安藤 有益 の奇偶方数 についての考察
mGU HOSU OFARIMASUANDO)
福 島県公 立大学法人会津大学 CUniversiサ
OfAiz0
神谷徳昭KNoriakiKamiyD
Abstract.This tt ls to exhibit a膠鵬直
baim 01x31倒
O basedOnAndoЮsults.A180 We eplain the contentsご
his b00k。
Key words。 江戸時代の魔方陣、安藤有益,奇偶方数
『はじめに』
よく知 られていることですが、簡単な魔方陣について説 明す ると、正方形を縦 と横 を等 しく区 切 り、9つのマス ロを作 り、このマスに1から9の数字 をあてはめて、縦の和、横の和、斜 めの和 がすべて等 しくなる様 に配置 したものが、
3×
3の魔方陣 と呼ばれ るものです。 4x4,5x5の場合の一例 (安藤の方法)も挙げてお きます (図表 1) 図表
1
7 4
18 5 2
9 6
3
4
9 23 5
7
8 1 6
13
95
114 10
6 215 11 7
316 12 8 4
4
9 5 ●υ14 7 11 2
15
6 10
31
12
813
21
16
6 122 17
12 72
23 18
13 8 324
19 14
94 25 20
1510
53 6
25 16 15
22 12 19
84
5 9
13 17
2124 18
714
220
110 23
│プ /
この小論では、江戸時代の安藤有益 [寛永元 (1620年の生まれで宝永5(1708)年の没]の「奇
偶方数」(元禄十年出版 1697年)を中心にして述べたいと考えます。関孝和と同時代の人です。
そ して参考にする「奇偶方知 は平山諦 複製 (昭和44年腕
(国
会図書館所蔵)のものです。30
×30迄までがそこで論 じられていますので、彼の方法を拡張して筆者が
31×
31のものを新規に 作成 した点が新 しい論点だと考えここに提供する次第です。いろいろな方陣の作 り方があります が安藤の方法の拡張です。もちろん関孝和も研究しています (関は方陣之法として公表 してい まう 。西洋にも魔方陣についての著作は古来より多数存在するようです、古今東西
数字が並ん だこの方陣は人々の興味を引く対象のようです。方陣の詳 しいことは他の文献も参照されてくだ さい、そしてここでは
安藤の奇偶方数の文献のみをよりどころとして論究させていただきます。
§1.方陣の歴史 と安藤有益について
方陣の最も古いものは、中国の伝説上に出てくる夏の大高が洪水を治めようとした折に、洪水の 中から神亀が現れ、その甲羅に書かれていたのが、最初 と言われています。
(3×
3方 陣の原型と 思われています。)こ
れは洛書と呼ばれていま九 又陰陽五行における「一六 北方 水」、「二
七 南方 火」、「二
人 東方 木」、「四
九 西方 金」、「五
十
中央 土」、の河固と呼ばれているも のが存在 します。(奇偶方数の序のところで述べられています。
)こ
れは方陣が古代には易に使用 さ れ、漢学の一部 とも考えられていたと思います。中国の楊輝算法によるものが現存する数学的な文 献 としては古いものかもしれません(こ
れに関しては城地茂氏の著作の先行研究等があります例
えば数理研講究録
131″
り。しかしここでは歴史的な文献には触れずに
安藤の著作からの引用にのみ言及し関孝和≪日本数 学史、学士院版、または
彼の全集
参照)と は異なる安藤の方法で31x31方陣が作成できるこ
とにのみ論及させていただきます。関は
10x10ま
でを与えていますので奇数の方陣は9x9
までです。ここでは方数、方陣と魔方陣とは同じ意味で使います。
安藤有益の経歴
(ウ
ィキペディアよリー部引用)出羽の国山形の出身。今村知商に師事して数学や暦学を学ぶ。山形藩に仕えた時期もあつたとされ るが、慶安3年
(165Cl年
)に会津藩主保科正之から暦算の才能を評価され、茶坊主の名日で会津))δ
に招聘 される。後に江戸屋敷の勘定役 として
1∞
石が与えられ、続いて当時会津藩に仕えていた 島田貞継にも数学や暦学を学び、その配下として猪苗代湖の水利治水や飯豊山や磐梯山の標高の 確定、日畑の測量事業などに参加 した。また寛文2年(1662年
)に は今村知商の著書『堅亥録 (じゅがいろく)』 の注釈書である『堅亥録仮名抄』を、その翌年には宣明暦の研究書である「長慶宣 明暦算法」を著 している。更に米価を調査 して、常平倉を設置 して物価の安定に尽くしたことが評 価 されて、延宝3年 (1675年)に 2∞ 石のカロ増を受けて3CICl石となる。更に貞享4年
(1687年 )
には長暦である『本朝睡 ■を編纂している。だが、元禄元年 (1688年)に郡奉行であつた安藤 は猪苗代開拓を巡る政争に巻き込まれて所領を没収 されて、耶腑苛咆ひ沐「(現在の福島県西会津町 奥川大字飯根)に幽閉される。しか し、ここで安藤は研究に没頭 し、島田から伝授 された魔方陣の 研究を深め、元禄9年
(1696年
)には日本最初の魔方陣の解説書である『奇偶方数』を完成させ た。この年、藩に呼び戻された安藤は翌年、1∞
石の普請奉行に任ぜ られた。宮仕えなので出世争 いに巻き込まれながらも天寿をまっとうし、85歳 で没し、会津若松市の大龍寺に葬られた。(墓碑 銘 も存在 していまう 。彼についてもう少 し補足 しますと、「九数算力 の著書である島田貞継の 女婿であり、会津藩初代藩主保科正之に仕え、島田と同様に今村知商に学んだといわれています。
そ して島田の推挙により、保科藩主に召 し抱えられ和算の知識を基にして、会津各地の測量、普 請、土木工事を行つた様です。特筆すべきは改暦
(こ
よみ)への貢献です。これらの記述について は、鈴木武雄氏の島田貞継についての著作 (数理研「数学史の研究」の発表(2013年 8月
)も参 考になると思いま九§
2.31×
31の 魔方陣安藤有益の「奇偶油 は漢文で書かれ、序において、五行の易の話から始まり、同僚島田貞継 の考えを伝承 し、それを発展させ、本文にて
30×
30方陣迄が著述されていま丸 また増修 日本数 学史にも30×
30の 魔方陣が引用されて記述があります。そこで、ここでは彼の方法を拡張して、31×
31の 方陣を完成させたいと考え創作を試みました。奇数の魔法陣 3× 3、
5×
5、7×
7、・・・・ヽ29×
29の 方陣が基本であり、それは安藤有 益の本の中に書かれていますので、それを参考にしますし もちろん3×
, 5× 5、 ………29×
29
のときの魔方陣を作り数字は 1か ら961に変形 しなければいけませれ
)?
彼の方法を踏襲 して、
31×
31魔方陣を考察したのが、図表 (付録)です。たぶんこれはどこにも 書かれていないと思われますので、この機会に述べさせて頂きました。又偶数方陣については別の 機会に述べたいと考えます。安藤の方法の解説と31x31の
場合がこの小論の主目的です。安藤有益の奇偶方数は
3Cl×
30ま でが記述 され、完成するのに数年、費や したと書かれています。31×
31方 陣における中心の3×
3方陣 (1から961までの数を並べた中心のところを考察)
に変形する。
この方法は、
に変形する。
方法で数字を変更しただけで同様にできます。【3x3方陣は回転を除けば一意的です】
次に
31×
31方陣の中心の5× 5方 陣の外枠を考えます。に変形する。
を
を
を
を
480
513450 451 481 511
512 449 482511 480
449512
481
450 513 482451
7 4 1
8
52
9 6 3
4
9 23 5
7
8
1 6541 510 479 448
417542 418
543 419
544 420
545
514 483
452421
方法は安藤の方法で
419 448 545 510 483
542 420
421 541
544 418
499 514 417 452
543
21
16 11 6
122
223 3
24 4
25
2015 10
5ヽ
0フ
に変形す ることが出来ます。つま り 1<一 >15 2<― >4、 3 <一>21、
5<― >23、 6<―>16、 1<一 >25、 は相互に交換す る。
10、
20、22、
24はそのままに す る。次に
31×
31の方陣の中心の7×
7方陣の外枠を考えます。 体満日 )43 36 29 22 15 8
1
44
2
45 3
46
447
548
649 42 35 28
21 14 7に す る 方 法 で
を
↓
22 8 35 49 21 36 4
ヽ
44
′ ﹁
/ 6
5
ヽ 、
六 / /
/ 457
ヽ 、 、
///ヽ 43
3
/
/47
48 /
// 2
46 42 15
1 29
14 ▲571 540 瑚 478 447 416 385
572 386
573 387
574 388
575 389
576 390
577 546 515
484
453 423391
に変形できます。煩雑を避けるために、主要な所の一部のみが矢印で表示されています。
ヽ ざ
上図の矢印で主要な移動先を提示 していますが、安藤の7x7方陣の作 り方をもう少 し言葉で全て の移動を説明させていただきます。
(外
枠のみの考察で、その内枠は5x5の安藤の方法で 3x3の方陣は一通りつ
1‑>28‑>7‑>46‑>49‑>22‑>43‑>4‑>1 (1を
28の数字のところに28は7の数字のところに順次移動 させる
)。 3‑>47‑>5‑>45‑>3、
15‑>35‑>29‑>21‑>15
と移動させ、8<―
>36、 2<―>6
は相互に交 換 させて 14、42、 44、 48、
はそのままで移動 させなし■ 以上が7x7の場合です。これを続ければ
29×
29迄 は奇偶方数と同様です。紙面の関係で省略させて頂きますが、31×
31の 場合もこの方法を踏襲すれば可能ですので付録に載せてあります。(も
ちろん数字は すべて 1か ら961ま で変換 してそして移動 させなければいけません)。
それほど簡単ではありませんが省略させていただきます。安藤は
30×
30ま でを完成させるのに数 年を費や したとい うことです。最近は計算機による方法で4× 4の場合で880、 5× 5で 2億7千近い方陣が存在するようです。筆者 (神谷)は手と多数の紙のみで作成 しました。
ところで関の方法は安藤 とは異なり外枠のみの移動ではなく内枠までにも移動がおよびますので 複雑に感じます。彼 らの作 り方の比較は別の機会にさせていただきます。ここでは安藤の方法の 拡張だけを考察 しています。出版されたものでは関は
20x20ま
でを考えているようです。『 まとめ』
「奇偶方数」については「和算の研究」3巻
目次10(1956年)の中で加藤平左工門氏が論及 し ているように、何人もの先達によつて研究されています。すべての文献を網羅することは不可能で すが、しかしいろいろな人々が研究されているとい うこと、そしてまた現在もいろいろな仕方で研 究されています。
話は変わりますが、日本の明治維新後の文明開化が成功 した一因は、学問を伝承することが重要だ と考える風土と、日本に和算家が江戸時代よりたくさん存在 し、「奇偶方数」の序にもありますよ うに古代中国よりの儒学思想の中にも和算が組み込まれ、発達 したことと関係すると考えます。
(有益の本の序に書いてあるように
我々の思索の源流はと問われた時のために、毛利→今村の流 れは出さずに、中国の五行の
,易
のことが述べられていま丸)
│,よ
幕府禁制の西洋キリス ト教の影響化でない数学として確立される為、また勘定方・普請役人、藩 校、私塾等において吉田光由、関孝和
等の考えを全国に広めた和算 (算額を含め)の伝統が、勿 論18世紀後半の会田安明を祖 とする最上流の流れ も東北を中心に受け継がれたように≪弟子の ひとり二本松藩の渡辺一等
)、
日本には学問を大事にする心が存在 したからこそ、江戸、明治、現 在へと継続する書籍の蓄積 と学問伝承を大事にする風土が出来上がったと考えます。特に加賀藩(前田家)等にはその和算の歴史が綿々と築かれていると思つています。しかし幕末から明治に活 躍 した物理学者の山川健治郎氏は会津藩の日新館での勉学では算法についてほとんど学んでいな い様です。ですから安藤有益の和算は200数十年後の会津には書物 としては存在 していました が、藩校等で伝統的に継承されていたとは考えられません。蛇足ですが山川の弟子のひとり木相駿 吉 (恥出 で最初の博士拾得者
)、
妹の山川捨松 (津田梅子 と同時に留り 、九州帝国大学創設 等明治初期の教育界では重要な人物の一人だと考えます。
また加賀藩の武士の家計簿にみられる様に、幕末時代には、加賀藩士
関口開 から→ 高木貞治ヘ と続 く流れが 俄 田引水ですが)存在すると考えま丸 (高木先生へ と続く近代の話は高瀬正仁氏 の著作を参照してください。
)
最後に
31×
31を 作成 したことが、安藤有益について論究した他の数学史の解釈よりも筆者が少 し 進歩、発展させた点ではないかと考えます。引用文献等 (先行研究を含め)本文中に述べさせていただきましたので省略させていただきます。
ハ L
付録
I
7× 7方陣 の主要 な移 動 を矢 印で提 示 しました。
(奇
偶 方 数 より引用 したものです 。)
にする安藤の方法で
43 36 29 22
15 8 144 2
45
346 4
47 5
48
649 42 35 28
21 147
571
540 509 478 447 416 385
572 386
573 387
574 388
575 389
576 390
577 546 515 484 453 423
391)夕1
31X31
魔 方 陣 (by N KamVa)付 録 Ⅱ江戸時代の安藤有益の「奇偶方数」の考えを拡張したものです。
彼は
30X30迄
を公表しています。400 651 434 403
341310
●714
′776
30フ038 869 9al
932 47 188 464
う0412 341 309 684 740 777 803 839 870 495 30
902 46S り ,n
● ●0587 550 403 432
401303
●0716 747 773 309 340 00
0900 109
0524 402 431 400
●●030 655 000 717 740 779 810 490 90
935 う
0′647 535
^Z461 430 399 368 687 718 749 780 140 120
^0
874
04̀812 171
,,1316 553 522 801 400 429 308 657 688 750 491 150
^0 ^
0
344 31( 317
58:521 450 428 306 627 658 689 720
^0100 149
930 907 345 814
,■1 34C551 453 427 597 628 659 690 489 210 148 117 24
903 877 346 016 734
^0 ´0 701457 426 020 600 204 240 209 178 14, 54
^022 84
34,316 754
541453 425 568 330 487 270 239 200 177 909 940
21 145
′ ^0 54:341
●t0424 600 000 269 238 207 817 848 910 941
144
206
3846" 454 539 570 485 300
00349 380 9:1 942
31
14(20ξ 267
602450
5411038 360 788 8∞
88149
204028
00C572
8510 483 390 359 634 665
00 00944
2∝
327 389
542 40C450 420 573 004 697 728 790
321380
31 91
^Z
241
^Z
001
^0
061
091 481 541 571 601 731
841 90140 100 201 037
5449 482 410 075 000 637 668 699 730 792 823
00947
1
^0
2∝ 00,
576 452 543 386 355 638 700
'32
793 355 886 948
1
7:
10(137 211
00̀ 541 ′509 422 434 354 323 292 701
^0763 353 387
1
71
1■137 733 702
64C477 547 443 503 420 092 005
●4291 260 229 764
^Z11
7: lr14
76: 734703 610 445
"7
0
● ●
0 0
0
290
●0166 920
1
7̀ 766
704642
58C444 500
^0004 363 332 258 227 198 134 103 92,
00
829 098 643 381
3505
00364
う0 h0438
^Z195 104 130 102
700 6 380
′′504
●0 00304
^0 フ29
0●101
^0
76C ,3̀
707 645 348 410
1193 503 534 505 596
^0304
′100
894 332 770 708 046 347 378 409
4411502 504
∞5243 99
6:957 322
302740 709 673
^0346 377 408 439 5111
∞6 244182
492 0●950
0●39C 469 834 803 772
741,10 314 345 407
^051X
024307 245
00 152853
4959 928 884 866 835 804 742
003 406 561 240
00122
060 40, 898 867 830 805 774
′281
′405 430 520
50C591
022247
00 164 2946 900 899 868 837 306 775 744 249 200 342
1528
5∝021 652
03,248
00 15,124 496
)ゝ
'
安藤有益と関孝和 の9× 9方 陣について 付録
1lI
安藤 有益 の9X9方陣
関孝和の
9×
9方陣5 10 19
54
8136 55 64 45
74 38 20 53 71 35 56
14 875 66 23 30 61 48 43
167
6 一b
58 40 51 32 24
6776
9 17
25 33
4149
57 6573
4 13
60 50
3142 22 69 78
79
70 39 52
2134 59
12 380 68 62 29 47 26 44
237 72 63 28 1 46
27 1877
16 15 14 13 75 76
77 81
279 28 27 26 61 62 65
183
78 63 36 35 51 53 30
194
74 60 50 40 45 38 32 22
89
23 33 39
4143 49 59 73
10
24 34 44 37 42 48 58 72
25 52 47
3129 46 57 71
12