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特別支援学校における自己領域化空間に関する研究 [ PDF

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(1)特別支援学校における自己領域化空間に関する研究. 大木 啓義 1. はじめに. えられる。本研究では、これまでの「構造化」をより広く. 1-1 研究の背景. 捉え、 「一定の行為と主体を分離する為に家具等によって. 我が国における障害児教育は、1947 年の盲・養護学. 領域化された空間」を「自己領域化空間」と定義する(図. 校への就学義務化以降、対象障害種を拡大しながら発展. 1)。この「自己領域化空間」は特別支援教育特有のニーズ. し、2009 年には児童生徒の教育的ニーズに沿った教育. が表出した極めて重要な行為現象であるとの認識に基づ. を行うという主旨のもと「特別支援教育」へ制度転換され. き、その実態を把握、分析する事で今後の特別支援学校. た。しかし、学校施設の整備においては一般の公立学校. の計画・設計に関する知見を得ることを目的とする。. と同様の設計方針が十分な検討無しに準用される例が多. 2. 研究の方法. く、障害を持った児童生徒が学ぶという特殊性を考慮し. 表 1 に本研究の概要を示す。まず予備調査により H 市 及び S 県内の特別支援学校 6 校を本調査対象に選定した。. 1-2「構造化」から「自己領域化空間」へ. 本調査対象校は幅広い障害種における事例を得るために 構造化. た学校施設の整備が十分とは言い難い。 障害児教育、特に自閉症児教育を空間面から改善する 手がかりとなった理論に、米国で開発された「TEAACH」. → 「行為」 の視点. 発展. る。例えば、 「個人学習の場所」 「更衣の場所」というよう に空間を分けることで、過剰な視覚的情報を遮断し児童. 「個人学習」の空間. 実例と視点の差異. がある。その中で、場所と「行為」を一致させるように空 間分化を行う「(物理的)構造化」の有効性が指摘されてい. 自己領域 化空間. うな「構造化」の普及によって空間を教育に活かすという 意識が急速に教育現場に広まっている。. 対象 障害種にとらわれず 児童生徒の特性 に応じて. 調査方法. 限らず、児童生徒の特性に応じた様々な空間分化が見ら. 予備調査. れるようになっている。今後は「構造化」による「行為」の. アンケート調査. 視点に加え、障害種別に留まらない、より詳細な児童生. 実測・ ヒアリング調査. 徒の「主体」という視点を加味した分析が重要であると考 H 市立 Hc 特別支援学校. 建築面積. 7.197 ㎡. 知 単一 35 人 (8)、重複 40 人 (14) 知 単一 27 人 (7)、重複 32 人 (11) 知 単一 73 人 (9)、重複 14 人 (5). 構造・階数 RC 地上 3 階. 施設竣工年. 1977 年. 校地面積. 36.848 ㎡. 建築面積. 8.697 ㎡. 構造・階数 RC 地上 2 階. 児童生徒数(学級数). 計 221 人 (46). 知 単一 43 人 (10)、重複 13 人 (5) 知 単一 41 人 (8)、重複 19 人 (7) 知 単一 98 人 (13)、重複 7 人 (3). 小学部中学年配置図(1F). 「不特定」の「カー ムダウン」の空間. 「児童 C」の 「生活空間」. 概念 特定の「行為」と 「主体」を分離する. 目的 広く空間改変 によって 教育改善を図る. 調査概要 H 市、S 県内の特別支援学校十数校を訪問し 現場の実態把握と本調査対象 6 校の選定を行った 各校の小・中学部担任に対し自己領域化空間の設置 状況を尋ねた(小 67 部+中 62 部、回収率 95%) 各校から典型事例 2 3 学級を選定し、教室の実測 調査及び空間構成の考え方のヒアリングを行った 実測・ヒアリングを行った事例の中から 3 校 5 例について、終日観察調査を行った. 対象障害種. S 県立 Kr 特別支援学校. 知的障害、 肢体不自由. 施設竣工年. 2001 年. 校地面積. 32.320 ㎡. 建築面積. 6.513 ㎡. 構造・階数. 木造平屋. ※訪問除く. 児童生徒数(学級数). 計 130 人 (40) 単一 15 人 (6)、重複 3 人 (1) 単一 0 人 (0)、重複 18 人 (6) 単一 19 人 (5)、重複 4 人 (2) 単一 2 人 (1)、重複 6 人 (2) 単一 47 人 (7)、重複 5 人 (3) 単一 2 人 (2)、重複 9 人 (5). 小学 中学 高等. 7.991 ㎡. 対象障害種 知的障害. 小学 中学 高等. 1994 年. 校地面積. 計 221 人 (54). 小学 中学 高等. 施設竣工年. 行動観察調査. 時期 2011.8∼ 2011.10 2011.11∼ 2011.12 2011.11∼ 2012.1 2011.12∼ 2012.1. S 県立 Yt 特別支援学校. 児童生徒数(学級数). 「女子」の 「更衣」の空間. 図 1. 構造化と自己領域化空間の概念. 表 1. 調査概要. しかし、現実の教育現場の実態を見ると、自閉症児に. 概念 特定の「行為」 を分離する 「カームダウン」 特定児童が多くの の空間 活動を行う空間. 「更衣」の空間. → 「行為」 「児童 B」の と「主体」「児童 A」の の視点 「個人学習」の空間 「個人学習」の空間. に教師が期待する行為を理解させ易くする文1.2)。このよ. 対象障害種 知的障害. 目的 不要な視覚情報の 遮断. 対象 自閉症児. 知 肢 知 肢 知 肢. 小学部高学年配置図(2F). 中学部知的障害学級配置図 可動式間仕切り. N. 小 3-1. 小 3-2. 小 4-1. 小 4-2. 7000. 7000. 7000. 7000. 7000. 小 4-2. WC. N. 小 2-3. 小 4-1. 小 3-1. WC. 2700 7000. 6000 2000. 7000 2500. 体育館. 小 5-3. N. 構造・階数 RC 地上 3 階. 知 単一 24 人 (5)、重複 34 人 (12) 知 単一 51 人 (7)、重複 16 人 (5). S 県立 Us 特別支援学校. 対象障害種. 知的障害、 肢体不自由. 施設竣工年. 2007 年. 校地面積. 34.675 ㎡. 建築面積. 6.967 ㎡. 構造・階数. 木造平屋. 計 130 人 (36) 単一 24 人 (6)、重複 10 人 (4) 単一 2 人 (2)、重複 10 人 (4) 単一 19 人 (4)、重複 6 人 (2) 単一 1 人 (1)、重複 5 人 (2) 単一 47 人 (8)、重複 6 人 (3) 単一 0 人 (0)、重複 0 人 (0). 知 肢 知 肢 知 肢. 1967 年. 校地面積. 35.603 ㎡. 建築面積. 11.391 ㎡. 構造・階数. RC 平屋. 計 89 人 (25). 知. 単一 3 人 (2)、重複 36 人 (12). 知. 単一 2 人 (2)、重複 20 人 (7). 知. 単一 5 人 (2)、重複 23 人 (9) 小学部 (Ⅰ過程 ) 学年配置図. N. 更衣. 小知 小知 小知 小知 小知 小知 4-1 3-1 2-1 2-2 1-2 1-1. 倉庫. 小 4-1. 7000 5000 5000 5000 5000 7000. 50m. 施設竣工年. 可動式間仕切り. 倉庫. 25m. 中 中 中 小 1-2 1-3 2-2 4-2. ※分校舎、訪問除く. 対象障害種 肢体不自由 児童生徒数(学級数). 小学部低学年配置図 WC. 中 1-1. 5000 5000 5000 6000 5000 5000 3000. S 県立 Kn 特別支援学校. 児童生徒数(学級数). 小学部中学年・中学部 配置図(2F) 6000 2400. 5.906 ㎡. 知 単一 40 人 (10)、重複 34 人 (12). N. 4.608 ㎡. 建築面積. 中知 中知 3年 2年. 100m. 小学 中学 高等. 校地面積. 計 199 人 (51). 小学 中学 高等. 1984 年. 小学 中学 高等. 施設竣工年. 児童生徒数(学級数). 50m. 100m. N. 7300 2700. H 市立 Hh 特別支援学校. 対象障害種 知的障害. WC. 6000 4000 6000 6000 4000 6000. 50m. 50m. 7000 2700. 25m. 中肢 中知 中知 1 年 1 年 1年. 会議. 小 5-3. 小 4-2. 小 3-2. 小 2-2. 小 1-2. 小 1-3. 5000 5800 5400 5400 5400 5400 5400. 50m. 100m. 2500 5000 5000 5000 5000 5000 5000 2500. 図 2. 調査対象校概要. 29-1. 50m. 100m.

(2) 重複障害児が多く在籍する学校とし、知的障害の学校を. 表 2. 障害と自己領域化空間の設置率の関係. 中心に、知的障害と肢体不自由の併設校2校、肢体不自. 80%. 100%. (N=129). 60%. 由の学校1校を対象とした。本調査として、①各校の小・. 車椅子や歩行器等を用いる (N=33) 児童が 1 人以上いる学級. 20% 0%. 個別学習. 更衣. カームダウン. 看護師等の医療的ケアが (N=16) 必要な児童が 1 人以上いる学級. 遊び. 表 3. 学齢と自己領域化空間の設置率の関係. るアンケート調査、②各校 2 〜 3 学級を対象に実測調査. 100%. 及び教室空間構成の考え方についての担任教諭に対する. 80%. ヒアリング調査、③②の中から3校 5 例について児童生. 40%. 凡例 (N=29). 60%. (N=16). 20%. 徒と教員の行動観察調査を行った。. 0%. 全学級. 自閉症、自閉傾向のある (N=61) 児童が半数以上を占める学級. 40%. 中学部の全学級担任に自己領域化空間の設置状況に関す. 凡例. (N=23). 個別学習. 更衣. カームダウン. 遊び. (N=62). 小学部低学年(小 1・2 年) 小学部中学年(小 3・4 年) 小学部高学年(小 5・6 年) 中学部(中1∼3 年). 個別学習. 0%. 40%. コーナー型. 60%. 80%. 100%. 特別支援教育で特に重要であり、自己領域化空間設置. 34 カームダウン. の目的となりやすい「個別指導」 「更衣」 「カームダウン」 「遊. ブース型. 別室型. 教室内において 教室外を指導や 閉じるられると 生活の場として 中の様子がほとんど 用いているもの 見えないもの (廊下・倉庫 等) (例) (例). 51 6. 28. 31. 13. 遊び. び」に関し、アンケート調査により現状を明らかにした。. コーナー型. 教室内において 区切られているが 外から中の様子 が伺えるもの (例). 別室. ブース型 型 50 18 7. 更衣. 3-1. 調査について. 20%. 凡例. 表 4. 設置されている自己領域化空間の特徴. 3. 自己領域化空間の現状. 24. 表 2 に障害種別の自己領域化空間の設置状況を示す。 全学級で見ると、 「個別学習」 「更衣」 「カームダウン」のた めの空間の設置率が高い。これは自閉傾向のある児童生 徒が多く在籍する学級ではより顕著となり、自閉症児に 対する空間分化の重要性が窺われる。一方、学級に車椅. 10. 4. 表 5. 自己領域化空間の境界を構成する物品 境界の構成要素. 0. ・机類 ・棚類(本棚、教材棚等) ・ロッカー類 家具 ・可動間仕切り ・移動式黒板・ホワイトボード ・マット類 ・段ボール 自作物・木製品(ベニヤ、木枠等) ・自作カーテン 造作 ・カーテン. 回答数. 20. 40. 60. 80. 個別指導 40. 11. 個別学習. は通行や介助・医療機器の使用により空間分化が不可能、 あるいは不適切となっていると考えられる。. 更衣. 次に、表 3 に学齢ごとの自己領域化空間の設置状況を 示す。いずれの行為目的においても、小学部中学年から. カームダウン. 高学年にかけて設置率が高くなり、中学部になると設置 率が低くなっている事がわかる。これは就学後児童生徒 の実態に応じて徐々に自己領域化空間の設置が進み、発 達に応じて除却が行われているためと考えられる。 3-3. 自己領域化空間の特徴と設置理由. 遊び. 表 4 に設置されている自己領域化空間の特徴を示す。 「個別学習」 「遊び」では簡素な「コーナー型」の割合が高く、 「更衣」 「カームダウン」では囲繞感や隔離の度合いの高い. カーム ダウン. 更衣. マット類 +段ボール. 遊び. ロッカー +自作カーテン. 10 22 96 10 18 44. 設置の理由・目的. いる学級では設置率が低くなっている。これらの学級で. (例). 5. 表 6. 自己領域化空間を設置した理由・意図. 子等使用や医療的ケアを必要とする児童生徒が在籍して. 100. 10. 凡例. 3-2. 自己領域化空間の設置率. ※自由記述による. ・視覚・聴覚的刺激を減らして集中を促すため 従来の「構造化」の ・場所と行為を対応させる事で自発的行動を促すため 目的によるもの ・一人になることで落ち着いて活動できるように ・集団活動になじめない児童がいるため 「児童生徒の個性」 ・他児童生徒に干渉しがち、されがちな児童生徒がいるため (障害、性格、人間 ・情緒的に不安定な児童がいるため 関係等)によるもの ・大きな音や声が苦手な児童生徒がいるため(聴覚過敏) ・各児童生徒の知的な発達度が大きく異なるため ・視覚・聴覚的刺激を減らして集中を促すため 「構造化」 ・場所と行為を対応させる事で自発的行動を促すため ・一人になることで落ち着いて活動できるように 「児童生徒の個性」 ・他児童生徒に干渉しがち、されがちな児童生徒がいるため 特定の「教育目的」 ・男女の性別意識を身につけさせるため によるもの ・更衣は人に見られないように行うことを理解させるため ・視覚・聴覚的刺激を減らして集中を促すため 「構造化」 ・場所と行為を対応させる事で自発的行動を促すため ・一人になることで落ち着いて活動できるように ・集団活動になじめない児童生徒がいるため ・他児童生徒に干渉しがち、されがちな児童生徒がいるため 「児童生徒の個性」 ・情緒的に不安定な児童生徒がいるため ・大きな音や声が苦手な児童生徒がいるため(聴覚過敏) ・障害、体力上適度な休息が必要であるため 「教育目的」 ・休み時間と授業時間の区別をつけさせるため ・視覚・聴覚的刺激を減らして集中を促すため ・場所と行為を対応させる事で自発的行動を促すため 「構造化」 ・一人になることで落ち着いて活動できるように ・集団活動になじめない児童生徒がいるため ・他児童生徒に干渉しがち、されがちな児童生徒がいるため 「児童生徒の個性」 ・大きな音や声が苦手な児童がいるため(聴覚過敏) ・動き回る児童生徒との接触等の危険を避けるため ・授業時間と休み時間の区別をつけさせたいから ・人が見ていない方が自由な活動ができると思うから 「教育目的」 ・一人で過ごす時間を身につけてほしいから. 10. 回答数. 20. 30 24. 12 2 2 11 1 2 2 9 9 3 1 24 10 4 4 12 2 4 12 4 4 3 2 4 2 1 1 3 2 5 2 1. 「ブース型」 「別室型」の割合が高い。教諭や他児童生徒の. 所と行為を一致させる」といった、従来の「構造化」の目的. 参加が前提となる指導や遊びと、他者から見えない状態. に沿った理由が多く見られる。一方、 「他児童に干渉しが. で行う更衣やカームダウンといったように、行為の性質. ち、されがちな児童生徒がいるため」、 「情緒的に不安定. が自己領域化空間に大きな影響を与えている事が分かる。. な児童生徒がいるため」 「音に敏感な児童生徒がいるため」. 次に、表5に自己領域化空間の境界を構成している物. 「体力上適度に休む必要があるため」等、多様な児童生徒. 品を示す。多くの事例では、複数の物品が組み合わされ. の特性に起因した理由もみられる。さらに「男女の性別意. て空間を形成しているが、教諭の手による「自作物」、特. 識を身につけてほしい」 「人に見られないように更衣すベ. に「段ボール」を用いる例が特に多いことが分かる。これ. きことを理解してほしい」ための「更衣」の空間、 「休み時. は加工や設置除却が容易であるためと考えられ、児童生. 間と授業時間の区別を付けてほしい」ための「カームダウ. 徒の状況に応じた空間の可変性の重要さを示唆している。. ン」 「遊び」等、自己領域化空間による教育効果を狙った理. 最後に、表6に自己領域化空間の設置理由を示す。い. 由も多く見られ、積極的に空間を教育に活用していこう. ずれの行為目的においても、 「視覚・聴覚刺激を減らす」 「場. という教諭の姿勢が窺われる。. 29-2.

(3) 4. 学級教室構成の特徴. 更衣を習慣付けようという工夫が見られる事が分かる。. 4-1. 調査について. また、教室の窓際や出入り口から対角線付近は、採光. 3章における4種類の自己領域化空間に「集団活動に用. や通風、動線的に環境が安定しているという意識を教諭. いるスペース」と、集団になじめない児童生徒が活動の多. が持っている事例が多く見られる(事例 d,f,g,h,i,j,n)。設. くを行う場である特定児童生徒の「生活空間」を加え、各. 置されている空間には多様性が見られるが、 「個別学習」の. 校の2〜3学級について学級教室構成の調査を行った(図. 自己領域化空間を設置した事例より(事例 h,i)も、落ち着. 3)。ここでは、” どのような活動を行う空間か ” という「行. いた余暇のために「カームダウン」 「遊び」 「特定児童の生. 為系」の視点と、” どのような児童生徒が用いる空間か ” と. 活スペース」を設置している事例(事例 d,f,j,n)が多い。. 文 3). いう「主体系」の視点から分析を行った. 全体として行為の性質と既存の教室環境を関連付けた. 。. 4-2.「行為系」からみた教室空間構成の特徴. 空間構成がなされている事が分かる。. 各校の教室空間構成について「行為系」の視点から見た. 4-3.「主体系」からみた教室空間構成の特徴. 場合、複数事例に共通する空間構成の特徴が見られる。. 同様に教室空間構成について「主体系」の視点から見た. まず、黒板を中心とした集団活動スペースの確保を重. 場合、複数事例に共通する空間構成の特徴が見られる。. 要視している事例が複数見られ(事例 c,d,i.k)、多くの事. まず、身体能力に障害を抱えている児童生徒の空間は、. 例で教室空間構成の中心となっている。これは特別支援. 負担軽減のため出入り口付近に設置されている(事例 h,n)。. 教育においても集会等の集団活動が重要であるという理. また、周辺環境に気を取られがちであったり集団活動. 由や、児童生徒のスケジュールが掲示されることで各活. になじめない児童生徒に、専用の「個別学習」 「専用の生. 動間の中継地となっている事が背景にあると考えられる。. 活空間」が設置される事例が多い。しかし、設置位置をみ. 次に、出入り口付近に意識して「更衣」の自己領域化空. ると移動を減らし刺激を少なくするために出入り口付近. 間が設置されている事例が多く見られる(事例 d,f,g)。比. に設置した事例(事例 f)と、環境の落ち着いた教室奥や教. 較的新しい Us 特別支援学校や Kr 特別支援学校には出入り. 室外に設置した事例(事例 b,d.i,h,l)の二通りがある。. 口付近にカーテンが設置されており、そのまま更衣に用. また、児童生徒の関係を秩序付けるために空間設置が. いている(事例 h,i,j,k,l,)が、他の学校でも登校や外出後の. なされる事例もある。他児童に干渉しがちな児童生徒を. 事例 a. H 市立 Hc 特別支援学校 (留意した点). 学. 学. 小 3-1. 児童:5 名. 着. 事例 b. 専. 中 2-1. 着. ・自閉傾向のある生徒は避難でき 児童:4 名 る場所があることで落ちついた生 肢体不自由2名 活ができている(本人は「基地」 とよんでいる). 担任:2 名. 女子. (留意した点). 専. 児童 A 児童 B. 集 着. 着. 着. 児童 C 児童 D 児童 E. 事例 d. 小 4-1. 知的重複学級 担任:3 名 児童:7 名 自閉症4名 てんかん発作1名 ダウン症1名. 集 専. 着. 女子. 事例 e. 自閉症 6 名. 着. 男子. カ 着. 女子. 中 2-3. 知的重複学級 担任:3 名 児童:7 名. 着. カ. 生徒 A. 集 着. 男子. 専. 学. 生A. 着. 学. 学. 生A. 女子. 着. 男子. 生 D 生 A,D. カ. 学. 生D. 遊. 学 生D. 学. 学. 生B. 遊. 遊. 生C. 生C. 生B 生C. ※生⃝=生徒⃝. 学. カ. 着. 集. 学. 児童 C. 担任:2 名. (留意した点). 遊遊. 学 学. 着. 集 カ. 中1. 集. 学 学 カ カ. (留意した点). 着. 集. 学. 児童 A. 専 着. 着. 集. 徒(生徒 A と生徒 B)が使用する 空間を離すようにした. 事例 m. 29-3. 集. カ. 児童 B. 知的障害 +医療ケア1名. ・個別指導の際、必要に応じて共 用部を簡易間仕切りで区画して いる ・休憩スペースの配置は、共用部 とトイレへの動線を考えて決定 した. トイレ. 事例 n. 小 2-2. 図 3. 各校における教室空間構成の実態と考え方. ・集団になじめない児童のための 空間を当初は教室内に設置してい たが、適応できなかったため教室 外の廊下端を囲いそのスペース に充てた所落ち着くようになった. (留意した点). カ. 児童 A. 児童:2 名. ・教室内で動線が交差しないよう 意識し、学習のスペースを中心 とし周辺部に余暇のためのスペー 肢体重複学級 スに配置した 担任:2 名 ・教諭と一緒に課題に取り組む学 児童:3 名 習スペースは指導しやすいよう 知的障害 3 名 後部中央に、児童一人で課題に取 (車椅子使用2名) り組むスペースは動線的に環境が 安定している教室奥に設置した ・集団で活動する際、共用机の配 置移動で活動を分けているため広 い共用スペースを確保した ・カームダウン、休憩のスペース は動線的に環境が安定している教 室奥に設置した ・領域化なされていない環境への 適応のため、徐々に間仕切りの 高さを下げている. (留意した点). ※二教室を繋げて中 1 全体で使用. 小 1-1. ・休憩、カームダウンスペースは 全員の共用となるため教室後部 中央に設置した. ・集団での活動を身につける上で、 時間割や各児童の活動予定等が掲 示されている黒板やその回りのス ペースが非常に重要である ・落ち着きのない児童の個別指導 の際に簡易間仕切りを用いていた が、最近はその必要性が なくなってきている. S 県立 Kn 特別支援学校. ・落ち着きのない児童の学習ス ペースは教室奥に、歩行困難を 伴う児童の学習スペースは入り口 肢体重複学級 付近に設置した 担任:1 名. (留意した点). 着. S 県立 Kr 特別支援学校. 事例 l. ・外出後の更衣を習慣付けるため 更衣スペースを入り口付近に男女 知的単一 , 重複 別に設けた ・環境の安定している窓際に休憩、 担任:5 名 カームダウンのスペースや遊びの 児童:10 名 スペースを設置した 自閉症 8 名 ・各スペース配置は相性の悪い生. (留意した点). 事例 j. ・性別意識を育むため、教室の一 児童:5 名 部を区画し別室を作り中学部共用 自閉症4名 の女子更衣室としている 自閉症+ 脳性マヒ1名. 小 1・2. (留意した点). 学. 事例 k. ・聴覚過敏の児童の専用スペース を、静かな教在庫内に設置した ・教室内での動線の流れを意識し、 知的単一 , 重複 外出後の更衣、そして共用スペー 担任:4 名 スで集合する流れを空間化した 児童:5 名 ・カームダウン、休憩のスペース 自閉症 2 名 や遊びのスペースは動線的に安定 ダウン症1名 している教室奥部に設置した 自閉症+ ダウン症 1 名. S 県 Us 特別支援学校. 事例 i. 中 2-1. 男子. 遊. 学. 生A. 児童 B. ・パニックをおこす児童のため、 教室後方にカームダウンの空間を 知的重複学級 設置した. 着. 学 遊 カ. 担任:2 名. 小 6-2. 着. 女子. 集. 学 学. 児童 A. ・黒板前にまず全員が集合できる スペースを確保した ・集団生活になじめない児童のた 知的重複学級 めの専用空間は、動線的に環境が 担任:2 名 安定しており光や風が入る教室再 児童:3 名 奥部に設置した 運動協調欠陥 1 名 ・登校時や外出後の更衣を習付け 小頭症1名 るため更衣スペースは出入り口付 近に設置した (留意した点). 専学学. 小 2-2. ・教室奥に位置する更衣コーナー 児童:3 名 が自然と、特に自閉傾向の強い児 自閉症 2 名 童の専用スペースとなっていった サイトメガロウイ ルス感染症1名. (留意した点). 児A. 事例 h. ・背面黒板を集会、前面黒板を 一斉指導と使い分けており、まず そのスペース確保を念頭においた 知的重複学級. 着 着. トイレ. 自閉症4名 小脳欠損1名. 男子. 中 1-2. H 市立 Hh 特別支援学校. (留意した点). 事例 g. ・重度精神障害の生徒は集団での 活動ができないため、遠くの言語 訓練室で活動の大半を行っている 知的単一 , 重複. 集. 自閉症 3 名 軽度肢体マヒ1名 重度精神障害1名. 知的重複学級 担任:3 名 児童:6 名. (留意した点). 着. 専. 知的重複 , 重複 担任:3 名 児童:7 名. 小 2-1. ・集団での活動は、自立している 自閉症 2 名 児童が机を個別学習コーナー付近 ダウン症1名 に移動させて行う事もある. S 県立 Yt 特別支援学校. トイレ. 集. 自閉症3名 軽度肢体マヒ1名. 事例 c. 小 5-3. 児童 A 児童 B. 知的重複 , 重複 担任:2 名 児童:4 名. 事例 f. ・窓側は車が通る時等に児童が気 を取られるので、磨りガラスに なっており刺激が少ない廊下側に 知的重複学級 個別の学習スペースを設置した 担任:2 名. (留意した点). 専. 集 着. 児童 A. 着. 児童 B. トイレ. 各自己領域化空間内の用途. 集. 集団活動 に用いる. 専. 特定児童の 生活空間. 学. 個別学習・指導 に用いる. カ. カームダウン、 休憩に用いる. 着. 更衣に用いる. 遊. 遊びに 用いる. 利用する児童が 利用する児童が 決まっている 不確定 児童 A. ・更衣のほか休憩にも用いられる スペースは明るく落ちついた教室 奥に、トイレへの動線の妨げにな らないように配置した ・歩行困難ではあるが独力で移動 でき知的障害の軽い児童の専用 コーナーは、壁面の掲示が多く移 用でき入り口から近い教室隅部に 設置した. 各記号の意味 教室. (枠外は別室利用 を表す). 教室入り口 黒板 窓面 ※流し、教材置き場、教員スペース等は省略.

(4) 特別支援学校   小   ー ︵ 事例   ︶  図  . Us 観察対象児:児童 A 聴覚障害、軽度の歩行障害あり。 観察対象児:児童 B 自閉傾向を持ち、人間関係を築くのが苦手。 課題には集中して取り組む事ができる。 観察対象児:児童 C 自閉傾向を持ち、人見知りをしたり周囲の環 2 境に気を取られ易い。知的な発達度は高く、 簡単な会話は可能。 2. 間を離して設置した事例(事例 g)が見られる。 全体として、児童生徒の抱える問題や、児童生徒間の 人間関係に応じた空間構成がなされている事が分かる。 5. 自己領域化空間における児童生徒の生活実態. 3. 5-1. 調査について. h. 3,4 章における考察を踏まえ、特別支援教育において特. 児童 A. 居場所の時系変化. 分離する事例(事例 b,d,h)、相性の悪い児童生徒同士の空. 9:30. 10:00. 11:00. 2 限:自立活動 児童 A 児童 B 児童 C. 授業開 始を告 げら れる. 11:30. 12:00. 4 限:生活単元学習. 各自 好きな 場所で 休み時間. 授業開 始を告 げら れる. 休憩を 促され 児童 C 休憩. 休憩を 促され 児童 B 休憩. 片付け 後給食 準備へ. 共用空間. カームダウン. 個別学習 A 個別学習 B 個別学習 C. 休憩中の児童 が目に入ら ないよう調整. 個人学習 A. 児童 B. 個人学習 B. 共用空間. カームダウン. 児童 C. に空間面での対応が求められると思われる場面について、. 個人学習 C. 課題終了後 休憩. 行動観察調査により実態把握を行った。. 課題に取り組む児童 A・B 教諭は巡回して指導. 課題の終了した 児童 C の休憩. 居場所の時系変化. 図 4. 個別の課題を中心とした授業の事例 Hh 観察対象児:児童 D 高機能自閉症を抱えており、知的な発達度は高く 日常会話や簡単な計算は可能である一方、人見知 りしたり他児童への干渉行為が多く人間関係を築 くのが苦手である。特にお絵描きが好きで、自分 の生活空間に籠って作業するのを好む。 特別支援学校   小   ー ︵ 事例   ︶  図  . 5-2. 個別の課題中心の授業 特別支援教育においては各児童生徒に個別の課題を設 定する事が多く、課題に集中できる環境を整える事は極. 12:10. 12:20. 12:30. 12:40. 12:50. 共用空間 共用部境界 生活空間 D. 合唱や楽器 演奏. 1. 例を示す。本学級では、人間関係に課題を抱える児童が. 12:00. 4 限:音楽 授業開 絵を 片付け 始を告 見せに 書き 出て 書き 出て 後給食 げられる 出てくる 直す くる 直す くる 準備へ. 共用空間. 4. めて重要である。図 4 にそのような活動が多い学級の事. 11:50. 児童 D 他児童. 3. 多く、児童間の関係の秩序化が重要であった。教諭は巡. d. 共用部境界. 児童 D 生活空間 D. 回指導を行い、休み時間や区切りの良い所で休憩を児童. 書いた絵に ついて教諭 と会話練習. 絵を書く. 児童 D の生活 空間での様子. 生活空間から出て 教諭に書いた絵を見せる. 特別支援学校   中 ︵ 事例   ︶  図  . Kr 観察対象児:生徒 E 重度の自閉症を抱えており、集団生活になじむ事 ができない。元々教室隅に専用空間を設置してい たが落ち着かなかったため、廊下隅に専用空間を 移動した所落ち着くようになった。一方で教諭は 集団活動に慣れさせるため連出す努力もしている。. 空間」の配置の工夫に加え、利用時間を調整し他児童の移 動や休憩が目に入らないような配慮がなされていた。 5-3. 発達度の異なる児童生徒の取出し授業. 1. 特別支援学校の学級には様々な児童生徒が在籍してお. 3. り、特に発達度の高い、あるいは低い児童生徒を集団活. アルコーブ 少し授業 の様子が 見える. 生徒 E. 10:40. 生徒 E 他生徒. 11:00. 11:30. 3 限:図工 教諭が 他生徒が様子 生徒 E を を見に来た 呼びにいく ので避難する. 12:00. 12:30. 4 限:図工 自発的 片付け にカーム 後給食 ダウン 準備へ. 教室内 アルコーブ 生活空間 E. 適宜自分の 生活空間に 避難. 生活空間 E. l. 動から切り離し個別の指導を行うことがある。図 5 にそ. 居場所の時系変化. 図 5. 発達度の高い児童に対する取出し授業の事例. に取らせているが、休憩に用いる「カームダウン」 「共用. 教室内 はさみ・のり 等を用いた工作. のような活動が実施されている学級の事例を示す。本学. アルコーブでの 授業の様子. 自分の気分に 応じて避難. 図 6. 教室外を利用した授業の事例. 級では、学年が教室内において合同で音楽を行っている. 1)児童生徒の障害や学齢によって自己領域化空間の設置. 中、知的な発達度の高い児童 D のみが別の課題を設定さ. に対するニーズは大きく異なり、様々な空間を設置・撤. れていた。児童 D がお絵描きを好むのを利用して、自分. 去できるような配慮が求められること。. の生活空間で絵を描いた後、その作品について会話する. 2)自己領域化空間の配置について「行為系」から見た場合、. 言語訓練が行われた。慣れ親しんだ空間、活動であった. 入り口付近の「行為」の空間から教室奥の「カームダウン」 「特定児童の生活空間」等まで既存の教室環境に対応した. ため、音や運動を伴う活動がすぐ近くで行われているに もかかわらず児童 D は集中して課題に取り組んでいた。. 空間配置となっていること。. 5-4. 集団との多様な距離感の確保. 3)自己領域化空間の配置について「主体系」から見た場合、. 特別支援学校においては集団活動になじめない児童生. 児童生徒の身体能力や自閉傾向の有無、児童生徒間の人. 徒のために、隔離度の高い空間を設置することが多い。. 間関係が大きく影響を与えていること。. しかし一方で、そのような児童生徒の集団参加を促す事. 4)教室内外の多様な自己領域化空間によって、個別化さ. も重要である。図 6 に廊下に特定の生徒の生活空間を設. れた課題への集中、全く異なる授業活動の共存、他児童. 置した事例を示す。本学級の生徒 E は重度の自閉症を抱. 生徒との適切な距離感の確保等、特別支援教育における. えており、教室近くの廊下端に生活空間を移動した所落. 重要課題の解決が図られていること。. ち着くようになった。しかし、集団活動に慣れていくため、. 今後の研究課題として、自己領域化空間の可能性を踏. 廊下のアルコーブを利用して教室外から雰囲気を感じさ. まえ、現場のニーズや工夫を適切に受容できる特別支援 学校の在り方を呈示する事が求められるであろう。. せながら授業に参加させようとしている場面が見られた。 生徒 E も状況や気分に応じて生活空間に適宜避難してお り、多様な場が提供される事で安定した活動ができていた。 6. まとめ 本研究によって、以下の事が明らかとなった。. (参考文献) 1) 佐々木正美:自閉症児のための TEACCH ハンドブック、学習研究社、2008 年 3 月 2)G. メジボフ+ M. ハウリー著、佐々木正美監訳:自閉症とインクルージョン教育の実 践、岩崎学術出版社、2006 年 11 月 3) 青木正夫、竹下輝和:保育所乳児部(3 歳未満児)の平面計画構成に関する研究 そ の 3 ほふく室の空間概念と設計指針固定化の歴史的解析、日本建築学会論文報告集第 314 号、1982 年 4 月. 29-4.

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参照

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