S L E
全身性エリテマトーデス
と
診断
を
受
けた
患者
さんへ
編集協力 北海道大学大学院医学研究院 免疫・代謝内科学教室(内科Ⅱ) 准教授保田 晋助
先生全身性エリテマトーデス(SLE)は患者数が少なく、治療 法の確立が難しいことから「難病」に指定されています。 かつては命にかかわることも少なくない病気でしたが、 現在では治療法が進歩して、長く付き合うことになる 病気に変わってきています。 この冊子では、SLEの病態とその治療法をまとめました。 SLEという病気をより理解していただくために、ご活用 ください。 全 身 性 エリテ マトー デ ス
SLE
に つ い てSLE
とは 3SLE
の原因
5SLE
の症状
7SLE
の治療
911
Q
&A
13はじめに
もくじ
(参考)日常生活における工夫や気をつけること
全身性エリテマトーデス(SLE)は患者数が少なく、治療 法の確立が難しいことから「難病」に指定されています。 かつては命にかかわることも少なくない病気でしたが、 現在では治療法が進歩して、長く付き合うことになる 病気に変わってきています。 この冊子では、SLEの病態とその治療法をまとめました。 SLEという病気をより理解していただくために、ご活用 ください。 全 身 性 エリテ マトー デ ス
SLE
に つ い てSLE
とは 3SLE
の原因
5SLE
の症状
7SLE
の治療
911
Q
&A
13はじめに
もくじ
(参考)日常生活における工夫や気をつけること
全身性エリテマトーデスは英語でSystemic Lupus Erythematosus といい、その頭文字をとってSLEと呼ばれています。
SLEは、「膠原病」の代表的な病気のひとつです。膠原病は、全身の 血管や皮膚、筋肉、関節などに炎症がみられる病気の総称で、SLEの ほかには関節リウマチなどが知られています。
Systemic Lupus Erythematosusをそのまま訳すと「全身性紅斑性狼瘡」 となります。lupusはラテン語で狼の意味で、狼に咬まれた傷のように 見える皮膚の紅斑がみられることから名づけられました。 日本には、約6~10万人の患者さんがいるといわれています。 SLE患者さんのうち約9割が女性です。特に20~40代で発症すること が多い傾向にありますが、最近はやや高齢化してきています。 子どもや高齢者では男女比に大きな差はありません。 難病情報センター(http://www.nanbyou.or.jp/entry/53 2017/3/6参照)
全 身 性 エ リ テ マ ト ー デ ス
S L E
に つ い て
SLE
とは
SLEは古くからある病気膠原病のひとつ
女性に多い病気
橋本博史.全身性エリテマトーデス 臨床マニュアル.第2版増補.日本医事新報社.2014年11月膠原病
ベーチェット病 など 20以上 全身性 エリテマトーデス 関節 リウマチ 強皮症 シェーグレン 症候群全身性エリテマトーデスは英語でSystemic Lupus Erythematosus といい、その頭文字をとってSLEと呼ばれています。
SLEは、「膠原病」の代表的な病気のひとつです。膠原病は、全身の 血管や皮膚、筋肉、関節などに炎症がみられる病気の総称で、SLEの ほかには関節リウマチなどが知られています。
Systemic Lupus Erythematosusをそのまま訳すと「全身性紅斑性狼瘡」 となります。lupusはラテン語で狼の意味で、狼に咬まれた傷のように 見える皮膚の紅斑がみられることから名づけられました。 日本には、約6~10万人の患者さんがいるといわれています。 SLE患者さんのうち約9割が女性です。特に20~40代で発症すること が多い傾向にありますが、最近はやや高齢化してきています。 子どもや高齢者では男女比に大きな差はありません。 難病情報センター(http://www.nanbyou.or.jp/entry/53 2017/3/6参照)
全 身 性 エ リ テ マ ト ー デ ス
S L E
に つ い て
SLE
とは
SLEは古くからある病気膠原病のひとつ
女性に多い病気
橋本博史.全身性エリテマトーデス 臨床マニュアル.第2版増補.日本医事新報社.2014年11月膠原病
ベーチェット病 など 20以上 全身性 エリテマトーデス 関節 リウマチ 強皮症 シェーグレン 症候群残念ながら今のところはその原因は分かっていません。 ただ、自分自身の体を、免疫系が攻撃してしまう病気であることは 分かっています。 免疫系は本来細菌やウイルスなどから自分自身を守ってくれる大切 な役割をしているのですが、この病気にかかると、免疫系が自分の 体を攻撃するようになり、その結果、全身にさまざまな炎症を引き 起こします。 免疫システムの異常が起きるメカニズムははっきりしていませんが、 家族にSLE患者さんがいる人は、いない人よりも発症しやすいことが 知られています。 しかし、いわゆる遺伝病ではなく、遺伝子が全く同じである一卵性 双生児の2人が、ともにSLEを発症している割合は25~60%程度と いわれています。 遺伝要素だけで発症するものではなく、紫外線や ウイルス感染などの環境要因も発症のきっかけになることが明らか になっています。 遺伝要因と環境要因が積み重なることで、発症しやすい状態になる と考えられています。 難病情報センター(http://www.nanbyou.or.jp/entry/53 2017/3/6参照)
SLE
の
原因
住田孝之.膠原病・リウマチ.改訂第3版.診断と治療社.2013年2月免疫システムに異常
環境要因と遺伝要因によって発症
環境要因
紫外線 月経・妊娠 ウイルス感染 薬剤遺伝要因
疾患関連 遺伝子SLE
の
発症
SLE
の
発症
全 身 性 エ リ テ マ ト ー デ スS L E
に つ い て残念ながら今のところはその原因は分かっていません。 ただ、自分自身の体を、免疫系が攻撃してしまう病気であることは 分かっています。 免疫系は本来細菌やウイルスなどから自分自身を守ってくれる大切 な役割をしているのですが、この病気にかかると、免疫系が自分の 体を攻撃するようになり、その結果、全身にさまざまな炎症を引き 起こします。 免疫システムの異常が起きるメカニズムははっきりしていませんが、 家族にSLE患者さんがいる人は、いない人よりも発症しやすいことが 知られています。 しかし、いわゆる遺伝病ではなく、遺伝子が全く同じである一卵性 双生児の2人が、ともにSLEを発症している割合は25~60%程度と いわれています。 遺伝要素だけで発症するものではなく、紫外線や ウイルス感染などの環境要因も発症のきっかけになることが明らか になっています。 遺伝要因と環境要因が積み重なることで、発症しやすい状態になる と考えられています。 難病情報センター(http://www.nanbyou.or.jp/entry/53 2017/3/6参照)
SLE
の
原因
住田孝之.膠原病・リウマチ.改訂第3版.診断と治療社.2013年2月免疫システムに異常
環境要因と遺伝要因によって発症
環境要因
紫外線 月経・妊娠 ウイルス感染 薬剤遺伝要因
疾患関連 遺伝子SLE
の
発症
SLE
の
発症
全 身 性 エ リ テ マ ト ー デ スS L E
に つ い てSLEでは発熱や倦怠感のほか、皮膚炎や関節炎など全身にさまざまな 症状が現れます。しかし個人差が大きく、症状の組み合わせ、現れる時期、 強さなどは人によって異なります。 SLEは病気の経過のなかで、症状が再燃したり持続したりすることが あります。 この病気の勢いや強さを「疾患活動性」という言葉で表し、異常な免疫 システムが身体を勢いよく攻撃して、全身に炎症を起こしているような 時には、「疾患活動性が高い」と表現します。反対に、攻撃の勢いが 弱く、症状が落ち着いている時は、「疾患活動性が低い」と表現します。 火に例えれば、前者は燃え盛っている状態、後者は炎の勢いがおさ まり、小さくなっている状態です。SLEの病態は、この火が消えること なく、強まったり弱まったりを繰り返していくイメージです。 そのためSLEの治療は、この疾患活動性をできる限り低く抑えて、症状 をコントロールすることを目指して行います。
SLE
の
症状
全身に多様な症状
疾患活動性のコントロールが重要
治療
疾患活動性が高い
疾患活動性が低い
できるだけ この状態を キープ! 前頭部から 頭頂部にかけての脱毛 指が白くなったり、 紫色になったりする (レイノー現象) 口腔、鼻咽腔に 潰瘍ができる 痙攣を起こす、 うつ状態になる ふしぶしが痛む すねに紫斑(あざ)が 出やすくなる 蝶形紅斑 紅い斑点が出る 紅い斑点が出る ループス腎炎 心臓に水がたまる 足がむくむ 全身症状 全身倦怠感、発熱、易疲労感 全 身 性 エ リ テ マ ト ー デ スS L E
に つ い てSLEでは発熱や倦怠感のほか、皮膚炎や関節炎など全身にさまざまな 症状が現れます。しかし個人差が大きく、症状の組み合わせ、現れる時期、 強さなどは人によって異なります。 SLEは病気の経過のなかで、症状が再燃したり持続したりすることが あります。 この病気の勢いや強さを「疾患活動性」という言葉で表し、異常な免疫 システムが身体を勢いよく攻撃して、全身に炎症を起こしているような 時には、「疾患活動性が高い」と表現します。反対に、攻撃の勢いが 弱く、症状が落ち着いている時は、「疾患活動性が低い」と表現します。 火に例えれば、前者は燃え盛っている状態、後者は炎の勢いがおさ まり、小さくなっている状態です。SLEの病態は、この火が消えること なく、強まったり弱まったりを繰り返していくイメージです。 そのためSLEの治療は、この疾患活動性をできる限り低く抑えて、症状 をコントロールすることを目指して行います。
SLE
の
症状
全身に多様な症状
疾患活動性のコントロールが重要
治療
疾患活動性が高い
疾患活動性が低い
できるだけ この状態を キープ! 前頭部から 頭頂部にかけての脱毛 指が白くなったり、 紫色になったりする (レイノー現象) 口腔、鼻咽腔に 潰瘍ができる 痙攣を起こす、 うつ状態になる ふしぶしが痛む すねに紫斑(あざ)が 出やすくなる 蝶形紅斑 紅い斑点が出る 紅い斑点が出る ループス腎炎 心臓に水がたまる 足がむくむ 全身症状 全身倦怠感、発熱、易疲労感 全 身 性 エ リ テ マ ト ー デ スS L E
に つ い てSLEの症状は患者さんによって多岐にわたるため、治療方法は炎症の 起きている臓器や、疾患活動性によって決められます。 疾患活動性がある場合、主に薬による治療を行います。薬物療法で 効果がみられない場合または副作用が強く出てしまう場合は、他の 治療法を試みることもあります。
SLE
の
治療
治療は主に薬物療法
主な薬剤
● 副腎皮質ステロイド
免疫の働きを抑える効果のある薬剤で、SLEの治療の中心として使用 されています。専門医の指示のもとで、重症度に合わせて分量を調節 しながら服用します。 特に疾患活動性 が高い人は、通常より多い量を点滴する 「ステロイドパルス療法」という治療が 行われることもあります。● 免疫抑制剤
免疫細胞に作用して免疫抑制効果をもたらす薬剤です。副腎皮質ステ ロイドの効果が得られにくい人や副作用が強い人に使います。● 生物学的製剤(抗体医薬品)
*
自分自身を攻撃する抗体を作る細胞が生き残るために必要な物質の 働きを阻害することで、疾患活動性を抑えます。 *:生物から作られるタンパク質などを応用して薬として使用するものです。病気の発症や症状の悪化 に関与していると考えられるタンパク質などの標的をピンポイントに狙い撃ちすることで効果を 発揮します。 全 身 性 エ リ テ マ ト ー デ スS L E
に つ い てSLEの症状は患者さんによって多岐にわたるため、治療方法は炎症の 起きている臓器や、疾患活動性によって決められます。 疾患活動性がある場合、主に薬による治療を行います。薬物療法で 効果がみられない場合または副作用が強く出てしまう場合は、他の 治療法を試みることもあります。