博 士 ( 医 学 ) 大 江 真 司
学 位 論 文 題 名
Beta2 adrenerglCreCeptorgenereStriC 伍 Onfragment 1engthp01yn10rphiSnlandbronChialaSthma
( B2 アドレナリン受容体遺伝子制限酵素断片長多型と気管支喘息)
学 位 論 文 内 容 の 要 旨
I目 的
気 管支 喘息 の発 症に | ま、 遺伝 的要 因が 関 与す ると いわ れ ている。 気管支喘息の発症のーつ の 要 因 と し て 推 定 さ れる ロア ド レナ リン 系の 機能 異 常が 遺伝 的に 規 程さ れて いる 可能 性 を考 慮 し 、 気 管 支 喘 息 患 者 お よ び そ の 家 族 を 対 象 と し 、 近 年 報 告 さ れ た 制 限酵 素Ban−Iに よる ロ2ア ド レ ナ リ ン 受 容 体 遺 伝 子 制 限 酵 素 断 片 長 多 型(Beta2 adrenergic receptor gene r'estriction fragment length poly Iorphisi,ロ2一ADR Ban−lRFLP)を検出し、アト ピー素因
・ メ サ コ リ ン やB2刺 激 薬 に よ る 気 道 反 応 性 ・ 気 管 支 喘 息 の 頻 度 な ど と の関 連を 検討 し た。
II対 象
4家 系58名 の 気 管 支 喘 息 患 を 対 象 と し た 。 ま ず 対 象 者 に ア メ リ カ 胸 部疾 患 学会 質問 表に 則 り 呼 吸 器 疾 患 ・ ア レ ル ギ ー 性 疾 患 に 関 す る 間 診を 行っ た。 続 いて 以下 の各 種 検査 を行 った 。 1)アトピー素因の検索:26種類の主要吸入抗原による皮膚プリックテスト、血清総lgE (RIS´I法)、
16種 類 の 吸 入 抗 原 に 対 す る 特 異 的IgE測 定(MASI法 ) を 施 行 し 、 プ リ `yク テ ス ト 陽 性 、 血 清 総IgE> 250U/ml、 特 異 的IgE陽 性 の い ず れ か を 満 た す 場 合 に ア ト ピー 陽 性と 定義 した 。 2) メサ コリ ン およ びロ2刺 激剤 (サ ルブ タモール )に対する気道反応:アスト グラフを用い、呼 吸 抵 抗 を 持 続 的 に モ ニ タ ー し 、 ま ず メ サ コ リ ン を 低 濃 度 か ら1分 ご と に順 次 濃度 を上 げな が ら 吸 入 さ せ 、 呼 吸 抵 抗 が 初 期 値 の2倍 に 達 し た 時 点か らサ ルブ タモ ー ルを4分 間吸 入さ せた 。 メサ コ リン の気 道反 応性 の 指漂 とし て呼 吸 コン ダク タン ス(Grs:呼吸 抵 抗の 逆数 )を35%低下さ せ る 累 積 メ サ コ リ ン 濃 度PD35を 、 サ ル ブ タ モ ール に対 する 気 道反 応性 の指 標 とし てサ ルブ タ モ ー ル 吸 入 後 のGrs上 昇 線 の 傾 き ( ロ ーSGrs: △Grs/At) とGrs改 善 の 絶 対 量 値 (abs‑ロ −Grs)を用 いた 。健 常人 で の平 均値 ー2SD以 下を 異常 と し、 メサ コリ ン気 道 反応 性では PD35く1.39Uを 気道過 敏性陽性、ロ‑SGrsく0.02、abs‑ロ一Grsく0.035をサル ブタモール気道反 応性 低 下と した 。3)DNAの抽 出とRFLPの 検出 :末 梢血 の 自血 球よ りDNAを 抽出 、制 限 酵素Ban−I で 消 化 し 、 ア ガ 口 ー ス ゲ ル で 電 気 泳 動 後 、 サ ザン 法に よル ナ イロ ン膜 に転 写 し、 放射 性同 位 元 素 で ラ ペ ル さ れ た ロ2← ADRア ロ ー ブ で ハ イ ブ リ ダ イ ズ し た 。 4) 末 梢 血 単 核 球 cyclic AMP(c一AMP)反 応 : 末 梢 血 よ り 比 重 勾 配 法 に よ り 分 離 し た 単 核 球 に ロ 刺 激 剤
(イ ソ プロ テレ ノール )を10―8から10ー5の濃度で 加え、産生されるc―AMP量 をRIA法により測定 した 。 ‑‑AMPの 検討 は遺 伝 子型 が判 明し て いる 健常 者で 行っ た 。デ ータ の解 析: 遺 伝型 の解析 はDavieの シ ン グ ル ス 法 を 、 連 鎖 解 析 はLIPEDプロ グラ ムに よ る口 ッド スコ ア 法を 用い た。 二 つの 遺 伝子 型別 の気道 反応およびc−Al*fP反応の検 討に1まStudentのunpairedt一testを、喘息や 喘鳴の頻度の比較 にはズ2検定を用い、pくO. 05を有意とした。
m結 果
4家 系は それ ぞれ17,12,13,16名より 構成 され てい た。ア トピ ーと 診断 された のIまそ れぞ れ
12 (70.6゜/。 ),8(75名) ,8 (61.5。/。 ),14名(87.5% )、気 道過 敏性 亢進者はそれぞれ6(う5.3め,7 (58.う゜/。),
4 (30.8゜ / 。 ) ,7名 (43. 鵑 ) で あ っ た 。4家 系 合 わ せ て12名 (20.7め の 喘 息 患 者 が 見 い だ さ れ た 。 気 道過 敏性 亢進者 の遺 伝形 式は 、常染 色体 優性 遺伝に 矛盾 しな い結 果が得 られ た。 アト ピーと
非ア トピ ーでtIよ気 道過敏 性亢 進の 有無に 関し て有 意差 はなか った 。
ロ2−ADR Ban―IRFLPとし て2つの 型のallele2. lkb,2.3kbが 確認さ れた(2. 3kbのホ モ型 、
2. 3kb,2.lkbの ヘ テ 口 型 、2.lkbの ホ モ 型 ) 。 ロ2―ADR Ban―IRFLPと 気 道 過 敏 性 の ロ ッ ド ス コ ア は9 ‑ 0.1で ・.3以 下と なり 、連鎖 は否 定さ れた 。ロ2―ADR Ban−lRFLPと ロ刺激 剤に 対す る気道
反応 性の ロ`yドス コア は、 兮:0.1で0.4と正 であ ったが 、有 意な 連鎖と は言 えな かっ た。
allele2.3kbに 着目 した 気道過 敏性 の指 標で あるlog (PD35)の 関係 で1ま、allele2. 3kbの有 無 とlog (PD35)に は有 意差は なか った 。allele2. 3kbに 着目 した気 道反 応性 の指 標であ る
absー ロ ―Grs, ロ ーSGrs, ロ‑SGrs/Grs. min.の 関 係 で は 、allele2.3kb( ― ) 群 で は ( + ) 群 に 比 ペ abs‑ロ‑‑Grs,ロ ーSGrs, ロ‑SGrs/Grs. min.は 有意 に小さ く、 ロ刺 激葉 によるGrsの改 善が悪 かっ
た 。 喘 息 患 者 の 頻 度 をallele2. 3kbに 着 目 し て 相 関 を み る と 、allele2. 3kb( ― ) 群 で は ( + ) 群 に 比ベ 、有 意に喘 息の 頻度 が多 かった (z 2=6. 89,pく0.01)。喘 鳴の 症状 の有 無に関 して も同 様
であ った (ズ2=6. 82,pく0.01) 。
末梢 血単 核球 のイ ソプ口 テレ ノー ルに対 する 反応 はallele2. 3kb( 一冫 群で は(+ )群 に比 ペ 10−5の濃 度に おい てc−AMPの産 生量 が低 い傾向 を呈 した 。
1V考 案
気 管 支 喘 息の 発 症 に は遺 伝 的 素 因が あ る こ とは 以 前 よ り知 ら れ て いる 。 気 管 支喘 息 の 特 徴 で あ る気 道 過 敏 性も 遺 伝 的 に規 定 さ れ てい る こ と が指 摘 さ れ てい る 。 こ れま で 、 気 管支 喘 息 患 者 のロ ア ド レ ナリ ン 受 容 体機 能 低 下 に関 し て 多 数の 研 究 が ある が 、 こ の機 能 低 下 が遺 伝 的 に 規 定 され て い る か否 か は 不 明で あ っ た 。近 年 ヒ ト ロ2一ADR遺 伝 子DNAがク口 ーニング され、
第5染 色 体 長 腕(5q31‑32)に 存 在 す る こ と が 明 ら か に な っ た 。Lentesら は 、 白 人 に つ い て ロ2受容体 遺伝子の 多型を 報告し た。本 研究で は、日本人においても2. lkb,2.3kbのロ2−ADR遺 伝 子Ban一IRFLPが存 在 す る こと を 確 認 した 。 さ ら に、 気 管 支 喘息 患 者 家 族で の 解 析 では 、 こ のRFLPと メ サ コリ ン 気 道 反応 性 と の 関連1ま 否 定さ れたが 、ロ2刺 激藁に よる気 道反応性 との関 連 で は、 口 ッ ド スコ ア が0.4と 正 の値 を と り 、否 定 も 肯 定も で き な い結 果 で あ った 。 し か し allele2. 3kb(・冫群ではallele2. 3kb(+)群に比ペロ2刺激藁による気道反応性が有意に低下して い た。また 気管支 喘息患 者の頻 度や畷 鳴の頻 度もallele2. 3kb(−) 群で有 意に多 かった 。さら に 、 allcle2. 3kb( っ群では、末梢血単核球のロ刺激藁に対するc‑AMP反応が低下傾向を認めた。
こ れ ら の結 果 か ら 、Banー1RFLPで 検 出 さ れる ロ2一ADR遺 伝 子多 型 が ロ2アドレ ナリン 受容体 機 能 や 気管 支 喘 息 の発 症 と 関 連す る 可 能 性が 示 唆 さ れた 。 本 研 究で は 、Ban―IRFLPの 原因 と な るDNAの 変異 が ロ2―ADR遺 伝子 の ど の 部位 に 存 在 する の か 、 その 変 異 が どのよ うな機序 で気道 反 応 や喘 息 の 発 症と 関 連 し てい る か は 明ら か で な い。 ま た 今 回の 検 討 は 気管 支 喘 息 家系 で の 検 討 で ある こ と か ら、 ロ2ーADR BanーIRFLPと 気 管 支喘 息 と の 関連 を 確 定する には、 変異部 位 の決定や血縁関係のない喘息患者での検討が必要である。
V 結 論
(1) ロ 2ーADR遺 伝 子BanーIRFLPが 日 本 人 に お い て 存 在 す る こ と を 確 認 し た 。
(2)多型に関して、 arlele2. 3kb(―)群でIまallele2. 3kb(+)群に比ペロ2刺激藁による気道反 応性 が 低 下 して お り 、 気管 支 喘 息 患者 の 頻 度や喘 鴫の頻 度も多 く、Ban―1RFLPで検 出され る ロ2ーADR遺 伝 子 多型 がロ2アドレ ナリン 受容体 機能や 気管支 喘息の発 症と関 連する 可能性 が示 唆された。
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学位論文審査の要旨 主 査 教 授 葛 巻 副 査 教 授 吉 木
暹 敬 副 査 教 授 川 上 義 和
学 位 論 文 題 名
Beta2 adrenergic receptor gene restriction fragment length polymorphism and bronchial asthma
(p2 アドレナリン受容体遺伝子制限酵素断片長多型と気管支喘息)
気管支喘息の発 症要因としてロアドレナリン系の機能異常があるとする ¨ロadrenergic theory"が提唱されて以来、多くの検討により喘息患者で1まロアドレナリン刺激藁に対する 反応が低下してい ることが明らかにされている,近年ロ2アドレナリン受容体遺伝子がク口 ーニングされ、そ の構造が明らかにされた.また制限酵素Ban―Iによるロ2アドレナリン受 容 体遺 伝子 制限 酵素 断片長多型(ロ2 adrenergic receptor gene restriction fragient length polyrnorphism:B2一ADR遺伝子Ban−lRFLP)が報告された.本研究では喘息患者およ びその家族を対象 とし、ロ2一ADR遺伝子Ban−IRFLPを検出し、アトピ―素因・メサコリンや ロ2刺激藁による気道反応性・喘息の頻度などとの関連を検討した.
4家系58名の喘息患者家族を対象とし、皮膚 アリックテスト、血清総IgE測定(RIS1法)、
特異的IgE測定(MASr法)を施行し、アトピーの 有無を検索した.アストグラフを用い、メサ コリン気道反応性 (気道過敏性)およびサルブタモール気道反応性を検出した.末梢血白血 球よりDNAを抽出、サザン法によりBan―IRFLPを検出した‐末梢血より分離した単核球にロ 刺激剤(イソプ口テレノール)を加え、産生されるcyclic AMP(cAMP)量をRIA法により測定し た,
ロ2−ADR遺伝子Ban−IRFLPとしてallele2. lkbと2.3kbが検出された,アトピー陽性および メサコリン気道過 敏性亢進の遺伝形式は常染色体優性遺伝に矛盾しない結 果が得られた,
RFLPとサルブタモ ール気道反応性の口.yドス コアはヶ‑0で0.4と正であったが、有意な連 鎮とは言えなかった.2. 3kb陰性群では陽性群に比ペサルブタモール気道反応性は悪かった・
喘息患者の頻度および喘鳴の頻度も2. 3kb陰性群では陽性群に比ペ有意に多かった.末梢血 単核球のイソア口テレノールに対する反応は2. 3kb陰性群では陽性群に比ペc‑ANIPの産生量 が低い傾向を呈し た.RFLPとメサコリン気道過敏性には関連はなかった. 以上の結果よル ロ2一ADR遺伝子Ban−IRFLPがロ2アドレナリン 受容体機能や喘息の病態と関連する可能性が 示唆された.
公開発表には約20名が参加し た.審査に当たっては、主査葛巻より1.ロ2アドレナリン 受容体遺伝子の多型の選別について、Ban−I多型を選択した理由、繰り返し配列について多 量の 検 体を 扱え るPCR法 で検 索できる多型がないかどうか.2.実験群について、allele 2. 3kb(+)群のホモとヘテ口間での、受容体機能や気管支喘息発症に差がなかったか、また 末梢血核球c AllPの測定を気管支喘息の家系で行わなかった理由.う.2.3kb(‑)群でのロ2ア ドレナリン受容体遺伝子の機能不全が受容体の数の減少によるか発現低下によるか、.また
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ステ口イドに対する 反応性との関係について,4.喘息の発症機構について、アゴニスト側 の異常はないか.5.検査結果について、他のグルーアより追試がなされているかなどに関 し て質 問を おこ なっ た. 発表 者はこ れらの質問に対して適切な回答を行った.また副査 吉木教授より、1. Reihsaus等により報告されたロ2アドレナリン受容体遺伝子における9ケ 所の多型とBan−I多型との関係、および受容体機能やプ口モーターとの関係.2.メサコリン に対する気道過敏性 とサルブタモ―ルに対する気道反応性間の相関.3.単一優性遺伝が関 与していることを断 定するための条件、とくに検体数の問題について.4. B2アドレナリ ン受容体遺伝子以外 の因子、とくにアトピーの関与について.5.喘息発症の動物モデルに おいて発現する遺伝 子について、質問があった.発表者はこれらの質問に対しても的確な 回答をおこなった. さらに副査川上教授より、1.ロ2アドレナリン受容体遺伝子多型が喘 息の原因と病態のい ずれに関係するかについて.2.サルブタモールに対する気道反応性の 低下の一般および夜間喘息発症への影響について.3. allele2. 3kb(−)におけるロ2アドレ ナリン受容体遺伝子 機能不全の具体的機構.4. ロ2アドレナリン受容体遺伝子機能不全と アトピ一陽性の喘息 発症への影響、についての質問があった,発表者はこれらいずれの質 問に対しても適切な 回答をおこなった,本研究は1968年に提唱された¨ロadrenerglc th‑
eory¨を遺伝子レペ ルで検討し、ロ2アドレナリン受容体遺伝子の機能と喘息の病態とが関 連することを初めて 示した.よって審査員一同はこれらの成果を高く評価し、申請者が博 士 ( 医 学 ) の 学 位 を 受 け る の に 十 分 な 資 格 を 有 す る も の と 判 定 し た ,
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