グ
ロ
ー バ ル
化
時
代
の
カ
ト
マ
ン
ド
ゥ
仏教
霊
場
杉
木
恒
彦
1
は
じめ
にネ
パー
ルの首 都
カト
マ ンド
ゥに はヒ ンド
ゥー
教
や仏 教
の数
多 く
の寺 院
や神
殿 等
が存 在
し、
現 在
も多 く
の参 拝者
で 賑 わっ てい る。
市 街 地
の西 郊
に位 置 す
る緑 豊
か なス ワヤンブ丘
1}は、
古 来 よ り現 在
に至 る ま
で、
ネ
パー
ル の仏 教 徒
はもち
ろ ん、
他 地域
の仏 教 徒
にと
っ ても しば しば最 重 要
の霊 場
とさ
れ てき
た。ス ワ ヤン
ブ 丘
は現
在
、
国 際社 会
にお け
るグ
ロー
バ ル志 向
の諸 観 念
と諸 実 践
のうね り
の中
にそ
の身
を投 じ
て いる。そ
の結 果
、
ス ワヤンブ 丘 に は新
た な傾
向
が形 成
さ れつ つあ
る。
本 稿
で は、
グロー
バ ル化 と南
ア ジア聖 地
の変 容
の分
析
の一
例 と し
て、
あ
るいは グ
ロー
バ ル化 と宗教
の関係
の分析
の一
例
とし
て、特
に宗 教
・
国際 法
・
エスニ シ テ ィー
という観 点
か らの現
在の ス ワヤン ブ 丘の 傾向
につ い て質
的 に検
討
し たい2,。
2
現 代
のスワ ヤ ンブ丘
に共 存 す
る3
つの価値
の軸
ス ワヤンブ 丘 とい
う場
に内外
の人々が見
出 す 価 値の軸
と し て、
以 下の3
つを
設定 す
ると
ころ か ら議 論 を始
め たい。す
なわち
、(
1}
霊 的 な場
という
、宗 教
的 諸 観 念 お
よ び諸 実 践
と結
びつ い た価 値
と、 (2泄 界 遺 産 制
度
を 通 し て’
顕著
で普
遍 的 な価 値 を 有
す る”“
人類
の遺 産
一
と
ラベ リング さ れる博 物 館 的 な文
化 財 と し
ての価 値 と
、
(
3
)
エ スニ ッ クアイ
デ ン テ ィテ ィー
の文 化
的拠
り所 と
し ての価 値
という
、3
つの価値
の軸
で あ る。
こ れ ら3
つ の価 値
の軸
に基
づい て内 外
の人々がス ワヤン ブ 丘 に見 出 す も
の は、
ス ワ ヤ ンブ 丘 というロー
カル な場
にと ど ま
るも
ので は なく
、
その場 を拠 点 あ
るいは重 要 な経 由
地 とす
る ト ラ (37
)
智山学
報第
五十五輯 ンス ロー
カルな 広 が り を し ば し ば 持つ。
も ち ろ ん、
内外
の人々が見 出す 価 値
は 実 際
に は より多 様
であ
っ て3
つ の価 値
の軸
に尽 き
るも
の では なく
、
ま た 上記
3
つ の価 値 もそ れ ぞ れ が
一
枚 岩 的 な も
ので はな く
、
様
々な 人
々がそ
れ ぞ れ の立ち位 置
か らそ
れぞ
れの価 値
の多 様 な側 面 を見 出す
ランド
スケ
ー
プ的 様 相
を帯
びて い る。さ
ら に、
そ
れ ら3
つ の価値
はし
ばし
ば重
な り
合
い、
区別 が 困
難 な場 合 もあ
る。 だ が、そ
れ でも な
お、 上記
3
つを
主 要 な
価 値
の「
軸
j
とし
て仮
説 的
に設
け る こと
に は意味
があ
る。
な ぜ な ら、
グロー
バル化
のコ ンテ ク ス トの中
で 現在
の ス ワヤンブ丘
に生 ま
れつ つあ
る新 し
い傾 向
の重 要 な
一
側 面
は、
上 記
3
つ の価 値
の軸 を め ぐ
っ てのも
の、
別
の言
い方
を す れ
ば、
ス ワヤンブ 丘 と
いう場
にお け るそ れ ら
3
つ の軸
の、 トラ ン スロー
カ ルな
広
がり
を持 ち
な が ら相 互 影響
を とも な う対
立的 共
存
に よ るも
の で あ る と と らえ
る な ら ば、
理解
可能
な もの と な る か ら で あ る。
以 下、
これ ら3
つ の価 値
の軸
に基
づいて検討
を
進
め ていき た
い。
3
霊 的 な 場 と
いう
価
値
の軸
3
.
1
ネ
ワー
ル仏 教 僧
に よ る ス ワ ヤ ンブ
の シ ンボ
リ ズ 厶ほ ぼ
万 入
が認
め ると
こ ろ で は、
スワヤ
ンプ 丘
の中心 とな る
のは
ス ワヤ
ンブ ナー
ト・
マハー
チヤイ トヤ (Swayambhunath
Mahacaitya
、
以 下、
スワヤン ブ)
(→
写真
1
) であ
る, ス ワヤンブ丘
の頂
に位 置 す
る このス ワヤンブ は、
カト
マ ン ドゥの先 住 昆 族
とさ
れ る ネワー
ル族
の仏 教
(金 剛 乗=
密 教 〉 にと
っ ての重 要
な
霊的
モニ ュ メントと
し て 誕生 した
。ス ワ ヤン
ブ は密 教
の巨大 な チ
ャイ トヤ
であ り
、イ
ンド
で生 ま
れ、日
本
の真
言 宗
でも馴 染
み の五仏
(ヴァ ィロー
チャナ 仏、
ア ク ショー
ビャ仏、
ラ トナ サン バ ヴァ仏、
ア ミ ター
バ仏、
アモー
ガ シッデ ィ仏 》 と、 四明 妃
(マー
マキー
女尊
、
ロー
チャナー
女 尊、
ター
ラー
女 尊、 パー
ン ドラ ヴァー
シニー
女尊
}の立
体
曼 荼 羅
でもあ
る。
ス ワヤンブ 下部
の白
い ドー
ム部
の四 方
の部 分
には尊壇
が取
り付
け ら れ てお り
、
そ れ ぞ れ
の尊壇
に これ ら
五仏
が祀
ら れ ている(
東
に はアク ショー
ビャ仏 とヴァ イロー
チャナ仏が、残
りの 三体
の仏たちが順に南・
西・
北に祀 られている }。 (38
)グロ
ー
バ ル化 時代の カ トマ ンドゥ仏 教 霊 場(
杉 木
) 同 じ ドー
ム部
の四維
の部
分 に は、
四明 妃
の尊壇
が 順 に設
け ら れ.
てい る (→
写 真2
)。密 教
に は様
々な
曼
荼 羅 が 説 か れ
る が、 上記
の 五仏
や四明 妃
は そ れ ら様
々な曼
荼羅
の尊
格
たち
とし
ばし
ば同
一
視 さ れ る基 本 的 尊 格
たち と
してイン ド以来
密
教 で伝 統 的
に信 仰
され
てき
た。ス ワヤン
ブ
の中
には
、
これ ら
五仏
と 四明妃
はも ち
ろ ん、
ま
だ カト
マ ン ドゥ渓 谷 が 湖
の底
にあ
った太 古
の時 代
に そ の 湖 に現
れ た 始 原
の仏
(本初
仏、
あ
る いは 第六 仏としての持金
剛とも呼
ば れ る) が宿
っ ている と考
え ら れ てい る。
こ の始 原
の仏 は 上 記 五 仏と
四明 妃 を
は じめ とす
る全
て の根 源
であ
る。現 在
の スワ ヤンブ があ
る位
置 は
、
こ の始 原
の仏 が 現 れ
た場所
でもあ
る。こ の よ
う な
ス ワヤ
ンブ は
(そ れ を重 視 す る者
たち
にとっ ては )仏 教 世 界
の申
心
であ り
3》、
宇 宙
の構 成
と悟 り
へ の階
梯
を
表
現 し たも
の であ
る (→ 写 真3)。 ガ ジュー
と呼
ば れ るス ワヤンプ
最
上 部
は、
真 理 と仏
の境 地 を象 徴 し
ている とさ
れ る。 そ の下
に位置す
る、
十
三 の輪 か ら な る傘 蓋 は
、
修 行 者 が
進
む実践
と
悟 り
の諸
階梯
(
修 行
と境 地の階梯
であ る十 三地 と十二波 羅 蜜、南
ア ジ ア に広 く
分布
する十二巡 礼地、
十 種 類の智 慧で あ る 十智 ) や12
の神 秘 的 文 字 な
どを象 徴 し
て い る。
こ の傘 蓋
の下 に位 置 す
る平 頭
の四 面
(東 南 西 北を向
く) に描
か れ た眼
は、
スワヤ
ンブ
に宿
って 四方 を普 く見 渡 す根 源 的 な
仏の、
あ るい は尊 格
た ち
の眼
であ
る とも
、
あ
るいは 仏法
が 全世 界
に 広 が り渡
るこ と の視 覚 的表 現
であ
る とも言
わ れ る。
ま た、
こ の平
頭部
と
その下 に位 置す
る白
いド
ー
ム部
は 全体
で 壺 の 形 にな
っ てい るのだが
、
壼
の モチ
ー
フは
、尊格
の宿
る場
と し て カ トマ ンズ仏 教
では
一
般 的
であ
る。 こ の壺 は曼 荼 羅
と同
義
でも
あ
り
、
その内
部
の空 洞
は 仏 教の宇 宙 論
において曼
奈 羅 が 視 覚 的 な 姿 形 を 現わす 色 究 竟
天 を表 す
と され、
また壼
の形
は仏 教
の宇 宙 論
にお
いて世 界
の中 心
であ り
最
高 峰
であ
るス メー
ル山 を表す
とも言
わ れ る似
上、
R
。spatt、
吉
崎、
等 )4)。 こ の壺 と して の ドー
ムの 四方
・
四維
に五仏
と 四明
妃 が祀
ら れて い るのであ
る。
この よ
う
な ス ワ ヤ ン ブを囲 む
よう
にマニ車 が 設 置 さ れ
てい る(
→
写真
4
)
。
人
々はマ ニ車
に手 を触
れてそ
れ ら を回転
させ な が らス ワ ヤ ンブ を右
回り
に巡 る。
こ の マ ニ車
の実
践 はも
とも
とチベ ッ ト仏 教
の中
で 生ま
れ たも
のであ
るが
、
(
39
)
智 山 学報 第五 十 五輯 写 箕f
スワヤ ンブ丘の頂 (奥 に 見 え る
、
眼 が 描 か れ た巨大 な 建築物がス ワヤンブ 2005年 ) 著者撮 影 写真2
ス ワ ヤ ンブの ドー
ム部 に取 り付 け ら れ た 尊 壇 と それ を礼 拝 する 人 々 かっ
て右 がア ク ショー
ビャ仏、
左が ヴァイロー
チt ナ 仏著 者撮影
2005年 〉 (
40
)グ ロ
ー
バ ル化 時 代の カ トマ ン ドゥ仏 教 霊場 (杉 木 ) 写 真3
スワヤン
ブ
儼 上 部 がガジュー、
順に下 に 向 かっ て、
全 体で三 角 柱の形 を した 傘 藻、
眼 の描か れ た平頭、
自い ドー
ム。
著者撮 影 2005年) 写 真4スワ ヤ ンブを囲むマ ニ車を回 転さ ぜ な が らス ワヤンブを め ぐ る 人々 (著 者 撮 影 2005年 〉 (41)
智 山学 報 第五十五輯
そ
れ が カ トマ ン ドゥ の ネワー
ル仏 教
に入 り
、多
大 な功 徳 を 容 易 に得 る 方法 と
し て、
カ トマ ン ドゥの 仏教徒
の間
で好 ま
れ てき
た。ま
た、右 回 りに巡
ること
は吉
であ
ると考 え
ら れ てい る。
コ ス モ ス の
象 徴 装 置 が 同
一
であ
っ ても
、そ
こに読 み 込 まれ
るコ ス モス の体
系 や神 話 な
どの物 語
は担
い手 た ち
に より しば しば異 な る
。な ぜ な ら
、
人
々は様
々な 立 ち位 置
か ら一
そ れ がエ スニ ッ クな も
の であ
れ、
セ クト的 な も
のであ
れ、
あ
るいは個 人
的
なも
の であ
れ一
同
一
の装
置
を眺
め る た め、
見 え
てく
るも
のあ
るいは見 出 そ う とす
るも
のが 異 な
る か らであ り
、
さ ら に そ の相違
を し ば し ば自
らの帰 属 意 識
と結
び付 け
ること
に よっ て他 者 と
の差 異 化 を
図 ろう
とす
る か ら で あ る。
こ れ か ら 述べる よう
に、
ス ワヤンブ 丘 は ネワー
ル族
の金
剛 乗 仏 教
のみな ら
ず
、
互い に異
な
るエ スニ ッ クな
背景
を
持
つ様
々な仏 教
者
たちが 集 ま
るエ ス ノフロー
の場
でもあ
る。そ
れ は ス ワ ヤンブ 丘を
コ ス モス解
釈
あ
る いは物 語 創 出
の アリー
ナへ と一
層 変 容
させていく
。
だ
が、
そ れ は完
全
な カ オスを意 味
す
るも
の ではな
い。 ス ワヤンブ という象 徴 装 置 が 同
一
であ
ること
に より
、 ま たそ
れ が極 度
に特殊
なも
の で はな く包 摂 力
のあ
る象 徴
の体 系 を
有 す
る モニ ュ メ ン トで あ る こ と に より
、
そ
し てそ
れ故
にそ
れ が 丘の中 心
とし
てのコ ズミックな
位置
を
保
ち
続
け たこと
に よ り、
ス ワ ヤ ンブ は(
曖昧
で はあ る が確かに)クロ スエ スニ ッ クなコ ン セ ン サ スも
生み出
してき
たの であ
る。ネ
ワー
ル族
がスワ ヤンブ に見 出
し た 上述
の様
々な意味
一
始 原
的
な 仏
との結
びつき
によ る仏 教 霊 場 と し
ての スワ ヤンブ 丘
の根
源
性
、
ス ワ ヤンブと
いう曼
荼 羅
の尊 格
たち
(五仏 や 四 明 妃 〉が そ
の他
の曼 奈 羅
に登 場 す
る尊 格 た ち と伝
統 的
に同
一
視 さ
れう
るト
ラ ン スセ クト的 尊格 た ち
であ
った
こと
一あ
るい はマ ニ車
の実 践
が広 く様
々な 仏教 徒
たち
に好
ま れ る こ と、
そも
そ も仏
教 はエ スニ ッ ク な差 異
を本 質 的 な も
の と は考 え な
い こと等
は、
そ
の ような
ク ロ スエ ス ニ ッ クな仏 教
者
と
し ての意
識 を生
み出す源
と して機能
し た と考
え ら れる。3
.
2
鐙 的 場
の凝 集 力 と
、
人 と物 と観 念
のフロー
前述
の よう
に、も
とも
とス ワヤ
ンブ丘 は ネ
ワー
ル族
の金 剛 乗 仏 教
の霊 場
で (42
)グロ
ー
バ ル化 時代の カ5
マ ンドゥ仏 教 霊場 (杉 木 )あ
っ たが
、
歴 史
の流
れの中
で,
ネワー
ル族の金 剛乗 仏 教 徒
に と どま
らず
、
現
在
のイン ドや チベ ッ トやブ
ー
タンも
含
む
カト
マ ンド
ゥ以外
の地域
の、
互い に異 な
っ た文
化
的
背
景 を持 ち
、
密 教
や大 乗 仏 教 や 上 座 部 仏教
といっ た様
々な
レ ベ ル の仏 教 を
信奉
す
る多様
な者
たち
に とっ ても
、
ス ワヤンプ 丘 は重 要 な霊 場
と
なっ てい った
。聖 域 は
、
地 元
の人
々はもち
ろ ん近 隣
の 人々にと
っ ても力 を秘 め た重 要 な場
であ
る。宗 派
の相 違
のみな
らず
、
し ば しば
宗
教
の相 違 を越 え
て、聖 域
は最 も
素
朴 な
レベ ルでの人々 の信
憚 心
が凝 集
され る場
でもあ
る。そ
の た め、
結果
と し て特 定
の聖域
に は宗 派
や宗 教
の相 違
に関
わ らず様
々な僧 侶
や信徒
たちが
こぞ
っ て寺 院等
の建築 物 を建
てよ う と企
て る こ とが あ
る。そ
れ が暴
力
的 要
素
を
含 む宗 教 間対 立 を と も な う場 合 もあ れ
ば、一
方
の破 壊
を とも な
わ ない「
共
存 」
が 比 較 的 穏 や か に 行 わ れ る場
合 も あ る。
ス ワヤンブ 丘の場 合
は後 者
であ
った
。
カト
マ ンド
ゥに進 出 し
た チベ ット仏 教 諸 派
や 上 座部 仏 教 教 団
はス ワヤ
ンブを中心
に定 め
てそ
の周 囲
に自分
たち
の寺 院
をこぞ
っ て建
設
し、
そ の結
果
、 ス ワヤンブお
よ びそ
れを
抱 く
スワヤンプ丘
は金
剛乗
のネ
ワー
ル族 だ け
で な く、
他の部 族 や他
の 仏 教の 入々 に とっ て も重 要
な霊 的
モニ ュ メ ント
および聖域 とな
った
のであ
る。クロスエスニ ッ
ク な仏 教 者
たち
の意
識
の結
節点
と し て の ス ワ ヤンブ の脇
に は、
も と も と 天 然 痘 治 癒 を 得 意 と し、
カ トマ ン ドゥ の霊 媒 師 た ち
に憑 依 す
る女 神
であ
るハー
リー
ティー
女 神
(日本で は鬼
母 神 と して知 ら れ る)の寺
院
も
建
立され
てお り
、現 在
でも多 く
の人
々が
プー
ジャー
(
供 養) を
行
っ て おり
、
そ こで は「
八千 頌 般若 経
亅
も
読 ま れ る5)。 さ ら に、
ス ワヤン ブ 丘 の霊的 凝 集 力
は仏 教
に と どま らな
い。現 在 も
カ トマ ン ドゥで12 年
に一
度
行
わ れ る サ ン ミャク祭
で は、
人々 は町 中
の仏 像
をヒ ン ドゥー
国 王
の宮 殿
に集 め
、
翌
日そ れ
らを
ス ワ ヤ ンブ丘 の南 東 部
に運
び、
そ
れ ら仏像
や仏 教僧 侶
た ちに対 す る布 施
が大
々的
に行
わ れ る。
その際
、
ヒンド
ゥー
国王 は そ
の様 子 を特 別
に設 け
ら れ た席
で観 察 す
る。T
.
T
.
Lewis
は、
人々の この よ う な 行 為を
通 し て、
ヒ ン ドゥー
国
王の宮
殿
がス ワヤンブ 丘と
(地 理 的にはや や離 れて いる が〉 霊的
に リ (43
)智 山学 報 第五十五輯 ン ク
さ れ
、
こ のリンクを
通 してヒ ンドゥー
国 王の宮
殿 が カ トマ ン ドゥの聖 な
る中 心
にな
る と分 析 す る
6) 。 これ は あ くま
で ヒ ンド
ゥー
国 王
の視点
か らの祭
り解釈
であ
る が、
霊 的場
と し ての ス ワヤ
ンブ丘
の凝 集 力 が 仏 教
の枠 を超 え
て ヒ ン ドゥー
の世 俗権
力 者
に ま で 及 ん でい る例
と して と らえ
る ことが
可能
であ
ろう
。
実 際
に、
ス ワヤンブ 丘
に は、
決
して数
は多
くな
いが、
ヒ ンド
ゥー
的 要
素 を持
つ モニュ メ ントも存 在
し、
ま
たヒ ン ドゥー
教
の行 者
たち も時
に訪 れ る
。スワ
ヤ
ンブの大 規 模 な修 復 事 業 が 過 去 何 度
か行 わ
れ てい る (1372年
、
1413 年、
1504
年、
1530
年?、
t595年、
1604年、
1640年
、
1683年
、
1710年
、
1758年
、
1817年
、
1918年
など :以 上 は修復 完 成 年 )。そ
の事
業
に はネ
ワー
ル族
の みな らず
、
チ ベ ッ トや ブー
タンの仏
教僧侶
た ち が しば
しば
重
要
な役割
を果
たし
た こ と が知
られ
ている。 チベ ット
や ブー
タ ン、
時
に中国
か らも
修復
のた めの大 規模
な
基
金
が集
め ら れ、
ネ
ワー
ル族
の仏 教僧 侶
たち と
チベ ッ トや ブー
タ ンの仏 教 僧 侶
た ち
の協 力 体 制
一
こ の協 力 体 制
に は時 に
ヒ ンド
ゥー
国 王 も加 わ
った
一
が
敷 か れ た
7) 。 ス ワヤ
ンブの持
つトラ
ン スボー
ダー
な 意 識
の凝 集 点 と し
て の性
格
が こ こ にも現
れ ている。1950
年
の 開 国と
1990
年
の民主 化
運動
以降
、
海 外 先 進
国 か らカ トマ ン ドゥ へ の様
々な 形
(人 的・
資 金 的・
技 術 的 等 )の進 出 が 増 大 す
る。そ
の流 れ
の中
で、 ス ワヤ
ンブ丘
に はイ
ンドや
チベ ットや
ブー
タンと
い っ た近 隣 地 域
の仏 教 者
の み な らず
、
ドイツ の国 際 的 仏 教 教団
や 日本
の仏 教 者 がス ポンサー
と なっ て 建 て ら れた 建 築 物
(そ れ ぞれ、
スワ ヤンブ 丘麓の小チャイ トヤとマ ニ車
が埋め込 まれ た壁 と、
丘 頂の一
画にあ る 世 界 平 和モ ニ ュ メ ン トの黄 金の仏 像 と池 )も登 場 した
。ま た
、1980
年 代 頃 か ら
は (そ し て現在
に 至 る まで )、 ス ワヤ
ンブ丘 を含 む
カト
マ ン ドゥ渓
谷 はいわ ゆ る「
ヒッ ピー
の 三大
聖 地」
の一
つ と し て9)、
いわ ゆ る「
東
洋
」
思 想 あ
るい はそ
の雰 囲
気
にあ
こ が れ た 欧米 諸 国
の若者
たち
の スピ
リ チ ュ アルな 遍 歴 旅 行
の 目 的地
の一
つと な
っ てい る。1979 年
にス ワ ヤ ン ブ丘 を含
む カ トマ ン ドゥ渓 谷
の数
々 の霊場
とそ
の周 囲
が世 界 遺 産
とし
て登 録 さ
れた
こと
に より
、
そ れ ら霊
場
は“
世
界
の遺 産
”“
人 類
の遺 産
”
と
いう
国 際 的評
価 も得 る
こ とに な
った
。後 述 す
る よう
に、 こ の国 際 的 評 価 自体 は 霊 的 場 と し
〔44
)グロ
ー
バ ル化 時 代のカ トマ ン ドゥ仏 教 霊 場 (杉木 ) て の価 値
と は異
なる軸
に基
づく評価
であ
るが
、
こ の こと は、 ス ワヤンブ 丘の国
外
に おけ
る知 名度
を
上げ
、
研
究者
やッー
リス トのみな
らず
、
ス ワヤ ン ブ 丘 の霊 的 側 面
に価値
を
見出す
巡
礼者
の出身
地域
の範
囲 を
広げ
る契機
にも
なっ たと考 え
ら れ る (上 記、
ドイ ツ や 日本の仏 教者
に よ る進 出 を見よ),
以 上
のよ う
に、
ス ワヤンブ
が持
つ霊 的 場 と し
ての価 値
は、
中世
の時 代 か ら
ス ワヤンブ自 身
、そ し
てスワヤ
ンブ丘 を ト
ラン ス ロー
カ ルな人 と物 と観 念
の フロー
の場
とし
て位 置付 け
てき
た。R.
Robertson
は グ
ロー
バ ル化 を 「世 界
の 縮 小 と、一
つ の 全体
と し ての世 界
という
意 識の増
大」
と定 義
し9)、
近 代 以 前
か ら
、
様
々な
レ ベ ル の意識
や諸 制 度
の上で特定
の地 域
が他
地
域 と広 く
つな
がりを徐
々 に得
ていく過 程
で宗 教 が 大 き な役 割 を
果
た
し てき
たと主
張
す
る。
ス ワヤンブ、
そ してそ れ を中心
とす
る ス ワヤンプ 丘につ い ても
、
そ
の場
が持
つ カ リスマが、
唯
一
ではな
い にし
ても 同様
の役 割 を果 た
してき
た と見
ること が でき
よう
。ま
た、
後
述 す
る よう
に、
ス ワヤンブ丘
という場 に
は (R
.
R
。berts
。n の言 葉 を 使 え ば)「
一
つ の全
体
と し ての世 界
という意 識 」 も現
に 生ま
れつつあ
るの であ る。
4
“人
類
の遺
産
”
という博 物 館 的文 化 財 と
し ての価 値
の軸
藍
950
年
の開 国
と第
且期
の民 主 化 以 降
、
スワ ヤンブを
中
心 とす
る 霊場
を
グ ロー
バ ル志 向
の諸 観 念 と
諸実
践
の中
へ と埋 め込
むの に積
極 的 な 役 割 を果 た し
た 制 度
の一
つが 世 界 遺 産 制
度
であ
る。
1979 年
、
ス ワヤンブを
含
む カ トマ ンド
ゥ渓 谷
の ヒ ンド
ゥー
教 と仏 教
のいく
つか の霊 場
は「世界
に類
のな
い、
生き
てい る 遺 産 地 区 (living heritage site unparalleled in the wor )d>
」
との国 際 評価 を受
け
・“
Kathmandu
valley”
(以 下、
「カ トマ ンドゥ渓谷」)と
いう
名
で 文化
遺
産 と
し て世 界
遺
産 に登 録 さ
れ たtO) 。 こ の世 界遺 産 制度 は
ス ワヤンブ に見 られ
るロー
カリ ティー
に大 き
な質
的変 容
を も た らす一
因 と なっ た。
4
.
1
世 界 遺 産 制 度
がも た
らす文 化
の二面性 と
博
物
館
的 価
値
世 界 遺 産 制 度
と は、
「
世 界 遺 産 条 約」
(1g72年 )ωお
よ びそ
のそ も
そも
の発
(
45)智 山 学 報 第 五 十 五輯
端
とな
っ た「
UNESCO
憲
章
」 (
1945年
)12}に よ れ ば、
各
国
・
各
文 化
の図 書 や
芸 術
作
品 な
らび
に歴
史
お よび
科
学
の記
念 物
の保 存 と保 護 と研 究 を通 し
て、
そ れら
の知 識
の維 持
、増 進
、
普 及 を世 界 的
に行 う
ことにより
、
異 国
や異 文 化
の人
々、 つま り 「人類
の知 的 お
よ び精
神 的
連帯」
を
築
く
こ とを 目的
とす る
]3)。世 界 遺 産 指 定 され た 文 化 物 件
は、”
人類
(mankind )”
の創
造性
・
交
流
・
歴 史
の足
跡
と して’
顕著
な普
遍 的価 値
を 有 す る (of outstanding uniΨersaL va [ue)”
という
国
際 認
定
を 受 け た
こと
にな
るc世 界 遺 産 指 定 物 件
にま
つわ
る一
連
の権 利 と
責
任
はそ
の保 有 国
に存 す
るも
のと され るが
、
保 有 国
は グロー
バ ル志 向
の遺 産
保 存 基 準
(以 下、
UNESCO
コー
ド) に従
った 保 存 を行 わ な け れ ば な らな
いし
、また 逆
に、
保 有 国 以 外
の締 約 国 も
、保 有 国
の要 請
に従
い 必要
な ら ば 入的
・
技
術 的
・
資 金 的 援 助 を保 有 国
に対
して行
わな け
れ ば な ら ない。 な ぜ な ら、
世 界
遺 産
に指 定 さ
れ た物
件
は文
字
通 り”
世
界
の遺 産
”
←“
人類の遺 産”
) であ
るの で、
世界
の 中 に存在
す
る 限り
、
保 有 国
にもそ
の他
の締 約 国
にも保 存
の責
が 生 じ るか ら
であ
る。”
人類
「
髄鱒
普 遍 的
”
という
グロー
バ ル志 向
の同
胞
理念 と
、
こ のよ うな 国 際 協 力
の体 制
は相
補
的
であ
る。
こ の よう
な理 念 と
協力
体 制
に基
づく世 界 遣 産 制 度
に より
、世 界
遺
産
指定
さ れ た文
化
物 件
は「人 類
の知 的 お よび
精 神 的連 帯 」
の資
源
とし
て、
ロー
カルかつ グロー
バ ル という
二面 性
を志 向 す
る よ う に な る。
世 界 遺 産 と
いう 国 際 的 評 価
を保
つ た め に は、
そ の文 化物 件
に隔
真
実 性
”
(authenticity ) と臨
完
全 性
「
’
(integrity
)が 保
たれ
て い る こ と が要 求
さ れ る。
“
真
実 性
”
と は複 製
や偽 物
でな
い こと を指
し、
側
完
全
性
”
と
は そのオ
リジ
ナル に余 計 な 改 変 が 施 され て
いな
い ことを
意 味す
る。端 的
に言
え ば
、
そ れ は 鑑
賞
お
よび 考 古 学 な
どの学 術 調
査
のた め に対 象
に求
め ら れ る博 物 館 的 な価 値
の基 準
で あり
、
これ が文 化
に対 し
て適 用 さ
れるUNESCO
コー
ドの骨 格
で あ る。
し た がっ て、
世 界選
産 という
グrr・一
バ ル志 向 な 文 化 形 態 が 有 す
る価 値 と
は、博
物館
的 な 側 面
にお
いてと ら え られ
る価 値
と密 接
であ
る と言 え
る。保 有 国
に よ る博 物 館
的保
存 管 理 に は、
UNESCO
コー
ドに 即す
る形
で保 有
国
の人
々 の生 活
の中
で何 らか
の形
で積 極 的 な 働 き を持
つ よう な 政 策
を進
め る (46
)グロ
ー
バ ル化 時 代の カ トマ ンドゥ仏 教 霊場
(杉 木 )こ と
も
含
ま
れ る14)。
こ のた め、
世
界遺
産 制 度
はい わ ゆるエ コ ミュー
ジア ムや エ コ ツー
リ ズム の手 法 と も結
びつき
やす
い。世 界 遺 産
の持
つ こ の社 会活性 化
の
側 面 は
、
開 発
に関 す る 国 連 内
のUNDP
(United
NatiensDevel
。pment pr。−
grarmne
)の重 要 方針
の一
つ でもあ
る「
持 続 可 能 性 」
(sustainability)一
「
持 続
可 能性 」
の定義
には実
に様
々 なも
のが あり
、
確 定
的 な もの は ない とい うの が現 状
であ
る が、
今
は そ れ につ い て は保 留
し てお
こう
一
という方針
とも結
び つきや す
い。 これ は 国 際 規 範
・
制 度 と
ロー
カル規 範
・
制 度
の問 に 繰 り返
し起
こ るダイ ナ
ミ ズムを伴 う
。 こう し
て、 ス ワヤ
ンブ丘 は
ロー
カルか
つ グロー
バ ルな 文化 形 態
へ と脱 / 再
埋 め込
み 15}され
て いく
16} 。こ の よ
う
なロー
カルかつ グロー
バル という文 化
の 二面 性
は、
前 述
の よう
に、 ス ワ ヤンブ 丘
の霊 的
場
と
し て の価
値
にも
見
出す
こと
は でき
る。
ス ワヤンブ 丘 で の儀 礼 執 行
に は地 元
の仏 教
徒
グルー
プ (
グ ティ) が伝
統 的
に何
ら かの形
で携
わっ て い る。 ス ワ ヤン ブ丘 は グ ティ の メ ン バー
たち
のア イ デンティティー
の拠
り所
で あり
、
活 動
の場
で あ る という意 味
で U一
カルな側 面
を持
つ 。そ
れ と同 時
に、 ス ワ ヤンブ丘 は
カト
マ ンド
ゥ以外
の様
々な地
の仏 教
徒
の意 識 と行
動
を凝 集 す
る という意 味
で、
ト
ラン ス ロー
カ ルな側 面 も
持
つ。
だ
が決 定 的
に異
な
るのは、
霊 的 場 が 有 す
るこ の 二面性 は霊 場
が持
つ宗 教 的
な力
に対 す
る信
に価
値
の基 盤
が 原則 的
に はあ
るのに対 し
、世界 遺 産制 度
がも
た らす
二面性
は、近 代 民
主 主義
が生み出
し た世
俗
的
な博物
館 的論
理一
そ れ は今
やエ コミユー
ジア ムや「
持
続
可 能
性
」
といっ た より近 隼
の開発
パ ラ ダイ
ム と密 接 な
のだ が
一
に傾値
の基
盤
があ
る という点 で あ
る 。したが
っ て、
前 者 にお
いては内 外
の宗 教 的
な個
人 や団 体
が主
なエー
一
ジェ ン トに な るのに 対 し、
後 者 は そ れ に 加 え て、
戦 後の世俗
的 な国 際 法
や国 際 機 関
がエー
ジェ ン トと して重 要
になっ てく
る。42
スワ ヤ ン
ブ 改
築 の パ ラダ
イ ム シ フ トス ワヤンブ は
中 世
の時 代
か ら何 度
か大 規模 な改 修
工事 を行
っ てき
た。
こ の改
修
工事
の 歴史
の詳
細 を分
析
し たA
.
Rospatt
は、
M
.
Slusser
の 見解
を受
け な (47)智 山
学報第
五十五輯 が ら、
スワ ヤ ンブの姿
は 度 重 な る改 修
工事
の中
で その時 代 そ
の時 代
の教 義
の発 展
に即 し
て、
全 体
の相 似 比 を守
る限 り
に おい て その大 き
さと
細部
に少
しず
つ変 更が 加 え られ
てきた と論 じ
てい る17) 。す
で に説 明
し た よう
に、
仏教
徒
た ち に より世 界
の中 心
と見 な さ
れ たス ワヤンブ は曼 荼 羅 を含 む仏 教
の宇
宙
論
・
実
践
論
を
その姿
に 反映
さ せてい る。
コ ス モ ス の基 本 構 造
は元 来 不
変
な も
の(
あ
るいは不変
であ
るべきも
の)
と し て考
え
ら れ る。
その意味
で、
改 修
の際
に は、
ス ワ ヤ ンブ
の大 き
さを
変更す
る に しても
、全
体
の相
似 比
自体
に変
更
は加
え ら
れな
かった。だ
が同時
に、
コス モ スそ れ自体
は全
体
を
包含す
る という
特徴
を
持
つ こと
か ら、
コス モ ス の基 本 構 造
と結
びつ いた 全 体
の相 似 比 を維 持 す
ると
いう形
で、
コス モ ス内
の何 らか
の要 素 を 象 徴 す
る装 飾
がそ
の都 度新
た に施 さ
れ た り
、あ
るい は全 体
の大 き さ
が増 大
したり
も
したのであ
る。 こ の意 味
で、 ス ワヤンブ はコス モ ス の基 本
構
造 を保 持
し な が らも
く
拡 大 す
るコス モ ス〉
を表象
す
るも
のであ
った
。
だ が
UNESCO
コー
ド は、
こ のく
拡 大 す
るコ ス モ ス〉
の建 築 的 側 面 を 質 的
に変
容
さ せ る。荻 野
が「
博 物 館 的 欲 望 」
の特 徴
の一
つ とし
て「
モ ノ の永 久 保
存
へ の欲 望 」 を 挙 げ
て いる よう
に IS》 、博 物 館 的 論
理 と密 接
な価 値 観
で あ るUNESCO
コー
ドの“
真実性
”“
完 全性
”
と
いう概 念
は、
保存
を
「
も と
の状 態
の維持」
、
修復
を
f
復
元」 と
いうあ り方
に限 定 す る
。 ス ワヤ
ンブを 修 復 す
る際
に は素 材 か
ら大 き
さま
で いかな
る変 更 も認
め ら れず
、
新
た な 装飾
の付 加も
容 認 さ
れな
い。 こ の結
果
、
ス ワヤンブ
の建 築 物 そ
のも
のは
〈
拡 大 す
るコス モ ス〉
か ら切 り
離
さ れ、
モ ノ のも と
の状 態 を永 久
に保 存 す
ると
いう世 俗
の博 物
館
的
論
理
が ス ワ ヤ ンブ の基
本的
建 築 哲
学
とな
る。も
し、
た とえ
ス ワヤ
ンブ
の建 築
に将 来何
ら かの重 要 な 変 更
が行
わ れる に しても
、
そ れ は かつ て の よう
な ス ワヤンブ
の ロー
カル仏 教 徒 た ち
の自由 な 教 義
の発 展
に主 と し
て基
づく
という よ りも
、UNESCO
の保 存 哲 学
・
方 法
の変 容
に基
づく も
の とな
る と予 想 さ
れ る19)。
霊 的 場
にお け る 建 築 物
のあ り方
は信 徒
たち
の コス モ ス解 釈
のあ り
方
と連
続
性
を持
ち
、
その コス モス解釈
は建
築
物 を場 と
して行 わ
れ る儀 礼 な ど
の諸 実 践
グロ
ー
バル化時代
の カ トマ ンドゥ仏 教 霊 場 (杉 木 ) に より信 徒 た ち
に身 体 化
・
内 面 化 さ
れ る。だ
が、
こ の建 築
(モ ノ〉一
コス モ ス解 釈
(人 閲・
理 念 )一
儀 礼 (
人 間・
身
体 )と
いう連 続 性
の両 端
は、
今
や世 界
遺 産 制 度
に よっ て異 な
る論 理 を持
つも
のとな る
。な
ぜな
ら、「
カ トマ ン ドゥ渓
谷 」 と
し てUNESCO
コー
ド
の適 用 が 直 接 要 求 さ
れ るのは建
築
に対
して の み であ
っ て、
儀 礼
に対
して で は ないか ら で あ る。
こう し て、
た とえ 人
々がス ワヤンブの存在
す
る場
に新
たな
コ ス モ ス解 釈 を行 お うが
、
そ れ が
ス ワヤンブ の建 築
物 自体
の改築
を と
も
なう
ことは も は
やな くな
る。 いう な れ
ば、〈
建 築
と儀 礼
の非 分 離
〉
か ら〈
建築
と
儀礼
の分
離〉
へと場
のパ ラダ イ
ムは 変容 す る
。この よ
う
な場
に要
求
さ れ るの は、
UNESCO
コー
ド
に立脚 す
る建 築
のあ り
方 と
、
現地
の人
々が行
っ てき
た儀 礼 を
、
〈
建 築
と儀 礼
の分 離
〉
の パ ラダ イムに 基
づき分 離 さ
せ た 上 で、
(
連続 性
に立脚す
る「
調
和」
で はな く)「
共 存 」 さ
せ る こ と であ
る。平
たく
言
え
ば、
建 築物
を
何
ら変容
さ せな
い形
で宗 教 的 営
み を 行 う、
という
こ と で あ る。
こ のあ ら たな 「共存 」
の国際 的要 求
に対 す
る現 地
の対 応
は、
以
下 に論 じ
る、
ス ワヤ
ンブ と
いう霊 的 場 を管 理 す
るロー
カル組 織
FSMC
のあ り方
に現 れ
て いる。4.
3
持 続
可能 性
、
エ コミ
ュー
ジ
ア ム :宗 教 実 践
の場
の管
理構 造
の変 容
現 在
、 ス ワヤンブ 丘の頂
一
帯
の保
存
管
理の主体
は、
FSMC
(
=
・
Federati・n ・
f
theSw。yambhu
Managernent
andC
。nservation、
あ
るい はMahasamiti
>であ
る。代 表
はネ
ワ
ー
ル族
の シ ャキ
ャ・
カー
スト
の一
形 態
であ
るブッダ チャ ルヤ・
カー
ス トの仏 教 僧 侶
でもあ る
Mabendra
Ratna
Buddhacarya
氏
であ
る。 ス ワ ヤ ン ブ 丘頂
で行
わ れ る プー
ジャー
な ど の儀 礼
はFSMC
と も
関連 す
るス ワ ヤ ンブ 地 区
の僧
侶
に より執 行 さ
れ てい る。FSMC
は政府
の人間
で は ない、
ス ワヤンブ 丘の地 域 に居
住
す
る 地 元 グテ ィ の代表
メ ン バー
か ら成
るロー
カ ル組 織
であ る
。そ
の本 部 自体 も
ス ワヤ
ンブ丘 頂
にあ
る (→ 図4
)。そ も そ も仏 教
寺
院
は そこで僧
侶活 動
をす
る 仏教 僧 侶
カー
ス トメンバー
の アイ デ ンティティー
の拠 り所
であ
ると
いう点 を考 えれ ば
、
FSMC
による ス ワヤ
ンブ管
理 は 地元 僧 侶
た ちの自尊 心
を尊 重
し た体 制
で も あ る と も言 え
る。
彼
ら はDoA
(=
Department
of Ar一
(49)智 山
学
報第
五十五輯
chaelolgy } や
DoF
(・
・
Depattment
ofForestry
》 やUDLE
(=
Ministry of 日ome Affairsの Urban Devel・pment thr・ugh Local
Effert
) とい った 政
府機
関 と も
協
力
し な が ら、
宗
教
実
践
の場 と
して の ス ワヤ
ンブ とUNESCO
コー
ド
に従
っ た「
開
か れた 博
物館 」
と し て の スワヤンブの調 和 を 目指 した
エ コ ミ L一
ジ アム的 活 動 を行
っ てい る20 )。(
図5はUNDP
1995、つ ま りツー
リス トた ち に 配 布 されているスワヤン ブ・
サ イ トマ ップであ り、
同時
に こ の範囲 が FSMC の管
理範 囲でもある>T
.
H
.
B.
Sofield
は
、
「
持 続 可 能 性 」 と
いう観 点 か ら
、
FSMC
が 国連 内
の組 織
UNDP
指
導
のも
と整 備 され
て いく過 程 を 分 析 し
ている
21〕 。 こ こでは
、
「
持 続
可 能 性
」
という
グロー
バ ル志向
な 開 発 理 念
は、外 部
の人
々 で はな く現 地
の 人々 を 主体
とす
る自力
的
かつ持 続 的 な 開発
の構 造
を現 地
に構 築 す
るこ とを 目
指す も
のと
して位
置
付
け
ら れて いる。
これ は、
遺 産
が その地 域
の社
会
の発
展
につ な が る よう
にす
るべき
であ
る という
世 界
遺
産
制 度
の理
念
とも
一
致
し てい る。UNDP
はネ
パー
ル政
府
と
協
力
しな
が ら、
世
界遺
産
指定
さ れた
こ の地
区
に居 住 す
るネ
ワー
ル族
コ ミュ ニ ティー
に自力 的 か
つ持 続 的 な 管 理 活 動 を可 能
とす
る構造
を与
え
た め に、 スワ ヤ ン ブ 地区
の各
グ ティ の代 表
か ら構
成
さ れ る組
織
の1
つ であ
っ たMahasamiti
に着
目
し、そ
の組織
の拡 大
と
整備
、
NGO
と し
ての正
式
登 録
、 メン バー
の啓 蒙 (
ス ワ ヤンブ に関す
る知
識 やエ コ ミュー
ジア ム運 営 の た め の知識等 )等
の活
動 を1994
年
か ら 行い、
ス ワ ヤン ブー
帯
の代表
組 織 と し てのFSMC
の基 礎
を築
い たのであ
る。そ
こ に敷
か れ たエ コ ミュー
ジ ア ム 的管
理体
制
は、
現地
の雇
用の拡 大 も
目的
の一
つ と して含
んで いた。
メ ン バー
の多
く
は自分
たち
のエ スニ ックな言 葉
や国語
とし
て の ネパー
ル語
はもち
ろ ん、国際 語
とし
ての英 語 も達 者
であ り
、
代
表
のBuddhacarya 氏
は スワヤ ン ブ代
表
と し て海
外
へ赴 く
機会
も得
てい る。
FSMC
の特 徴
は、 (1}伝 統 的 宗 教 実 践
と(2)UNESCO
の博 物 館 的 論
理の共 存
が、
〈
建 築 と儀 礼
の分 離
〉
パ ラ ダイ
ム のも と
エ コ ミュー
ジ
ア ムと
いう手 法
に基
づ いて、政 府 役 人 や そ
の他 外 部
の人
々で はな く
、 ス ワヤ
ンブ 丘地 域 在 住 め
複 数
の グ ティの 代表
メ ンバー
に よ り実 現 してい ると
いう点
で あ る。
UNESCO
コー
ドが
ス ワヤ
ンブ丘
に存 在 しなか
っ た頃
に は、
当然 〔
1)
と(
2
)
の共 存
はな か
っ (50
)グロ
ー
バル化 時 代のカ トマ ン ドゥ仏 教 霊 場 (杉 木 ) 写 真5FSMC 本 部 (著 者 撮 影 2005年 ) 写真6
ス ワ ヤ ンブ・
サ イ トマ ップ (UNDP 1995 より転 載 ) モニ ュ メ ントが並ぶ丘頂から、
矢 印 が2本 嵜 か れている左 下の小スペー
ス まで がFSMC の直 接 管 理 範 囲である。
なお、
それぞれのモニ ュ メ ン ト の名 称は 以下の通り (UNDP 1995に記 載の通 りに記 す)。
1=
Shantipera 2=
Agnipura 3=
Samegu Mahavthar4=Svayarnbhu Mahacaitya (
耳
ス ワ ヤ ン ブ)7
=
KarTnataja Mahavibara 8=
ATIantapur璽聖
=
Vayupura 且2=
Jyotikini Mahaviha 【a14
=
BaJradhatU Mandala I5=
Yogambara5
=
Har甜]]ernple 6量
Nagapura 9=
Ptatapapura Kレ=
Vasupura13罵Devadhama
M崩avlhara
16