)[㎜]
p2:噺 蝟(外 乱解 馳 置)[㎜]
p3:破 断直後(外 乱解 除直後)の 振 動の最下位 置[㎜]
tl,t2,t3:打 抜 き に お け るpl,p2,p3の 時 刻[s]
t、,:カ ウ ン タ パ ル ス の 開 始 時 刻[s]
tce:カ ウ ン タ パ ル ス の 駆 動 中 に お け るp3の 時 刻=t3[s]
tb:打 抜 き 時 間(外 乱 入 力 時 間)=tlか らt2ま で の 時 間[s]
lb:打 抜 き 聯(plか らp2ま で の 星騰)[㎜]
lb亡:破 断 振 蝿(p2か らp3ま で の 足騰)[㎜]
Rm:引 張 強 さ[N/mm2]
A50mm:破 断 伸 び(標 点 問 距 離50mm)[%]
力 学 モ デ ル
m、,m,:ク ラ ウ ン,ス ラ イ ドの 質 量[kg]
c、,c、:ク ラ ウ ン,ス ラ イ ドの 減 衰 係 数[N・s/m]
k、,k,:ク ラ ウ ン,ス ラ イ ドの ば ね 定 数[N/m]
Zf、:操 作 量uに よ る ク ラ ウ ン 単 体 の 変 位[m]
Zf、:操 作 量uに よ る ス ラ イ ド単 体 の 変 位[m]
Zs:ス ラ イ ドの 変 位(Z,=y=Zf,+Zf、)[m]
制 御 モ デ ル
γ:目 標 値(ス ラ イ ドの 目標 位 置)[m]
y:制 御 量(ス ラ イ ドの 実 際 位 置)[m]
e:偏 差(e一 γ一y)[m]
u:操 作 量(ス ラ イ ドの 推 力)[k岡 d:外 乱(加 工 荷 重)[kN]
tb:外 乱 入 力 時 間(打 抜 き 時 間)=tlか らt2ま で の 時 間[s]
t、:外 乱 整 定 時 間[s]
tL:む だ 時 間[s]
C:制 御 部 の 伝 達 関 数
kp,kl,kD:PID制 御 の 比 例 ゲ イ ン 値,積 分 ゲ イ ン値,微 分 ゲ イ ン値 P、,P、:ク ラ ウ ン,ス ラ イ ドの 伝 達 関 数
第1章
序論
第1章 序論
本論文 は,サ ー ボプ レスの打抜 き振動 の解 明 とそれ に基づ く振動低減手法 につ いて論 じる ものである.本 章 では,ま ず サー ボプ レスの現状 な らび に研究 の動機 につ いて述べ る.次 に, 打抜 き振動 に関す る先行研究 を概観す る.そ して,先 行研究 と本論文 の位置 関係 を明 らかに
した上 で,研 究 の 目的 と論文 の構成 を述べ る.
1.1サ ーボプ レスの現状
近年,中 国に代表 され るアジア諸国の経 済 ・産業の発 展 に伴 い国内産業構造 の変革は著 しい.
これ に伴 い,国 内の製造業界 では高機能製 品,高 付付加価値 製品の研 究開発 が進 んでい る.プ レス加 工業界において も従 来にない椥 口工材 の加 工1'1)'1'2)や微細部 品の成形1'3"1'5)などの高度 な工法開発 が求め られ てい る.
この よ うな状 況の 中,サ ーボプ レスは我 が国で開発 されたプ レス機械16)'1'10)である.世 界 最初 の汎用 の機械 サーボプ レスは,1997年 に太 陽工業株式会社 とコマツ産機株 式会社 が,当 時の通産省 の創 造技術研 究開発 事業の助成 を受 けて共同開発1'7"1'9)した2軸 のね じ駆動 サー ボ プ レス(定 格加圧 力800kN)で あ る と考 え られ てい る1'10).その外観 とサー ボモ ータに よる駆 動機構 をFig.1・1に示9".こ の機械 の特徴 は,液 圧 プ レス並 みのス ライ ド動作 の 自由度 を有す ると同時に,機 械 プ レス並み の生産 性を有す る ことであ る.加 えて,加 工荷重 に よるプ レス フ レームの伸 びや偏 心荷重 な どに よるス ライ ド位 置のず れ を左右 に設 置 された リニアゲー ジに よ り検 出 し,フ ィー ドバ ック制御 に よ り修正す るとい う高精度 な位置決 め方式 を実現 していた.
この機械 は伝 統的なプ レス機械 の概 念 を刷新す る画期 的な もので あったため,こ の年 以降,各 社 か ら機械 サーボプ レスが相 次いで販 売1'11ト1'16)された.
L 圏
(a)Apperarance
Ballscrew
Slide
Fig・1'1
Servomotor
/
(b)Mechanism
Screwdriveservopressdevelopedin1997
\
LinearGauge
l‑9)
2002年 に な る とFig.1・2に 示 す ク ラ ン ク機 構 の 汎 用 サ ー ボ プ レス1‑17ト1'19)の販 売 が 開 始 され 中 小 企 業 へ の 普 及 が 進 み 始 め た.2007年 に は 日本 金 属 プ レ ス 工 業 協 会 と 日本 塑 性 加 工 学 会 の 共 催
で サ ー ボ プ レ ス 利 用 技 術 研 究 委 員 会 が 設 置1'20)'1'21)され た.2009年 に は サ ー ボ プ レス の 安 全 要
求 事 項 に 関 す る 皿S1'22)が制 定 さ れ,実 用 図 書1'23)も発 行 され て い る.ま た,業 界 誌 「プ レ ス 技
術 」 で は2001年 に 最 初 の サ ー ボ プ レス 特 集1'24)が組 ま れ,2006以 降 は 毎 年 特 集 が 組 ま れ て い る.そ して,2011年 に は機 械 プ レス の 出 荷 額 の50%超 は サ ー ボ プ レス とな っ て い る1"25).現 在 で は,サ ー ボ プ レ ス は プ レ ス 加 工 業 界 に 十 分 普 及 し て い る.
1‑18)
(a)Appe㎜nce
Servomotor
Gear
/
Crankshaft
/
/Slide
\B。1ster
1‑19) (b)Mechanism
Fig.1'2Crar皿(servopressdevelopedin2002
L2サ ーボプ レスの概 要 1ユ1プ レス加 工 とプ レス機 械
プ レス加 工にはFig.1・3に示す よ うにせん断加 工,・薄板成形,圧 縮加工 な どがあ り,電 気製 品や 自動車 な ど様 々な金属部 品の量産手段 として欠 かせ ない加 工法 である.本 研究 が対象 とす る打抜 き(Blan】dng)は,せ ん断加 工の一形態 であ り,ブ ランク(Blank)と 呼ばれ るプ レス加 工品の素板 を得 る際に欠 かせ ない加 工であ る.プ レス加 工はプ レス機械 と金型 と呼ばれ る工具 に よって行 われ る.金 型 は上型 と下型 で対 をな している.
プ レス機械 は,2個 以上の対 をなす 工具(金 型)を 用 い,そ の間に材料 を置 いて,工 具に よ って材料 に強 いカ を加 える ことによって成形加 工す る機械 であ る1'26).Fig.1・4の左 図のプ レス 機械 に示す よ うに,工 具 問に発生 させ るカ の反力 は,機 械 フ レーム 自体 で支 え るよ うに設計 さ れ てい る.こ の加 工時に発生す る反力 は,打 抜 き破 断時には瞬時に開放 され るため機械 フレー ムは大 き く振動す る.こ の振動 はプ レス加 工にお ける課題 の一つ であ り,被 加工材 の高弓鍍 化 が進む たび に問題 点として浮上 している.こ の問題 を論ず る上 で,プ レス機械 の振動 を解 析す る際 には,プ レス加 工に伴 う反力 が機械 フ レームで支 え られ ている ことは,重 要 な前提事 項 と なる.な お,反 力 をフ レー ムで支 えない機 械 として は,Fig.1‑4の 右 図に示す よ うにハ ンマ と呼 ばれ る鍛造機械 があ る.プ レス機械 は,ス ライ ドをクラ ンク機構 な どで機械 的に駆動す る機械 プ レス と,液 圧 で駆動す る液圧 プ レスが ある.こ のこ とか ら,サ ーボプ レス も機械 サーボプ レ ス と液圧サー ボプ レスに大別 され ている.
Pressworking
Sharing
Sheet f()rming
Pressure f()rming
Fig・1'3
黛B 9ぜt血9
VV"BendingfiS))u‑Bending
Drawingof
㊥CupPingθiπegula「shapedpa「ts
eFianging
Colnlng
@
◎Bumng
Upsetting
9一 ⑨
1‑27)
MajorElementsofpressworkng
舎▲響1・11■
凸 ▼
■■国 1
τ←●1 ﹁
﹄
r ー
▲‑ ﹄ 1印
■■
▲響■1■■
凸 ▼
1
Pressmachine
〆'ψ,† 陶、 、 、 Hammer
1‑28)Fi g.1‑4Pressmac■meandhammer
1.2.2サ ー ボ プ レス の 定 義
サ ー ボ プ レ ス が 開 発 され た 当 初 は,メ ー カ 各 社 が 独 自の 呼 称 を 用 い て い た.サ ー ボ プ レ ス
とい う呼 称 に 統 一 され た の ば2004年 度 に 日本 鍛 圧 機 械 工 業 会 が 設 置 し た 委 員 会1'29)に よ っ て で あ る.そ の 後,同 工 業 会 の 技 術 報 告 闘 を 経 て,前 述 し た サ ー ボ プ レ ス に 関 す る規 格
JISB6410:2009プ レス 機 械 一 サ ー ボ プ レス の 安 全 要 求 事 項1'22)が制 定 され て い る.本 論 文 に お い て もサ ー ボ プ レ ス の 定 義 を 上 記 皿Sに 従 いTable1‑1の とお り とす る.
Tablel‑lDefinitionofservopress
用語 定義
サー ボシステ ム ス ライ ドを作動 させ るサーボモー タ,サ ーボア ンプ,フ ィー ドバ ック 用検 出器,電 気制動装置及 び制御装 置(コ ン トロー ラ)を 含 めた体系 サー ボプ レス サー ボシステ ムに よってス ライ ドの作動 を制御 す る機 械 又 は液圧 プ
レス
機械サー ボプ レス サー ボモー タの動 力 をクラ ンクな どの回転式機構 又 はボールね じな どの直動機構 によってス ライ ドに伝 達す る構造のサー ボプ レス 油圧サー ボプ レス サー ボモー タの動 力 を液圧 に よってス ライ ドに伝 達す る構 造 のサ ー
ボプ レス
サー ボプ レス とサーボシステ ム との関係例 をFig.1‑5‑1に 示す.(a)はサーボシステムか ら供 給 され る動力 を送 りね じに よる直動機構 に よってス ライ ドを作動 す る機械 サー ボプ レスを 示 してい る.(b)は サー ボシステムか ら供給 され る動力 で回転す るポンプか ら得 られ る液圧 に よってスライ ドを作動す る液圧サー ボプ レスを示 している.い ずれ も,ス ライ ドの作動 がサ ー ボシステ ムに よって任意 に制御 され ることが伝統 的なプ レス機械 と異 なる点 である.
一般 にサー ボプ レスに よる打抜 きでは
,生 産性 が重視 され るため機械 サー ボプ レスが使用 され る.本 研 究 が 打 抜 き を対象 とす る理 由 につ い て は 後 述 す る.液 圧 サ ー ボ プ レス は機 械 サ ー ボプ レスに比べ て大 きな加圧力 の発生 と加圧力 の制御 が可能 であ る.そ の反 面,生 産速度
を速 くできない ことか ら,主 として大型 のパネル成形,大 荷 重 を必要 とす る鍛 造,長 いス ト
■
昌,白1
Crown Servo
motor 〈 Servoampli且er ← Controller
II
Positionsignal
(
..
\
lll A
Slide コ
一
一=
\Positiondetector
Bolster
甲 胃
(a)Mechanicalservopress
Hydraulicbrake mechanism
Servo amplifier
Servo motor
Pump
Hydrauliccylinder
Positiondetector
1‑22)
(b)HydrUliCSerVOpreSS
口El・m・nt・f・erv・ ・y・t・m
[]El・m・nt・fmech・nical・tru・tu・e
Fig・1・5・1 Exampleofasystemconfigurationofservopress
ロー クが必要 とな る深 絞 りな どの分 野で用い られてい る.以 降,本 論文 では機械 サーボプ レ スは単に"サ ーボプ レス"と表記 し,液 圧式 の ものは"液圧サー ボプ レス"と表記す る.
L23ス ライ ド位 置 の制御 方式
サーボプ レスのス ライ ド位 置の制御 は,大 別 す る とフル ・ク ロー ズ ド・ルー プ制御方式 と セ ミ ・クローズ ド ・ルー プ制御方式 の二つ の方式 が採用 され てい る.Fig.16・2は 両者 の方 式 を比較 した もので ある.(a)の フル ・クロー ズ ド ・ルー プ制御方式 は,ク ラウン部 の変位 を含 めたス ライ ド変位 を位 置セ ンサで監視 してい るので,加 工時のス ライ ド位置精度 が良い.こ れ に対 して,(a)の セ ミ ・クローズ ド ・ルー プ制御方式 は,ス ライ ド位置 は測 定せず サーボモ
ー タの回転軸 の角度 をス ライ ド位 置 とみな して制御 してい る.こ のため,こ の方式 は制御応
答性 が比較 的早 く,価 格 も安価 で もあ り普及 量が多い.そ の一方 で クラウン部 の変位 は監視 していないた め,加 工荷重 に伴 い生 じるクラウン部 の伸縮 はそのままス ライ ドの位置ずれ と な る.た だ し,フ ル ・クローズ ド ・ル ープ制御方 式におい も急激 な加 工荷重 の発 生または消 滅 の直後は,制 御応答 の遅れ に よるス ライ ドの位置 ズ レが生 じることは大な り小 な り避 け ら れ ない.
7
re110廿nOC アm紀聯㎞oo叩10dselo恥画
②
Controller
(b)Semiclosedloopcontrolsystem
Fig.1・5・2Comparisonofslidelocationcontrolsystemofservopress
1.2.4サ ー ボ プ レス の ス ラ イ ドモ ー シ ョ ン
サ ー ボ プ レ ス は,従 来 の 機 械 プ レ ス で は 不 可 能 で あ っ た ス ラ イ ドの 速 度 や 位 置 を 制 御 す る こ と が で き る.こ れ に よ り,任 意 の位 置 で の 加 速 ・減 速 や 下 死 点 で の ス ライ ドの 加 圧 保 持 な ど が
可 能 と な っ た.上 下 動 す る ス ラ イ ドの1工 程 中 の 動 作 を 示 す 言 葉 と して は,ス ラ イ ドモ ー シ ョ ン とい う用 語 が 用 い られ て い る1'10)・1'31ト1'35).スラ イ ドモ ー シ ョ ン は,一 般 に ス ラ イ ド位 置 一 時
間 線 図 で 示 され る.Fig.1・6は 従 来 の 機 械 プ レ ス と サ ー ボ プ レ ス の ス ラ イ ドモ ー シ ョ ン を比 較 し た 例 で あ る.Fig.1‑6(a)の 従 来 の 機 械 プ レ ス は,ク ラ ン ク 機 構 に よ る 固 定 的 な ス ラ イ ドモ ー シ ョ
ン を 示 し て い る.Fig.1‑6(b)の サ ー ボ プ レス は,加 工 開 始 時 に は 低 速 度,下 死 点(BDC)で は 一 定 時 間 停 止 す る よ うに 設 定 され た ス ラ イ ドモ ー シ ョン を 示 し て い る
.Fig.1‑7に ス ライ ドモ ー シ ョ ン の 例 を 示 す.① の 上 段 は 低 騒 音 加 工 を 意 図 し た 打 抜 き 加 工 で,下 段 は 生 産1生を 意 図 した
ク ラ ン ク 軸 の 振 り子 運 動 に よ る打 抜 き の シ ョー トス トロー ク 加 工 の 例 で あ る.② は シ ョ ッ ク ラ
イ ン の 低 減 と成 形 速 度 の 最適 化 を 意 図 し た 成 形 加 工 の 例 で あ る.③ は 形 状 凍 結 性 の 向 上 を 意 図 し た コイ ニ ン グ 加 工 の 例 で あ る.
ス ラ イ ドモ ー シ ョ ン の 任 意 設 定 機 能 に よ り,サ ー ボ プ レ ス に よ る加 工 で は 加 工 法 の 自在 性 が
格 段 に 高 ま り,従 来 に な い 高 度 な 塑 性 加 工 が 実 現 さ れ る よ う に な っ た.た と え ば,繰 り返 し加
圧 モ ー シ ョ ン に よ る 自動 車 用 高 張 力 鋼 板 の 形 状 凍 結 性 の 向 上1'36),ス ライ ドモ ー シ ョ ン の 最 適
化や周辺機器との同期機能による世界最速の車体パネル成形用のサーボプレスライン1阻 三
次元サー ボプ レス装置 に よる燃料噴射弁へ の微細傾 斜 穴加 工1'38)などが実現 され てい る.す な わち,サ ー ボプ レスは,我 が国の製造技術 の高度化 に欠 かせ ない存在 となってい る.Fig.1'8は, 上記 の背景 にお けるサー ボプ レスの位置づ けを概念 的に表 した ものである.こ の図は,工 業分 野 にお ける中国や東南 アジア諸 国の台頭 に伴 い,国 内製造業 には高機能 ・高付加価値部 品の製 造 に関す る要求 が高まってお り,サ ー ボプ レスは製造技術 の高度化 に欠 かせ ない機械 の一つ と なっている ことを示す.
T.D.C:Topdeadcenter B.D.C:Bottomdeadcenter
T.D.C→
o℃=︒︒編o口o遅︒︒o角
B.D.C→
Time
(a)Conventionalmechanicalpress
Time
(b)Servopress
Fig.16 Cornparisonofslidemotion
Typeofpressworking
①
BlanlCing
黛
②
Drawing
㊥
③
Coining
@
Low‑speedblanking
Shortstrokeblanking
Softcontact&
Deepdrawing
Coining&
Holdingofpressload
Slidemotion
Blankingzone
T.D.C‑>
B.D.C‑>L.〕 〔.〕
/
Blankingzone Contactpoint
Drawingzone/[二
Coining 竺
} Holdingofpressload
Effects Reductionofblankingnoise
Improvementoftoollife
㎞provementofthe productivity
Improvementofashockline
k皿provementofforminglir皿it
Improvementoftheprecision ofproducts
Fig.1'7Exampleofslidemotionusingservopress
Needsfromindustry
(a)Highproductivity (b)Highlypreciseproducts (c)Highvalue‑addedproducts
合 合
̀̀Servopress,,is̀̀akey,,ofthe advanceofpressingworking
合
Developedpressworkingmethodusingservopress
Example(a)
=Panelforminglinefastestintheworldi‑37)
Example(b)
ニPreciseformingofhightensilesteeli'36)
Example(c)
=Minuteslantingholeforinjectori'38)
Flexibleslidelnotionusing se「vop「ess
Slidemotionofrepeat
comp「esslonuslngse「voP「ess
CNCthree‑dimensional presssystemuslngservopress
Fig.1・8Positionofservopress血presswor㎞g
13ス ライ ドモーシ ョンの最適 化 にお け る問題 点
サー ボプ レスの普及 は,プ レス生産技術者 の職 務に変化 を もた ら した.サ ー ボプ レスでは加 工プ ログラムの作成作業,す なわちスライ ドモー シ ョンの設計1'39)'lz"))が必 要 とな ったか らで ある.Fig.1・9‑1はス ライ ドモー シ ョン設計 の一例で ある.ス テ ップ1はv曲 げにおけ る接 触傷 の防止,ス テ ップ2は 成形 中の破断や温度上昇 の抑制,ス テ ップ3は 下死点 での形状凍結性 の 向上,ス テ ップ4は 上昇 時の板材 の跳 ね上が り防止 を考慮 した例であ る.し か し,む や みにス テ ップを増やす と生産性 は低 下 して しま う.し たがって,サ ーボプ レスの生産技術者 は品質 と 生産性 の双方 を考慮 して最適条件 を決 定 しなけれ ばないが,こ の点 に関す る ノウハ ウや情報 は ほ とん ど未整備 であ ることか ら,多 くの場合,経 験や勘 に頼 らざるをえない.伝 統 的プ レス機 械 の運用条件 の設定事項 が,ダ イハ イ ト(ス ライ ドの下死点位 置)と 毎分 の回転数 であった こ
とと比べ る と大 きな変化 であ る.以 上が,ス ライ ドモー シ ョン設計 の困難性 で あ り,問 題 点で
Q℃咽︻gり頬Od[O刷りσ3QO︑H
(T・D・C)
(B・D・C)
Time
湯 場 赫 励
ContactPresslngHoldmgRelease
(a)Slldemotion(b)Program
Fig.1‑9‑1Example・fadesign・fslidem・ 廿・nf・r・̀V‑bend血9"ト23) Step
Locatlonof sllde [mm]
VelOClty ofslide [mm/S]
Time [s]
0 350 一 一
1 310 200 一
2 308 10 一
3 300 50 0.5
4 302 10 一
5 350 200 0.3
ある.プ レス加 工業界 はスライ ドモー シ ョンの最 適化 のための指針や根拠 を求 めてい る.
このため,公 共職業能力 開発機 関の一つ であ る高度職業能力 開発促進セ ンター では,プ レス 加工業界 か らの要望 を受 け,2001年 にFig.1‑1と 同 じサーボプ レス を整備 し,2002年 か ら在 職者 向け講習会 「サーボプ レス利用技術」 を開設 している 團).こ れ は,サ ー ボプ レスの効果 的な運用 を 目的 とした 日本最初 の職業 訓練 コー ス142)である.
そ の訓練 コー スでは毎 回,各 種ス ライ ドモー シ ョンの効果検証実験 を行 ってい る.開 設 当 時は,自 動 車用高張力鋼板 の打抜 き騒音が 問題化 しつつ あった ことか ら実験 の一つ と して, 打抜 き騒音対策 の検証実験 を行 っていた.そ の実験 は2002年 に山形 ら143)'lz■)によって報告 され た,破 断直前 に低速度 で打抜 く と騒音 が低減す る とい う現象 を検証す るものであった.
この訓練 コー スの担 当者 の一人 であった村上 は打抜 き騒音 の低減現象 を追認 できた ことを 報告 してい る141)'145).Fig.1ρ2ば この とき村上が用いた低騒音 を意図 した低 速度打抜 き のスライ ドモー シ ョンの例 である.こ のモー シ ョンでは,ス ライ ド速度 を低速度 に切 り替
⑪ (T・D・C)
口口国 C
D
B
O零禺oo﹄O口O仁宙OO日
◎
鬼
Sheared suエface
4 Step
L⑪cation⑪f 呂11de [皿 皿]
Ve1⑪city ofslide
【1皿m/s]
0 350.o 一
1 3105 150
2 301⑪ 0.5
3 300⑪ 150
4 350⑪ 150
T血o
(a)Slidemotio皿(b)Program
Fig.1・9・2Exampleofadesignofslidemotionf()r̀̀Lowspeedblan㎞g"
えるステ ップ1の スライ ド位置 と,ス テ ップ1か らステ ップ2の 区間のスライ ド速度 を決 定 す る必要 がある.こ の区間 をlmln/s程 度 の十分遅 い速度 にすれ ば軟鋼板や純銅板 では顕著 に 打抜 き騒 音が小 さくなる ことが確認 され た.た だ し,こ のス ライ ドモ ーシ ョンでは生産性 が 極端 に低下す るため,ス ライ ド位置や速度 の最適化 を図る必要 があ る.
しか し,山 形 らは主に油圧 サーボプ レスを用 いた実験結果 に基づ き,破 断荷重 の低下 が騒音 低減 の要因であ ると推測 していたのに対 し,前 述 の村 上 らの実験結果(ね じ駆動式 の機械 サー ボプ レス)で は,低 速度 での打抜 きにお ける破 断荷 重の低 下は銅や 軟鋼板の軟質材 で も20%
程度,SUS304で はほ とん ど認 め られ なかった.そ れ にも関わ らず,程 度 の差 はあったがSUS304 で も騒 音の低減 が認 め られ た.こ れ は,打 抜 き破断 に伴 うプ レス構造部 の急激 な弾 性回復 が打
抜 き騒 音の源 であ る とす る従 来の理論146)'147)では説 明がつ かなかった.こ のため,低 騒 音を 確保 しつつ生産性 の低 下 を最 小に とどめるた めの最適 なステ ップ1の ス ライ ド位 置や ステ ッ プ1か らステ ップ2の 区間のス ライ ド速度 を決 定す るこ とがで きず,ス ライ ドモ ーシ ョンの最 適化 に取 り組 む うえでの問題 点となった.
この こ とは,サ ーボプ レスでは未知 の因子 が打抜 き騒音 ・振動 に影響 を与 えてい るのではな いか とい う着想 を得 るきっか け とな り,サ ーボプ レスの打抜 き騒 音 ・振動 に関す る研究 を開始 す る動機 となった.な お,上 記 の低騒 音(低 振動)の ための打抜 きス ライ ドモ ーシ ョンの最適 化 の問題 については,本 論文 の第3章 の 中で検討 を行 ってい る.
1.4先 行研 究
1.4.1打 抜 き振 動 に関す る問題 点
プ レス打抜 きに伴 う振動は,金 型 の工具摩耗 を助長148)するだけでな く騒 音源 とな るため, 聴覚や 自立神経 系の不調 な ど人体 に影響 を及 ぼす149).こ のため古 くか ら製造現場 では各種 の対策 が講 じられ てい る1'50)'1'51).近年 は,自 動 車部材 として高張力鋼 板 の使用 が増加 して お り,加 工荷重 の増大 に伴 う振動 ・騒音 の増大 が新 たな問題 となっている.2005年 に 日本
鍛圧機械工業会 が行 った調査1'29)では,サ ー ボプ レスのユーザー企業23社 中6社(26%)が 振動 ・騒音対策 をサー ボプ レスの導入 目的の一つ として答 えている.す なわ ち,打 抜 き振動 ・ 騒音 は古 くか ら現在 に至 るまで問題 であ り,工 具寿命 の観点 では振動 の低減 が求 め られ てお
り,人 体へ の影響 の観 点では騒音 の低減 が求 め られ ている.
以上 の背景 か ら,機 械 プ レスの打抜 き騒音関す る研 究 は早 くか ら着手 されてい る.サ ーボ プ レスの機械構造部 は従来 の機械 プ レスの構造部 をほぼ継承 してい るので,機 械 プ レスの機
械構造部 に生 じる騒音や振動 は,サ ー ボプ レスにお いて もほぼ同様 に存在す ると考 え られ る.
したがって,そ の研 究成 果は,サ ー ボプ レスの打抜 き振動 を解 明す る うえで重要 な1青報 を与 えて くれ る.こ こで は,本 研究 を進 め る うえで参考 にな ると思 われ る機械 プ レスにお け る打 抜 き振動 と騒 音の関係,打 抜 き振動 の解析,打 抜 き振動 の低減,並 びにサーボプ レスにおけ る打抜 きな どに関す る研究 を概観 し,こ れ までに得 られ てい る重要 な知見 をま とめる.
1.4.2機 械プ レス にお ける打抜 き振動 と騒 音の関係に関す る研 究
騒音 の発生原 因は二つ に大別 され る.第 一 の原 因は振動す る物体 が これ に接 した空気 に振 動 を与 えて音波 を発生す る ものであ り,第 二の原 因は静止空気 中に気流 が噴 き出す よ うな場
合 に空気 中に渦や乱れ が誘発 され るものであ る1'52).プ レス加工現場 での圧縮空気 の排気音 に よる騒音 な どは後者 に該 当 し,打 抜 き騒音は前者 に該 当す る.プ レス打抜 きでは材料破 断 時に大 きな振動音 が生 じる.こ れは一般 にブ レー クスル ー現象 として知 られてい る.プ レー
クスルー とは,加 工荷重に よ りフ レー ムな どの機械構 造部 に蓄積 された弾 性エネル ギが,被
加工材 の破 断に よって瞬時 に開放 されパ ンチ がダイに突入す る現象1'46)'1'53)であ る.ブ レー クスルー の前後 にお ける加工荷重 の振動 とパ ンチや スライ ドの振動,お よび打抜 き騒音 との 関係 につい てば これ らを同時 に観 測 した報告が多数 み られ る1'54)"1'58).Fig.1‑10・1はブ レー クスルー の一般 的解釈 と実際 の打抜 きの観察 に よ りそれ を照合 した事例 である.
打抜 き騒音 の具 体的な騒音源 と して,呉1'59)は 機 械プ レスの衝撃 音 の多次元 スペ ク トル 解 析 の結果 か らスライ ドや フ レー ム,金 型 の振動が主な騒音源 で あるこ とを示 してい る.山 本 ら1'60)・161)はCフレー ムのパ ンチプ レスにお ける音響モー ド解 析を行 いCフ レームの 口開 き振動(す なわ ちス ライ ドーボルス タ間の振動)が もっ とも大 きな騒音源 であ ることを示 し てい る.
す なわち,機 械 プ レス にお ける打抜 き時のブ レー クスルー に伴 う機械 構造系の振動は,打 抜 き騒音 の主要 な音源 となっている.