別紙
1論 文 審 査 の 要 旨
報告番号 l マ 第 が 号 | 氏 名 l 古谷 亮子
主査 口腔リハビリテーション医学 高 橋 浩 二 教授 論 文 審 査 担 当 者 | 副 査 小 児 成 育 歯 科 学 井 上 美 津 子 教 授 副査 口腔衛生学 弘 中 祥 司 教授
(論文審査の要旨)
学位申請論文「
Relationbetween dentofacial structure and lip pressure examined with a but ton‑pul 1 technique」について,上記の主査
l名,副査
2名が個別に審査を行った.
[目的]口輪筋は日常生活で繰り返し起こる口輪筋の緊張や運動は特に前歯部に力を加え,前歯の位 置や唆合の安定に大きな影響を与えると考えられている.特に口唇と上下前歯の関連性は非常に高 い.矯正歯科臨床において口唇形態や口唇圧を理解することは適正な診断や良好な治療結果ならびに 矯正治療後の後戻りに対する影響からも重要である そこで,本研究ではボタンをモーター式電動ス ライダーにより一定速度で牽引し,デジタル唇圧計にて計測された口唇圧と筋電図による上下口唇の 筋バランス,側面頭部
X線規格写真(以下,セファロ)による顎顔面形態との関連を明らかにするこ とを目的とした
[方法】ボタンプルによる宣告引は従来,手動もしくは滑車などで行っており,牽
51速度を厳密に一定 としていないものが多い そこで,本研究では改良点として牽引速度を一定に設定した装置を用いる とともに,より安定的な計測が可能な計測条件(ボタンサイズ,牽引方向,バネ介在の有無)の検証 を行ったうえで口唇圧を測定した.被験者は,本研究の趣旨を説明後,同意の得られた男性
26名,女 性
37名,計
63名であった測定部位は上下口唇で,ボタンをモーター式電動スライダーにより速度 一定で牽引し,最大口唇圧をデジタル唇圧計にて計測した. また,同時に筋電図にて上下口唇の筋電 図を記録し,セファロの計測項目と検討した ボタンプルより得られた口唇圧とセファロより計測し た硬組織および軟組織を表す項目についてスピアマンの相関係数を用いて行検討を行った.
[結果】ボタンプルにて得られた最大口唇圧は平均
718.Qg(男性
780.0土236.Sg,女性
668.5± 180. 2g)であり,男女聞に有意差が認められた.最大口唇圧と顎顔面形態との関連性においては最大口唇圧と オトガイのくぼみの深さと下顎前歯歯軸傾斜角において正の相関関係が認められ,特に女性で有意な 相闘が認められた.ボタンプル時の上下口唇の機能比率に関しては
1どの年齢群,性別においても上 唇を
lとして下唇は
l〜.I2であった 最大口唇圧と骨格的分類には有意な相関は示さなかった
【結論]ボタンプルによって得られた口唇圧が下顎前歯歯軸傾斜に正の相関関係
1オトガイのくぼみ
深さに正の相関関係が認められた オトガイのくぼみが深いほど下顎前歯は唇側傾斜するとともにボ
タンプルによる最大口唇圧が大きいことから,ボタンプルは他の口唇圧計測
l方法と比べてオトガイ筋
も含め評価している可能性が示唆された.ボタンプルは筋機能訓練の手法だけでなく, 口唇圧を評価
する計測方法としても有用と考えられた
本論文の審査にあたり副査から多くの質問があり,その一部と回答を以下に示す.
弘中委員の質問とそれに対する回答:
I.適切な口唇圧をどのように考えるか。
口唇圧は各個人によって差があり、適切な圧力を規定する事は難しいと考えられる。論文で示 されている数値や基準値は軟組織圧トレーニングを行う上での指標であって、適切な口唇圧は 数値ではなく口唇圧、舌圧、頬圧のバランスだと考えられる。
2
.口裂に対してボタンの大きさは適切であったか。
今回の研究では対象年齢を20
〜
30歳に決めて行った為ため口裂(口角間距離)の年齢的差は考 慮せず男女間で口角間距離が異なった為、ボタンサイズの選択を研究に先立つて行った。 3サイ ズのボタンにて検証し、より安定的に計測が可能なボタンサイズを選択した為、計測使用した直径
25凹のボタンが適切と考えられた。井上委員の質問とそれに対する回答:
L小児期から成人期にかけて(とくに乳歯列期から混合歯列期、永久歯列期にかけて)口唇圧 はどのように変化すると考えられているのか。
小児の口唇圧は正常な摂食機能の獲得に伴い,ほぼ3歳になるまで急激な増加傾向をたどり、そ の後混合歯列期までは緩やかに、 6‑16歳までは著しく増加し、 18‑20歳でほぼ完成するとの報告 がある。今回計測したボタンプルに関する年齢的関係は報告されていないが乳歯列期から混合 歯列期へと身体的発達、言葉の発達、食べ物の変化などと口腔周囲筋群の変化によって計測値 に増加がみられる可能性があると考えられ、今後検討する必要があると考える。
両委員共通の質問とそれに対する回答:
I
.着想の経緯について。
多くの研究はセンサーや歪みゲージなどを用いて計測されているものの測定機器や計測者によ って幅があり計測装置の正確さに関しても不確かなのが現状であった為、今回センサーや歪み ゲージを用いずに筋機能訓練の一つであるボタンプルにて計測を試みたところ計測条件を画ー する事で安定的に計測が可能であると判定し、ボタンプルにて計
i J l J J
を行う事とした。2本研究の今後の展望と臨床応用について。
口唇による圧力は膜下や会話など常的動作で繰り返し圧力がかかっているため、頻度が形態に 影響を及ぼしている可能性も考えられ今後検討が必要であると考えている。また、口唇圧のみ でなく舌圧の計測を行うとともに口唇圧と舌圧とのバランスについても研究していきたいと考 えている。
これらの試問に対する回答は,適切かつ明解であった.また,高橋委員は主査の立場から,両 副査の質問に対する回答の妥当性を確認した.
以上の審査結果から,本論文を博士(歯学)の学位授与に値するものと判定した