博 士 ( 医 学 ) 古 田 伊 都 子
学 位 論 文 題 名
Bone mmeral density of the lumbar splnelSaSSOCiated WithTNFgenepolymorphiSmSlnearly
pOStmenopauSalJapaneSeWOmen .
( TNF 遺 伝 子 多 型 は 閉 経 後 早 期 日 本 人 女 性 に お け る 腰 椎 骨 密 度 と 関 連 す る )
学 位 論 文 内 容 の 要 旨
【はじめに]
骨吸 収性 サイ トカイ ンであるTNFa は,in vitro において破骨細胞を誘導・活性化するこ とが報告されており,開経後女性に起こる骨吸収の増加に関与していることが示唆されてい る. TNF 遺 伝子 locus には 多く の一 塩基 多型 が存 在しており,これらの遺伝子多型とTNF ぱ産生能との関連についての研究はいくっか報告されているが,骨密度との関連にまで言及 した報告は少ない.本研究において我々は,開経後早期日本人女性におけるTNF 遺伝子多 型 と 腰 椎 骨 密 度 お よ ぴ 血 中 TNF ば 濃 度 と の 関 連 に つ い て 検 討 し た .
[対象およぴ方法]
竝 墓: 1995 年か ら2003 年ま での 間に 北海 道大 学医学部附属病院産婦人科骨粗鬆症外来を 受 診し た閉 経後 10 年以内の女性531 例のうち,合併症例,エストロゲン製剤服用例,早発 閉 経 例 , 腰 椎 圧 迫 骨 折 例 を 除 く 177 例 (5 6.4 土 4.5 歳 , mean 土 SD ) を 対 象 と し た ・ 畳 密 塵 (旦 憇 Q ) 壷 よ 型 血 生 TNFa 堕 測定 : 骨 密 度 は二 重エ ネル ギー X 線吸 収法 (DXA) に よ り 第2 か ら 第 4 腰 椎 を 測 定 し た . 血 清 中 の TNF ぱ 濃 度 は ELISA キッ ト で 測 定 し た.
遺 伝 壬 釜型 堕 鰹 抵 : 末 梢 血 自 血 球 か ら DNA を 抽 出 し , TNFn 遺 伝 子 intronl の Nc01site およ び, TNF apromoter 領域 の‑857(C う叮 ) ‑863(C うA) ,‑1031(T うC) 部位について RFLP( 制限酵素断片長多型)法で遺伝子多型を解析した.PCR 法で各遺伝子多型部位を含む ゲ ノ ム DNA を 増 幅 し , PCR 産 物 を 制 限 酵 素 で 切 断 後ア ガ口ー スに て電 気泳 動し た. TNF p 遺 伝子 多型 は切 断部 位を 持っ もの をb1 ,持 たないものをb2 とし,TNF a‑ 857 ,‑ 863 , ‑1031 遺 伝子 多型 はそ れそ れ切 断部 位を 持っ ものを C , A ,C ,持 たな いも のを゛T ,C ,T としてRFLP 分類した.
遮註鰹挺:Allele の出現頻度の比較はズ゜検定で行った.骨密度の比較はANOVA ,Fish er s
´PLSD ,血中TNF ぱ濃度の比較はKruscal Wallis test で行った.
【結果]
1.Alleleの出現頻度と連鎖不平衡
4ケ 所 の 遺 伝 子 多 型 に お け る 各Alleleの出 現 頻度 は既 報の 日本 人に おけ る出 現頻 度と 同等 で あ り , い ず れ もHardyーWeinb erg平 衡 に 達 し て い た .TNF,8b1/ b2はTNF a‑ 857C/T, ー 863C/A,‑ 1031T/Cと 連 鎖 不 平 衡 の 関 係 に あ り ,TNF a‑ 863C/Aは‑ 1031T/Cと 連 鎖 不 平衡の関係にあった・
2.TNF遺伝子型と骨密度
全 症 例 をZ一score( 性 ・ 年 齢 を 一 致 さ せた 正常 値か らの 偏位 )が0以上 の高 骨密 度群(H群 : n=86) と0未 満 の 低 骨 密 度 群 (L群 :n=91) の2群 に 分 け て 比 較 す る と ,TNFぱ‑ 863C/Aの 各 遺 伝 子 型 の 出 現 頻 度 は ,H群 とL群 と で 差 異 が 認 め ら れ た . ま た ,TNF a‑ 863A allele,
‑1031C alleleの 出 現 頻 度 はH群 に 比 ベL群 に お い て 有 意 に 高 か っ た . 各 遺 伝 子 多 型 に お ける 遺 伝子 型と 骨密 度との関 係を検討した結果,出現頻度の低いallele(rare allele)のホモ型 で あ るTNFpbl/ bl,TNFぱ‑ 863A/A,TNF a‑ 1031C/CのZ一scoreは 他 の 型 よ り 低 値 を 示 し , 特 にTNF a‑ 857T/TのZ・scoreはC/T,C/Cよ り 有 意 に 低 値 を 示 し た . 次 に , 4ケ所 の遺 伝子 多型 を組 み合 わせ た 遺伝 子型 と骨 密度との関係について調べた. rare allele の ホ モ 型 で はZ‐ scoreが 低 値 を 示 し たこ と に着 目し ,こ れら のalleleの合 計数 と骨 密度 と の 関 係 に つ い て 検 討 を 行 っ た . 全 症 例 をrare alleleの 合 計 数 で5群に 分類 (0個 ニn=14,1 個:n =53,2個ニn=72,3個ニn=24,4個ニn=11,5個以上持つ群は無し1して比較すると,Zーscore はrare alleleの 合 計 数 が 多 い 群 ほ ど 低 値 を 示 し た .5群 の 間 にbody mass indexの 差 異 は 認 め ら れ な かっ た. 開経 後早 期女 性の 骨密 度 を予 測す る因 子に っい て重 回帰 分析 を行 った 結 果 , 閉 経 後 年 数 ,body mass indexお よ びrare alleleの 合 計 数 が 独立 因子 とし て選 択さ れ た・
3.TNF遺伝子型と血中TNFa濃度
4ケ 所 の 遺 伝子 多 型の いず れに おい ても ,各 遺伝 子型(TNF,8 bl/ bl,b1/b2,b2b2; TNFぱ − 857C/C,C/T,T/T; TNFロ‑ 863C/C,C/A,A/A; TNFぱ‑ 1031T/T,T/C,C/ C)の 間 に 血 中 TNFぱ濃度の違いは認められなかった.
【 考察 ]
骨 粗 鬆 症 の 病因 ・ 病態 には 遺伝 的要 因が 関与 して いる と考 えら れて おり , いく っか の候 補遺 伝 子 に つ い て は 骨 密 度 と の 関 連 が 調 べ ら れ て い る . 本 研 究 に お い て 我 々 はTNFr8遺 伝 子 in tronlのNcoI多 型お よぴ ,TNFばpromoter領 域の‑857(C― 町) ,‑ 863(CうA),‑10 31卩
‑>C)部 位 の 多 型 と 開 経 後 早 期 女 性 の 腰 椎 骨 密 度 と の 関 係 に つ い て 検 討 し た . そ の 結 果j低 骨 密 度 群 で は 高 骨 密 度 群 に 比 べ てTNF a‑ 863A allele,‑1031C alleleの 出現 頻度 が有 意に 高 い こ と ,rare alleleの ホモ 型のZ‐scoreは 他の 型よ り低 値を 示す こと ,rare alleleの合 計 数が 多い ほどZ一scoreが低 値を 示 すこ とが 明ら かと なっ た.
我 々 の 結 果 に反 し て,Wennberg et alは 思春 期の 白人 女性 を対 象と してTNFぱ‑ 863A allele carrierは腰 椎骨 密度 が高 いと 報告 して いる .思 春期 (骨 形成 優 位) と開 経後(骨吸収優位)
と で は 骨 代 謝が 異 なる こと から ,こ の不 一致 は年 齢の 違い に起 因す るも の と考 えら れた .ま た ,Ota et alは 我 々 よ り 高 齢 ( 平 均73.2歳 )の 日本 人女 性を 対象 とし , 橈骨 の骨 密度 を指 標 と し てTNF a‑1031Cの ホ モ 型 は 骨 密 度 が 高 い と 報 告 し て い る . 海 綿 骨 の 多 い 腰 椎 で は 開 経 後 早 期 から 骨 減少 が生 じる のに 対し ,皮 質骨 の多 い橈 骨で 骨減 少が 明 らか にな るの は高 齢 に な っ て から で ある とさ れて いる こと ,同 一人 でも 場所 によ って 骨密 度 の高 低が ある こと
か ら,Ota et alの結果との不一致は骨密度の測定部位の違いによるものと考えられた.
TNFaは 骨吸 収促 進作 用を 有す る,TNF遺 伝子 多型 はTNFぱ産 生能 に関 係す る, とい った 過 去の 報告 から 骨密 度が 低く 血中TNFa濃度が高いという特定の遺伝子型の存在が期待さ れたが,今回検討した遺伝子多型およびrare alleleの合計による分類のどちらにおいても 血 中TNFa濃 度の 違い は認 めら れなか った .特 定の 遺伝 子型 でTNFa分 泌が 増強 され ると しても,それは骨の周りの微細環境における事象であり,末梢血レベルにまで反映されるも のではないと思われた・
本研究の対象は専門外来受診者という特殊な集団ではあるが,crit eriaに沿って慎重に選 抜され,各遺伝子多型の出現頻度および骨粗鬆症発症率が既報の健康日本人集団のものとほ ぼ 等 し い 点 か ら , 極 め て 正 常 人 に 近 似 し た 集 団 で あ る と 考 え ら れ た . 本 研 究 に よ りTNFpお よ ぴTNFa promoter領域 の 遺 伝 子 多 型 が 開 経 後 早 期 日 本 人 女 性 の腰椎骨密度に関連すること,rare allele cD:合計数によって開経後女性の骨密度を予測しう る可能性が示された.