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博 士 ( 医 学 ) 古 田 伊 都 子

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Academic year: 2021

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博 士 ( 医 学 ) 古 田 伊 都 子

     学 位 論 文 題 名

Bone mmeral density of the lumbar splnelSaSSOCiated     WithTNFgenepolymorphiSmSlnearly

    pOStmenopauSalJapaneSeWOmen .

     ( TNF 遺 伝 子 多 型 は 閉 経 後 早 期 日 本 人 女 性 に お け る      腰 椎 骨 密 度 と 関 連 す る )

学 位 論 文 内 容 の 要 旨

【はじめに]

骨吸 収性 サイ トカイ ンであるTNFa は,in vitro において破骨細胞を誘導・活性化するこ とが報告されており,開経後女性に起こる骨吸収の増加に関与していることが示唆されてい る. TNF 遺 伝子 locus には 多く の一 塩基 多型 が存 在しており,これらの遺伝子多型とTNF ぱ産生能との関連についての研究はいくっか報告されているが,骨密度との関連にまで言及 した報告は少ない.本研究において我々は,開経後早期日本人女性におけるTNF 遺伝子多 型 と 腰 椎 骨 密 度 お よ ぴ 血 中 TNF ば 濃 度 と の 関 連 に つ い て 検 討 し た .

   [対象およぴ方法]

   竝 墓: 1995 年か ら2003 年ま での 間に 北海 道大 学医学部附属病院産婦人科骨粗鬆症外来を    受 診し た閉 経後 10 年以内の女性531 例のうち,合併症例,エストロゲン製剤服用例,早発    閉 経 例 , 腰 椎 圧 迫 骨 折 例 を 除 く 177 例 (5 6.4 土 4.5 歳 , mean 土 SD ) を 対 象 と し た ・    畳 密 塵 (旦 憇 Q ) 壷 よ 型 血 生 TNFa 堕 測定 : 骨 密 度 は二 重エ ネル ギー X 線吸 収法 (DXA) に      よ り 第2 か ら 第 4 腰 椎 を 測 定 し た . 血 清 中 の TNF ぱ 濃 度 は ELISA キッ ト で 測 定 し た.

   遺 伝 壬 釜型 堕 鰹 抵 : 末 梢 血 自 血 球 か ら DNA を 抽 出 し , TNFn 遺 伝 子 intronl の Nc01site      およ び, TNF apromoter 領域 の‑857(C う叮 ) ‑863(C うA) ,‑1031(T うC) 部位について   RFLP( 制限酵素断片長多型)法で遺伝子多型を解析した.PCR 法で各遺伝子多型部位を含む    ゲ ノ ム DNA を 増 幅 し , PCR 産 物 を 制 限 酵 素 で 切 断 後ア ガ口ー スに て電 気泳 動し た. TNF   p 遺 伝子 多型 は切 断部 位を 持っ もの をb1 ,持 たないものをb2 とし,TNF a‑ 857 ,‑ 863 ,   ‑1031 遺 伝子 多型 はそ れそ れ切 断部 位を 持っ ものを C , A ,C ,持 たな いも のを゛T ,C ,T      としてRFLP 分類した.

   遮註鰹挺:Allele の出現頻度の比較はズ゜検定で行った.骨密度の比較はANOVA ,Fish er s

´PLSD ,血中TNF ぱ濃度の比較はKruscal Wallis test で行った.

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【結果]

1.Alleleの出現頻度と連鎖不平衡

4ケ 所 の 遺 伝 子 多 型 に お け る 各Alleleの出 現 頻度 は既 報の 日本 人に おけ る出 現頻 度と 同等 で あ り , い ず れ もHardyーWeinb erg平 衡 に 達 し て い た .TNF,8b1/ b2はTNF a‑ 857C/T, ー 863C/A,‑ 1031T/Cと 連 鎖 不 平 衡 の 関 係 に あ り ,TNF a‑ 863C/Aは‑ 1031T/Cと 連 鎖 不 平衡の関係にあった・

2.TNF遺伝子型と骨密度

全 症 例 をZ一score( 性 ・ 年 齢 を 一 致 さ せた 正常 値か らの 偏位 )が0以上 の高 骨密 度群(H群 : n=86) と0未 満 の 低 骨 密 度 群 (L群 :n=91) の2群 に 分 け て 比 較 す る と ,TNFぱ‑ 863C/Aの 各 遺 伝 子 型 の 出 現 頻 度 は ,H群 とL群 と で 差 異 が 認 め ら れ た . ま た ,TNF a‑ 863A allele,

‑1031C alleleの 出 現 頻 度 はH群 に 比 ベL群 に お い て 有 意 に 高 か っ た . 各 遺 伝 子 多 型 に お ける 遺 伝子 型と 骨密 度との関 係を検討した結果,出現頻度の低いallele(rare allele)のホモ型 で あ るTNFpbl/ bl,TNFぱ‑ 863A/A,TNF a‑ 1031C/CのZ一scoreは 他 の 型 よ り 低 値 を 示 し , 特 にTNF a‑ 857T/TのZ・scoreはC/T,C/Cよ り 有 意 に 低 値 を 示 し た . 次 に , 4ケ所 の遺 伝子 多型 を組 み合 わせ た 遺伝 子型 と骨 密度との関係について調べた.  rare allele の ホ モ 型 で はZ‐ scoreが 低 値 を 示 し たこ と に着 目し ,こ れら のalleleの合 計数 と骨 密度 と の 関 係 に つ い て 検 討 を 行 っ た . 全 症 例 をrare alleleの 合 計 数 で5群に 分類 (0個 ニn=14,1 個:n =53,2個ニn=72,3個ニn=24,4個ニn=11,5個以上持つ群は無し1して比較すると,Zーscore はrare alleleの 合 計 数 が 多 い 群 ほ ど 低 値 を 示 し た .5群 の 間 にbody mass indexの 差 異 は 認 め ら れ な かっ た. 開経 後早 期女 性の 骨密 度 を予 測す る因 子に っい て重 回帰 分析 を行 った 結 果 , 閉 経 後 年 数 ,body mass indexお よ びrare alleleの 合 計 数 が 独立 因子 とし て選 択さ れ た・

3.TNF遺伝子型と血中TNFa濃度

4ケ 所 の 遺 伝子 多 型の いず れに おい ても ,各 遺伝 子型(TNF,8 bl/ bl,b1/b2,b2b2; TNFぱ − 857C/C,C/T,T/T; TNFロ‑ 863C/C,C/A,A/A; TNFぱ‑ 1031T/T,T/C,C/ C)の 間 に 血 中 TNFぱ濃度の違いは認められなかった.

【 考察 ]

骨 粗 鬆 症 の 病因 ・ 病態 には 遺伝 的要 因が 関与 して いる と考 えら れて おり , いく っか の候 補遺 伝 子 に つ い て は 骨 密 度 と の 関 連 が 調 べ ら れ て い る . 本 研 究 に お い て 我 々 はTNFr8遺 伝 子 in tronlのNcoI多 型お よぴ ,TNFばpromoter領 域の‑857(C― 町) ,‑ 863(CうA),‑10 31卩

‑>C)部 位 の 多 型 と 開 経 後 早 期 女 性 の 腰 椎 骨 密 度 と の 関 係 に つ い て 検 討 し た . そ の 結 果j低 骨 密 度 群 で は 高 骨 密 度 群 に 比 べ てTNF a‑ 863A allele,‑1031C alleleの 出現 頻度 が有 意に 高 い こ と ,rare alleleの ホモ 型のZ‐scoreは 他の 型よ り低 値を 示す こと ,rare alleleの合 計 数が 多い ほどZ一scoreが低 値を 示 すこ とが 明ら かと なっ た.

我 々 の 結 果 に反 し て,Wennberg et alは 思春 期の 白人 女性 を対 象と してTNFぱ‑ 863A allele carrierは腰 椎骨 密度 が高 いと 報告 して いる .思 春期 (骨 形成 優 位) と開 経後(骨吸収優位)

と で は 骨 代 謝が 異 なる こと から ,こ の不 一致 は年 齢の 違い に起 因す るも の と考 えら れた .ま た ,Ota et alは 我 々 よ り 高 齢 ( 平 均73.2歳 )の 日本 人女 性を 対象 とし , 橈骨 の骨 密度 を指 標 と し てTNF a‑1031Cの ホ モ 型 は 骨 密 度 が 高 い と 報 告 し て い る . 海 綿 骨 の 多 い 腰 椎 で は 開 経 後 早 期 から 骨 減少 が生 じる のに 対し ,皮 質骨 の多 い橈 骨で 骨減 少が 明 らか にな るの は高 齢 に な っ て から で ある とさ れて いる こと ,同 一人 でも 場所 によ って 骨密 度 の高 低が ある こと

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か ら,Ota et alの結果との不一致は骨密度の測定部位の違いによるものと考えられた.

TNFaは 骨吸 収促 進作 用を 有す る,TNF遺 伝子 多型 はTNFぱ産 生能 に関 係す る, とい った 過 去の 報告 から 骨密 度が 低く 血中TNFa濃度が高いという特定の遺伝子型の存在が期待さ れたが,今回検討した遺伝子多型およびrare alleleの合計による分類のどちらにおいても 血 中TNFa濃 度の 違い は認 めら れなか った .特 定の 遺伝 子型 でTNFa分 泌が 増強 され ると しても,それは骨の周りの微細環境における事象であり,末梢血レベルにまで反映されるも のではないと思われた・

本研究の対象は専門外来受診者という特殊な集団ではあるが,crit eriaに沿って慎重に選 抜され,各遺伝子多型の出現頻度および骨粗鬆症発症率が既報の健康日本人集団のものとほ ぼ 等 し い 点 か ら , 極 め て 正 常 人 に 近 似 し た 集 団 で あ る と 考 え ら れ た . 本 研 究 に よ りTNFpお よ ぴTNFa promoter領域 の 遺 伝 子 多 型 が 開 経 後 早 期 日 本 人 女 性 の腰椎骨密度に関連すること,rare allele cD:合計数によって開経後女性の骨密度を予測しう る可能性が示された.

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学位論文審査の要旨

     学位論文題名

Bone mineral density of the lumbar splnelSaSSOCiated     WithTNFgenepolymorphiSmSlnearly

    pOStmenopauSalJapaneSeWOmen .

(TNF 遺 伝子多型は 閉経後早期 日本人女性 における      腰 椎骨 密 度と 関 連す る )

この論文 は開経後 10 年 以内の 177 名の婦人を 対象として 腰椎骨密度 、TNF 遺伝 子多型   (TNF 8b1 /b2 、TNF ロ‑ 857C/T , ‑ 863 C/A ,‑ 1031T/C )、末梢血中TNF ロ濃度の三 者の関連について検討したものである。出現頻度の低いallele (rare allele) のホモ型であ る TNFpbl / b1(15.9 吻, TNF a‑ 857T/T(3.4 卿 , TNF a‑ 863A/A(3.4a/o) , TNF a‑

1031C/C (5.2 吻であった 婦人群では 他群に比し て腰椎骨密 度が低くま たこれら rare alleles を数多く有する女性ほど骨密度が低いことを明らかにした.また、これらrare alleles の合計数は閉経後年数、body mass index とともに腰椎骨密度の独立予測因子で あること を明らかに した。一方、腰椎骨密度と末梢血中 TNF ぱ濃度間、 TNF 遺伝子多型 と 末 梢 血 中 TNF ぱ 濃 度 間 に は 関 連 が 認 め ら れ な い こ と を 明 ら か に し た 。    発表終了後、副査である婦人科学分野櫻木教授より,今回示した TNF apromoter の多 型が TNF ぱ産生に促進的に関与するということはこれまでの報告,特にレポーターアヅ セイなどの基礎的検討と一致するか,という質問があった.発表者は,今回検討した多型 にっいて , in vitro の系で TNFa 産生 を調べた2 編の論文を引用して以下のように説明 した・「 1 編はTNF a‑ 863 多型にっいての報告であり,本論文とは逆に出現頻度の低い

‑ 863A allele が TNF ロ遺伝子の低発現と関連するという結果であった.もう 1 編は TNF ぱ‑ 857 ,‑ 863 ,‑ 10 31 多型についての報告であり,出現頻度の低いallele がTNFa 遺伝 子の高発現と関連するという内容で,本論文と一致する結果であった.」さらに櫻木教授 からは, TNFa が 骨塩量低下以外に臓器あるいは組織に影響を及ぼす可能性はあるか,

という質問があった.発表者は,局所的毅TNF ぱ産生により特定の臓器・組織ヘ影響を 与える可 能性として は,関節リウマチで関節滑膜における局所的TNFa 産生により滑膜 腔の炎症・関節破壊がおこる可能性,また産科領域では,子宮内感染時に羊水中のTNF

男 典

明 尚

浪 上

三 水

授 授

教 教

査 査

主 副

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ぱ濃度が上昇し,子宮収縮が惹起されて早産に至る可能性にっいて述べた.櫻木教授から は,最後にこの研究は骨粗鬆症の治療という面でどのように利用できるかという質問があ った.発表者は,「本研究の臨床応用としては予防医学的な応用,たとえば閉経後に骨密 度が早く減少しそうな遺伝子型の女性には,食事指導や運動の奨励,骨密度の減少を抑制 する治療を早期から行う,ことなどが考えられる」と回答した.次に,主査である整形外 科学分野三浪教授より,骨密度はDXA 法で測定しているがその測定に際し,骨粗鬆症で は骨の変性が高く,骨密度の値が異常に高く出ることがあるが,そのような例はどのよう に除外しているかという質問があった.発表者は,「X 線画像上の腰椎圧迫骨折の有無 等の臨床的な診断は,共同研究者である骨粗鬆症外来担当医師の診断にしたがっている」

と回答した.さらに三浪教授から,骨密度の低い群ではTNF ぱ‑ 863A ,‑1031C allele の 出現頻度が高いという結果だが,これらのallele は骨粗鬆症の risk factor だが,原因と 関連するか,結果と関連するか,という質問があった.発表者は,「これらのallele は機 能的にTNF ぱ産生能に関与していると考えられるので,原因と関連する」と回答した.

また,三浪教授からは,このような遺伝子多型を応用してTNFa 産生亢進が関与するよ うな骨粗鬆症の治療法として,整形外科学分野で使われている分子標的薬剤(抗TNF ロ 抗体,可溶性TNF ぱレセプター製剤)が利用できるようになると良いという意見が述べ られた.最後に,副査であり指導教官である産科・生殖医学分野水上教授より,どの多型 においてもrare allele のホモ型が最も骨密度が低いという結果であるがこれをどのよう に解釈するかという質問があった.発表者は,「これらのallele のホモ型は局所におけ るTNF ば産生能が高く,そのことが骨密度が低いということ以外にも何らかの生存に不 利益な条件となって,淘汰がおこり結果的にdominant ではなくrare な allele として遺 残した,ということが考えられる」と回答した.さらに水上教授より,discu ssion にあ るように‑ 863A を有する思春期女性は反対に骨密度が高いという報告があるがこれをど のように考えるかという質問があった.発表者は,「思春期も閉経後早期もいずれも骨吸 収・骨形成ともに活発な時期であるが,TNF a‑ 863A allele を持つ女性は,骨の代謝活 性が高い,即ち,思春期に他の型より早くピークポーンマスに到達し,開経後には他の型 よ り 速 や か に 骨 量 が 減 少 す る 可 能 性 が 考 え ら れ る 」 と 回 答 し た ・    この論文は,開経後に骨密度が低下する危険性の高い日本人女性を遺伝子多型検査によ って予測しうる可能性を示した点で高く評価され,今後閉経後の骨粗鬆症発症予防に役立 つことが期待される.

   審査員一同は,これらの成果を高く評価し,申請者が博士(医学)の学位を受けるのに

充分な資格を有するものと判定した.

参照

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