博 士 ( 工 学 ) 石 井 宏 明
学 位 論 文 題 名
E2i 型金属間化合物だ相の相安定性と だ十 X 二相合金の機械的性質
学位論文内容の要旨
金 属 間 化 合 物Fe3AIC(K相 ) は ,代 表 的 を 耐 熱材 料 で あ るNi基 超 合 金 の析 出 強 化 相Ni3Al(y 相 ) の 持 つ 結 晶 構 造Ll2構 造 と 類似 し たE21型 構 造 ( ベ ロブ ス カ イ ト 型構 造 ) を 持 って い る . そ の結 晶 構 造 の 類 似性 や , こ れ まで の い く っか の報告 より, だ相に は常 温延性 や高強 度が期 待でき るた め,新 た を析出 強化相 として の利 用を目 指し, これま でにフェライト(ロ相),オーステナイト(y相),Fe3AI と の 複 相 合金 と し て の 研究 が 行 わ れて きた, しかし ,だ相 の析 出形態 を十分 に制御 した研 究は 緒につ い た ば か りで あ り , 組 織形 成 の 支 配 因 子に つ い て も 理解 は 不 十 分 であ る.K相 を含 むニ相 合金の 研究 は , 有 望 なだ 相 自 身 の 機械 的 性 質 のみ をらず ,異相 間の変 形伝 播の理 解にっ をがる と考え られ る.そ こ で本研 究では ,y十だ二 相合金 ,口 十だ二 相合金 の機械 的性 質,お よびE2i型金 属間化 合物 の相安定性 を 明らか にし, 上記課 題を 解明す ること を目的 とし た.
本 論 文 は6章 で 構 成 さ れ てお り 内 容 は 以下 の と お り であ る , 第1章で は 研 究 の 背 景と し て , 高 強 度 ・ 高 耐 熱材 料 が 必 要 とさ れ る 社 会的 要請っ 使用さ れる代 表的 教合金 種,金 属間化 合物の 研究 の現状 に つ い て 述ベ . 二 相 合 金材 料 の 機 械的 性質と 相安定 性の理 解を 本研究 の目的 とする 根拠に 言及 した.
第2章 で は ,Fe‑Mn‑Al‑C四元 系 合 金 に 存在 す る ァ 十 だ二 相 組 織 , お よびLY+K二 相 組 織 の 組織 形 成 の 詳 細 を 明ら か に す る こと を 目 的 とし て,析 出物の 形状, 平均 ラメラ ー間隔 ,各相 間の方 位関 係の解 析 を行っ た.熱 処理に より ,時効 温度の 高い方 からy+x二相,ば十y十だ三相,a十だ二相が得られた. y+K 二 相 は同 一 試 料 内 に 以下 の3種 類 の組 織 , す を わちy相 と だ 相が セ ル 状 組 織を 形 成 し て いる 領 域 ,y 相 中 にO.lpmxlpm程 度 の 微 細 を 柞 状 だ 相 が 析 出 し て い る 領 域, そ し て だ 相 が球 状 化 し て いる 領 域 が 確 認 さ れた . EBSDに よ る 方位 解 析 に よ り ,y相 と だ 相 は, ど の 領 域 にお い て も整合 な結晶 学的 方 位 を 持 っ てい た が , セ ル状 組 織 に お い ては , ラ メ ラ ー界 面 で も あ る(111)を 双 晶界 面と するy相の 双 晶 が確認 された .ロ十 だニ 相は全 面がパ ーライ トに 類似し たラメ ラー状 組織と をっ た.酬 だラメラー間 隔 は 熱 処 理温 度 の 上 昇 およ びMn濃 度の 上 昇 に 伴 い増 加 し た.a(Oll)//K(lll),a[‑l‑ll]//K[‑101]と を るKurdjumov‑Sachsの 関 係 を 持 って い る こ と が 確認 さ れ た .a/K界 面 はこ の 方 位 関 係 を持 つ 面 と 一 定の角 度関係 ををす こと がわか った.
第3章 で は , 第2章 で 得 ら れ た 三 種 の 様 式 の 混 在 す るy+K二 相 組織 の 強 度 を 調ベ , 変 形 後 の方 位 ―41―
解析を行うことでその変形機構に対する考察を行った.各試料は30%以上の圧縮変形においても破 壊せず ,最大 で850MPa程度の降伏強度を持つ合金が得られた.変形後の各領域における方位分析 の結果,y層では広い方位の分布が見られ,結晶の回転を伴う変形が示唆された,同じ領域における だ層では方位分布が狭い事から,変形が少をいと考えられ,だ層はy層の変形に対する障害として機 能していた.y層中の結晶回転の傾向から,変形に寄与する領域は主にセル状領域であること,ラメ ラーの応力軸に対する角度に依存して強度・変形に大きく差が生じることが明らかとをった.これ はだ層がy層内での変形に強い拘束を与え,主たる活動すべり系をラメラー界面に平行を面に限定 するためと結論した.よって転位はラメラー界面ではをくセル界面に集中すると考えられる,これ は,平均ラメラー間隔ではをくセルサイズと降伏応カの関係がHall‑Petch式と類似の関係で記述で きることからも支持される.
第4章で は,第2章で得 られたa+K二相ラ メラー組織の強度を調ベ,変形後の方位解析を行うこ とで変 形機構 に対す る考察を 行った . a+K二相合金は最大で1800MPa以上の高い降伏応カを示し たが,降伏応カの増加に伴い破壊に至るまでの圧縮ひずみ量が減少するとぃう,変形能とのトレード オフの関係とをっていた,変形後の各領域における方位分析の結果,y+K二相合金と同様にだ層の 変形はほとんど生じず,変形はa層によって担われる.結晶回転の解析より,主たる活動すべり系と して選択されるのはa/x対応面であることを明らかにした.これは,対応面と(Y/K界面の角度差が他 のすべり系と比較してより小さく,転位線が長く変形が容易であるためと考えられる.又,降伏応カ の平均ラメラー間隔依存性より,変形は,転位線がラメラー中に張り出していく転位運動により進行 したと考えられる,
第5章で は,Fe‑Mn‑AトC四元 系のa+y+K三 相組織 に対しSi,Geを 添加し,だ相の相安定に寄与 する要因を検討した. Fe‑Mn‑Al‑C四元系にSi,Geを添加した結果。Siの添加では相構成は変化し をいが,Geの添加によりa相が消失した.だ相に対してはSi,Geの双方ともほとんど固溶せず,こ れらはa相もし くはy相に分配されることを明らかにした.だ相の安定性に関して,原子同士の結 合工ンタルピー,および炭素固溶による格子のひずみエネルギーの計算を行った結果。ひずみエネル ギーによる寄与が主であるとの結諭を得た.
第6章では,総括を行った,だ相を含むニ相合金は高い降伏応カと変形能を示し,K相は鉄基合金 の主要強化相として今後の利用が期待できる,一方が他方に対して強度が高い二相ラメラ一組織を もつ合金の変形に対する一般的を理解として,異相界面の結晶学的方位関係が変形の発現に強い影 響を有することを確認できた. E2i型金属間化合物の安定性について,酸化物系ベロブスカイトと 同様,格子形成に伴うひずみの寄与が大きいことが示された.この知見は,鉄基に限らず,C03AIC等 の金属 系ベロ ブスカ イトを含んだ合金開発における添加元素選択の上で大きく寄与すると期待で きる.
‑ 42ー
学位論文審査の要旨
学 位 論 文 題 名
E2i 型金属間化合物だ相の相安定性と だ十 X 二相合金の機械的性質
金属間 化合物Fe3AIC(K相) は、代 表的を 耐熱材料であるNi基超合金の析出強化相Ni3Al(y 相)
の持つ 結晶構 造L12構造と類似したE21型構造(ベロブスカイト型構造)を持っている。その結晶 構造の類似性や、これまでのいくっかの報告より、K相には常温延性や高強度が期待できるため、
新たな析出強化相としての利用を目指し、これまでにフェライト(d相)、オーステナイト(y相)、
Fe3Alとの 複相合 金としての研究が行われてきた。しかし、K相の析出形態を十分に制御した研究 は緒についたばかりであり、組織形成の支配因子についても理解は不十分である。K相を含むニ相 合金の研究は、有望をK相自身の機械的性質のみをらず、異相間の変形伝播の理解にっをがると考 え られ る 。 本 研究 で は 、y十Kニ 相 合金 とa十K二 相合金 の機械 的性質、 およびE21型金 属間化 合 物 の 相 安 定 性 を 明 ら か に し 、 上 記 課 題 を 解 明 す る こ と を 目 的 と し て い る 。 本論文 は6章で 構成されており内容は以下のとおりである。第1章では研究の背景として、高強 度・高耐熱材料が必要とされる社会的要請、使用される代表的を合金種、金属間化合物の研究の現 状について述ベ、二相合金材料の機械的性質と相安定性の理解を本研究の目的とする根拠に言及し ている。
第2章 で は 、Fe‑Mn‑AトC四元 系 合 金 に存 在 す るy十 だ 二相 組 織 、 およ びd十K二相組 織の組 織形成 の詳細 を明らかにすることを目的として、析出物の形状、平均ラメラー間隔、各相間の方 位 関 係 の 解 析 を 行っ て い る 。熱 処 理 に より 、 時 効 温度 の 高 い 方か らy十K二 相 、a十y十K三 相 、d十K二 相が 得 ら れ 、y十に 二 相 は 同一 試 料 内 に以 下 の3種 類 の組 織 、すを わちy相 とK相 が セル 状 組 織 を形 成 し て いる 領 域 、y相 中に0.11pm程度の 微細を 棒状K相 が析出 してい る領 域、そ してK相 が球状 化して いる領 域が確 認されることを示している。EBSDによる方位解析によ り、y相 とK相は 、どの領域においても整合を結晶学的方位を持っているが、セル状組織において は ラメ ラ ― 界 面で も ある(111)を双晶 界面と するy相 の双晶 を確認 してい る。一 方、d十Kニ相 は全面 がパー ライトに類似したラメラー状組織とをることを明らかにし、ラメラー間隔は熱処理 温度上昇およびMn濃度上昇に伴い増加すること、a(Oll)//K(111)、d[‑1ー11]//K[‑101]とをる Kurdjumov‑Sachsの 関係を 持つこ と、a/K界面はこの方位関係を持つ面と一定の角度関係ををす ことを明らかにしている。
‑ 43―
夫 治
明 司
哲 重
英 誠
利 飼
橋 浦
毛 鵜
高 三
授 授
授 授
教
教 教
教 准
査 査
査 査
主 副
副 副
第3章 で は、 第2章 で得ら れた三 種の様 式の混 在するy十K二相 組織の 強度を 調ベ、 変形後の 方 位解析 を行う ことで 変形機構 に対す る考察を行っている。各試料は30%以上の圧縮変形におい て も破壊 せず、 最大で850MPa程度の 降伏強度を持ち、変形後の各領域における方位分析から、v 相では広い方位分布が見られ、結晶の回転を伴う変形が示唆される一方で、同じ領域におけるK相 で は方位 分布が 狭いことから変形が少をく、K相はy相の変形に対する障害として機能すると結論 した。y相中の結晶回転の傾向から、変形に寄与する領域は主にセル状領域であること、ラメラー
(層)の応力軸に対する角度に依存して強度・変形に大きを差が生じることを明らかとした。これは K層 がy層内 での変 形に強 い拘束 を与え 、主たる 活動す べり系 をラメラー界面に平行を面に限定 するためと結諭した。よって転位はラメラー界面ではをくセル界面に集中すると考えられる。これ は、平均ラメラー間隔ではをくセルサイズと降伏応カの関係がHall‑Petch式と類似の関係で記述で きることからも支持されることを示した。
第4章では 、第2章 で得ら れたゼ 十K二相 ラメラ ー組織 の強度 を調ベ、 変形後 の方位 解析を行 う ことで 変形機 構に対 する考察 を行っ ている 。a十K二 相合金 は最大 で1800MPa以 上の高 い降伏 応カを示したが、降伏応カの増加に伴い、破壊に至るまでの圧縮ひずみ量が減少するという変形能 と のトレ ードオ フの関係とをっており、変形後の各領域における方位分析の結果、y十K二相ラメ ラ ー組織 と同様 にK層の 変形は ほとんど 生じず 、変形 はa層に よって担われることを明らかにし た 。結晶 回転の 解析より、主たる活動すべり系として選択されるのはd/K対応面であることを明 らかにした。これは、対応面とa/K界面の角度が他のすべり系と比較してより小さく、運動転位線 が長く教り張り出しが容易であるためであり、降伏応カの平均ラメラ一間隔依存性からも支持され ると結論している。
第5章 で は 、Fe‑Mn‑Al‑C四 元 系 のd十y十K=相 組 織 に対 しSi、Geを 添加 し 、K相 の 相 安定 に 寄与す る要因 を検討 している 。Fe‑Mn‑Al‑C四元系にSi、Geを 添加した結果、Siの添加では相 構 成 は 変 化し を い が、Geの添加 によりd相が消 失した 。K相に 対して はSi、Geの 双方と もほと ん ど固溶 せず、 これら はa相も しくはy相に分配されることを明らかにした。K相の安定性に関し て 、原子 同士の 結合エンタルピー、および炭素固溶による格子のひずみエネルギーを検討した結 果、ひずみェネルギーによる寄与が大であるとの結論を得た。
第6章では 本論文を以下のように総括している。K相を含む二相合金は高い降伏応カと変形能を 示し、K相は鉄基合金の主要強化相として今後の利用が期待できる。一方が他方に対して強度が高 い二相ラメラー組織をもつ合金の変形に対する一般的を理解として、異相界面の結晶学的方位関係 が変形の発現に強い影響を有することを確認できた。E21型金屈間化合物の安定性について、酸化 物系ベロプスカイトと同様、格子形成に伴うひずみの寄与が大きいことが示された。この知見は、
鉄 基に限 らず、C03AIC等の金属系ベロプスカイトを含んだ合金開発における添加元素選択の上で 大きく寄与すると期待できる。
こ れを要 するに 、著者は金属系ベロプスカイトFe3AICの安定性とこれを構成要素とする複相合 金 のカ学 的特性 に新知見を得たものであり、金属材料学に対して貢献するところ大をるものがあ る 。 よ っ て著 者 は 、北 海道大 学博士 (工学) の学位 を授与 される 資格の あるも のと認 める。
− 44−