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博士論文要約

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Academic year: 2021

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博士論文要約

子どものEnd-of-Life Careに携わる看護師達が語り合う会を通して起こした変化

伊藤 久美

1. 背景

子どもの End-of-life Care に携わる看護師達は、「再発やターミナル期の先にある死を 考えると心が折れる」という思いの中、懸命にケアしていても「自分の技術がもっと獲得 できていれば子どもを救えたのではないか」と知識や技術の不足を感じていた。そして「本 当に子どもや家族が必要としていたケアができたか自信が持てない」、「何もできなかった」

という、無力感に陥るような体験につながっていた。また、小児看護を続けていきたいと いう思いを断念することも少なくない現状がある。

この様な状況に陥らないためには、子どもや家族に対して逃げずに向き合い、積極的に ケアを行い充実した最期が迎えられた時、看護師として良かったと思える体験になる、こ の肯定的気づきがストレスの緩和につながり、看護師としての成長も促すことができると いう報告がある(荒川, 2010, 2011; 大西, 2009; 平沢他, 2003)。そのための実践への示 唆として、医療者同士のカンファレンスを重ね、価値観の統一や思いの共有の必要性など が報告されている。しかし、どのタイミングでどのようなプロセスを踏めば、自身が実践 したケアを肯定的に捉え達成感を得るなど、看護師の成長につながるような変化をしてい けるのか、明らかにされた研究はほとんど見当たらなかった。

そこで、こうした困難を抱える看護師達とともに、語り合う会を通して、子どもの End-of-life Care を肯定的で、達成感が得られるような実践に変化させるアクションリサ ーチに取り組むことにした。

2. 目的

本研究は、アクションリサーチの手法を用いて、子どものEnd-of-Life Careに携わ る看護師達が、ともに語り合う会(以下、『語ろう会』)を行うことで、子どもの

End-of-Life Careに対する意識や捉え方、実践がどのように変化していくのか、起こ

る変化とそのプロセスを記述し明らかにすることを目的とした。

3. 方法

本研究のデザインは、研究者と参加者がともに現場における問題を明確にし、可能な解 決策を探るために行う協働的介入であり、実践改善の意図を持って始まるアクションリサ ーチを用いた質的記述的研究であった。本研究の主要なアクションは、『語ろう会』であっ た。研究参加者は、子どものEnd-of-Life Careに携わる看護師19名であり、小児看護 経験年数9か月~20年以上だった。データ収集は、参加者達が記載したジャーナルと、

『語ろう会』の逐語禄であった。データ分析は、参加者達が子どもの End-of-Life Care に対する意識や捉え方、実践がどのように変化していくのか、参加者個人、会の中で起こ った変化、会を通して変化してきたことなど、時系列に分析し変化のプロセスを記述した。

倫理的配慮は、平成 25 年度首都大学東京荒川キャンパス研究安全倫理委員会(承認番号 13047)と研究施設の臨床試験審査委員会(承認番号 2013030)から承認を得た。その後、

調査を実施した。研究施設、研究参加者に対する研究依頼は、文書を用いて説明し同意を

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得た。

4. 結果

会の開催当初の参加者達は、End-of-Life Care に対してネガティブな捉え方をしていた。

しかし、会の中で自分の正直な感情を吐き出し、参加者同士で様々な思いを共有できると、

「間違ってなかった」「やって良かった」など、徐々に自分の意識にも変化が起こることが 分かり、語ることの大切さや、語り合う場の必要性を感じ始めた。そして、語り合いを繰 り返す中で、悩んで動き出せない状況から、スイッチが入ったように子どもや家族にタイ ムリーなケアを提供し、そしてこの実践は、子どもが亡くなった時でも、「思ったことはや れた」という実感につながっていた。さらに、回を重ねるごとに『語ろう会』は、困って いることなど何を話しても良い、違う意見も受け入れられ否定されないなど、経験年数も 関係なく自由に語ることができる場として浸透し始めていた。このような自由に語り合え る場の中で、悩みは受け入れられ、ともに考えながら悩みの塊をほぐす、そこから新たな 具体的ケアを生み出し、実践するという流れができ始めていた。そして参加者達が起こし た実践は、参加していない他のスタッフの意識や実践にも波及していたことが明らかにな った。

5. 考察

子どもが End-of-Life にある時に、看護師同士が語り合う意味は、残された時間の中で、

タイミングを逃さず、そして子どもや家族が納得できるケアを提供することにつながる。

そしてこの実践が、看護師として出来たこともあったという実感になり、子どもが亡くな った後も、後悔ばかりが残る今までの状況とは大きな違いになると考えられた。

そして『語ろう会』は、経験年数の壁はなく安心して語り合える雰囲気があり、また自 由な参加方法、ルールに縛られない会の進行など、参加者達の力で自由度の高い語り合い の場を作り上げられたと考えられた。

このような自由に語り合える場の中で、参加者達は変化を生み出していたが、そのきっ かけは、「できないことも受け入れられた」、「気付くということ」、「分からないことがあっ てもいい」という、看護師としてのこうあるべきという今までの価値観とは違う考え方を 見つけたこと、そして、「いいね、すごいね、やってるね」という支持的な反応があり、「参 加者皆で考える」ということであると考えられた。

そして、このようなきっかけを通し、徐々に子どもの End-of-Life Care に対する意識や 捉え方、実践は変化しており、それは、参加者達が目指した、肯定的で達成感が得られる ような実践に変化させる、というプロセスを辿っていたことが推察された。

子どもの End-of-Life Care に携わる看護師達には、語り合える場は必要不可欠であり、

日々の業務の中でも語り合える場を作ることは重要である。

参照

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