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中国における銀行経営に関する調査報告書2014

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中国における銀行経営に関する

調査報告書2014

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はじめに

「 中 国 に お け る 銀 行 経 営 に 関 す る 調査 報 告 書 2 0 1 4 」 を お 届 け し ま す 。 今 年 で 6 年 目 と な る 本 報 告 書 は 、 P w C と 中 国 銀 行 業 協 会 ( C B A ) が 共 同 で 、 中 国 の 銀 行 経 営 者 の 視 点 か らみた中国銀行業界の現状と今後の見通 しについてアンケートを 行い、調査 結果 をとりまとめたものです。  今回の調査の主 要な目的 は 以 下 の3 点です。 • 中国 銀行業 界の 変 化の 実 態 とそれが 生み出す機会や脅威への理解を深める こと。 • 中国の銀行経営者の見解や提言を市場 の発展や規制に反映させること。 • 海外の金融関係者、規制当局、国民、 そして中国銀行業界との間の相互理解 とコミュニケーションを深めること。  本調査は、中国31省(香港、マカオ、 台湾は含まない)に勤務するマネジメン トクラスの銀行員を対象に電子アンケー ト形式で実施され、1,181件の有効回答を 受領しました。これに加えプロジェクト チームは、経営幹部レベルを対象に対面 によるインタビューを実施しました。今 回の調査参加者のみなさまには、本報告 書の発行において賜りましたご協力に厚 く御礼申し上げます。  銀行経営者の回答によると、今後3年間 の中国のGDP成長率は7.5%を下回る見込 みです。そのなかにおいて経済成長の源 泉は国内消費と技術革新になるとみられ ています。さらに今後3年から5年の中国 マクロ経済の動向は金融業と税制の改革 によって大きく左右され、特に金利自由 化が金融面における改革の中心になると 考えられています。  銀行経営者は、総じて現行の規制は妥 当で中国の金融業のニーズに即している と認識していますが、より一層の柔軟性 を期待しています。今年は中国人民銀 行、中国銀行業監督管理委員会などの主 要な規制当局が銀行間取引に関する新た な規則を数多く導入しました。銀行経営 者は銀行間取引に関するより厳格な規制 によって資産の拡大が妨げられていると しつつも、全体として前向きな評価を示 しています。  インターネットファイナンスの急激な 成長、および民間企業による銀行設立 (プライベートバンク)の動きは伝統的 な銀行業務に大きな影響を与えるととも に脅威になっています。これらの現象は 成熟しつつある業界にあらたなモメンタ ムをもたらしているのです。半数以上の 銀行経営者がインターネットファイナン スは銀行業に大きな影響を与えていると 回答しています。彼らは、インターネッ トファイナンスがもたらす利点や不利益 を認識しており、さまざまな反応を見せ ています。

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  今後の事業展 開 に 関 する回 答 結果 は 2013年調査と大きく変わっていません。し かし、今後3年間の収益と利益の伸び率の 見通しは明らかに引き下げられています。 多くの銀行経営者は今後3年間の収益と利 益の伸び率は20%以下にとどまると見て います。また、主要な成長要因は手数料 ビジネスになると予想しています。  中国の銀行業界は、伝統的な銀行業務 を着実に発展させるとともに、その時々 で必要な構造調整を行うことで成長を持 続してきました。実際、8割以上の銀行経 営者が「構造改革を実施済み、もしくは 実施中」と回答しています。一方で、銀 行経営者は構造改革の利点は認識してい るものの、実際にその効果が実現される のは長期的なプロセスであることを強調 しています。  グローバル化は銀行業界にとって重要 な課題のひとつです。多くの銀行経営者 が、グローバル化は支店、現地法人、合 弁事業の設立を通じて着実に行っていく べきであると考えています。これまでの 海外展開はアジア太平洋地域に集中して おり、特に、香港、マカオ、台湾への 展開が優先的に行われてきました。一 方、人材の不足が海外展開の大きな妨げ となっていると銀行経営者は感じてい ます。  本報告書が皆さまのお役に立てる資料 であることを願います。また読者の皆さ まには、今後の調査と報告書の質を高め るため、本報告書について貴重なご意見 をいただけますと幸いです。 さらなる情報がご必要であれば、中国銀 行業 協 会 、P wCの金 融 サ ービス担当 者 あるいはプロジェクト責任者までご連絡 ください。また、日本の問い合わせ先は 8ページを参照ください。 中国銀行業協会 専門副会長 Yang Zaiping PwC中国 北京シニアパートナー David Wu プロジェクト責任者 Ba Shusong 2014年11月、北京

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1 )大手商業銀行(6行)

• Industrial and Commercial Bank of China(中国工商銀行) • Agricultural Bank of China(中国農業銀行)

• Bank of China(中国銀行)

• China Construction bank(中国建設銀行) • Bank of Communications(交通銀行)

• Postal Savings Bank of China(中国郵政貯蓄銀行) 2 )株式制商業銀行(10行)

• China Merchants Bank(招商銀行) • China CITIC Bank(中信銀行) • Huaxia Bank(華夏銀行)

• China Everbright Bank(中国光大銀行)

• China Minsheng Banking Corp., Ltd(中国民生銀行) • China Guangfa Bank(広発銀行)

• Ping An Bank(平安銀行) • China Bohai Bank(渤海銀行) • Evergrowing Bank(恒豊銀行) • China Zheshang Bank (浙商銀行) 3 )都市商業銀行(都市信用組合)(27 行) • Bank of Beijing(北京銀行) • Chang’an Bank(長安銀行) • Bank of Changsha(長沙銀行) • Changzhi Bank(長治銀行) • Bank of Dalian(大連銀行) • Datong Bank(大同銀行) • Bank of Dongguan(東莞銀行) • Fudian Bank(富滇銀行) • Guilin Bank(桂林銀行) • Harbin Bank(ハルビン銀行) • Bank of Hangzhou(杭州銀行)

• Huarong Xiangjiang Bank(華融湘江銀行) • Huishang Bank(徽商銀行)

• Bank of Jilin(吉林銀行)

• Bank of Langfang(廊坊銀行) • Bank of Nanjing(南京銀行)

• Ningbo Donghai Bank(寧波東海銀行) • Bank of Ningbo(寧波銀行)

• Panjin city Commercial Bank(盤錦市商業銀行) • Bank of Qinghai(青海銀行)

• Qilu Bank(斉魯銀行) • Bank of Shanghai(上海銀行) • Bank of Shangrao(上饒銀行) • Shengjing Bank(盛京銀行)

• Taian City Commercial Bank(泰安市商業銀行) • Bank of Tianjin(天津銀行)

• Bank of Xinyang(信陽銀行) 4 )地場金融機関(16 行)

• Beijing Rural Commercial Bank(北京農商銀行) • TRC Bank (Tinajin Rural Cooperative Bank)

(天津農商銀行)

• Shanghai Rural Commercial Bank(上海農商銀行) • Shenzhen Rural Commercial Bank(深圳農商銀行) • Shanxi Rural Credit Union(山西省農村信用社連合社) • Inner Mongolia Rural Credit Unio

(内モンゴル自治区農村信用社連合社)

• Jiangsu Rural Credit Union(江蘇省農村信用社連合社) • Zhejiang Rural Credit Union(浙江省農村信用社連合社) • Jiangxi Rural Credit Union & Rural Commercial Bank

(江西省農村信用社連合社)

• Rural Credit Cooperative of Shandong (山東省農村信用社連合社)

• Hubei Rural Credit Cooperative(湖北省農村信用社連合社) • Hunan Rural Credit Cooperative(湖南省農村信用社連合社) • Guangdong Rural Credit Union(広東省農村信用社連合社) • Guangxi Rural Credit Union

(広西壮族自治区農村信用社連合社)

• Sichuan Rural Credit Union(四川省農村信用社連合社) • Shaanxi Rural Credit Cooperatives Union

(陝西省農村信用社連合社) 5 )政策銀行(2行)

• China Development Bank(国家開発銀行)

• The Export-Import Bank of China(中国輸出入銀行) 6 )外国(合弁)銀行(2行)

• オーストラリア・ニュージーランド銀行(中国) • 三菱東京UFJ銀行(中国)

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 中国経済は2014年初頭から減速して いる。過去の景気刺激策の副作用が顕在 化するなかで中国経済は不安定な状態に なっている。さまざまな要因が重なるな かで、社会や経済が「新常態」(ニュー ノーマル)に落ち着くことが期待されて いる。中国の経済成長率は2014年第1 四半期に大きく低下したが、中国政府の経 済対策が奏功して第2四半期は安定した。 しかし、需要の伸びは力強さを欠いて おり第3四半期の成長率は若干低下して いる。  当然ながら世界経済の回復の遅れと中 国自身の経済成長の減速は中国の銀行業 界に影響を与えている。また、金融市場 そのものについても、ディスインターメ ディエーションの進展、金利の自由化、 参入規制の緩和などが銀行業界に多くの 課題をもたらしている。

マクロ経済

 中国経済は2014年に入り、「新常態」 を迎えている。経済成長率が低下、イン フレが鎮静化し、雇用の伸びが安定、構 造改革の動きは一段落しつつある。調査 に参加した中国の銀行経営者のおよそ7割 が今後3年間の中国のGDP成長率が7.5% 以下になると予想しており、成長のけん 引役は国内消費(回答者の71.9%。以下 同様)と技術改新(69.5%)になるとみ ている。また、銀行経営者は今後3年から 5年間でマクロベースの経済成長に最も影 響力を与えるものとして、金融システム 改革(73.5%)と税制改革(68.5%)を 挙げている。  金融システム改革に関しては、銀行経 営者が最も注目しているのは金利の自由 化である(94.2%)。銀行経営者の75% 以上が不動産市場について、今後は取引

エグゼクティブサマリー

国際戦略

 調査参加者の6割近くが中国の銀行業 界は海外展開を推進すべきであると回答 した。海外展開を行う理由としては、グ ローバル化する中国のクライアントを追 随するため(59.3%)、海外マーケット で経験を蓄積するため(58.4%)、収益 拡大のため(56%)などが挙げられてい る。海外展開を進める上で、まずは海外 支店又は子会社の設立(53.9%)が第一 の選択肢であり、海外金融機関との提携 などは次点の手法と考えられている。今 後2~3年の間では、調査参加者の半数は 最初の進出先として香港、マカオ、台湾 を選択している(50.9%)。また調査参 加者の8割以上(83.8%)が海外事業を拡 大する手段として送金・決済ビジネスを 考えている。銀行の海外展開を実行に移 す上での最大の障害として人的資源の確 保が挙げられている(69.8%)。その他 では海外の経営環境、投資に関する規則 や規制などについての正確かつ詳細な情 報の不足(61.1%)、戦略立案の経験不 足(59%)などの課題が挙げられた。

事業戦略

  昨年の調査同様、業 種 別 に は農 業 、 林 業 、お よ び 漁 業 が 融 資 を 通 じ た サポートを最も受けており(59.2%)、不 動産業が最も敬遠されている(67.9%)。 法人向け業務においては、今後3年間 で中小、零細企業向け融資業務が最も 優 先 さ れ る 分 野 と な る 見 込 み で あ る (71.9%)。また、調査参加者の半数は サプライ・チェーン・ファイナンスを重 点分野とみている。リテール業務に関し ては、消費者金融事業(61.6%)と資産 運用事業(58.1%)が最も注目されて いる。プライベートバンキングへの注目 度は低下しており(43.4%)、リテール業 額の増加や価格の上昇はないと見込んで いる。銀行経営者は2013年以降に実施さ れたマクロ経済政策に関して前向きな評 価を示しており、調査参加者の80.7%が 第2四半期に実施された金融緩和は実体経 済に一定のプラスの影響をもたらしたと 考えている。

構造改革

 2014年を通して主要商業銀行の多く が構造改革を行い、組織の変革や発展を 主要な経営戦略と位置付けた。調査結果 によれば、回答者の52.9%が自身の所属 する銀行が構造改革を実施中であると回 答し、28.9%は構造改革が完了したと回 答している。調査参加者の80%以上は 構造改革がプラスの影響をもたらしてい ると感じている。調査参加者の65.2% が目標を達成していないと回答している が、構造改革は長期的プロセスで一朝一 夕には達成できないものであると認識し ている。銀行経営者が考える構造改革の 大きな流れは、フロントオフィス、ミド ルオフィス、バックオフィスを区分して (60.1%)、組織運営と業務面の効率化 を図る(84%)ことである。しかし、実 現に向けては、新しい組織と古い組織の 融合が進まないこと(66.1%)やさまざ まな部門間の利害の対立(61.2%)が課 題となっている。

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務の優先分野が変化してきたことがわ かる。投資銀行業務に関しては、資産 の証券化(44.7%)、ストラクチャー ドファイナンス(44.2%)、債券引受 (42.9%)の3分野が今後注力される見込 みである。

サプライ・チェーン・ファイナンス

 主要な商業銀行はいずれもサプライ・ チェーン・ファイナンスサービスや商 品を提供している。これはサプライ・ チェーン・ファイナンスが銀行の顧客や 企業にとって新たな競争力の源泉になる ためである。調査参加者の7割以上がサ プライ・チェーン・ファイナンスを積極 的に推進すると回答している。現状で は、サービスの提供は主に製造業に集 中しており(62.9%)、ファイナンス (62.9%)と決済(61.8%)がサービス の中心となっている。この新規業務を推 進する上でのリスク管理のポイントは、 導入にあたってコアとなる企業の総合的 な体力(62.4%)と貿易機関の信頼性の 監視(62.2%)にあると銀行経営者は考 えている。現時点においてこのサービス を提供する上での最大の課題は、コアと なる企業が上流・下流の取引パートナー を十分にコントロールできる状態で選定 できないことである(67.5%)。

インターバンク取引

 インターバンク取引は2014年も銀行 経営者の注目を集めた。コーポレート ファイナンスで優先する業務として、手 形割引が2013年の11位から2014年は 4位にまで急上昇した。回答者の7割以 上が銀行間業務の発展を前向きにとらえ ている。伝統的な手形業務(59.6%) や銀行間預金取引(58.7%)がまだ主 要業務であるが、委託投資(Entrusted investments)やリターン・スワップ・プ ログラム(Returns swap programmes) などの新しいタイプの取引が注目を集め つつある。インターバンク取引について は、商業銀行が主要なポジションを占め ている(78.9%)。  インターバンク取引の急激な成長によ る潜在的なリスクの高まりへの対処とし て中国人民銀行や中国銀行業監督管理委員 会などの主要な規制当局がインターバンク 取引に関する一連の規制やガイドライン を公表している。銀行経営者はこれらの 厳格な規制がもたらす最も大きな影響は 資産の成長が妨げられる(64.3%)こ とにあると考えているが、これらの政策 について全体的には前向きの評価をして いる。銀行経営者もインターバンク取引 の規制を強化する上での考えを示して いる。調査結果では、回答者の68.1% は「オフ・バランスシート・リスクが オン・バランスシート・リスクとして 顕在化することを避けるために流動性 管理指標が必要である」としている。 また、回答者の半数以上(51.6%)は 「高リスク資産への投資に上限を設ける べきである」としている。さらに銀行 経営者は「取引期間や与信枠の承認に 関するプロセス、および内部統制の改 善」を行うことに強い関心を示している (64.5%)。

アセットマネジメント

 金利の自由化が進展する一方で、ア セットマネジメント業務は急速な拡大が 続いたことで、銀行の主要事業のひとつ となり、利益拡大への貢献が期待される 部門へと成長した。調査参加者の8割以 上がアセットマネジメント業務の戦略的 位置づけが今後の事業改革や利益拡大を 達成する上での要になるとみている。ま た、調査参加者の7割近くが資産運用商品 をいかに適切に管理していくかが重要に なると考えている。商品ラインアップと しては国内プレースメント、レポ取引、 インターバンク・金融機関向け預金など を含むマネーマーケット商品(67.4%) および社債、中期証券、短期債券、私募 債などを含む国内資産(59.5%)を中 心にすべきであるとしている。調査参 加者の62.4%がアセットマネジメント業 務を拡大する上で最も重要な内部的課題 は人的資産の不足にあると考えている。 一方で、外部リスクの主要なものとして は保有資産やカウンターパーティーの 信用リスク(56.8%)、資産と負債の 期間ミスマッチなどによる流動性リス ク(55.4%)にあると認識している。 銀行経営者はアセットマネジメント業 務を推進する上では、ビジネスモデル (49.8%)や情報開示(48.6%)に関す る監視の強化、新たなライセンスの管理 とライセンスのもとで提供できるサービ スの管理(44.6%)の強化が必要である と考えている。

リスク管理と内部統制

 上場している銀行の2014年前半の決 算によれば不良債権比率、不良債権残高 とも上昇しており、資産内容の悪化が明 らかになっている。さらに、延滞比率 は不良債権比率よりも速いテンポで上 昇しており、今後資産内容がさらに悪 化することが見込まれる。調査参加者 によれば、2014年における不良債権比 率上昇の主因は主に、1)経済成長率の 低下(47.4%)、2)企業や地方政府が 私的な貸出や保証に関係していること (44.7%)、3)企業が業容の拡大をコン トロールできず流 動性危機に陥っている こと(43.9%)が挙げられている。銀行 経営者は、特に不動産市場の供給過剰に 関連するリスクに注視している。銀行経 営者は、2014年以降の3年間について、 環境汚染やエネルギー多消費、資源依存 型業種(73.7%)と不動産(65.8%)を 中心に不良債権比率が高まるものと考え ている。調査参加者は、不良債権比率の 再度の上昇を防ぐには、貸出前のデュー ディリジェンスの強化によるリスクが高 い地域、業界、企業の特定(65.8%)、貸 出後のモニタリングの強化(62.4%)が 特に重要であるとの認識を示している。  8割以上の銀行では、一段と総合的な 内部統制制度を確立するとともに、コン プライアンス研修の強化やリスクのスク リーニングを定期的な実施することで、 銀行の支店における一般行員に対する監 視を行っている。

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コーポレートガバナンスと

人的資源の管理

 調査参加者は、コーポレートガバナン スに関して、去年ほどではないが引き続 き重要な項目として認識している。特に 所有の集中度については昨年から懸念さ れている。調査参加者の見解によれば、 コーポレートガバナンスの問題点は、独 立役員と外部監視体制が有効に機能して いないこと(35.9%)、および株主総会、 取締役会、監査委員会の関係が十分に確 立されていないこと(34.7%)である。 また最も緊急の課題は、銀行の戦略立案 能力と資本政策の強化(61.4%)、およ び従業員に対するインセンティブプログ ラム、説明責任メカニズの導入や透明性 の確保である。  調査参加者の9割近くが銀行業界の人員 は今後3年間増え続けると予測している。 人事管理の主な優先事項としては、業績 連動管理システム(80.5%)、教育と研 修(67.4%)、報酬体系(56.6%)の 改善が挙げられている。従業員研修の優 先分野としては、販売技術(64.2%)、 管理能力(51.7%)、協調性、コミュニ ケーション能力、組織対応力(50.5%) の強化が重視されている。調査参加者の 40.1%は、新しく改定された中国労働契 約法には問題なく対応できていると回答 している。

IT(情報テクノロジー)の整備

 IT技術は今日の中国の銀行業務を支え る基盤として重要な役割を果たしてい る。一方で、ITの技術水準が今後の事業 拡大やイノベーションを制約する要因に もなってくる。調査参加者の40%は、今 後3年間でITシステムの構築を加速し、 IT投資を大幅に増加すると回答している。 しかし、「ITシステムの構築を加速しIT投 資を大幅に増加する」と回答した銀行経営 者の割合は2011年以降低下傾向にある。 一方で、「IT投資の水準を維持し、開発 ニーズに合わせて投資の優先分野を調整 する」と回答した銀行経営者の割合が増 えている。このことは、これまで実施し てきたITインフラに対する投資の成果が 見え始めており、これからは投資の重点 分野が特定の領域における深堀へと変化 していくことを示すものと考えられる。 調査結果によれば、ITインフラで最も注 力されている分野は、中核的なトレー ディング業務システム(62.3%)、リス ク管理システム(48.5%)、信用リスク管理 システム(44.6%)となっている。また、 2013年の調査と同様、最も注目されて いるIT技術は、モバイルインターネット (75.6%)、ビッグデータ(69%)、と クラウドコンピューティング(40.8%) であった。

インターネットファイナンス

 調査参加者の半数以上がインターネッ トファイナンスは伝統的な銀行業務、特 に資金調達業務に多大な影響を与えてい ると考えている。回答者の48.2%は預 金の流出につながっていると回答してお り、29.9%は資金調達コストの上昇につ ながると回答している。調査参加者は、 インターネットファイナンス会社は利便 性(93.6%)と運営コスト(90.2%) の 面 で 有 利 で あ る 一 方 、 リ ス ク 管 理 (91.3%)と顧客基盤(86.3%)に関 しては従来の金融機関に強みがあると考 えている。インターネットファイナンス の台頭に対抗するために、銀行経営者は エレクトロニックバンキングを通じた販 売チャネルへの投資を積み増している (86.1%)。その上で、銀行経営者は、 協調とシナジーを得るために、インター ネット企業、とりわけ電子商取引企業と の戦略的な提携を求めている(66%)。 調査参加者は、商業銀行がインターネッ トファイナンスに新規参入する場合のリ スクは、ITリスクにある(60.5%)と考 えている。また、調査参加者はインター ネットファイナンスの規制を強化するこ とが重要であると考えている。調査参加 者の48.6%は、中国人民銀行、中国銀行 業監督管理委員会、中国証券監督管理委 員会、中国保険監督管理委員会などが関 連する規制や規則を設定あるいは強化す ることで規制の範囲を拡大して対応すべ きであると考えている。

社会的責任

 近年、中国の銀行業界では社会的責任 を果たすための投資を増やしている。調 査参加者の85.4%が「評価を高めるこ と」が主要な動機であると回答してい る。調査参加者の76.8%が「零細・小 企業への金融サービスの提供」が社会 的貢献の義務を果たす上での鍵となる 手法であると考えている。調査参加者 によれば、金融商品のイノベーション (60%)、事業プロセスと効率性の追求 (54.7%)、金融面における消費者保護 (50.5%)が、公的な金融サービスのな かで最も改善の必要性がある分野である との意見を示している。

プライベートバンク

(民間企業が設立する銀行)

 調査参加者は、民間企業が銀行を設立 することについて前向きに評価してい る。調査参加者の半数近くは民間企業の 参入は実体経済への貢献、民間貸付に対 する規制の改善、金融リスクの低下につ ながるとみている。調査参加者の82.7% は、プライベートバンクは既存の金融機 関に比較して経営モデルの柔軟性で勝る と考えている。一方、既存の金融機関は 知名度(57%)と財務基盤(55.3%) の面で勝っていると考えている。プライ ベートバンクの出現により都市商業銀行 (74.9%)および、小規模零細な金融 会社(75.4%)が最も打撃を受けると 予想されている。民間企業が銀行業界に 参入することの最大リスクは、関連当事 者間取引、およびプライベートバンクの 不十分なコーポレートガバナンスによる モラルハザード(倫理観の欠如)である (73.2%)。規制当局が現在行ってい るプライベートバンクのパイロットプロ ジェクトについて調査参加者は非常に前 向き評価しており、プライベートバンク にとっての制約は主に規制当局がもたら すであろうと考えている(84.6%)。

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規制当局への評価

 調査参加者は、規制当局による規制の 指標は科学的かつ合理的で中国銀行業界 の現状に合致していると考えている。し かし一方で、調査参加者は規制の柔軟性 に関しては改善の余地があると回答して いる。おのおのの指標についての回答結 果をみると、「自己資本比率」に対する 評価が最も高く、「預貸比率」が最も低 い結果となっている。  規制当局は、2013年に2回起きた流 動性の逼迫局面を踏まえて、商業銀行 の流動性リスク管理に関する規制を導 入した(Rules Governing Liquidity Risk Management of Commercial Banks)。 調査参加者はこの規制のなかで、流動性 カバレッジ比率(64.7%)、流動性比率 (59.7%)に注目している。調査参加者 の70.8%は、流動性規制を改善する上で は「市場の流動性リスク早期警戒および 非常時対応メカニズムの改善」が効果的 であると回答している。   商 業 銀 行 資 本 管 理 弁 法 ( 試 行 ) (Measures of Capital Management of Commercial Banks – Trial )が正式に導入 されてから2年目を迎える今、規制当局は 規制に関連する新たな指針を数多く導入 している。これに対し調査参加者の70.3% は、これらの指針によって「さまざまな チャネルと通して銀行の自己資本強化の プレッシャーの緩和につながる」とみてい る。調査参加者はまた、これらの指針は 「銀行が事業構造を修正し、多額の所要 資本額を必要としないビジネスモデルへ の転換」を促す上で効果的であるとみて いる(63%)。

銀行経営者の品質

 プロフェッショナル能力に関する質問 の回答結果によると、中国の銀行経営者 は堅実な社会対応能力、事務能力を保持 しているが、国際的な視野やイノベーショ ンの面では能力が不足していることが明 らかになった。仕事に対する満足度に関 しては、業務の達成感、作業環境、社会 的地位に関して最も満足している。生活 面での満足度に関しては、家族/結婚、 ソーシャルライフ、幸福といった項目に 高い得点を与えている。調査参加者の 49.4%は、「中国の銀行における管理職 は専門性を高める傾向にあり、いくつか の銀行ではプロフェッショナルなマネジ メントスタイルが確立している」と回答し ている。調査参加者の30.7%は、インセ ンティブあるいは制約メカニズムが確立 されていないことが銀行が発展する上で の課題であると考えている。調査参加者 の38.4%は、最も効果的な従業員インセン ティブは自社株購入権であるとしている。 また、調査参加者の57.6%は、従業員が 他の銀行で働きたいと思う最も大きな要因 は優れた組織風土であると回答している。

今後の見通し

 調査参加者の80%近くが、中国銀行 業界の今後3年間の売り上げおよび利益 の成長率は20%以下になると予測してい る。調査参加者の約30%は今後の売り 上げの成長率が10%以下にとどまると予 測しており、40%前後は利益の成長率が 10%以下にとどまると予測している。今 後、利益を成長させる上で期待される分 野としては、手数料ビジネス(26.9%) をあげる割合が、金利収支(26.5%)を 上回った。銀行経営者は、資産の質の改 善に一段と注力している(21.8%)が、 実際には資産内容が劣化することを非常 に懸念している。調査参加者の60%以上 が今後3年間の自社の不良債権比率が1% 未満にとどまると回答しているが、30% は不良債権比率が1~3%になると回答 している。中国銀行業界全体でみると自 己資本比率の状況は良好であり、調査参 加者の80%以上が自社の自己資本比率が 10.5%を上回り、70%以上は11.5%を 上回ると回答している。不良貸出引当カ バー比率(不良債権に対する貸倒引当金 のカバー比率)に関しては、ほぼ全回答者 (96.9%)が自社のカバー比率が2014年末 には規制で求められている150%を上回 り、さらに調査参加者の75.2%は250% を上回ると回答している。

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お問い合わせ先

PwCあらた監査法人

〒104-0061 東京都中央区銀座8-21-1 住友不動産汐留浜離宮ビル TEL:03-3546-8450(代表) 近江 恵吾 総合金融サービス推進本部長 パートナー keigo.omi@jp.pwc.com 上條 崇 総合金融サービス推進本部 金融調査室 室長 takashi.kamijoh@jp.pwc.com 稻留 修 総合金融サービス推進本部 国際金融ビジネス室 パートナー o.inatome@jp.pwc.com 村松 毅 財務報告アドバイザリー部 シニアマネージャー takeshi.muramatsu@jp.pwc.com 植田 隆彦 総合金融サービス推進本部 金融調査室 主任研究員 takahiko.ueda@jp.pwc.com

PwC中国

高橋 忠利 日本企業部統括代表(華北・華中エリア) パートナー toshi.t.takahashi@cn.pwc.com

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本報告書は、PwCメンバーファームが2014年12月に発行した『Chinese bankers’ survey 2014』を翻訳したものです。翻訳には正確を期しておりますが、英語版 と解釈の相違がある場合は、英語版に依拠してください。

電子版はこちらからダウンロードできます。 www.pwc.com/jp/ja/japan-knowledge/report.jhtml

オリジナル(英語版)はこちらからダウンロードできます。 http://www.pwccn.com/home/eng/cn_bankers_survey_dec2014.html 日本語版発刊月: 2015年8月 管理番号:I201501-12

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