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文化評価の構造と文化の階層性

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文化評価の構造と文化の階層性

著者 橋本 健二

雑誌名 静岡大学教養部研究報告. 人文・社会科学篇

巻 24

号 2

ページ A151‑A166 発行年 1989‑03‑10

出版者 静岡大学教養部

URL http://doi.org/10.14945/00008515

(2)

文化評価の構造と文化の階層性

橋本 健二

Structure of rank ordering of cultural activities       and

        stratification of culture

Kenji HASHIMOTO

1.文化と社会構造

 文化と社会構造の関連の問題は,社会学における古くて新しい問題のひと つであるn。多くの論者たちが,文化は社会構造に規定され,あるいは社会 構造の一一部を構成していると考え,また,社会構造を構成する諸階級,諸集

団はそれぞれ特有の文化を持っていると考えてきた。

 文化と社会構造が密接に結びついていると考えた古典的な論者は,マルク スとウェーバーである。

 マルクスは「文化」という言い方はしていないが,上部構造の一一部である

「社会的意識諸形態」が下部構造に規定されるという表現(Marx[1859 = 1956:13])で文化と社会構造の関連を指摘している。マルクスがそれぞれの 階級が他と区別される特有の文化を持つと考えていたかどうかは定かではな い。そのような考えをうかがわせる箇所はあるが2>,それは支配階級につい て言及したものであり,従属的な諸階級に特有な文化についてのまとまった 言及は見当たらない。むしろ,従属的な階級濃労働者階級と文化についての 彼の書及は,文化の作用を通じて労働者階級が資本主義的生産様式の要求を 自明のものとみなすようになるという,資本主義社会の構造の維持に対する 文化の機能に関するものであった3)。マルクス主義の立場からの文化への関 心は後にグラムシやフランクフルト学派に受け継がれたが,それらの議論の 多くはこうした文化の機能を扱うものであった4)。

 これに対して,文化的な要因によって「身分集団」を定義したのはウェー バーとその継承者たちである。ウェーバーは身分集団を定義する身分的状況

151

(3)

として生活様式と教育,門地・職業上の威信を挙げ,身分はその中でも第一 次的には「身分的生活様式」によって成立すると考えた(Weber[1947 = 1967:122−−123])。この生活様式という概念は文化という概念と多くを共有

しているが,この観点を継承して,コリンズはより明確に身分集団を定義し ている。彼によると,身分集団とは共通の文化,すなわち身分文化を共有す る結合集団であり,これが社会の基礎的な単位を構成するのである(Collins

[1971 :1980:110−一一一111])。

 しかし,社会諸階層が他と区別される特有の文化を持つというこうした見 解に対しては,1960年代以降多くの比判がなされてきた。たとえば,ベルは 過去に存在していた多くの社会とは異なり,現代社会では文化と社会構造が 徹底的に分離していると主張する。大衆的な高等教育の普及や任意所得の増 大により,今日では社会階層と文化的スタイルには関連性がなくなっている というのである(Be11[1976=1976:82−88])。同様のことは以後,多くの論 者が指摘してきた。最近の例では,村上[1985]が挙げられる。彼によると,

戦後の経済成長の中で生活様式は耐久消費財の普及にともなって著しく均質 化し,かつて存在した階層による生活様式の差はほとんど消滅した。それと ともに教育水準の上昇,マス・カルチュアの影響力の増大がおこり,文化的 な次元での階層化は弱体化したというのである(村上[1985:185−187])。

 しかし,近年になって新たな観点から,i親しんでいる文化や消費内容に階 層差があること,そしてこれらの差異が特定の社会的機能を果たしているこ とを指摘する研究が続出してきた。その代表的論者がボードリヤール,ダグ ラス,ブルデューである。

 ボードリヤールは,多くの人々が同一一の財を手にし得るようになったこと によって社会が均質化するという主張を否定する。彼によると,こうした「抽 象的な同質性」を前提としてこそ,真の差別のシステムが機能するのである。

消費はひとつの階級的な制度である。人々は自己の集団への所属を示すため に,また,より地位の高い集団を目指すために,自己を他者と区別する記号 として財を用いる。そして彼は,文化は,そして消費は,諸個人の差異のシ ステムに組み込み,そのことを通じて社会的矛盾を解決する総合と規制のシ ステムなのであると言う(Baudrillard[1970 =1979 :64−68,122]〉。財の持 つ「意味創出機能」という表現で同様の議論をするのはダグラスである。彼 女によると,消費の本質的機能は意味を表示することにある。消費される財 には社会的に合意されたランクづけがあり,これがさまざ象な差別を実行可 能なものにする。消費によって,人や出来事の分類にかかわる判断が可視的

(4)

なものとなる。そして彼女は,「消費規模」という概念を用いて家計支出調査 のデータを検討し,階層間の消費パターンの差異の構造を明らかにしている

(Douglas&Isherwood[1979 ・1984])。

 他方,ブルデューはいくつかの調査結果の検討を通じて,人々の文化的な

好みや親しんでいる文化的活動の内容には大きな階層差があることを指摘

し,その上で理論的な議論を展開する。諸階級の成員は異なる文化を身につ けているが,諸文化の間には優劣の評価が存在し,支配的な階級の文化は高 く評価され,従属的な階級の文化は低く評価されている。こうした文化的な 差異は家庭内で世代から世代へと伝達される。そして身につけている文化の 優劣は教育制度の作用を通じて学歴の差異へと変換され,こうして支配的な 階級の出身者は支配的な階級に,従属的な階級の出身者は従属的な階級に所 属するようになる傾向が生じる。さらに彼は,諸階級のもつ文化への優劣の 評価は階級間の格差の正統化の基盤になっていると主張する。従属的な階級 の文化を否定することは,支配的な階級の優越性を承認することにつながる のである(Bourdieu[1977,1979,1984] , Bourdieu&Passeron[1973])5)。

2.文化評価と文化の階層性

 文化的な差異と社会的な差異との関係に関する以上のような議論の理論的 な意義を明確にするため,ここで文価評価,文化の階層性という2つの概念 を導入しよう。

 われわれの社会には,さまざまの質的な差異をもった諸文化が存在する。

これらの諸文化の間には社会的に合意された一一定の価値序列が形成されてお り,諸文化のあるものは高く,あるものは低く評価されるようになる。こう した諸文化への評価を文化評価と呼ぶ。

 文化評価の違いをもたらす主要な要因は,諸文化を担う社会階層の違いで あると考えられる。社会階層は一般に,序列の関係を持っている。ここで,

序列上の位置の高い社会階層を上層階層,低い社会階層を下層階層と呼ぶこ とにしよう。諸文化はしばしば特定の社会階層と結びつき,これを担い手と するようになる。このとき,諸文化への評価はその担い手である社会階層の 序列関係から自由ではありえない。第一に,社会諸階層の序列が,直接にこ れら社会諸階層の持つ文化への評価の序列へと読みかえられることがありう る。ある文化はそれを担うのが上層階層であるために高く評価され,他の文 化はそれを担うのが下層階層であるために低く評価されるのである。第二に,

Z53

(5)

社会諸階層の持つ文化への評価は,彼らが自らの文化への評価を高めるため に動員できる資源の量によって決定されうる。社会階層の序列は,彼らがさ まざまな社会諸制度に影響力を行使する際に動員可能な資源の量と結びつい ている。上層階層は,教育制度をはじめとするさまざまな制度に影響して,

自らの文化を支配的なもの,正統的なものとして確立する。こうして,上層 階層の文化は支配的な文化となる。他の社会諸階層の文化は,それぞれの社 会階層が動員できる資源の量にしたがって,支配的な文化に続く位置を獲得 するω。こうして,社会階層の序列と彼らのもつ文化への評価の序列が対応 するようになる。このような事態を,文化の階層性と呼ぶことにしよう。

 しかしながら,現実の文化評価の違いが生じるメカニズムはさらに複雑で あると考えられる。というのは,すべての文化が特定の社会階層を排他的な 担い手とするわけでなく,多くの文化は複数の社会階層を担い手としている

(先にみたベルの指摘は,この点を強調するものであった)し,また,われ われの社会では常に,従来にはなかった文化が生まれたり,他の社会から流 入したりしているからである。このタうな場合,文化への評価は,次のよう にして決定されると考えられる。第一に,文化の担い手の階層構成がその文 化への評価を決定する。排他的にではないにせよ,上層階層を主要な担い手 としている文化は高く,担い手の中に上層階層の成員を少数しか含んでいな い文化は低く評価されるのである。第二に,支配的な文化との類似性や親近 性が文化評価を決定する。かつては存在しなかった文化も,支配的な文化と の距離によってその評価を決定される。また,この距離の短い文化は上層階 層を担い手として獲得するようになる。文化評価が決定されるメカニズムが このように複雑化すると,諸文化への評価の構造は不連続な序列であるより は,連続的なものとなっていくことになる。

 このようにして成立した文化の階層性は,次のような2つの社会的機能を 持つであろう。第一に,文化の階層性は諸個人の出身階層が学歴や到達階層 に影響する重要な媒介過程となる。出身階層は諸個人が身につける文化の質 を決定する。一方,学校教育は特定の質の文化=支配的な文化を前提として いる。したがって,これと同一の,あるいは親近性の強い文化を身につけた 諸個人は教育達成において有利な立場に立つことになる。さらに,同一一の学 歴水準にある場合でも,諸個人は自らの身につけた文化と親近性の高い文化 を持つ社会階層に所属することを望むであろうし,また,その実現の可能性 も相対的に高くなるであろう。こうして,文化の階層性は諸個人が出身階層 と同一の階層に所属するようになる傾向を強化すると考えられるのである。

(6)

第こ二に,文化の階層性は階層構造とそれにともなう社会的不平等の正統化に 寄与する。評価の高い文化は上層階層への所属と,評価の低い文化は下層階 層への所属と結び付いている。このとき,身につけている文化の評価の高さ は,少なくとも諸個人の表象のなかでは,階層所属の,したがって階層問の 不平等の「原因」として現われる。そして,この文化評価が正統なものとし て受け入れられる限りにおいて,その「結果」である階層間の不平等が正統 なものとして受け入れられることになるのである7)。

 以上からわれわれは,先のボードリヤールらの主張を次のように定式化す ることができる。

 第一に,社会諸階層間には特定の序列が存在する(社会階層間の序列の存 在)。この序列はそれぞれの社会階層の持つ物的・社会的資源の量にもとつく ものであるが,同時にこれに対応する,社会的に共有された主観的な評価が 存在する。第二に,諸文化には評価の序列が存在する(文化評価の存在)。こ

の評価はさまざまな文化的活動への評価として測定できる。この評価は社会 的に共有されている。第三に,社会諸階層の序列と諸文化の評価の序列には 対応関係が存在する(文化の階層性の存在)♂上層階層の成員は評価の高い文 化的活動に親しむことが多く,下層階層の成員は評価の低い文化的活動に親 しむことが多い。これは、担い手に上層階層の成員を多く含む文化ほど高く 評価されることの結果でもある。第四にこうした対応関係が存在することは,

特定の社会的結果を生み出す(文化の階層性の社会的機能)。身につけている 文化の評価の高低は諸個人の階層所属の決定要因に,とくに出身階層を到達 階層に媒介する要因になる。また,こうした序列の対応の存在は階層構造の 正統化という結果をもたらす。

 次節以降で,われわれはこれらの命題を実証的に検討することにする。た だし,第一の命題については,職業威信やその妥当性に関する先行研究の知 見を前提する。第四の命題については,データの制約からここでは検討でき ない。むしろ,今回のわれわれの目的は,第二,第三の命題を検証し,その ことを通じて第四の命題を検証するために必要な道具だてを準備することに

ある。

 検討の材料となるデ… −tタは,質問紙調査によって得られたものである。対 象は,東京都内および周辺の17校の四年制大学の学生。対象大学の選定にあ たっては,設置者,学部構成,入試難易度その他の大学特性を考慮した。調

査は1987年5−6月に,原則として授業時間を利用した集合面接法によって

実施した。有効サンプルは1367である8)。回答者の主な属性を図表1に示す。

155

(7)

 大学生をサンプルにすることが,分析結果の信頼性に著しい影響を与える 危険があるということは明らかである。分析結果は大学生にのみ当てはまる ことかもしれず,どこまで一般化できるかは不明である。特に,文化の階層 性の存在に関する分析では,大学生という集団がその知的・文化的能力によっ て各社会階層から不均等に選抜されてきた存在であることが大きく結果に影 響するであろう。この点についてはそれぞれの分析の中で留意していくこと

にする。

3.文化評価の存在

(1)文化評価スコアの算出

 文化評価が存在すること,そして,それがどのような構造を持っているか を明らかにするため,調査では,さまざまな分野にまたがる17種類の文化的 活動を例示し,それぞれに対する評価を,「上最である」「やや上品である」

「どちらともいえない」「あまり上品でない」「上品でない」の5段階で尋ね るという質問項目を設定した。この「上品」というワーディングについては 問題がないわけではない。上品かどうか,というのは文化評価のひとつの側 面を示すに過ぎず,文化評価の全体を示すものではないとも考えられるから

である。この点,可能ならば1975年のSSM調査の職業評価に関する質問の

ように,何の限定もつけずに「高い」「低い」という評定を求めた方が望濠し かったかもしれない。しかし,職業の場合とは異なり,文化的活動の場合に は「高い」「低い」という言い方が社会的に合意されているとは考えられない。

したがって,いずれにせよ何らかの表現で評価の基準を設定せざる得ない。

検討のすえ落ちついたのが,この「上品」という表現だったのである。

 質問への回答から,それぞれの文化的活動についての文化評価をスコア化 する。スコア化には,「上品である」に100点,rやや上晶である」に75点,

「どちらともいえない」に50点,「あまり上品でない」に25点,「上品でな い」に0点を与えて平均するという方法をとった。その結果を示したのが図 表2である。

 文化評価スコアの平均値は54.2,標準偏差は20・3であった。スコアの高い のはクラシック,美術館・展覧会,ピアノ,短歌・俳句といった,古典芸術 にかかわる文化的活動であり,これに中間的な芸術である演劇や,フランス 料理,活字文化にかかわる活動などが続く。逆に低いのはパチンコ・マージャ ン,写真雑誌,スポーツ新聞といった,大衆娯楽や大衆マスコミにかかわる

(8)

図表1 対象者の主な属性 学年

性別

年年年年

1←り49﹂4

男女

4.5%

13.0

60.4 22.1

57.6%

41.8

学部  文系  70.3%

    理系  29.5%

出身地

父親職業

大都市周辺 63.9%

(東京・神奈川・埼玉・千  葉・大阪・京都・兵庫)

地     方  32.4%

專管事 門理務 職職職

販売・サービス

技農

林 漁

能業

18.4%

46.5 7.3 9.7

11.8

1.8

図表2 文化評価ス識アー覧表

文化評価スコア 標準偏差

クラシック音楽のコンサートへ行く 82.8

21.1

美術館や美術の展覧会へ行く 80.0

19.8

ピアノを弾く 75.4

20.6

短歌・俳句を作る 72.9 20.6

演劇を見に行く 68.2

20.9

フランス料理の店で食事をする ・ 67.8

23.7

芸術や歴史にかんする本を読む 65.1

18.8

総合雑誌(世界・中央公論など)を読む 58.8

18.6

手芸や木工・模型作りなどをする 56.3

16.2

映画を見に行く 55.1

15.9

テニスをする 51.6

17.0

若手作家の小説を読む 50.5

15.4

テレビの歌謡番組を見る 38.9

17.1

カラオケで歌う 28.4

21.0

スポーツ薪聞を読む 28.0 20.7

写真雑誌(FOCUS・FRIDAYなど)を読む 21.2 20.9 パチンコ・マージャンをする 20.9

20.8

Z57

(9)

活動となっている。

 各回答者の評定には,当然バラツキがある。標準偏差は約15点から24点 の間にある。特に標準偏差の大きいのは,「フランス料理」であるが,これは

「上品である」から「どちらともいえない」にまでほぼ均等に回答が分布し ていることによるものである。ついで大きいのは,「クラシック音楽」「カラ オケ」「スポーツ新聞」r写真雑誌」「パチンコeマージャン」などである。こ れらは,回答者の多くが「上品である」もしくは「上品でない」と評定した

ものの,かなりの回答者が「どちらともいえない」にまで分布していること によるものである。

② 文化評価スコアの信頼性

 次に,こうして算出した文化評価スコアが十分な信頼性を持っているかを 検討することにしよう。

 図表3は,例示した17種類の文化的活動のすべての組み合わせについて,

それぞれの文化評価スコアの大小関係に反しない評価をした回答者,すなわ ち文化評価スコアの大きいものをよ.り「上品」と,あるいは少なくとも同じ と評価した回答者の比率を百分率で示したものである。文化評価スコアが近 接しているものどうしでは,文化評価スコアの大小関係に反する回答の比率 が増大するが,それでもいくつかの例外を除けば2割以下である。文化評価 スコアの順位の差が5を超えると,すべての組み合わせで文化評価スコアの 大小関係に反しない回答が9割を超える。以上からみると,文化評価の序列

は回答者の間でかなりの程度に一致していると言ってよい。

 次に,文化評価スコアが回答者の属性によって影響されているかどうかを 検討することにしよう。図表4は,回答者の属性ごとに夷化評価スコアを算 出し,その平均値と標準偏差,それに全回答者から算出した文化評価スコア

(図表2)との相関係数を示したものである。

 相関係数はほとんどが0.99を超えており,文化評価に回答者の属性はほと んど影響していないことがわかる。唯一の例外は父親の職業が農業であるも のだが,これはサンプル数が24人ときわめて少ない。平均値には各属性でほ とんど差がみられない。標準偏差をみると,性別による違いがかなり大きい ことがわかる。女子は男子に比べてさまざまな文化的活動をより強く評価づ ける傾向があるのである。たとえば,「クラシック音楽のコンサートへ行く」

のスコアは男子78.9に対して女子では88.2,「パチンコやマージャンをす る」のスコアは男Si 23.8に対して女子では16.8である。しかし,両者の文 化評価の序列にはほとんど違いがない(順位相関0.9902)。

(10)

図表3 文化評価ス:1アと回答者の評定の一致度

1 2 3 4 5 6 7 8 9 1⇔ 11 12 13

M

15 16

  クラシック音楽のコンサー1  トへ行く

2美徹官や美術の展覧会へ行く 89.7

3ビアノを弾く 91.4 88.8 4短歌・俳句を1乍る 89.6 87.7 79.8

5演劇を見に行く 94.3 96.7 86.5 8(L8

  フランス料理の艦で食事を6  する

92.2 89.1 83.6 79.3 73.0

  芸術や歴史にかんする本を7  読む

94.5 96.0 89.4 89.7 82.2 77.6

  藩翁命斜匿志 (軽妻界・中央公露命8  など)を読む

95.4 96.8 93.9 94.3 88.5 85.5 9壌.6

  手芸や木工。模型作1}など9  をする

96.6 97.8 95.6 97.4 9L7 86.9 91.9 83.5 1〔}映画を発に行く 97.3 99.0 96.6 94.3 97.0 89.6 92.8 86.4 84.9

11テエスをする 97.7 97.9 97.4 94.8 9壌.4 95.8 92.8 89.1 87.7 88.1 12若墾作1家のノお震兇を壽蓬iむ 97.9 98.9 97.9 97.2 96.0 92.4 92.7 93.5 90.2 91.1 85.7

13テレビの歌謡番組を児る 99.2 99.6 99.6 98.7 98.7 97.o 98.8 97.4 97.0 98.0 95.1 94.9

貝カラオケで歌う 98.8 99.4 98.9 98.6 98.3 97.6 98.逢 97.3 97.6 98.◎ 96.0 96.3 92.6

15スポーツ薪闇を読む 98.8 99.3 99.2 99.1 99.o 98.1 99.1 98.7 98.3 98.4 97.1 9ア.6 90.1 76.4

  写真維誌 (FOCUS・16  FRIDAYなど)を読む

99.6 99.7 99.7 99.6 99.6 98.6 99護 99.4 98.5 99.o 98.3 98.7 92.8 83.9 86.7 17パチンコ・マージャンをする 98.8 99.3 99.G 99.0 98.8 97.4 98.8 9$.2 98.3 98.2 97.3 9ア.2 9建,7 87.6 87.5 76.⑪

図表4 國答者の属性ごとに算出した文化評価スコアの性質

平  均 標準偏差 相関係数

全   体

54.2 20.3

1.0000

父親職業

專     門

54.5 20.6

0.9989

管    理 54.1

2G.7 0.9998

事    務 53.6 18.7

0.9975

販売・サービス

54.8

20.7 0.9973

技    能 54.6 20.0

0.9986

農    業 55.5 18.8

0.9685

父親学歴

高  学  歴

54.4

20.8 0.9997

中  学  歴

54.0 19.8

0.9995 低  学  歴

54.5 20.2

0.9955

母親学歴

高  学  歴

54.5 21.2

0.9991

中  学  歴

53.9 20.2

0.9999 低  学  歴

552 20.2

0.9974

出 身 地

大都市 部

『54.3 20.6 0.9999

地     方

54.4 202

0.9996

性   別 男     子

532 18.8

0.9990

女     子 55.6・

22.6

0.9987

159

(11)

 回答者が大学生のみという限界はあるが,以上からみて,社会的に合意さ れた文化評価が存在するという命題は検証されたといってよいだろう。

4.文化の階層性の存在

 文化の階層性について検討するという目的からすると,調査対象が大学生 のみであるということはほとんど致命的であるとさえ言えるかもしれない。

大学生のみの分析結果から文化の階層性一般について論じることは難しい。

しかも、大学生というサンプル自体の特質がさらに問題を複雑にする。

 大学生は明確な自分自身の階層的地位を持たない。したがって,分析は出 身階層を変数として行うことにならざるを得ない。しかし,こうして得た分 析結果の解釈には注意が必要である。大学生は入学時に,あるいはそれ以前 に,特定の基準にしたがって選抜されている。この選抜の基準は諸個人の身 につけている文化の質と深く関連している。さきに触れたように,学校で教 えられる文化とはその社会において正統性を認められた文化,支配的な文化 である。学校教育は,そして大学は,この文化の習得の程度によって諸個人 を選抜する。出身階層にもとつく文化の階層性が存在している場合,ここで は下層階層の出身者は上層階層以上に厳しく選抜され,出身階層にもかかわ らず支配的な文化を相対的に多く身に付けた者のみが生き残ることになるだ ろう。したがって,仮に選抜前の諸個人の間に出身階層にもとつく文化の階 層性が存在していたとしても,今回の分析では文化の階層性は明確に現れて こない可能性があるし,そうでなくても,文化の階層性の全体像は決して描 けないのである。しかし,逆に言えぼ,今回の分析で大学生の間に出身階層 にもとつく文化の階層性の存在が認められたとすれぼ,上のような選抜の存 在にもかかわらず残存するほどの強い文化の階層性が存在するということの 証拠になる。文化の階層性は存在するか,という今回の問題設定からすれば,

これで十分であるとも言えるだろう。

 以上のような点を念頭に置きながら,分析に入っていくことにしよう。検 証すべき作業命題は,文化的活動の内容に出身階層による差が認められ,出 身階層の高い者ほど評価の高い文化的活動に親しんでいること,これと表裏 の関係にあるが,親しんでいる者の階層構成が高い文化的活動ほど評価が高 いことの2つである。分析の基礎となるのは,回答者それぞれの文化的活動 の内容と,これを図表2の文化評価スコアにもとついてスコア化した個人別 文化スコアである。出身階層の指標としては暫定的に父親の職業を用いるこ

(12)

図表5 父親の職業と文化的活動の内容

行く クラシツ Nのコン Tートに

美術館や

?pの展 莱?ノ行

映画を見

ノいく

パチンコ

キる

や マー

Wャンを 作りなど する 手芸や木 H・模型

奏する

楽器を演

読む 芸術や歴 jにかん

キる本を 央公論なヌ)

総台雑誌 i世界中

@ を読 スポーツ V聞を読

専    門 8.4 33.9 18.3 49.8 38.1 52.4 U.9 23.8 1L5 36.5 25.9 3L9 24讃 47.2 52 35.1 13.5 38.5 管    理 6.0 28.3 17.8 45.4 37.3 55.◎ 1L8 24.4 10.1 33.9 22.4 32.1 17.5 54.4 5.o 34.8 17.8 36.5

事    務 6.0 2LO 16.2 43.嘆 35.0 56.O 10.0 28.0 4.o 3LO 19.2 26.3 14.⑪ 53.0 4.0 32.G 17.2 36.4 販売・サービス 1.5 17.6 8.3 ⑯2 36.4 49.2 13.o 27.5 lL4 31.1 17.4 22.O 12.1 5⑪.o 3.8 30.3 27.3 35.6 技    能 3.7 17.4 8.1 44.7 26.1 6L5 18.o 23.0 7.5 28.◎ 18.e 28.6 1L8 52.8 5.6 25.5 242 41.6 農    業 42 16.7 4.2 45.8 20.8 62.5 16.7 292 8.3 20.8 42 37.5 12.5 66.7 4.2 20.8 25.◎ 45.8

 X左側の数字はfかなりある」,右側の数字は「すこしある」と答えた回答者の比率を示す。

図蓑6 父親の職業と個人別文化スmア 平  均 標準偏差 専     門 56.91

9.73

管     理 55.52 10.54 事     務 54.60 11.38 販売・サービス 52.33

1125 技    能

51.80

1130 農    業

51.70

8.84

相関比慧0.162

図表7 担い手の階層構成と文化評価スコア

「かなりある」と 答えた回答者のう

ち、父親が専門職 文化評価スコア または管理職であ

る者の比率

クラシック音楽のコンサートに行く

79.8

82.8

美術館や美術の展覧会に行く

79.5

80.O

映画を見にいく

71.9 55.1

パチンコやマージャンをする 63.7 20.9

手芸や木工・模型作りなどをする

73.8 56.3

芸術や歴史にかんする本を読む

76.9 65.1

総合雑誌を読む

70.3 58.8

スポーツ新聞を読む

60.0・ 28.0

Z61

(13)

とにする。

 図表5は,9種類の文化的活動について,最近一年間にしたことがあると と答えた回答者の比率を父親の職業別に見たものである。一見してわかるよ うに,文化的活動の内容の差はかなり大きい。なかでも差が大きいのは「ク ラシック音楽」「美術館・展覧会」などで,これらはいずれもホワイトカラー,

とくに専門職の父親を持つ者に多くなっている。「芸術や歴史の本」「総合雑 誌」でも,やや弱いものの同様の傾向が認められる。これらはいずれも文化 評価スコアの高い文化的活動である。反対にホワイトカラー以外のほうが多 くなっているのは,「スポーツ新聞」「パチンコ・マージャン」である。これ らは共に,文化評価スコアの低い文化的活動である。以上からみると,文化 的活動の内容は出身階層と強く関連しており,しかも,評価の高い文化的活 動ほどその実行者が出身階層の高い者に,逆に低い文化的活動ほど出身階層 の低い学生に偏る傾向があるということができる。

 図表5に示した9種類の文化的活動のうち,「楽器演奏」を除く8つについ ては文化評価スコアが算出されている。そこで,この8つのうち各回答者が 行っている文化的活動の文化評価スコアを「かなりある」の場合に1.0,「す こしある」の場合に0.5のウエイトを与えて平均することによって,各回答 者の文化的活動の内容をスコア化した。これを個人別文化スコアと呼ぶこと にする。個人別文化スコアは平均値よりやや高いところに最頻値をもつ単峰 型の分布を示す。平均は54.9点,標準偏差は10.7点である。5点ごとにス

コアをカテゴリー化して頻度をみると,50−55点のカテゴリーまでなだらか に増加,55−60点のカテゴリーで急増して最大となり,6e−65点のカテゴ リーはこれとほぼ同数,以後は急激に減少する。図表6は父親の職業別に個 人別文化スコアを集計した結果を示したものである。相関比は0.162と必ず

しも大きいとは言えないが,0.1%水準で有意である。平均値の最も高いのは 専門職の父親を持つ者である。これに管理職,事務職,さらに販売・サービ

ス,技能職と続き,最も低いのは父親の職業が農業の者である。これは職業 威信スコアからみた職業の階層的序列とほぼ一致していると言ってよい。

 次に,それぞれの文化的活動の担い手の階層構成と文化評価スコアの関連 を見ることにしよう。図表7は各文化的活動について,「かなりある」と答え た回答者の中で専門職または管理職の父親を持つ者の比率と文化評価スコア の関係を見たものである。両者の相関係数は0.955と非常に高い。したがっ て,その担い手の階層構成の高い文化ほど高く評価されるという仮説は裏付 けられたとみてよいだろう。

(14)

 それでは,こうした文化の階層性の存在はどの程度意識されているであろ うか。この点を検討するため,今回の調査では代表的な職業6つと文化的活 動5つを例示し,それぞれの職業に従事する人々の中には示したような文化 的活動を行っている人がどの程度いると思うかを,「多い」「あまり多くない」

「少ない」の3段階で尋ねるという項目を設けた。そして,この回答から文 化評価スコアを用いて各職業の文化的評価をスコア化し,これをそれぞれの 職業威信スコアと対比したのが図表8である。もっとも高く評価された医者

と低く評価された小売店主のスコアの差は約23点。この23点という差は,

たとえば「短歌・俳句」と「若手作家の小説」の差に相当し,かなり大きい ものである。職業威信スコアとの相関係数は0.902である。大学生たちは職 業によって文化的活動が異なることをきわめて明確に意識しているのであ

る。

図表8 各職業の文化的評価と職業威信ス1ア

文化評価スコア 職業威信スコア

医      者

64.06

82.7

企業の経営者・役員 57.98 83.5ヱ)

農      業

47.94 45,02)

大企業の中堅社員

45.61 60.03)

工場 の 工 員 4L54

36。24)

小 売 店 主

4⑪.97

48.9

文化評価スコア:「多い」との回答の比率で、各文化活動の文化評価ス         コアを加重平均したもの

職業威信スコア:1)大企業の社長  2)自作農  3》大企業の企画営         業担当社員  4》テレビ組立工、施盤工、パン製造工、

        食品缶詰工、紡績工の平均

例示した文化的活動は次の通り 「クラシックのコンサートや美術館・

 展覧会に行く」(「クラシック」のスコア82,8と「美術館e展覧会」の  スコア80,0を平均して、81.4とした)、「映画を見に行く」、「手芸や木  工・模型作りなどをする」、「芸術や歴史にかんする本を読むj

163

(15)

5。系吉論と課題

 以上の分析の知見を簡単にまとめておこう。第一に,文化的諸活動の間に は共有された評価の構造が存在する。文化的諸活動は,古典文化に関わるも のがもっとも高く位置し,大衆娯楽に関わるものがもっとも低く位置する一 連の序列のなかに位置づけられている。第二に,大学生の問には出身階層に もとつくかなりはっきりとした文化の階層性が存在する。このことは一一般的 に人々の間に明確な文化の階層性が存在することを強く示唆するものであ る。第三に,大学生たちは文化の階層性の存在を明確に意識している。かれ らは人々の親しんでいる文化的活動の内容が職業によって大きく異なり,し かもそれが職業の階層的な序列と対応するものとしてとらえているのであ

る。

 文化の階層性の社会的機能,とくに階層所属の決定にかかわる機能につい ては,今回はデータの制約から十分に検討することができない9)。しかし,

ここで算出された文化評価スコアはこのような機能の実証的な研究に道を開 くものである。文化評価スコアと文化的活動の内容に関する質問とを併用す れば,諸個人やその出身家庭の持つ文化の質を量的に把握することができる。

そして,われわれはこれを各種の計量モデル,たとえば地位達成に関するパ ス・モデルに組み込むことができる。

 文化を計量化し,一種の量としてとらえるのは文化への冒濱と映るかもし れない。しかし,逆に言うとわれわれは文化について語るとき,あまりにも 抽象的で難解な概念,感性的で文学的,「文化的」な言い回しに頼り過ぎてき たのではないだろうか。文化の持つ固有の内的な価値,諸文化の質的な差異 や,評価の高低に関わらぬ固有の内容の豊かさを否定するつもりはない。し かし,文化は現実にわれわれの社会で,明らかに一種の量として存在し,機 能している。そうである以上,文化の社会的機能は計量的な方法によっても 把握されるだろう。そして,私はここでこのような方法の一例を提示しよう

としたのである。

[注]

1)このような言明には,そもそも文化とは何かという言明が前提となるは ずだが,この極度に困難な問題については本稿は検討を避けることにする。

Z64

(16)

2)「ft−一一の諸条件,同一の対立,同一の利害は,ほぼどこにおいてもおな じ習俗(Sitten)を生じせしめないはずはなかった」(Marx[1845−46 ・

 1966:134−−5])

3)「資本主義的生産様式の進行するにしたがって,教育,伝統,習慣によっ て,この生産様式の諸要求を,自明的な自然法則として認める労働者階級 が発達してくるj(Marx[1867= 1967:922−3])

4)Gramsci[1929−−1935コ1964],Marcuse[1937 = 1972,1964 ・1974,

 1969 = 1974]を参照。

5)こうしたブルデューの議論の解説としては,宮島[1987],佐藤[1986]

を参照されたい。

6)Bourdieu&Boltanski[1975 = 1985]を参照。

7)「程度の低い,粗野で下品で現金で卑屈な娯楽を否定することは,……

高尚で洗練され,私欲と無関係の優雅で上品な楽しみに満足する人々の優 越性を承認することである。これが,芸術や文化的消費が,意識的・意図 的であろうとなかろうと,社会的差異を正統化するという社会的機能を果 たすべく仕向けられている理由である」(Bourdieu〔1984:7])

8)この調査は藤田英典,宮島 喬,秋永雄一,志水宏吉と共同で実施した。

本稿はこの4人との共同研究を契機として生まれたものである。このよう な形での発表を快諾下さった各氏に感謝の意を表する。なお,共同研究の 成果は藤田・宮島・秋永・橋本・志水[1987]にまとめられている。

9)階層構造の正統化に関わる文化の階層性の機能については,藤田・宮島・

秋永・橋本・志水[1987]の橋本の担当部分で部分的な実証的検討が行な われているので参照されたい。

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165

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Weber, M.,1947, Typen der H errschaft.:浜島朗訳,1966,権力と支配,

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