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セルロース分解に関わる 酵素の分子メカニズムの解析

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Academic year: 2021

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 自然界には様々な植物が存在しますが、ほとんどすべ ての植物において細胞壁に最も多く含まれるのが「セル ロース」です。セルロースは、分子を何本かより合わせ て自然界でもっとも強靱とされるセルロースナノファイ バーを形成しています。

 私が主な研究対象としているのは、植物細胞壁を炭素 源として生きているきのこやカビです。きのこやカビが 持つ非常に強力な菌体外の消化酵素系をうまく使いこな すことができれば、植物細胞壁を繊維としてだけでなく、

様々な物質に変換して利用できるのではないかというの が、研究の基本概念です。

 私は、強靱なセルロース分子を効率よく分解することが できるセルラーゼ(図1)の分子メカニズムの解明に魅力 を感じ、はじめは生化学的視点から、最近は生物物理学的 視点からその機構を探ってきました。生化学的解析では、

セルロースの表面で働く酵素の密度が高くなるほど反応効 率が悪くなることを見出し、「酵素の表面密度」という概念 を取り入れました1、2。高速原子間力顕微鏡(HS-AFM)を 用いたセルラーゼの1分子解析にも成功し3、酵素の密度が 高くなると反応速度が遅くなるという生化学的な現象が、

「酵素の渋滞」によって説明できることを発見しました(図 2)4。さらに、酵素の進む速度と分解の関係5や、セルロー スとよく似た構造をもつキチンの分解酵素であるキチナー ゼの観察にも成功しました6。このような解析から、セルロー スなどの不溶性の基質を分解する酵素は、道路を走る自動 車と同じように、反応速度だけを速くしても分解は効率化 できず、むしろ基質の表面積や酵素の大きさに合わせて適 切な分子の流れをつくることが重要であることが明らかに なってきました。

 上に示した結果から、世界中のバイオマス研究者が「い かに酵素の渋滞を解消するか」「いかに渋滞しない酵素 を開発するか」という考え方でセルラーゼの研究を進め るようになりました。私自身は、引き続きセルラーゼの

渋滞が起こるメカニズムの解明に力を注ぐとともに、き のこやカビがどうやって植物細胞壁を分解してエネル ギーを獲得しているのかを明らかにしていこうと考えて います。植物がどのようにして植物細胞壁をつくり、微 生物はどのようにしてそれらを分解するのか、そのメカ ニズムを知ることこそが人類が循環型の社会を構築する ための鍵になると信じています。

参考文献1.Igarashi,K.,etal.

FEBSJ.

273:2869-2878(2006)

2.Igarashi,K.,etal.

FEBSJ.

274:1785-1792(2007)

3.Igarashi,K.,etal.

J.Biol.Chem.

284:36186-36190(2009)

4.Igarashi,K.,Uchihashi,T.,etal.

Science

333:1279-1282(2011)

5.Nakamura,A.,etal.

J.Amer.Chem.Soc.

136:4584-4592(2014)

6.Igarashi,K.,Uchihashi,T.,etal.

NatureCommun.

5:3975(2014)

研究の背景

研究の成果

今後の展望

セルロース分解に関わる

酵素の分子メカニズムの解析

東京大学 大学院農学生命科学研究科 准教授

五十嵐 圭日子

〔お問い合わせ先〕 TEL:03-5841-5258 E-MAIL:[email protected]

関連する科研費

2007-2008年度 若手研究(A)「糖酸化酵素を 用いたセルラーゼ活性のリアルタイムモニタリング」

2009-2010年度 若手研究(A)「高速原子間力 顕微鏡を用いた固液界面におけるセルラーゼ分子の 可視化」

2012-2014年度 基盤研究(B)「未利用バイオ マスの完全酵素糖化を目指したβーグリカナーゼ新 規アッセイ法の開発」

2012-2016年度 新学術領域研究・研究領域提 案型「植物細胞壁成分の合成酵素および分解酵素を 用いた細胞外情報処理空間の動的可視化」

図1 セルロース表面で反応を行うセルラーゼの立体構造

 典型的なセルラーゼはセルロース結合性ドメインと化学反応を行う触

媒ドメインからなる。 図2 高速原子間力顕微鏡で観察されたセルラーゼ分子の渋滞(上)と

渋滞が起こる様子を再現した模式図(下)

生物系 

Biological Sciences

科研費NEWS 2016年度 VOL.3■15

最近の研究成果トピックス

科研費NEWS 2016年度 VOL.3 PB

最近の研究成果トピックス

参照

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