NDC 501.9
状態フィードバックによる2次元システムの分離可能性と
2次元状態観測器*
湖西二郎**西山宗弘**富田信昭**
(昭和55年4月30日受理)
Separability of Two−Dimensinal Systems by State Feedback and Two−Dimensinal State Observer
Jiro SHIMoNlsHi Munehiro NisHiyAMA Nobuaki ToMiTA
(Received April 30, 1980)
This note mainly proposes a method to construct a state observer for two−dimensional systems where the Roesser s model is used to represent the systems. First, we introduce the concept of separability in two−dimensional systems and show a necessary and sufficient condition for a two−dimensional systern to become separable by means of state feedback. Next, we present a sufficient condition for the state observer of two−dimensional systems to exist and a method for constructing the state observer by applying the concept of systern separability.
1.ま え が き
最近,リモートセンシング,医用画像処理,パターン認 識などの発達と共に,2次元画像処理に関する研究が急速 に盛んになってきた1)・2)。従来,2次元信号の処理には2 変数の伝達関数で記述される2次元ディジタルフィルタが 有効と考えられ,主に安定問題3)や設計問題4>5)などが解 析されてきた。しかし,この数年来のうちに2次元システ ムに対する幾つかの状態変数モデル6)〜8)が提案され,2次 元システムの可制御性,可観測性などの内部構造が明らか にされつつあるが8),状態推定に関する報告は見当らない ようである。そこで,ここではRoesserモデル7)で表現さ れる2次元システムに対する状態観測器を構成することを 考える。状態観測器はその伝達関数の分母多項式が1変数 多項式の積で表わされるような分離可能2次元システム注)
で構成される。本稿では2次元状態空間モデルに対する分 離化の概念を導入し,状態フィードバックによる分離可能 性について考察する。そしてその結果から2次元状態観測 器が存在するための条件を検討する。
2。分離可能2次元システム
Roesserモデルによる2次元システムの内部記述は次式 で与えられる。
:P: ユ1{H食1貸:][ご;:1]・「1:弼
聯一[鯛[l111:1]
(1)
*一部は第24回システムと制御研究発表講演会にて講演
**電気工学科
ここで,勲幻∈Rnおよびκ 翻eR常はそれぞれ∫,ノ時点に おける水平および垂直局齎状態,uおよびyはそれぞれス
カラーの入力および出力であり,A1, A2, A3, A4, b1, b2,
C1, C2は適当なサイズの実行列を表わす。
最初に分離可能2次元システムをつぎのように定義す
る。
<定義1> システムΣPにおいて,A2=Onxmあるいは A3=0翅吻であるとき,Σpを分離可能2次元システムと呼 注)Eising9)はそれぞれ異なった変数で表わされる.1次元 伝達関数をもつ2つのシステムがカスケードに接続される
.システムを分離可能2次元システム(Separable 2−D System)
と呼んでいる。すなわち,この場合,伝達関数は分母分 子多項式共に1変数多項式の積で表わされることが必要で
ある、
一57一
津:山高専紀要.第18号 (1980)
ぷ。
定義1は分離可能2次元伝達関数の概念。)を状態空間モ デルに適用したものであり,両者の関係はつぎの定理で明
らかにされる。
<定理1> システムΣρが分離可能2次元システムであ るための必要十分条件はその伝達関数丁(S,X)の分母多項 式4(s,a)が1変数の多項式の積q1(s)・q2(e)に分解できる
ことである。
(証明) 十分性:伝達関数からの実現問題であり,
T(s,2)の分母多項式がql(s)・q2(2)と分解できるとき, A2
==OnxmあるいはA3=O.×nであるようなRoesserモデル が実現できることがKungらの実現法8)によって示される。
必要性:式(1)においてA3= Om・nとする。このとき,そ の伝達関数は次式で与えられる。
・剛叫§∵兆義]う[1:] (2)
式②よりT(s,2)の分母多項式が1変数の多項式の積に分 解できることは明らかである。 (証明終り)
つぎに分離可能2次元システムの解に関する既に知られ ている性質を記しておく。
〈定義2>8)xh。,ゴ=0(ノ≧1), xVi,。== O (i≧1)のとき,
X。,。全[xho,oT, xVO,oT]TをシステムΣpの局所初期状態と 呼ぶ。ただし[・]Tは,・の転置を表わす。
〈補題1>1D分離可能2次元システムにおいて, u毎講0
{(i,カ≧(0,0)}とする。このとき,(i,の≧(1,1)時点 における解は次式で与えられる。
[:lll]一[λ識λl18]鞠
[ll[lll]一[:讐判鞭
(for A2==O) (3)
(for A3=O) {4)
ただし,(i,の≧(k,r)はi≧kかつi≧〆であるようなす べての整数の対である。
さて,システムΣρを状態フィードバックによって分離 可能システムにすることを考えよう。
<定理2>状態フィードバックによってシステムΣpを 分離可能システムにできるための必要十分条件はA2=bl k2あるいはA.3=・b2k1のいずれかを満たすk1T∈Rn, k2T
∈Rmが存在することである。
(証明) システムΣpに
ui,i=[klk2] [::ill ]
(5)
「ll諸]一寸ll食:二1:1:][鷲:1]
(6}
なる閉ループシステムを得る。すなわち,A2・=b1 k2(A3
=b2kl)を満たすk1(k2)が存在することが,状態.フィー ドバックによってシステムΣpを分離可能システムにでき るための必要十分条件であることがわかる。(証明終り)
なお,定理2を満たすような対(A2, b1)あるいは(A3,
b2)を以後分離可能対と呼ぶ。
3.2次元局所状態観測器
今,つぎの2次元システムを考える。
恥鳴{H畿1[llll]・[ll]陶
+[:1] yi,i , (7)
ただし,物ヴ∈Rn, z〃房∈RmはシステムΣoにおける水平 および垂直局所状態であり,F1, F2, F3, F4, h1, h2,
91,92はそれぞれ適当なサイズの実行列である。
ここで,システムΣ0の局所初期状態を定as 2と同様に 定義し,システムΣpの状態観測器をつぎのように定義す
る。
<定義3> システムΣpとΣoの間にXo,o,Zo,oおよびUf,ゴ に関係なく
[lkv:ll] = [ii:li]
(8)
によってフィードバックを施す。このとき,
となる有限整数の対(k,r)が存在するとき,システムΣoを システムΣpの局所状態観測器という。
<定理3> システムΣpの局所状態観測器が存在するた めの十分条件は
i) (A3T, CIT)が分離可能対であり,かっ,(A1, C1)
が可観測対注>
ii)(A2T, C2T)が分離可能対であり,かつ,(A4, C2)
が可観測対
のいずれかが成立することである。
(証明) 最:初に,
[::ijj.]A一[1:1[jl]一[iglljj]
を定義しておく。このとき,式(1)および式(7)より次式を得
る。
一58一
注)ここでの可観測対の意味は1次元システムの場合と 同様の意味である。
状態フィドバックによる2次元システムの分離可能性と2次元状態観測器 下西・西山・富田
[ご淵一[;:;1][1:1]一{[ll髭]
一瓢]・[二][・・C・]}匿;:1]・{[
一 [:1] } ui・i
ここで,
うに選ぶ
Fi=Ai−giCi, F2=A2−giC2, bi==hi F3==A3−g2Ci, F4=A4−g2C2, b2=h2
脚
(9)
F1, F2, F3, F4, h1, h2をそれぞれつぎのよ
(10)
まず条件i)について考える。式(10)において(A3T, CIT)
が分離可能対であれば適当なg2∈Rmが存在して, F3=0 とでき,(A1, C1)が可観測対であればよく知られている ように,あるg1∈Rnが存在してF1をべき零マトリクス にできる。このとき,式(10)は
[::1;t i] = [ 」 .i] [:h,1[il[] ae
のように書換えられるので,式(4)に注目すれば,整数の有 限対(k,r)≧(n+1,1)に対してek,h=・Oとできる。ただ し,ek,r今[ehk,rT, eVle,rT]Tである。条件ii)についても 全く同様にして,(le, r)≧(1,m+1)に対してele,h−0とで きる。 (証明終り)
4.あ と が き
2次元システムの状態空間モデルに対する分離化の概念 を導入し,状態フィードバックによる分離可能性の条件を 求めた。また,この結果が2次元システムの状態観測器の 構成に応用できることを示し,その十分条件を与えた。こ
こで得られた条件は幾分厳しいように思われるが,プロパ ーな2次元伝達関数)からこの条件を満たすようなRoesser モデルを実現することは可能であり(付録参照),閉ループ システムの入出力特性に注目するような設計法における状 態フィードバックに,ここでの観測器を利用することが考 えられる。
なお,本稿での結果は多入出力システムの場合にも容易 に拡張できる。
最後に,筆者の一人が日頃お世話になっている神戸大学 工学部教授前川禎男,助手雛元孝夫(現カナダQueen s大 学留学中)の両先生に深く感謝の意を表する。
文 献
1 ) T. S. Hung (ed.) : Picture Processing and Digital Fil−
tering, Springer (1975)
2) A. Rosenfeld and A; C. Kak : Digital Picture Proces−
sing, Academic (1976)
3) Anderson, B. D. O. and Jury, E. 1., IEEE Trans. Audio,
AU−21, 4, p.366 (1973)
4) Hu, J. V. and Rabiner, L. R., IEEE. Trans. Audio, AU−
20, 4, p.249 (1972)
5) Costa, J. M. and Venetsanopoulos, A. N., IEEE Trans.
Acoust. Speech & Signal Process., ASSP−22, 6, p.432 (1974)
6) Fornasini, E. and Marchesini, G., IEEE Trans, Autom.
Control, AC−21, 4, p.484 (1976)
7 ) Roesser, R. P., IEEE Trans. Autom. Control, AC−20, 1,
p.1 (i975)
8 ) Kung, S., L evy, B. C., Morf, M., and Kailath, T., Proc.
IEEE, 65, 6, p.945 (1977)
9 ) Eising, R., IEEE Trans. Autom. Control, AC−24, 3,
p.508 (1979)
10) Abramatic, J. F., Francois, G. and Rosencher, E., IEEE Trans. Acoust. Speech &Signal Process., ASSP−27, 5,
(1979)
11)雛元,佐野,前川,信学論(A),J62−A,2, P.143 (昭54−2)
《付 録》
2次元伝達関数からの2次元実現
式(A−1)で与えられる2次元伝達関数はプロパー9)で あるものとする。
あ
砲ゴD−1暮;t:;}}一尋影が禦(A一・)
.Σ翠σ ゴ27ico一ノ .1=O 」 =o
最初に式(A−1)を回路で実現するためにつぎの2種 類のダイナミックス.素子を用意する。
X(2−1, to一])
X(2−1, to−1)
xL 1
to−1
2一]x(z−1, to uz 1)
co−lx(2一 1, toL ])
すなわち,ct水平方向遅れ素子(2n 1)(Horizontal Deley El−
ment) とtc垂直方向遅れ素子(ω『1)(Vertical Deley E1−
ment) である。
さて,実現は2段階に分けて行なわれる。
(First Realization)まず,式(A−1)を次式のように表 現する。
Zbi(tu−1)2−i
H(2−i,to−i)==一 O (A−2)
Z]ai(tu−i)xi ゴ≡0
ただし,2−iの係数ai(to−1), bi(ω 1)は変数ω一1をもつ有理 関数である。式(A−1)において,一般性を失うことなく aoo・=1とおくことができ,式(A−2)におけるao(ωml)は つぎのように表現できる。.
一59一
津山高専紀要第18号(1980)
ao (tu−i) 21 {一 ao (ca−1)
このとき,式(A−2)は1次元システムの場合と同様にし て,いわゆるtt可観測正準形 に実現できる(図1)。ただ
Fig.1 First realization of a 2−D transfer function
し,乗算器はω一1の有理関数F(ω一1)で表わされている。
(Second Realization) 次1こ,フィードバックゲインを与 えるためにm個@(ω一1),仁0,…,m)のV. D.Eとそして 入力ゲイ.ンを与えるために他のm個(bi(ω一1), i=0,…,m)
のV.D. Eを用いて合計〃+2mの遅れ素子をもつ図2の 実現を得る。
◎.o 昏巳。 昏30 昏」。
璽。ヨ瑠
る「◎1 寺ll 伽 渉訊
ω冒「
X誓
渉
oよ
@ .直
@ zG︐直︒
か鵬
@ rl
@ z
@割3a噛
ら4
@ Z o
Y3ソz2
か鑓
璋ω
aOI α鱒 ¢≧8 α謬1
ユ扇
ー
乱lo a30 乱30
一1.
Fig.2 Circuit realization of a 2−D transfer function
さて,図2で実現された回路の状態変数モデルを求めよ う。いま,図に示したように水平局所状態物σ=1,…,n)
そして,垂直局所状態劣芦σ=1,…,肱ノ=1,2)をそれぞれ 決めれば次式で表現できるRoesserモデルが容易に得られ
る。
\xhi+1,ノ
ノ
吻 rVli,ゴ+1
Y
xV2 i, 1一+1 吻x
=A
ツi・ゴ=¢胸ゴ
ただし,
b==
bno
−boo
A==
κ転ゴ
xVli,ゴ
xv2i,ゴ
胸・ゴ
i .
一ano O
−1 9 1 0 6
e
十bμガ (A−3)
一qio 1. 0 :i] 一 J aiptlSn Z;im
・、i 1 ]1/iii∂ガi
Oiあ1彫……ππ zi勧1.一一一一bnm
ロ ヨ
1−aOi一一一一一aOmトbOl一一一一一bOm
ロ
11 1 1 \ O l
l \ l l \、 「 O
iO\、。i
ド
2 10
へ
1 江 ・、
1 、 「 ト 、 、 「 ト 」 、
1 0
C=[1……oi ao1……a伽iう01・…・・西。祠
ここで,
σ ノ=砺ゴーaieaoブ
Siノ=ゐゴブーαゴ。δoゴ
1$iEm;;n, 1$jErm!g m
1$i−sg;n, 1$jf一{:m
10
である。
式(A−3)において(A3:「, C1τ)が分離可能対であ り, (A1, C1)が可観測対であることがわかる。
一60一