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企業交際費管見

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企業交際費管見

その他のタイトル An Interpretation of Entertainment Expenses in Business

著者 酒井 文雄

雑誌名 關西大學商學論集

9

5

ページ 371‑389

発行年 1964‑12‑30

URL http://hdl.handle.net/10112/00021583

(2)

371 

企業交際費の問題は︑会計学上︑財務会計︑管理会計︑税務会計さらには会計監査というように︑極めて多方面

の領域にまたがり︑しかもこれらの各領域で︑ともに未開拓の状態にある難問の一っといえよう︒この理由の一班

は︑企業交際費の性格がその名称の示すほどには単純でなく︑またかかる出費をもたらす行為そのものがその現象

形態とは別に︑多分に企業の最高経営者層の機密行動に直結する本性を備えているからである︒

だが企業交際費の問題は︑それが近年︑資本蓄積策の補強という立場から税制上の規制の対象とされるに及んで︑

個別企業の会計問題としては勿論︑国民経済的立場からも漸くその批判と反省の目が︑ここに向けられようとして

いる︒この問題は︑果して国民経済的にも会計学的︵個別経済的︶にもどのような科学的評価と位置ずけが︑なさ

れるべき性質のものであろうか︒企業交際費は現下の経済体制上の社会的濫費であり︑会計学上も資本損失として

の利益処分的性格のものでないのか︒

小稿の課題は︑こうした問題意識のもとに︑わが国における本問題についての従来の研究成果を整理し検討して︑

企業交際費管見︵酒井︶

(3)

372 

企業交際費管見︵酒井︶

問題解明のための若干の手がかりをえようとすることにある︒以下この問題を︑山企業交際費の本質と実態︑②そ

の会計学的性格︑③会計的管理手法とその限界︑④課税制度の役割と特徴︑⑤アメリカの動静という順序で︑考察

企業交際費とは︑本来︑企業が経営上の便宜から︑得意先︑仕入先︑取引銀行︑関係官庁等その外部関係者に対

し︑接待︑饗応︑慰安︑見舞い︑贈答︑その他これらに類する行為をするための各種出費の総称である︒そして︑

これらの出費は現実の会計処理上︑その支出内容で贈与︑リペート︑会議費︑広告宣伝費︑開発費︑給与等と通常

その分かちがたい境界線を接しており︑そのうえ税制上の規制措置とも相まって︑概念上の混乱が甚だしい︒

ところで︑交際費の概念はもともと︑いわゆる生産経済単位たる企業会計上のものではなく︑消費経済単位たる

家計上のものといえると思う︒したがって︑交際費の概念はそれがたとい企業会計上に転用されたばあいでも︑企

0 0 0  

業負担の個人的消費の形態で︑受入れた側にあるいは当事者双方に対して︑その経済的・心理的利益を直接供与す

るという︑特殊な内容の出費である︒その上︑この出費はのちにもふれるごとく︑企業におけるその予算編成上の

0 0 0  

最小構成単位たる﹁個人枠﹂の性格からみて︑多分に特権的地位の余得としての実体を備えている︒これらのこと

から︑企業交際費という名の個人的消費は︑企業の立場からみても︑単純に字義通りの原価や費用では必ずしもあ

りえないことを︑われわれはここに注目すべきであろう︒

わが国の企業交際費の年間支出額がいかに九大なものかは︑第1表に示すところからもほぼ推測できる︒すなわ

ち︑わが国の全法人の年間交際費支出額は近年四︑

00

0億円に近い金額で︑これは国民所得の二彩強に該当し︑

(4)

373 

一般にその過大な金額が注目されている広告費支出額を遥かに上まわる巨額なものとなっている︒そして︑この巨

0 0  

額の企業交際費の分布がその絶対額で通常︑企業規模に比例して巨大企業に偏在していることは明瞭だが︑この負

担の軽重度合をその売上高に対する百分率で見てみると第2表のごとくで︑逆に企業規模︵取引規模︶に反比例し

0 0 o  o 

て中小企業に過重となっていることが推測される︒たとえば︑某巨大製鉄会社や某巨大電気メーカーの年間交際費

支出額は約六l七億円だが︑某中小建設会社はこれに比べれば支出絶対額では遥かに少額で︑しかもその売上高に

対する百分率では六彩弱にも及んでいる︒そして︑この五l六彩という比率が︑各業種を通じて零細企業一般の︑

おしなべての状態かと思われる︒しかも︑この企業交際費の絶対額での巨大企業への偏在の程度は︑同一規模の企

業間にあってもその業種により若干の相違を示し︑中小企業における負担の軽重度合も︑単にその企業規模に反比

例するだけではなく︑需給関係の安定度︑大企業との系列関係の有無とその強弱度等で︑相当の隔差を生じている︒

つぎに︑右のような巨額の企業交際費を︑その支出側と反対の立場の収入側から︑いま少し考察してみよう︒こ

の大部分︵三分の二程度といわれている︶がいわゆる社用的な遊興飲食費として料飲業に受入れられ︑その残額が

外商部を窓口とした百貨店やその他の業種に帰属することはいうまでもない︒かかる関連のもとに︑わが国特有の

ゆがめられた風俗営業の繁栄が約束されているのである︒通産省が昭和三十七年六月一日現在で実施した﹁商業セ

ンサス﹂によると︑わが国の飲食店は店数にして二四万三︑

00

0店で︑その従業者数︵事業主︑家族従業員を含

む︶は九八万人︑一ケ年間の総売上高ほ六︑四一四億円であるという︒このことは︑昭和三十五年に実施された同

じセンサスの実績を基準に推定すると︑わが国の社用的な料飲業である料亭︑酒場︑・ハー︑キャバレー等の規模が︑

店数で約九万七︑

00

0

0彩ー三十五年実績︑以下同じ︶︑従業者数で約四三万人︵四四彩︶︑一ケ年間の売上

高で約二︑五 00億円︵三九・八彩︶にも及ぶ巨大なものであることを︑物語っていな︒そして︑これらの料欽業

企業交際費管見︵酒井︶

(5)

374 

1表 企業交際費支出の規模

八度1(1)交際費支出額 1(2)対比率売上高(3)I 28 

750億円 1 o.9 │1.290.84

29 

700 

0.1 

1.13 

o.so 

30 

720 

o.6 

1.00 

o.90 

31 

│ 

I750資人本金500│万円o.5 ) 0.98 0.97 

32 

800 45

0.97  11.14 

,資人本金1, 円以) 

33 

850 

1 。•45 I 

1.02 

1.21 

34 

930 

o.4 

o.96 

1.51 

35 

1,200 

I

1.05  1 1.52 

36 

1,500 

I‑

1.09 

1.60 

37 

│ 

(全法1,8003,500)円

(全法人1. 17│  12.27%).25 

1),  (2)欄は大蔵省調べ,(3)欄左は経企庁調べの国

民所得に基づき(1)の金額の百分率を求めたもの,(3

右は電通調べによる。なお,(1), (2)欄については,高

垣金三郎「ゆがんだ社用」,朝日新聞,3771日朝

, 4面,竹内益五郎「交際費の税務上の問題点」,簿

3710月号,P.28,金井澄雄「会社交際費の内幕」,

別刷中央公論, 3F経営問題秋季号, P.274を参照。

ものとは︑決していえないので

明自である︒なる程︑巨額の企 業交際費が︑これらのゆがめら れた風俗営業における一部事業

主の危大な利潤と多数従業者の

不安定な生計費とをともに保証 するものには違いないが︑だか らといってこのことがまた︑健 全な国民経済の発展に寄与する 山海野安美﹁交際費の上手な税務処理﹂︑三七年十月︑日本法令様式販売所刊︑一八l一九頁︑前掲︑金井澄雄﹁会社交際

費の内幕﹂︑田辺昇一﹁会社を食いものにするのは誰か﹂︑三九年六月︑日本法令様式販売所刊︑一六0

頁 ︒

図荻野義夫﹁宴会﹂︑朝日新聞︑三八年一月十七日︑朝刊五面︒前掲︑海野安美﹁交際費の上手な税務処理﹂︑一六頁︒

③木山喬﹁交際費課税について﹂︑企業会計︑一二四年六月号︑後掲︑第2

④﹁欽食店プーム﹂︑読売新聞︑三九年一月十三日︑朝刊四面︒記事中︑昨年とあるのは︑三七年の誤まりと思われる︒ の繁栄が︑国民経済的にみて︑0

0 O  

0 0  

資本と労働力の全く不生産的な

0 0  

濫費に通ずるものであることは︑

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375 

2表 企業交際費の規模別・業種別の負担度

伝 種 ¥ 、1交際費対売上高311年間取引高 最 高 会 社 │ 10.4億円 倉 庫

最低 11

1.53 

44.0 

最 高

II

1.1.995 

109.9 

最低 II

o.59  1280.9 

最高 II

2.06 

36.5 

ガラス・土石

最低 II

│ 

o.64 

│ 

217.7 

最高 II

│ 

4.58 

│ 

6.4 

繊維機械

最低//

o.46 

112.s 

最高 II

3.37  1 56.7 

最低//

o.04 

121.6 

最高 II

1.9s 

56.2 

最 低 II

o.43 

3so.2 

最高 II

2.so 

14.9 

最低//

0.14 

230.0 

最高 II

1.62 

38.9 

最 低 II

o.19 

1ss.3 

稲葉国夫「交際費課税の実態」,税経通信,

3511月号, P.142,資料(][)より,原資料は,

上場会社312社の33年度の有価証券報告書より 作成されたものである。

⑤女性だけで︑四O0

. 

~

調l

調

00

0

その会計学的性格

企業交際費管見︵酒井︶

企業交際費の会計学的性格の吟味は︑従来とかく不問に付され勝ちな問題だったといってよい︒わが国の文献上 も皆無というわけではないが︑若干の相異なる見解が幾人かの人達によって︑漸く近年において多少とも展開され

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376 

②限定的費用説多数の税務当局者や一部実務家もこの立場を認めているが︑

1研究者の見解としては沼田嘉穂

教授のそれに︑これをうかがうことができる︒教授の見解は︑これを約言すると︑企業交際費の費用性が限定的な

ものである以上︑その金額も当然狭い範囲に限定されるというものである︒すなわち︑教授によれば︑﹁交際費の 全くふれようとしない点に︑注目すべきであろう︒ 企業交際費管見︵酒井︶

てきたという現状である︒これらの見解は︑大別して山全面的費用説︑②限定的費用説︑③利益処分説とでも仮称

しうるものであるが︑十全な論議の展開されないままに︑第一の全面的費用説が優位に立っているのではないか︑

と思われる︒以下︑これらの諸見解の代表的なものの吟味を通じて︑私見の一端をのべてみよう︒

山全面的費用説実務家のほとんどすべてがこの立場に立っていることはいうまでもなく︑研究者の見解とし

ては木村重義︑新井益太郎両教授の論稿に︑これをうかがうことができる︒まず︑木村教授のばあいは︑相異なる

見解の存在に言及されながらもこれが批判的吟味は避けられ︑﹁交際費が︑財務会計上︑経営の費用であり︑した

がって経営の収益に対応する性格のもので︑期間損益計算上︑年度収益との対応計算にもたらされなければならな

いことは明らかである︒﹂と︑断定されるだけである︒これに対して︑新井教授のばあいは︑交際費の費用性につ

いては同様に全面的断定の立場に立ちながらも︑その必然性の根拠を問われないままに﹁結果的にみて売上収益の

増加に役立たないものがあれば営業外費用として処置することも已むをえない︒﹂として︑最終的には費用として

の交際費が︑一方では原価性の有無で山製造原価︑③営業費︑③営業外費用︵売上収益の増加に彼立たない︶と形

態上三つに分解し︑さらに他方では収益への期間的対応関係の如何で︑これら三形態にいま一っ④繰延資産︵徐々

に売上収益の増大に役立つ︶という第四形態のものが随伴する経過を︑素描しておられる︒

何れにしても︑われわれはここで︑この見解が現行の会計実務を無条件に肯定し企業交際費そのものの本質には

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377 

きかえる誤まりを︑おかしているのである︒

内容が漢然とし︑その経営活動上の役立性が確実でないということは︑交際費の費目の適正並びに金額の適正につ

いて多くの脆弱性を認めないわけにはいかない︒交際費費目の適正についての主張は経営活動を有利に行うために

は相手の善意をえた上で取引する必要があり︑その目的から交際のために費用を負担することはやむをえない︑と

いうことである︒この主張は実務を前提とする以上︑多分に根拠を有する︒よって経営活動の上から当然発生する

費用多くの人件費・物件費の如きに比して︑費目としての薄弱性はあるにしても︑これを全く否定するこ

とは正しくない︒とにかくこのようにして交際費は費目としては是認することができる︒しかし費目の薄弱性はそ

③ の結果として金額の適正についての限度が狭い範囲に限られることは当然であるC﹂と︑いわれる︒

この種見解についてのわれわれの疑問は︑費用性ある企業交際費についての金額上の限定がどのようにして合理

的に解決され︑限定された金額以上の現実の出費がどのような性格のものとして理論的に位置づけられるか︑とい

うことである︒この疑問の解明を通じて︑実は全体としての企業交際費における費用性の欠如そのものが︑より明

確化されるのでないかと思う︒この種見解は︑企業交際費の性格規定といった質の問題を︑どこかで量の問題とお

③利益処分説右の二つの立場に真向うから対立するのが︑企業交際費を利益処分項目として把握する第三の

1 4 1  

見解である︒この見解を主唱されるのは岡部利良教授であり︑坂本藤良氏の立場もほぼこれと一致している︒

岡部教授の見解は︑これを約言すると︑

業経営上も賃金︑減価償却費︑原材料費等と同じ意味で必要不

I I J

欠の費用ではなく︑会計学上︑その本来の性質に

1 5 1  

したがい︑利益処分項目として取扱うべき性格のものだ︑ということである︒教授の見解は︑企業交際費の山経営

上における必要不可欠性の検討︑②支払い財源と支出そのもの︵価値消費︶の性格の吟味︑③全額課税説の主張と

企業交際費管見︵酒井︶ 企業交際費は本来利潤を財源として支払われる社会的浪費で︑これは企

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378 

第二点については︑教授によれば︑ 必ずしもすべて費用をなすものであることをなんら意味するものではない︒もし︑このようなことを理由として費用なるものを考えるとするならば︑なことにもなってしまうであろう﹂︒ やがて﹂法人税︑配当︑積立金のようなものさえ︑

賃金︑減価償却費︑原材料費等というものは﹁企業経営上まさに不可欠なも

のである︒しかし︑交際費のようなものは︑けっしてこういったものではない︒⁝⁝しかし︑それにもかかわらず︑

人々は交際費をもって企業経営上いかにも必要性のあるもののようにいうのであるが︑じつはこの場合にいわれて

. . .

. . .  

いるこの必要性というのは︑たんに経営者たちの競争上の関係やあるいは彼らのいわゆるみえによるものであると

いってよい︒⁝⁝したがって︑かりに経営者全部がこういう交際費をすっかりやめてしまえば︑企業経営にはべつ

になんら決定的な支障など生じないうえに︑この無駄な社会的にも大きな浪費である交際費というようなものに︑

あれこれ気を使う必要などもなくなってしまうはずである︒﹂と︑

あるが︑じつはこの点については︑元来交際費︑

かということをみるならば︑一応明らかにされるはずであるといってよい︒そしていまこのような点からみると︑

交際費は︑少なくとも一般には︑本来えられた利潤︵すなわちもうかった利益︶を財源として支払われたものであり︑

したがってその本来の姿︵本質︶は利潤を意味するものといわなければならない︒⁝⁝もっとも︑このような種類

のものであっても︑それに収益から差引くことが認められる根拠のあるものであればべつであるが︑しかし交際費

の場合には⁝⁝こうした根拠として考えられるものはなんら存在しないといってよい︒したがって︑それは︑当然 第一点については︑教授によれば︑ 企業交際費管見︵酒井︶

いう三つの論点から成立しているから︑この内容をいま少し考察してみよう︒

﹁もともと︑ある支出が企業経営上必要なものであるということは︑それが

﹁すべて費用とされるよう

﹁交際費とは本来どのようなものであるかについてさらに考えてみる必要が

. .

. .

. .  

一般にどこから︑あるいは何を財源として支払われるものである

(10)

379 

. . .

. . .  

その本来の性質にしたがい⁝⁝利益処分項目としてとり扱うべきものとしなければならない︒﹂と︑

第三点については︑教授によれば︑﹁本来からいうと︑じつは交際費については全額課税こそ当然とってしかる

••••••••

べき方法なのである︒⁝⁝したがってまた交際費を使うなら︑それに該当する利潤部分にも当然税金を支払ったう

えで堂々と使ったらいい﹂のであって︑﹁不当な計算の方法から生ずる重大な社会的諸影響︵従業者には賃金ストップ

右の考察からもうかがわれるように︑岡部教授の企業交際費についての性格規定は︑その支出そのものの性格に

おける費用性の否定とその支払い財源における利潤性の指摘から︑二面的に形成されている︒そしてこのばあい︑

どちらかというと︑教授は︑あとの支払い財源における利潤性の指摘にウェイトをおかれて︑支出そのものの積極

的な性格措定をやや等閑視された傾きがあるのではないかと思う︒企業の資本価値の外部への流失形態にほ︑費用

と利益分配︵狭義︶とだけではなく︑減資や資本価値の単なる喪失としての損失もこれに加わる︒価値消費として

の企業交際費の性格措定は︑まずこれらの何れかのものとして︑主体的・客観的になされる必要がある︒私見では︑

0 0  

企業交際費の会計学的性格は現下の経済体制に基づく制度的な損失であり︑かかる損失なるがゆえに︑利益処分項

目︵広義︶としてそれは︑会計処理される必要があるのでないかと思う︒そしてまた︑このように理解してはじめ

て︑﹁社会的浪費﹂という国民経済的認識と﹁制度的損失﹂という個別経済的認識との論理の一貫性が保たれ︑こ

こに企業交際費の削減と止揚についての強力な主張が客観的にも主体的にも妥当性を︑与えられてくるのである︒

簿

いっそうそうである︒﹂と︑

を念頭におい

(11)

380 

簿

1 ‑

企業交際費の会計的管理手法が予算統制であることは周知のごとくだが︑﹁交際費の予算統制は︑予算担当部門

のみの力ではできるものではなく︑実施部門での良識と適切な判断が必要であって︑多くの会社では︑交際費の支

弁については相当高級の幹部がチェックしているようである﹂︒そして︑﹁交際費をもしチェックするとすれば︑相

63 当細かいチェックが必要であって︑会計的な手法では限られた範囲しか統制できない﹂性格のもので︑﹁単に︑予算統制で交際費のムダをなくそうとしても︑それこそムダな努力に終わる﹂だろうと︑いわれている︒この理由は︑

基本的には坂本藤良氏や谷山治雄氏のいわれる﹁使える身分になったら︑幾ら使っても使った方が得ではないかと

いうような﹂社内事情にあって︑今日の企業交際費予算の中心的な最小構成単位たる﹁個人枠﹂が︑多分に特権的

地位の﹁余得﹂

1 1

﹁隠れた給与﹂としての実体と右の地位に照応した上に厚く下には薄い逆ピラミッド構成を︑

とっているからである︒すなわち︑企業交際費予算ほ︑なる程一般社員にとっては︑山上司による事前︵事後︶承

認性︑②公給領収証の添付制︑③金券制︵切符制︶ヽ④業績主義による割当制等といった﹁死に金﹂チェックのガ

ンジガラメの管理制度であろうが︑政治力のある社長や重役のなかの実力者にとっては﹁必要とあらば経理部長に

命じて︑他の勘定科目から︑いくらでもヤ``︑交際費を出させることができる﹂︱つの目安にしか︑すぎないからで

10

 

(12)

381 

ところで︑企業交際費の予算総額が︑恐らくは広告宜伝費予算に準じて︑過去の実績や将来の予測を勘案の上︑

山百分率法︵売上高法︑純益法等︶②競争者対抗法︑さらに部分的には③販売課業基準法︵クスク︒メソッド︶等の併

用で決定されることは︑十分推測できる︒そして︑この予算総額の各分課︑各個人への配分方法には﹁ある会社で

は︑部長がいくら︑課長がいくら︑課長代理がいくらと毎月のワクを決めているところもある︒ある会社ではそれ

を毎月現金で渡しているところもある︒またある会社では︑各課ごとに毎期の予算を決めているところもある︒﹂

といった形態上の多様性がみられるとはいえ︑これらの各形態を通じて︑逆ビラミッド型の階層的な﹁個人枠﹂集

団が︑前述の特権的地位の余得という一面と業績主義による能率管理という他面とを︑ともに浮彫りにするのであ

標準的な某商社における︱つの具体例を︑みてみよう︒﹁まず︑毎月の成績︵利益︶によって各部のワクが決定さ

れる︒そのうち二0彩は部長のものにプールされて︑残りの八〇彩が各課に配分される︒これを一00として︑こ

のうちの三0彩は︑各課の人数に比例して分配されるが︑残りの七0彩は︑それぞれの課の前月の成績に従ってあ

ん分されることになっている︒こうして各課の配分が決まると︑各個人のワクが︑これも前月の成績によって決め

られるのである︒もちろん︑ワク内だからといって︑課長の承認なくして︑自由に使うことは許されない︒事後承

認は絶対に認められないのだ︒しかも︑この接待の申請は︑社長決裁に持ち込まれるというきびしさ氾︒﹂と︑い

われている︒そして︑大概の商社ではこのような配分方法だが︑なかには販売員にさらに個人別売上利益の一部を︑

枠外の交際費として与えるところもあると︑いわれている︒われわれは︑ここで多少︑個人枠にとらわれすぎた傾

きがあるかも知れない︒ る ︒

企業交際費管見︵酒井︶

(13)

382 

四 ︑

簿

沿

わが国の企業交際費に対する税制上の一部規制措置は︑昭和二十九年四月時限立法の形で﹁租税特別措置法﹂の

一補完事項︵同法第六十二条︶として制定公布されたことに始まるが︑これはその当初の目的であった社用消費の

抑制とは別に︑企業間の交際費負担の差別化を媒介に︑戦後における巨大企業への一連の重点的な減税政策による

資本畜積を補強し︑同時にかかる巨大企業による独占的な市場支配の安定強化をもたらすという役割を果すもので

あった︒そして︑わが国の税務当局者はすでにこの前年の二十八年︱︱一月︑同様の目的から︑法人税徴収の際のある

種の交際費認定基準を部内に内示していたのであるが︑これが制度的に確立したのはやはり︑その翌年のことであ

った︒しかも︑この課税制度はその変遷の概要が第3表にみられるごとく︑その田対象法人︑②適用期間︑③損金

算入限度額の算定基準︑④課税標準額の範囲について数次にわたる改変をみながらも︑爾来今日まで十ヶ年余を経

過し︑さらにその効力が四十二年三月末日に及ぶものである︒

この課税制度の主たる特徴は︑右の③損金算入限度額の算定規準と④課税標準額の範囲とに求められ︑この二つ

はともにこのばあい︑隠蔽利益への課税のための本来的課税標準としての︑現実の企業交際費支出額の二重の矯小

(14)

383 

化に甚本的に役立っている︒そして︑前者については︑二十九年四月一日に本制度創設以来三十六年三月末日まで

は実績基準と業種別売上高基準との選択制が採用されたが︑三十六年四月一日以降は定額基準と自已資本甚準との

併用制に転換しており︑右の業種別売上高基準の変遷概要は第4表に示すごとくであって︑創設以来遂次分化し複

雑多岐なものとなった経過が︑一見してここから判明する︒この売上高基準にみられるこのような無制限ともいう

べき分化現象と︑もう︱つの選択基準である実績基準にもみられる同様な累積的複雑化の傾向が︑これら両基準の

選択制から新たな別の基準の併用制へと転換させた表面上の理由であろう︒そして︑この理由の背後に︑各個別企

業間の利害の葛藤とその国家権力による調整とがひそんでいたであろうことは︑容易に想像される︒そしてまた︑

このばあい︑この国家権力による調整の具体的内容が︑業種をこえた一部巨大企業へのこの種課税の大巾の緩和や

さらには交際費規制そのものの実質的な解除とこれ以外の大多数の企業への交際費支出の一定基準額内での固定化

の強制を究極的に志向していることは︑明白であろう︒旧い選択制基準における実績基準にも︑このような意図は

一部確かにうかがえたが︑新しい併用制基準における自己資本基準には︑この意図が一層露骨に示されているから

後者の課税標準額の範囲については︑これはいわば︑損金算入限度額における右のような機能をさらに弾力的・

機動的に運用するための︑一種の緩衝器ともいうべきもので︑われわれはここでも︑かかる範囲の縮小と拡大が波

状的に進行する過程のうちに︑限度内企業群と限度超過企業群という二つの企業群の何れのものに︑この波状攻撃

の主たる目標がおかれているかを︑見定める必要がある︒

これを要するに︑わが国の企業交際費課税制度は︑その当初における表面上の目的はともかく︑現実には社会的

な一大浪費としての企業交際費の一般的な削減を何ら目的としたものではなく︑結果的には寧ろ︑その一部巨大企

企業交際費管見︵酒井︶

(15)

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足号心刈'似継睾程縣Q器志聴蘊以囃'0マ智品111十兵母述Q聡益瞑改瞬竺逗1111111送巴や'~J兵竺,\JQQ歯苺据 蓬(圏審器哀鋸瞑甜址サ心全Q衣たや投v距煕甜姐'坦‑<拒姐'窓涵華胆芸謳甜蒜以吋心企Q心如心送福Q)以吋心匡叶述Q

3交際費課税制度の変遷概要

2931│32

34

•一ーし|

全亨法_人_I│ 同的年期末資本金同左 期末資本金同左対象法人500万円以上の法人1,000万円以上の法人 29.4.1. 32.4.1. 34.4.1. 36.4.1. 39.4.1. 適用期間l l l l l 32.3.31. 34.3.31. 36.3.31. 39.3.31. 42.3.31. 

(選択制)(選択制)

(選択制)(併用制)(併用制)

{史鋲茄準{:額甚準{門自己ご資本万基準 損金算入限度額{実嶽甚準{実績基準23何83年年れ度度かの6割割方ー率300万円28年度の728年度の68己資本甚準多いの算定基準業種別売上高基準業種別売上高基準業種別売上高基準

若干緩和に緩和等資1,0本の00金合分積計の立額1金の平均23割強化 1,000分の2.5 課税標準額の範超過額の5超過全額超過額の2超過額の3

(注)

資本金,梢立金等の合計額の一定率による自己資本基準は,

36年の改正以前にも32年の改正以来新設法人にのみ,最初 の売上発生年度までに限り,1,000分の15

の率で適用されていた。富岡幸雄「交際費の税務会計」,

357月,森山書店刊,

P.25参照。

(16)

385 

4表 業種別売上高基準の変遥概要

企業交際費管見︵洒井︶

(1)  証券業および商品取引業 0.4(2932年)→0.3(3236 (2) 

(4) 

(8) 

UO)  (11) 

貿易業

(3)  卸・小売・受託販売業

1

1.5(2932年)→0.8(3236年)→1(国内取引4割以上のもの34 36 1

2.5(2936年)→2(百貨店32 36 電気供給業 3(2936

(5)  銀行・信託業 5(2932年)→3.5(3236 (6)  農漁林•水産蓑殖業,鉱業,ガス供給業

(2932/ 5(鉱業32 36

\.4 (農漁林•水産業,ガス供給業32~36年)

(7)製造業(出版を除く),運輸・通信業(放送を除く),映画業

4(食料品,繊維,製紙業等32 36

(映画業32 36

1

(29321

6(化学,機械業等32 36年→8(民生用電気・通信機器・

化粧品34 36

1

7(運輸業32 36年)→9(国際航空運輸34 36

(医薬品製造業32 34年)→11(3436 出版業(新聞を除く)および不動産貸付業

10(2932/8 (出版•印刷業32~36年)

'>. 7(不動産貸付業32 36 (9)  建設業および保険業 12(2932年)→8(3236

新聞,放送,ニュース供給業,広告業および倉庫業 その他(主としてサービス業)

15(2936 (2932年)→6(3236

単位は1,000分の1である。例えば,電気供給業は1,000分の3である。

(17)

386 

五 ︑

減税総額二︑二三一億円の六劣にも満たない金額である︒課税制度が前向きの姿勢をとるのは︑何れの時であろう

‑ 0

0

一 頁

アメリカの動静

企業交際費の乱脈振りは︑ひとりわが国だけの問題ではなく︑現代資本主義の類敗性に根ざした︱つの国際的な

傾向だといえる︒ここでは︑主としてこの点についての最近のアメリカの動静の一端を紹介しておこう︒

近年︑ハーバァード大学が全米各産業の経営者層一︑七00人を対象にして行なったアソケート調査によると︑

﹁是非やめてほしい︵業界の︶悪習慣は何か﹂という質問に対して︑その二三形の人達が①﹁贈物︑リベート︑コールガール」を挙げており、これは、その他の回答③差別価格||―八グダ、⑧誇大広告ー~一四形、④取引上の差別'~九彩、⑥価格カルテルー_|八形等を引きはなす最大の悪習慣として、乱脈な社用消費がこれら経営者層に属

する人達自身から指摘されたことを︑物語っている︒社会評論家F.L・アレンも︑戦後のアメリカにみられる社

用消費の風潮について︑つぎのようにのべている︒すなわち︑﹁大富豪ばかりでなく︑いわゆる世間並みの暮しをし

ていると考えている人々の間にも︑半分は会社の金で生活してゆく習慣が生まれた︒﹁経営費﹂︵会社経費ーー引用者︶

の名目で︑個人的な費用を支払うのである︒必要なものや︑ほしいと思うものー自分自身や︑家族や︑お客のた

めに無制限に住宅や︑交通や︑娯楽の設備ーが無料でつかえるものならば︑誰だってサラリーなどは一文ももら

わなくてもやっていける︒ほぼこれに近いうらやましい状態が︑多くの会社の重役の生活に見られた︒必要があれ

一 六

参照

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