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Blue Earth 126 沖縄トラフ伊平屋北フィールドの深海熱水噴出孔熱水が噴出しているため 背景が揺らいで見える 深海では水圧が高く水の沸点が上がるため 熱水は300 以上に達することもある 熱水には硫化水素や水素が含まれている LED ライト 3 個の赤色のLED が点灯していることが確認で

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Academic year: 2021

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海と地 球の情報誌

Japan Agency for Marine-Earth Science and Technology ISSN 1346-0811 2013 年10 月発 行 隔月年6 回発 行 第25 巻 第4 号 ( 通 巻126 号)

小さ な有 孔虫 が大 きな 地 球 を語る

熱水- 海水燃料電池の

発電試験成功

「ちきゅう」 による

東北地方太平洋沖地震調査掘削

可視化技術の最前線

(2)

Blue

Earth

126

1 Close Up

熱水- 海水燃料電池の

発電試験に成功

2  特集

小さな有孔 虫 が

大きな地球を語る

18 Aquarium Gallery すさ み 海立 エ ビと力 二 の水 族 館 白 い 宝 石   オ ー ストラリ アン ス ノー クラブ 20 私が海を目 指す理由

深海 底を覆う泥 に息づく生 態系 を探 る

野牧秀隆

海洋・極限環境 生物圏領 域 海洋環 境・生物 圏変 遷過程研 究プロ グラ ム 主 任研究員 24  研究の現場から コ ンピ ュ ー タ と人 を つ な ぐ 可 視 化 技 術 の 最 前 線 荒 木 文 明 地球シミュレータセンターシミュレーション 高度化研究開発プログラム 高度計算表現法計算グループ グループリーダー

28 Marine Science Seminar

「 ちきゅう」 による

東北 地方 太平洋沖 地震 調 査掘削 の概要

斎藤実篤

地 球内部 ダイナミ クス領 域 固体地 球動的過 程研究プロ グラム 付 加体力学 研究チ ーム チ ームリーダー 32 BE Room 編 集 後 記 『Blue Earth 』定 期 購 読 のご案 内 JAMSTEC メール マガジンのご 案 内 裏表紙 Blue Earthをめぐる

水深5,000m 、400 ℃の熱水噴出 域ヘ

カリブ海・中部ケイマン海膨

沖 縄 ト ラ フ 伊 平 屋 北 フ ィ ー ル ド の 深 海 熱 水 噴 出 孔 熱 水 が 噴 出 し て い る た め 、 背 景 が 揺 ら い で 見 え る 。 深 海 で は 水 圧 が 高 く 水 の 沸 点 が 上 が る た め 、 熱 水 は300 ℃ 以 上 に 達 す る こ と も あ る 。 熱 水 に は 硫 化 水 素 や 水 素 が 含 ま れ て い る 熱 水- 海 水 燃 料 電 池 の 概 念 図 熱水 側と 海水 側の電 極を 電線 で連 結し 、その 間に電 動 装置とし てLED ライト を入 れた シンプ ル な構 造であ る。 熱水側電 極 では、主 に硫化 水素(H2S) が酸化さ れ 、電子(e- )が電 極に 流れ 込む反 応が 進行 する。海 水側電 極で は、主に 酸素(O2) が電 極から電 子を受 け取り 還元さ れる反応 が進 行する 人 工 熱 水 噴 出 孔 海底 下の 熱水 だまり まで 孔を 掘り、 ケーシ ン グ パイ プで 海底 面まで 熱水 の通 路をつく る。 安定 したガ イド ベー スの中 央 から熱 水が 噴出 するた め、 天然の 熱水 噴出孔 と 比べて 無人 探査機 の接 近や 観察・ 実験を 容易に行 える LED ラ イ ト 3 個の赤 色のLED が点 灯し て いること が確 認できる 熱 水- 海 水 燃 料 電 池 の 全 体 写 真 海水側の電極は一部のみ見えている

Close Up

熱水─海水燃料電池の発電試験に 成功

化 石 燃 料 や 原 子 力 に 頼 ら な い 発 電 方 法 が 求 め ら れ て い る な か 、 海 洋 の さ ま ざ ま な エ ネ ル ギ ー を 電 力 に 変 換 す る 技 術 が 研 究 さ れ て い る 。 そ の1 つ が 、 熱 水- 海 水 燃 料 電 池 で あ る 。 海 底 か ら 噴 出 し て い る 熱 水 に は 硫 化 水 素 の よ う に 電 子 を 放 出 し や す い 物 質 が 、 海 水 に は 酸 素 の よ う に 電 子 を 受 け 取 り や す い 物 質 が 、 そ れ ぞ れ 豊 富 に 含 ま れ て い る 。 そ の 性 質 を 利 用 し て 熱 水 と 海 水 の 間 の 電 子 の 移 動 を 人 工 的 に 促 進 さ せ れ ば 、 理 論 的 に は 電 力 を つ く り 出 す こ と が 可 能 だ 。 海 洋 研 究 開 発 機 構 (JAMSTEC ) 海 底 資 源 研 究 プ ロ ジ ェ クト の 山 本 正 浩 研 究 員 は 、 熱 水 と 海 水 を 燃 料 に で き る 発 電 装 置 “熱 水- 海 水 燃 料 電 池 ” の 実 現 を 目 指 し 、 理 化 学 研 究 所 の 環 境 資 源 科 学 研 究 セ ン タ ー の 中 村 龍 平 チ ー ム リ ー ダ ー ら と 共 同 で 研 究 を 進 め て き た 。 2010 年 、 統 合 国 際 深 海 掘 削 プ ロ グ ラ ム (IODP ) の 「 沖 縄 熱 水 海 底 下 生 命 圏 掘 削 プ ロ ジ ェ ク ト 」 に お い て 、 沖 縄 ト ラ フ の 伊 平 屋 北 フ ィ ー ル ド で 海 底 掘 削 が 行 わ れ 、 人 工 熱 水 噴 出 孔 が つ く ら れ た 。 山本 研 究員ら は2012 年 、人 工熱 水 噴出 孔を 使 って 熱 水と 海 水が 持 つ 電 気的 な 特徴 を 、世 界 で初 め て 本 格的 に 調査 。発 電 が 可能 であ るこ と を 確認し 、熱 水- 海水 燃 料 電池を 設置し て 発電 試 験を 行 っ た。 熱 水- 海水 燃 料電 池 は、 熱 水噴 出 孔 側の 電 極と 海 水 側の 電 極 を 電 線で つ ない だ だけ の シン プ ル な 構造 であ る 。 そし て 、消 費 電 力が21mW のLED ラ イト を点 灯 さ せる こと に 成功 。深 海 熱 水孔 で 電気 化学 的な 発電を 行 った のは、 世界 で初め てで ある 。 今 回は 電 極が 小さ い た め 発電 量 は 微小 だ が、 電 極の 大き さ や 構 造、 素材な どを 工夫 すること で 、も っと 大き な 電力を 取り 出すこと ができ ると 考えら れて いる 。また 、燃 料と なる 熱 水と 海水は 無尽 蔵 に供 給さ れる こと から 、長 期間に わた って安 定的 に電力 を供 給 する ことも 可 能だ 。 海底 に電力 供給 シス テ ムを つく る こと が でき れ ば、 深海 熱水活 動域 での 研究や 開発 に大きく 貢献 すると 期待 さ れる。今 後は 、長 期間運 転を 行い、 耐久 性を試 験して いく 計画で ある 。 取材協力:海底資源研究プロジェクト 山本正浩 研究員

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小 さ な 有 孔 虫 が 大 き な 地 球を 語る

有 孔 虫 と いう 生物 を 知っ て い る だ ろう か ? 世 界 中 の 海 に 生息 する 単細 胞 の 原 生 生 物 で 、 多く の 有 孔 虫 は 石 灰 質 の 殼 を 持 ち 、大 き さ は1mm ほ ど だ 。 こ れま で 有孔 虫 は 、 過去 の 海 洋 環 境 を 知る こ と がで きる こ と か ら 、 そ の 化 石 が 注 目さ れ 、研 究 が進 め ら れ て き た 。生 き てい る 有 孔 虫 に つい て の 研 究 が 進 ん だ の は 、 最近 だ 。 そ し て 、 研 究 が 進 むに つ れて 、 有 孔 虫 は と ても 不 思 議な 生 物 で あ るこ と が 、 次 第に 明ら か に な っ て き た 。 海 洋 研 究 開 発 機 構 (JAMSTEC) は 、 世 界 屈 指 の 有孔 虫 の研 究 拠 点 で あ る 。 飼 育 実 験 な ど 独 自 の 研究 から 明 ら か に な っ て き た、 有 孔 虫 の 魅 力 を たっ ぷり 紹 介 し よ う。 生 きて いる 有孔 虫 の 姿 ( * は 底生 有孔 虫。 大 きさ の 比率 は 実 際と は異な る) ●取 材協 力 木 元 克 典 技 術研 究副 主 幹 地球 環 境 変 動 領域 古 海洋 環 境研 究 チ ー ム 土 屋 正 史 チ ー ム リー ダ ー 海洋 環 境 ・ 極 限環 境 生 物 圏領 域 同 位 体 生 態 学研 究 チ ーム 豊 福 高 志 チームリーダー 海洋 環 境 ・ 極 限環 境 生 物 圏領 域 地球 生 物 学研 究チ ー ム /極 限 バ イ オ リソ ー ス 開拓 研 究 チ ーム ハスティ ゲリ ナ・ ペラジ カ (Hastigerina pelagica) グロビ ゲリ ノ イデ ス・ ル ー バ (Globigerinoides ruber) グロビ ゲリ ネラ・ アエ キュラ テラリ ス (Globigerinella aequilateralis) カ ルカリ ナ・ ガウ ディ チ ャウ ディ* (Calcarina gaudichaudii) アン モニ ア・ ベッ カリ* (Ammonia beccarii) エ ルフィ ディ ウ ム・ クリ ス パム* (Elphidium crispum) グロビ ゲリ ノ イデ ス・ サ キュリ ファ ー (Globigerinoides sacculifer) ネ オグロ ボコ ード リ ナ・ デュ ーテ ルト レ イ (Neogloboquadrina dutertrei) スト レ プト キ ルス・ト ケ ラウ アエ (Streptochilus tokelauae) バ キュロ ジプ シ ナ・ スフ ァ エ ルラ ータ* (Baculogypsina sphaerulata) グロ ボロ タリ ア・ メ ナル ディ ー (Globorotalia menardii) キン キロ キュリ ナ* (Quinqueloculina sp.) オーブリ ナ・ ユニ バ ーサ (Orbulina universa) グロビ ゲリ ナ・ ブロ イ デス (Globigerina bulloides) プレ ニ ア ティ ナ・ オブリ キュロ キュラ ータ (Pulleniatina obliquiloculata)

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有孔虫の殼のかたち

有 孔 虫 の 殼 の 電 子 顕 微 鏡 写 真( * は 底生 有孔 虫 。 浮 遊 性 は2 方 向 か ら 、 底 生 は1 方 向 か ら の 写 真 を 掲 載 。 大 き さ の 比 率 は 実 際と は 異 なる ) グ ロ ビ ゲ リ ナ ・ キ ン キ ュ エ ロ ー バ (Globigerina quinqueloba) グ ロ ビ ゲ リ ノ イ デ ス ・ サ キ ュ リ フ ァ ー (Globigerinoides sacculifer) グ ロ ビ ゲ リ ノ イ デ ス ・ テ ネ ル ス (Globigerinoides tenellus) プ レ ニ ア テ ィ ナ ・ オ ブ リ キ ユ ロ キ ュ ラ ー タ (Pulleniatina obliquiloculata) グ ロ ビ ゲ リ ナ ・ フ ァ ル コ ネ ン シ ス (Globigerina falconensis) オ ーブリ ナ ・ユニ バ ーサ (Orbulina universa) グ ロ ボ ロ タ リ ア ・ メ ナ ル デ ィ ー (Globorotaliamenardii) ボ リ ビ ナ ・ ス ト リ ア チ ュ ラ * (Bolivina striatula) グロ ビ ゲ リ ネ ラ ・ キ ャ リ ダ (Globigerinella calida) ウ ビ ゲ リ ナ ・ ア キ タ エ ン シ ス * (Uvigerina akitaensis) ピ ル ゴ * (Pyrgo sp.) グ ロ ボ ブ リ ミ ナ * (Globobulimina sp.) メ ロ ニ ス ・ ポ ン ピ ロ イ デ ス * (Melonis pompiloides) ウ ビ ゲ リ ナ ・ オ ー ベ リ ア ー ナ * (Uvigerina auberiana) グ ロ ビ ゲ リ ノ イ デ ス ・ ル ー バ (Globigerinoides ruber) ネ オ グ ロ ボ コ ー ド リ ナ ・ パ キ デ ル マ (Neogloboquadrina pachyderma) キ ャ ン デ イ ナ ・ ニ テ ィ ダ (Candeina nitida) ベ ー エ ラ ・ デ ィ ジ タ ー タ (Beella digitata) ネ オ グ ロ ボ コ ー ド リ ナ ・ デ ュ ー テ ル ト レ イ (Neogloboquadrina dutertrei) ラ エ ビ デ ン タ リ ナ ・ ア フ ェ リ ス * (Laevidentalina aphelis) グ ロ ボ ロ タ リ ア ・ ツ ミ ダ (Globorotalia tumida) グ ロ ボ ロ タリ ア ・ ト ゥ ラ ン カ ト リ ノ イ デ ス (Globorotalia truncatulinoides) ガ リ ッ テ リ ア ・ ヴ ィ バ ン ス (Gallitellia vivans) シ ビ シ デ ス ・ ロ バ チ ュ ル ス * (Cibicides lobatulus) グロ ボ コ ー ド リ ナ ・ ゴ ン グ ロ メ ラ ー タ (Globoquadrina conglomerate) プ レ ニ ア * (Pullenia sp.) フ ォ ン ト ボ テ ィ ア ・ ウ ェレ ス ト ロ フ ィ * (Fontobotia wuellerstorfi) レ ン テ ィ キ ュ リ ナ * (Lenticulina sp.)

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有孔 虫 とは、 どういう生物 ?

有 孔 虫 は 、1mm ほ ど の 大 き さ で 、 炭 酸 カ ル シ ウ ム の 殻 を 持っ て い る- - そ う 紹 介 さ れる こ と が 多い が 、 炭 酸カ ルシ ウ ム の殻 と 一 言 で い っ ても 、 ガ ラ ス の よう に 透 明 な も の と 、 陶器 のよ う に 不 透 明 の も の が ある 。さ ら に 、炭 酸カ ルシ ウ ム では な く 、 海 底 の 砂 や 鉱 物 の 粒 子 な ど で殻 を つ くる も の 、有 機 膜 に 覆 わ れ た だ け の も の も い る 。 大 き さ も 、0.1mm と と て も 小 さい も の や 、10cm を 超 える 大 き な も の もい る 。有 孔 虫 は 実 に 多 様 だ 。 生 活 ス タ イ ル に も2 つ あ る 。 水 中 を 漂っ て 生 活 し てい る も のと 、 海 底 で 生 活 し てい る も ので 、 前 者 を 浮 遊 性 、後 者を 底生 と呼 ん で い る 。そ も そ も 有 孔 虫 は 、5 億7000 万 年 前 の 先 カ ン ブ リ ア 紀 に 出 現 し た 。 そ れ らは 底 生 だ っ た と 考 えら れて いる 。浮 遊 性 有 孔 虫 は 、1 億7000 万 年 前 の ジ ュ ラ 紀 中 期 と1 億4000 万 年 前 の 白 亜 紀 前 期 な ど 数 回 、 底 生 有 孔 虫 の 系 続 か ら 種 分 化 し た こ と が 、 遺 伝 子 解 析 か ら 明 ら か に なっ て い る 。 「 有 孔 虫 の 魅 力 は 何 と い っ て も 、 そ の ユニ ー ク な 殻 の か た ち!」 と木 元 克 典 技 術 研 究 副 主 幹 は い う 。 有 孔 虫 の 殻 は 、 チ ェン バ ー( 殻 室 ) と 呼 ば れ る 丸 い 部 屋 が 連 な っ て でき て い る 。 チ ェン バ ー の か た ち や 大 きさ 、 つ な が り 方 は 、 種 類 に よっ て 異な る 。 そ の た め 、 ポッ プ コ ー ン の よう なも の、 花 び ら のよ う なも の、 串 だ ん ご のよう なも のな ど 、 殻 の か た ち は バリ エ ー シ ョン に 富 む 。沖 縄 な ど 南 の 島 の 海岸 で 見 ら れ、 お 土 産 と し ても 有 名 な 星 の かた ち を し た 星 砂 も、 有 孔 虫 の 殻 だ 。 有 孔 虫 は 、 成 長 と とも に チ ェン バ ーを 付 加し てい く 。 チ ェン バ ー とチ ェン バ ー の 間 は 隔 壁 で 区 切 ら れ てい る が 、口 孔 とい う 小 さ な 孔 が 開い て い て 、 す べ て の チェ ン バ ーは つ な がっ て いる 。そ の空 間に 、 ア メ ーバ のよ うな 有 孔 虫 の 本 体 が 入 っ てい る のだ 。 有 孔 虫 は 、 単 細 胞 の原 生 生 物 であ る 。 と こ ろ で 、 な ぜ 有 孔 虫 と い う 名 前 が 付 い た の だ ろ う か。 有 孔 虫 の 学 術 用 語 フ ォラ ミ ニ フ ェ ラ (Foraminifera) は 、「 孔 」 と 「 持 つ 」 とい う 意 味 の ラ テ ン 語 か ら来 てい て 、口孔 を 持 つこ と に由 来 す る 。 浮 遊 性 有 孔 虫 を 観 察 し てい る と 、口 孔 や 殻 の 表 面 全 体 に 分 布 す る 壁 孔 な ど か ら 糸 状 の も の が 出 てい る こ と が あ る 。こ れら は 細 胞 質 で 、 仮 足 と 呼 ば れ て い る 。ま た 、浮 遊 性 有 孔 虫 の な か に は 、 ス パイ ン と 呼 ば れる と げ の よう な 突 起を 持つ も の があ る 。 炭 酸 カ ル シ ウ ム で で き て い て 、 と き に は 殻 の 長 径 の10 倍 以 上 に なる 。 餌を 捕 獲 す る た めな ど スパ イ ン の 用 途 に は 諸 説あ る が 、浮 力 を 調 整 し てい る と い う の が 有力 だ 。 「 有 孔 虫 は と て も 面 白 い か た ち を し てい ま す 。 で も 、 一 般 の 方 へ の 認 知 度 は 低 い で す ね 」 と 木 元 技 術 研 究 副 主 幹 。 そ こ で 木 元 技 術 研 究 副主 幹 は 、“有 孔 虫 、 見 え る 化 プ ロ ジ ェ ク ト を 開 始 。 興 味 を 持 っ て もら う た め に は 、 目 で 見 た り、 触っ たり で き る こ と が重 要だ と 考 え た 。 まず 、 粘 土 模 型 や 編 みぐ る み を つ くっ て み た 。さ ら に 、 マ イ ク ロフ ォ ー カ スX 線 CT ス キ ャ ナ ー で 三 次 元 構 造 を 計 測 し、 そ の デ ー タ を も と に3D プ リ ン タ ー で 模 型 を 作 製 。「 最初 の 模 型 が 完 成 し た とき 、感 激 し まし た 。顕 微 鏡 で 見 な け れ ば 見 え ない 有 孔 虫を 、手 に 取 っ てい ろ い ろ な 方 向 か ら 眺め る こ と が で きる 。し か も 、 内 部 の 構 造 ま で 見 え る ので す 。 世 界 が 変 わり まし た 」 日 本 各 地 の 科 学 館 の 展 示 な ど で も 評 判 を 呼 び 、 少 し ず つ 有 孔 虫 の 認 知 度 が 広 か っ てい る と 、 木 元 技 術 研 究 副 主 幹 は 手 応 え を 感 じ て い る 。 見 え る 化 プ ロジ ェクト は 、 広 報と し て だ け で な く 、 科 学 的 に も 大 きな 意 味 があ る 。「 有 孔 虫 に は 隠蔽 種と い っ て 、 形 態 か ら は 同 じ 種 と さ れ て い る が 遺 伝 子 解 析 を す る と 異な る 種に 分け ら れる も の が い ま す 。 マイ ク ロ フ ォ ー カ スX 線CT ス キ ャ ナ ー は1 マ イ ク ロ メ ート ル の 精 度 で 内 部 構 造も 分 かる た め 、 隠蔽 種 とさ れ てい る も のに つ い て も形 態 の わ ず かな 違 い を 見 分け るこ と が可 能に な る でし ょう 」 木 元 技 術 研 究 副主 幹 は 、マ イ ク ロフ ォー カ スX 線 CT ス キ ャ ナ ー の 計 測 デ ー タ か ら チ ェ ン バ ー と チ ェ ン バ ー の 距 離 や 角 度を 解 析し たり 、 数 理 モ デ ル を 用 い て有 孔 虫 の 殻 を 再 現し て 実 在 の 種と 比 較 し たり も し てい る 。「 数 理 モ デ ル か ら つ く る こ と が で き て も 実 際 に は 存 在 しな い かた ち もあ り ま す 。有 孔 虫 の殻 の か た ちは 、 長い 進 化 の な か で 最 適化 さ れた も の な の でし ょう 。 有 孔 虫 の殻 の かた ち の 意 味を 読 み解 く た め に、 新 しい 技 術 や 新 しい アプ ロ ー チを 積 極 的 に 取 り 入 れて い ま す 」。 新し も の 好 き を 自 認 す る 木 元 技 術 研 究 副 主 幹。 そ れ こ そ が 有 孔 虫 研 究 の 新 しい 潮 流を 生 み出 す 原 動 力 だ 。 有 孔 虫 の 各 部 の 名 称 (写 真 は 浮 遊 性 有 孔 虫 の グ ロ ビ ゲ リ ノ イ デ ス・ サ キ ュ リ ファー) 有 孔 虫 の 成 長 と チ ェ ン バ ー の 付 加 有 孔 虫 は 、 成 長 に 伴 っ て チ ェ ン バ ー と 呼 ば れる 部 屋 を 付 加 し て い く 。 成 長 する につ れ て ス パ イ ン も で き る 。 写 真 は グ ロ ビ ゲ リ ナ ・ キ ン キ ュエ ロ ー バ 有 孔 虫 の 本 体 有孔虫の本体は アメーバのよう な単細胞で 、各 チェンバーを埋 めるように入っ ている 。茶色っ ぽく見えるもの が有孔虫の本体 である。殻の表面 の糸状のもの は 仮足。 写 真 はグ ロ ボロ タリ ア・メナルディ ー 3D プ リ ン タ ー 模 型 マイクロフ ォーカスX 線CT スキャナーで殻の三 次元構 造を計 測し、そ のデー タを もとに3D プリン ターで作製 したABS 樹脂製の模型。種 名は グロボコ ードリ ナ・コ ングロメラ ータ。 殻の内部 が 観察 できる よう に2つに 分割してある

(6)

したたかに生 きる有孔 虫

浮 遊 性 有 孔 虫 は プ ラ ン クト ン や 有 機 物 の 粒 子 な どを 、 底 生 有 孔 虫 はプ ラ ン クト ン や 有 機 物 の 粒 子 に 加 え て 海 底 の 堆 積 物 中 の バ クテ リ アな ど を 食 べ てい る ので は な い か と 考え ら れてい る 。 浮 遊 性 有 孔 虫 は 、 仮 足 を 長く 伸 ば して 餌 がや っ て く る の を 待 つ 。 仮 足 は と ても 粘 着 性 が 強 く 、い っ た ん 仮 足 に 触 れ た ら 、そ の獲 物 は もう 逃 れる こ と は で きな い 。 も が け ば も がく ほ ど 、 仮 足 が 絡 み付 き 、 身 動 き が取 れ なく なる 。す る と 、有 孔 虫 は 仮 足を 獲 物 の 体 のな かに 挿 し 込 み 、 栄 養 分を 吸収 し てい く 。 木 元 技 術 研 究 副 主 幹 は 、 難 しい と い わ れ て い る 浮 遊 性 有 孔 虫 の飼 育 実 験を2001 年 から 行っ て お り 、 有 孔 虫 が 餌 を 食 べ る 様 子 も 詳 細 に 観 察 し て い る 。 「 獲 物 の かた ち は 、 みる み る 変 形 し てい き ま す 。 そ し て 、栄 養 を 吸い 尽く す と 、死 骸を 静 か に 離し ま す 。 有 孔 虫 は か わい い と 思 う の で す が 、食 事シ ー ン は 何 とも え げ つ ない 」と 笑う 。 「有 孔 虫 は 実 にし た た か に 生 き てい る 」 とい う の は 豊 福 高 志 チ ー ム リ ー ダ ー (TL ) だ 。 有 孔 虫 に は 、 細 胞 の な かに 渦 鞭 毛 藻 な ど の 藻 類 を 共 生 さ せ てい る も のが い る 。 黄 金 色 に 輝い て 見え る のは 、共 生 藻 が 持 って い る 葉 緑 体 の 色 で あ る 。有 孔 虫 は 、 藻 類 に す み かを 提 供 する 代 わり に 、 藻類 が 光 合 成 で つ くり 出し た 有 機 物 を もら っ てい る のだ ろう 。 「 一 部 の 底 生 有 孔 虫 は 、 藻 類 を 共 生 さ せる の で は なく 、 藻 類 の 細 胞 質 は 消 化 し てし まい 葉 緑 体 だ け を 盗 み 取 っ て 細 胞 内 に 蓄 え て い ま す 」 と 土 屋 正 史TL 。 盗 葉 緑 体 と 呼 ば れる 特 殊 な 共 生 様 式 で あ る 。 土 屋 TL が ア ミ ノ 酸 の 窒 素 同 位 体 比 分 析 と い う 手 法 を 使っ て栄 養段 階を 推 定し た とこ ろ 、 盗 み取 っ た 葉 緑 体 を 共 生 さ せ て い る 有 孔 虫 の 栄 養 段 階 は 、 藻 類 な ど1 次 生 産 者 と 同じ だ っ た 。 こ れは 、 葉 緑 体 が 光 合 成 に よっ て つ くり 出 し た 有 機 物 を 、 有 孔 虫 が 利 用 し てい る こ とを 示 唆し て い る 。盗 葉 緑 体 は 酸 素 や 光 を 有 効 利 用 する 戦 略な の かもし れな い 。 太 陽 の 光 が 届 か な い た め に 共 生 藻 類 に 頼 る こ と も で き ず、 ま た 到 達 す る 有 機 物 の 量 が 少 な い 深 海 底 で も 、 有 孔 虫 は し た た か に 生 き て い る 。巨 大 化 と い う 戦 略 を 取 っ だ の が 、 ゼ ノ フ ィ オ フ ォ ア (Xenophyophore ) だ。 そ の 大 き さ は10cm を 超 え る 。ゼ ノフ ィ オフ ォア は、炭 酸 カ ル シ ウ ム で はな く 、 砂 な ど の 粒 子 を 集 め た 殻 を ま と っ て い る 。 そ の 殻 は 、リ ボン 状 や 扇 状 、網 状 、 樹 枝 状 な ど 複 雑 な か た ちを し てい る 。 海洋 の表 層 か ら沈 ん でく る わ ず か な 有 機 物 の 粒 子 な どを 受 け 止め る に は 、大 き く 複 雑 な 形 状 の 方 が 効 率 的 な の だろ う 。 ゼ ノ フィ オ フ ォア の不 思 議 な とこ ろ は 、 大 きさ だ け では な い 。 有 孔 虫 は 単 細 胞 生 物 であ る に も か か わ ら ず 、 ゼ ノ フ ィ オフ ォ ア に は 白 と 黒 、2 色 の 細 胞 が あ る 。 し かも 、 白い 部 分 に は 水 銀 を 、 黒い 部 分 に は 鉛 や バリ ウ ム、 ウ ラ ン が 濃 集 し て い た 。「 単 細 胞 で あ り な が ら 、役 割 分 担 が あり 、 多 細 胞 的 に 振 る 舞 っ てい ま す 。こ れ も 深 海 で生 きる 戦 略 の1つ な の か も し れ ま せ ん 」 と 土 屋TL 。「 ゼ ノフ ィ オフ ォア の 遺 伝 子 の 解 析 も 進 め てい ま す 。重 金 属 類 の 濃集 に 関 わる 遺 伝 子 が 見 つ か れ ば 、 汚 泥 の 処 理 な ど に 役 立 つ 可 能 性 があ り ま す 」 有 孔 虫 の 食 事 の 様 子 自 分の 殻 より 大 きな 獲 物も 粘 着 性 の 強 い仮 足 で 捕ら え 、仮 足 を 通し て 栄 養分 を 吸 収す る 藻 類 と の 共 生 浮 遊 性 有 孔 虫 の な か に は 、 細 胞 内に 渦鞭 毛 藻 類な ど の 植物 プ ラン クト ンを 共 生さ せて いる も の がい る 。 仮足 の 表面 に 見 える 粒 が共 生 藻 類で ある 。 互い の 生 存に 必 要な 物質 の 交 換を し てい る と考 えら れ てい る 巨 大 な 有 孔 虫 ゼ ノ フ ィ オ フ ォ ア 鳥 島 東方 沖 の水 深5,370m の 海底 で は、 ゼ ノフ ィ オフ ォア がた くさ ん 見ら れた (矢 印) 標 本 。10cm ほ ど の 大 き さ が あ る 。 大 型 の 生 物 によ る 捕 食 や 物 理 的な 破 壊 が 少な い 深 海 底 だ か ら こ そ 、こ の 大 きさ に ま で 成 長 する こ と が で きる の だろ う 採 取し た 個 体 。ゼ ノフ ィ オフ ォア は砂 の 粒 で で きた 殻 を 持つ 。 リボ ン 状 の 形 態 は、 栄 養の 少 な い深 海 底 で効 率 よく 餌 を受 け 止め る ため に 都 合 がい いと 考 えら れる マイ クロ フ ォ ーカ スX 線CT 像 。表 面 に 見え る 筋 は 成長 線 だと 考 え ら れる が 、成 長 速 度 や寿 命 など 詳 しい こ とは 分 かっ てい な い 。右 は 断面 ゼ ノ フ ィ オ フ ォ ア の 細 胞 三 陸 沖 か ら 採 取 し た ゼ ノ フ ィ オ フ ォ ア の 一 種 、 シ ン カ イ ヤ ・ リ ン ゼ イ ア イ (Shinkaiya lindsayi)。白 色 の 部位 に は 細 胞 小 器 官 を含 む細 胞 質 、黒 色 の 部 位 に は 多 く の 堆 積 物 粒 子 を 含 ん で い る 。 ま た、 白 色の 部 位 には 水 銀、黒 色の 部 位に は 鉛、 バリ ウ ム、 ウラ ンを 濃 縮 して いる 撮影:藤牧徹也

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有孔虫の一生

有 孔 虫 は ど の よう に生 ま れ 、 成 長し 、増 殖す る の だ ろう か。 有 孔 虫 の 一 生 は、 ま だ 謎 に 包 ま れて い る。 こ こ で は 、 飼 育 実 験 から 分 か って き た 、 有 孔 虫 の ラ イフ サイ ク ル の 一 端 を 紹介 し よう。 浮 遊 性 有 孔 虫 の 寿 命 は お そ ら く1 ~3 ヵ 月 く ら い で 、 主 に有 性生 殖 で 子 孫 を 増 や す。 た と えば 、 オー ブ リナ ・ ユニ バ ー サと いう 種 類 の 場 合 、 成 体 に な る と 成 長 を 止め て 生 殖 の 準 備を 始 め る。 まず スパ イ ン を 落 とし 、 仮 足 が 粘 着 性 を 失 い 縮 退 し てい <。 仮 足 が な い の で 餌 は 捕 れ なく なる。 実 は 、 生 殖 の 準 備 に 入 っ た 有孔 虫 は 、細 胞 の な か に 共 生さ せて いる 共 生 藻 類 を 食 べ て 命 を つ ない でい る の だ。 や が て 、殼 の な か に 数 千 から 数 万 個 の 生 殖 細胞 、遊 走 子 がつ くら れ る。 遊 走 子 は 一 斉 に 殼 から 放 出 さ れ、2 本 の 鞭毛 を 回 転 さ せ な が ら水 中を 拡 散し て いく。 遊 走 子 の大 き さ は0.002 ~0.005mm ほ ど だ。 遊 走 子 は 、同 じ 種 類 の 別 の 個 体 か ら 放出 さ れた 遊 走 子 と 出 会う と 、 接 合 し て 新しい 個 体 が 生 ま れる。 遊走 子を 放出 し た 個 体 は 、 殼だ け とな っ て 海 底 に 沈 み 、 堆 積し て いく。 「 私 た ち は 、 飼 育 実 験 で 遊 走 子 を 取 り 出 すこ と に 成 功 し てい ま す。 し かし 、そ の 先 は 、 ま だ 誰も 確 か め てい ま せん。 私 たち も 何 度も チ ャレ ン ジ し て い る の で す が 、う まく い か な い。 ぜ ひ 遊 走 子 を 接 合 さ せ て 新 しい 個 体 をつ く る とこ ろ ま で 、 実 験 室 で 再 現し たい 」と 、 木 元 技 術 研 究 副 主 幹 は 意 気 込 む。 底生 有 孔 虫 の寿 命 は 、浅 海 でく らす も のは 数 週 間、 深 海 底でくら すも のは 長い も ので は数 年 にも 及ぶ と 考 えら れ てい る。「 底生 有 孔 虫 のな かで も グラ ブ ラ テラ 属(Glabratella)の ラ イ フ サ イ ク ル は 少 し 変 わ っ て い ま す 」 と 土 屋TL 。 こ の 有 孔 虫 の 場 合 、 遊 走 子 を 水 中 に 放 出し な い。 殼 の な か に 遊 走 子 を つ くっ て い る2 つ の個 体 が 結 合 し 、 そこ で 遊 走 子 が 接 合 す る の だ。 交 配 でき る 相 手 を 識 別 し て 結 合 す るこ と で 、 遊 走 子 を 水 中 に 放 出す る より 個 体 が 生 ま れ る 確 率 が 高 く な る。 こ う して 有 性 生 殖 で 生 ま れ た 個 体 は 、 無 性 生 殖 で 増 殖 す る。 無 性 生 殖 で 生 ま れた 個 体 は 、 有 性 生 殖 を 行う。 そ の 繰 り 返し だ。 有 性 生 殖 で 生 ま れ る 個 体 の 数 は 少 ない が 、大 きく 育 つ。 一 方 、 無 性 生 殖 で 生 ま れ る 個 体 の 数 は 多 い が 、 小 さ い。 さ ら に 、 有 性 生 殖で 生 ま れた 個 体 はチ ェン バ ーを つ くっ て い く 方 向 が 左 巻 き 、 無 性 生 殖 で 生 ま れ た 個 体 は 右 巻 き 、と い う 違 い も あ る。 「 左 か 右 か は、 ど こ で ど の よう に コン トロ ー ル さ れて い る の でし ょう か。 今 後 明ら か にし た い こ との1 つ で す 」 と土 屋TL。 2008 年、 木 元 技 術 研 究 副 主 幹 は 、そ れ ま で 有 性 生 殖 の みと 考 え ら れて い た 浮 遊 性 有 孔 虫 が 無 性 生 殖 を する こ と を 発 見し 、 世 界 を 驚 か せ た。 浮 遊 性 有 孔 虫 の 場 合 、 チ ェン バ ーを つ くっ て い く 方 向 は 水 温 で 変 わる とさ れて い た が、 無 性 生 殖 で 生 ま れた 個 体 は 、 も と の 個 体と 逆 の 巻 き 方に なる こ とも 明ら か にし た。 ここ に 紹 介し たラ イ フ サ イ ク ル は 、 知る こ と が で き てい る ほ ん の 一 部 で 、ま だ 明 ら か にな っ て い な い こ と が たく さ ん 残さ れて い る。 オ ー ブ リ ナ ・ ユ ニ バ ー サ の 遊 走 子 の 放 出 放 出 さ れた 遊 走 子 は 、2 本 の 鞭毛 を 回 転 さ せな が ら 拡 散し て い く。 遊 素 子 の寿 命は 数 時 間ほ ど であ る。 球 体 の殻 の 直 径は 約0.5mm

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有孔虫が炭酸カルシウムの殻をつ くる様子を可視化

「私 た ち に とっ て は 、 殻こ そ が有 孔 虫 の 存 在 理 由 」 と 豊 福TL 。「 有 孔 虫 は 、 ど の よう に し て 炭 酸カ ル シ ウ ム の 殻 を つ くっ て い く の だ ろう か。 そ れを 知 り た い の で す」 有 孔 虫 の 炭 酸 カ ル シ ウ ム (CaCO3 ) の 殻 は 、 海 水 中 の カ ル シ ウ ム イ オ ン(Ca2+) と 炭 酸 イ オ ン (CO32- ) が 結 合 し て 形 成 さ れる 。 豊 福TL は、 ま ず pH ( 水 素 イ オン 指 数 ) が 蛍 光 の 強さ で 分 かる 試 薬 を 添 加し た 海 水 で 有 孔 虫 を 飼 育 し て 細 胞 内に 取 り 込 ま せ 、 新し い チ ェ ン バ ーを まさ に つ く ろう と し てい る と きを 狙 い 、 蛍 光 顕 微 鏡 で 観 察 し た 。 そ の 結 果 、 有 孔 虫 の 細 胞 内 のpH の 可 視 化 に 成 功 。 殻 を つ く っ て い る 部 位 は、 ほ か の 部 位 よ りpH が 高 く 、9 以 上 に なっ てい る こ と が 明 ら か に なっ た 。 周 り の 海 水 は pH8.2 程 度 だ 。 pH と 炭 酸 カ ル シ ウ ム の 殻 の 形 成 は 、 ど うい う 関 係 に あ る の だ ろ う か 。pH が 下 が る と い う こ と は 、 水 素 イ オ ン 濃 度 が 増 加 す る こ と で あ る 。 水 素 イ オ ン は 炭 酸 イ オ ン と 結 合 し て 重 炭 酸 イ オン (HCO3- ) と な る 。 つ ま り 、pH が 低 く な る と 海 水 中 の 炭 酸 イ オン は 水 素 イ オン と 結 合 し て 減 少 し、 炭 酸 カ ル シ ウ ム が 形 成 さ れ に く く な る の だ。 逆 に 、pH が 高 く な る と海 水中 の炭 酸イ オン が 過 剰に な り 、カ ル シ ウ ム イ オン と 結 合 し て 炭 酸 カ ル シ ウ ム が形 成さ れ や すく なる 。チ ェ ン バ ー が つ く ら れ てい る 場 所 は 、ま さ に 炭 酸 カ ル シ ウ ム が形 成 さ れや すい 状 態 に なっ て いる こ と が 確 か め ら れた 。 次 に 、カ ルシ ウ ム イ オ ン と 結合 し て 蛍 光 を 発 する 試 薬 を 使 い 、pH と 同 様 に 観 察 。 そ の 結 果 、 チ ェ ン バ ー が つ く ら れて い る 場 所 、 つ ま りpH が 高 く な っ てい る 場 所 で 、カ ル シ ウ ム イ オン 濃 度 が 高 くな っ て い る こ と が 明ら か に なっ た 。 有 孔 虫 が 殻 を つ く る と き のpH と カ ル シ ウ ム イ オ ン 濃 度を 可 視 化 し た例 はほ と ん ど な く、 殻 の 形 成 メ カニ ズ ム 解 明 に 向 け た 大 き な 進 展 だ 。「で は、 有 孔 虫 は ど の よう に し てpH を 高 め て い る の か、 カ ル シ ウ ム イ オン を ど の よ う に 集 め てく る の かな ど 、 ま だ 多 く の 謎 が あ り ま す 。pH とカ ル シ ウ ム イ オン を 同 時 に 可 視 化 で き る よう に 努 力 を 続 け る と とも に 、 ほ か の 化 学 成 分 を 可 視 化 で き る さ まざ ま な 試 薬 を 組 み 合 わ せ たり し な が ら 、殻 の形 成 メカ ニ ズ ムを 明 ら か にし てい きま す 」 と 豊 福TL は 意 気 込 む 。 土 屋TL は 「 殻 の形 成 に は 共 生 藻 類 が関 わっ てい る かも し れま せ ん 」 と 指 摘 す る 。「 有 孔 虫 自 身 がpH を 調整 する 機 能を 持 っ てい る は ず で す が 、共 生 藻類 がい る こ と でpH の 変 化 を 手 助 け し て い る 可 能 性 が あり ま す 」。 藻 類 が 光 合 成 に よ っ て 二 酸 化 炭 素 を 吸 収 す る とpH は 上 がる 。 共 生 藻 類 がい れば 、 有 孔 虫 自身 がpH を 調 整 する エ ネ ル ギ ー を 節 約 する こ と が で き る 。 ま た 、 豊 福TL は 「 実 は 、 仮 足 の 動 き が 極 め て 重 要 で ある と 考え て い る の で す が、 ま だ 詳 しく 見る こ と が で き てい ま せ ん 」 とい う 。 有 孔 虫 の 殻 の 形 成 過 程 を 詳 細 に 観 察 す る に は 、 環 境 を 精 密 に 制 御し て 飼 育 し 、繁 殖さ せ る 必 要 が あ る 。可 視 化 の た め の 試 薬 の 調 整も 不 可 欠 だ 。殻 の 形 成 メカ ニ ズ ムを 研 究 し て いる グ ル ープ は 世 界 にい く つ か ある が、そ の先 頭を 走 っ てい る の がJAMSTEC であ る 。 殻 の 形 成 を 観 察 し て い る 様 子 奥 が豊 福TL 。「 殻 がつ くら れ て い く 様 子 は、 と て も 繊 細 で 美 し い 。 そ れ が 有 孔 虫 の 魅力 の1 つ で す| 棍 影 :藤 牧 徹 也 底 生 有 孔 虫 ア ン モ ニ ア ・ ベ ッ カ リ の 殻 の 形 成 過 程 左 は透 過 光で 撮 影し た もの 。中 央 はpH の 値 を疑 似 カ ラー で 表し 、赤 い ほど 高く 、青 い ほ ど 低 い 。右 は カ ルシ ウ ムイ オン を赤 で 表 して いる 。480 分(8 時 間) ま での 変 化を 示 す

0 分

透 過光 で 観察 する と 、左 上 に新 しい チ ェン バ ーの 鋳 型 となる 有 機 膜が でき て いる ( 矢印 )。pH は、 ま だそ れ ほど 高く な い。 カ ルシ ウ ムも あ まり 多く な い。

60 分後

わ ず かな が ら石 灰 分 (白 ) が 有機 膜 に沈 着 して い る の が 見え る。 新 しい チ ェ ン バ ーの 部 分でpH が 高 まり 、 細胞 内 のカ ル シウ ムも 増 えて い る。

120 分後

石 灰分 か 厚 みを増 し てき たこ と が 分か る。pH は 依 然とし て 高く 保 た れ、 カ ルシ ウム はさ ら に増 加 して い る。

240 分後

殻 のか たち がしっ かりして きた 。新しい チ ェンバ ー部 分のpH は 少し 下がっ て きたが 、そ の代 わりカ ルシ ウム が多く pH が高い 小 胞が めまぐる しく動い てい る。 殻の 内側や 殻全 体 の厚 みを増 す ために 使わ れてい ると考 えら れる。

480 分後

殻形 成 を 終え 、移 動 を始 めて い る。pH は 通常 に 戻り 、カ ル シ ウム が高 い 小 胞は 見ら れ なく なっ た 。

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有孔虫の殻が過去の海洋環境を雄 弁に語る

有 孔 虫 は 、 お よ そ5 億7000 万 年 前 の 先 カ ン ブ リ ア 紀 に 誕 生 し た と い わ れ 、 絶 滅 し た も の も 含 める と 約4 万5000 種 が 知 ら れ て い る 。 炭 酸 カ ル シ ウ ム の 殻 を 持 つ 有 孔 虫 は 、 海 底 に 堆 積 し て 化 石 と な り 、 何 千 万 年 、何 億 年 の 歳 月 を 超 え て残 る 。 有 孔 虫 は 生 き て い る 生 物 と し て よ り も 、 過 去 の 海 洋 環 境 を 知 る こ と が で きる 化 石 と し て 研 究 が 進 ん で き た 。 有 孔 虫 は 環 境 が 変 わる と 生 息 す る 種 の 組 み 合 わ せ が 変 わる 。 堆 積 物 に 含 ま れる 有 孔 虫 の 種 類 を 調 べる こ と で 、 そ の 時 代 のそ の 海 域 が 暖 か か っ た の か 冷 た か っ た の か 、 浅 か っ た の か 深 か っ た の か 、 栄 養 が 豊 富 だ っ た の か 乏 し か っ た の か な ど を 推 測 す る こ と がで きる 。 さ ら に 、 殻 を つ く る 元 素 は 海 水 中 か ら 取 り 込 ま れ る た め 、 殻 に 含 ま れ る マ グ ネ シ ウ ム や スト ロ ン チ ウ ムな ど の 微 量 元 素 や 、 酸 素 や 炭 素 の同 位 体 比 を 調 べる こ と で 、 そ の 有 孔 虫 が 生 き て い た 時 代 の 海 水 の 化 学 組 成 や 水 温 、 塩 分 、 栄 養 分 の 濃 度 な ど を 推 測 す る こ と が で きる 。「浮 遊 性 有 孔 虫 の殻 に は 表層 の情 報が、底 生有孔 虫の殻 には深 層水 の循環 や 海底の 情報 が記録さ れてい ます。 両方の 情報を 統 合するこ とで、 過去の 海洋 環境の変 遷を推 測す ること ができ ます」と豊福TL 。 有孔 虫 の殻 の解 析 から得 られ た最 近の成 果を1 つ紹 介しよう 。地球環 境変 動領域 古海洋 環境研究 チ ームの岡崎裕典 招 聘主 任研究員ら は、北太平洋 のさ まざ まな 海 域から採 取した 海底 堆積物 に含 ま れる 有孔虫 の殻を 解析。注目した のは、質 量数14 の 炭 素14 であ る。 炭 素14 は 放 射 性同 位 体で 、約 5,730 年 の半 減期 で崩 壊し ていく 性質 を持つ こと から 、年 代測 定に利用さ れている 。炭 素14 は宇宙 線 が大 気と衝突 するこ とでつ くら れ、 海水 に溶け 込 み、有孔 虫 の殻にも 取り込 ま れる 。岡崎招 聘主 任 研究員 らは、海 底堆 積物中 の浮遊 性有孔虫 と底 生 有孔 虫 の殻 の 放射 性 炭素 年代 を 測定 。する と、 最 終退氷 期の初期 にあ たる約1 万7500 ~1万5000 年 前の堆 積層 では、浮遊 性有孔 虫と 底生有孔 虫の 放射性 炭素年 代の差 が小さく なっ てい るこ とが明 ら か に な っ た 。 こ の 結 果 は 、 そ の 時 期 に は 北 太 平 洋 で 海 水 の 沈 み 込 み が 活 発 に 起 き て い て 、 表 層 の 海 水 が 速 や か に 深 層 へ 運 ば れて い た と 解 釈 で き る 。 活 発 な 沈 み 込 み が な い 場 合 、 表 層 の 海 水 が深 層 に 届 く まで 長 い 時 間 が か か る 。 そ の 海 水 に 含 ま れる 炭 素14 を 取 り 込 ん だ 底 生 有 孔 虫 の 殻 の 放 射 性 炭 素 年 代 は古 く な り 、 浮 遊 性 有 孔 虫 の 放 射 性 炭 素 年 代 と の 差 が 大 き く な る 。「有 孔 虫 の 殻 か ら、 過 去 どこ で 海 水 の 沈 み 込 み が 起 き て い た か 、 と い う こ と ま で 分 かる の で す 。 海 水 の 沈 み込 み が 起 き る 場 所 や 強 さ は 、 地 球 全 体 の 気 候 に 大 き な 影 響 を 与 え ま す 。有 孔 虫 の 化 石 は 、 海 洋 環 境 の 変 動 を 知 る こ と が で き る タ イ ム カ プ セ ル な の で す 」 と 木 元 技 術 研 究 副 主 幹 はい う 。 こ の よ う に 有 孔 虫 の 殻 は 過 去 の 海 洋 環 境 の 復 元 に 使 わ れ て い る が 、 海 洋 環 境 に よ っ て な ぜ 同 位 体 比 や 微 量 成 分 が 変 わ る の か 、 実 は よ く 分 か っ て い な い 。「 だ か らこ そ 、 環 境 を 精 密 に 制 御 し て 飼 育 す る こ と で 、 ど の よ う な 条 件 の と き に 殻 の 化 学 組 成 や 同 位 体 組 成 が ど の よ う に な る の か 、 そ の 対 応 を 明 ら か に する こ と が不 可 欠 で す 」 と 豊 福TL 。 殻 の 形 成 メ カ ニ ズ ム が 分 か れ ば 、 よ り 高い 精 度 で 過 去 の 海 洋 環 境 を 復元 で き る よ う に な る 。 海 洋 環 境 の 復元 に 用 い る 海 底 堆 積 物 は ピ スト ン コ ア ラ ー で 採 取 す る こ と が 多 い 。 重 り を 付 け た 長 さ20m ほ ど の パ イ プ を 海 中 に 降 ろ し 、 海 底 面 の 直 上 数m か ら 自 由 落 下 さ せ て 海 底 に 突 き 刺 し 、 堆 積 物 の 層 を 乱 さ ず に 採 取 する 。 そ の 堆 積 物 に は 数 十 万 年 分 の 海 洋 環 境 の 歴 史 が 刻 ま れて い る 。 木 元 技 術 研 究 副主 幹 は 、「 今後 は 、 地 球 深 部 探 査 船 『ち き ゅ う 』 な ど に よ る 掘 削 調 査 も 進 め て い き た い 」 と 語 る 。「ピ ス ト ン コ ア ラ ー で は 届 か な い 、 より 古 い 時 代 の 海 底 堆 積 物 を 採 取 で きる の で 、 海 洋 環 境 の 変 動 を も っ と 過 去 ま で さ か の ぼ っ て 知る こ と が で き ま す 。 有 孔 虫 が 海 洋 環 境 の 変 化 と と も に ど の よ う に 適 応 、 進 化 し て き た の か 、 長い 時 間 ス ケ ー ル で 明 ら か に し て い き たい で す ね」 ピ ス ト ン コ ア ラ ー で 採 取 し た 海 底 の 堆 積 物 過 去に 起 こっ た 海洋 環 境 変化 は 、 海底 堆 積 物に 色 や化 学 組 成 など さ まざ まな 情 報と し て記 録さ れる ピ ス ト ン コ ア ラ ー の 投 入 の 様 子 長 さ20m も あ る パ イ プ を ゆ っ くり 海中 に 降ろ し て い く 。海 底 面 の直 上 数m か ら自 由 落下 さ せ て海 底 に パイ プ を 突 き 刺 し 、 パ イプ のな か に 海 底 堆 積 物 を 採 取 す る 。上 部 の 太い 部 分は 重 り 海 底 堆 積 物 か ら 取 り 出 し た 有 孔 虫 の 殻 の 化 石 有孔 虫 の 細 胞 質 は 溶 け てな く な っ て し まう が、 炭 酸 カ ル シ ウ ムで で き た 殻 は 海 底 の 堆 積 物 の な かに 残る 。 黒 いも のは 岩 片の 粒 子

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小さな有孔虫が地 球の未来も教え てくれる

有 孔 虫 は 過 去 の 海 洋 環 境 の記 録 者 と し て 注 目さ れ て い る が、 実 は 、 有 孔 虫 そ の も の が 地 球 の 環 境 形 成 に 深 く 関 わっ て い る 。 有 孔 虫 は 海 水中 の 炭 素 を 取 り 込 ん で 炭 酸 カ ル シ ウ ム の 殻を つ く り、 そ の 殻 は 海 底 に 堆 積し 、 化 石 と し て 残 る 。有 孔 虫 は 海 洋 の表 面 か ら 海 底 に 炭 素 を 運 び 、 ま た 炭 素 を 貯 蔵 す る と い う 役 割 を 持 っ てい る の だ 。 大 気 中 の 二 酸 化 炭 素 の 増 加 は 地 球 温 暖 化 を も たら す 。有 孔 虫 が ど のく らい の 炭 素を 海 底 に 運 び 、 貯 蔵 し て い る か は 、 大 気 中 の 二 酸 化 炭 素 の 量 に も 影 響を 及 ぼし 、 地 球 の環 境を 左 右 する のだ 。 「有 孔 虫 は 小 さ い け れ ど も 、 数 が と て も 多 い 。 炭 素 だ け で な く 、さ まざ ま な 物 質 循 環 に 深 く 関 わ っ て い ま す 」 と 土 屋TL 。 JAMSTEC で は 物 質 循 環 に お け る 有 孔 虫 の 役 割 を 明 ら か に す る た め 、 独 自 に 開 発 し た 現 場 培 養 装 置 な ど を 使 っ た 研 究 を 進 め て い る 。 具 体 的 に は 、 炭 素 同 位 体 の 炭 素13 で 目 印 を 付 け た グ ル コ ー ス や 窒 素15 で 目 印 を 付け た 珪 藻 を 用 意し 、 海 底 の 生 物 が そ の 餌 を ど の く らい の 速 度 で 、 ど のく らい の 量 を 取 り 込 む か を 調 べ る 。 有 孔 虫 は 、 体 重 あ た り の 珪 藻 の 摂 取 量 が ほ か の 真 核 生 物 や バ ク テ リ ア よ り はる か に 大 き い こ と が 明 ら かに な っ て き た 。 有 孔 虫 に 取 り 込 ま れた 珪 藻 な ど 植 物プ ラ ン ク ト ン の 有 機 物 部 分 は 、 分 解 さ れ て 栄 養 塩 や 二 酸 化 炭 素 と な り 、 海 洋 表 層 に 運 ば れ る 。 そ れ を 植 物 プ ラ ン ク ト ン が 利 用 し て 有 機 物 を つ く り 、 成 長 す る 。 そ れ が 繰 り 返 さ れ て い る 。 体 重 あ た り の 珪 藻 の 摂 取 量 が 大 きい 有 孔 虫 は 、 物 質 循 環 に お い て 中 心 的 な 役 割を 担 っ て い る と い え る だ ろう 。 そ の 有 孔 虫 に 危 機 が 迫 っ て い る 。 海 洋 酸 性 化 だ 。 海 水 が 酸 性 に な る わ け で は な い が 、 大 気 中 の 二 酸 化 炭 素 の 増 加 に 伴 っ て 海 洋 が 大 量 の 二 酸 化 炭 素 を 吸 収 し 、 海 水 のpH が 下 がる こ とを 海 洋 酸 性 化 と 呼 ぶ 。 海 水 のpH が 低 く な る と 炭 酸イ オ ン 濃 度 が 低 下 し 、 有 孔 虫 な ど 炭 酸 カ ル シ ウ ム の 殻 を つ く る 生 物 は 、殻 を つ く り にく く な っ たり 、殻 が 溶 け て し ま っ た り す る と 考 え ら れ て い る 。 し か し 木 元 技 術 研 究 副 主 幹 は 、「 海 洋 酸 性 化 に よ っ て 生 物 に ど の よう な 影 響 が 起 きる の か は 、 実 は よく 分 か っ て い ま せ ん 」 と 指 摘 す る 。 そこ で 、 木 元 技 術 研 究 副 主 幹 は 、 二 酸 化 炭 素 濃 度 が 異 な る 海 水 で 有 孔 虫 を 飼 育 し 、 海 洋 酸 性 化 に よ っ て ど の よ う な 影 響 が 出 る か を 詳 細 に 調 べ る 研 究 を 進 め てい る 。 し か し 、 殻 の 外 観 を 観 察 し た り 質 量 を 量 っ た り す る だ け で は 、 わ ず か な 影 響 は 分 か ら な い 。 そ こ で 海 洋 酸 性 化 の 影 響 を 評 価 す る 手 法 と し て マ イ ク ロ フ ォ ー カ スX 線CT ス キ ャ ナ ー が 有 用 だ と 期 待 さ れ て い る 。 外 観 か ら で は 分 か ら な い わ ず か な 密 度 変 化 も 詳 細 に 捉 え 、 数 値 化 す る こ と が で き る か ら だ 。 飼 育 実 験 と 組 み 合 わ せ る だ け で な く 、 海 洋 か ら 採 集 し て き た 有 孔 虫 の 殻 を 計 測 す る こ と で 、 海 洋 酸 性 化 の わ ず か な 影 響 も 逃 さ ず に 監 視 し て い く 計 画 だ 。 木 元 技 術 研 究 副 主 幹 は い う 。「有 孔 虫 は 、 過 去 の 海 洋 環 境 の 変 遷 を 雄 弁 に 語 っ て く れ ま す 。さ ら に 、 未 来 に つい て も 知 ら せて く れ ま す 。私 たち は 、 こ の 有 孔 虫 とい う 生 物 につ い ても っ と 知り 、 そ の 声 に 耳 を 傾 け なけ れ ばい け な い ので は な い で しょ う か」BE 底 生 有 孔 虫 ゼ ノ フ ィ オ フ ォ ア の 現 場 培 養 実 験 炭 素13 で 標 識 し た グ ル コ ー ス と 窒 素15 で 標 識 し た 珪 藻 を 与 え 、 ゼ ノ フ ィ オ フ ォア が ど の く らい 取り 込 む の かを 調 べる 浮 遊 性 有 孔 虫 の 飼 育 実 験 室 4 つ の 異 な る 二 酸 化 炭 素 濃 度 の 海 水 で 浮 遊 性 有 孔 虫 を 飼 育 する こ と が で き る 。 奥 の 円 柱 状 の タ ワ ー が 任 意 の 二 酸 化 炭 素 濃 度 の 海 水 をつ く る 吸 収 棟 。 左 の 実 験 台 に 載 っ て い る 水 槽 の な か で 有 孔 虫 が 飼 育 さ れ て いる 。 飼 育 の 様 子 は 「 浮 遊 性 有 孔 虫 デ ー タ ベ ー ス 」 の サ イ ト で ラ イ ブ 映 像 を 見る こ と が でき る 浮 遊 性 有 孔 虫 デ ー タ ベ ー ス 現生 の浮遊 性有孔虫 の生体 の光学顕 微鏡画 像や、電子顕 微鏡画 像、 動画を 収録している。このよう な有孔虫の データベースはほ かにな い。新しい 種類も随時追加している http://ebcrpa.jamstec.go.jp/rigc/j/ebcrp/paleo/foraminifera/ マ イ ク ロ フ ォ ー カ スX 線CT ス キ ャ ナ ー に よ る 有 孔 虫 の 殻 の 計 測 上 は 水 深150m 、下 は 水 深1,000m で 採 取 した 浮 遊 性 有孔 虫 。 左 は 表 面 形 状 、右 は 密 度 を 示 し 、 赤 い ほど 密 度 が 高 く 、青 い ほ ど 密 度 が 低 い 。 海 洋 では 水 深 が 深 く なる ほど 、炭 酸 カ ル シ ウ ム に対 する 飽 和 度 ( Ω )が 小 さく な り 、1 よ り 小 さく な る と 未 飽 和 と な って 溶 解が 進 む。 飽 和 度 が1 で ある 水 深150m の 有孔 虫 の 殻は 密 度 が 高 い 。 飽 和 度 が0.8 で ある 水 深1,000m の 有 孔 虫 の 殻 は 密 度 が 低く 、炭 酸 カ ル シ ウ ム の 溶 解 が 進 ん でい る こと が 分 か る 。 海 洋 酸 性 化 が 進 むと 、水 深150m でも 水 深1,000m と 同 じ よう な 状 況 に なる 可 能 性 があ る JAMSTEC / 東 北 大 学総 合 学 術 博 物 館

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すさ み海立エビ とカニの水族館

白い 宝 石-

オーストラリアン スノークラブ

■Information:〒649-3142 和歌山県西牟婁郡 すさ み町江住 日 本童謡の園公園内すさ み海立エビと カニの水族館 TEL 0739-58-8007 URL http://www.aikis.or.jp/~ebikani/ 世 界 初 、日 本 初 、 そう い う 言 葉 が 好 き だ 。 エ ビ や カ ニ だ け に 注 目 し た 水 族 館 は 、日 本 に は も ち ろ ん な い 。 そ の 名 も 、 す さ み 海 立 エ ビ と カ ニ の 水 族 館 。 紀 伊 半 島 の 南 端 に 位 置 す る 和 歌山 県 すさ み 町 の 基 幹 漁 業 の1 つ は 、イ セエ ビ の 刺 し 網 漁 。そ の 刺し 網 に は 、 イ セ エビ 以 外 のエ ビ や カニ が たく さ ん か か る 。 市 場 に 出 せ な かっ た 商 品 価 値 の な い エ ビ や カ ニ をJR 見 老 津 駅 の 待 合 室 に 展 示 し て み た 。 す る と 、 そ れ ま で1 日50 人 ほ ど し か 乗り 降り し て い な かっ た無 人 駅 に 、年 間1 万 人 が訪 れ る よう に な っ た 。 そ れ が 今 の 水 族 館 へ と つ な が る き っ か け に な っ た。 さ ら に 、 水 族 館 の目 玉 に な る よ う に 、日 本 初 の 生 き も の を 展 示 し た い 。 そこ で 目 を 付 け た のが 、真 っ 白 な カ ニ だ っ た 。 十 数 年 前 、 オ ー スト ラ リ ア のシ ド ニ ー水 族 館 を 訪 れ たと き 、 そ の白 い カ ニ に 出 会 っ た 。 オ オエ ン コ ウガ ニ と いう カ ニ の 仲 間 で 、 水 族 館 で は オ ー スト ラリ アン ス ノ ー ク ラブ と 呼 ん で い る 。 カニ は 赤 い のが 常 識 だ が 、こ の カニ は ア ス タ キ サ ン チン と いう 赤 色 色 素 を 持 たな い た め に 、 白 い 。 調 べ て みる と 、日 本 で は ど こ も 展示 し て い な い 。こ れ はい い 。 つ て を た ど っ てシ ド ニ ー の魚 市 場 の 人と 知 り 合 い に な っ た。 捕 獲 し た ら 、 連 絡を く れ る よ う に お 願 い し た 。 連 絡 が 入 っ た のは 、 お 願 い し て か ら 半 年 後 の5 月 。 こ の カ ニ は 水 深800 ~1,000m の 深 海 に す ん で い る た め 、 そ れ ほ ど 簡 単 に は 入 手 で き な い 。 ま さ に 白い 宝 石 だ 。 初 め て 入 手 で き た オ ー スト ラ リ ア ン ス ノ ー ク ラ ブ は 、 貴 重 な カ ニ な の であ ま り い じ ら な い 方 が よ い と 思 い 、 甲 羅 な ど を 洗 わ ず に い た 。 す る と 、 藻 が 生 え て き て 髪 の毛 の よ う に ふ さ ふ さ に な っ て し まう と いう 事 態 に な っ た 。 現 在 展 示 さ れ て い る オ ー スト ラリ アン ス ノ ー クラ ブ は4 代 目 。 もう 甲 羅 に 藻 を 生 や し て し まう こ と も な い 。 真 っ 白 な 姿 は 水 族 館 で1 、2 を 争う 人 気 者 だ 。 すさ み 海 立 エ ビ と カ ニ の 水 族 館 は 、 バ ッ ク ヤ ード と い わ れ る 施 設 の 裏 側 に 展 示 し な い 生 き も のを 飼っ てお く ス ペ ー ス を 、 ほ と ん ど 設 け て い な い 。 展 示 数 の 公 称 は 、80 種400 個 体 。 そ の う ち 、 オ ー スト ラ リ ア ン ス ノ ー ク ラ ブ のよ う な 海 外 か ら 来 た 生 き も のを は じ め と する 常 設 展 示 のレ ギ ュラ ー メン バ ー は 、 40 種 ほ ど 。 残 り は す べ て 企 画 展 示 に 合 わせ て、 すさ み の 海 か ら 調 達 し て い る 。 すさ み の 海 か ら 手 に 入 れ た 生 き も の は 、 展 示 が 終 わ れ ば 、 す さ み の 海 に 戻 す 。 バ ッ ク ヤ ード の 予 備 水 槽 は 必 要 な い 。い わば 、 すさ み の 海 が 天 然 の 予 備 水 槽 。 だ か ら 、 こ の 水 族 館 は 「 すさ み海 立 」 だ 。 取材協力: 森 拓也/すさみ海立エビとカニの水族館・ 館長 オー スト ラ リ アン ス ノー クラブ 。大きさ は、甲幅約15cm 、重さ600 ~800g 程度。 真っ 白い カ ニ で、 ゆ でても 白い とい う 。 オーストラリ アでは食用にさ れており、か なり 貴重でおい しいカニ 初代の オー スト ラ リ アン スノ ー クラ ブ 。貴重なカニなのであまりいじら な い 方がよい と思い、甲羅などを 洗わず にい た。すると、藻が生え てき て髪の 毛のよ う に ふさ ふさ にな って しま っ た。あ まり 動かないカニ で、餌はえり 好みせす、何でも食べる

(12)

私 が 海 を 目 指 す 理 由

深 海底を覆う泥に息づ<

生 態系を探る

深海 底 に堆 積した 泥 の

わず か10cm

ほど の厚 さに、 有孔虫 や バ クテリ アなど 、

さ まざ まな生 物 が生 息し 、生 態系を つく ってい る 。

そ れは 地球 上で 最も 広い 面 積を 持つ 生 態系だ 。

野 牧秀 隆 主任 研 究員 は、 そこにお け る生 命 活 動と

物 質循 環を 調 べるこ とで 、地 球 環境 の

過 去・ 現在 ・未来 を探る 研 究 に

貢献しようとしてい

野牧秀隆

海洋・ 極限環 境生 物圏 領域 海洋 環境 ・生物 圏変遷 過程研 究プ ログラ ム 主 任研究 員 培 養 実験 に 使 う 植 物プ ラ ン クト ン を手 に 撮 影 : 藤牧 徹 也 野 牧 秀 隆( の まき ・ ひ で たか) 1978 年、 長 野 県 生 まれ 。博 士( 理 学) 。 2000 年 、 静 岡 大 学 理 学 部生 物 地 球 環 境 科 学 科 卒 業 。2005 年 、 東 京 大 学 大 学 院 理 学 系 研 究 科 地 球 惑 星 科 学 専 攻 博 士 課 程 修了 。同 年 、日 本 学 術 振 興 会 特 別 研 究 員。2006 年 より 海 洋 研 究 開 発 機 構(JAMSTEC) ポ ストドクトラ ル 研 究 員 、2009 年 より 研 究 員を経 て、2013 年 より 現 職 小 学 生 のこ ろ 、化 石 採 り に夢 中 に な る野 牧 主 任 研 究 員 虫 と 化 石 好 き の 少 年 子 ど もの ころなりた かった 職業 は? 野 牧 : 小 学 校1 年 生 く らい の と き、「 虫 の 研 究 者 に な る 」 とい っ て い た そ う で す 。 長 野 県 に生 ま れ 育 ち 、 祖 母 の 家 が あ る上 村 下 栗 に よ く 遊 び に 行 き まし た 。 そ こ は 山 の 斜 面 に 家 が へ ば り つ い てい る よ う な 自 然 豊 か な とこ ろ で 、 さ まざ まな 種 類 の 虫 が た くさ んい まし た 。 そ れ で 自 然 に 虫 が 好 き に なっ た の で し ょ う。 小 学 校 低 学 年 の と き、 父 が 家 か ら 車 で 30 分 ほ ど の 道 路 沿 い の 崖 へ 、 化 石 採 り に 連 れ て い っ て く れ まし た。 崖 か ら 落 ち た 石 を 割 る と、 貝 な ど の 海 の 生 き 物 の 化 石 が た くさ ん 見 つ か り まし た。 生 き物 が 石 にな っ て い る とい う 事 実 を とて も 面 白 く 感 じ ま し た 。 そ れ 以 来 、 化 石 が 大 好 き に な り、 将 来 は 化 石 の 研 究 者 に な り た い 、 と思 う よ う にな り ま し た 。 山 に 泊 ま り 込 ん で、 天 体 観 測 や 野 鳥 の 観 察 を す る の も 楽 し か っ た で す が 、 そ れ で も 化 石 が 一 番 好 きな こ とに は 変 わり な か っ た で す ね。 星よりも化 石に興 味があっ たの です か。 野 牧 : 星 は 手 に 取 れ ない の で 、 愛 着 が 湧 き に く か っ た ん で し ょ う ね。 化 石 は 自 分 で 手 に 取 っ て 感 触を 楽 し み、 観 察 で き る の が い い んで す 。 石 の冷 た さ や 質 感 が 大 好 きで し た。 深 海 底 の 泥 と 有 孔 虫 に 出 合 う 大 学は どのように選 んだ のです か。 野 牧 : 生 物 と化 石 が 好 き だ っ た の で 、 生 物 学 と 地 球 科 学 の 両 方 を 学 ぶ こ と が で き る 静 岡 大 学 理 学 部 の生 物 地 球 環 境 科 学 科 に 進 み まし た。 そ し て 学 部3 年 生 の と き 、 北 里 洋 教 授 ( 現JAMSTEC 海 洋 ・ 極 限 環 境 生 物 圏 領 域 領 域 長 ) の 研 究 室 に 入 り まし た 。 そ こ で は、 主 に 有 孔 虫 の 研 究 を し て い まし た 。 有 孔 虫 は海 水 中 や 海 底 に す む 単 細 胞 の 真 核 生 物 で す 。 殻 を つ く る の で 化 石 に 残 り や す く、 地 層 の 年 代 決 定 や 古 い 時 代 の 海 洋 環 境 を 探 る 研 究 な ど、 地 球 科 学 で よ く使 わ れて い ま す。 し か し 有 孔 虫 は培 養 が 難 し い こ とな ど か ら、 生 物 学 で はあ ま り メ ジ ャ ーな 研 究 対 象 で は あ り ませ ん。 北 里 研 究 室 で は 、 そ の 難 し い 培 養 を 行 い 、 有 孔 虫 の 生 態 を 探 る 研 究 を 行 っ て い ま し た 。 私 も学 部 の と き か ら 船 に乗 り、 深 海 底 の 泥 を 採 取 し て 有 孔 虫 の 生 態 を 調 べ る 研 究 を 続 け て き まし た。 有 孔 虫 とい う研 究 対 象 も、 辛 う じ て で す が 肉 眼 で 観 察 で き る こ とが 、 自 分 に合 っ て い る の か もし れ ませ ん。 地 球 上 で 最 大 の 面 積 を 持 つ 生 態 系 現在の研 究テ ーマ は? 野 牧:JAMSTEC に は、 深 海 底 の 熱 水 噴 出 域 や 冷 湧 水 域 の生 物 、 生 態 系 を 調 べ て い る 研 究 者 が 多 くい ま す 。 た だ し、 そ れ ら は海 洋 全 体 で 見 る と特 殊 な 領 域 で 、 深 海 底 の 大 部 分 は 泥 が た まっ て い る だ け の 場 所 で す。 私 は 、 そ の よ う な 普 通 の 、 世 界 で 一 番 広 い 面 積 を 持 つ 深 海 底 の 泥 の生 態 系 を 調 べ て い ま す。 た だ し 主 に 研 究 し て い る の は、 せ い ぜ い 厚 さ10cm 。 海 底 面 か ら 深 度 約10cm ま で の 泥 の な か に 、 有 孔 虫 や バ ク テ リ ア、 線 虫 、 カ イ ア シ類 、 ゴ カ イ な どさ まざ ま な 種 類 の 生 物 が た く さ ん生 息し て い ま す。 そ の 生 態 系 を 支 え る有 機 物 源 = 餌 のほ と ん ど は 、 海 底 か ら 数 千m 上 に あ る 海 洋 表 層 か ら 落 ち て く る植 物 プ ラ ン クト ン の 死 骸 や 、 動 物 プ ラ ン クト ン の ふ ん な どで す。 深 海 底 の生 態 系 に も多 様 な 生 物 が 生 息し 、 生 物 が 複 雑 に 相 互 作 用 を し て い ま す が、 大 本 の有 機 物 源 が シ ン プ ル で 、 研 究 がし や す い とい う特 徴 が あ り ま す。 私 は 特 に生 物 活 動 と物 質 循 環 に 注 目 し て い ま す 。 植 物 プ ラ ン クト ン 由 来 の 有 機 物 を、 泥 のな か の 生 物 が 取 り 込 ん で エ ネ ル ギ ー を 取 り 出 し た り 自 分 の体 に し た り し ま す。 そ の 生 物 自 体 や 排 せ つ 物 を 、 ほ か の 生 物 が 餌 とし て 利 用 し ま す 。 こ の よ う に 植 物 プ ラ ン クト ン 由 来 の 有 機 物 が さ まざ ま な 物 質 に 変 換 さ れ な が ら 次 々 と生 物 に 利 用 さ れ て い き ま す 。 そ の 食 物 網 に お け る 物 質 の 流 れ を 、 生 物 ご と に定 量 的 に 調 べ てい ま す。 どのような 方法で 調べ るのです か。 野牧 : 深 海 底 の 現 場 や 船 上 で 培 養 装 置 を 使 っ て 、 普 通 の 炭 素12(12C) よ り も重 い 同 位体 であ る炭 素13(13C) で 標 識 し た 植 物 プ ラ ン クト ン や バ ク テ リ ア を 餌 とし て 海 底 に ま き ま す。 何 日 か た っ た 後 に そ の 泥 を 回 収 し て、 た とえ ば 、 直 上 水 に 含 ま れ る二 酸 化 炭 素 (C02 ) の12Cと13Cの同 位 体 比 を 測 定 す る こ とで 、 まい た 餌 が ど れ くら い 分 解 さ れ て 二 酸 化 炭 素 と な っ た の か が 分 か り ま す 。 さ ら に そ れ ぞ れ の 生 物 ご と に 拾 い 出 し て 分 析 し た り 、 特 定 の 生 物 だ け が 持 つ 物 質 を 取 り 出 し て 同 位 体 比 を 測 定 す る こ とで 、 生 物 ご とに 餌 を ど れ くら い 取 り 込 ん だ の か を 知 る こ と が で き ま す。 ど の 物 質 に 注 目 し て、 生 態 系 に お け る何 を 明 ら か にす る か は ア イ デ ア 次 第 。 研 究 者 の 腕 の 見 せ ど ころ で す 。 海 洋 や 大 気 、 海 底 下 生 命 圏 と の 接 点 なぜ 、深 海 底 の物 質 循 環 に注 目し て い るのです か。 野 牧 : 海 底 の生 態 系 は、 大 気 や 海 洋 全 体 の物 質 循 環 に お い て 大 切 な 役 割 を 担 っ て い る か ら で す。 こ こ まで は炭 素 の 話 を し

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