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e MRIによる無脾症候群の診断

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日本小児循環器学会雑誌 3巻3号295〜298頁(1988年)

MRIによる無脾症候群の診断

(昭和62年3月13日受付)

(昭和63年2月3日受理)

田島 和幸

       千葉大学小児科

宮本 治子  寺井 勝  丹羽 公一郎  中島 博徳

key words:無脾症候群,診断,磁気共鳴映像法(MRI), T2強調画像,脾臓

      要  旨

 特有の心奇形,内臓心房位,対称肝などから臨床的に無脾症候群と考えられた8例に,MRI(Magnetic Resonance Imaging,磁気共鳴映像法)を施行し,腹部臓器を観察した.脾臓の有無・形態から,直接 的に無脾症候群が診断可能か検討した.無脾症候群,多脾症候群以外の心疾患を有するコントロール群

8例は,全例脾臓を描出できた.特にT2強調画像で脾臓は明瞭であった.一方,対象群では8例中7例

で,MRI上,脾臓は描出できなかった.しかし対象群中の1例は, T2強調画像で脾臓の存在が確認でき た.MRIは,無脾症候群の脾臓の有無による直接的な診断に有用と考えられた.

      はじめに

 無脾症候群は,1952年PohemusとScheferが先天性 脾欠損,臓器の位置異常,心血管系の異常を伴う疾患 に与えた名称である.その診断は,種々の方法がある が,侵襲的であったり,画像の解像力が充分でなかっ たりで,確定診断が困難な場合もあった.そこで,無 脾症候群の診断にMRIが有用かどうか検討した.

        対象および方法

 特有の心奇形,内臓心房位,対称肝などから無脾症 候群と診断された8例(1ヵ月〜15歳,平均4歳,男

6例,女2例)を対象とした.その心奇形・胃泡の位 置・肝臓の形態を表1に示す.胸腹部レ線上は,全例 対称肝であった.なお,心奇形の診断は,心臓超音波 断層法および心血管造影法により総合的に行った.ま た,肥大型心筋症3例,大血管転換症1例,Ebstein奇 形1例,両大血管右室起始症1例,川崎病1例,大動 脈縮窄複合1例(1歳〜15歳,平均8歳,男3例,女

5例)の計8例をコントロールとした.

 使用した機種は,Picker Intemational社製,超伝導 型0.5Tesla MRI装置である.撮像方法は,スピソエ

コー法(SE法)で,繰り返し時間(repeat time;TR)

は400msecおよび460msec,エコー時間(echo time;

TE)40msec(short spin echo:short SE),アベレー ジングは2ないし4回とし,スライス幅1cmの4およ び6枚の多断層撮像法にて,横隔膜より腎臓までの腹

部横断像を得た.3例に,繰り返し時間1166msec

〜1205msec,エコー時間80msecのパルス系列(long spin echo;long SE)を加えた.また5例で,心電図

同期法を併用して撮像した.

      結  果

 コントロール群は,全例で脾臓を描出できた.short

︻・

別刷請求先:(〒280)千葉市亥鼻1−8−1      千葉大学医学部小児科   田島 和幸

e

図1 14歳女性の上腹部横断MRI像. SE(spin echo)

 法,繰り返し時間:651msec,エコー時間:40msec  以下,651/40と略す.L;肝臓, ST;胃, SP;脾臓

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296−(8) 日小循誌 3(3),1988 表1 対象

年齢/性 心奇形 肝 臓

1 1ヵ月 単心房 単心室 共通房室弁口 大血管転換

肺動脈閉鎖 動脈管開存 奇静脈結合 対 称

2 2ヵ月

単心房 動脈管開存 奇静脈結合 対 称

3 2ヵ月 単心房 単心室 共通房室弁口 肺動脈狭窄

右胸心 対 称

4 10ヵ月

 男

単心房 単心室 共通房室弁口 肺動脈閉鎖

動脈管開存 右胸心 対 称

5 10ヵ月

 男 両大血管右室起始 心室中隔欠損

肺動脈閉鎖 動脈管開存 奇静脈結合 右胸心 対 称

6 2歳 単心房 単心室 共通房室弁口 肺動脈閉鎖

動脈管開存 総肺静脈還流異常 奇静脈結合 対 称

7 14歳

 男

単心房 単心室 共通房室弁口 肺動脈狭窄

右胸心 対 称

8 15歳

 女

大血管転換 単心房 共通房室弁口 肺動脈狭窄

動脈管開存 対 称

A d

図2 2歳男性,SE法(心電図同期).上:short SE,

 590/40,下:long SE,1166/80,ほぼ同じ断層面だ  が,long SEで脾臓が強調されている.

SEでは,脾臓は肝臓よりやや信号強度が弱く,すなわ ちやや黒く描出され,脾臓と肝臓は分別可能であった

(図1).またlong SEでは,脾臓と腎臓の信号強度が 強くなり,画像上,肝臓とのコントラストが鮮明となっ た(図2).一般的に年長になるほど腹部臓器の画像上 の分離が良く,脾臓の確認が容易であった.一方,対 象のうち症例4を除いた7例で,横隔膜から腎臓まで の間に肝臓と胆嚢,肝臓に陥入した胃,腸管が描出さ

      es■■

図3 症例8の上腹部横断像,short SE,651/40(心  電図同期)対称肝と右側の胃が観察される.ST:胃

図4 症例8,short SE,651/40(心電図同期).図3  より2cm足側の断層面. ST;胃, G;胆嚢, K;腎  臓

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昭和63年5月1日

図5 症例4,short SE,460/40.右側の背側の臓器  (★)が肝臓か脾臓か判然としない.ST:胃

図6症例4,心電図同期.上:short SE,612/40,

 下:long SE,1205/80, long SEで不明の臓器が強  調され,脾臓であると考えられる.

れ,脾臓と考えられる臓器,あるいは集族する不明な 臓器などは描出されなかった(図3,4).症例4では,

肝臓よりやや信号強度の低い,肝臓の分葉なのか,変 形した脾臓なのか判然としない臓器が存在した(図 5).この臓器はlong SEで信号強度が強まり明瞭に 描出され,脾臓であると考えられた(図6).心電図同 期法併用例は画像上の臓器の分離がより明瞭であっ た.なお,Howell Jolly小体は症例4,7,8にて検 索し,症例7,8で陽性,症例4は陰性であった.

      考  察

 無脾症候群は,臓器心房錯位症候群1)のうち bilat一

297−(9)

eral right−sidedness を特徴とした症候群2)で,その診 断は,一般に,気管支分岐の形態や内臓心房位の検索,

対称肝,あるいは,単心房,単心室,共通房室弁口等 特徴的な心奇形の形態などを参考としてなされてき た.さらに末梢血液像で,Howell Jolly小体の検出や 赤血球の空泡(Post・splenectomy vacuoles)の形態学 的特徴により,間接的に診断が可能であると報告され ている3).脾臓シソチグラフィー)や脾動脈造影5)によ る直接的診断も試みられたが,前者は解像力が悪く,

脾臓の有無の診断が難しい場合もあり5),後者は侵襲 的な検査のため広く用いられていない.

 腹部CT検査は腹部臓器の明瞭な描出が可能であ り,CTを用いて無脾症候群を診断した報告が散見さ れる6)7}8).しかしCT検査は少なからず放射線被曝が あり9),特に小児期での腹部検査には問題が残る可能 性がある.

 1980年に臨床的に実用化されたMRIは,非侵襲的 に腹部臓器の明瞭な描出が可能であり,臓器のコント ラストも良いとされる10).またパルス系列を変えるこ とによりtissue characterizationが可能となるため,

諸臓器の信号強度が変化し,諸臓器の画像上の分離が 容易になる.

 今回の我々の検討でも,コントロール群では,肝臓・

脾臓・胃・胆嚢・腎臓などの腹部臓器の形態や配置が 観察でき,さらにT2強調画像とされる long SE Il)

のパルス系列で撮像すると,脾臓と腎臓が白く強調さ れ,臓器間の分別はより容易になった.また年長児で は,臓器がより大きいためと臓器の周囲の脂肪が多い ため明瞭な臓器の描出が可能であったと考えられる.

呼吸によるMotion Artifactは,腹部の画像診断では 常に問題となるが,MRIにおいては呼吸同期法がいま だ一般的でない.我々の経験では,心電図同期法の併 用で画像が鮮明になり,心臓の拍動によるMotion Artifactが抑制されるためと考えられるが,呼吸同期 法が一般的でない現時点では,この心電図同期法は,

腹部臓器のより鮮明な描出に有用な方法と考えられ

る.

 対象群では,8例中7例で,横隔膜から腎臓までの 間には,脾臓と考えられる臓器を描出できなかった.

当施設のMRI装置の空間分解能は2mm程度であり,

これらの症例が小さな脾臓を持つ多脾症候群である可 能性は低いものと考えられる.1例は,分葉は認めら れるが正常と考えられる形態の脾臓が存在すること が, MRI特有のT2強調画像で確認された.この症例は

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298−(10) 日本小児循環器学会雑誌 第3巻 第3号 脾臓が正常な複合心奇形,あるいは臓器心房錯位症候

群のスペクトラムに含まれる,正常の脾臓をもつ症例 と考えるべきかもしれない.

 以上,腹部MRIは非侵襲的に脾臓の有無・形態を観 察することができ,無脾症候群を含め,臓器心房錯位 症候群の脾臓の評価に有用であると考えられた.

 なお,症例を御紹介頂いた,千葉市立海浜病院の太田文夫 先生,および,MRI撮像に御協力頂いた千葉大学放射線部 の守田文範氏に深謝いたします.

         文  献

1)新堀 茂,高尾篤良,遠藤真弘榊原 件:臓器・

 心房錯位症候群(Viscero・atrial heterotaxic syn−

 drome).心臓,1:1253,1969.

2)Moller, J.H., Nakib, A., Anderson, R.C. and  Edwards, J.E.:Congenital cardiac disease as−

 sociated with polysplenia:Adevelopmental

 complex of bilateral left sidedness . Circula−

 tion,36:789,1967,

3)立石一馬:無脾症候群と多脾症候群の鑑別診断  医学のあゆみ,103:633,1977.

4)Rao, B.K., Shore, R.M., Lieberman, LM. and  Polcyn, R.E.:Dual radiopharmaceutical imag・

 ing in congenital asplenia syndrome. Radiology  145:805,1982.

5)新川正治,戸沢睦彦,天野忠温,金原主幸,中田和   育,後藤正勝,富沢宗彦,尾内善四郎:無脾症候群,

  本邦89例の臨床的検討.小児科診療,38:823,

  1975.

6)Tonkin,1.LD, and Tonkin, AK.:Viscer−

  oatrial situs abnormalities:Sonographic and   computed tomographic appearance. AJ.R,138:

  509,1982.

7)篠原 徹,田渕 実,三宅俊治,砂川晶生,中村好   秀,横山達郎:臓器心房錯位症候群に合併した中   枢神経系感染症の2例.日本小児科学会雑誌,90:

  1067, 1986.

8)篠原 徹,砂川晶生,中村好秀,横山達郎,城谷   均:CTによる無脾および多脾症候群の臨床診   断.臨床放射線,31:65,1986.

9)松浦啓一:画像診断の問題点,聖マリア医学,9:

  95, 1982.

10)Kulkarni, MV., Kirchner, S.G., Price, RR,

  Eisenberg, D. and Heller, R.M.:Magnetic res−

  onance imaging in pediatrics. Ped, Clin North   Am.,32:1509,1985.

11)鳥居伸一郎,池平博夫,福田信男,舘野之男,遠藤   真広,松本 徹,飯沼 武,上嶋康裕,西沢順子:

  NMR:NMR信号強度のT1, T2感度地図作成と   その応用:NMR強調画像における強調の程度の   定量化.核医学,22:1461,1985,

Diagnosis of Asplenia Syndrome by Magnetic Resonance Itpaging Kazuyuki Tashima, Masaru Terai, Koichiro Niwa and Hironori Nakajima        Department of Pediatrics, Chiba University, Japan

  To evaluate the condition of the spleen and the liver in clinically diagnosed asplenia syndrome, we studied 8 patients with clinically diagnosed asplenia syndrome and 8 controls using magnetic resonance imaging(MRI). These MRI studies were performed using a spin−echo multislice technique with a O.5 Tesla superconducting magnet, Picker International Corp. Scans were made in transverse planes between diaphragma and kidney. Usualy the echo time delay was 40 msec and the repetition time was 400 msec or 460 msec. We used T2 weighted pulse sequences, too.

  The spleen was detected clearly in all controls. On the other hand, in 7 patients spleen was not detected, whereas in one patient spleen was observed. On T2 weighted images the spleen could be differenciated from a liver more clearly. In conclusion MRI can be useful technique for diagnosis of asplenia syndrome noninvasively.

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参照

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