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は じ め に

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Academic year: 2021

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は じ め に

 いまから 50 年ほど前となる 1964 年に、東京で第 18 回のオリンピックが開催されました。日本のスポー ツ界に科学が導入されたのはこれが契機とされています。以来、スポーツにおける科学研究は大きく発 展してきました。

 しかしその一方で、現場で日々試行錯誤する選手やコーチにとって直接的に役立つような「実践研究」

は、その発達が取り残されてきた感があります。2020 年に二度目の東京オリンピックを迎えるにあたり、

私たちはこの領域の基盤を固め、かつ発展させることが求められています。

 科学研究では厳密さや普遍性を追求します。一方、実践現場では、厳密さよりも現実的・即時的な解 決を求められ、普遍性よりも個別性の方が重要となります。そしてその答えは、従来型の科学研究だけ からでは導くことができません。

 このような背景をふまえて、2009 年に、本テキストの著者の一人である福永の提唱により、『スポー ツパフォーマンス(SP)研究』が創刊されました。2015 年には、実践研究のできる博士を養成するために、

筑波大学との間で大学院共同学位プログラム、2016 年からは「大学体育スポーツ高度化共同専攻(3 年 制博士課程)」が設置されました。

 ただし課題はまだ多くあります。たとえば、実践研究の論文を書こうとしてもなかなか書けなかった り、ようやく書いても査読者とのやりとりがうまくいかず却下されてしまう、という問題があります。

この要因として、実践研究の定義やあり方が不明確であったり、従来型の科学研究の書き方との違いが 曖昧である、などがあげられます。そこで、実践研究の定義、あり方、書き方を少しでも明確化したい と考えて作成したのが本テキストです。

 従来型の科学研究では、長い伝統の上にその作法が確立しています。これに対して実践研究の場合は、

その考え方に個人差があったり、対象分野によっても違いがあります。そこで本テキストでは、『SP 研究』

の創刊者であり、本共同専攻の設置を先導した元鹿屋体育大学学長の福永、同大学院における実践研究 の授業を担当する教員のうちで、『SP 研究』の編集委員長を務める髙橋、副委員長の金高、山本、そし て日本スポーツパフォーマンス学会の会長を務める前田の 5 名が、「私の考える実践研究のあり方」と いったスタンスで、自由に執筆してみることにしました。

 このテキストで問題の全てが解決するわけではありません。しかし少なくとも、実践研究に対する認 識の共通点や、細部での相違点などが浮き彫りとなるでしょう。それを踏まえることで、これまでより も論文の執筆がしやすくなると同時に、査読者にとっても共通の指針となり、両者の間で起こりがちな 齟齬を少なくすることにも寄与できると思います。

 本テキストに示された考え方をたたき台として、今後さらに論文を蓄積していくことにより、実践研 究のあり方(パラダイム)がより明確になっていくでしょう。また本テキスト自体も、今後も少しずつ 執筆者を増やすなど、徐々に充実させていきたいと考えています。忌憚のないご質問やご意見をお寄せ 頂ければ幸いです。

 平成 29 年3月 吉日

著者一同 

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