2008年度の情報セキュリティ政策の評価等
-「真の情報セキュリティ先進国」を目指す取組みの3年目の評価-
内閣官房情報セキュリティセンター(NISC)
2009年5月8日
i
目次 はじめに
1.本文書の位置づけと基本認識
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・1
2.本文書の構成 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・1 3.情報セキュリティ政策全体の評価等に係る検討の枠組みと手法・・・・・・2第1章 情報セキュリティ政策全体の評価等
第1節 我が国における情報セキュリティに関する2008年度の取組み
・・・・・・4
1.2008年度の取組みの背景2.2008年度の取組み
第2節 2008年度の取組み及び取組みを受けた我が国の現状の評価等(2008年度 の評価等)
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・5
1.2008年度の評価等に関する基本的考え方(評価等の視点)2.評価等について(評価指標等)
3.評価等の結果と総評
(1)施策の取組み結果に関する評価等
(2)施策の取組みによる社会的変化に関する評価等
(3)総評
第3節 第1次情報セキュリティ基本計画の3年間(2006~2008年度)
の総評・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 12 第4節 2009年度に向けた課題 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 14
第2章 政府機関における現状の評価等
第1節 政府機関における情報セキュリティに関する2008年度の取組み
・・・ 15
1.2008年度の取組みの背景第2節 2008年度の取組みを受けた政府機関における現状の評価等(2008年度の評 価等)
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 15
1.2008年度の評価等、及び評価等に関する基本的考え方(評価等の視点)2.評価等の結果と総評
(1)施策の取組み結果に関する評価等
(2)補完調査
(3)総評
第3節 第1次情報セキュリティ基本計画の3年間(2006~2008年度)
の総評・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・20 第4節 2009年度に向けた課題 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・21
第3章 重要インフラにおける現状の評価等
第1節 重要インフラにおける情報セキュリティに関する2008年度の取組み
・・22
1.2008年度の取組みの背景2.2008年度の取組み
第2節 2008年度の取組み及び取組みを受けた重要インフラにおける現状の評価等
(2008年度の評価等)
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・23
1.2008年度の評価等に関する基本的考え方(評価等の視点)2.2008年度の評価等について(評価指標等)
3.評価等の結果と総評
(1)施策の取組み結果に関する評価等
(2)施策の取組みによる社会的変化に関する評価等
(3)補完調査の結果について
(4)総評
第3節 第1次情報セキュリティ基本計画の3年間(2006~2008年度)
の総評・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 32 第4節 2009年度に向けた課題
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 33
第4章 企業・個人における現状の評価等
第1節 企業・個人分野における情報セキュリティに関する2008年度の取組み
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 43
1.2008年度の取組みの背景(A)企業
(B)個人
2.2008年度の取組み
(A)企業
(B)個人
第2節 2008年度の取組み及び取組みを受けた企業・個人分野における現状の評価 等(2008年度の評価等)
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・47
1.2008年度の評価等に関する基本的考え方(評価等の視点)2.評価等について(評価指標等)
(1)総論
(2)アウトプット指標
(3)アウトカム指標 3.評価等の結果と総評
(1)施策の取組み結果に関する評価等
(A)企業
(B)個人
(2)施策の取組みによる社会的変化に関する評価等
iii
(A)企業
(B)個人
(C)企業・個人共通
(3)補完調査の結果について
(4)総評
(A)企業
(B)個人
第3節 第1次情報セキュリティ基本計画の3年間(2006~2008年度)
の総評・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・74 第4節 2009年度に向けた課題
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 75
第5章 横断的な情報セキュリティ基盤における現状の評価等
【情報セキュリティ技術戦略】
第1節 2008年度の取組み
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・77
1.2008年度の取組みの背景2.2008年度の取組み
第2節 2008年度の取組み及び取組みを受けた現状の評価等(2008年度の評価等)
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・77
1.2008年度の評価等に関する基本的考え方(評価等の視点)2.評価等について(評価指標等)
3.評価等の結果と総評
(1)施策の取組み結果に関する評価等
(2)施策の取組みによる社会的変化に関する評価等
(3)総評
第3節 第1次情報セキュリティ基本計画の3年間(2006~2008年度)
の総評・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・79 第4節 2009年度に向けた課題
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 80
【情報セキュリティ人材の育成・確保】
第1節 2008年度の取組み
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 82
1.2008年度の取組みの背景2.2008年度の取組み
第2節 2008年度の取組み及び取組みを受けた現状の評価等(2008年度の評価等)
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・82
1.2008年度の評価等に関する基本的考え方(評価等の視点)2.評価等について(評価指標等)
3.評価等の結果と総評
(1)施策の取組み結果に関する評価等
(2)施策の取組みによる社会的変改に関する評価等
(3)総評
第3節 第1次情報セキュリティ基本計画の3年間(2006~2008年度)
の総評・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・83 第4節 2009年度に向けた課題
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 84
【国際連携・協調】
第1節 2008年度の取組み
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 85
1.2008年度の取組みの背景2.2008年度の取組み
第2節 2008年度の取組み及び取組みを受けた現状の評価等(2008年度の評価等)
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・87
1.2008年度の評価等に関する基本的考え方(評価等の視点)2.評価等について(評価指標等)
3.評価等の結果と総評
(1)施策の取組み結果に関する評価等
(2)施策の取組みによる社会的変化に関する評価等
(3)総評
第3節 第1次情報セキュリティ基本計画の3年間(2006~2008年度)
の総評・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・89 第4節 2009年度に向けた課題
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 90
【犯罪の取締り及び権利利益保護・救済】
第1節 2008年度の取組み
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 91
1.2008年度の取組みの背景2.2008年度の取組み
第2節 2008年度の取組み及び取組みを受けた現状の評価等(2008年度の評価等)
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・91
1.2008年度の評価等に関する基本的考え方(評価等の視点)2.評価等について(評価指標等)
3.評価等の結果と総評
(1)施策の取組み結果に関する評価等
(2)施策の取組みによる社会的変化に関する評価等
(3)総評
第3節 第1次情報セキュリティ基本計画の3年間(2006~2008年度)
の総評・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・93 第4節 2009年度に向けた課題
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 93
1
はじめに
1. 本文書の位置づけと基本認識
本文書は、2006年度から始まった3年間を対象期間とする「第 1 次情報セキュリティ 基本計画(以下「第1次基本計画」という。)
1
」と、それに基づく2008年度計画である「セキュア・ジャパン2008(以下「SJ2008」という。)
2
」によって進められてい る情報セキュリティ政策について、2008年度の政策の評価等3
及び第 1 次基本計画にお ける3か年の取組みの達成度についての評価等について報告するものである。我が国の情報セキュリティ政策の運用は、上述の第1次基本計画及び年度計画に基づくP DCAサイクル
4
の形で行うこととなっており、その詳細は、情報セキュリティ政策の枠組 みについて記述した文書である「情報セキュリティの観点から見た我が国社会のあるべき姿 及び政策の評価のあり方」(以下「情報セキュリティ政策の枠組み文書」という。)など5
に よ り 定 め ら れ て い る 。 こ れ ら に 基 づ き 内 閣 官 房 情 報 セ キ ュ リ テ ィ セ ン タ ー ( National Information Security Center)(以下「NISC」という。)は、評価指標にのっとったデータ 等の情報を集め、評価等を行った。本文書は、我が国情報セキュリティ政策のPDCAサイクルの運用において、2008年度 施策の点検段階(C)に該当するものであり、情報セキュリティ政策会議へ本文書の報告を 行い、我が国の情報セキュリティに関する現状認識を明確にするとともに、第2次情報セキ ュリティ基本計画
6
(以下「第2次基本計画」という)の下に策定される、翌年度の年度計 画である「セキュア・ジャパン2009(以下「SJ2009」という。)」を検討するため の有益な情報を含むものである。また、2008年度は2006年度から始まった、第1次基本計画における最終年度であ るため、特に、情報セキュリティの枠組み文書に記載されている「2009年時の我が国社 会の姿」(以下、「あるべき姿」という)の達成度についても、評価を実施する。
2. 本文書の構成
本文書では、第1章においては情報セキュリティ政策全体、第2章においては政府機関、
第3章においては重要インフラ、第4章においては企業及び個人、第5章においては横断的 な情報セキュリティ基盤
7
について現状の評価等を行う。各章の構成については、他の章と1
2006年2月2日情報セキュリティ政策会議決定2
2008年6月19日情報セキュリティ政策会議決定3
本書においては、情報セキュリティ政策会議決定文書(注5参照)、「1 評価指標に基づく評価等のための作業方 針」における定義に従い、「評価指標に基づく評価、補完調査及び分析等」を「評価等」と記す。4
計画(Plan)、実施(Do)、点検(Check)、改善処置(Act)の各段階を経て、改めて計画(P lan)に戻る自律的な政策推進サイクル。5
2007年2月2日情報セキュリティ政策会議決定文書・了解文書(「「セキュア・ジャパン」の実現に向 けた取組みの評価等及び合理性を持った持続的改善の推進について」[政策会議決定]及び「情報セキュリティ の観点から見た我が国社会のあるべき姿及び政策の評価のあり方~「セキュア・ジャパン」の実現に向けた 情報セキュリティ政策のPDCAサイクル確立へ~」[政策会議了解])6
2009年2月3日情報セキュリティ政策会議決定7
情報セキュリティ技術戦略、情報セキュリティ人材の育成・確保、国際連携・協調、犯罪の取締り及び権の比較を容易にするため、すべての章を通じてほぼ同じ柱立てとしており、各章ともに第1 節では「2008年度の取組み」、第2節では「2008年度の取組み及び取組みを受けた 現状の評価等(2008年度の評価等)」、第3節では、「第1次基本計画3年間の評価」と して、第1次基本計画の3年間が終了した時点における「あるべき姿」の達成状況について、
評価等を実施する。さらに、第4節では、評価等から抽出される「2009年度に向けた課 題」について述べる。そして、第2節の2008年度の評価等においては、評価等の視点を はじめとする基本的考え方を述べた上で評価指標などを提示し、さらに、具体的な評価等を
「施策の取組み結果」、「施策の取組みによる社会的変化」及び「補完調査の結果」に関して 加えた上で、総評を行う。
なお、第1章の情報セキュリティ政策全体の評価等は、上記の情報セキュリティ政策の枠 組み文書において述べられているように、「様々な主体ごとの取組み結果の」「積み上げによ ってわが国総体として」「総合的かつ分析的に」行う。したがって、第1章の政策全体の評 価等は、第2章以降の各章における政策領域ごとの評価等の総評を活用しながら行うことと なる。情報セキュリティ政策全体に関する具体的な分析の枠組みと手法については、以下に 述べる。
3. 情報セキュリティ政策全体の評価等に係る検討の枠組みと手法
情報セキュリティ政策全体の評価等は、定性的な検討部分と、定量的なデータを適宜組み 合わせる形で行う。具体的には、象徴的な事象等がある場合、これに着目してそれらが示唆 するものを抽出し、適宜これに即したデータを組み合わせて評価等を行う。
検討の手順は、上述のように各政策領域
8
の評価等から始め、これらを積み上げた上で政 策全体としての評価等を進める。したがって、まず第1次基本計画及びSJ2008で設定 されている政策領域について、各々の領域全体としての評価等を行う。ただし、各々の政策 領域の評価等は、第2章以下の各論の中で領域ごとの評価等及び総評においてまとめられる ことから、これらを活用する。こうした政策領域をまず念頭に置き、これに組み合わせて各々の政策領域に係る社会の状 況などについても検討するために、社会情勢、政府の取組み実績(施策の取組み評価等)を 意識する。そして、前者を横軸として捉え、後者を縦軸に捉えて全体を見た上で、縦軸の領 域についても個々の領域全体として評価等を行う(図 1)。
社会情勢は、非常に広範な要素を含むことから、検討に当たって、
1)社会環境などに作用を行う主体として「人的要素(人、意識、体制・制度)」
利利益保護・救済の4分野が含まれる。
8
ここで各々の政策領域とは、「対策実施4領域」である政府機関・地方公共団体、重要インフラ、企業、及 び個人、そして「横断的な情報セキュリティ基盤」である情報セキュリティ技術戦略の推進、情報セキュリ ティ人材の育成・確保、国際連携・協調の推進、犯罪の取締り及び権利利益の保護・救済のことである。3
2)社会環境などに作用を行う際の媒介物や、作用を行った結果生み出されるものとし て「物的要素(投資、技術、ハード、ソフト、ネットワーク)」
3)実際に作用を受ける社会環境などとして「周辺情勢(インシデント・事件、市場な ど)」
に分類を行い、また、可能な限り数値やデータを加味し、幅広い視点から各々について評価 等を行うこととする。その上で、それらを積み上げる形で情報セキュリティ政策全体につい て評価等を行うこととする。
図1:2008年度の情報セキュリティ政策の評価等に係る検討の枠組み
また、本文書は、第1次基本計画における3か年の取組みの最終年度として、200 9年当初における我が国の情報セキュリティに係る社会情勢等を把握し、あるべき姿に 照らしてその到達度について評価等を行う。
第1章 情報セキュリティ政策全体の評価等
第1節 我が国における情報セキュリティに関する2008年度の取組み 1.2008年度の取組みの背景
我が国の国民生活及び社会経済活動においてITへの依存度が高まる中、ITの利活 用における安心・安全を確保するため、情報セキュリティは重要な課題となっている。
このような状況を踏まえ、2006年度から2008年度の3年間を対象期間とする基 本計画の下、2007年度にはセキュア・ジャパン2007(以下「SJ2007」と いう。)が策定され、第1次基本計画における2年度目の取組みが行われた。結果、2 007年度末には、
1)各主体における情報セキュリティの意識の維持・強化 2)対策実施領域ごとの具体的取組みの着実な推進
3)横断的な情報セキュリティ基盤分野における具体的取組みの着実な推進 4)情報セキュリティ推進体制の維持・強化と持続的改善構造に基づく政策運営
の推進
という取組みの成果が見られた。
2008年度の取組みは、2008年度の対策で対応できるものは実施を行うととも に、1)長期的な視点に立った抜本的な対策を、第2次基本計画においても本格的に進 められるように検討を行う必要があることや、また、対策実施主体による対策の推進と 強固な情報セキュリティ基盤があいまって、我が国が真の情報セキュリティ先進国と言 えることから、2)情報セキュリティ基盤の強化に向けて集中的に取組みを行うことが 必要であり、更には、政策の社会的効果(アウトカム)の出現に向けて、政策の実現可 能性や方向性に問題があるような場合は、3)引き続きPDCAサイクルにのっとって、
対策の底上げを行うべきである、といった認識の下になされたものである。
2.2008年度の取組み
2008年度の取組みは、第1次基本計画の下での最終年度の取組みとして、200 6年度、2007年度の取組み及び評価を踏まえつつ、年度計画であるSJ2008を 策定し、情報セキュリティ対策の政府の重点施策を定めた。
SJ2008では、「情報セキュリティ基盤の強化に向けた集中的な取組み」を目標 に、(1)官民各主体の共通認識の維持・向上を引き続き図り、(2)先進的技術の追求 を通じて現行技術水準の限界点を少しでも超えられるように努力し、(3)GSOC
9
に 関する取組みなど、公的部門の対応力の強化を引き続き図り、(4)国内外の様々な主 体の連携・協調の強化によるアウトプットの強化を図るという形で、対策実施主体が施9
Government Security Operation Coordination Teamの略。横断的な情報収集、攻撃等の分析・解析、各政府 機関への助言、各政府機関の相互連携促進及び情報共有を図るための体制。5
策の取組みを進めた。具体的には、2006年度、2007年度に引き続き、「対策実施4領域」、「横断的 な情報セキュリティ基盤」、「政策の推進体制と持続的改善の構造(政策の推進体制の強 化、他の関係機関等との連携、持続的改善構造の構築)」という基本計画の柱立てに基 づいて具体的な施策を実施することとし、内閣官房を含む各府省庁が計157の取組み を行うこととなった。
また、SJ2008では、「持続的な情報セキュリティ基盤の強化に向けた集中的な 取組み」という2009年度の重点施策の方向性が設定され、「政府機関における持続 的な情報セキュリティ対策の推進体制の構築に向けた基盤整備」、「各対策実施領域にお ける持続的な情報セキュリティ対策の推進体制の構築に向けた基盤整備」として、計2 2の具体的施策が盛り込まれた。
2008年度は、このようにSJ2008に沿った形で、基本計画の下での最終年度 の取組みがなされた状況である。
第2節 2008年度の取組み及び取組みを受けた我が国の現状の評価等(2008年度 の評価等)
1.2008年度の評価等に関する基本的考え方(評価等の視点)
情報セキュリティ政策全体に係る2008年度の評価等は、以下の3つの視点に基づ いて行うこととする。すなわち、
1)第1次基本計画に基づく政策体系の下での3年目の取組みが実効的に進められ、
結果、SJ2008に記載された当初の目標(とりわけ、2008年度の重点であ る「情報セキュリティ基盤の強化に向けた集中的な取組み」)が実現できたか否かを 測るという視点
2)2008年度の取組み開始時のリスクが、1年間の取組みによってどう変化した のかなど、情報セキュリティに係る2008年度の様々な動向を測る視点
3)第2次基本計画の初年度たる2009年度の取組みにおいて、対応が必要な具体 的課題を浮き彫りにするという視点
である。
2.評価等について(評価指標等)
2008年度の情報セキュリティ政策全体の評価等は、情報セキュリティ政策の枠組 み文書第5章第2節を踏まえ、各論で行う政策領域ごとの評価等の積み上げによって行 う。また、こうした政策領域ごとの評価等に加えて、社会情勢についても評価等を行っ た上で、これらも合わせて積み上げることで全体としての評価等を行うが、特定の評価 指標は2008年度では設けていない。
なお、このような評価等の手順については、「はじめに」において述べた検討の枠組 み及び手順に基づくこととする。
第1次基本計画3年間の評価においては、2009年時点における、取組み状況や社 会情勢、関係する指標等を、2006年度に想定した「あるべき姿」に照らし合わせた 上で、総合的な判断により、評価を実施する。
3.評価等の結果と総評
(1)施策の取組み結果に関する評価等
SJ2008において、2008年度中に推進するとされた157の具体的施策の取 組み結果については、2008年度の評価等では以下のとおり分類され、評価がなされ た。
A :140施策(89.2%、内A’は3施策) B+: 5施策(3.2%)
B : 11施策(7.0%) C : 0施策(0.0%)
- : 1施策(0.6%)
<分類>
A:当初の予定どおり施策を推進することが出来た施策。
なお、施策は推進できたが、体制や人員に関して問題が存在するため、今後、
継続して施策を推進するためにそれらの解決が必要であるということが、当該施 策に関連した作業の進捗や担当へのヒアリング等から明白になった施策につい ては「’」を付した。
B+:年度内には完了していないが、着実に取組みを進めており、数ヶ月以内には完 了する施策。
B:予定どおり施策を推進することは出来なかったが、今後も取組みを続けること により、最終的には施策を推進することが出来る施策。
C:予定どおり施策を推進することはできず、今後の見通しも立たない施策。
-:予定どおり施策を推進することが出来なかったが、その理由が政府機関の事情 によるものではない施策。
SJ2008において、2008年度中に推進するとされた施策については、各府省 庁において着手がなされ、約9割の施策について当初の予定どおり施策を推進した。残 り1割(16施策)の予定どおり推進できなかった施策については、「電子政府認証ガ イドライン(仮称)」の策定など、数ヶ月以内には完了するB+の5施策の他、刑事共 助条約の締結等施策を推進したものの2008年度中に完了できなかったものなど今 後も取組みが必要なB評価のものが11施策、刑法の改正等、政府機関の事情以外の理 由により推進できなかったものが1施策であった。
7
Aとされた137の施策は、関係各府省庁の担当者の努力により予定通り推進するこ とができたものの、A’の3施策については、「各政府機関でのPDCAサイクルの定 着」、「政府全体でのPDCAサイクルの定着」、「情報通信構成要素の安全性検証技術の高 度化に関する研究開発」と、政府機関の対策実施に係る取組み及び技術戦略の推進に係 る取組みとなっている。このうち、政府機関の対策については、推進の努力が続けられ たものの、体制や人員の不足が課題であることがうかがえる。
B、B+、A’と評価された施策のみならず、Aと評価された施策の中にも今後引き 続き取組みを実施することが求められるものも存在している。このような施策について は、第2次基本計画において継続的な取組みや発展的な取組みが求められる。
(2)施策の取組みによる社会的変化に関する評価等
施策の取組みによる社会的変化に関しては、第2節2.(1)の分類にのっとり、政 策領域や社会情勢の各領域についてそれぞれ総体として評価等を行う。ただし、個々の 政策領域は第2章以降の各論において評価等を行うこととする。
( a ) 人的側面(人材、意識、体制・制度)
(ア) 人材面
人材面に関しては、情報セキュリティ人材を育成するための環境の整備については、
官民双方から着々と進められている。
反面、情報セキュリティに携わる人材がキャリアパスを明確に描くことが難しい、政 府における人材が不足している等の指摘がなされるなど、情報セキュリティ人材が十分 に政府・企業に供給され、活用される段階には到達していない。
人材育成・確保についてはその特性上、対策を実施してから成果が現れるまでには数 年単位での時間を要することから、成果が社会で観測できるようになるまで、なお時間 を要する。人材育成・確保については、状況の変化や社会のニーズをくみ取りつつ、継 続的な取組みを行うことが求められる。
(イ) 意識面
2008年度の状況を見ると、対策が進みつつあり、不安は減少傾向にあるものの、
依然としてインターネットの利用に対する不安は大きい。反面、そうした不安感を持つ ことの裏返しとしての行動や、情報漏えい等がマスコミで報道されていること、SJ2 006、SJ2007により今までに取り組んできた対策の成果等が要因となって、情 報セキュリティ対策の対策実施状況が向上している。このことから読み取れるように、
情報セキュリティに関する脅威の認識は徐々に向上していると評価できる。
政府機関においては、PDCAサイクルが構築され、結果として情報セキュリティに対 する意識が高まる素地はできてきているものの、
PDCAサイクルの運用が真に自発的な
ものになっていないなど、情報セキュリティ意識の向上に向けて、更なる対策が必要と なる余地がある。重要インフラ分野においては、官民が連携した取組みの枠組みや体制が構築され、情 報共有に係る意識も醸成されつつあると言える。今後、よりいっそう意識が高まり、事 業者の自主的な取組みとして情報共有が進むように、努力を継続することが必要である と考えられる。
企業分野では、情報セキュリティポリシー策定の動きが進んでいることや、BCP(事 業継続計画)策定が進んできていることなど、情報セキュリティに対する意識は着実に 高まりを見せていると言える。また、情報漏えいが依然として減少傾向を見せず、ビジ ネスに影響するシステム障害も発生し、そうした事実が報道されていることなども、意 識の高まりの一因になっているとも考えられる。
そうした動きの反面、情報セキュリティ対策を実施しても市場で評価されないとする 意見も依然として多い一方、情報セキュリティ対策の実施を取引先の要件として求める 企業の割合は増加し、情報セキュリティ対策実施により顧客・取引先からの評価が向上 したという意見が増えつつある。こうしたことから、今後企業における情報セキュリ ティ意識の高まりは予測されるものの、情報セキュリティ対策が市場評価につながる環 境の整備、情報セキュリティ対策が経営の一環として当然行われるものとする認識が求 められる。
個人分野では、SJ2008の下で情報セキュリティに関する普及啓発・情報発信を 行うことを重点に各種取組みが積極的に推進された。
しかしながら、インターネットの利用に「不安を感じている」とする割合が17.5%、
「セキュリティ脅威への対策を行っているが、不十分であり、少し不安を感じている」
とする割合が30.0%(平成20年度通信利用動向調査:総務省)になるなど、不安 感を払拭するには至っていない。また、新たな脅威が発生する状況は続いているが、個 人における新たな脅威への認識・認知は依然として進んでいない状況にある。
また、全体の傾向として、対策が進んでいるにもかかわらず、年代の違い等によって 対策実施に関する意識が低い属性も存在する。
こうしたことから、個人分野においては、取組みを継続しつつも、既存の普及啓発・
情報発信が届きにくい層の個人に対して効果を持つ対策が検討されるべき時期にさし かかっていると言える。
国際的には、途上国においてもセキュリティ意識の向上が見られるようになってきて おり、進んだ取組みを行っている我が国に対して、更なる情報発信・貢献が求められる ようになってきていることに注意が必要である。
9
(ウ) 体制面
体制面については、これまでの検討が具体的な対策として実施され始めた一年であっ た。
政府機関については、PDCAサイクルの構築や、情報セキュリティ政策を担当する職 員に向けた教育における講義内容の改善といった、情報セキュリティ管理・運用体制の 強化に向けた取組みが実施された。
反面、各政府機関の情報セキュリティ対策実施体制に関しては、リソース・スキルが 不足しているという声が聞かれるなど、体制面での課題は依然として存在している。従 って、今後も政府機関における体制の整備に向けた取組みは引き続き望まれる。
重要インフラについては、以前より検討が進められていた、重要インフラにおける分 野横断的な情報共有を目的とした「セプターカウンシル」が設立され、活動を開始した。
また、官民連携による分野横断的な演習も、2006年度、2007年度に続く第3回 目が実施されており、官民の各主体間における情報共有、連絡・連係を進めるための基 盤整備の具体化が進んでいると言える。
また、国際連携の観点からも、日・ASEAN間における情報セキュリティ政策会議の 創設や、日米サイバーセキュリティ二国間会合の定期化等、連携強化のための枠組みが 具体化されている。
( b ) 物的側面(投資、技術、ハード、ソフト、ネットワーク)
物的側面については、着実に対策が進められており、一部施策については従来か らの検討が具体化している。
政府機関においては、整備が行われていた政府横断的な情報収集、攻撃等の分析・
解析等の体制(
GSOC)について、本格的な運用が開始された。
また、重点検査による端末・
Webサーバ・メールサーバに対するセキュリティ対
策の改善・強化に向けた取組みが行われ、大きな改善が見られた。企業においては、情報セキュリティ対策装置の導入、情報セキュリティポリシー の策定等情報セキュリティに対する投資は、徐々にではあるが向上する傾向にある と言える。
他方、企業における情報セキュリティに対する投資は、各主体の経営判断の下、
投 資 可 能 な 費 用 と 想 定 さ れ る 損 失 と の バ ラ ン ス を 考 慮 し て 行 わ れ る も の と 考 え ら れ、経済状況が急速に悪化している状況においては、本来必要な情報セキュリティ 投資までもが抑制される恐れもある。
個人分野では、最近の状況をみると、例えば
OSの定期的なアップデート、ウイル
ス対策ソフトの導入・活用については、増加傾向にあり、全体としての底上げは徐々にではあるが、進んでいると言える。しかしながら、いまだに情報セキュリティ対 策を実施していないユーザも存在し、既存の対策が行き届いていない層に重点を当 てつつ、更なる対策実施が望まれる。
研究開発・技術開発では、継続されていた情報セキュリティ対策を進めるための ヴァーチャルマシンのプロトタイプ版が完成し、公開される等、着実な進展が見ら れる。
また、技術・研究開発推進の枠組み作りについては、中長期的研究開発プロジェ クト管理手法に対する改善検討の進みが見られた。今後は、中長期的な技術・研究 開発推進の枠組みに関する検討を具体化することが課題となる。
( c ) 周辺情勢(インシデント・事件、市場等)
周辺情勢に関しては、ファイル共有ソフト等に起因した情報流出が続き、情報漏えい は依然として減少しておらず、個人がウイルスの感染、迷惑メールの受信など、インタ ーネット利用を通じて被害に遭遇する事例も増加している。また、社会経済に影響を与 えるシステム障害も依然として発生している。インターネットを利用した犯罪に関して は、検挙数が増加している。
なお、2008年度の状況としては、SQLインジェクションによる被害の増大、標的 型攻撃の増加、DNSキャッシュポイズニングによる世界的な被害の発生、USBメモリ を経由したコンピュータウイルスの流行といった事象が観測された。
これらの脅威は、攻撃方法が多様化・巧妙化した上で、その目的も経済的実利を狙っ たものになる傾向にある。
これら状況に対して、企業・個人をはじめとしたユーザの対応については、新たな脅 威に対する認識が低い、実際に被害にあうケースが増えているなど、十分に対応できて いるとは言い難い現状にある。
加えて、これら悪意による攻撃やシステム障害等従来認識されていたインシデントだ けでなく、特に個人において、インターネットサービスを利用するに当たって、意図し ない形で個人情報を含む情報を流出されてしまう事例も報道されている。インターネッ トにおける新たなサービスは提供され続けており、サービスの利用方法を誤って意図し ない方法で、個人情報を含んだ情報漏えいが発生することについては今後いっそう留意 することが求められる。
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(3)総評
ここでは、情報システムの社会基盤化が進んできたことを前提に、情報セキュリティ が情報システムに対して及ぼす影響などについて網羅性を持って分析・検討するアプロ ーチをとるよりも、むしろ、情報セキュリティ政策を検討していくに当たって有益な情 報セキュリティに関する特徴的な事象などを述べ、詳細については各論において言及す ることとする。
2008年度においては、SJ2008に盛り込まれた取組みについて概ね予定通り 進められ、情報セキュリティ基盤の強化に向けて最大限の努力がなされた。
各対策実施領域の取組み状況に関しては、SJ2006、SJ2007で検討・推進 が継続されてきた事項のうち、具体性を伴った対策として結実したものが一定数見るこ とができる。情報セキュリティ対策の性格上、対策が具体化してから社会で効果が見え るまでに時間が必要な対策も多々存在するが、情報セキュリティ基盤の強化という観点 から見ると、具体的な対策が行われたことは、有意義であると言える。
また、基本計画に掲げられ、SJ2008で目標が定められている「4つの基本方針」
との関係では、1)例えば政府機関においては、各府省庁の持続的な
PDCAサイクルの
実施による対策実施状況の改善、またNISCにおける体制の強化が引き続き図られるな ど、取組みの重要性の認識の維持・向上が図られてきたものと言える。また、政府関係 者と重要インフラ事業者の情報共有の場であるセプターカウンシルが設立されるなど、重要インフラ分野での分野横断的な共通認識の形成へ向けた、具体的な取組みが行われ ている。
また、2)技術面に関しては、先進的技術の追求を行い、研究開発・技術開発の要素 を取り入れた情報セキュリティ対策を推進していくことが必要であるとの認識の下、
様々な研究開発・技術開発や方向性の検討がなされたという状況である。研究開発・技 術開発においては、「高セキュリティ機能を実現する次世代OS環境の開発」においてプ ロトタイプ版がオープンソースとして公表され、また、中長期研究プロジェクトの管理 手法の改善方策等やグランドチャレンジ型の研究開発・技術開発の方向性などの検討が 行われているが、それぞれ真に実装可能な、先進的技術として情報セキュリティ対策の 推進に取り入れられる要素となるよう、また検討を具体化するよう、更に取り組まれる ことが必要である。
3)公的部門の対応能力強化については、1)にも見られる政府機関における対策実 施状況の改善及び横断的な情報収集、攻撃等の分析・解析、各政府機関への助言、各政 府機関の相互連携促進や情報共有を図るための体制が構築され、本格運用が開始される など、公的部門における攻撃等に対する基盤の強化が行われた。
さらに、4)連携・協調の推進については、国際的にはまず、国際連携の窓口(
PO
C:Point of Contact)を明確化する必要があるとの認識の下、多国間の枠組みや二国
間会合の場での積極的な情報発信、貢献を行った。また、社会経済活動の相互依存が高 まるASEAN諸国との間で情報セキュリティ政策会議を創設するなど、国際協調・貢献 を実施するための「場」の整備も行った。これらの取組みを通じ、我が国の情報セキュリティ政策に対する国際的な認識の向上や、意識・リテラシーに関する諸外国との議論 の深化において、一定の成果が得られている。今後、我が国発の国際貢献や国外のベス トプラクティスの国内政策への還元に向けて、国内関係組織との情報連携強化や取組み の更なる具体化が必要となってくる。他方、国内の官民の各主体間での連携・協調につ いて、前述のようにセプターカウンシルによる情報共有の場の形成などが行われている が、こうした場を活用し、自律的な取組みにより、積極的かつ実効的な情報共有におけ る連携が期待される。
以上を踏まえると、2008年度の1年間の取組みを通じて「4つの基本方針」にお いて、一定の改善や継続的な取組み、「場」の形成などの一定の成果が見られるが、今 後は、より具体的な形で取組みが進められ、社会的な効果は直ぐに表れるものではない ことに留意しつつ、一定の効果が見られるよう継続して取り組まれる必要がある。第1 次基本計画に基づいた3か年の取組みを経て、新たな第2次基本計画の下での2009 年度からの取組みは、その新たな方向性とともに、このような継続の観点も加味し、情 報セキュリティ基盤の強化に向けた効率的な取組みが期待されるところである。
第3節 第1次情報セキュリティ基本計画の3年間(2006~2008年度)の総評
2006年度に策定された、第1次基本計画においては、2009年初頭の姿として(1)
IT利用の客観的・主観的信頼性
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が確保された姿(2)IT安心利用環境の構築への過程 にあるべき姿が想定されていた。各政府機関では、基本的なPDCAサイクルによる評価改善構造の構築、実施状況の把握、
対策改善などの取組みにより、第1次基本計画当初からは対策実施状況に一定の改善がみら れることや、GSOCなど情報セキュリティ問題への適切な対応体制の整備を行うなど、一定 の成果がみられたと言える。しかしながら、取組みにおいては、担当者数の不足、スキル向 上・継承が困難であるとの指摘や、取組みが必ずしも能動的でないということもあり、現在 の取組みが現行体制での限界値に近づいているという可能性も考えられる。今後、技術や環 境の変化を踏まえて取組みを持続・改善していく必要があることからも、現行の体制の強化、
更に自らの情報セキュリティ対策に係るPDCAサイクルを構築していくことが課題である。
また、先進的な技術開発や効率的な人材育成等に、更なる取組みが必要な課題も又存在する。
重要インフラ分野では、官民の緊密な連携の下、重要インフラの情報セキュリティ対策を 強化することを目的に、政府及び重要インフラ事業者の関係主体による取組みを進めてきた。
取組みでは、『安全基準等』の策定・見直し、情報共有体制であるセプターの整備、分野横 断的な演習や相互依存性の解析の実施、官民の情報共有体制の整備、各セプターの横断的な 情報共有体制であるセプターカウンシルが創設されるなど、共通認識の醸成、情報共有のた めの土壌の形成、分野横断的な観点から官民の連携を可能とさせる枠組みが構築された。ま
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ここで、「IT利用の客観的信頼性」とはIT利用に際して使用するIT機器や、そのITを利用する環境の安全性について信頼が出来ること意味する。また、「IT利用の主観的信頼性」とは、IT利用者が、使
用するIT機器やIT環境の安全性について信頼を持っていることを意味する。(情報セキュリティ政策の枠
組文書、2007年2月2日情報セキュリティ政策会議了解より)
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た、今後は、これら枠組みを基礎に、関係主体それぞれが、主体的かつ積極的に情報の共有、
対策の取組みが行われることが期待される。さらには、重要インフラ分野でのIT利用の一 層の深化や広がりなどの変化に対して情報セキュリティ対策を機敏に対応させていく必 要 がある。
企業においては、情報セキュリティ事故による信用失墜の回避、企業秘密情報保護による 競争優位性の維持、事業継続性の確保、社会的責任といった観点から自主的に様々な取組み がなされてきた。政府もまた、各種認証制度、ガイドライン等のツールの開発・普及を図る など政策面での支援を行ってきたところである。取組みの状況としては、情報セキュリティ マネジメントシステム(
ISMS)適合性評価の取得組織数、情報セキュリティポリシー策定、
技術的対策、監査を実施する企業の割合は徐々にではあるが増加傾向にあり、PDCAサイク ルの確立に向けた取組みが進められたと言える。今後、更なる各対策の取組み状況の底上げ が求められる。そのためには、現状、情報セキュリティ対策を実施することに情報セキュリ ティ向上以外の効果がないとする企業も4割を超えるなどから、対策の取組みが市場で評価 され、企業価値、競争力を高めることに繋がる環境の整備が必要であると考えられる。また、
事業規模などにより取組みの状況に差も見られ、更なる底上げには、中小企業等の主にリソ ース不足から対策が困難な主体の対策が促進されるような方策を検討する必要がある。
個人分野においては、政府及び情報関連非営利組織による広報啓発や情報関連事業者によ る製品・サービスのPR、特に情報流出事故など情報セキュリティ事故に係る報道などを通 して、情報セキュリティの重要性の認識、それに伴う対策実施の状況に進展が見られた。し かしながら、新しい脅威の発生、情報流出等により個人情報の保護に不安があるなど、IT の利用・活用における不安は必ずしも減少しているとは言えない。また、個人のPC等に対 する従来からの基本的な対策の実施状況にもいまだ改善の余地がみられ、更に底上げに向け た取組みが求められる。特に、個人にとってはITの仕組みが理解しがたい、新たな脅威に 関して認識することも難しいといった点からも、あらゆる個人に脅威の理解、対策の重要性 を浸透させることは容易ではない。広報啓発・情報発信を中心とした取組みでは、さらに効 果的・効率的な手法を検討、実施していく必要がある。
これらのことから、総体的には、各主体による情報セキュリティ対策の重要性の認識の高 まり、組織的な取組みにおいてはPDCAサイクルによる持続的評価改善の構造の確立が進め られ、また様々な対策実施状況に着実な進展が見られるなど、IT利用の客観的・主観的信 頼性の確保へ向け、一定の成果があったと言える。また、IT安心利用環境の構築の過程と して、官民各主体の情報セキュリティに関する連携の枠組み・基盤の整備が実施されるなど、
「あるべき姿」として示されている官民連携における具体的なモデルを構築する取組みが行 われた。今後、更にIT利用の客観的・主観的信頼性を確保し、IT安心利用環境を構築す るためには、情報セキュリティを取り巻く環境の変化を踏まえ、構築された枠組み・基盤を 基にして、各主体の自主的な取組みを推進し、その持続的な改善を図っていく必要がある。
第4節 2009年度に向けた課題
以上より、2009年度においては、第一に長期的な視野に立った新たな枠組みからの対 策を検討し、具体的に実施すること、第二にすべての対策分野において、リソース不足で対 策への取組みが遅れている主体についての支援を実施すること、第三に環境の変化に柔軟に 対応した上で、合理的な水準で持続的に対策を実施すること、が大きな課題である。
第一の課題については、2008年度において長期的な視野に立った抜本的な対策を検討 してきた。こうした取組みを受けて策定された、第2次基本計画における初年度に当たる2 009年度においては、新たな枠組みによる取組みが必要な分野についての検討を継続する とともに、検討した対策を具体的な施策として実施する必要がある。
第二の課題については、経済状況が悪化し、情報セキュリティへの潤沢な投資が難しくな る状況が存在するのに加えて、すでにリソースの不足により情報セキュリティへの取組みが 遅れている主体も観測されている。こうした状況において、情報セキュリティにおいては対 策の遅れている組織が全体のセキュリティ水準を決める大きな要因となるため、我が国の情 報セキュリティを保つためには、リソースが不足している主体に対しての支援を行うことが 必要である。
第三の課題については、対策の社会的な効果(アウトカム)が現れるまでには、継続的な 取組みを実施し続けることが必要であるが、取組みを継続するに当たっては、取組みが自己 目的化したり、硬直化したりしないように、社会情勢をにらみつつ、情勢に合致した修正・
変更を加える必要がある。また、対策を持続するに当たっては、合理的な水準で対策を実施 していく必要があることにも留意する必要がある。
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第2章 政府機関における現状の評価等
第1節 政府機関における情報セキュリティに関する2008年度の取組み 1.2008年度の取組みの背景
政府機関における情報セキュリティ対策は、各府省庁が政府機関統一基準を踏まえた 府省庁基準に基づくPDCAサイクルを持続的に進め、また政府全体としても各府省庁の 対策実施状況の評価や政府機関統一基準の適時・適切な見直しも含めた情報セキュリ ティ対策のPDCAサイクルが推進されることが基本となっている。
「2007年度の情報セキュリティ政策の評価等」(2008年4月22日第17回 情報セキュリティ政策会議)では、2008年度に向けた課題として、2006年度に 立ち上がった政府機関のPDCAサイクルについて、その定着及び組織全体への浸透を徹 底することが必要である旨、そのためには、セキュリティ教育に関する実施体制の充 実・向上を図り、全職員、全情報システムの対策実施状況の適切な把握を行うこと、政 府統一的な教育プログラムの質の向上及び受講機会の拡大を図ることが不可欠である 旨が指摘されている。
2008年度は、これを踏まえ、セキュア・ジャパン2008(2008年6月19 日第18回情報セキュリティ政策会議)において、政府機関統一基準の見直しの実施、
PDCAサイクルの定着と浸透、政府機関における安全な暗号利用の促進等を図る施策に
取り組んだ。第2節 2008年度の取組みを受けた政府機関における現状の評価等(2008年度の評 価等)
1.2008年度の評価等、及び評価等に関する基本的考え方(評価等の視点)
政府機関対策に関する情報セキュリティ対策の評価等は、各府省庁個別及び政府全体 という政府機関の情報セキュリティ対策に係る2つのPDCAサイクルが着実に定着・浸 透しているか確認を行うという視点に基づいて実施した。具体的には、2008年度の 対策実施状況報告、特定の重要項目に係る重点検査及び情報セキュリティマネジメント 評価の結果も踏まえて、総合的に評価を行った。
2.評価等の結果と総評
(1)施策の取組み結果に関する評価等
[対策実施状況に関する評価等]
(対策実施状況報告に基づく評価等)
政府機関における情報セキュリティ対策の実施状況を把握・分析するため、各府省庁 の情報セキュリティ対策の実施状況について、2006年度及び2007年度に実施し た評価手法を基本とし、効率化を図りつつ対象をすべての職員に拡大した2008年度 の各府省庁の対策実施状況報告を基に、各府省庁の対策実施状況について評価等を行っ た。取りまとめ結果を別添3に示す。
2008年度は、政府機関統一基準導入の3年目ということもあり、多くの遵守事項
の実施率が高い水準であり、対策の浸透が進んでいるが、他方、政府機関統一基準が最 低限度必要なレベルを規定したものであることを踏まえると、いまだ十分なものとは言 えないことから、第2次基本計画期間においても、取り組むべき課題が依然として残っ ていると言える。
(情報セキュリティ対策の教育)
①
職員による教育受講が不十分であり、未受講者への受講指導の徹底も不十分 である。②
ただし、毎年度1回以上実施すべき教育の計画策定や着任・異動後3ヶ月以 内に実施すべき教育の計画策定は十分に行われている。(情報の格付け・取扱い制限に係る措置)
③
情報の作成と入手時において、情報の格付けの実施や格付けの明示等の実施 が不十分である。④
情報の保存時において、情報の暗号化等の実施が不十分である。⑤
情報の移送時において、管理者に対して行うべき届出が不十分である。等があげられ、これらは昨年度から一定の改善が見られるものの、いまだ十分で はない。また、その他、対策実施が進んでいない遵守事項としては、例えば、
(各種規程・手順の整備)
⑥
責任者が実施すべき各種情報セキュリティ対策の基礎となるべき規程・手順の
整備において、暗号と電子署名、外部委託、府省庁外での情報処理の制限及 びドメイン名の使用に係るものが不十分である。
等があげられる。他方、対策実施が進んだ遵守事項としては、例えば、
(情報システムの台帳整備)
⑦ 情 報 シス テム が 扱う 情報 や 当該 情報 の 格付 けを 含 む事 項を 記 載し た情 報シ ステムの台帳整備については、昨年度は課題とされたが、顕著な改善が認めら れる。
等が挙げられ、一定の成果が見られる。
(重点検査に基づく評価等)
「政府機関の情報セキュリティ対策のための統一基準」において実施すべき必須事項 としている基本遵守事項の中でも特に重要な事項として、前年度に引き続き、19府省 庁の端末、ウェブサーバ及び電子メールサーバについて検査を行った。
端末、ウェブサーバ及び電子メールサーバに関する情報セキュリティ対策状況(20 08年11月時点)については、2009年2月の第20回情報セキュリティ政策会議 に結果を報告するとともに、NISCのホームページにおいて公表した。取りまとめ結果 を別添4に示す。
=分析=
第1次基本計画が終了する平成21年3月末時点で、実施すべき対策がすべて実施さ れている(実施率100%)府省庁は、端末が17府省庁、ウェブサーバが15府省庁
(2府省庁は対象なし)、メールサーバが18府省庁となっており、昨年度は各対象と も約半数が完全な状態ではなかったことと比較して大きな改善がみられた。しかし、一
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部の府省庁は完全な状態ではなく、対策がすべて完了するのは2009年度となってい る。
また、政府機関全体でウェブサーバ約1000台、電子メールサーバ約1900台が それぞれ設置・運用されていることがわかった。
[情報セキュリティマネジメントに関する評価等]
各府省庁における情報セキュリティ対策に関するマネジメントが、計画・実施・評価・
改善のいわゆるPDCAサイクルの各段階で確実かつ効果的に行われているかを評価す るため、「計画」「周知」「実施」「評価と改善」の各段階にわたる41の評価指標に基づ き、第1次基本計画最終年度における政府機関の情報セキュリティマネジメントの状況 について、前回2006年度の調査結果を踏まえて、調査・分析を行った。結果を別添 5に示す。
=分析=
政府機関の模範となる優れた取組みを42件選定(前回44件)し、そのうち総務省 の e ラーニングの取組みや、外務省の外部委託における適切な調達仕様・契約の整備等、
取組6件(前回5件)をベストプラクティスとして選定した。しかしながら、政府内外 を問わず模範となる先進的な取組みは前回同様1件も見られなかった。
また、府省庁における情報セキュリティ対策の推進・取りまとめの担当者数について、
15府省庁は、現状の担当者数が不足しているとみており、このため、特に、教育や規 程の整備に係る業務に支障が出ているとしていることがわかった。
情報セキュリティ教育の受講率については、約半数の府省庁で、ほぼすべての職員が 教育を受講している一方、幹部(指定職以上)や管理職(課室長)の受講率が80%に 満たない府省庁が、それぞれ8府省庁あり、幹部等の教育に課題が残ることもわかった。
[SJ2008施策の取組み結果に関する評価等]
(ア)政府機関統一基準とそれに基づく評価・勧告によるPDCAサイクルの構築 a)政府機関統一基準の見直しの実施
政府機関統一基準については、技術や環境の変化を踏まえ、毎年見直しを行い、また、
その際には政府機関内外で発生したIT障害についても分析を行い、その結果を反映す ることとしている。
2008年度においては、無線
LAN環境の脆弱性への対応等の技術・環境の変化へ
の対応に加えて、これまでの政府機関対策を通じて得られた知見等に基づき、政府機関 統一基準の構成変更等について検討を行い、その結果を踏まえ2009年2月の第20 回情報セキュリティ政策会議において第4版を決定した。b)PDCAサイクルの定着
各府省庁は、PDCAサイクルの定着及び組織全体への浸透の徹底を図るため、特 に、2008年度においては、職員に対する教育の拡充等により、セキュリティ意