博 士 ( 医 学 ) 土 屋 和 彦
学 位 論 文 題 名
Glioblastoma 温度感受性p53 変異細胞株の特性と p 53 機能回復による放射線感受性の検討
学位論文内容の要旨
膠 芽 腫 の 放 射 線 感 受 性 に お け る 癌 抑 制 遺 伝 子p53の 機 能 的 役 割 を 調 べ る た め 、 今 回 膠 芽 腫 由 来 でp53の 状 態 が 異 な る3つ の 細 胞 株 :LN444細 胞(wild‑type p53), U251MG細 胞(mutant R273Q),and LN382細 胞(mutant V197L)に っ い て 放 射 線 感 受 性 の 検 討 を 行 っ た 。LN382細 胞 で は 、 転 写 活 性 を 調 べ る 酵 母p53機 能 ア ッ セ イ に お い て 、34℃ で は 大 部 分 が 正 常 活 性 ( ピ ン ク 色 コ ロ ニ ー ) を 示 し た の に 対 し 、37℃ で は そ の 活 性 は 不 活 化 ( 白 色 コ ロ ニ ー ) さ れ て いた こと から 、V197L p53 変 異 は 温 度 感 受 性 変 異 で あ る こ と が わ か っ て い る 。
Luciferase asaayを 用 い こ の 温 度 感 受 性p53変 異 株 のmdnセ 、p21/W虹 、Bax の プ ロ モ ー タ ー に 対 す る 転 写 活 性 を 計 測 し た と こ ろ 、37℃ で 培 養 し た 細 胞 に 対 し34℃ で 培 養 し た 細 胞 で は そ の 活 性 が そ れ ぞ れ6.5、33.4、4.9倍に 上昇 して い た 。 半 定 量 的multiplexPCR用 い た 実 験 で は 、BaxのmRNA発 現 は34℃ で 培 養 し た 方 が 軽 度 上 昇 し て い た の に 対 し 、p21mRNAの 発 現 は 著 明 に 上 昇 し て お り こ の 温 度 感 受 性p53変 異 株 に お い て は34℃ に お い てp21の プ ロ モ ー タ ー の 転 写 活 性 が 優 位 に 回 復 し て い る こ と が 示 唆 さ れ た 。 こ の 結 果 を 裏 付 け る よ う に 、 LN382細 胞 は34℃ で 培 養 し た 場 合 は 増 殖 が 完 全 に 停 止 し て い た が 、 ア ポ ト ー シ ス は 観 察 さ れ な か っ た 。 し か し24時 間 、 或 い は48時 間34℃ で 培 養 し た 後 に37℃ に 戻 す と 、 こ の 増 殖 停 止 は 再 び 解 除 さ れ 、 可 逆 的 で あ っ た 。 v線 に 対 す るLN382細 胞 の コ ロ ニ ー 形 成 能 は 線 量 に 依 存 す る も の で あ っ た が 、 34℃ で 培 養 し た 細 胞 は37℃ で 培 養 し た 細 胞 に 比 べ 優 位 に 放 射 線 感 受 性 が 上 昇 し て い た 。 一 方 、LN444細 胞 、U251MG細 胞 も 同 様 に コ ロ ニ ー 形 成 能 は 線 量 に 依 存 し て い た も の の 、 そ の 感 受 性 は 培 養 温 度 を 変 え て も 差 を 認 め な か っ た 。DNA ラ ダ ー の 形 成 が 認 め ら れ ず 、FACSanalysisに お い て もsub‐G1/0期 の 細 胞 集 団 は み と め ら れ ず 、 こ のLN382細 胞 の 温 度 に よ る 放 射 線 感 受 性 の 差 の 機 序 と し て ア ポ ト ー シ ス は 否 定 的 で あ っ た 。
一 方 、34℃ で 培 養 し たLN382細 胞 で は 照 射 後 に 細 胞 周 期 がG1及 びG2/M期 で の 停 止 状 態 に あ る こ と が 観 察 さ れ た 。 こ の 結 果 を 裏 付 け る よ う に 、p21の 発 現 も 照 射 に よ り 増 加 を 認 め た 。
以上の結果より、膠芽腫由来の細胞株LN382 細胞では、その放射線感受性は 野生型p53 の転写活性に依存するものであり、その機序としてはp21 の発現、
その 結果として 細胞周期がGl 及びG2/M 期で停止する事によるものであるこ
とが示唆された。
学位論文審査の要旨
学 位 論 文 題 名
Glioblastoma 温度感受性p53 変異細胞株の特性と p 53 機 能回 復に よる 放射 線感 受性 の検 討
膠 芽 腫 の 放 射 線 感 受陸 にお け る癌 抑制 遺伝 子p3の機 能的 役割 を調 べる ため 、膠 芽 腫 由来 の細 胞 のuB82細 胞(nmtantV197L) の特 性を 調ベ 、放 射線 感受 性を 検討すると 共 にp53の 状 態 が 異 な る 他 の2つ の 細 胞 株 :IN444細胞 (硼d・typep53) ,U251MG細 胞 (mutantR273Q)つ いて も放 射線 感受 性 の検 討を 行っ た。V197L声3変異 は温度感受 性 変異 であ り 、そ の転 写活 性を 調べ る酵 母声3機能 アッ セイ にお いて 、34℃では大部 分が正 常活性(ビンク色コロニー)を示したのに対し、37℃で はその活性は不活化(白 色コロ ニー)されていた。
LuciferaSeasaりを 用い この 温度 感受 性p53変異 株のrndrn2、p21′WAF、BaXのプロ モ ータ ーに 対 する 転写 活性 を計 測し たと ころ 、37℃で培養した細胞に対し34℃で培養 した細 胞ではその活性がそれそれ6.5、33.丶4.9倍に上昇していた。半定量的muniplex PCR用 い た 実 験 で は 、BaxのmRNA発 現 は は34℃ で 培 養 し た 方 が 軽 度 ヒ 昇 し て い た の に 対 し 、p21mRNAの 発 現 は 著 名 に 上 昇 し て お り こ の 温 度 感 受 陸p53変 異 株 にお い て は34℃に お いてp21のプ ロモ ータ ーの 転 写活 性が 優位 に回 復し てい るこ とが示唆さ れ た。 この 結 果を 裏付 ける よう に、LN382細胞 は34℃で 培養 した 場合 は増 殖が完全に 停 止し てい た が、 アポ トー シス は観 察さ れな かっ た。 しか しこ の増 殖 停止 は2ム或い は48時 間34℃ で 培 養 した 後に37℃に 戻す と再 び解 除さ れ、 可逆 性で ある 事が 示さ れ た。
y線に 対す るIーN382細胞 の感 受性 は線 量に 依存 するものであったが、34℃で培養し た 細 胞 は37℃ で 培 養 し た 細 胞 に 比 ベ 有 意 に 感 受 性 が 上 昇 し て い た 。LN444細 胞 、 U251MG細 胞 も 同 様 に その 感受 性 は線 量に 依存 して いた が、 その 感受 性は 培養 温度 間 で 差 を 認 め ず 、u082細胞 の培 養 温度 によ る放 射線 感受 性の 差は 温度 自体 によ るも の
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男 弘
也
和
哲
坂 部
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宮 阿
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授 授
授
教 教
教
査 査
査
主 副
副
でなく、温度により変化するp53の状態に依存するものであると考えられた。p53 の状態によらずDNAラダーの形成を認めず、FACSanalys:isにおいてもsub‑G1/0期 の細胞集団は認められず、LN382細胞の放射線感受性の差の機序としてアボトーシス は否定的であった。
FA(§analys.isでは37℃で培養した細胞は照射後も細胞周期の停止は認められなか った。一方34℃で培養したu邨82細胞では照射後に細胞周期がG1期停止の状態にあ った。37℃で培養、照射後34℃で培養した細胞はG1期及ぴG2/M期での停1ヒ状態に あるのが観察された。この結果を裏付けるように、p21の発現も照射により増加を認 めたことから野生型p53に依存したG2期停止が照射により誘導された可能性が示唆 された。
以上の結果より、膠芽腫由来の細胞眛LN382細胞では、その放射線感受性は野生型 p53の転写活性に依存するものであり、その機序としてはp21の発現、その結果とし て 細胞周 期がG1及 びG2/M期で停止する事によるものであることが示唆された。
口頭発表に際し、阿部教授より培養温度の設定理由、他の細胞株での実験経験の有 無、温度変化による他の遺伝子への影響、守内教授よりこの研究の新しい点、臨床デ ータの結果との解離について、GBM細胞で放射線感受性に影響を与える他の因子の 研究の必要性、また(迅M由来の他の細胞株で、温度感受性p53変異を有するものに ついても検討を加えるべきとの意見があった。宮坂教授からは今回の実験の結果を臨 床に応用する場合の可能性と問題点、また自土助教授より今回のデ一夕の方が一般的 に云われていることとして、文献的な考察について質問がなされた。申請者は文献的 考 察 を 中 心 に 今 後 の 実 験 の 示 唆 を 受 け な が ら 、 概ね 妥 当 な 回 答 を 行 っ た 。 これまでもGBM細胞と放射線感受性に関する研究はなされていたが、本研究のよ うに温度感受性株を用い、放射線感受性がアボトーシスでなく細胞周期の調節に依存 す る も の と し た 研 究 は 少 な く 、 学 位 論 文 に 値 す る も の と 判 断 し た 。 審査員一同は、これらの成果を評価し、大学院過程における研鑚や取得単位なども 併せ申請者が博士(医学)の学位を受けるのに十分な資格を有するものと判定した。