Benz [ a ] anthracene 誘 導 体 の 高 速 液 体 ク ロ マ ト グ ラ フ ィ ー (1)
紫 外 線 検 出 器 に よ る 分 離 定 量 の 検 討
川崎 医療短期大学 放射線技術科 紺 野 勝 信 西 村 明 久 日 地 啓 夫 西 下 創
(昭和 5 7 年 1 0 月 3 0 日受理)
Hi g ht Speed Liquid C hrom a t ograp h y o f
Benz [ a J an thra cene Derivatives. I .
S epara t i on a nd D e t e rmin a t i o n b y Use of U V d e t ector
K a tsunobu KONNO , Akihis a NISHIMURA , Hiroo HUI , Soi c h i N ISHISHIT A
D e p a r t m e n t o f R a d i o l o g i c a l T e c h n o l o g y , Ka w a s a k i Co l l e g e o f A l l i e d H e a l t h P r o f e s s i o n s
K u r a s h i k i 7 0 1 ‑ 0 1 , J a p a n ( R e c e i v e d o n O c t . 3 0 , 1 9 8 2 )
Key words : b e n z [ a ] anthracene 誘導体, 多 環 芳 香 族 炭 化水素, 高 速 液 体 ク ロマト グ ラ フ ィ ー
概 要
5 9
主に 7 と 1 2 位に 置換基のある b e n z [ a ] a n t h r a c e n e 誘導体 , 1 6 種を試料とし,移動相に含水メタノール,
カラムにパーマフェ ーズ O DS ( 内径 2 . 1 mm X 1 0 0 0 mm) を用いた高速液体クロマトグラフィーを行い,分離 条件と紫外線検出器による定籠を 検討した。
この結果,最適分離条件はメタノ ール浪度 5 7 . 5 9 6 , 温度 6 0 ℃,圧力 70k g / c m 2 (流速 0 . 8 l m l / m i n ) であっ
た。 また,同条件におい て b e n z [ a J a n t h r a c e n e を内部棚準に用いて検鼠線を作成した。 1 5 75 n g の範囲
で直線関係が成立し ,検届線の直線性における変動係数はいずれも 2 %以下で十分定量が可能であるという
結果が得られた。
60 紺野勝信 ・ 西村明久 ・ 日地啓夫 • 西下創一
1 緒 巨
大気や自動車の排ガス,食品など環境中に広く検出されている多環芳香族炭化水素類はその 一部が癌原性を有することが知られている。その分析法には薄層クロマトグラフィー 1)2) ,ガス クロマトグラフィー 3 )4 ) などあるが,最近では高速液体クロマトグラフィー (HSLC) を用いて 分析する報告 5) 〜 8) が多くみられてきた 。
Benz [ a ] a n t h r a c e n e (BA) は, 癌原性多環芳香族炭化水素類の中では最も少ない 4 個の縮 合環を有する炭化水素である。 BA 自体の癌原性は弱いが,これに 置換基が導入されると癌原 性に影聰が顕われ,特にメソ位 (7 ,1 2 位)においてその影報が強く,例えばメチル基がメソ位 に置換されるとその癌原性は非常に増大することが知られている 9)‑ 1 1 ) 。 このようにメソ位の BA 類は興味ある化合物群であり,またクロマトグラフィー的に多環芳香環の特定部位の置換 基効果を調べることは薄層クロマ トグラフィーでの一報告 2) を除きほとんど行われていない。
今回は BA 類のクロマトグラフィー的挙動の基礎的段階として, 1 6 種の化合物,すなわち 7 bromo‑BA(l), 7 ‑ c h l o r
かBA(2),B A ‑ 7 ‑ c a r b o n i t r i l e ( 3 ) , 7 , 12‑diacetoxy‑BA(4), BA ‑ 7 ‑ c a r b o x a l d e h y d e ( 5 ) , BA ‑ 7 ‑ a l d o x i m e ( 6 ) , 7 ‑ n i t r o ‑BA(7), 7‑amin か BA(8), 7 ‑ a c e t ‑ a m i d o ‑ BA(9), 7‑methyl‑BA(lO), 12‑methy 卜 BA(ll), 5 , 6‑dimethyl‑BA(l2), 7 , 1 2
‑dimethy l ‑ BA(13), BA(14), d i b e n z ( a , h ) a n t h r a c e n e ( 1 5 ) , 7 , 1 2 ‑ d i p h e n y l ‑BA(16) に つ
いて,固定相にパーマフェーズ ODS , 移動相に含水メタノールを用いた逆相分配系の HSLC を行い分離条件を設定するための検討をした。また,発癌物質としての観点から紫外線検出器 による定量の基礎的検討を試みたので,その結果もまとめて報告する 。
2
10
︐ 3 4
8 6
F i g . 1 S t r u c t u r a l f o r m u l a o f b e n z ( a ) a n t h r a c e n e
2 実 験
2 . 1 試料,試薬
試料はジオキサンに溶かし,混合試料は各試料 1 mg/ml または 0 . 1mg/ml 濃度の等星混合
したものを用いた。
Ben z[a] a nthra c e n e 誘迫体の高速液体クロマトグラフィ ー 6 1
溶剤および展開剤としてメタノ ール ,ジオキ サ ンは市販ク ロマトグラフ用をそのまま用いた。
2 . 2 装 置
分離装置は島津・ デ ュポン 830 型高速液体クロマ ト グラフを使用 し た。なお , 本器は定圧式シ リ ンジ型のボンプであるため,実験結果における流速値はすべて数回の平均値である 。検 出 器 は 830 型 用 紫 外 線 吸 光 光 度 計 ( 波 長 254 nm ) または高速液ク ロ 用 島 津 u v ‑2 02 分 光 光 度 計 を 単 独または直列に 2 台 接 続 して測定した 。
カ ラムとしては,パ ーマフェ ーズ ODS を充てんした内径 2 . 1 mm, 長さ 1 0 0 0 m m のものを用 しヽた。
2 . 3 操 作
試料溶液の 2 . 0 3 . 0 μ 1 を セ プ タ ム を 通 じ オ ン フ ロー 方 式 で 注 入 して各クロマトグラムを得 た 。
本実験で得られた試料のヒ゜ークに対 して,保持時間 t R ,ヒ ° ‑ク幅 W を 測 定 し , 固 定 相 ,移 動相に対する親和性をキャパシ テ ィー ファクタ ー 炉 , 各 条 件 に お け る カ ラ ム の 比 較 を 分 離 度
R s を次式から計算した。
キャパシティ ー ファクター が は ,
k ' = t R ‑ t
t 。
で示され,ここで もは固定相にまったく保持されない成分ヒ° ークの保持時間で,ここではジオ キサンの保持時間を用いた 。
分離度 R s は ,
2 4 t R R s =
" { +w
で示され , ここで 4 ん は近接する 2 つのヒ° ークの保持時間 f R I と 知 の差 であり, m , 附 は それぞれのヒ° ー ク幅である 。
3 結果と考察 3 . 1 分 離 に 及 ぽ す 影響
BA 類の分離挙動について ,移 動 相 組 成 ,カラム温度 ,圧 力 ( 流 速 ) を 各 種 変 化 さ せ キ ャ パ シテ ィーファ クタ ー,保持時間あるいは分離度に及ぽす影稗から検討を行った 。な お,本実験 では保持時間 ,分 離 状 態 ( F i g .5 ) から , 7 種 類 の 試 料 を 選 び 用 い た。
3 . 1 . 1 移 動 相 組 成 の 影響
カラム温度,カ ラム圧力を一定に した 条 件 で , 移 動 相 組 成 を 変 化 さ せ た 時 の 各 試 料 の キ ャパ
シテ ィーフ ァクター k ' に 及 ぽ す 影 轡 を 検 討 した 結果を F i g . 2 に示した。 この結果 は Boden 7 l ,
白山 8 ) による多環芳香族化合 物 に 対 す 結 果 と同様で ,有 機 溶 媒 含 有 量 の 増 加 に と もない キ ャパ
シテ ィーフ ァクタ ーは 対 数 的 に減 少 す ることがわかっ た。この現象はハ イドロ ホ ビック ・クロ
62
紺野勝信• 西村明久 ・日地啓夫・西下創一マトグラフィー的考えによれば,有機溶媒含有量の増加にともない試料と固定相間の疎水結合 が弱くなることに基づ くもので ある。
3 . 1 . 2 カラム温度の影響
カラム圧力,移動相組成を固定 して,カラム温度を 2 0 か ら60 ℃まで変化させた時のキャパシ ティーファクターに及ぼす影報 を F i g . 3 に示 した 。 これらの結果は白山 8 ) と同様,キャパシテ ィーファクターの対数値と絶対温度の逆数との間には直線関係が成立した。
3 . 1 . 3 流速の影響
移動相組成,カラム温度を 一定 とした条件で,圧力(流速)を変化させた時の各試料の保持
50
5 ﹈
3 ﹈
﹈
ー
4 7 3 5
ー
. ゜ 3
10
n . s
40 5 ( l 60
f l c t h a n o l i n w a t e r
急70 80
F i g . 2 E f f e c t o f met h ano l co n c e n t r a t i o n on k ' column temperature: 5 0 ℃ ,pressure : 70 Kg/ cm2
0 0 5 1 ) 4 1 1
41 )
3 1 )
← l
)(3 U 2 0 °C ] 4 l l
}. (1(1
3 . 20 1/T
X1 0
33 . 4 0
F i g . 3 E f f e c t o f column temp e ratur e on k'
Mode: 1 , s o l ve n t : 6 0 % methanol i n wa t e r ,
pre s s ur e : 70 Kg/ cm2
Ben z [ a ] a n t h r a c e n e 誘導体の高速液体クロマトグラフィ ー 6 3
時 間 な に 及 ぽ す 影 蓉 を F i g .4 に示し た。 この結果から流速の増大にともない保持時間は対数 的に減少することがわかった。
I I
7 5
3 l l
UTE
工
I l l
←
1 5
ー
3 1 4 l l
( l . 5 l . 0 Flow rate, ml/min
l .S
F i g . 4 E f f e c t o f f l o w r a t e on t , .
Mode: 1 , s o l v e n t : 6 0 % m e t h a n o l i n w a t e r , c o lumn t e m p e r a t u r e : 5 0 ℃
3 . 2 最適分離条件
HSLC において実用的に試料中の各成分を能率よく分離するためには,各成分のキャパシ ティーファクター k ' が 1 ; : a ; k; a , 1 0 の 範 囲 に あ る の が よ く , ま た 分 離 度 は 定 星 的 実 験 に は 1 . 5 から 2 . 0 以上必要 といわれ ,定性的には 0 . 8 前後が必要であるということから考慮 して求 められる 。
3 ・ 1 における分離に及ぼす影嬰の結果を参考と して,試料に適した分離条件を求めた。その 結果は F i g .5 に示 したように, 移動相組成: 5 7 . 5 %メタノール ・ 水,カラム温度 : 6 0 ℃ , 圧 力 : 70Kg/cm 只 流速 : 0.8lml/min) であった。各試料のキャパシ テ ィーフ ァクタ ーの変動係数 はほとんどのものが 2 3 % ( n =5 ) 以下で あり,また分離度は若干のものを除き 0 . 8 以上であ った。
保持時間の短縮と前半に溶出されてくる試料の分離改善の ため ,濃度勾配溶出法について検 討 した 。 カラム湿度,圧力は F i g .5 と同条件で ,移動相組成のみを時間 ととも に変化 させるこ とにより上記目的を達成させるものである。その結果 ,初 期メタノ ール 濃度を下げて 45 彩と し , 最後に溶 出して くる 7 , 12dirnethyl‑BA(16) の保持時間を短縮させるために最終メタノ ール濃 度を 7 5 彩と上げ ,そ の変化率を 1 %/ min と した ( F i g .6 ) 。 この条件により前半の分離も改善 され,全体にまとまって溶出分離された。各試料のキャパシティ ーフ ァクターの変動係数は,
1 2 % ( n = 5) 以下であ った。
3 . 3 紫外線検出器による定量
紫外線検出器による B A 誘導体の定量検討を Fig . 5 の最適分離条件で行った。
3 . 3 . 1 紫外線吸収スペクトル
64 紺野勝信 ・ 西村明久 ・ 日 地啓夫 ・西下創一
4 6
3 1 4 o ﹂ i
1 0
一
1 6
゜ 2 0 4 0 60 m,n
F i g . 5 Chromatogram o f b enz ( a ) anthracene s
column temperature : 6 0 ℃ ,solvent : 5 7 . 5 % methanol i n w a t e r , p r e s s u r e : 7 0 Kg /c m2 ( f l o w r a t e : 0 . 8 1 ml / min)
1 2 1 6
1 4
T o ‑
1 0 2 0 30 nun
F i g . 6 Chromatogram o f ben z ( a ) anthracenes: g r a d i e n t e l u t i o n column t em p e r a t u r e : 60 ℃, s o l v e n t : 4 5 → 75 % methanol i n
water { 1 %/min ) , p r e s s u r e : 70 Kg / cm2
Benz [ a ] anthracene 誘荘体の高速液体クロマトグラフィー 6 5
各試料の 0 . 1mg/ml ジオキサン溶液, 3.0μ1 をク ロマトグラフに 注 入 し ,紫外線分光光度計 で測定したスペクトルを Table 1 に示した。
Table 1 U V s p e c t r a l d a t a o f benz ( a ) a n t h r a c e n e s Sample No. 入 max * (nm)
2 2 8 6 , 297 3 2 9 0 , 300.5 4 2 8 4 , 293.5 5 2 9 8 , 307.5 7 282 . 5 , 293
, 284 . 5 , 295 1 1 2 8 6 , 295 1 2 2 8 7 , 297 1 3 2 9 0 , 3 0 1 1 4 2 8 2 , 292 1 5 2 9 3 , 30 1 . 5
* I n 5 7 . 5 % me t h a n o l ‑ w a t e r
3 . 3 . 2 ピーク測定法
クロマトグラムのヒ ° ーク測定法について, ヒ ° ーク高, ヒ゜ーク面積および, B A を内部標準物 質としたヒ゜ ーク 高比,ヒ° ーク 面積比 の各変動係数をみることにより ,それぞれの測定法の比較 を行った。その結果, ヒ ゜ ーク 高 :3.0 % , ヒ ° ーク 面積: 0 . 7 % , ヒ ° ーク 高比 :0 .3 % , ヒ°ーク 面積比: 3.0 %であり (n=5), ヒ ° ーク 高比が最も変動係数が少なかった。以下, ヒ ゜ ーク測定 法はビーク高比を使用した。
3 . 3 . 3 注 入 量
ヒ°ーク測定法をヒ°ーク高比とした場合に,注入量の影靱について検討した。その結果, 2 . 5 , 3 . 0 , 3.5μ1の 3 点とも変動係数に差がなく (n = 5 ), 本実験で用いる注入星は一応 3 . 0μ Iとし た 。
3 . 3 . 4 検 出 器
検出器として紫外線吸光光度計(波長 254nm) と分光光度 計を用いた 場合,両者の感度比 較を各試料について検討した結果を Table2 に示 した 。分光光度計の測定波長は各試料の最大 吸収波長入 max で行った。光源の特性が異なるため,最大吸収波長で測定しても BA‑7‑ aldoxime
( 5 )のように感度比が 1 のものもあるが, 7 , 1 2 ‑ diphenyl ‑ BA(16) などでは 感度比が大きく 分光光度計で測定した方が有利である 。
3 . 3 . 5 検 量 線
以上 3 . 3 . 1から 3 . 3 . 4まで検討した結果から,各種猥度の試料 3 . 0 μ]を液体クロマトグラフ
に注入し,ヒ゜ ーク高比を測定して検 量線を作成 した 。その結果 , F i g .7 に示すように多くの試
6 6 紺野勝信・西村明久・日地啓夫 ・ 西下創一
2.0
1 . 6 I
゜
+
つ3 L 1 . 2
+ 二
20
こ 二
‑ 0.8
1) ベ
二.