博 士 ( 医 学 ) 張 暁 紅
学位論文題名
Normalization by Edaravone ,aFree Radical Scavenger , of Irradiation‑Reduced Endothelial Nitric ●
Oxide Synthase Expresslon
(放射線照射後のウサギ耳動脈における内皮細胞機能障害に対する フ リー ラジ カル スカベ ンジ ャー の効 果に関 する 薬理 学的研 究)
学位論文内容の要旨
1背 景とB的} .
血管内皮細胞 の内皮由来血管弛 緩因子・くEDRF)のーつNOは 血管内皮ー酸化窒 素合成酵素・(Endothelial NO synthase,eNOS>によ って生産され、血管 拡張および血圧の 調節に重要な役割を果たしており、血小板の接着 と凝集を阻害 させ、血管平滑筋 増殖を制限させ、 血管形成も抑制させ ることが知られて いる。eNOS活性の低 下は、NOの産 生を減少させるた め、疾病の血管合 併症にっながる。放 射線により血管内 皮細胞が障害をうけ る可 能 性が ある 。 放射 線障 害 では内皮依存性 血管弛緩反応が減弱 されることが知ら れている。また当 研究 室で は4 SGyのコ バル ト60照 射後 、 ウサ ギ耳 動 脈の アセ チ ルコ リン お よびA23187の内 皮依 存 の弛緩 反応 は減弱し、eNOS蛋白発現量も減少して`、.ることがわかった。更に、最近の研究は、放射線療法を持っていた 患者 で 照射 され た 頚動 脈のeNOSを 介し た 弛緩 の不 足 を実 証し た 。し かし ながら放 射線によるeNOS蛋 白の 減少のメカニ ズムはまだ鮮明さ れていない。電離 放射線はフリーラジ カルを発生し、細 胞内の生体分子の障 害をもたらす 、これは放射線障 害の重要なメカニ ズムとして知られて いる。放射線照射 後の血管でのeNOS蛋 白 発 現 量 の 減 少 は 、 照 射 さ れ た 器 官 中 で フ リ ー ラ ジ カ ル 産 生 の 増 加 が 原 因 で あ る 可 能 性 が あ る 。 それ で 本研 究で は 、コ バル ト‑60照 射後 のウ サ ギ耳 動脈 の 内皮 依存 性 弛緩 反応 お よびeNOS発 現に対 する フリーラジカ ルスカベンジャー の効果を検討する 。
【方法l
1.実 験動 物 :体 重2―3kgの 雄性 ニ ュー ジーラン ド白色ウサギを対 照群、Edaravone投与群(Edarabone 10mg/
kgi.p.twiceaday)、 照射 群 (ウ サギ の 耳にv線45Gyを照射)およ ぴそれにEdaravone投与群( 照射の前一日 からEdarabone 10mg/kgi.p.twiceaday+ウサギ の耳にッ線45Gyを 照射)の四群にわ けた。2週 間後に耳介中 央動脈を摘出 して、標本を作成 した。
2.山 皮依 存 性弛 緩反 応 の測 定: 摘 出し た耳 介 中央 動脈 は (各 群n 5ウサ ギ) 酸 化し たPSS buffure(in mM NaCl 118.2,KC14.7,M8Cl21.2,KH2P041.2,CaCl22.5,NaHC0325.Oandglucose10.O.)中て、山皮を損 傷しなぃよう に結合組織および 脂肪組織を剥離し てから、長さ約4mmの輪状標 本とし、PSS溶液(37℃,95%02 と5牝02混合ガスで通 気して)を満たした 器官槽で輪状標本 を懸垂し、2gの静 止張丿丿をかけ、等 張性高K+溶 ―174―
液(40mめに よ る、 安定 し た収 縮が 得 られ るよ う にな った 後 、3ロMのphenylephrineで 輪 状標 本を 前 収縮 さ せ 、1nM−100ロMのacetylcholineに よる 農度 依 存の 弛緩 反 応を 行っ た 。
2.eNOS蛋白 の組 織 螢光 免疫染色:摘出した 耳中央動脈(各群n 3動脈)より凍 結組織切片を作製し 、蛍光免 疫 染色 法でeNOS蛋 白の 発 現を 各群 で 比較 検討 し た。
3.eNOS蛋白 のイ ム ノ・ ブロット解析:摘出 した耳中央動脈( 各群n 5動脈)を ホモゲナイズした後 、遠心分 離 で得 た上 清 より 、各 レ ーン に10趣 蛋白 を含 む サン プル を おき 、SDS−polyacrylamidege1で電気 泳動後ウ エ スタ ンブ ロ ット 法でeN0s蛋 白の 発 現を 各群 で 比較 検討 し た。
4. eNOSmRNAの RT― PcR解 析 : 摘 出 し た 耳 中 央 動 脈 ( 各 群 n 3動 脈 ) よ り guanidinium thiocyanate→pheno卜chloroform法 でtotalRNAを抽 出し 、RT−PcRに よりeNOSmRNAの 発 見現 を各 群 で検 討 し た。
【結果 】
1.3弘Mのphenylephrineによ る 輪状 標本 の 収縮 反応 は4群 問 で差 が認 め なか った 。Acetylcholineに よる 濃度依 存の内皮依存性弛緩反応は照射群が対照群と比較して有意な減少を認めた(P<O. O01ーO.05).治療群は対 照群と 比較して有意差を認 めなかった。
9. 組織 蛍光 免 疫染 色とウェスタン ブロットによるeNOS蛋白の発現は対 照群と比較して照射 群がそれぞれ5296 と4772%に 減 少 し た(P<O. O01)。Edarabone治 療 群 で は 対 照 群 と 比 べ て 有 意 差 を 認 め な か っ た 。 3.RT‑PCRに よ るeNOS mRNAの発現は照射群 が対照群と比べて47%を減少したが(P〈O.05)、Edaraboneによ
る治療群で回復した。
【 考察1
コ バルト−60照射二週 間後のウサギ耳動 脈の輪状標本にお いて、acetylcholineに、よ る血管内皮依存性弛緩反 応 は著しく減弱された 。正常なウサギ耳 動脈はeNOS阻害薬 ではあるげーnitro―L―arginine (100p M)によって 血 管内皮依存性弛緩反 応を消失した。こ れにより耳介中央 動脈の内皮依存性弛 緩反応はeNOSに依 存することが 考 えられた。フリーラ ジカルスカベンジ ャーEdaravoneの投与によっ て、放射線照射後 の障害された血管内皮依 存 性弛緩反応が改善し たが、このことはeNOSの活性がフリ ーラジカルをスカベ ンジすることで回 復する可能性 を 示唆する。コバルト ー60照射では、ウ サギ耳動脈のeNOS発現低下(down−regulation)が生じて いたが、これ はeNOS活 性を 抑 制さ れた原因のーっと 考えられる。Edaravoneを投 与した際、eNOSのdown一regulationが 阻止 さ れ たが 、照 射 され た組織で生成した フリーラジカルをEdaravoneがスカベンジし、eNOSの発現を保護し たか も し れな い。 ま た、 照射 さ れた 血管 のeNOS mRNAの発 現 はeNOS蛋 白のdown―regulationと同様に著しく 減つ た 。 これ は放 射 線に よるeNOS蛋 白はmRNAレ ベノ レ でdown一regulationされ ると考えられた。Edaraboneはフ リ ー ラジ カル を スカ ベン ジ する が、 ラ ジカルに よりeNOS転写抑制 を加わえ、eNOSの発 現を減少する可能 性が 本 研究により示された 。
本 研 究で はラ ジ カル スカ ベ ンジ ャー : edaraboneは放 射性 照 射に よるdownーregulateされたウサギ耳 介動 脈 のeNOS蛋白 とeNOS mRNAの発 現 が正 常化 す るこ とを 証 明し た。Edaraboneは 放射 線 障害の患者の血管 合併 症 を改善させる可能性 がある。
学位 論文審 査の要旨
学位論文題名
Normalization . by Edaravone ,aFree Radical Scavenger , of Irradiation‑Reduced Endothelial Nitric Oxide Synthase Expression
(放射線照射後のウサギ耳動脈における内皮細胞機能障害に対する フリ ・ーラジカ ルスカベン ジャーの効果に関する薬理学的研究)
血管内皮 由来血管弛 緩因子のーつであるNO (一酸化窒素)は、血管内皮 NO 合成酵 素(endothelial NO synthase ,eNOS) により産生され、拡散により血管平滑筋細胞 に到達して細胞質に存在するグアニル酸シクラーゼを活性化して、 cGMP レベルを上 昇させて PKG 経路を 介して血管 平滑筋弛緩 を引き起こ す。放射線照射によりこの NO による内皮 依存性弛緩 反応が障害されると共にeNOS 蛋白の発現も減少すること が知られている。しかし、放射線がeNOS 蛋白発現を抑制する機序はいまだ明らかに されていない。放射線は水分子を励起・電離することにより活性酸素種(フリーラジ カル)を発生させて細胞傷害を引き起こすが、このフリーラジカルが種々の放射線障 害の重要な機序のーっと考えられている。このように放射線によるフリーラジカル産 生が eNOS 蛍白発 現を抑制し て血管内皮細胞機能障害を惹起する可能性が高いため に、本研究は放射線照射による血管内皮依存性弛緩反応の減弱をフリーラジカルスカ ベンジャー゛が改善するか否かの確認を目的として施行された。ウサギ耳介動脈を使用 してCobalt60 照射により放射線障害モデルを作成し、フリーラジカルスカベンジャ ー:edaravone 前投与の効果を検討した。Cobalt60 照射二週間後に恒温槽において摘 出耳介動脈輸状標本の血管内皮依存性弛緩反応の変化を検討した。同時にeNOS 蛋白 発現部位と発現量を免疫組織染色とウエスタンブロットを用いて解析し、RT‑PCR に より 同 蛋白 mRNA の発現を 検討したー 放射線照射 によルアセ チルコリン ( Ach) に よる 血 管内 皮依存性 弛緩反応は 著しく障害 され、 eNOS 蛋白 および mRNA 発現 は並 行して低下した。Edaravone の前投与により障害された内皮依存性弛緩反応は回復 し、 こ の変 化にはeNOS 蛋 白と mRNA 発現の 改善を伴っ ていた。以 上の結果か ら放 射線照射により形成されたフリーラジカルが、eNOS 発現を転写段階で抑制すること ―176 ―
二 弘
哲
裕 充
本 岡
藤
森 吉
丸
授 授
授
教 教
教
査 査
査
主 副
副
により、eNOS を介したNO 産生低下を引き起こして血管内皮依存性弛緩反応を障害 している可能性が示唆される。さらにedaravone が放射線照射により形成されたフ リーラジカルをスカベンジして eNOS 蛋白発現の転写レベルでの抑制を解除するこ とにより、NO 産生が回復して傷害された血管内皮依存性弛緩反応を改善する可能性 が本研究により示唆された。
公開発表にあたり吉岡教授より、1 )放射線がeNOS 発現を抑制する機序、2 )放射 線障害とiNOS の関係について、丸藤教授より、1 )放射線障害と活性酸素種の関係、
2 ) edaravone の臨床^ふ用について、森本教授より、1 )edaravone 投与方法と放射線 障害の関係について、 2 )放射線障害とapoptosis の関係についてなど多くの質問が なされた。中請者はこれらの質問に対して、自らの実験結果およびこれまでの学習し た知識を駆使しておおむね適切に回答した。この論文は放射線による血管内皮細胞機 能障害の機序を明らかにし、その改善方法を確認したことで高く評価され、今後のフ リーラジカルスカベンジャーの臨床応用が期待される。
審査員一同は、これらの成果を高く評価し、申請者が博士(医学)の学位を受け るのに充分な資格を有するものと判定した。
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