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LCA (Life Cycle Assessment) 法による 漁業の環境影響評価に関する研究

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Academic year: 2021

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博 士 ( 水 産 科 学 ) 渡 邊 一 仁

     学位論文題名

LCA (Life Cycle Assessment) 法による 漁業の環境影響評価に関する研究

学位論文内容の要旨

【背 景と目的】

  近 年,環境問題に対する意識が高まる中で,漁業の分野に おいても「環境負荷(温室効 果 ガス ) 」と いう 新た な視 点か ら捉 えた産業のあり方が見直され 始めようとしている。

LCA (Life Cycle Assessment)は ,資源の採掘から廃棄にいたるまで,対象とする製品やサ ービ スに関わる物質/技術の連鎖を一貫して捉え,物質やエ ネルギーの消費量と環境への 排 出物 質 を定 量し ,そ の環 境へ の影 響を 評価 する 手法 であ る。LCAは,漁業の分野にお い て も 適 用 事 例 が 報 告 さ れ て い る が , こ れ ま で の 報 告 は 断 片 的な 事 例で しか ない 。   そこ で ,本 研究 では 物質 的な 収支 とエネルギー的な収支を総括 し,産業連関分析法を 応 用し た 漁業 のマ クロ 分析 およ び積 み上 げ分 析の2つの アプ ロー チにより漁業を対象と し たLCAを実 施す るこ とで ,漁 業に お ける 定量 的な 環境 影響 評価 手法の確立を目指す。

また ,この手法を用いることで,漁業の現状を明らかにする 。さらに,得られた結果から 環 境負 荷 の削 減可 能性 につ いて 検討 するとともに,漁業における 環境影響評価のあり方 を提 言することを目的とした。

【漁 業のマクロ分析】

  既存 の 産業 連関 分析 は, すべ ての 漁業や養殖業がーつの大きな 枠組みにまとめられて 評 価さ れ てい ると ぃう 問題 点が あっ た。このような問題点を解決 するために,産業連関 分析 に漁業統計を付加することで,漁業の細分化が可能とな るマクロ分析法を考案した。

また ,この分析法により,漁業種類別,漁獲魚種別,養殖業種別の環境負荷量を算出した。

  分析 を おこ なう ため に, 漁業 経済 調査報告,漁業動態統計年報 ,漁業養殖業生産統計 年 報か ら 必要 デー タを 収集 し, 漁業 のデータベースを構築した。 環境負荷の算出に使用 す る環 境 負荷 排出 原単 位に つい ては ,環境負荷原単位データブッ ク(3EID)を利用した。

    −1476ー

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3EIDは ,1995年 の デ ー タ を 使 用 し た も の な の で , 漁 業 統 計 も す べ て1995年 の も の を 用 い て1995年 の 環 境 負 荷 を 求 め た 。 分 析 の 機 能 単 位 は , 水 産 物 をIt生 産 す る こ と と 定 義し て,

業 態 ご と の 環 境 負 荷 は , こ れ ら の デ ー タ か ら 対 応 す る 項 目 を 機 能 単 位 ご と に 繋 い で い く ことで算出した。

  漁 船 漁 業 は 総 じ て 燃 油 へ の 依 存 度 が 高 く , 定 置 網 漁 業 を 除 い た 漁 業 の 環 境 負 荷 は ,7‑

8割 が 直 接 的 な 燃 油 消 費 に よ る も の で あ っ た 。 生 産 の 多 い 漁 獲 魚 種 で は , 「 貝 類 」 が2.40 (t'C02/t‑product),「イカ類」が2.06 (t‑C02/t‑product),「イワシ類」が1.63 (t‑C02/t‑product) な ど と な っ て お り , 「 サ ケ ・ マ ス 類 」 な ど は 定 置 網 漁 業 へ の 依 存 度 が 大 き い こ と から0.98 (t‑C02/t‑product)と 全 漁 獲 魚 種 の 中 で 最 も 小 さ な 値 で あっ た 。一 方, 養殖 業で は 魚類 養殖 が 貝 類 や 藻 類 な ど に 比 べ て 大 き く, 「ブ リ 類」 が6.8 (t‑C02/t‑product), 「タ イ類 」が6.8 (t‑C02/t‑product)で あ っ た 。魚 類 養殖 では ,餌 料が 環 境負 荷排 出の8割 を占 めて お り, 大き な要因となっていた。

【漁業の積み上げ法によ る分析】

  個 々 の 漁 業 を 評 価 す る た め の 分 析 手 法 を 確 立 す る こ と は , 重 要 な テ ー マ で あ る 。 そ こ で , 漁 業 に 積 み 上 げ 法 を 適 用 す る こ と で , 現 場 に お け る 漁 業 の 定 量 的 な 環 境 影 響 評 価 手 法 を 確 立 し た 。 ま た , こ の 手 法 を 用 い る こ と で , 漁 業 の 環 境 負 荷 量 を 算 出 し た 。   北 海 道 で 生 産 が 盛 ん な ホ タ テ ガ イ と イ カ を 調 査 対 象 と し て 選 定 し た 。 デ ー タ は ヒ ア リ ン グ に よ る 入 手 を 基 本 と し , 不 足 分 に つ い て は 文 献 で 補 っ た 。 ま た , 環 境 負 荷 量 は NIRE‑LCAver3を用いて算 出した。

  い か 釣 り 漁 船 に つ い て は , 排 ガ ス 濃 度 を 煙 道 か ら プ ロ ー ブ で 計 測 し , 排 ガ ス デ ー タ も 取 得 し た 。 こ れ ら の 収 集 デ ー タ か ら デ ー タ ベ ー ス を 構 築 し , 地 域 漁 業 の 操 業 実 態 を 明 ら か に し ,9.9ト ン 級 の い か 釣 り 漁 船 を 対 象 と し て , エ ネ ル ギ ー 収 支 の 定 量 を お こ な っ た 。 解 析 に あ た っ て は 、 エ ネ ル ギ ー の 収 支 原 単 位 皿(GJI百 万 円 ) は 以 下 の 式 で 算 出 し た 。     Et=:FxFhx4186.1x10‑9(3‑1)

こ こ でFは 燃 油 エ ネ ル ギ ー の 投 入 原 単 位 ( 〃 百 万 円 ) ,Fhは 重 油 の 発 熱 係 数(kcaUl)で ある。

  そ の 結 果 , ほ た て が い 漁 業 で は, 地ま き 式漁 業が887.5 (kg‑C02/百万 円) ,垂 下 式養 成法 で は1,175.2 (kg‑C02/百 万 円) が排 出さ れ てい た。 いず れも 燃 油消 費が 環境 負荷 の 主な 要因 と な っ て い た が , 多 く の 資 材 を 投 入 す る 垂 下 式 養 成 法 で は パ ー ル ネ ッ ト や 浮 子 な ど に よ る 養 殖 資 材 も 幾 分 影 響 し て い た 。 地 ま き 式 漁 業 と 垂 下 式 養 成 法 で は 使 用 し て い る 燃 油 の     ‑ 1477―

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種 類が異な ってい たことか ら評価 指標とする環境負荷により,結果に差異が確認された。

  イ カの生産 に関係 する漁業 として ,いか釣 り漁船 のエネル ギー収支を算出すると,183 (GJ/百 万円) であった 。また,NOxを 指標に排 ガス濃 度をみて みると,航走時において,

1,OOOppmか ら1,200ppm,操業時は1,350ppmであった。また,作成したインベントりから いか漁業の環境負荷を,C02を指標として算出すると,いか釣り漁業が14.4 t‑C02/百万円,

大型定置網漁業が0.5 t‑C.02/百万円・,沖合底曳網漁業が9.3 t‑C02/百万円であった。これら 3漁法の 中では ,いか釣 り漁業が 最も大 きな値で あった 。また, いか釣り漁業と大型定置 網 漁業 のC02ベ イ バッ ク タ イム を 求 める と , 累 積C02排出 原 単 位は お よ そ113年で 逆 転 し , 年間 生産額100万円 あたり20年 間では4,150tの 差を生 じること が確認 された。 いか 釣 り 漁 業か ら 排 出さ れ るC02は99% が直接的 な燃油消 費であ り,その およそ70%は集魚 灯 の 光 のた め の もの で あ るこ と から ,過剰 な光カの 抑制に よりC02排出量 の削減が 可能 となることが定量的に示唆された。

【考察】

  漁 業のマ クロ分 析により ,はじめ て漁業 種類別, 漁獲魚 種別,養 殖業種 別の環境 負荷 を 定 量す ることが 可能と なった。 この分 析手法に より, 各業態に おける環 境負荷 の差を 明 確に示す ことが できた。 環境負 荷の分布図において,受動的な漁業である定置網漁業,

は え繩漁業 ,刺網 漁業は環 境に対 して優良な漁業に分類された。また,水産物の生産にお け る 漁業 と養殖業 の比較 では,ブ りやタ イなどの 魚類生 産では漁 業が養殖 業より 優れて お り,貝類 や海藻 類では養 殖業が 漁業よりも優れた値を示した。マクロ分析法は,トップ ダ ウ ン 的に 水 産 業全 体 を 俯瞰 で きる ことか らj水 産業全 体におけ る改善へ 向けた 国や地 方 の漁業政 策にお いて,有 効に活 用できるものと考えられる。一方,現場のデータを利用 し た 分析 として, 漁業に おける積 み上げ 法を確立 した。 積み上げ 法は対象 とした 漁業生 産 シ ステ ムの環境 負荷を 評価でき ること から,現 状,あ るいは漁 業改善の 度合い を把握 す るときに 有効と なる。環 境対応 は,環境報告書などを利用してアピール可能であり,生 産 物 にっ いても他 との差 別化が図 れる。 また,漁 業の当 事者が環 境情報を 入手す ること は ,環境税 のよう な新税が 課され たときにも,適切な対応が可能となる。このような利用 においても本研究で得られた結果は活用できる。

  本 研究に おいて ,物質的 な収支と エネル ギー的な 収支を 総括した 漁業に おける環 境影 響 評 価手 法が確立 された 。本手法 は,持 続可能な 漁業を 環境的な 側面から 支える ための 重 要 な方 法論であ り,今 後は自然 科学や 社会科学 的な知 見と融合 すること により ,更な る発展がなされなくてはならない。

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学位論文審査の要旨 主 査    教 授    三浦汀介 副 査    教 授    木村暢夫 副査   助教授   清水   晋 副査   助教授   藤森康澄 副査   産総研   田原聖隆

     学位論文題名

LCA (Life Cycle Assessment) 法による 漁業の環境影響評価に関する研究

   環 境 調 和 型 の 漁 業 生 産 シ ス テ ム を 構 築 す る た め に , 漁 業 活 動に と も な い 発 生 す る 温 室 効 果 ガ ス 等 の 環 境 負 荷 の 定 量 が 必 要 と な り , 漁業 の 環 境 影 響 評 価 に 対 す る 要 求 が 高 ま っ て い る 。 IS014000s で 規 格 化 さ れ た LCA は , 環 境 に 対 す る 影 響 を 評 価 す る 手 法 と し て 高 い 注 目 を 集 め て い る が , 漁 業 の 分 野 に お け る こ れ ま で の 報 告 は 断 片 的 な 事 例 でし か な い 。 そこ で ,本 研 究は 物 質的 な 収支 と エネ ル ギー 的 な収 支 を 総括 し,

産 業 連 関 分 析 法 を 応 用 し た マ ク ロ 分 析 お よ び 積 み 上 げ 分 析 の 2 つ の 手 法 を 用 い て 漁 業 を 対 象 と し た LCA を 実 施 す る こ と に よ り , 漁 業 に お け る 定 量 的 な 環 境 影 響 評 価 手 法 を 確 立 し , こ の 手 法 を 用 い て 漁 業の 環 境 負 荷 の 現 状 を 明 ら か に す る と と も に , 環 境 負 荷 の 削 減 可 能 性 につ い て 提 言 す る こ と を 目 的 と す る も の で あ る 。 得 ら れ た 知 見 は 以 下 のと お り で あ る。

1 )    既 存 の 産 業 連 関 分 析 法 に 漁 業 統 計 を 付 加 す る こ と で , 漁 業 分 野    か ら 排 出 さ れ る 環 境 負 荷 を 俯 瞰 す る こ と が 可 能 と な る 新 た な マ ク    ロ 分 析 法 を 考 案 し た 。

2 )    考案 し たマ ク ロ分 析法 により,

   の 環 境 負 荷 を 定 量 し ,各 魚 種別 ,    明 確に 示 し た。

漁 業 種 類, 漁 獲魚 種 ,養 殖 業種 別 業 態 別 に お け る 環 境 負 荷 の 差 を

3 ) LCA へ の 漁 業 統 計 の 利 用 に お い て , 統 計 各 種 項 目 の 連 関 を た ど

   れ る デ ー タ 構 造 が 望 ま し く , 推 定 精 度 の 向 上 に は 漁 業 統 計 各 種 資

   料 の デ ー タ 構 造 の 整 備 が 必 要 で あ る こ と を 指 摘 し た 。

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4 )    積 み上 げ法に より ,ほた てが い漁業 ,養 殖業と いか釣り漁業の    環 境 負 荷 を 定 量し た 。生産 額 100 万円 あたり の C02 排出 量に着 目す      ると,ほたてがい漁業では 0.8 t‑C02 /百万円,ほたてがい養殖業で      は 1.2 t‑C02 /百万円であった。一方,イカの生産に関わる漁業では,

   いか釣り漁業が 14.4 t‑COz/ 百万円,大型定置網漁業が 0.5 t‑C02 /百    万 円 , 沖 合 底 曳 網 漁 業 が 9.3 t‑C02/ 百 万 円 で あ っ た 。 5 )    漁 業の インベ ント リ構築 にお いて重 要な項目は燃油であること    を示 した。 一例 として ,い か釣り 漁業 の C02 排出は, 99 %が直接的    な燃 油消費によるものであった。また,燃油消費の 70 %は集魚灯の    使 用 に よ るもの であ ること から ,集魚 灯利 用の改 善に より, 環境    負荷 を効果 的に 削減で きる ことを 示唆 した。

   以上 の成 果は,これまで検討されなかった漁業分野における環境影

響評価 の手 法を具体的に示し,漁業の環境影響水準をより詳細に明ら

かにし たも のであり,今後の漁業研究の新たな展開に寄与するものと

して高 く評 価できる。よって,審査員一同は,本論文が博士(水産科

学 ) の 学 位 を 授 与 さ れ る 資 格 の あ る も の と 判 定 し た 。

   なお , 平 成 18 年 2 月 15 日 の 研 究科 委 員 会 最 終 審査 にお いて, 投票

の 結果 , 総 投 票数 32 票 ,可と する もの 32 票で 研究科 委員 全員が 合格

と判定 した 。

参照

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