浪川 幸彦 July 3, 2007
5 積分
5.2 定積分
ここではリーマンによる定積分の厳密な定義(の仕方の一つ)と,それと不定積分とを関 連づける「微分積分学の基本定理」を学ぶ。すでに知っている定積分の基本性質とともに,
幾つかのより高度な定積分の技法を学ぶ。
5.2.1 定積分の定義と存在
以下本節では断らない限り y =f(x)を閉区間 I = [a, b] ={x∈R; a≤x ≤b} 上で有界 な関数とする。
Definition 5.2.1 (Text p.177f ). 1)区間 I を小区間に細分し,その分点を a = x0 <
x1 < x2 <· · ·< xn=b とする。この分割 ∆ に対し,
Ik= [xk−1, xk], ∆kx=xk−xk−1 (k = 1,2, . . . , n)
とおき,
|∆|= max
1≤k≤n∆kx を分割 ∆ の幅とよぶ。
2)各 Ik から任意に点 ξk を取って作った和
R[∆;{ξk}] =
n
X
k=1
f(ξk)∆kx
を ∆,{ξk} に関するリーマン和という。
3)ある数 A があって,分割の幅を 0 に近づけるとき,分割や点の選び方に拠らずリーマ
1
ン和が A に限りなく近づくとき,正確に言えば,いかなる ε >0 に対しても δ >0 が存在 して |∆| < δ ならば |R[∆;{ξk}]−A| < ε となるとき,関数 f は区間 I 上で(リーマン)
積分可能(または 可積であるという。この値 A を f の I 上の定積分とよび Z b
a
f(x)dx
で表す。
これは一般的な定義であるが,このままでは使いにくいので,リーマン和を上下から挟み 打ちにすることを考える。分割 ∆ に対し,Ik での f の値の上限,下限を各々 Mk.mk と おき,
S[∆] =
n
X
k=1
Mk∆kx, s[∆] =
n
X
k=1
mk∆kx
を作ると,明らかに
s[∆]≤R[∆;{ξk}]≤S[∆]
が成り立つ。
Proposition 5.2.2. 分割すべてを動かすとき,s[∆] には上限 s が,S[∆] には下限 S が 存在する。明らかに s≤S. 前者を f の I 上の下積分,後者を 上積分とよぶ。
Idea of proof. 分割を「細かく」するときにs[∆]は大きくなり(正確には下回らない),S[∆]
は小さくなる(正確には上回らない)。また任意に二つの分割を取るとき,それらよりも「細 かい」分割が必ず存在する。
Theorem 5.2.3 (Darboux). 関数 f が区間 I 上で積分可能であるための必要十分条件 は s=S である。このときその値は定積分に等しい。
Corollary 5.2.4. 関数 f が区間 I 上で積分可能であるための必要十分条件は,任意の ε >0 に対し, P
k(Mk−mk)∆kx < ε をみたす分割 ∆ が存在することである。
Example. I = [0.1]で
f(x) =
( 1 (x∈Q
0 (x /∈Q
と定義すると,任意の分割に対し,S = 1, s= 0 であるから,f は積分可能ではない。
Remark. 別の定義,特にルベーグ積分に拠れば,これは積分可能で,その定積分は0になる。
Theorem 5.2.5. 関数 f が区間 I 上で単調であれば,積分可能である。
Idea of proof. 単調増加としよう。Mk=f(xk), mk =f(xk−1) であるから X
k
(Mk−mk)∆kx≤X
k
(Mk−mk)|∆| =|∆|X
k
(f(xk−fk−1) =|∆|(f(b)−f(a)).
Theorem 5.2.6 (Text p.179). 関数 f が区間 I 上で連続であれば,積分可能である。
Idea of proof. 有界閉区間上の連続関数は「一様連続」であるという Weierstrassの定理に よる。
5.2.2 定積分の基本性質
ここに掲げた基本性質は,前項の定積分の厳密な定義に従って,容易に証明される。それ らの多くは皆さんに既知のものである。
Proposition 5.2.7. 関数 f が区間 I 上で積分可能であれば, I に含まれる任意の閉区 間上で積分可能である。
Proposition 5.2.8 (区間加法性). 関数 f が区間 [a, b], [b, c] (a < b < c) 上で積分可能 であれば, [a, c] 上でも積分可能で
Z c
a
f(x)dx= Z b
a
f(x)dx+ Z c
b
f(x)dx.
Remark. a < b に対し,形式的に Ra
b f(x)dx =−Rb
a f(x)dx と定めれば,上記命題の大小関
係の条件は不要である。
Proposition 5.2.9 (線形性). 関数f, gが区間I 上で積分可能であれば,f±g, αf (α定数), f g も I 上で積分可能で,α, βを定数とするとき
Z b
a
(αf(x) +βg(x))dx=α Z b
a
f(x)dx+β Z b
a
g(x)dx.
Proposition 5.2.10. 関数 f が区間 I 上で積分可能で,かつ m ≤ f(x) ≤ M であるとす る。さらにφ(x) が区間 [m, M] で連続であれば,合成関数φ◦f は I 上で積分可能である。
とくに f が積分可能であれば,|f(x)|,(f(x))p, af(x) などは積分可能である。
Proposition 5.2.11 (単調性). 関数 f, g が I 上で積分可能で,かつf(x)≤g(x)であれば,
Z b
a
f(x)dx≤ Z b
a
g(x)dx.
さらに f, g が連続であれば,等号は f(x)≡g(x) の場合のみ成り立つ。
Corollary 5.2.12. 関数 f が区間 I 上で積分可能で,かつ f(x)≥0 であれば,
Z b
a
f(x)dx≥0.
さらに f が連続であれば,等号は f(x)≡0 の場合のみ成り立つ。
Corollary 5.2.13.
Z b
a
f(x)dx
≤ Z b
a
|f(x)|dx Z b
a
|f(x) +g(x)|dx ≤ Z b
a
|f(x)|dx+ Z b
a
|g(x)|dx
5.2.3 微分積分学の基本定理
関数f は区間I 上で有界かつ積分可能であるとする。I 上の関数
F(x) = Z x
a
f(t)dt (a ≤x ≤b)
を考える。
Theorem 5.2.14. F(x) は区間 I で連続である。
Theorem 5.2.15. さらにf が x=x0 で連続であるとすると,F(x) は x=x0 で微分可能 で F0(x0) =f(x0) である。
Corollary 5.2.16. f が I で連続であれば,F(x) は f の不定積分である。
Theorem 5.2.17. f が I 上で積分可能で,かつそこで不定積分 G(x) を持つとすると,
Z b
a
f(x)dx= [G(x)]ba =G(b)−G(a)
Idea of proof. 任意の分割を考える。G(x) に対し平均値の定理を用いると各小区間において
G(xk)−G(xk−1) =f(ξk)∆kx, xk−1 ≤ξk ≤xk).
よって
G(b)−G(a) =X
k
(G(xk)−G(xk−1) =X
k
f(ξk)∆kx.
分割の幅を 0 に近づければ,右辺は定積分に収束する。
Remark. ここに与えた証明は f の連続性を仮定しておらず,教科書よりも強い命題である。
連続性を仮定すれば,その前の系を用いることで証明は終わっている。
5.2.4 定積分の計算
置換積分や部分積分を用いる定積分の公式をまとめておく。
Proposition 5.2.18 (置換積分). 関数f は区間[a, b]上で連続,かつx=x(u)をuの関数で [α, β]において微分可能かつその微分が連続であり,しかも a≤x(u)≤b, x(α) =a, x(β) =b であるとするとき,
Z b
a
f(x)dx= Z β
α
f(x(u))dx dudu.
Proposition 5.2.19 (部分積分). 関数 u, v は区間 [a, b] 上で微分可能かつその微分が連続 であるとするとき,
Z b
a
uv0dx= [uv]ba− Z b
a
u0vdx
Example 1. [Text p.182 (4.6) - (4.8)] 三角関数の直交性 Example 2. n ≥2のとき,
Z π/2
0
sinnxdx= Z π/2
0
cosnxdx=
( n−1
n · n−3n−2 · · · · · 12 · π2 (n even)
n−1
n · nn−2−3 · · · · · 23 (n odd) Example 3. [Text p.184 (4.10)]
Exercise 6. 次の公式を示せ:
Z 1
−1
(1−x2)ndx= 22n+1(n!)2 (2n+ 1)!
Hint. 上の例3(の m =n の場合)を変形するか,同様にやる。
Exercise 7. Pn(x) をルジャンドル多項式
Pn(x) = 1 2nn!
dn
dxn(x2 −1)n (n = 0,1,2,3, . . .) とするとき,次を示せ:m, nを非負整数とするとき
Z 1
−1
Pm(x)Pn(x)dx= 2
2n+ 1δmn.
ただし δmn = 1 (m=n),0 (m6=n) (Kronecker のデルタ)。
Hint. 直前の練習問題の結果を用いる。
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