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新しい学力観についての提案

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(1)

奈良教育大学

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・短縮定型化と試行錯誤    今井 靖親…1 特集〈新しい学力観〉

・新しい学力観・新しい評価観

・新しい学力観についての提案

・音楽科に期待される学力

イ竃

2  3  4

信 慶

村 田 納杉 増 久

第 11 号 1994年8月31日発行

奈良教育大学教育学部 附属教育実践研究指導センター

・「新しい学力観」と家庭科  中嶋 たや…5

・新学力観と理科       園部 勝章…6

・第44回国立大学教育実践研究関連

センター協議会に参加して  藤原 公昭…7

・センター新事務員紹介・運営委員会報告 …8

短縮定型化と試行錯誤

今は、欲しければカブトム シでも、たやすくデパートで 買える時代である。

私たちが幼い頃、カブトム シを手に入れるのは、並大抵 のことでなかった。まず、カ ブトムシを捕らえることので きる季節、時刻、場所、そこへの道順、携帯すべ き容器などについての知識や経験が必要だった。

一緒に行く友だちと打ち合わせをし、親の了解を 得なければならなかった。手足を傷だらけにして、

やっと捕らえたカブトムシを生かしておくために、

自分で飼育箱を作り、餌を調達した。

デパートでカブトムシを買っていく今の子ども からみたら、たかがカブトムシの一匹や二匹に、

こんな時間と労力をかけるのは、全くのムダとし か思えないだろう。しかし、さまざまな知識を活 用し、工夫し、努力した末に、カブトムシを手に

した時、そこには子どもなりに成就・達成の喜び や感動があった。そして、この小さな生き物を大 事に大事に飼育したものだった。

従来の教育は、幼い時から試行錯誤(trial

センター長  今 井 靖 親 anderror)を重ねることで、知識を豊かにし、

技能を磨き、人格の形成をめざすことに価値を置 いてきたはずである。しかし、一方で効率化や便 利さを追求するライフスタイルが急速に定着する につれて、わが国では、自然とのふれ合いや試行 錯誤によるとりくみなどの、不便で非能率的な活 動を嫌う子どもや若者が激増した。

最少の時間とエネルギーで最大の効果を発揮し うる方法を発見すると、人は、それ以後、常にそ のパターンを使って能率的に物事を処理しようと する。これが、ドイツの精神医学者クレッチマー のいう短縮定型化の法則(1aw of typical abbreviation)である(小此木啓吾『一・五の 時代』ちくま文庫)。現代では、人間生活のあら ゆる面で短縮定型化の現象が見られ、科学の「進 歩」、経済の「発展」、生活の「向上」などと密接 な関係がある。こうした短縮定型化傾向が、ます ます強まるライフスタイルの中で、一方ではその 利点を摂取しながらも、多くの時間や労力や気配

りを必要とする試行錯誤という「発見学習」をい かに構造化していくか、これが今日わが国の教育 における一つの大きな課題ではないだろうか。

(2)

特集く新しい学力観〉

新しい学力観・新しい評価

本稿では、教育改革の中核である新しい学力観 が提唱された経緯と、それに基づく新しい評価の 在り方について要点を述べることにする。

新しい学力観の誕生

中央教育審議会の教育内容等小委員会審議経過 報告(1983年11月)には、今後の教育で特に重視 しなければならない視点として「自己教育力の育 成」があげられている。自己教育力とは主体的に 学ぶ意欲、態度、能力などであり、具体的には、

学習への意欲、学習の仕方の習得、変化の激しい 社会における生き方の問題があげられている。

次に、教育課程審議会答申(1987年12月)に示 された教育課程改善のねらいの中に、「自ら学ぶ 意欲と社会の変化に主体的に対応できる能力の育 成」があげられている。このような意欲や能力が

「新しい学力観」と呼ばれているものであり、表 現は若干異なるが、上述の自己教育力とほぼ同じ 内容であることに気づくであろう。また、前回ま での答申では、学校教育で育成すべき学力につい ては何も述べていなかったが、それを明確にした 点で、今回の答申は画期的であったといえる。

この答申を受けて、1989年(平成元年)に学習 指導要領の全面改訂が行なわれ、教育課程編成の 一般方針で「自ら学ぶ意欲と社会の変化に主体的 に対応できる能力の育成」を強調している。社会 の変化に主体的に対応する能力とは、具体的には 思考力、判断力、表現力のことであり、これらの 能力が自ら学ぶ意欲とともに、生涯学習を支える 重要な役割を果していると考えられている。

長年にわたって受け入れられてきた知識偏重の 学力観から脱皮して、情意的側面である自ら学ぶ 意欲と認知的側面である思考力、判断力、表現力 を総合した新しい学力観の下に、21世紀に向けて の教育改革が進められている。

新しい評価の在り方

教育心理学 杉 村   健

「指導と評価はコインの両面である」といわれ ているように、新しい学力観に基づいた教育を推 進するのには、単に授業だけでなく、評価の内容 や方法も工夫改善しなくてはならない。この点に ついて、教育課程審議会の答申では次のように述 べている。

「評価については、教育課程の基準の改善のね らいを達成するため、児童生徒の自ら学ぶ意欲や 思考力、判断力、表現力などの能力の育成に資す るよう一層の工夫改善が必要である。そのために は、日常の学習指導の過程における評価について は、知識理解面の評価に偏ることなく、児童生徒 の興味・関心等の側面を一層重視し、学習意欲の 向上に役立つようにするとともに、これを指導方 法の改善に生かすようにする必要がある。」

この文章は、新しい評価の本質をよく表してい るが、これをさらに具体化して、1991年(平成3 年)に指導要録の全面改訂が行なわれた。そこで は、各教科の全体としての出来ばえの評価、即ち 5、4、3、2、1といった評定よりも、各教科 内の観点別評価に重点がおかれている。教科の評 定に先立ち、まず、関心・意欲・態度、思考・判 断、技能・表現、知識・理解といった4つの観点 から各教科について評価しなくてはならない。

しかも、これまで第1の観点であった知識・理 解が第4の観点になり、新しい学力観の「自ら学 ぶ意欲」に対応する関心・意欲・態度が第1の観 点として重視されている。関心・意欲・態度は、

知識・理解のようにペーパーテストでは評価でき ず、多くの教師が不得意な行動観察によって評価 しなくてはならない。それだけに、評価に関する より一層の工夫改善が望まれる。

新しい学力観を生かす授業と新しい学力観を生 かす評価の研究が、学校教育においてこれから取 り組まなくてはならない重要な課題である。

′項彗

メ昂叫

(3)

新しい学力観についての提案

1.なぜ新しい学力観が必要なのか

現在の学校教育が危機的な状況にさらされてい ることは、十年ほど前から関係者の間で話題に なっていた。「不登校」、もしくは学校に行きた くない小学生や中学生の数は年々増加しているし、

高校の中途退学者は年間十一万人を越え、未成年 者の犯罪予備軍化は顕在化しつつある。家庭の塾 や予備校ぺの依存度は増していき、学校教育の信 頼度はますます低下しつつある。

このような状況に対して、文部省は平成元年版 の学習指導要領から「生活科」を登場させ、今後 の改定ではこの傾向をさらに強化しようとしてい る。これは教科書教材を中心とした教師主導型の 教育に対する反省の現れであり、学習者自身の主体 的な学習への取り組みを促そうとしているのである。

さらに、平成五年度から業者テストを進路指導 に使うことを禁止し、偏差値教育の見直しを迫っ ているのも、新しい学力観に切り換えなければな らない必然性の現れであるとみてよい。従来のよ うなペーパーテスト依存型の評価の仕方について の反省を迫られているのである。しかし、現実の 問題として、この一点に限ってみても、これまで の考え方を変えるのは大変なことである。

文部省は、平成五年度から「学校図書館図書整 備新五力年計画」を出発させた。これは五年間で 五百億円を学校図書館の充実のために使おうとい うのである。主体的な学習を盛んにするためには、

まず学校図書館を充実させる必要があると考えた からである。しかしながら、四十年以上も学校図 書館の専任を置かずに放置してきた体制が、この 程度の付け焼き刃的な応急処置で改善されると見 るのは疑問である。

2.新しい学力観の骨格

従来の学力観の根底には、系統的な知識体系を、

教科書教材を中心とした授業の中でどのようにし

国語科教育研究室 増 田 信 一 て身につけさせるかという課題があった。ところ が、受動的な授業形態のもとでは、断片的な知識 は一過性のものにしか過ぎず、本質的な意味での 学力として定着しないという欠陥があったのである。

この反省をふまえると、まず、学習者自身の主 体的な学習意欲をどのようにしてかき立てるかと いうことが、大きな問題となる。そのためには、

経験の機会を増やし、その中から数多くの疑問を 持たせ、それを自分の手で解決しようとする学習 態度を養うことが必要不可欠のことになる。

疑問を学習課題として解決していくためには、

そのための学習方法を身につけなくてはならなく なる。現在のように、文学教材の鑑賞そのものに 長い時間を使った上に、考え方や感想までも規制 してしまうような受動的な授業のあり方や、その 結果をペーパーテストによって判定するような学 力観は根底から覆さざるを得なくなる。

子どもたちの経験や疑問を組織化して、年間計 画に位置づけ、それに即応した学習方法を開発し、

教育の条件を整えていくためには、まず教育関係 者の頭を切り換えなくてはならない。しかしなが ら、教育現場の教師は毎日の授業に追われて、こ のような本質的な研究に取り組む態勢は取りにく い状況にある。

そのために、このような研究に没頭できる研究 機関の充実が望まれる。それと同時に、教師の卵 を養成している教育大学のありようも大きく変化 しなくてはならない。教科構造そのものの見直し も必要であるし、現在のような大学の授業のあり 方にも検討のメスを入れなくてはならなくなる。

明治・大正・昭和と百年以上にわたって続いて きた学校教育そのものが、今、大きく転換しよう としているのであるという自覚を、教育関係者一 人一人がしっかりと自覚して、行動を起こすべき 時が来たのである。

(4)

音楽科に期待される学力

元々学力という言葉は、学習を通じて獲得した 知識や能力、あるいは学問をするための能力をさ して言うものである。このことについて我々の関 心を改めて惹きつけたのは、第二次大戦後の新し い学制実施に伴う教科書の程度の低下を契機とし て、にわかに学力、あるいは基礎学力についての 論議が高まったことであった。そしてそこでは、

学力は獲得された知識や能力であるのか、それと もそれを越えて「生きて働く」問題解決の能力で あるのか等々ということが論議されたのであった。

学力をつける、あるいは学力を獲得するという ことは、いずれも学習活動の目指す目標として極 めて重要なことがらであるが、「学力」と言う用 語については、いくつかの考え、立場が対立して いる。それを論じていくことは、「学力論」に譲 ることにしたい。そしてここでは、音楽科の学習 活動が目指している「音楽科の学力」とは何であ るかを考えてみることにしたい。

現在の音楽科の学習活動が目指すべき目棟は、

学習指導要領の冒頭に示されているように、音楽 の美を感じとり、音楽に興味や関心を持たせ、音 楽の表現や鑑賞の能力を育て、この経験を生活に 明るく反映させる態度、習慣を育て、そしてこう

した活動を通して豊かな情操を養うことであると されている。平成元年に改訂された現行の学習指 導要領では、これらの目標に加えてもうーっ、

「音楽に対する感性」の育成が新たに付け加えら れたのであるが、こうした形で目指されている学 力が、すべて音楽の基礎的能力であると総括する ことができる。

こうした基礎的学力観に基づいて構築された教 育課程に対して、近年、文部創立基礎的な学力に ついて基本からの見直しを始め、「基礎的な学力 の一層の定着を図る教育課程の研究開発」を研究

音楽科教育 久 納 慶 一 開発学校を通して行い始めたのであった。

文部省研究開発学校に指定されたのは、東京都 の千代田区立錦華小学校(現お茶の水小学校)で あるが、この学校で平成3,4年度の2年にわ たって「国際社会を豊かに生きる児童の育成」と いう主題の下に、新しいカリキュラムの開発の研 究がなされたのであった。

その報告書(研究紀要)によると、この研究の 前提となる「基礎的な学力」を「問題を解決する ことによって身につけた知識や技能」に留まらず、

「国際社会の中で、人間として豊かに生きるため に必要な力」ととらえている。すなわち「基礎的 な学力」とは生活力なのである。そしてこの「基 礎的な学力」の定着を図るためには、学んだこと を生活に生かすことができる力が養われなければ ならないと考えるのである。

この基礎的な能力は、すべての教育活動や生活 の場で育成されるべきものであるが、次の5つの 能力からなるとされる。すなわち、 ①課題や問 題を見つけようとする関心・意欲・態度(診事物、

現象に心を動かすことのできる感性 ③正しく判 断することのできる思考力 ④的確な表現力 ⑤ 強い意志を伴った実践力等の能力が設定されたの である。これに基づいて、国語科、算数科、体育 科、特別活動の教科以外の教科は、生活科、人間 科、環境科、表現科の4教科に集約され、7教科、

1領域の新教科が設定されることとなる。

ここで音楽科は、「自己の内面を表現する技能 を身に付け、適切な方法で他人に伝えようとする 態度と豊かな情操を養う」「表現科」に、図工科 と共に取り入れられるのである。これにはいろい ろな問題があろう。だが、国際社会の中で豊かに 生きるためには、今後こうした教科編成が必要に なるのであろうか。

(5)

「新しい学力観」と家庭科

1.「新しい学力観」と「家庭生活」領域 新学習指導要領の実施とともに、親切されたの が、「家庭生活」領域であり、「新しい学力観に 立った学習指導」が強調されるなかで、これこそ が新しい家庭科であるとされているものです。

そして、はじめて領域名をきいた時、今まで中 学校で扱われなかった家族を扱える領域として、

かすかな期待をいだかせる領域でもありました。

しかし、実際はどうかというと、既存の各領域 をこま切れにして詰めこんだようなミニ家庭科的 なものでしかありませんでした。

さらに、管制研で報告される実践には、問題点 も多くあります。そのうち、いくつかを紹介します。

食にかかわるものとして「家族のための簡単な 食事の計画」というのがあります。中身は、イン スタントラーメンの特徴を知り、それをいかした 調理実習をするというものです。加工食品には、

添加物の問題や塩分、エネルギー過剰など問題も 多いのに、野菜が不足するということ以外には、

無批判に使わせていること、簡単にできて、もっ とよい実習題材があるのに安易に加工食品にたよ ろうとしていることが気になります。

また、家族にかかわるものとしては、生徒が家 族の誰かの役割を演じるという「ロールプレイン グ」を行うというものがあります。他の家族員の 立場に立って考えることにより、家族の意義を学 習するという意図があるのでしょうが、自我がめ ざめる頃であり、親に対しても批判的になりつつ ある生徒がいる中で、スムーズにできるかどうか 疑問です。それよりは、子どもたちが、家族につ いて「良かったなと思うこと」「いやだなと思う こと」を素直に出させる中で、家族の意義をまと めていく方がずっと有効であると思います。

住にかかわるものについていえば、「そうじの 仕方の研究」ということで、教室のいろんな部分

附属中学校  中 嶋 た や の汚れをグループごとに、ともかくいろいろな洗 剤や用具を使って落としてみるというのがありま す。洗剤を安易に使用することで、人や環境にど のような影響があるかについての学習はされませ ん。その上、教室の汚れ落としの学習が、家庭生 活へ生かされるものとなるかどうかに疑問が残り ます。それよりは、もっと本質的な、すまいの機 能や住み方について学習すべきではないでしょうか。

2.生活における自立者を育てるために

今紹介した実践からもわかる通り、どの題材に ついても、とりあえず与えられた課題に取り組ま せているというだけに終っており、現在の生活を 見つめ、問題点を改善するという視点は、全くあ りません。男女共学が実現されたかわりに、技術 科と折半になった貴重な授業時間の中で、あえて 取り組むだけの価値があるのかも疑問です。

「新しい学力観」がいわれるようになり、評価 の観点の順序がかわり、「関心・意欲・態度」が、

「知識・理解」よりも重視されるようになりまし たが、そのことが、生活を科学的に見つめるとい う視点を全くなくすことにつながっているのです。

生活を科学的に見つめることなく、「家族のため に」ということを強調されると、道徳的な意味あ いが強くなります。これでは、子どもたちが、学 ぶ価値を実感できません。

私がめざしている家庭科は、自分の生活をしっ かりと見つめ、今後どうしていくことが望ましい のか、そのためにどの点をどのように変えていけ ばよいのかを自分で考えてゆける、生活において

自立した生徒を育てるものです。

これを実現するために、子どもたちの実態に促 し、生活を科学的にとらえ、子どもたちが討論の 中で、自分の答えを見つけることのできる授業を つくれるよう、「家庭生活」領域の中身を考えて ゆきたいと思います。

(6)

新学力観と理科

文部省から「小学校 理科 指導資料」として、

「新しい学力観に立つ理科の学習指導の創造」

(平成5年10月15日 東洋館出版)(以下、指導 資料という)がだされた。この資料をもとに、わ たしたちの考えと比較しながら書くことにする。

1.理科は自然科学を教える教科である

理科の固有の任務は、「自然科学の基礎をすべ ての子どもに」ということである。

わたしたち理科部は、このように考えて理科の 授業を行っている。自然科学の基礎には、自然に 存在する事実・法則と科学的思考、科学的方法を 含むのである。

このように考えることについて、指導資料では、

次のように述べている。

小学校理科の教育の特徴は、理科の目標に見 ることができる。

「自然に親しみ、観察、実験などを行い、問 題解決の能力と自然を愛する心情を育てるとと もに自然の事物・現象についての理解を図り、

科学的な見方や考え方を養う。」

この目椋は、次の三つの重要な点を含んでい る。第一は直接経験の重視であり、第二は問題 解決能力の育成であり、第三は科学的な見方や 考え方の育成である。

この表現は、指導資料もいう「今まで述べてき たこれからの理科教育に求められる能力や態度は、

必ずしも理科に固有のものであると言えない。こ こで、理科に固有の役割を考える必要がある。理 科に固有の役割は、科学的な見方や考え方と自然 認識の能力であると言えよう。」(P5)という補

いを必要とするものである。

ここで、自然認識について述べておきたい。自 然認識という言糞は、科学的認識を意味するので ある。社会を対象にした言糞が社会認識である。

自然認識は、自然科学を意味するのである。だか

付属小学校 園 部 勝 章 ら、理科の目標を述べる時には、第一に内容を示 すことが当然ではないか。それは、自然認識であ

り、自然科学である。

自然科学は、新学力のいう「関心・意欲・態 度」と「知識・理解」を遊離して考えることには なじまない。この遊離が教育観としてのまちがい なのである。

わたしたちは、小学校の理科教育で大切にして いることがふたっある。ひとつは、生き物を正し

く認識することである。生き物の特徴は固体維持 と種族維持である。そして、生物には形態と生活 がある。そして、進化がある。このことを低学年 から個別な事実を通して学ぶことが必要である。

ふたつめは、目に見えない現象を正しく認識す ることである。例えば、物では気体である。目に 見えない気体を物として認識するには、教育が必 要である。新学力観のいう、子どもが問題を兄い だすものではない。小2の空気の学習から、小3 の空気、小4の物とその重さ、物の体積、物の温 度と体積、小5の物の三態変化、気体、天気の変 化、小6の酸性の水溶液、燃焼という学習を通し て身につくものである。

授業の原則は、教授と学習の統一である。教授 という表現がいいのかわかりませんが、教師が果た す役割の大きい部分である。学習は、子どもの権利 条約の精神である子どもの活躍のできる場面である。

2.評価・評定は、到達目標できまる

評価・評定は、到達目標できめることである。

理科教育の目標から考えると、知識・理解と関心

・意欲・態度の面からなされることである。

新学力観では、このふたっが遊離されている。

このことは、教育の原則にそわない。とともに、

これでは、父母・子どもが学校への信頼をなくす ことにもなる。そして、教育の民営化の動きにつ ながりかねないのである。

(7)

第44回国立大学教育実践研究関連センター協議会に参加して

附属教育実践研究指導センター  藤 原 公 昭

ぞ限

表記協議会が2月17日東京学芸大学で開催され た。議事・報告事項に引き続き「教師教育におけ る情報教育の課題と展望」と題してパネルディス カッションが行われた。コンピュータ・リテラ シーとCAIを主とする従来の情報教育に対して、

横浜国立大学大島助教授による、「情報を知る」、

「情報を使う」という観点からの新たな方向性、

および教員養成における、情報活用能力と授業の 開放的コミュニケーション・システム構成能力の 形成の提言があり、実際の教育情報論と情報工学 のカリキュラムが示された。本学で同様な科目を 担当する者として、考えることの多い話題であっ た。自己学習能力・情報活用能力の獲得を目的と

しながらも、ミニマムの技能・知識は与える必要 があり、如何に切実な課題を設定できるかがポイ

ントであるように思える。もう一点、.北海道教育 大学函館校中村教授からは地域特性と通信の活用 について報告があった。北海道はコンピューター の普及率で全国平均を下回る等のハンディを逆に 転化し、例えば複式学級ではコンピュータの介入 が有効であり、内容的にもマルチメディアが最も 有効に活用できる場となることが指摘された。ま た、ネットワークが整備されることで、教材作成 にネットワークを介したデータベースの活用能力 が必要になっていることも言われた。この点は後 述の研究集会でも取り上げられたが、確かに、パ ソコン通信やインターネットで面白いデータが得 られるようになっているので、当センターでも是 非活用していきたいと考えている。

引き続き2日間にわたる、教員養成大学・学部 等教官研究集会に入り、大阪大学梶田教授の基調 講演「新しい学力観と発達課題」をオープニング として、7つのセッションが一部パラレルで行わ れた。基調講演で唱われたように、「関心・意欲

・態度」を重視するいわゆる「新しい学力観」を 主要なテーマとして以下のセッションがもたれた。

1)小学校・中学校・高等学校における情報教育 一新しい学力観とコンピューターリテラシーー 2)新しい学力観のめざす教育課程

3)新しい学力観に基づく教育方法の開発 4)新しい学力観と教育環境の課題(1)

5)新しい学力観と教育環境の課題(2)

6)新しい学力観と教員養成大学・大学院のカリ キュラム

また、情報教育関連でもう一つのセッション、

7)ハイパーメディア・マルチメディア学習環境の開発

がもたれた。

関心・意欲というメンタルな動機を持続させ、

思考・判断・表現という数値で表せない学力への 到達をコンピューターによって支援するという、

都立広尾高校天良教諭の実践報告は興味深い。物 理実験から法則性を兄いだす試みは時間的制約か ら、従来は無理であったが、コンピュータの処理 能力によってモデルや仮説の検証のためのデータ 加工やグラフ化がリアルタイムで行えることにな り法則性の発見が容易になる。この事が、科学的 な探求に対する態度、思考力・判断力を育成する 指導を可能にしているとのことであり、納得させ

られる内容であった。

もう一つの主題としてハイパーメディア・マル チメディアによる学習環境の実例がいくつか紹介 された。未だ確定した分野ではなく、NHKのハ イテク機器を駆使した豪華版(人と森林)から、

家庭用の機材を使い、教室でも実現できる「お天 気調べ」まで、多岐にわたるが、環境学習に有効 であることが示されている。一方で、学習空間、

時間枠、指導から援助へといった、学習環境の変 化が必要になることが指摘された。45分の枠は短 すぎるであろう。また、素材の利用において権利 関係をクリアーする事が困難な課題として残って いる。

最後に、ネットワークを介した分散・協調シス テムの利用がいよいよ現実になっていることを示 す発表について記す。電通大岡本教授からは、遠 隔地に分散するグループメンバーの共同作業が共 通のワークスペースで実現できるという、いわゆ

るCSCW(ComputerSupported Cooperative Work:コンピュータに支援された協調作業)の 一つの形態が、マクロ経済のシミュレーションを モデルとして、発表された。福武書店後藤氏は、

インターネット上で利用できるハイパーメディア

・データベースの紹介を行った。気象衛星の画像 がほぼリアルタイムにアクセスできるのは極めて 印象的で、教室での有効活用ができるだろう。こ れらのデータベースは主に米国で整備されている ものであるが、インターネットは世界的に接続さ れているので、国内からも自由にアクセスできる。

本学も学内情報ネットワーク(LAN)整備が 決まり、今年度中にはインターネットへ加入する 事になっている。センター設備としてこれらのハ イパーメディア・データベースが利用できるよう に環境を整備していくつもりである。

(8)

センタ一新事務員紹介

島   瑞 穂

このたび附属教育実践 研究指導センター及び教 務課教務第一係に勤務す ることになりました島 瑞穂と申します。金光八 尾高等学校卒業後、幼稚 園での教育実習や西オー ストラリア大学に約1カ 月間短期留学したことなど、楽しい思いでいっぱ いの奈良佐保女学院短期大学の初等教育学科をこ の3月に卒業しました。本学の3回生の人達と同 年ですので、4回生の人や大学院生の方は私より 年上でお兄さんとお姉さんがたくさん出来たよう で嬉しいです。初めての職場で不安や緊張もあり ましたが、先輩の皆様がとても親切で優しく指導

して下さるのと実践センターには学生さん達も来 られて、とても明るく楽しい雰囲気で毎日、楽し く仕事が出来て幸せです。この7月に教育実践セ ンターと情報処理センターの建物が別々になりま したが、早く自分で仕事がこなせるよう、頑張り たいと思っています。いっも温かく見守っていた だいている実践センターの藤原先生、船越先生、

情報処理センターの山辺先生、そして優しくいろ んなことを親切に教えて下さる先輩でもあるお姉

さんのような太田さん。実践センターでは、教育 関係のいろいろなビデオや教育雑誌もありますの でぜひ御利用して下さい。明るく気軽に出入り出 来る実践センターにして行きたいと思っています。

毎日新しい事を発見出来る新鮮な気持ちをいっま でも忘れないで頑張って行きたいと思っています。

そして、誰に対しても、いっも優しい気持ちで素 直な心で接することの出来る事務楠佐員でありた いと思っています。今は、まだまだ未熟で失敗す る事もあると思いますが、自分らしさを失わずに 笑顔で明るく元気に一生懸命頑張りますe どうぞ

よろしくお願い致します。

運営委員会報告

く第1回センター運営委員会〉

5月30日 於・教育実践センター会議室 議題

1.センター運営委員会規定の一部改正について 大学の事務組織改組にともなって、センター運 営委員会の事務処理を教務課において行う旨のセ ンター運営委員会規定の一部改正案が今井セン ター長より説明され、了承された。

2.今年度のセンター研究プロジェクト

今年度のセンター研究プロジェクトの計画につ いて、教育実践・教育実習分野は、生活科に関す る教授学的研究(継続)、メディア・情報教育分 野は、教育実践とネットワークの活用、どのよう なCGが望まれているかというテーマで行うこと が船越より提案され、承認された。

3.センターの改築および備品の一時搬出 センターの改築とそれにともなう備品の一時搬 出の計画について、藤原運営委員から説明があった。

編集後記

○…現在、指導要録の改訂にともなって、学校現 場では子どもたちの「関心・意欲・態度」を重視 する「新しい学力観」ということが強調されてい ます。この「新学力観」は、従来の知識・技能を 重視してきた学力観の変革をめざすとともに、子 どもたち一人ひとりの可能性を積極的に評価し、

豊かな自己実現に役立つものであるとされていま す。それと同時に、「指導から援助へ」という授 業観の転換を求める主張も目立ってきています。

本号の特集では、こうした「新しい学力観」が提 起する問題について、自由にご提言をいただきま

した。       (F)

1994年8月31日発行 奈良教育大学

実践センターニュース 第11号

奈良教育大学教育学部

附属教育実践研究指導センタ一 面630奈良市高畑町

℡ (0742)27−9288 FAX(0742)27−9289

発行者 今 井 靖 親 印刷所(槻 新 踏 社 面630奈良市鍋屋町19

℡(07∠12)23−5055(代)

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