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経営組織の一般原理と状況随伴モデル

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(1)

経営組織の一般原理と状況随伴モデル

その他のタイトル Views on general principles of business organization and its contingency model

著者 岡田 至雄

雑誌名 関西大学社会学部紀要

巻 19

号 2

ページ 13‑40

発行年 1988‑03‑31

URL http://hdl.handle.net/10112/00022679

(2)

関西大学「社会学部紀要」第19巻第2号, 1988, pp. 1340.  ISSN 02876817 

経営組織の一般原理と状況随伴モデル

岡 田

至 雄

Views on general principles of business organization  and its  contingency model 

Yoshio OKADA 

Abstract 

The  sociologjcal  analysis  of  organization  is  connected  to  two  main  subjects.  One is What is the gqeneral principles of organizational construction. 

And the other  is  what  perspective  isor  shonld  be appropriate for  analysing  effective management of  actual organization. 

As  for  the  former,  we  mark  Fayolism  which  is  evaluated  as  a pioneer  work of administrative management  theory.  Industrial sociology has  scarcely  paid  any  attention  to  this  work  for  some  reason  or  other.  But  in  my  view,  it  seems  th.at  Fayolism  is  described asthefirst  scientific  investigaticn  of  business organization although it  may be beyond your expectation. 

In  reference  to  the  latter,  after・1960  we can identify  some  remarkable  trend  i e.,  systems  approach  and  contingency  perspective.  These  paradigm  regards  the  organization  as  a subsystem  of  its  environment  which  is  composed of a few primary subsystems.  They  are goals and values, technology  and psycho‑social climate. we apply these new one and describe the ralationship 

between  real  state  of  each  subsystem  and  its  influence  on  organization  structure. 

Finally  we  try  to  add  contingency  views  on  the  most  important  three  principles  of  organizational  constuct  in  post‑industrial  society.  These  principles  are  division  of  labor,  authority  and  centralization

Key words : general principles of managerial organization, comparative analysis.  sys tems approach, contingency view, Fayolism, environment. technology, goals and values,  psychosocial climate, the way of thinking about manpower, division of labor, authority  and responsibility, centralization and decentralization, contingency mod.el 

抄 録

経営組織に対する社会学的アプローチの先駆的成果は,フェイヨリズムに帰すべきであると考 えるが,一般に産業社会学はこれに触れたがらない。なぜろうか。まず,フェイヨリズムとは何 かを,また,その理論的卓越性を明示し,その現代的意義を正視する。次にここで示された組織 の一般原理の中から重要なものをとりあげ,最近になって注目され,主流となりつつあるシステ ム論的分析視点から,俗に状況随伴モデルと呼ばれている説明理論を提起する。ここでは大局 的,総体的に診た経営組織のシステム論的ドリフト性と,第二次産業の主幹企業に照準を当てた 状況随伴モデルが,鮮明に吟味される。

キーワード:組織の一般原理,比較分析,システム・アプローチ,状況随伴的視点,フェイヨリ ズム,環境,技術, 目標・価値,心理的・社会的風土,人材観,分業,権限と責任,

集権化と分権化,状況随伴モデル

‑ 13  ‑

(3)

関西大学「社会学部紀要』第19巻第2

序 組織論へのアプローチの視軸

組織論は,組織目的の効率的達成に向けて人間の組織活動をシステムとして最適のパターンに 編制するための通則を求めて展開されてきた。組織活動に重大な影響を及ぼすであろうと想定さ れる要因を,理念的に,あるいは経験的に,的確に摘出し,それらをうまく調整し,コントロー ルし,管理することが,組織論の究極の課題といえる。一般に,これらの要因は,最近になって 注目されているシステム論的発想

(systemsapproach)

では,環境要因,目標一価値要因,技術 要因,構造要因,心理・社会的要因,管理要因に集約されつつある。組織は,これらの要因の質 的変化にともなって,当然その態様を多彩に着色しつつダイナミックに躍動する。この発想の基 底には従来の閉鎖的システムとしての組織観ではなくて,環境や状況に規定されながら敏速にそ の適応体制を制御する開放的システムとしての組織観が脈打っている。組織は真空状態で純粋培 養できるような代物ではないから,このようなシステム論的・状況随伴的視点でアプローチする ことが不可避である。この視点を度外視して組織モデルを論じても,実証科学という立場からは 高い評価は受けない。たとえ,理念型と現実型との不可入性を主張することで,理念型の絶対的 普遍性を誇示しようとも, 現実離れした仮想のもとで閉鎖的システムとして提示されたモデル ー 一 例 え ば ウ ェ ー バ ー ( M .Weber) の官僚制モデル一には必ず難点が発覚する。現存し得 ない状況を想定しつつ,組織要件を吟味しても所詮無意味だからである。無論,開放的システム としてアプローチするという発想は,組織問題に取り組む際の姿勢や立脚点の転換を迫っている のであって,このことによって組織の基本的構成要素の摘出や一般原理の析出を否定しているの ではない。いかなる視点でアプローチしようとも,生存モデルとして有効な一般原理は常に不可 欠なのである。たとえば,バーナード

CC.I.Barnard)

がフォーマル組織の本質的な構造的構成 要素として指摘した専門化,誘因,権威,決定という

4

要素は,組織問題に対してどのような視

点•発想で迫ろうとも普遍的に定立できる有効性をもつものであり,組織が人間の社会的行為を

ベースにした協働体系であるという特性を放棄しないかぎり構造原理として存続しつづけるので ある。ただ,視点や発想の転換は,これらの要素の中味や形態に多彩な具体的態様を喚起したり,

各要素に内含される下位要素間の優先序列に変化をもたらしたりすることになる。しかし,この ことと一般原理の変質とを混同してはならない。発想の違いは,これらの要素の内容をいかにす べきかをめぐって湧出するのであって,要素そのものの是非をめぐって派生するのではない。そ の意味では,組織の基本的構成要素の体系的析出の問題と,組織モデルの実践的策定の問題とは 峻別されなくてはならない。

前者は組織の生存モデルに該当するものであり,組織論に取り組む際の最優先課題となる。こ れに対して,後者は有効モデルの色彩が強く,一般に,比較分析的視点にもとづいて状況随伴的 に生存モデルに肉附けするという形で吟味されるのが通例である。このアプローチのプロセス的

‑ 14  ‑

(4)

経営組織の一般原理と状況随伴モデル(岡田)

順序を踏襲して, 本稿も先ず, 経営組織の基本的構成要素を特にフェイヨリズム

(Fayolism)

に注目しながら吟味し,次に比較分析的視点から重点項目的に主幹要因の組織に対するインパク

トを概観し,最後に組織の構造的要素の中から,分業,権限と責任,集権化と分権化という重要 な要素を摘出して,その状況随伴モデル

(contingencymodel)

を検討する。

なぜ,今,フェイヨリズムなのか。比較分析の照合要因は何か,また今,どこに注目すべきな のか。脱工業化社会の分業,権限体系,分権化の方向はどうなるのか。これらが本稿の主要な問 いかけである。

1 .   経 営 組 織 の 一 般 原 理 ( そ の 生 存 モ デ ル ) ー フ ェ イ ヨ リ ズ ム 讃 評 一

組織論に産業社会学が切り込んでいく場合,一般にその端緒を,ウェーバーの官僚制理論

CM. Weber, "Burokratie", in

Wirtschaftund Gesellschaft

19211922),

あるいはテーラー の科学的管理論

(F.W.Taylor, 

ShopManagement

1903,

ThePrinciples of Scientific  Management

1911)

に置くのが通例となっている。 また, 時に,産業社会学の誕生に重要な 役割を演じたハーバード学派の人間関係論

CE.Mayo, 

TheHuman Problems of an Indu strial  Civilization

1933,F.J. Rothlisberger and W.J. Dickson, 

Managementand the  Worker

1939.)

に原点を求めるケースもみられる。果してこれでいいのだろうか。

ウェーバーの官僚制理論は,マクロにしかも概括的に抽象化された理念型的組織構造の提示で あって,簡明かつ判然とはしているものの単純すぎて実証科学という観点で査定すれば過大評価 されすぎてきた嫌がある。これをリトワク

(E. Litwak)

流に言えば, 「画ー的ではない事象

(non‑uniform events)

を取り扱う組織においては,すくなくとも次の

6

つの組織特性が重要 であるという意味で,ウェーバーの官僚制モデルとは質的に異なるモデルがより有効であろう。

すなわち,その特性とは,権限の体系を水平化すること,専門化を最小限に留めること,政策的 決定と管理的決定を程良く調合すること,義務や特権を特定の部署に先験的に限定することを抑 止すること,非人格的関係よりもむしろ人格的関係を重視すること 一般的規則を最小限度に縮 小すること である。」

I)

ということになり,動的社会に存立する組織にあっては官僚制について のウェーバーのモデルは形骸化しているとみなすべきだろう。またウェーバー・モデルに対して は,マートン

(R.K.Merton), 

セルズニク

(P.Selznick), 

グールドナー

(A.W. Gouldner) 

らによる実証的見地からの修正論や逆機能論が提起され, このモデルヘの疑問は尽きない

2)

。 テーラーの科学的管理は労働過程の組織化の方法を科学的に追求した最初のシステムとされて

1) E.  Litwak, "Models of  Bureancracy which Permit Conflict", A.J.S Sept., 1961, p. 179.  2) R. K. Merton, Social Theory ane Social Structure, 1957, pp. 195206. P.  Selznick, TVA and 

the Grass Roots, 1949. A.W. Gouldner, Patterns of Industrial Bureaucracy, 1954. 

‑ 15  ‑

(5)

関西大学『社会学部紀要」第19巻第2

いるが,ここで科学的とは機械化の原理を人間の組織労働に適用せんとする工学的分析を意味す るのであって,いわゆる社会科学的・人間科学的な組織の分析・解明という局面は内含されてい ない。時間研究,差別出来高給,職能的第一線監督者制度,標準化という 4本柱で編成されるテ ーラーシステムは,生産性や能率の問題をミクロにしかも人間機械観をベースして操作的に考察 した現場管理 (shop management)の技術であって,経営組織論というには局部的で問題があ る。組織管理の一般原則というよりも,現場の機械化された工程労働に従事している従業員の組 織化にのみ適用できる条件付き原則に近く,ウェーバーよりも具体的ではあるが,通則性,体系 性という点で診ると多くの疑問点をかかえている。

さらにメーヨーを中心とするハーバード学派の人間閑係論 (HumanRelations Approach)  は企業組織における人間的要索の重要性をホーソン実験を通じて立証し,機械論的人間観をベー スにした組織論や管理論の誤謬を見事に暴露したという意味で高く評価される。特にその実証的 研究を通じてまとめられた「社会体系としての企業組織」 (industrial plant as a social  sys tem)は注目すべき内容を提示している3)。すなわち, 企業組織が商品生産という経済的機能と 協働やモラールを維持するための人間関係的機能を円滑に成し就げる必要のあることを確認した 上で,そのために,技術的組織(これは外的・物理的環境と企業内の物理的,技術的環境より成 る),と人間的組織との整備・調整・均衡が不可欠であることを示唆した。そして, 人間的組織 については,コストと能率の論理に従って経済的目的を達成し,協力を維持するために政策化さ れ,規則化されたフォーマル組織と,情感の論理によって組織内のメンバー間に発生する人間的 つながりをベースにして構成されるインフォーマル組織とが摘出され,後者の重要性を強調した 点に顕著な特質がある。しかし,フォーマル組織に対する突っ込みが浅<'それぞれの組織の構 造上の原理を精緻に追及するというよりも,ィンフォーマル組織の意義を鼓吹した理論と性格づ けられる。その意味では理論の出発点においてすでに過ちを犯しているとみれなくもない。

このように見てくると 現代組織論の投錯点を ウ ,プーフー,メ ヨ などに求め ることには,鋳躇と懸念が湧いてこざるを得ない。私見では,現代組織論の喘矢はフェイヨルの

「経営管理論」 CH.Fayol.,  "Administration industrielle et  generale" 1916)ではないかと 考えている。フェイヨルの組織論は,いわゆる経営管理論学派 (administrativemanagement  theorists)と通称されている系譜の創始的業績であり,その内容はマクロではあるが体系的に,

フォーマル組織の構造上のフレームを経営管理の基本的原理を提示するという視点から,フェイ ヨル自身の経営者としての体験をベースにして,実証科学的に提唱されたものである。内容的に も体系的かつ分析的で高い水準の組織論として評価されるが,これまで,産業社会学がウェーバ ー,テーラー,メーヨーらと並んでなぜフェイヨルをとりあげなかったのか不思議でさえある。

( 註

1参照)

3) F.J. Rothlisberger and W.J. Dickson, Management and the Worker, 1939, pp. 551568. 

‑ 16  ‑

(6)

経営組織の一般原理と状況随伴モデル(岡田)

1

産業社会学の業績として高い評価を受けている力作のひとっ,

D.C.Miller and W.H. Form, 

Industrial Sociology ; an introduction to the sociology of work relations

1951および, この改訂版に近い第2

(1964

年刊)を例にとっても,

H.Fayolの名前は見当らない。第2

版は,本文8

32

頁,その中で引用され ている研究者の数は約5

00

名に及ぶが,

H.Fayol

は,その名前すら出てこない。それに比べて,

M.Weber 

が1

2

回 ,

F.W.Taylorが9

回 ,

E.Mayoにいたっては23

回 , レスリスバーガーでも

14

回,それぞれ登場し ている。

ウェーバーの官僚制理論よりも数年も前に公表され, その理論的梗概の卓越性にもかかわら ず,産業社会学がとり扱う組織論の局面に,その先駆的研究者としてフェイヨルが登壇しない理 由は,まず,産業社会学の発生基盤に起因していると考えられる。すなわち,産業社会学の生成 期における主題が,生産性や能率に顕在的に直結するような実践的構造要因,とりわけ生産行動 に効果的に影響力を示す管理技術的要因の追求に向けられ,いわば,速効薬的戦略モデルに関心 が注がれ過ぎたために,正統派組織論に対する評価がなおざりにされたためである。もう一つの 大きな理由は,研究者としての知名度や実績という面でのハンディである。

1960

年代以降,経営 組織論関係の文献では一般にフェイヨル理論に対して注目し,程度の差こそあれ,経営管理的学 派のパイオニアとして評価されるようになるが,産業社会学が組織論に触診する際には未だにフ

ェイヨリズムは影すら見せない。知られていないのか,それとも知っていて無視されているのか も定かでない。 トータルに診れば,明らかにフェイヨルはウェーバーを超えている。組織の一般 原理を経験科学的に析出し,現代の経営組織が当面している課題に対してもすでに含蓄のある予 知的洞察をも提起しているという点で,ウェーバーと同等の評価を受けても不思議ではない。こ のような観点に立って, フェイヨル理論に学史的に正当な評価を下すべ<, その梗概を吟味す る 。

フェイヨリズムの概括

経営管理論という視点から組織構造の一般原理を体系的に分析したフェイヨルは, 技師とし て,あるいは経営者としての経験をベースにして,

1960

年以降,俗にフェイヨリズムと呼ばれる ようになった卓越した独自の組織論を展開した。かれによれば,管理とは

(1)

将来を見通しながら 企画をし,

(2)

組織を確立し,

(3)

命令を出し,

(4)

調整をし,

(5)

統制を行なうことであると規定され,

管理の要素

(elementsof management)

が,企画

(planning)

組織づくり

(organizing)命

(command)

調整

(coordination)

統制

(control)

5

要素によって構成されるものとみ なされる

4)

。特にかれは組織づくりの問題に対して詳細な吟味を加えているが,これらの要素が そのまま管理機能に直結することを指摘しつつ,これらの管理機能が円滑かつ健全に達成される かどうかは,一般に原理,法則,通則などと呼ばれる特定の条件に依存するとして,その条件を

4) H. Fayol Administration industrielle et generrale  1916,  Trans.  by C.  Storrs.  General  and  Industrial Management, 1949, p.  5. 

‑ 17  ‑

(7)

関西大学『社会学部紀要」第19巻第2

「管理の一般原理」

(generalprinciples of management

」としてまとめたのである。 これら は,いずれもフェイヨ}レ自身が実際に経営に当って適用しなければならなかった原則を重点的に 析出したものである。そして,これらの原理は,港に通じる道を予め知っている人にのみ進路を   . .

決めるのに役立つ灯台の役割を演じるものだと比喩される

5)

。 その内容の概略を原著に則して紹

6)

し , 随時,若干のコメントを加筆することにしたい。(なお, 各原理の最後尾に原著の引用 頁を記載する。)

1  分業の原理

(Divisionof work) 

組織的な協力関係が重要になればなるほど,分業や専門化の原理が構造・機能という面で重要 性を増すことになる。分業の目的は同一の労力で質量ともに優れた成績をあげることにある。分 業によって固定化された職務に従事する従業員や,同質の問題処理に当る管理者は,この分業を 通じて,かれらの成果を極大化する能力をはじめ,業務遂行の確実性,職務上の熟達性,専門性 といった資質を習得できる。すなわち適正な分業とそれに割当られる人材の継続的職務遂行こそ が業務能力の向上に不可欠である。

(p.20) 

権限と責任の原理

(Authorityand responsibility) 

命令をする権利,服従を強いる権力が権限の中味であり,この権限のコロラリーとして責任が 生じる。一般に組織における権限は,仕事の性質上発生する業務上の公的権限

(officialautho rity) 

と特定人物の知性, 経験, 指導性, 人格, 勤続年数などが合成されて生じる人格的権限

(personal authority)

とに区別される。その上で, 優れた・望ましい管理者は公的権限を補 完する人格的権限を具備していなければならないと提言されている。この発想は,人間関係論以 降 , 管理者の

headship

leadership

との統合性という論法で展開されたリーダーのあり方 に関する所論の先がけである。

また,責任の原理については,権限の行使に対しては厳格な責任を課し,適確なサンクション を制度化することの必然性を指摘しているが,権限と責任の関係は現実にはなかなか一元的に処 理できないことも付言している。

(pp.2122) 

規律の原理

(Discipline)

規律の原理については,「規律は軍隊で主幹戦力に匹敵する」という, その実践的有効性に関 する側面と,「規律はリーダーが作るもの」 という規律の人為性に関する局而に注目する。特に 後者が管理の鍵をもち,その的確性が企業の繁栄に連動するという視点を示している。そして,

この原理は,

(1)

職陽のすべての階位に立派な管理者を登用すること,

(2)

可能なかぎり明白・鮮明

5) Ibid., p. 42. 

6) Ibid., pp. 2041. 

‑ 18  ‑

(8)

経営組織の一般原理と状況随伴モデル(岡田)

な合意や約束をとりつけること,

(3)

明晰な信賞必罰制度を確立すること,といった条件の充足に よって実現できるとされる

(pp.2224) 

命令の統一性の原理

(Unityof command) 

特定の従業員に命令できるのは特定の上司ひとりに限定すべきであるという命令系統の一元化 に関する原理である。もしもこの原理が破られると,権限は傷つけられ,規律は失なわれ,秩序 は乱され,安定性がなくなり,組織の中に混乱とコンフリクトを持ち込むことになると,この原 理の必要性を強調する。

(pp.2425) 

指揮の統一性の原理

(Unityof direction) 

命令の統一性の原理が命令の系路や流れに関するものであるのに対して,この原理は組織活動 のあり方に関したもので,活動の統合性,活動やメンバーの調整,業務活動の集中化を実現する のに本質的に適用される原理である。すなわち,同一目標の達成を目指す一群の活動集団に対し ては,ひとりの指揮官の采配による,単一の方策の執行

(onehead and one plan)

の原理を 適用すべきであると提言されている。つまり,一頭一策の原理とでもいうべきものである。

(pp. 2526) 

個人の私的利益を組織の共通利益に従属させる原理

(Subordinationof individual  interests to the general interests) 

特定の個人や集団の利益を,会社全体の利益に優先させてはならないという組織利益優先の原 理である。 ( p .

26) 

報酬の原理

(Remunerationof personnel) 

報酬は貢献の対価であるから,公正でなければならないし,労使双方に満足をもたらすもので なくてはならないという観点から,多彩な報酬のタイプ(時間給,職務給,出来高給,ボーナス 給,利益配分制)の効果や動機づけ的力を詳細に吟味している。そして,報酬決定の重要な原則 として,

(1)

公平性,

(2)

熱意の誘引性,

(3)

過剰報酬の回避,などを挙げ,同時に,貢献意欲を誘発 する誘因として非金銭的報酬の果す役割の重要性を指摘している。

(pp.2633) 

集権化の原理

(Centralization)

集権化は,それ自身善悪の尺度で評価したり,経営者のオ覚で諾否を決めたりできるような性 質のものではなく,すべての有機体はいうに及ばず,すべての組織に必然的に現象化する原理で ある。したがって,集権化と分権化(権限の集中と分散)の問題は単なる調和

(proportion)

の 問題であって, 現実の状況に合うように両者の按分を最適に決めることが求められる。実際に

‑ 19 ‑

(9)

関西大学「社会学部紀要」第19巻第2

は,労使双方の絶対的価値が何か,また両者の相対的価値はどうかということによって,集権化 と分権化の相対的比率が変化することになる。

(pp.3334) 

位階制の原理

(Scalar chain) 

位階制は権限の原則によって確定した地位の連鎖を示し,通常,社長から平社員にいたる職階 制を指すが,実質的には,あらゆるコミュニケーションや情報(とりわけ上意下達や下意上達)

が往来する道筋と道順を意味している。この道順を乱さない整然としたコミュニケーションの流 れを確立する原理であるが,組織が機動力と柔軟性や迅速な動きを求められる時,反ってこの原 理が障害になることにも言及している。つまり位階制,権限の体系,命令の統一性といった原理 を重視しつつも,迅速性や能率を損わないような抜け道的}レートをうまく用意し,作動させるこ

との必要性に目を向け,地位間の最短距離を道板で結ぶ「

gangplank

」方式の導入を提言する。

いうまでもなく,組織がこの道板方式を濫用しすぎると混乱とコンフリクトが生じ,逆効果にな るので,この方式には危険性が同居することも的確に示唆している。

(pp.3436) 

10 

秩序の原理

(Order)

物の秩序

(materialorder)

と人の秩序

(socialorder)

を維持する原理である。組織活動は 一定の秩序のもとで整然と遂行されなければならない。その場合,物の秩序とは,原料,部品,

器具,機械など組織が利用するすべての物質を,使い易さや能率という点から,もっとも適正な 場所に整然と配置または敷設しなければならないことを意味し,秩序の目的は非能率や無駄を排 除することにあるとされている。これに対して,社会的秩序とは,人材の適性配置あるいは適材 適所を厳守することによって達成されるものであるが,これを有効に実現するには,まず立派な 組織をつくること(すなわち組織活動の円滑な運営や目標達成のために必要なポストを体系的か つ精巧に策定すること), 次に最適の選択をすること (策定されたボストを的確にこなせる人材 を登用・抜擢すること)の両者が不可欠であると指摘する。要は組織はその全ての成員に,かれ らに適わしい地位・職務を用意し,附与しなければならないし,かれらは賦課された任務を整然 と遂行しなければならないという原理である。

(pp.3638) 

11 

公平の原理

(Equity)

組織の中に公平さや公正感がみなぎっていることによってはじめて,組織に対する貢献意欲や 一体感が培われ,積極的な任務遂行が可能になる。公平感は,良識・善意・経験・好意に裏付け された親切と公明正大で平等な制度とがうまく融合して始めて湧出してくるものである。この原 理では,とくに公平感を定着させるために,管理者は絶えず吹き込みの努力をしなければならな いという指摘に注目すべき含蓄がある。つまり,公平で平等なシステムが運行しているという事 実と,それを組織成員が公平で平等であると感じとることとは別問題だとする指摘が重要なので

‑ 20 ‑

(10)

経営組織の一般原理と状況随伴モデル(岡田)

ある。そこに動機の教導や説得の技術といった人間関係上の対応が介在するわけであるが,フェ イヨルはこの点でも卓見を披露したことになる。

(p.38) 

12 

固定的在職の原理

(Stabilityof tenure of personnel) 

組織活動が複雑化してくると,その技術や方法を習得し,職務に習熟するためには,かなりの 時間がかかるので,ある程度継続して一つの仕事に従事することが必要になる。頻繁に人事移動 をするよりも,人事を固定化することのメリットを主張する原理である。フェイヨルによれば,

一般に繁栄している企業は,経営管理層の人事は固定化しており,業績のよくない企業ほど人事 は不安定で異動が激しいということになり,経営管理層の異動性(継続的就任・在職期間)と経 営実績との間には因果関係があることになる。平凡ではあるが永年にわたって就任している経営 者の方が, 傑出してはいるが去就の定まらない経営者よりも望まれるというわけである。ただ

し,この点についても,かれは,バランスと程度の問題を提起してはいる。

(pp.3839)  13 

率先性の原理

(Initiative)

自分で計画を案出し,その計画を首尾よく成就することが,知的人間の最高の満足の一つであ り,それはまた人間の努力を喚起するもっとも強力な発奮剤でもある。率先性とは,自分で考え て,自主的に活動する力であり,発案し,執行する自由,またこの自由を行使する機会を提供す ることによって啓発される。仕事や組織に対する熱意やエネルギーの発散は,この原理によって 増強される。組織が直面する困難や危機を克服する際にこの率先性が強力な役割を演じるものと 想定される。また,この原理を守るためには,経営者は自己の個人的な見栄を犠牲にする覚悟が 必要であると述ぺている。

(pp.3940) 

14 

団体精神の原理

(Espritde corps) 

団結は力なりという古言通り,チームワークや人間関係の安定・調和が強力な組織力になるこ とを強調した原理である。団体精神を培養する方法の中で,経験的に重要と思われる原則は,

(1)

一糸乱れぬ命令系統の一元的運営,

(2)

分裂支配の回避,

(3)

文書によるコミュニケーションを濫用 することの回避である。命令系統が錯綜し,命令に一貫性が失われると集団は困迷と混乱に陥入 る。分裂支配や内部分裂は組織の敵であり,最大の罪悪である。文書による非人格的・間接的コ ミュニケーションは人格的関係を阻害し,憎悪や対立の引き金となり,集団に感情的な軋礫を招 く原因になる。すなわち,人間関係管理やコミュニケーション管理の問題に部分的に言及した原 理である。

(pp.4041) 

これらの原理がオールマイティでもなければ,絶対普遍的なものでもないことをフェイヨ}レ自 身公認している 。 しかし,これらの原理が組織構造や組織機能を支配する重要な原則を体系的

‑ 21  ‑

(11)

関西大学『社会学部紀要」第19巻第2

かつ的確に定立している点を見逃がしてはならない。無論,この種の理論展開には必然的に状況 規定的限界が伴う。たとえば組織における管理活動の基軸を命令・位階・統制といった旧式の支 配中心的原理に置くのではなく,むしろ組織のメンバーの潜在的可能性を開花し,自発的協力を 促し,創意や自主性を奨励するという視座から見直す傾向が表面化した現代の経営組織では,新 しい原理が模索され,いわば,情報管理の原理,意思決定の原理,専門職業主義の原理,

JE(Job  Enrichment)

の原理といった諸原理が大きく浮上している。その意味では,フェイヨリズムは,

当面の組織問題に対して今なお有効な理論的ベースを供給しつづけてはいるものの,環境随伴的 に補強される宿命にあることは当然である。無論,現代の組織問題との絡みで重要な原理に浮上 してきた上記の原理についても, たとえば情報管理の原理についていえば, 特にバーナード

(C. I.  Barnard, The Functions of the Executive 1938)

以後,組織論の中心的課題の一つと して,(これまで命令の一元性や権限の体系の原理に付随するものとして取り扱われてきたので あるが)注目を浴び,今では組織の基本的要素とされているが,コミュニケーションの問題を重 視して, いくつかの原理を提唱しているし, またその機動性と効率化を狙った道板系路

(gang plank')

論,俗にフェイヨル・ブリッジ

(FayolBridge)

と呼ばれている理論町ま,垂直的コミ

ュニケーションをカバーする水平的コミュニケーションの重要性を透視した草分け的理念であ る。また専門職業主義の原理との絡みでいえば,秩序の原理の中で,かれが適材適所を強調し,ま た固定的在職の原理の中で継続的に同一職務に従事することから体得できる専門性を尊重すると いう形でプロフェッショナリズに触れている。さらに

JE

の原理についても,率先性の原理によ って,計画の立案に参加し,その計画をうまく成就できるような機会を提供することが人間の自 発的努力を得る最強の誘因となるので,経営者はある程度の犠牲は覚悟の上で勇断すべきことを 訴え,

JE

論の先ぶれ的提言をしている。このような原理や着想は,現代組織論にも通じる卓越 した洞察力と稀有の現実的分析力に支えられ,結果的に企業を取り巻く環境の著しい変化に対し ても十分通用する組織のガイドラインをいまだに提供し続けている。経営者としての鋭い眼光と 理論家としての抜群の眼識が合体して醸成された独特の均衡

(proportion)

の論理が,古典理論 にみられがちな硬直した非現実的原理とは異なって,現代組織論の手掛りとなるような柔軟性・

応用性・新鮮味に充ちかつ洗練された一般原理の提起を可能にしたのであろう。現代組織論の主 流であるシステム論的アプローチという立場から評すれば,確かにフェイヨリズムにも限界があ り,難点もある。しかし,組織の内的システムを分析的にアプローチする場合,方法論上,それ を開放的ヽンステムという範域で処理しなければならないということが,ストレートに閉鎖的シス テムとして扱うことが科学的誤謬であるということに必ずしも結びつくものではない。その内容 が示す通り,フェイヨルの組織論は古典理論の中でも比肩しうるもののないほど高水準にあるこ

とは明白である。

7) Ibid., p. 41.  8) Ibid., pp. 3435. 

‑ 22  ‑

(12)

経営維織の一般原理と状況随伴モデル(岡田)

組織論の学史的創世期

(1920

年代まで)の特徴は,組織の構造的原理を閉鎖的システムという 視点から遡及したことにある。それは,主として,すべての組織やあらゆる経営管理システムに 普遍的に適用できるような原理・原則・通則を探究し,提唱することに傾注し,概して,規範科 学的・理念的発想に偏っていた嫌いがある。その意味では組織問題を現実科学的分析視角から正 視するという側面が欠落していたとも言える。たとえば,ウェーバーの官僚制モデルの構造原理 にみられるように,それらはあまりにも単純かつ原則的すぎて抽象度が高く,平板な常識,原則 的な自明の理としての性格が強く,ほとんど応用には役立たない,いわば観念的な金言に過ぎな いものが,この時期の理論には多い。ウェーバーの非人格性の原理やテーラーの職能的第一線監 督者制度の原理のように,人間の活動を機械モデルに見立てて提起されたものが多く,現実や実 体から大きくかけ離れた局面で現象なき原理探しに躍起になっている有様が随所に窺える。想定 の誤りはともかく,全体的に緻密な分析的洞察という点でも今ひとつ体系性を欠いている。これ に対して,フェイヨルの場合,いろいろな批判はあるにせよ,分析モデルと実践モデルとの統合 性を射程に入れつつ組織の一般原理を経験科学的に提示し,結果的にそれらは現代組織論への礎 石に通貫しているという意味で,

1910

年代の理論としては比類なき卓越性を誇示しているように 思える。

フェイヨリズムに対しては,一般に実務家としての体験に依拠した理論で実証的・科学的分析 とはいえない,あるいは人間組織という面からのアプローチが弱い,また組織に対する環境的影 響力についての言及が十分ではない,といった批判が出されているが,このことで,フェイヨル の理論が過小評価されてはならない。組織の構造に関する基本的要件の重要なガイドラインはほ とんど析出・網羅されており,特に注目すべきことは1

940

年代以降になって噴出する組織課題の 多くが,すでにフェイヨルによって実質的に問題提起され,触診されている点である。フェイヨ ル以後に提唱された巨匠の理念型といえども,それが官僚制という特殊形態の組織について言及

したもので経営組織一般について述ぺたものではないということを割引いても,フェイヨリズム を超えてはいない。巨匠という立看板では語れない力強い現実分析力と健かな鑑識眼がそこには 遊っている。

社会学者であろうとなかろうと,また巨匠であろうとなかろうと,要は,組織に何をみたか,

が問題なのである。それが社会学的視点からの発見事項であるならば,素直に社会学の成果とし て認定することが肝要である。その意味で,フェイヨル理論は,組織社会学あるいは産業社会学 の卓越した先駆的業績として正当に評価されなければならない。

2. 

現 代 経 営 組 織 に 対 す る シ ス テ ム 論 的 考 察

経営組織の実践的有効モデルは,一般原理を状況に照らして,より有効に肉附けするという課 題に係わっており,それは,原則として状況随伴的に策定される。この点についてもフェイヨル

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参照

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5 まとめ

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問題は︑か L

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む す び このようにして, われ われは, ホーマ ーに従いながら, まず経営概 念を, 家計,

本稿では,そのようなムーニー組織論が誕生するまでの経営組織ならぴに