茨城大学教育学部紀要(人文・社会科学,芸術)40号(1991)107−130 107
Shynessの心的構造とPersonality 一因子分析的検討一
馬渕 功一*・吉田 昭久**
(1990年9月14日受理)
Psychic Mechanism of Shyness and Personality:
Factor Analytic Investigation
Kouichi MABucHI and Teruhisa YoslDA
(Received September 14,1990)
は じ め に
P.G. Zimbardoらのスタンフォード・シャイネス調査(1977)の結果は, 「80%以上の人が,
現在であれ,過去であれ,彼らの生涯のある時期に,シャイであったし,また常にシャイである。」
と報告している1)。また,彼は,シャイな人々のシャイネスに対する主な関心の領域は次の3つで あるとした。ひとつは,「私は,シャイです。」と,他の人々に言う外的な態度であり,次は,顔を 赤らめるというような心配に対する心理的な徴候である。そして最後に,溢れるほどの困惑と自己 意識の感情である2)。一方,その自己意識については,A. Fenigsteinらの研究(1975)によれば,
私的自意識(private self−consciousness),公的自意識(public self−consciousness)と,社会的不 安(social anxiety)とに分けられると言う。私的自意識は内的な思考や感情への注意であり,公的 自意識は社会的対象としての自己についての自覚である3)。この自己意識の相違をシャイネスにま でひろげたのがP.A. Pilkonisの研究(1977)である。彼は,シャイな人々を「見た目にもそれ
と分かるような,公的にシャイな人々(publicly shy)と,傍目には分からないような私的にシャ イな人々(privately shy)」という二つのタイプに分けられるとした。そして,「前者はまずく振 舞うことに多くの関心を示し,後者はひどく感ずることに一層の関心をみせる。」と主張する4)。
日本の場合には,恥や対人恐怖がシャイネスと関係が深いといえる5)が,しかし,アメリカにお いては,恥はshameとして問題にされ,決してシャイネスではない。また, A. H. Bussによれ ばshameは社会不安の1つであり,道徳的に許されない行動とか,役割期待から外れた行動などを してしまった場合や,身体的あるいは経歴上の欠陥があると自分で思い込んだ場合などに体験され る自己不信の感情である6)と言う。そして,それは,私的恥(personal shame)と公的恥(public
*茨城大学教育学部附属養護学校.
**?髑蜉w教育学部教育臨床心理学研究室.
108 茨城大学教育学部紀要(人‡・社会科学,芸術)40号(1991)
shame)とに分かれ,前者は自己の基準に照らして自分のしたことを低く感じる場合であり,後者 は見ている人が劣等として認める行為である7)とする。作田(1967)は社会学者の立場から恥につ いて考察し8},作田の検討を踏まえて社会心理学的検討を行なったのが井上(1987)である9)。両 者はどちらも外国では私的恥が軽くみられていることを指摘している。しかし,我々は,この私的 恥こそがシャイネスと関係が深いのではないかと考えている。つまり,私的自意識過剰の場合にあ
たるのではないかと言うことである。
次に,対人恐怖との関係であるが,シャイネスは対人恐怖を含んだもっと広い概念といえる。そ れは,P. G. Zimbardoの言うように,他人と一緒にいることに対する軽い不快感から極度のノイ ローゼ状態までの広い範囲に及んでいる1°)からである。
また,シャイネスはパーソナリティーの一つの因子として考えられてきた。それは,C.1. Mo一 sier(1937)による社会的内向性(social introversion),公的自意識(public self−consciousness)
やll), E. McC. Layman(1941)による社会的主導権(social initiative),社会的不適切さ(social inadequancy)なとであり12),それらをまとめたのがRB. Cattel1(1946)のシャイネス(shyness),
集団差(group defference)である13)これらは大きく二つに分かれている。1つは,集団に対して あるいは個人に対して控えめであることであり,もう1つは,公的な場面において自己意識をもつ ことである。同じように,シャイネスをパーソナリティーの一つと考えたEysenck(1969)は,
GuilfordのSスケール(social shyness)とCスケール(neuroticism), Rスケール(extraversion)
との関係を調べて,シャイネスの二面性を明らかにした14}それは,Eysenckによって内向的シャイ ネス(introverted shyness),神経症的シャイネス(neurotic shyness)と名づけられた15)ものであ る。そして,前者は,他人と一緒にいたがらないが必要ならば他人といることは構わない人であり,
後者は,逆に他人といたいがそれを恐れている人であるという16)。さらに,その他の心理学的測定 との関係では,Pilkonis(1977)やBussら(1980,1981)の研究で,シャイネスと公的自意識との 関連が明らかになっている17)。
シャイネスそのものを扱った研究としてはBussの研究(1981)がある。それによると,シャイ ネスとはぎこちなさや不快の感情,正常に期待される社会行動の抑制である18)。そして,さらにシ ヤイネス反応として,道具的要素(instrumental)と感情的要素(afective)の二つをあげている。
前者は,社会行動の欠如や減少に示され, 「他人の顔や目を直接的に見ることをさける」ことや
「声が小さい」ことなどである。後者は,抑制,緊張,不快というようなもので,「まちがったこ とを言うことやばかげたことをあらわすことを心配する」などである19)。この二つの分け方は,
Pilkonis(1977)のいう公的シャイネス,私的シャイネスと同じようである。また, Bussは同じ 著書の中でシャイネスの直接的原因について次の三つをあげている。それは,新奇性(novelty),
他人の存在(presence of others),他人の行為(action of others)である2°)。この3つを対人恐 怖との関連でみていくと,新奇性については,対人恐怖の場合においてはまったく知らない人に対 する恐怖はまれであり,他人の存在については,共通している部分はあるが,対人恐怖の場合はそ の対象が特定していないことで異なり,最後の他人の行為に関しては両者に共通のものであるとい
える。
以上のことを考慮に入れると,Eysenckのいう内向的シャイネス,神経症的シャイネスは自己評 価が関係していると考えられ,Pilkonisのいう私的シャイネス,公的シャイネスは表出性の問題と
馬渕・吉田:Shynessの心的構造とPersonality 109
して位置づけることができる21)。このような視点に加えて,対象が個人であるか集団であるか,そ の対象との心理的距離はどうかといった視点を,シャイネスの心的構造を考える上では問題としな ければならないと我々は考えている。
1 大学生を対象とした質問紙調査
1−1 調査視点の構造化と質問票の作成
本研究においてはシャイネスの側面を次の4つの次元でとらえることにした。それは,関わりの 対象,対象との心理的距離,自己評価,表出形態である。
まず第一に,関わりの対象であるが,対象が個人(1対1)であるか集団(1対多)であるかに 分化する。なぜなら,集団におけるシャイネスとは,大勢の人がいることに圧倒されるシャイであ
り,A. H. Buss(1980)のいう激しい公的自覚(acute public self−awaress)の起こる場面であ り22>,公的自意識(public self−consciousness)はより強くなる。逆に,関わりの対象が個人とな れば,公的自意識というよりは,自分が相手に何をするかを考えるような場面であり,私的自意識
(private self−consciousness)が強くなることが予想される。
二つめの対象との心理的距離については,たとえば,その距離が遠い場合は見知らぬ人が考えら れ,逆に,近い場合は親密な関係にある人が考えられる。親密な間柄であってもシャイになるかど うかは問題であるが,P. G. Zimbardo(1977)の調査は, i親類や友人に対してもシャイであると 答える学生がいると報告している23)。また,日本においては,対人恐怖者の「人まえ」とは,中間 的様態の人間接触に他ならないとされている24)。このような視点から,近,中間,遠という対象と の心理的距離を設定した。
三つめの自己評価については,Eysenck(1969)の言う内向的シャイネスと神経症的シャイネス に対応して考えられる。しかし,この両者の違いは,肯定的自己評価をもつか,否定的自己評価を もつかに還元できると考えている。
四つめの表出形態については,P. G. Zimbardoのシャイネス調査(1977)に関係している。彼 は,その調査の中でシャイネス反応を身体的反応(physical reaction),思考(thoughts)と感情
(feeling),行為(actions)の三つに分けて項目を考えている。身体的反応については,赤面,脈 が速まることなどであり,思考,感情については自己意識,状況の不快さに焦点をあわせる思考な
どで,行為については,話をするのをさける,視線をあわせられないなどである25)。思考と感情に ついては,意識としてまとめることができるので,表出形態としては身体,行為,意識の三つが考 えられる。
さらに,それぞれの次元に関して心理的現象把握のための具体的な視点から質問項目を選定した。
まず,関わりの対象については,集団,個人とも,「知る」,「会う」,「話す」,「つきあう」,
「親しくする」,「親密になる」という六つの視点を設定した。そして,これを対象との心理的距 離の視点と組み合わて,現象記述した。例えば,個人一近では, 「よく知っている人」, 「よく会
っている人」,「よく話している人」,「つきあいの深い人」,「気心の知れた人」,「親密な人」
ということになる。同様にして,中間,遠についても現象記述を行なった。その際,個人と集団の
110 茨城大学教育学部紀要(人文・社会科学,芸術)40号(1991)
違いは,「よく知っている人たち」というように「たち」を付け加えて表記した(表1)。ただし,
実際の質問項目では,「たちの中で」とか「たちの前で」と付け加えて,より集団を明確に表すよ うにした。
また,シャイネスの側面を捉える次元としては設定していないが,状況という要因を具体的質問 項目を作成する際には考慮した。理由は,状況を設定したほうが被調査者にとって回答しやすいか
らである。これも次の六つのカテゴリーを設定した。それは,共時性,関係性,他者評価,自己評 価,言語意思決定,会話前提である(表2)。
次に,自己評価については,Positive, Negativeそれぞれについて六つの自己評価を設定し,そ れそれが対応するように現象記述し,Positiveについては「思っても」,Negativeについては「思 うので」という表現を用いて具体的質問項目を作成した。例えば, 「自分に自信があっても」に対 しては,「自分に自信がないと思うので」という表現となる(表3)。
最後の表出形態については,意識行為,身体というカテゴリーを設定した。まず,意識につい ては他者意識自己意識自己感情という三つのサブカテゴリーを設定し,それぞれについて6項 目を選定した。行為については,積極的回避と消極的回避の二つのサブカテゴリーとし,それぞれ について9項目を選定した。身体については,身体全体,内蔵,皮膚,発声の四つのサブカテゴリ 一に分け,それぞれに3項目を選定した(表4)。
以上,四つの次元と一つの状況の設定に関して述べたが,これを組み合わせることによって,表 5−1〜2に示すシャイネスを示す構造内に心理現象を操作的におさめた。そのなかで,関わりの 対象と対象との心理的距離は一つにまとめて考え,コード化することができるので,一つの具体的 質問項目は四つの数字の並びで表記できる。つまり,表1〜4の各カテゴリーコード番号を用いる と,それぞれの質問項目は表6のように表せる。その際に注意したことは,表6に示すように,構 造内では一つも同じコードの並びがないようにし,しかも,それぞれのカテゴリー内の項目数は同 数となるようにしたことである。
このようにして選定し作成した質問項目の数は計108項目であり,Face Sheetとして大学名,学 部名,年令,性別を設定して質問票を作成した。大学名と年令は,被調査者の所属する大学間のバ
ラツキをみるためのものであり,性別は,男女間におけるそれぞれの回答傾向を検討するためであ る。回答形式は,7段階の評定尺度を用いて,「あてはまる」から「あてはまらない」の間で,自 分にもっともよくあてはまるところ一ヶ所に○印をつける方法をとった。なお,108の質問項目は,
乱数表を用いて,ランダムに配列した。
1−2 質問紙調査の実施
本調査は前述のように作成した質問票を用いて,1989年12月中旬,茨城大学と茨城キリスト教大 学とにおいて予備的な調査として実施した。
なお,調査対象については,質問項目の内容の複雑さや,自我が確立される時期といった観点を 踏まえ,自己の直面する事態において自己対象化の可能な年齢ということから大学生とした。
調査方法は,茨城大学においては休み時間や放課後,友人や後輩を介して調査および回収を行な い,茨城キリスト教大学においては知人を介して配布および回収を行なった。回答の際の注意とし て,設問をよく読むことと,質問をとばさずすべてに回答することを指示した。回収したデータの
馬渕・吉田:Shynessの心的構造とPersonahty ll1
表1 対象
a
b 近 中間 遠1.よく知っている人 1.よくは知らない人 1.全く知らない人
個 2.よく会っている人 2.たまに会う人 2.会ったことのない人
3.よく話している人 3.たまに話す人 3.話したことのない人 4.つきあいの深い人 4.つきあいの浅い人 4.つきあったことのない人
人
5.気心の知れた人 5.特に親しいとは言えない人 5.親しくない人6.親密な人 6.顔見知りの人 6.疎遠な人
1.よく知っている人たち 1.よくは知らない人たち 1.全く知らない人たち 集 2.よく会っている人たち 2.たまに会う人たち 2.会ったことのない人たち
3.よく話している人たち 3.たまに話す人たち 3.話したことのない人たち 4.つきあいの深い人たち 4.つきあいの浅い人たち 4.つきあったことのない人たち 団 5.気心の知れた人たち 5.特に親しいとは言えない人たち 5.親しくない人たち
6.親密な人たち 6.顔見知りの人たち 6.疎遠な人たち
注)a=関わりの対象,b;対象との心理的距離,数字はカテゴリーコード番号を示す
表2 状況 表3 自己評価
視点 具体的状況
b
POSITIVE NEGATIVE共 1.一緒にいる時 Q.隣り合う時
12 自分に自信があると思っても
ゥ分は良い印象を与えると思っても
自分に自信がないと思うので ゥ分は悪い印象を与えると思うので 時 3.向かい合う時 3 自分はうまく話せると思っても 自分はうまく話せないと思うので
性 4.目が合うような時
T.見られるような時
45 自分のことを良く思っていても
ゥ分は正しいと思っても
自分のことを悪く思っているので ゥ分は間違っていると思うので 6 自分はしっかりしていると思っても 自分はダメだと思うので 6.会うような時
関
7.接するような時 注)a=カテゴリーコード番号,b=自己評価の質
係8.つきあうような時
性
9.誘われるような時
P0.食事をするような時
表4 表出形態11.欠点を指摘される時
他
12.ほめられるような時
b 身 体 行 為 意 識者評
13.しかられるような時 P4.ひやかされるような時
a 具体的表出性1視点 具体的表出性 1襯 具体的表出性 1撚
価 15.批判されるような時
12 婁捺撫なる1金 聞き手にまわる
罇狽 少なくする
人の反応が気になる lの評価が気になる
16.失敗するような時 3
体足が震える
黙っている 積極 人前が気になる
他者
自己評
17.得意な事をするような時 P8.苦手な事をするような時 P9.間違うような時
456 心臓がドキドキする
Q綴麓膿
声が小さくなるテかにする レ立たないようにする
的鍵
見られることが気になる
l目が気になる lの態度が気になる意識
価
20.何か成功するような時
78 蒙難碧陪
目をそらす
ゥ分から話しかけない自分の言葉が気になる ゥ分の性格が気になる 自
21.話すような時 9 冷汗をかく 自分から話題を作らない 自分の意見が気になる 己
言語意田心
22.発言するような時 Q3。話し合うような時
10
P1
P2
欝薪1書 ためらう
オりごみするlえこむ
消自分のスタイルが気になる ゥ分の視線が気になる ゥ分の態度が気になる
意識
決
24.何かを主張する時
13もじもじする
極 不快である{ 疋 25.何かを決めるような時 14 うつむく
的回 決まりが悪い
自
ム
26.あいさつするような時
15 P6
ぎこちなくなる
ヒ惑う
避 苦にする
Cが進まない
己感
互話前
27.話しかけるような時 Q8.声をかけるような時
17
P8口ごもる
ヤ度がはっきりしない
気が重い
pずかしい
情
提
29.呼びかけるような時
R0.顔を合わせるような時
注)a;カテゴリーコード番号,b表出性の水準注)数字はカテゴリーコード番号を示す
112 茨城大学教育学部紀要(人文・社会科学,芸術)40号(1991)
表5−1 シャイネスに関する構造枠と具体的質問項目視点
C N E G A T I V E d
=@ b
身 体 行 為 意 識
・よく知っている人と一緒にいる時,自分 ・よく話している人と隣り合う時,自分の ・よく会っている人に会うような時,自分 に自信がないと思うので,身体がかたく ことを悪く思っているので,自分から話 はうまく話せないと思うので,自分の言 なる。 80
題を作らない。 49葉が気になる。 99
・よく会っている人と話す時,自分は間違
・気心の知れた人にあいさつするような・つきあいの深い人の前で発言するような
近っていると思うので,心臓がドキドキす 時,自分はうまく話せないと思うので, 時,自分に自信がないと思うので,気が る。 79 口ごもる。 101
重い。 38・親密な人の前で失敗するような時,自分 ・親密な人に欠点を指摘される時,自分は ・気心の知れた人の前で得意な事をするよ は悪い印象を与えると思うので,顔が赤 間違っていると思うので,うつむく。 うな時,自分はダメだと思うので,見ら
くなる。 73 61 れることが気になる。 54・たまに話す人にひやかせるような時,自 ・たまに会う人と目が合うような時,自分 ・よくは知らない人に見られるような時,
分はうまく話せないと思うので,声がう に自信がないと思うので,目をそらす。 自分は悪い印象を与えると思うので,自
わずる。 58 81 分の態度が気になる. 10・特に親しいとは言えない人に呼びかける ・つきあいの浅い人に誘われるような時, ・つきあいの浅い人に批判されるような 個人
中間ような時,自分はダメだと思うので,胃 自分は悪い印象を与えると思うので,た 時,自分のことを悪く思っているので,
が痛くなる。 95
めらう。 7
人の反応が気になる。 88・顔見知りの人の前で間違うような時,自 ・顔見知りの人と顔を合わせるような時, ・特に親しいとは言えない人に何かを主張 分のことを悪く思っているので,足が震
自分はダメだと思うので,もじもじす する時,自分は間違っていると思うのえる。 19 る。 26 で,気が進まない。 106
・会ったことのない人の前で発言するよう ・全く知らない人と一緒にいる時,自分は ・全く知らない人と何かを決めるような な時,自分は間違っていると思うので, うまく話せないと思うので,自分から話 時,自分は間違っていると思うので,自
声が震える。 8しかけない。 36
分の意見が気になる。 40・話したことのない人に欠点を指摘される
・会ったことのない人に誘われるような・話したことのない人に話しかけるような
遠時,自分のことを悪く思っているので, 時,自分はダメだと思うので,静かにす 時,自分はうまく話せないと思うので,
身体が震える。 1 る。 86
苦にする。 97・っきあったことのない人に会うような
・親しくない人にしかられるような時,自 ・疎遠な人の前で苫手な事をするような 時,自分に自信がないと思うので,顔が 分は悪い印象を与えると思うので,戸惑 時,自分に自信がないと思うので,人の こわばる。 87
う。 91 評価が気になる。 56・よく話している人たちの中で人に接する ・よく知っている人たちと向かい合う時, ・よく知っている人たちに声をかけるよう ような時,自分はうまく話せないと思う 自分に自信がないと思うので,口数を少 な時,自分は悪い印象を与えると思うの ので,どもる。 52
なくする。 57で,自分のスタイルが気になる。 107
・つきあいの深い人たちの中でほめられる ・よく会っている人たちとつきあう時,自 ・よく話している人たちの中で話し合うよ
近ような時,自分のことを悪く思っている 分のことを悪く思っているので,ぎこち
うな時,自分は間違っていると思うのので,顔がこわばる。 3
なくなる。 76で,人の態度が気になる。 64
・気心の知れた入たちの中で人に話しかけ ・つきあいの深い人たちの前で苦手な事を ・親密な人たちの前でしかられるような る時,自分は悪い印象を与えると思うの
するような時,自分はダメだと思うの時,自分はダメだと思うので,恥ずかし
で,身体が震える。 94 で,しりごみする。 102 い。 68・よく知らない人たちと隣り合う時,自分 ・よくは知らない人たちの前で成功するよ ・たまに会う人たちの中で人に接する時,
はダメだと思うので,身体がかたくな
うな時,自分は悪い印象を与えると思う 自分に自信がないと思うので,自分の性 る。 4
ので,目立たないようにする。 9 格が気になる。 74・たまに会う人たちの中で食事をするよう ・たまに話す人たちの前でほめられるよう ・たまに話す人たちの前で失敗するような 集団
中間な時,自分に自信がないと思うので,脈 な時,自分は間違っていると思うので, 時,自分はうまく話せないと思うので,
が速くなる。 47 黙っている。 32
決まりが悪い。 90
・つきあいの浅い人たちの中で何かを決め ・特に親しいとは言えない人たちの中で話 ・顔見知りの人たちの中で人にあいさつす るような時,自分は間違っていると思う
す時,自分はうまく話せないと思うのるような時,自分のことを悪く思ってい
ので,顔が赤くなる。 13で,態度がはっきりしない。 12 るので,人前が気になる。 59
・全く知らない人たちと向かい合うような ・話したことのない人たちに呼びかけるよ ・会ったことのない人たちと目が合うよう 時,自分はうまく話せないと思うので, うな時,自分のことを悪く思っているの な時,自分は悪い印象を与えると思うの
声がうわずる。 77 で,声が小さくなる。 66で,自分の視線が気になる。 93
・親しくない人たちに声をかけるような
・疎遠な人たちの中で話し合うような時, ・つきあったことのない人たちの前で間違
遠時,自分は間違っていると思うので,心 自分は悪い印象を与えると思うので,聞 うような時,自分はダメだと思うので,
臓がドキドキする。 6 き手にまわる。 98
人目が気になる。 45
・疎遠な人たちの前で得意な事をするよう ・つきあったことのない人たちとつきあう ・親しくない人たちの前でひやかされるよ
な時,自分はダメだと思うので,冷汗を
ような時,自分に自信がないと思うのうな時,自分のことを悪く思っているの
かく。 82 で,考えこむ。 69 で,不快である。 84馬渕・吉田:Sbynessの心的構造とPersonahty 113
表5−2
C P O S I T I V E d
=@ b
身 体 行 為 意 識
・よく話している人に誘われるような時,
・よく知っている人と食事をするような・よく知っている人と向かい合う時,自分
自分はしっかりしていると思っていて 時,自分は良い印象を与えると思ってのことを良く思っていても,気が重い。
も,胃が痛くなる。 89 も,静かにする。 70
65
・つきあいの深い人にあいさつするような
・よく会っている人の前で間違うような ・よく話している人に批判されるような 近 時,自分はうまく話せると思っていて 時,自分はしっかりしていると思って時,自分は正しいと思っても,人の評価 も,声がうわずる。 105 も,目をそらす。 2
が気になる。 50・気心の知れた人にひやかされるような ・つきあいの深い人に何かを主張する時, ・親密な人と顔を合わせるような時,自分 時,自分のことを良く思っていても,足 自分に自信があると思っても,態度がは はうまく話せると思っても,自分の性格
が震える。 103っきりしない。 29
が気になる。 92・よくは知らない人と向かい合う時,自分 ・よくは知らない人の前で得意な事をする ・たまに会う人とつきあう時,自分に自信 に自信があると思っても,心臓がドキド ような時,自分のことを良く思っていて があると思っても,気が進まない。
キする。 23
も,しりごみする。 30 48
・たまに会う人の前で発言するような時, ・たまに話す人に欠点を指摘されるような ・たまに話す人の前で苦手な事をするよう 個人
中間自分は正しいと思っていても,どもる。 時,自分は正しいと思っても,口数を少 な時,自分はしっかりしていると思って 43
なくする。 25いても,見られることが気になる。 46
・つきあいの浅い人に会うような時,自分 ・特に親しいとは言えない人と話し合うよ ・顔見知りの人に話しかけるような時,自 は良い印象を与えると思っていても,顔
うな時,自分はうまく話せると思って分はうまく話せると思っても,自分の態 がこわばる。 17 も,自分から話しかけない。 51
度が気になる。 44・全く知らない人に見られるような時,自 ・話したことのない人の前で何か成功する ・会ったことのない人と一緒にいる時,自 分は良い印象を与えると思っても,身体 ような時,自分は正しいと思っても,目 分は良い印象を与えると思っていても,
がかたくなる。 37 立たないようにする。 39
人目が気になる。 96・親しくない人にあいさつするような時,
・つきあったことのない人と話すような・つきあったことのない人と接するような
遠自分はうまく話せると思っても,胃が痛 時,自分に自信があると思っても,口ご 時,自分のことを良く思っていても,自
くなる。 18もる。 55 分の言葉が気になる。 24
・疎遠な人の前で失敗するような時,自分 ・疎遠な人と顔を合わせるような時,自分 ・親しくない人にしかられるような時,自 はしっかりしていると思っていても,顔 のことを良く思っていても,もじもじす 分はしっかりしていると思っていても,
が赤くなる。 41
る。 53
恥ずかしい。 5・よく知っている人たちに見られるよう ・よく話している人たちに呼びかけるよう ・よく会っている人たちと目が合う時,自 な時,自分はしっかりしていると思って な時,自分は良い印象を与えると思って 分は良い印象を与えると思っていても,
も,胃が痛くなる。 21
いても,ためらう。 28 自分の視線が気になる。 22
・よく会っている人たちの前で何か成功す
・気心の知れた人たちの中で話すような・つきあいの深い人たちに会うような時,
近
るような時,自分に自信があると思って
時,自分はうまく話せると思っていて自分に自信があると思っても,人前が気
も,冷汗をかく。 14も,聞き手にまわる。 11 になる。 104
・親密な人たちの中で何かを決めるような
・親密な人たちの前でほめられるような・気心の知れた人たちの前で失敗するよう 時,自分は正しいと思っても,声が震え
時,自分は正しいと思っても,黙ってな時,自分のことを良く思っていても,
る。 33 いる。 83
決まりが悪い。 63・たまに話す人たちの前でしかられるよう ・たまに会う人たちと隣り合う時,自分の ・よくは知らない人たちの中で発言するよ な時,自分のことを良く思っていても, ことを良く思っていても,自分から話題 うな時,自分は正しいと思っていても,
身体が震える。 72
を作らない。 60 人の反応が気になる。 31
・特に親しいとは言えない人たちに声をか ・つきあいの浅い人たちと接する時,自分 ・つきあいの浅い人たちの前で欠点を指摘 集団
中間けるような時,自分はうまく話せると思 はしっかりしていると思っても,ぎこち されるような時,自分はしっかりしてい っても,声が震える。 108
なくなる。 78ると思っていても,不快である。 34
・顔見知りの人たちの前で得意な事をする
・顔見知りの人たちに話しかけるような・特に親しいとは言えない人たちと一緒にい ような時,自分は良い印象を与えると思 時,自分に自信があると思っても,考え る時,自分は良い印象を与えると思って っても,冷汗をかく。 16 こむ。 67 いても,自分のスタイルが気になる。42
・話したことのない人たちの前で何かを主 ・会ったことのない人たちと隣り合う時, ・全く知らない人たちの中で話し合うよう 張する時,自分のことを良く思っていて 自分はうまく話せると思っても,声が小 な時,自分は正しいと思っていても,自 も,どもる。 75
さくなる。 71 分の意見が気になる。 27・つきあったことのない人たちとつきあう ・親しくない人たちの前でほめられるよう
・疎遠な人たちの中で食事をするような 遠ような時,自分は良い印象を与えると思 な時,自分は正しいと思っても,うつむ 時,自分はうまく話せると思っても,人
っても,足が震える。 35 く。 85 の態度が気になる。 20・会ったことのない人たちの前でひやかさ ・全く知らない人たちの中で苦手な事をす
・話したことのない人たちに声をかけるれるような時,自分に自信があると思っ るような時,自分はしっかりしていると 時,自分に自信があると思っていても,
ても,脈が速くなる。 15 思っていても,戸惑う。 62 苦にする。 100
注) a=関わりの対象,b=対象との心理的距離, c=自己評価, d=表出形態
114 茨城大学教育学部紀要(人文・社会科学,芸術)40号(1991)
表6 構造内におけるカテゴリーコード 表7 被調査者数の大学・学部
・性別分布 C NEGATIVE POSITIVE
d
ba 身 体 行為 意 識 身体 行為
意 識
大被調査者数
学 学部1−1−1−1 3−2−4−9 2−6−3−7 3−9−6−6
1−10−2−6 1−3−4−17 男
女 計 近2−21−5−4
5−26−3−17 4−22−1−17 4−26−3−102−19−6−7 3−15−5−2
教育
17
88 1056−16−2−7
6−11−5−145−17−6−4 5−14−4−3
4−24−1−186−30−3−8
個
中 3−14−3−10 2−4−1−7
1−5−2−12
1−3−1−4 1−17−4−112−8−1−16
工学12
113 問
5−29−6−6 4−9−2−10 4−15−4−1
2−22−5−123−11−5−2 3−18−6−4
茨 城 人文13
13 266−19−4−3
6−30−6−13 5−24−5−16 4−6−2−85−23−3−8
6−27−3−12人
2−22−5−11 1−1−3−81−25−5−9
1−5−2−13−20−5−5
2−1−2−5 理学 153
18 遠341−4−2
2−9−6−6 3−27−3−155−26−3−6
4−21−1−17 4−7−4−7 農学2 0 2
4−6−1−8 5−13−2−16
6−18−1−2 6−16−6−7
6−30−4−13 5−13−6−18茨 3−7−3−12
1−3−1−2 1−28−2−10 1−5−6−6 3−29−2−102−4−2−11
城Lリスト教 文学 0 10 10
近 4−12−4−8 2−8−4−15 3−23−5−6 2−20−1−9 5−21−3−1
4−6−1−3 計 59 115 1745−27−2−2
4−18−6−11 6−13−6−18 6−25−5−116−12−5−3
5−16−4−14集
中
1−2−6−11−20−2−5
2−7−1−83−13−4−2
2−2−4−91−22−5−1
2−10−1−5 3−12−5−3
3−16−3−14 5−28−3−114−7−6−15
4−11−6−13表8 被調査者数の年齢別分布 問 4−25−5−7 5−21−3−18 6−26−4−3 6−17−2−9
6−27−1−12 5−1−2−10
団 1−3−3−10 3−29−4−4 2−4−2−11
3−24−4−12 2−2−3−41−23−5−9
年齢 被調査者数 年齢 被調査者数 遠5−28−5−4 6−23−2−1 4−19−6−5
4−8−2−3 5−】2−5−146−10−3−6
6−17−6−9 4−8−1−12
5−14−4−132−14−1−5
1−18−6−16 3−28−1−1518 9 22 25
注)数字の並びは表1〜4のカテゴリーコード番号で,左から順に対象,状況, 19 52 23 7
自己評価,表出形態を表す
20 45 24 1
a=関わりの対象,b=対象との心理的距離, c=自己評価, d=表出形態 21
33 25
2うち,Face Sheetの記入もれがあったもの, および質問項目のうち一つでも記入もれのあったも のは無効データとした。なお,被調査者の人数性別,年令の分布は表7,8に示すとおりである。
H シャイネスに関する分析的検討
H−1 因子分析に基づく検討
本研究においては,シャイネスの構造化が妥当であるかどうかを検討することと,さらには,シ ヤイネスを規定する心理ダイナミズムについて明らかにすることを目的として因子分析を行なった。
因子分析は,「パソコン統計解析ハンドブックII多変量解析編」の因子分析プログラムを用いて行
なった26)。
はじめに,7段階に評定された結果にもとづき,108×108のピアソン積率相関係数を算出し,そ れをもとに主因子分析法を用いて,回転前の因子行列を求めた。その際の因子抽出数は,シャイネ スの下部構造を10に分化しているため10個とした。その抽出された因子についてバリマックス回転
を行ない,最終的な因子負荷量を求めた。回転後の因子行列についてはAppendix Iに示した。
因子分析の結果,算出された因子行列の中から,便宜的に因子負荷量10.30001以上のものを,
馬渕・吉田:Shynessの心的構造とPersonality 115
表9 構造内における第1因子の項目
C N E G A T I V E
P O S I T I V Ea b d
身 体 行 為 意 識 身 体 行 為 意 識個 近
73, 61▲, 図,團, 50, 國,中 国△, 國, 図,88.,106△,
23▲, 25,図, 46,
人 遠
團,86△,91, 40, 56, 37, 41▲,
5,図 96.,集 近 102■,
國,68,國,63,囮,
中
74腫,90,
國△,78△, 31.,34, 42■,
団
遠
69△,98△,45, 84, 93,
15▲,62▲, 20■,27■,100△,
注)a=関わりの対象,b=対象との心理的距離, c竺自己評価, d=表出形態 一:負の因子負荷量の項目,無印:他の因子の項目と重複しない項目
口:他の因子内で同じ方向で重複する負荷量の小さい方の項目,△:他の因子内で逆の方向で重複する負荷量の小さい方の項目
■:他の因子内で同じ方向だけで重複する負荷量の最大の項目,▲:他の因子内で逆の方向で重複する負荷量の最大の項目 以下同様
表10構造内における第2因子の項目
C N E G A T I V E
P O S I T I V Ea b d
身 体 行 為 意 識 身 体 行 為 意 識個 近
80, 79・,49, 101, 38, 54■,99■,
89▲,103■,105, 国,70▲, 65, 92■,中 19△, 95■,
26■,81■, 51△,
囮,人 遠
囮△,集 近 團△,52▲,94▲,
76,57,囮,64■, 107■, 14■.21△,33▲,
28, 國, 104.,中
匡私, 32▲, 59,國, 国△, 108△, 60▲,67▲,
団
遠
82△, 66△,表11構造内における第3因子の項目
C N E G A T I V E
P O S I T I V Ea b d
身 体 行 為 意 識 身 体 行 為 意 識個 近
中
58三,95云, 106三, 17云,23云,43三,
國三, 48−C人 遠 87−
C36三,86三,
97−C 53−E55i・集 近 52乙,94云,
中
47云, 12λ,
72三,108三,60乙, 78三,
団 遠
77−C82三, 66三,69三,98三, 35云,75−,
62三,7r,100三,
表12構造内における第4因子の項目
C N E G A T I V E P O S I T I V E
a b d
身 体 行 為 意 識 身 体 行 為 意 識個 近 89λ,
中 19三, 臨,
肱,
人 遠
18−C 41三,集 近 21三,33三,
中 13−C 16云, 圏三,
団
遠 15丞,国三,
116 茨城大学教育学部紀要(人文・社会科学,芸術)40号(1991) ,
表13 構造内における第5因子の項目
C
N E G A T I V E
P O S I T I V Ea b d
身 体 行 為 意 識 身 体 行 為意 識
個 近
團,29■,
中 國,
30■,
人 遠
集
近 國,
中 9△,
16▲, 回,
団
遠 國,
表14 構造内における第6因子の項目
C N E G A T I V E
P O S I T I V Ea b d
身 体 行 為 意 識 身 体 行 為 意 識個 近 61乙, 70云,
中
人
遠 39−
C 国一,集 近
3乙,11λ, 83},
中
9三, 32三, 67三,
団 遠
85C
表15 構造内における第7因子の項目
C
N E G A T I V EP O S I T I V E
a b d
身 体 行 為 意 識 身 体 行 為 意 識個 近
中
7,国, 10■・ 17▲,
人
遠
8■,36△,
集 近
3▲,中 4昌, 回,12▲,
団 遠
6,表16 構造内における第8因子の項目
C N E G A T I V E P O S I T I V E
a b d
身 体 行 為 意 識 身 体行 為
意 識近
2,個
中
58△,
人
遠
1,集 近
囹加國△,中
72▲,
団 遠
馬渕・吉田:Shynessの心的構造とPersonality 117
表17構造内における第9因子の項目
C
N E G A T I V E P O S I T I V E
a b d
身 体 行 為 意 識 身 体 行 為 意 識近
中
團△,43△, 44.・
人 遠 24.,囲
近
国, 国△,11▲, 22■・
中 囚△, 國,
団
遠
図,表18 構造内における第10因子の項目
C N E G A T I V E
P O S I T I V Ea b d
身 体 行 為 意 識 身 体 行 為 意 識近
國 囮,中
51三,
人 遠
図三,近
中
47▲,
国三,団
遠 35▲,
因子を構成する場合に意味のある項目として取り上吠それぞれの因子に含まれる質問項目を整理 し,表9〜18に示した。解釈するにあたっては,表9〜18の□印以外の項目,つまり,全く重複し ないか,あるいは重複しても同方向で負荷量が最大である項目が四つ以上ある因子を解釈可能な因 子とした。その結果,第9因子までの9個の因子が解釈できた。
表19−1〜6より,各因子の解釈を行なってみよう。第1因子についてみると,状況が「苦手な 事をするような時」のように因子負荷量の高い項目のほとんどが否定的評価場面である。次に,自 己評価についてみれば 「自分はしっかりしていると思っても」,「自分はダメだと思うので」の 項目が多く,しかもその負荷量が高い。つまり,しっかりしている自分を認めながらも自分はダメ だと思ってしまうということであり,自分が確かでなく,自分をどのように位置づけたらよいかが 不確実であるといえる。また,表出形態については,意識の項目のほとんどが含まれている。この ことは,それだけ広い状況を回避していることになる。以上のことを考えると,第1因子は「否定 的評価場面における自己不確実性にもとつく状況回避(avoidance of situation)」の因子と解釈 できる。
第2因子についてみると,対象との心理的距離において「近」,すなわち,心理的距離が近い場 合の項目が多い。また状況からも「一緒にいる時」,「あいさつするような時」などは心理的距離
を小さくする状況といえる。また,自己評価については,「自分に自信がないと思うので」,「自 分のことを悪く思っているので」が多く,自分を信頼していないといえる。さらに,表出形態につ いてみると,身体の項目の因子負荷量が高くなっており,行為においては,「口ごもる」,「ぎこ ちなくなる」,「口数を少なくする」などの因子負荷量が高く,このことは,他人(ここでは心理
118 茨城大学教育学部紀要(人文・社会科学,芸術)40号(1991)
的距離が小さい場合)に対して反応することを回避し,それが身体水準に表出しているといえよう。
以上から,第2因子を「心理的距離『小』場面における自己不信にもとつく反応回避(avoidance of responce)」の因子と解釈した。
第3因子では,対象との心理的距離において「遠」の項目の因子負荷量が高く,これは,第2因 子と対照的であり,心理的距離が大きい場合と考えられる。また,それぞれの項目に関してみると 因子負荷量が負であるため,逆転して現象を考えるべきである。自己評価についてこの観点から考 えると,「自分はうまく話せないと思っても」と考えられる項目が多く,しかも,その因子負荷量 が高い。また,「自分に自信があると思うので」,「自分のことを良く思うので」と考えてよい項 目が多い。これらは,第2因子と全く逆であり,自分を信頼しているといってよい。表出形態につ いても,現象を逆転して考えると,「声がうわずらない」,「声が小さくならない」,「口ごもら ない」などのように,話す行為に対して自分を制御しているといえる。以上のことを考え,第3因 子は「心理的距離『大』場面における自己信頼にもとつく自己制御(self−control)」の因子と解 釈した。
第4因子では,第3因子と同様に各項目の因子負荷量がすべて負であったので,現象を逆転して 解釈できる。まず,状況であるが,「親しくない人にあいさつするような時」,「顔見知りの人の 前で間違うような時」, 「よく知っている人たちに見られるような時」などのように,緊張を生じ やすい場面であるといえる。また,自己評価については,多くの項目が「自分はうまく話せると思 うので」,「自分はしっかりしていると思うので」,「自分は良い印象を与えると思うので」とい うように自分を肯定的に評価する項目内容である。特に,第3因子との違いは, 「自分はよい印象 を与えると思うので」ということである。このことは,他人に与える印象を自分で肯定的に評価す ることであり,自己信頼とは区別できる。しかも,表出形態についてみると,すべて身体の項目で あり,「胃が痛くならない」,「足が震えない」,「顔が赤くならない」というように,緊張場面 で生じやすい身体的反応を自分で制御できている場合といえる。このことは,第2因子の反応回避 とは対照的なことであり,以上から第4因子を,「緊張場面における肯定的(positive)自己評価 にもとつく自己制御」の因子と解釈した。
第5因子をみると,状況において肯定的な場面であり,その他についても,自己評価の部分が肯 定的になっている。また,その自己評価については,表出形態を考慮に入れると,「自分の意見が 気になる」,「見られることが気になる」,「人の反応が気になる」などのように他人を気にしな がらの「自分は正しいと思っても」の位置づけであるといえ,受動的な自己評価である。しかも,
表出形態が,「しりごみする」,「態度がはっきりしない」など消極的回避のカテゴリーに入る項目 の因子負荷量が高い。以上から考えて,第5因子は,「肯定的評価場面における受動的(passive)
自己評価にもとつく消極的回避(negative avoidance)」の因子と解釈した。
第6因子をみると,第3,4因子と同様にすべて負の因子負荷量を示した。まず,状況について は第5因子同様に肯定的評価場面といえる。次に,自己評価については,「自分は正しいと思うの で,うつむかない」,「自分は正しいと思うので,黙っていない」,「自分は正しいと思うので,
目立たないようにしない」などのように第5因子の受動的に対して積極的な自己評価といえる。ま た,表出形態については,「うつむかない」, 「黙っていない」,「目立たないようにしない」な どのように,消極的回避をしないように自己制御できる場合といえる。以上から,第6因子は,