博 士 ( 歯 学 ) 中 田 貴
' 学 1tL 論文 題 名 CD14 directly binds to triacylated lipopeptides and facilitates recognition of the lipopeptides by the receptor complex of Toll‑like receptors 2 and 1 without binding to the complex
(CD14 は TLR2/TLR1 複 合 体 に 結 合 す るこ と な く TLR2/TLR1 複合体によるりポペプチド認識を増強させる)
学 位論文内容の要旨
微 生 物 な ら ぴ に そ の 構 成 成 分(pathogen―associatedmoleCularpattems、PAMPS) は Tou―likereceptorくTLR冫を介して自 然免疫応答を惹起することが知られている。近年、ヒトに お い て10種 のTLRが 同定 され 、こ れら のTLRは細 菌、 ウイ ルス 、真 菌 、原 虫の 侵入 を感 知す るだ けで なく 、獲 得 免疫 応答 への 橋渡 しを 行っ てい る。TLRの 中で 、特 にTLR2は その特異性 が広く、リポタンパク質、リポペプチド、ペプチドグリカン、リポアラビノマンナン、ポーリン、原虫 のGPトanchoredprotein、酵 母のザイモ ザンなど構造の異なる様々のりガンドを認識する。ま た、TLR2によるトリアシルならびにジァ シルリポペプチドの認識には、それぞれTLR1ならびに TLR6を共受容体としていることが明ら かとなっている。そこで、我々もTLR2によるトリアシルリ ポ ベ プ チ ド で あ るPam3CSK4とPam3CSSNAの 認 識 にTLRlが 補助 レセ プ ター とし て必 要で ある か ど う か を 、TLR2あ る い はTLRlを 共 導 入 し たhumanembryonickidney293(HEK293)細 胞を 用い て、NF一 忙Bレ ポー ター 法で調べた 。しかしながら、これらのトリアシルリポペプチドは TLR2/TLR1によ って 認識 され たが、その 認識レベルは非常に低かった。そこで、これらのトリ アシ ルリ ポペ プチ ド 認識 には 他に 何ら の分 子が 必要 では たいかと考えた。まず、その第一候 補 分 子 と し てCD14を 考 え た 。 と い う の は 、CD14はLPSに 結合 し、TLR4/MD―2複合 体に よる LPS認識に 関与すること、また、TLR2によるペプチドグリカンの認 識を増強することが明らかさ れているからである。そこで、本研究 では、TLR2/TLR1によるトリ アシルリポペプチドの認識に 及ばすCD14の影響を分子レベルで解析した。
HEK293細 胞 にTLR2、TLR1な らぴ にCD14を 同時 に導 入す るこ とに よ ルト リア シル リポ ベプ チド の認 識が 劇的 に 増強 され るこ と、 また 、TLRlが ない とCD14による認識の増強は誘導され ない こと を明 らか に した 。そ こで 、こ のCD14の 認識 増強 活性におけるTLRlの必要性をさらに 解 析 す る た め に 、RNA干 渉 法 に よ りTLR1のmRNAを特 異的 にノ ック ダ ウン した とこ ろ、TLR1 の 発 現 の 減 弱 と と も にCD14に よる 認識 増強 活性 も減 弱し た。 次に 、CD14のど の領 域が この 増 強 活 性 に 重 要 で あ るか を明 らか にす るた めに 、X線 結晶 解析 で明 らか にさ れたN末端 領域 ―663―
のbinding pocket部分を欠失した変異体であるCDl4S39・A48と、を作成し、その増強活性を調べ た 。 そ の 結 果 、CD14の 認識 増 強 活 性は 顕 著 に減 弱 し た。 き ら に、 抗CD14抗 体のCD14の 認 識 増 強 活 性 に 及 ば す 影 響 を 調べ た と こ ろ、 そ の 増強 活 性 が減 弱 し た。 以 上 の結 果 か ら、
TLR2/TLR1に よ るト リ ア シル リポ ペプチ ドの認識 はCD14で増 強され、 その認 識増強活 性には CD14のN末 端領 域 に 存在 す るbinding pocket部分 が重要で あること が示唆 された。 また、 こ の 認識増強 はりコ ンビナン トの可溶 性CD14によっても誘導された。興味深いことにジアシルリ ポ ベプチ ドであるFSL―1を用 いて同 様の実験 を行った ところ 、CD14によ る認識の 増強は起 こ ら なかった 。した がって、 この認識 増強ばTLR2/TLR1に よるトリ アシルリポベプチドの認識に 特 異 的 に 起 こ る こ と が 判 明 した 。 次 に 、CD14の 認 識 増強 活 性 のシ グ ナ ルはTLR2あ る い は TLR1の ど ち らか ら 伝 達さ れ て いる の か を確 認 す る ため に 、TIRド メイ ン を 欠損 し た変 異体 TLR2dE772一S784ならびにTLRldQ636一K779を作成し、CD14による認識増強活性を調べたところ、増 強 活 性 はみ ら れ なか っ た 。こ の こ とか ら 、CD14の 認識 増強 活性のシ グナル はTLR2とTLR1の 双方から伝達されていることが示唆された。
最近、ManukyanらはFRETとFRAP imaging techniqueを用い て、ト リアシル リポベ プチドが CD14に結合し 、さら にこの複 合体がTLR2 ‑ TLR1と 結合し、4分子 複合体 を形成す ること でマ ク ロファー ジを活 性化する 。しかし ながら、我々は、表面プラズモン共鳴法によりPam3CSK4と CD14は5.7ロMの 解離 乗 数 で結 合 し てい る こ と 、ま た 、 免疫沈降 法によ りTLR1はTLR2と 結合 し て い る が 、CD14は TLR2/TLR1複 合 体 に 結 合 し て い な い こ と を 明 ら か に し た 。 以上の結果より、トリアシルリポペプチド認識の分子メカニズムとして、まずCD14がトリアシ ル リ ポ ベプ チ ド に直 接 結 合し 、TLR2/TLR1複 合体 に 結 合する ことなく 、TLR2/TLR1複合体 に トリアシルリポペプチドを手渡すことにより認識を容易にしているのではないかと推察された。
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学 位論文審査の要旨
CD14 directly binds to triacylated lipopeptides and facilitates recognition of the lipopeptides by the receptor complex of Toll‑like receptors 2 and 1 without binding to the complex
(CD14 は TLR2/TLR1 複 合 体 に 結 合 す る こ と な く TLR2/TLR1 複合体によるりポペプチド認識を増強させる)
審査は佐野、柴田および鈴木審査委員全員が出席のもとに、まずは論文提出者に対し て提出論文の内容の要旨を説明させ、提出論文の内容に関する審査委員の口頭試問を 行った。以下に、提出論文の要旨と審査の内容を述べる。
提出論文の要旨
微 生 物 な ら び に そ の 構 成 成 分(pathogen―associated molecular patterns、PAMPs)は Toll―like receptor (TLR)を介して自然免疫応答を惹起することが知られている。近年、ヒトに お い て10種 のTLRが 同 定 され 、こ れ らのTLRは細 菌、 ウイ ルス 、 真菌 、原 虫の 侵入 を感 知す る だけ でな く 、獲 得免 疫応 答へ の橋 渡し を行 って いる 。TLRの中 で、 特にTLR2はそ の特異性 が広く、リポタンパク質、リポベプチド、ペプチドグリカン、リポアラビノマンナン、ポーリン、原虫 のGP卜anchored protein、酵母のザイ モザンなど構造の異なる様カのりガンドを認識する。ま た 、TLR2によるトリアシルならびにジ アシルリポベプチドの認識には、それぞれTLR1ならぴに TLR6を 共受容体としていることが明らかとなっている。そこで、我々もTLR2によるトリアシルリ ポ ペ プ チ ド で あ るPam3CSK4とPam3CSSNAの 認 識 にTLR1が 補助 レ セプ ター とし て必 要で ある か どう かを 、TLR2ある いはTLR1を共 導入 したhuman embryonic kidney 293 (HEK293)細胞を 用 いて 、NFーKBレ ポー ター 法で 調べ た。 しか しな がら 、こ れらのトリアシルリポペプチドは TLR2/TLR1に よっ て認 識さ れた が、そ の認識レベルは非常に低かった。そこで、これらのトリ ア シル リポ ペ プチ ド認 識に は他 に何 らの 分子 が必 要で はな いかと考えた。まず、その第一候 補 分 子 と し てCD14を 考 え た 。 と い う の は 、CD14はLPSに 結合 し 、TLR4/MD−2複合 体に よる
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彦 郎
明
一
英 健
邦
野 田
木
佐 柴
鈴
授 授
授
教 教
教
査 査
査
主 副
副
LPS認識に関与すること、また、TLR2によるペプチドグ リカンの認識を増強することが明らかさ れているからである。そこ で、本研究では、TLR2/TLR1によるトリアシルリポペプチドの認識に 及ばすCD14の影響を分子レ ベルで解析した。
HEK293細 胞 にTLR2、TLR1なら びにCD14を 同時 に導 入す るこ とに よル トリ アシ ルリ ポペ プ チ ドの 認識 が劇 的に 増強 され るこ と、 また 、TLR1が なぃとCD14による認識の増強は誘導され な ぃこ とを 明ら かに した 。そ こで 、こ のCD14の 認識 増強活性におけるTLR1の必要性をさらに 解 析 す る た め に 、RNA干 渉 法 に よ りTLR1のmRNAを特 異的 にノ ック ダウ ンし たと ころ 、TLRl の 発 現 の 減 弱 とと もにCD14によ る認 識 増強 活性 も減 弱し た。 次に 、CD14の どの 領域 がこ の 増 強 活 性 に 重 要で ある かを 明ら かに す るた めに 、X線結 晶解 析で 明 らか にき れたN末 端領 域 のbindingpocket部 分を 欠 失し た変 異体 であ るCD14s3―と 、を 作成 し、 その 増強活性を調べ た 。 そ の 結 果 、CD14の 認 識 増 強 活 性 は 顕 著 に 減 弱 し た 。 さ ら に 、 抗CD14抗体 のCD14の 認 識 増 強 活 性 に 及 ば す 影 響 を 調 べ た と こ ろ 、 そ の 増 強 活 性 が 減 弱 し た 。以 上の 結果 から 、 TLR2/TLRlによ るト リア シ ルリ ポペ プチ ドの 認識 はCD14で 増強 され 、そ の認 識増強活性には CD14のN末 端 領 域に 存在 するbindingpocket部分 が重 要で ある こと が示 唆さ れた 。ま た、 こ の認識増強はりコンビナン トの可溶性CD14によっても誘導された。興味深いことに ジアシルリ ポ ペプ チド であ るFSL−1を用 いて 同様 の実 験を 行っ たところ、CD14による認識の増強は起こ ら なか った 。し たが って 、この認識増強ばTLR2/TLRlによるトリアシルリポベプチドの認識に 特 異 的 に 起 こ る こ と が 判 明 し た 。 次 に 、CD14の 認 識 増 強 活 性 の シ グ ナル ばrLR2あ るい は TLR1の ど ち ら か ら 伝 達 さ れ て い る の か を 確認 する ため に、TIRド メイ ンを 欠損 した 変異 体 TLR2dE772一s7弧ならぴにTLRldQ63679を作成し、CD14による認識増強活性を調べた ところ、増 強 活 性 は み ら れな かっ た。 この こと か ら、CD14の認 識増 強活 性の シグ ナル ばrLR2とTLRlの 双方から伝達されているこ とが示唆された。
最 近 、ManukyanらはFRETとFRAPimagingtechniqueを用 いて 、ト リア シル リポ ベプ チド が CD14に 結合 し、 さら にこ の複 合体 がTLR2・TLRlと結 合 し、4分 子複 合体 を形 成することでマ クロファージを活性化する 。しかしながら、我々は、表面プラズモン共鳴法によりPam3CSK4と CD14は5.7ロMの解 離乗 数 で結 合し てい るこ と、 また 、免 疫沈 降法 によ りTLRlはTLR2と結合 し て い る が 、CD14はTLR2/TLRl複 合 体 に 結 合 し て い な ぃ こ と を 明 ら か に し た 。 以上の結果より、トリア シルリポベプチド認識の分子メカニズムとして、まずCD14がトリアシ ル リ ポ ペ プ チ ドに 直接 結合 し、TLR2/TLRl複合 体に 結合 する こと な く、TLR2/TLRl複 合体 に トリアシルリポペプチドを 手渡すことにより認識を容易にしているのではたいかと推察された。
審 査 委 員 か ら の 質 問 と し て 、
1)sCD14と ア レ ル ギ ー 疾 患 と の 関 連 に つ い て
2) リ ポ ベ プ チ ド の 認 識 に 関 わ るTLR2と そ の 共 受 容 体 で あ るTLR1とTLR6に つ い て 3) TLR1を ノ ッ ク ダ ウ ン す る こ と に よ る 発 現 の 抑 制 の 度 合 に っ い て 4) リ ポ ペ プ チ ド とCD14の 結 合 様 式 と 結 合 部 位 に っ い て
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5)TLR2単 独 よ り もTLR1ま た はCD14の 共 発 現 す る こ と に よ るTLR2の 発 現 増 加 に っ い て 6)FSL‑1刺 激 に よ るlysate中 のCD14の 発 現 増 加 に っ い て
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7)今 後の 研究 の展 望と 発展 性について等についての質問があったが、論文提出者はそ れぞれに的確に解答した。,
自然免疫における抗原の認識は獲得免疫のそれに比して、明らかとされていなかったが、
TLRの発見により自然免疫でもレセプターによる特異的な認識が行われており、そのシグナ ルによる獲得免疫系の活性化など生体の恒常性維持に必須な分子である。本研究はトリア シルリポペプチドの認識に関わるTLR2,TLR1,CD14の分子メカニズムを解明した興味深い 内容である。感染また、それに伴う炎症等の制御にはTLRによる認識のメカニズムを解明する ことは非常に重要であり、本研究はその一助となると考えられ、また臨床応用への発展性の 面でも評価できる内容である。
よって、学位申請者は博士(歯学)の学位授与に値するものと判断し、主査ならぴに副査 は合格と判定した。