■ 短 報
キーワード:看護倫理、新人看護職員研修、看護教育
Key words
:Nursing ethics, New graduate nurses, Nursing educatio
本研究は、新人看護職員研修における看護倫理教育に関する現状を把握し、課題を明らかにし、到達目標を 達成するための具体的で実践可能な看護倫理教育プログラム作成のための資料を得ることを目的とする。中部 地区
5
県の200
床以上の一般病棟を有する病院173
箇所で新人看護職員研修を担当する教育担当看護師を対象と し、無記名自記式質問紙調査を実施した。その結果、100
の病院から回答を得て、以下の4
点が明らかになった。
1
)看護倫理教育は、協力を得た病院の大半で新人看護職員研修に取り入れられていた。2
)提示した63
の教育項目について、半数以上の病院にある程度含まれている項目が全部で
9
項目あった。3
)厚生労働省が示している
4
つの到達目標については、ほとんどが到達出来ていた。4
)新人看護職員研修における看護倫理教 育に関して8
つの問題点や悩みが示された。今後さらに高いレベルの到達目標が達成できるプログラムを提供 していきたい。新人看護職員研修における 看護倫理教育の現状と課題
−中部地区 5 県のアンケート調査より−
Current situation and issues in nursing ethics education for new graduate nurses:
A questionnaire survey in the five prefectures in Central Japan Area
太田 勝正
2Katsumasa OTA
伊藤 千晴
1Chiharu ITO
1 中部大学生命健康科学部保健看護学科 Chubu University, Department of Nursing College of Life and Health Sciences 2 名古屋大学大学院医学系研究科 Nagoya University Graduate School of Medicine
Ϩ .はじめに
厚生労働省が示している「新人看護職員研修ガイ ドライン」1には、研修体制、新人が1年以内に経験 し修得をめざすべき項目と、その到達の目安、研修 の評価方法などが記載されている。Ⅰ.看護師とし て必要な基本姿勢と態度、Ⅱ.技術的側面、Ⅲ.管理 的側面の3分野については16の到達目標が示され、
その中で看護倫理に直接かかわる目標が4つ示され ている。看護倫理に関しては、具体的な教育内容や 方法などの記載がない。筆者らは、到達目標を達成 するためには、効果的な看護倫理教育プログラムが
あれば、臨床現場の助けになるのではないかと考え る。
筆者らは2008年8月〜11月に全国の特定機能病院 を対象に、卒業直後の新人看護師に必要だと思われ る看護倫理に関する調査を行い、36の教育項目と31 の教育項目の到達度について明らかにした2。この 結果は、基礎教育で卒業時までに必要とされる看護 倫理教育項目を明確にしている。新人看護職員研修 における看護倫理に関する先行研究では、各病院の 実践報告や評価 3, 4 にとどまり、教育のあり方につ いて検討したものはまだ数が少ない。看護倫理教育 プログラムが作成できれば、基礎教育と臨床現場の
目)、Ⅱ.倫理規定について(22項目)、Ⅲ.倫理 的な課題と解決に向けた方法(14項目)、Ⅳ.実 践や教育の場における取り組みと課題(5項目)
の4つの枠組みに整理して、「ある程度含まれ ている」、「用語について触れられている程度」、
「まったく含まれていない」の3段階法で回答 をしてもらった。
4 )到達度については、厚生労働省が示している 看護倫理に関する4つの到達目標「看護の人権 を擁護する」、「倫理に基づいて行動する」、「納 得できる説明を行い、同意を得る」、「守秘義務 を厳守し、プライバシーに配慮する」を示し、
〈十分できている〉、〈ある程度は達成できてい る〉、〈あまり達成できていない〉の3段階法で 回答をしてもらった。
5 )その他、看護倫理教育についての悩みや意見 について自由記載してもらうよう依頼した。
5
.分析方法量的データの解析はエクセルによる単純集計のみ を行った。自由記述された内容については、原則と して1つの文(書き出しから句点まで)を1記録単 位とし、1つの文に複数の意味内容がある場合はそ れぞれに分けて、カテゴリー化を行った。なお、カ テゴリー化の検討は、1名の看護学研究者と共に、
解析結果の見直しを繰り返した。
Ϫ .倫理的配慮
本研究における全ての手続きは、中部大学生命健 康科学部保健看護学科倫理審査小委員会の審査を受 け、承認を得たのち行った。調査票は無記名とし、
プライバシーの保護、調査協力の有無の自由な判 断、および、否定的な見解の記述ができるよう配慮 した。また、本調査では、送り先を管理するための 住所録を持っているため、個人が特定できる同意書 は取らず、回答の返信を持って同意とみなした。
ϫ .結果
5県の200床以上の病院173のうち、100の病院か ら回答を得た(回収率57.8%)。属性は、年齢が30 代1名、40代35名、50代60名、 性 別 は、 女 性 が97 名、男性1名、いずれも不明2名であった。職位 は、管理職50名、看護師長47名、その他3名であっ た。臨床経験は、30年以上35名、20年以上58名、10 年以上6名、不明2名であった。病床数は 200 以上 教育の有効な架け橋になると期待できるし、指針が
出されてから2年目を迎え、現在各病院で行われて いる看護倫理に関する研修を見直し、よりよい研修 のあり方について検討に資することもできると思 う。
そこで、新人看護職員研修ガイドラインに基づく プログラム作成に向けて有用な情報を提供するため に各病院で行われている看護倫理に関する研修の現 状を把握するための調査を行ったのでここに報告を する。
ϩ .研究目的
新人看護職員研修における看護倫理教育に関する 現状を把握し、課題を明らかにすることである。
Ϫ .研究方法 1
.研究デザイン無記名自記式質問紙調査による量的記述的研究
2
.対象者および調査時期調査期間は、2011年7月〜8月である。対象は、
愛知・岐阜・三重・静岡・長野の5県における 200 床以上の一般病棟を有する病院 173 施設から新人看 護職員研修を担当する教育担当看護師を調査対象と した無記名自記式質問紙調査を実施した。
3
.調査方法調査目的・方法を記載した調査への参加協力依頼 書、無記名自記式調査票、および返信用封筒と全体 の集計結果の郵送を希望される場合の宛名シール1 枚を1セットにした調査依頼封筒を対象者に送付 し、2週間以内をめどに返送を依頼した。
4
.おもな調査内容と分析方法無記名自記式質問紙では、以下の項目について調 査をした。
1)基本属性
2 )看護倫理に関する研修の有無、研修を行って いる場合は、何年目の看護師が対象か、1回の 時間数、研修形態、研修担当者等について回答 をしてもらった。
3 )研修で教授している教育項目については、新 人看護職員研修に看護倫理教育を行っている病 院のみを対象として、先行研究で明らかにした 63 の教育項目5 を、Ⅰ.看護倫理の概念(22項
3
.到達目標に対する到達度について厚生労働省が示している4つの到達目標に対する 到達度について、「患者の人権を擁護する」につい ては、〈十分できている〉が12、〈ある程度は達成で きている〉が63、〈あまり達成出来ていない〉が2 病院であった。「倫理に基づいて行動する」につい ては、〈十分できている〉が6、〈ある程度は達成で きている〉が67、〈あまり達成出来ていない〉が4 病院であった。「納得できる説明を行い、同意を得 る」については、〈十分できている〉が8、〈ある程 度は達成できている〉が61、〈あまり達成出来てい ない〉が8病院であった。「守秘義務を厳守し、プ ライバシーに配慮する」については、〈十分できて いる〉が22、〈ある程度は達成できている〉が54、
〈あまり達成出来ていない〉が1病院であった。
4
.看護倫理教育の問題点について新人看護職員研修における看護倫理教育に関する 問題点や悩みについて自由記述してもらった結果、
全部で46文が抽出され、「研修の企画に関する問題」
(13件)、「教える側の問題」(11件)、「講義と実践が 結びつかない」(5件)、「時間確保の問題」(4件)、
「研修制度の問題」(4件)、「風土の問題」(4件)、
「受講生側の問題」(2件)など8つのカテゴリーに 整理された。カテゴリー名、記載数、主な記載内容 を表2に示す。
Ϭ .考察
1
.研修方法について新人看護職員研修において今回の調査では、依頼 した173病院のうち100の病院の協力しか得られず、
残り73の病院の実態を知ることができなかったの は、本研究の限界である。しかし協力を得た病院の 80%では看護倫理に関する教育が含まれており、積 極的な取り組みが進んでいることが示唆された。た だし、研修における1回の時間、回数、研修形態な どは病院によりまちまちであった。この事について は、病院の規模や新人看護師の採用人数などにより 違いが出てくるのは当然であり、画一的な研修方法 を提示するのはあまり意味がないと考える。効果的 で効率的な研修にするために、まずは現行のプログ ラムに従い、先行研究 6, 7, 8にあるように、PDCA サ イクル(p.17)9を取り入れ、計画(Plan)− 実施(Do)
− 評価(Check)− 改善(Act)を繰り返すことが望 ましいと考える。今回の結果をもとに、今後、新人 400未満が42、400以上600未満37、600以上800未満
13、800以上6、不明2あった。昨年度の新人看護
師数は、10人未満21、10〜40人未満51、40〜80人未 満20、80人以上6、不明2であった。
1
.看護倫理教育に関する研修方法について 新人看護職員研修に看護倫理教育を取り入れてい るところは、協力の得られた100病院中、80であっ た。新人看護職員研修には取り入れていないが、病 院全体の研修には取り入れている病院は10、看護倫 理教育を全く取り入れていない病院は10であった。全く取り入れていない理由としては、講師がいな い、準備不足、時間がないなどがあった。以下の各 項目では、新人看護職員研修に看護倫理教育を取り 入れている80の病院の回答結果を示す。研修方法の 内訳は、1回の研修時間は、1時間未満が5、1〜 2時間が35、2〜3時間が16、3時間以上が20病院 で、1〜2時間が最も多かった。年間の実施回数 は、1回が43、2回が25、3回が4、4回が5病院 であった。研修形態は、講義のみが49、講義と演習 を組み合わせたものが29病院であった。講師は、外 部講師が1、院内講師が75、外部と院内講師が3病 院であった。
2
.研修に含まれる教育項目について提示した63の教育項目について、新人看護職員研 修の中の看護倫理に関する教育に含まれている度合 いについては、3:ある程度含まれている、2:用語 について触れられている程度、1:まったく含まれ ていない、の3段階で質問し、それぞれの回答数を 表1に示す。
新人看護職員研修の中で半数以上の病院が、ある 程度含まれていると回答した教育項目は全部で9項 目あり、「守秘義務について」、「インフォームドコ ンセント」、「看護倫理とは何か」、「現代医療の場で 求 め ら れ る 看 護 師 の 倫 理 」、「 看 護 師 の 倫 理 的 責 任」、「患者の個人情報保護」、「情報の公開とプライ バシー保護」、などであった。
一方、約半数以上の病院で、まったく含まれてい ないと回答した教育項目は全部で31項目あり、「医 療資源の配分について」、「胎児および新生児の人権 について」、「在宅医療と法」、「ニュールンベルグ綱 領」、「ナイチンゲール誓詞」、などであった。
提示した63の教育項目以外の教育項目について質 問したが、それには回答がなかった。
表
1
看護倫理に関する教育項目について N=80 教育項目3
ある程度含ま れている
2
用語に触れら れている程度
1
含まれていな い
半数以上の病院で研修にある程度含まれていると回答した9個の教育項目
守秘義務について 69 9 1
インフォームドコンセント 49 24 6
看護倫理とは何かについて 64 10 4
現代医療の場で求められる看護師の倫理 52 2 16
看護師の倫理的責任(健康の増進、疾病の予防、健康の回復、苦痛の緩和) 49 22 8
患者の個人情報の保護 66 10 2
情報の公開とプライバシー保護 53 13 13
看護者の倫理綱領(日本看護協会) 63 7 9
倫理的ジレンマとはどういうことかについて 41 17 20
半数以上の病院で研修には含まれていないと回答した31個の教育項目
医療資源の配分について 14 22 40
胎児および新生児の人権 4 7 67
ギリック・コンピタンス(未成年者の決定能力を測るもの) 4 3 71
在宅医療と法 3 13 62
ニュールンベルグ綱領 413 61
ジュネーブ宣言 5 21 51
ヘルシンキ宣言 6 27 44
リスボン宣言 9 29 40
ヒトゲノムと人権に関する世界宣言(ユネスコ) 4 11 63
ヒポクラテスの誓い 7 19 52
医の倫理綱領(日本医師会) 5 18 55
医師、看護師をのぞく医療職の倫理規定 11 8 59
児童の権利に関する条約(国際連合) 4 8 66
女子に対するあらゆる形態の差別の撤廃に関する条約(国際連合) 1 5 72 精神疾患を有する者の保護及びメンタルヘルスケアの改善のための諸原理(国
際連合) 3 4 71
老人福祉施設倫理綱領(全国老人福祉施設協議会) 2 4 72
診療情報の提供に関する指針(日本医師会) 8 14 56
機関内倫理審査委員会の在り方について(文部科学省) 2 14 62
ナイチンゲール誓詞 11 27 40
看護婦の規律(1950および1976年 ANA)10 22 43
ICM助産師の国際倫理綱領 3 12 63
プライバシー保護と個人データの国際流通についてのガイドライン(OECD理
事会勧告) 11 15 52
医療・介護関係事業者における個人情報の適切な取り扱いのためのガイドライ
ン(厚生労働省) 11 18 48
職位別の倫理的課題−看護師、看護師長、看護部長 8 11 58
死をめぐる最近の諸問題 13 19 45
今後の看護倫理の課題 10 2 146
人間を対象とした研究の進め方(臨床研究に関する倫理原則、倫理的課題、イ
ンフォームドコンセント) 10 18 49
看護研究における倫理と研究倫理委員会-看護研究における研究倫理チェック
リスト 9 19 49
臨床倫理委員会について 4 24 49
研究者の抱える倫理的ジレンマ 5 7 65
倫理の教育方法について 4 10 62
表
2
新人看護職員研修における看護倫理教育の問題点カテゴリ 記載数 主な記載内容
時間確保の問題 4
時間の確保が出来ない
業務と並行で倫理教育を行うのは難しい 業務が優先になってしまう
研修の企画に関する問題 13
新人からベテランまで段階的に学習ができる研修企画が必要
どのように研修を組み立ててステップアップしていけばいいかわからない プログラムが整備されていない
教育内容を検討している
全ての看護師に倫理教育が必要と思うが方法がわからない 指針がないので手さぐりである
背景の違いからどのように研修をしたらいいかわからない
入職した時に少しやる程度であとは病棟にまかせっきり、どうやればいいか方法がわからない 時間に制限があるためどのような内容が必要か模索中
どの程度学習したらいいか迷っている 時期がわからない
研修制度の問題 4 病院全体の研修体制が出来ていない 継続的な教育が出来ていない
講義と実践が結びつかない 5
理解できても実践に結び付けるのが難しい 実践に結び付かない
学びが現場で生かされていない
教える側の問題 11
教育する人材が不足している 専門の講師がいない
教える側の教育が不十分
新人より経験のある看護師の勉強が不足している 経験のある看護師への教育を模索している
風土の問題 4
倫理問題の意識付けが薄い 職場の倫理風土つくりを模索中 皆で話し合う場を設けていない 受講生側の問題 2 受身の講義になってしまっている
講義内容が十分伝わっていない その他 3 接遇領域の強化が必要であると思う
倫理という言葉に難しいというイメージがある
倫理に関する到達目標を反映していると言える。反 対に、ほとんど含まれていない教育項目は、今の臨 床現場にはあてはまめることが難しい項目であった り、今後、小児や母性または精神といった専門分野 において必要になってくる倫理規定であるため、新 人看護職員研修では教授されていないのではないか と考える。
一方、到達度については厚生労働省が示している 4つの到達目標に対して、ほとんど到達出来ている 現状が示された。しかし看護倫理に関しては、技術 看護職員研修における看護倫理教育プログラムの作
成が出来れば、そのプログラムをもとに PDCA サイ クルを繰り返すことで病院の規模を考慮した柔軟性 および発展性のある独自のプログラムにつながって いくことを期待する。
2
.教育項目と到達度について表1に示すように、約半数以上が看護倫理に関す る研修の中で、ある程度含まれていると回答した教 育項目は、先に述べた厚生労働省が示している看護
2. 提示した63の教育項目については、回答が得 られた80の病院の半数以上にある程度含まれ ている項目が全部で9項目あった。
3. 厚生労働省が示している4つの到達目標につ いては、ほとんど到達出来ていた。
4. 新人看護職員研修における看護倫理教育に関 して8つの問題点や悩みが示された。
Ϯ .本研究の限界
本研究の主な限界は、5県の200床以上の病院を 対象とした点である。筆者らは、200床に満たない 病院についても今後の調査が必要であると考えてい る。さらに、今後は全国的な調査をすすめ、新人看 護職員研修における効果的な看護倫理教育プログラ ムを提案していきたい。
本研究を進めるにあたり,快くご協力いただいた教 育担当の看護師の皆様に深く感謝いたします。
文献
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ンターネット].2010.[検索日2012年5月28日];
Available from:http://www.mhlw.go.jp/shingi/
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5 . Chiharu Ito, Katsumasa Ota, Masami Matsuda. Eth- ics content in nurse education in Japan: A Delphi study.Nursing Ethics. 2011. vol 18 (3).364−377.
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荒金幹代子,阿部寿美子.正しい擦式手指消毒法 を普及させるための活動報告 PDCS サイクルで の取り組み.感染防止.2009:19 (7):27−31.
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8 . 杉谷藤子,川合政恵.看護倫理の事例検討.日本
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9 . 平井さよ子.第3章看護の質保証と看護管理.
In:村島さい子,加藤和子,瀬戸口要子編.看護 管理.第1版.株式会社メディカ出版,2006.
項目のように到達目安が明確には提示されていない ため、病院により評価方法にばらつきがあることも 予測される。今後、評価方法については再度検討し ていく必要があるのではないかと思われる。
3
.研修における看護倫理教育の問題点新人看護職員研修における看護倫理教育に関する 問題点や悩みについて自由記述してもらい、その内 容を整理しカテゴリー化した。抽出された全46の記 述は、表2で示すように8つのカテゴリーに整理さ れた。今回の結果から、実施においては、従来の実 践報告 10にもある研修の企画や内容に関する問題な どとともに、看護倫理を教える人材の不足、研修時 間の確保の問題、学びが実践に生かされないなど、
より具体的な問題も新たに見出された。どの病院に おいても看護倫理に関する研修については試行錯誤 の状態であることが予測される。鄭ら11は、新人看 護職員の採用が少ない施設においては、状況にあっ た研修体制の整備や研修体制を支援するサブシステ ムとして、外部研修や地域で支える研修体制の構築 を示唆している。また看護倫理教育には、セミナー 形式がきわめて有用であるといわれる (p.343)12。今 回の調査結果からも研修形態に演習を取り入れてい る病院が全体の約4割を占めていた。中岡 13は,看 護倫理は,体系的に繰り返し学習することが重要で あると指摘している。看護を実践するうえで必要な 看護倫理に関する最小限の知識を教授した上で、事 例についてデッスカッションを繰り返すことで学び が実践につながっていくのではないだろうかと考え る。そのため、医療機関合同での取り組み 14や教育 機関との連携などが有用であり、問題の解決につな がると思われる。今後、看護倫理教育プログラムを 作成する際には、今回明らかになった臨床現場の問 題に柔軟に対応できることが必要であると痛感し た。
ϭ .結論
本研究は、新人看護職員研修における看護倫理教 育関する現状を把握し、課題を明らかにし、到達目 標を達成するための具体的で実践可能な看護倫理教 育プログラムの作成のための資料を得ることを目的 とした。その結果以下の4点について明らかになっ た。
1. 看護倫理教育は、協力を得た病院の大半で新 人看護職員研修に取り入れられていた。
and learning in nursing ethics:perspectives and methods.First edition.British:Churchill Living- stone:2006.
13 . 中岡成文.看護倫理教育プログラムを考える―ミ
ネソタ大学のカリキュラムの検討―.医療・生命 と倫理・社会第2号,大阪大学大学院医学系研究 科・医の倫理学教室.2003;165−173.
14 . 小野恵美子,中山サツキ.医療機関合同での新人
看護職員研修の試み.看護.2011. 9. 42−46.
10 . 伊藤千晴,太田勝正.入職時の新人看護師に求め
られる看護倫理教育の項目とその到達度につい て.日本看護学教育学会誌.2011;20 (3):27−
36.
11 . 鄭佳紅,上泉和子,佐藤真由美,村上眞須美.新
人看護職員研修のあり方に関する研究Ⅰ―組織に おける取り組みの現状―.日本医療・病院管理学 会誌.2010;9:153.
12 . AJ, Tschudin V, de Raeve L.Essentials of teaching