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大学生の愛情と好意における性差
著者 豊田 弘司, 藤田 正
雑誌名 奈良教育大学教育研究所紀要
巻 37
ページ 31‑35
発行年 2001‑03
その他のタイトル Sex Differences in Romantic Love and Liking in Undergraduates
URL http://hdl.handle.net/10105/7075
大学生の愛情と好意における性差‡
豊田 弘司・藤田 正 (心理学教室)
要旨:大学生358名に愛情尺度と好意尺度の各項目への回答を求めた。そ の結果「恋人」については女子における愛情と好意尺度得点間の相関係数 が男子のそれよりも低く・女子は男子よりも愛情と好意を明確に区別して いることが示された。また、男子では「恋人」と「異性の友人」間の相関 係数が高く、女子では「異性の友人」と「同性の友人」のそれが高かった。
この結果は、対人感情を規定する次元に性差があることをを示すものとし て解釈された。
キーワード:愛情、好意、性差
個人の好かれる特徴を研究する分野は対人魅力(interpers㎝a1attraction)と呼ばれ、そこ では数多くの性差が示されている。例えば、豊田(2000)は、r女性から好かれる男性」、「女性 から好かれる女性」、「男性から好かれる男性」及び「男性から好かれる女性」の特徴を自由記述 によって検討した。その結果、同性から好かれる特徴と、異性から好かれる特徴に性差のあるこ とを明らかにしている。また、豊田(1998)では嫌われる特徴に関して同じような性差を見いだ している。対人魅力以外にも、堀毛(1994)では恋愛スキル、松井(1990)では恋愛の深まりと 熱愛感情、深澤・篠崎・越川(1992)では嫉妬に対する対処行動において性差を見いだしている。
このように、対人魅力をはじめとする対人認知研究においては多くの性差が明らかにされている。
これらの性差を知ることは、対人関係において重要な位置を占める異性間のコミュニケーション を円滑にする上で意義のあることである。
本研究では・r恋人」「異性の友人」及び「同性の友人」に対する愛情と好意における性差に注 目しれRubin(1970)は、相手に対するロマンティックな愛情(romantic1ove)と単なる好 意(1iking)を区別した尺度を作成し、親しくっきあっている男女のカップルを調査対象として
「恋人」及び「同性の友人」に対する感情を検討している。その結果、「恋人」に対する愛情尺度 得点(愛情尺度に含まれる項目に対する評定点の合計)と好意尺度得点(好意尺度に含まれる項 目に対する評定点の合計)の相関係数が女子よりも男子において高いという性差を示している。
これは、女子が男子よりも愛情と好意を区別する傾向があることを示すものとして解釈された。
しかし、Rubin(1970)の尺度の日本版を用いた研究(藤原・黒川・秋月,1983)では上述のよ うな性差は見いだされていない。この不一致は原版と日本版の尺度の構成や被調査者数の違い等 の方法論的な要因に帰因する可能性が大きいが、重要なことは、愛情と好意において性差が存在 するか否かを明らかにすることである。
そこで、本研究は、性差をより検出しやすいように上述の諸研究を発展させて、「異性の友人」
Sex D1fferences m Romant1c Love and L1kmg1n Undergraduates
.
giroshi TOYOTA and Tadashi FUJITA(Dξραr亡mem oゾPsツ。ん。王。gツ,一Mαrασπ三リers{妙。∫
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に対する感情を加えて検討することにした。というのは、「異性の友人」は、「恋人」と「同性の 友人」の中問に位置する対象であり、その対象に対する感情と、「恋人」もしくは「同性の友人」
に対する感情の類似性を検討することによって性差がより明確になると考えたからである。もし、
女子が男子よりも愛情と好意を区別する傾向が強いならば、「恋人」に対する感情と「異性の友 人」に対する感情は異なるはずである。したがって、この両者間の相関係数は男子よりも女子に おいて低くなるであろう。反対に「異性の友人」に対する感情と「同性の友人」に対する感情は 同じ友人なので類似しているはずである。したがって、この両者間の相関係数は高くなるであろ
う。この予想を検討するのが本研究の目的である。
方 法
被調査者 大学生358名(男子198名、女子160名)であり、平均年齢は19歳10か月(18歳6か 月〜24歳2か月)であった。
材 料 調査項目の原版は、Rubin(1970)により作成された項目であり、大渕(1991)にお いて邦訳されている項目を用いた。これらの項目は、好意尺度13項目、愛情尺度13項目からなっ ていた。なお、藤原ら(1983)で作成された項目とは多少表現が異なっている項目がある。用い られた調査用紙は、具体的な愛情尺度と好意尺度に含まれる項目の例とともに図1に示されてい
る。
手続調査は集団調査を行っれ被調査者は・「恋人」「異性の友人」「同性の友人」をそれ ぞれ一人思い浮かべて、その人の名前を質問文にあてはめて回答していった。回答形式は、1
(まったくそう思わない)〜9(非常にそう思う)までの数字を記入していくものであった。な お、すべての被調査者が回答し終えるのに、約13分を要した。
下記の□で囲んだ人物を1名思い浮かべ、その人の名前を質問文の○Oさんにあてはめ て、次の質問に回答してください。なお、回答は、次の目盛りを参考にして、「全くそう 思わない」ときは1、「非常にそう思う」ときは9というように、1から9までの数値を 口の中に記入してください。
匿] 国珂 画困
1 もしOOさんが元気がなさそうだった … □ 口 □ ら、私は何をおいても励ましてあげる
2 私は○○さんに対してなら、何でもう … □ □ □ ちあげられると思う
(以上、愛情尺度)
1 00さんと一緒だと、いつも息がひっ □ たり合う
2 00さんはとても適応力のある人だと □ 思う
(以上、好意尺度)
□ □
口 □
図1調査用紙の例
結果と考察
愛情及ぴ好意尺度得点 表1には、回答対象(r恋人」「異性の友人」「同性の友人」)ことに愛 情尺度得点と好意尺度得点が示されている。両尺度それぞれについて、2(被調査者の性)×3
(評定対象:r恋人」「異性の友人」「同性の友人」)の分散分析を行った。その結果、愛情尺度に ついては、性の主効果(F(1、㈱=8,37,p〈.05)、評定対象の主効果(F(;.刊王〕=317.37,p〈.001)
及び性×評定対象の交互作用(F(。.刊,〕=41.12,p〈.001)が有意であった。この交互作用につい て単純主効果検定を行ったところ、「恋人」(F=.18)及び「異性の友人」(F=2.95)では性差 はなかったが、「同性の友人」では性差が有意であった(F伽1。〕=65.85,p〈.001)。すなわち、
女子学生の方が男子学生よりも「同性の友人」に対して愛情が強いことが示されたのであり、
Rubin(1970)及び藤原ら(1983)と一致する結果であった。藤原ら(1983)によれば、この結 果は男性と女性の友達関係に関する文化的ステレオタイプに一致しているという。つまり、他者
に対して「愛している」と発言することは男性よりも女性が発言した方が受け入れられやすいと いうことに帰因しているということである。また、女性の方が男性よりも同性の友人を信頼する 傾向があること(Jourard&Lasakow,1958)も上述の結果に関係していると考えられている。
一方、好意尺度についても同様の分散分析を行った。その結果、性の主効果(F o醐=10.32,
p<.01)、評定対象の主効果(F(・、・ll〕=21.21,p<.OO1)及び性×評定対象の交互作用(F(・.刊1〕=
4.27,p〈.05)が有意であった。この交互作用について単純主効果検定を行ったところ、「異性 の友人」(F=.01)では性差はなかったが、「恋人」(F{ヨ.刊。〕=12.60,p〈、001)及び「同性の友 人」(F(・.刊1〕=8.21,p<.001)では性差が有意であった。いずれの場合においても・女子学生が 男子学生よりも好意尺度得点が高かった。r恋人」に対する好意尺度得点が男性よりも女性にお いて高かったことは、Rubin(1970)及び藤原ら(1983)と一致するものである。これは、藤原 ら(1983)やRubin(1970)によれば、女性が課題遂行に関連した次元(例えば、知性や判断 の良さなど)に対してr恋人」に高い評価をしていることに関連していると考えられる。しかし、
「同性の友人」に対する好意尺度得点においては先行する2研究(Rubin,1970;藤原ら,1983)
では性差がなかったが、本研究では女子が男子よりもその得点が高かった。藤原ら(1983)では 性差がないことの解釈として、女性は男性よりも一般的に好意を表すのではなく、っきあってい る状況においてのみ好意を表出するとされている。この解釈に基づくと、本研究で性差が認めら れたことは、時代の変化とともに女性がつきあっている状況に関わりなく、一般的に好意を表出 する傾向が高くなったのかもしれない。
表1 「恋人」「異性の友人」及ぴ「同性の友人」1こ対する好意及ぴ愛備尺度得点
尺 度 愛 情 好 意
評 定 対 象
恋 人 異性の友人 同性の友人 恋 人 異性の友人 同性の友人 男子学生M
S D 女子学生M S D
85.52 18.23
86.33 17.61
59.60 19.33
55.97 20.44
59.79 18.01
75.75 18.98
73.15 19.64
79.37 15.78
73.88 14.88 74.07 17.14
78.42
19.30
83.74
14.71
「恋人」に対する愛情と好意の関係 先に述べたように、r恋人」に対する愛情尺度得点と好 意尺度得点間の相関係数においてRubin(1970)では性差が認められたのに対し、藤原ら(1983)
では性差はなかった。本研究では、勇子学生においてr=.60、女子学生においてr=.41であり、
Rubin(1970)の結果(それぞれ、r=.60,r=.39)と極めて類似していた。本研究では大渕
(1991)による項目を用い、藤原ら(1983)の項目とは幾分違っているので、その違いが結果に 反映されたといえよう。しかし、山本(ユ986)は、「異性の友人」に対する感情を因子分析によっ て検討しているが、抽出された感情因子得点では性差が認められている。すなわち、男子では恋 人と親しい友人(異性)の大きな差はないが、女子ではその差が大きく、女子は男子よりも恋人 とそれ以外の異性の友人に対して異なる感情をいだいていることがうかがえる。したがって、本 研究とRubin(1970)の結果を併せて考えると、女性は男性よりも愛情と好意を明確に区別し ていると考えてよいであろ九
表2 「恋人」「異性の友人」及ぴ「同性の友人」間の相関係数(r)
「異性の友人」と「同性の友人」
「恋人」と「異性の友人」
尺 度 男子学生
愛情 .05 好意 .16 愛情 .31 好意 .28
女。子学生
.33
.40
.08
.18