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clinical nurses, nursing ethics, knowledge of nursing ethics, recognition of ethical issues

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■ 短  報

キーワード:臨床看護師、

 

看護倫理、

 

倫理の知識、倫理問題の認識

Key words

clinical nurses, nursing ethics, knowledge of nursing ethics, recognition of ethical issues

倫理関連用語のなかで臨床看護師の認知度が最も高かったのは「インフォームド・コンセント」(

87.1

%)

であった。「パターナリズム」「アドボカシー」「ケアリング」ともに「わからない」という回答が

35%

前後、

また「自律」「善行」「無危害」「正義」の

4

つの原則に関しては、「わからない」という回答がいずれも

40

%台

と高率であった。倫理に関する知識、また、倫理的問題の認識には、倫理教育を受けた時期の違いによる影響 は少なからず存在すると思われたが、同時に、臨床での経験を通し磨かれる感性があることも示唆された。倫 理的問題を背景別に分類した結果、「多忙や人手不足」「施設設備や施設方針」など、何らかの背景(理由)が ある場合「倫理的問題」と捉える傾向が低かった。知識不足により放置されかねない倫理的問題が存在するこ とを考えると、個々の看護師が倫理的知識をもち、それを吟味していく姿勢がより質の高い看護のために必要 と思われた。

臨床看護師の「看護倫理に関わる知識の有無」と

「倫理問題の認識」との関連性

The correlation between the recognition of ethical issues and knowledge of nursing ethics for clinical nurses

中西 陽子

2

Yoko NAKANISHI

風間 順子

1

Junko KAZAMA

鈴木 雅子

1

Masako SUZUKI

倉林しのぶ

1

Shinobu KURABAYASHI

李 孟蓉

1

Moyo REE

尾島喜代美

1

Kiyomi OJIMA

1 高崎健康福祉大学保健医療学部 Takasaki University of Health and Welfare, Faculty of Health Care 2 群馬県立県民健康科学大学看護学部 Gunma Prefectural College of Health Sciences, Faculty of Nursing

Ϩ .緒言

近年、「インフォームド・コンセント」「自己決 定」など倫理に関わる用語は臨床や看護研究分野で は、特別の説明もなく使われることが一般的であ る。しかし、倫理教育が看護学教育のコアとして明 確に示されたのは2004年のことであり、多くの臨床 看護師は研修等で「倫理教育」を受ける機会はある ものの、その教育内容や方法にはバラツキがある。

「臨床倫理」「看護倫理」という学問が独り歩きし、

実際の現場における倫理的問題とかけ離れたものに

なっていないかが懸念される。

今回、臨床ではたらく看護師を対象に「看護倫理 に関する知識」および「臨床倫理問題」の認識につ いて調査を実施した。

ϩ .研究目的

臨床看護師の倫理に関する知識と倫理的問題の認 識の実態を明らかにすることにより、臨床における 倫理問題を感受するだけでなく、その解決策を模索 する力を高めるための教育内容・方法を検討するた めの一助となることを目的とする。

(2)

とも無回答を除き算出した。

1

.対象者の背景

対象者の属性は、男性14名、女性111名。平均年 齢は37.8歳±10.4。平均勤務年数は12.3年±9.4であ り、 最 終 教 育 歴 は、 専 門 学 校76.9%、 短 期 大 学

9.9%、大学6.6%、研修を含む倫理教育歴は、あり 88.8%、なし11.2%であった。

2

.看護倫理に関する知識

全体で「説明できる」が最も高率だったのは「イ ンフォームド・コンセント」(87.1%)であった。

「パターナリズム」「アドボカシー」については約

20%が「説明できる」としたが、「ケアリング」は 13.8%にとどまった。また、「インフォームド・コ

ンセント」を除く3用語ともに「わからない」とい う回答が35%前後であった。「自律」「善行」「無危 害」「正義」に関しては、「わからない」という回答 がいずれも40%台と高率であった。倫理教育が看護 学教育のコアとして明確になった2004年以降に教育 を受けた年代(20〜29歳)45名とそれ以前の年代74 名(年齢の記載のない回答を除く)を分けて集計し た結果、「ケアリング」を除くどの項目とも「説明 できる」は20〜29歳の方が高かった(表

1

)。

3

.看護師経験年数による「倫理的問題」の認識 看護師としての経験年数10年以下(平均年数4.3 年, 平 均 年 齢28.5歳 ) の 者60名 と11年 以 上(18.5 年,42.3歳)の者59名に分け(経験年数の記載のな い回答を除く)、各倫理的問題について「強くそう 思う」「そう思う」を合わせて集計した。ほとんど の項目で経験年数10年以下の方が認識が高い傾向が みられたが「患者に正確な病名告知がされていな い」「看護師の経験から不必要な検査を医師が患者 にすすめる」に関しては経験年数11年以上の方が高 かった(表

2

)。

4

.背景の有無による「倫理的問題」の認識 倫理的問題だと思う内容を背景別に分類した。高 率(90%以上)だったのは「説明を十分理解してい ない患者が同意書を書く」「検査や処置について医 師が患者に十分な説明をしていない」「カーテンを 開けたままのおむつ交換」であった。それと比較し て、「多忙のため患者の食事介助を後回しにする

(76.7%)」「家族だけへの病名告知(77.4%)」「外来

Ϫ .研究方法

1

.調査期間:2011年11月

1

日〜12月15日

2

.調査対象:

調査対象施設は、複数の診療科をもつ病床数100 床以上の2施設とした。調査対象者は、日常的に患 者のケアに関わっている病棟および外来で勤務する 常勤看護師160名とした。

3

.調査方法:

調査書の原案を作成後プリテストを行った上で修 正を重ねた調査書を作成し、対象者に自記式質問紙 調査を実施した。質問紙は郵送法にて回収した。質 問紙の配布は看護部長から各師長に配布を依頼し、

2

週間後を目安に回答者自身が厳封した封書を直接 研究者宛に郵送する方法を用い回収した。

4

.研究デザイン

質問紙法を用いた記述的研究デザインとする。

「臨床倫理学」「看護倫理学」等のテキスト1, 2, 3, 4, 5

に取り上げられている主な用語である「インフォー ムド・コンセント」「パターナリズム」「アドボカ シー」「ケアリング」、および、「自律」「善行」「無 危害」「正義」の

4

つの倫理原則について「説明で きる」「聞いたことはあるが説明はできない」「わか らない」の

3

項目での回答を得た。「倫理問題の認 識」に関する設問は、先行研究または看護倫理関連 テキストにおいて倫理的問題を含むケースとして扱 われている内容をもとに「インフォームド・コンセ ント」「自己決定」「守秘義務」「真実告知」「患者の 人権」に関わる内容を17項目作成し、倫理的問題と 思うか否かについて「強くそう思う」「そう思う」

「そう思わない」「まったく思わない」の

4

件法で回 答を得た。

5

.倫理的配慮:

対象施設に対し研究計画書および質問紙を提出し た上で、研究者から看護部長に研究の意義と目的、

自由意思に基づいた参加と参加拒否、研究不参加に よる不利益はないこと、匿名性の保障等について説 明し、看護部での承諾および施設での承認を得た。

また、個々の対象者については、上記内容について 文書で説明し質問紙への回答をもって同意確認とし た。

ϫ .結果

対象者160名に質問紙を配布し126名から回収を得 た(回収率78.8%、有効回答率97.6%)。各質問項目

(3)

1 倫理に関する知識 わからない(%) 聞いたことはあるが

説明できない(%)

説 明 で き る (%)

20〜29歳(45名)30〜59歳(74名)

インフォームド・コンセント 0 (0) 16 (12.9) 108 (87.1) (97.0) (82.4)

ケアリング 45 (36.6) 61 (49.6) 17 (13.8) (12.7) (13.2)

アドボカシー 44 (35.8) 55 (44.7) 24 (19.5) (33.3) (13.2)

パターナリズム 43 (35.8) 51 (42.5) 26 (21.7) (30.3) (16.5)

自律 50 (40.7) 52 (42.3) 21 (17.1) (18.2) (15.4)

善行 53 (43.1) 52 (42.3) 18 (14.5) (15.2) (13.2)

無危害 52 (42.3) 54 (43.9) 17 (13.8) (21.2) (9.9)

正義 50 (40.7) 56 (45.5) 17 (13.8) (15.2) (12.1)

2

 看護師経験年数および行為の背景の有無による倫理的問題の認識 背景 (理由) 倫理的問題の内容

う(%)

全体 経験年数10年以下

 (60名) 経験年数11年以上  (59名)

記載なし

説明を十分理解していない患者が同意書を書くこと 108 (93.1) 55(91.6) 49(84.4)

検査や処置について医師が患者に十分な説明をしていない 105 (91.3) 54(89.7) 47(81.3)

カーテンを開けたままのおむつ交換 104 (91.2) 53(87.9) 47(81.3)

医師の治療方針が患者の意向に反する 102 (88.7) 53(87.9) 44(77.6)

医師が患者にリスクの高い医療処置をすすめ、その他の選択

肢を提示しない 100 (87.0) 52(88.2) 44(78.5)

看護記録を医師が誰の許可も得ずに研究用のデータに使う 99 (86.8) 48(82.8) 45(77.6)

食欲のない患者に無理に食べさせる 92 (80.7) 49(81.7) 39(67.3)

看護師の経験から不必要な検査を医師が患者にすすめる 91 (78.4) 41(68.3) 46(79.3)

家族優先 家族への告知のみで患者に正確な病名告知がなされていない 89 (77.4) 42(70.0) 43(74.1)

家族だけの意思による医療行為の決定 85 (73.3) 43(71.7) 38(65.5)

疾患上の理由 認知症のため患者へのICはせずに医療を行う 88 (76.5) 44(73.3) 40(68.9)

業務上の理由 夜勤帯で人手不足のため物理的な抑制を行う 91 (78.4) 45(76.3) 42(72.4)

多忙のため、食事介助が必要な患者の食事を後回しにする 89 (76.7) 46(76.7) 38(65.5)

施設方針、設 備上の理由 

外来の診察室と待合がカーテン一枚でしきられる 91 (78.4) 45(76.3) 42(73.7)

同室患者の不穏行動で他の患者の睡眠が妨げられているが満

床のため我慢してもらう 89 (77.4) 43(72.9) 36(62.7)

医療の必要性のない患者が使用しているためベッドの空きが

なく救急患者を拒否する 85 (73.3) 42(70.0) 35(60.3)

外来呼び出しは患者氏名を呼ぶ 62 (53.9) 31(51.6) 27(46.6)

*各内容について無回答を除き算出した

礼儀作法、奉仕などの「美徳」中心であったとされ

6, 7。以降、「看護倫理」は独立科目からははずれ

倫理教育は「看護概論」や「医学概論」に含められ る時代が続いた8。日本看護協会から「看護者の倫 理綱領」が出されたのは2003年である。翌年には

「看護研究における倫理指針」が公表され、同年に は「看護実践能力育成の充実に向けた大学卒業時の 到達目標」において倫理教育は看護学教育のコアと して明確に示されたが、このような歴史を振り返っ 呼び出しは患者氏名を呼ぶ(53.9%)」など、「多

忙」「家族優先」「施設方針」など、何らかの背景

(理由)がある行為の場合「倫理的問題」と捉える 傾向が低かった(表

2

)。

Ϭ .考察

1

.臨床看護師の看護倫理に関する知識とその背景 わが国では1951年から1966年まで「看護倫理」は 独立した科目であったが、この時期の教育内容は、

(4)

「倫理原則」とは、臨床に起こりうる、あるいは 生じている倫理問題を検討するためのアプローチ法 のひとつである。倫理原則や用語を知らなくても、

現場で「納得のいかない出来事」に出会うことはあ り、倫理的感受性は多くの看護者がすでに持ってい ると考えられる。しかし、情報や内容を単に感受す るだけでは、問題の解決には結びつかないことを考 えると、情報を整理し内容を分類できる能力とそれ を吟味するための知識は必要であろう。そのための ツールとして個々の看護師が原則や倫理用語を正確 に理解することは重要であると考える。

2004年以降の教育を受けた年代では、それ以外の

年代より用語についての認知度は高かった。これ は、看護師養成機関における倫理教育の方法がより 具体化された結果であると考えられる。しかし、服 部が「これはあくまでも自己申告にすぎず、意味を 正しく理解している人がこれだけいる保障はない」

(p.57)9とするように、文化庁調査、また、本調査 における「説明できる」という回答を、単純に「理 解度」と捉えることは危険である。あくまでも「イ ンフォームド・コンセントについて “説明できる”

と考えている者の割合」というべきであろう。

2

.看護師経験年数と倫理的問題の認識との関連 中尾らは、倫理問題の認識には個人の価値観や キャリアなどが関係するが、なかでも教育背景が影 響する可能性が高いとしている13。看護師としての 経験年数10年以下と11年以上を比較すると、17項目 中15項目は経験年数が短いグループの方が倫理的問 題の認識度が高かった。経験年数と教育歴は一致す るものではないが、経験年数10年以下の平均年齢が

28.5歳であることを考えると、2004年以降に倫理教

育を受けた年代が多く含まれることが推測される。

また、「患者に正確な病名告知がされていない」「看 護師の経験から不必要な検査を医師が患者にすすめ る」という内容については、経験年数が長い方が高 かった。「告知」に関しては看護師歴が長いほど 様々なケースを経験していると思われ、また、「検 査が必要か否か」についてはやはり看護師としての 経験がある程度なければ判断できないことを考える と、納得できる結果であるだろう。

結果から、用語に関する知識、また、倫理的問題 の認識には、看護師養成課程における倫理教育を受 けた時期の違いによる影響は少なからず存在すると 思われた。しかし、それだけではなく、臨床での経 てみると、わが国で「看護倫理」が体系化され具体

的な目標を掲げて教育されるようになったのは、つ い10年ほど前からだといえる。しかしながら、近 年、看護倫理教育の重要性は周知の事実であり、教 育機関のみならず勤務先における院内外研修として

「倫理」に関する教育を受ける機会は誰にでも与え られている。

調査においては、約90%が看護師養成機関あるい は研修等で倫理教育を受けたことがあると回答して いるにも関わらず、倫理に関する用語や原則につい ての知識が不足していることが示された。

インフォームド・コンセントは今日的な「医の倫 理」の看板であるとされるように9、調査でも「説 明できる」という回答が90%近かった。しかし、こ の認知度の高さは、倫理教育からの恩恵ではなく、

日常生活のなかで見たり聞いたりする頻度の影響が 大きいとも思われる。「H20年度・国語に関する世

論調査」10

による、インフォームド・コンセントの

認知度は45.9%、理解度は36.9%であり、日本人の

3

人に

1

人以上が「インフォームド・コンセント」

という言葉とその意味を知っていると回答してい る。それと比較して「パターナリズム」「アドボカ シー」「ケアリング」については、教育や研修のな かで出会わない限り、認知される可能性は低いと考 えられる。 

倫理教育の内容や方法は、教育者個々人で意見が 異なり、施設により教育内容にばらつきがあること も否定できない11とされるように、どのような倫理 教育を受けてきたかによって、看護師個々の倫理的 知識には差があると考えられる。また、今回の調査 では、テキストに頻出する

4

つの用語と倫理原則を

「知識」としたが、何をもって「倫理的知識」とす るかは、教育者の考え方によって異なるため、「わ からない」という回答がイコール「倫理的知識の不 足」と言い切れないことも事実である。ハントは12、 原理や原則による判断を「テクニカルエシックス的 アプローチ」とし、看護婦の倫理教育で必要とされ るのは、マニュアルを叩きこむようなテクニカルエ シックスではなく、むしろ「倫理的な探究」である とする。ハントに従えば、臨床看護師としては、用 語を知ることより「医療者のパターナリスティック な行為に気づく」「患者の思いを感じ取る」ことが できる方がより重要であろう。すなわち、倫理的感 受性を高めることの方が知識の習得よりも優先度は 高いということかもしれない。

(5)

に捉えられがちであるが、少なくとも何らかのジレ ンマを感じることが、倫理的感受性を高めるための 第一歩になり得ると考える。まず、「これでいいの だろうか」と感じること、そして、それを言葉にす ること、さらに、表明された問題を共有し、知識を 出し合いながら吟味していく姿勢がより質の高い看 護のために必要と思われる。

ϭ .研究の限界と今後の課題

本研究では、知識の有無を「説明できる」「聞い たことはあるが説明できない」「わからない」の

3

項目で集計した。しかし、「説明できる」という回 答が「理解」と一致していないことは明らかであ り、また、「説明できない」と「わからない」の違 いも対象者にとってはわかりづらく正確な結果が導 き出せたとはいい難かった。また、テキストを参考 に作成した設問であったため、背景(理由)の部分 の記載が抽象的で曖昧であったことも否定できな い。今後は問題を焦点化していくことと同時に、質 問紙の内容や項目、回答方法についてさらなる検討 が必要と思われる。

Ϯ.結語

大日向は7、「看護職の多くは倫理的な問題を感覚 的には察知していても、それを論理的に説明したり 解決策を模索する能力に問題があること」を示唆す る。生じている問題を論理的に説明する上で、倫理 用語や原則に関する知識は必要と思われる。まず は、教育者側が「看護職に必要な倫理的知識とは何 か」を共有することが重要であり、その上で、効果 的な教育方法を検討することが今後の課題であろ う。倫理教育に携わる教員の研修体制の強化が望ま れる。

文献

1 . 小西恵美子編集.看護倫理よい看護・よい看護師

の道しるべ.東京:南江堂;2007.

2 . D, Dooley, J. McCarthy. 2005年/坂川雅子訳 2006:

看護倫理1,東京,みすず書房.

3 . 石井トク,野口恭子編著.看護の倫理資料集.第

2版.東京:丸善;2007.

4 . 服部健司,伊東隆雄編.医療倫理学の ABC.第

2版.東京:メジカルフレンド社;2012.

5 . 宮脇美保子.身近な事例で学ぶ看護倫理.東京:

中央法規;2009.

6 . 伊藤千晴,太田勝正.教科書からみた戦後の看護

験を通し、より磨かれる感受性があることも同時に 示された。

3

.背景の有無による倫理的問題の認識

特に背景がない行為と、何らかの背景(理由)が ある行為を比較すると「多忙や人手不足により生じ る問題」「家族を優先する告知や決定」「施設設備や 施設方針により生じる問題」「認知症等」の背景が ある場合「倫理的問題」と捉える傾向が低いことが 示唆された。大西は (p.50)14、看護者が人手不足や 設備などシステムの不備を倫理的問題ととらえない 理由を、看護者は個別的ケアを行っているため、シ ステム全体の問題がたとえ患者に害を与えても自分 個人が関わるべき倫理的問題とみなさないのではな いか、としている。また、日本での本人告知はかな り一般的になってきたが、それでも家族に先に説明 がなされることが極めて多い (p.33)9とされるよう に、告知に関して家族を優先する日本的な考え方や 文化 (p.44)15が背景にあると考えられる。施設や医 療者全体としてもそれを容認する空気があり、倫理 的問題であるとする意識が低いと思われる。

たとえば、家族を優先した告知はパターナリズム と患者の自律侵害としての問題を併せ持っている。

多忙や人手不足という理由で、医療者としての善行 や患者への無危害という原則がないがしろにされて いる、むしろ、ないがしろにする理由としてそれら を利用しているといえるかもしれない。また、認知 症患者の自己決定能力について議論の余地は大き い。前述のハントは、看護者たちが原理や原則を知 識として持つことで、彼らの道徳的感性から生まれ る自発的な問いを押しつぶすことになるとし「テク ニカルエシックス」を教えることを否定している。

しかしながら、逆に、知識を持っていないために放 置される倫理的問題も存在するのではないだろう か。人的資源や施設のシステム的な問題、医療者全 体が容認している家族の優先性など、職場全体が

「当然」と捉えている前提を覆すことは難しいと思 われる。しかし、「何かおかしい」という感覚を放 置せず、知識で補強し理論的に武装していくことで 曖昧な感覚をより明確な問題として捉えることがで きるのではないだろうか。

石井は (p.88)3、看護行為におけるジレンマを、

①生命に関する価値観②看護師としての義務と患者 の権利③組織・体制による制約④医師の治療方針の

4

つに分類する。職務上のジレンマはマイナス要因

(6)

育 と の 関 連 性. 九 州 大 学 医 学 部 保 健 学 科 紀 要 2007;8:69−76.

12 . G. Hunt.Ethical Issues in Nursing.London:

Routledge;1994.

13 . 中尾久子,大林雅之,家永登,樗木晶子.日本の

病院における倫理的問題に対する認識と対処の現 状―看護管理者の視点をめぐって―.生命倫理 2008;18 (1):75−83.

14 . 大西香代子.Ⅱ−第2章 看護者をめぐる人間関

係と倫理.In:浅井篤,服部健司,大西基喜,大 西香代子,赤林朗.医療倫理.第1版.東京:勁 草書房;2002.

15 . 浅井篤.第2章−2 インフォームド・コンセント

と真実告知.In:福井次矢,浅井篤,大西基喜 編:臨床倫理学入門.第1版.東京:医学書院;

2003.

倫 理 教 育 内 容 の 変 遷. 日 本 看 護 学 教 育 学 会 誌 2007;17 (1):29−39.

7 . 大日向輝美.看護倫理教育における歴史性・社会

性の問題.教授学の探究 2004;21:91−108.

8 . 吉澤千登勢.学士課程における「看護倫理」教育

のあり方 ジョン・ロックの教育論を分析の基礎 に.日本看護医療学会雑誌 2007;9 (2):11−17.

9 . 服 部 健 司. Ⅲ− 第2章  真 実 告 知 と 開 示 基 準.

In:浅井篤,服部健司,大西基喜,大西香代子,

赤林朗.医療倫理.第1版.東京:勁草書房;

2002.

10 . 文化庁H 20年度「国語に関する世論調査/カタ

カナ語の認知・理解・意味の理解・使用度.[イ ン タ ー ネ ッ ト ].[ 検 索 日2012年6月 ]Available from: http://www.bunka.go.jp/kokugo_nihongo/

yoronchousa/h20/kekka.html.

11 . 中尾久子.看護教育者の倫理問題の認識と倫理教

表 1  倫理に関する知識 わからない(%) 聞いたことはあるが 説明できない(%) 説 明 で き る (%) 20〜29歳(45名) 30〜59歳(74名) インフォームド・コンセント   0 (0) 16 (12.9) 108 (87.1) (97.0) (82.4) ケアリング 45 (36.6) 61 (49.6) 17 (13.8) (12.7) (13.2) アドボカシー 44 (35.8) 55 (44.7) 24 (19.5) (33.3) (13.2) パターナリズム 43 (35.8)

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