セールスマンの機能と精神過程についての研究
田 中 由 多 加
は し が き
ヘンリー二・︑ンツバーグ︵団窪蔓竃ぎ言幕同σq︶︑ この人は︑カナダ︑モントリオールのマクギル大学経営学部の教
授である︒一九七六年︑ハーバード・ビジネス・レビューに﹃計画は脳の左で︑経営は脳の右で﹄..℃ξロ巴口αq8葺Φ
δ津の置Φ嘗αヨβ︒冨σqぎαqo口普①ユσqげ鴨︑の論文を発表した︒
﹁経営プロセスと脳機能を立派に結び付けた研究者はまだいない﹂と自負するこの論文の刊行は︑一九七六年七.
八月号︵HBR︶で︑ζの時期は︑心機能関係の専門医や心理学専門家たちが︑大脳の両半球機能差について︑多く ︵1︶の論文やジャーナルを発表して︑未だ日の浅い頃であった︒
ミンツパーグは︑﹁経営者﹂︵目鋤銘σqO同︶と﹁計画策定者﹂︵覧鎖⁝臼︶が︑経営組織のなかで行使する政策決定レベ
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ル︵爵①娼︒一一〇団δく①一〇暁︒おp巳N9︒ユ︒づω︶での意思決定過程に議論のフォーカスを置いている︒この場合︑﹁経営と計
画の分離が最も尖鋭に現れる﹂のだが︑組織の効率的な経営には︑﹁論理的な分析﹂以上のものが必要だと前提して︑
次のような仮説をたてている︒それは﹃組織の重要事項についての政策決定過程にあっては︑脳の右半球の活動に代
表される資質の働きに依存するところが大きい︵OO昌ω門屋φ同属σ一φ ⑦×一①つげ O誤 けプ① hρO庫一け一①ω 一〇Φ轟け一︷一①位 ≦一一ゴ︶﹄という
ことである︒
だが︑ミンツバーグ教授は︑この仮説を設定したものの︑右半球に関する研究が十分に進んでいない点を︑ ﹁私が
読者に伝えられるのは︑具体的データではなく︑状況に対する一つの〃感じに過ぎない﹂と反省する︒彼はこれ
まで約十年を費して行なってきた組織の戦略形成研究で︑政策決定レベルでの意思決定過程は︑大脳半球の左側でな
く︑右側に優先される多くの事象を確認しているのも事実である︒
この論文にみる︑・・ンツバーグのアプローチは︑社長の多くに接触し︑その仕事を実地に観察すること︑また︑過去
における二十五件もの戦略的意思決定に関してなされた研究報告などに基づいている︒
とくに︑多くの企業内における社長業務への接触︑観察は︑経営者のコミュニケーション活動︑情報収集とその利
用形式︑戦略的意思決定過程における諸行為︵機能︶などの︑左右両半球機能との関連が︑鮮明に論じられることに
なる︒ つづいて︑本稿E節では︑C・1・バーナードの﹃経営者の役割﹄︵目げ①聞巷︒怠︒房oh爵Φ国×Φ2凱くΦ︶にある
﹁意思決定の環境﹂ ︵第十三章︶および十四章の﹁機会主義の理論﹂の補足として︑一九三六年に︑プリンストン大
学の戸ーウェル研究所でなされた講演﹃日常の心理﹄︑.ミ篤ミミ肉ミ遂心亀虫ミ︑蕊..の管理者による精神的側面が
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セールスマンの機能と精神過程についての研究
考察される︒
二九三六年といえぽ︑大脳の左右脳機能の差異が大脳生理の上からいっても︑未だ明確に判明していなかった時代 りようである︒漸く︑脳梁下部の松果体にできた腫瘍を︑摘出する手術がはじまった頃に過ぎない︒
このような時代にあって︑バtナードは︑その生涯の殆んどを経営者活動に費やし︑実務家としての経験と幅広い
学際的知識をもって︑ ﹃経営者の役割﹄や﹃日常の心理﹄を記述したものと思う︒
ついで︑本稿皿節では︑セールスマンやその管理者が︑セ⁝ルスマン機能︑つまり︑必然的に︑そして効果的に果
たさねぽならない三つの機能︑その主たるものとしての①コミュニケーション機能︑②適合機能︑③インテリジェン
ス機能の遂行が考えられるが︑機能個別に︑如何なるセールスマンの精神過程や行動パターンがみられ︑それらがど
う在るべきかが考察される︒
1
経営者の行動と優先半球との関係
ミンツパーグ教授の説く︑経営者による意思決定過程における行動と優先半球との関係についての考察は︑主とし
て︑彼の観察研究と永年にわたる戦略的意思決定の研究調査によることは前記の通りである︒
形式的行為としての計画と︑非形式的行為としての経営は︑大脳の左右両半球の機能差に似ていて︑前者は左半球
的︑つまり︑分析的︑論理的︑線型的︑連鎖的︑明示的で︑後者は右半球的︑つまり︑全体的︑直観的︑相関的︑暗示的
であるという︒
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だが︑彼は﹃組織の重要事項についての政策決定過程においては︑脳の右半球の活動に代表される資質の働きに依
存するところが大きい﹄という仮説を立て︑前記の観察などによる推理において︑次にあげる十項目の経営者に関す
る行動・態度の様態が︑いずれの半球機能に支配されるかについて実証を進めていく︒
一体︑彼がこの仮説を立てるに至った理由はどこにあったのであろうか︒経営者の行う経営の行為が︵研究者とし
ての︑ミンツバーグにも︑そして︑それらを実行する経営者にとっても︶計り知れぬほど複雑で︑奇怪だということ︑
それに︑経営者は︑不確定で︑最もあいまいな情報︵8夢①話σq器ω叶oh冒ho﹃ヨ9自8︶に基づいており︑しかも︑
説明不可能と思われる精神過程に依頼しながら行動していること︑さらに︑この精神過程こそ︑ ﹁秩序的﹂とか﹁連
鎖的﹂とかいうよりも︑それはむしろ﹁相関的﹂︑﹁全体的﹂であり︑また﹁知的﹂というより﹁直観的﹂なものであ
るので以上の如き仮説を立てたのである︒ ︵2︶ 私はここで︑大脳の左右両半球機能の相違を︑次表の如く︑人間意識の様態などから大雑把に列挙しておこう︒
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さて︑十項目にわたるミンツバーグの﹁一般的﹂な調査結果︵h一昌一口oqω︶が述べられる︒
1︑観察対象の五人の社長の情報伝達手段は︑書類による指示︑伝達よりも︑むしろ口頭手段に依存する︒口頭に
よる伝達は︑言語による線型活動︵一ぎΦ碧︶で︑当然︑左半球中心の活動を示すものであるが︑①口頭による情報伝
達において︑コミュニケーション主体の経営者は︑顔の表情︵貯9巴︒×嘆Φω︒︒δ口ω︶︑声調︵8ロ①ωohく080︶︑身ぶり
︵σqOω一信﹁①ω︶などを同時的に行うことが多い︒これらの刺激は脳の右半球において処理される︒また︑②口頭伝達は︑
情報の即時的交換を可能にする︒したがって︑経営者の口頭による情報伝達は︑秩序立った連鎖的な収集方法という
よりも︑相関的︑同時的な方法を望んでいることが理解される︒つまり︑これも右半球支配であることを示唆してい
る︒ 2︑まず︑経営者が受けいれる情報は︑﹁ソフト﹂︵不確定︶で推論的に過ぎないものが多く︑第三者の印象とか感
情といった性格が濃く︑風聞やゴシップに当るものもある︒その上︑一般に︑﹁ハード﹂︵厳密な︶といわれる分析的
情報︑これには︑報告書や記録などがこれにみられるが︑これらに対する経営者の関心度は必ずしも高いとはいえな
い︒ 一体︑経営者はこれらの不確定な﹁ソフト﹂な情報をどう処理するのだろうか︒分析に進むかといえぽ︑必ずしも
そうとはいえない︒ ﹁分析﹂よりも︑むしろ﹁総合﹂に志向して︑自分たちの﹁組織﹂とそれがおかれている四囲の
究 環境を暗黙に理解していく助けとする︒このような情報の利用は︑結果的には経営者の﹁メンタル・モデル﹂とな研⑰り︑それを︑生起する黍行動に際しての︑予測.決定の有力材料とするわけである︒
醐.経営者は・く日常において︑﹁予感﹂︵ぎ邑とか﹁判断﹂︵冒住・・ヨ・三︶という言萎用いる.前者の予感は︑
罷 ﹁これを当社がはじめると︑相手会社も値上げに向うように思う⁝⁝﹂といったことに用いられるが︑まさに︑想像
朧 過程を説明した語のように思われる﹂︒それゆえに︑両者とも︑右半球に優先してよくきかれる経営者の好む発言だ と 精 的であり︑分析と合理性を土台とするものではない︒後者の判断は﹁言語的な知性が明瞭に話すことのできない思考 神
と雪えられる︒ の
嚇・︑前記の硬経薯は︑情報の㌘言撃段に・・収集・︑・れを・頭手段に変で伝達す・.権限を委譲
セ 努力にも欠けている︒
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ように︑﹁分析﹂でなく︑﹁判断﹂にもとづいて認識されたものを口頭で訴えるもので︑元の意味とかけ離れ︑真情を 1 (仙F①σq讐δ旨︶するのに︑口頭で得たものを広く伝達すると︑多くの時間を要するのであるが︑2のところで述べた 88
訴えかねるという面も現われるわけである︒
4︑経営者の仕事は︑変化のある異質的な仕事を次々とやっていくというのが真実であろう︒ミンツバーグの観察
によれば︑時間的に九分きざみの仕事が話半分を占め︑仕事の中断を積極的に求めることも多いという︒しかも︑毎
日繰返えすような常規的な仕事は少く︑その観察によれぽ︑誰かと口頭で行った三六八例のうち︑わずか七パーセン
トのみが定期的になされたものといわれている︒
﹁問題解決﹂に当って︑経営者はどんな零囲気において︑どのような姿勢︵態度︶で行うかを観察する︒ ﹁口にタ
バコをくわえ︑片手で受話機︑片手で握手をして辞退客を送り出す﹂ような態度でされる場合が多い︒いかに非秩序
的︑非システム的であるかがわかる︒それは︑右半球のすべての特性を発揮する方法でなされているといえる︒すな
わち︑同時発生的︵ω巨三$ロΦ○霧︶︑相関的︵円自国二〇昌巴︶︑体験的︵Φ×bΦユΦ巨芭︶である︒
5︑経営者がリーダーとしての地位に対し︑先導性を発揮しなけれぽならないことは自明であるが︑ ﹁リーダーシ
ップ﹂に対する研究的︑原因追求的姿勢はあまりみられない︒カリスマという名の下に︑あるいは神秘的なものとし
て︑この﹁リーダーシップ﹂を考えているのではなかろうか︒ ︵3︶ また︑経営者は﹁連絡者﹂ ︵一芭ωop︶としての機能を果たす︒そこで︑経営者は個人的な情報システムとしてサー
ビスをなす外部システムのネットワークを構築しなけれぽならない︒
にも拘わらず︑経営者は︑そのシステムの主役︑そして責任者としての知識をもつどころか︑知識をもとうとする
セールスマンの機能と精神過程についての研究
もう﹁つの経営者の大切な役割︑それは自社組織の問題や危機に対処する﹁混乱処理者﹂︵◎一ω一二﹃σ9コO① げ9昌α一①﹃︶
としての機能である︒この場合の意思決定は︑往々にして︑きわめて切迫した情勢下にあり︑経営学の教科書や専門
書に書かれているような理論的︑分析的なものではない︒経営者の果たす﹁混乱処理﹂機能は︑むしろ︑直観や経験
の下に果たされる行動の領域にあるものといえよう︒
6︑戦略的意思決定過程︑これは経営の目標や方針そのものの決定︑つまり︑経営構造にかかわる意思決定のプロ
セスである︒ミンツバーグ教授は︑通常手段として次の七段階の手順で行われるという︒
㈹認識︵吋ΦOOゆqコ一一一〇口︶ ㈲診断︵象p︒αqづ︒ω凶ω︶ ㈲研究︵おωΦ碧9︶
㈲設計︵α①ω戯質︶ ㈲審査︵ω自ΦΦ巳コσq︶ ω評価または選択︵oく巴轟鉱8自註︒一8︶
㈹認可︵磐夢︒ユN自︒鉱8︶
そして︑七つの手順項目の中で︑﹁診断﹂と﹁設計﹂の二つが︑最も研究解明がされていないという︒﹁診断﹂によ
り︑意思決定の方向と状況が判明し︑これに適合する解決のための﹁設計﹂がなされる︒意思決定プロセスに関する
実態調査によっても︑五十六パーセントの企業しか﹁診断﹂を行なっていないという︒しかし︑ミンツバーグ教授の
見解では﹁全ての経営者は何らかの診断行為をとったはずである︒意思決定の過程の中で診断が行なわれなかった︑
つまり︑状況の評価が行なわれないということは考えられない︒したがって問題はどこで診断行為が行なわれたかと ︵4︶いう点である﹂として︑意思決定過程における﹁診断﹂のステージが暖まいで︑不明確なことを指摘した︒一般に︑
経営者の経営行動やその態度が全体的︑相関的︑同時発生的なことを示唆したものといえよう︒
7・戦略的意思決定過程における﹁動的要因﹂︵α図§三藍鼠としてのタイミングの問題・これはミンッ・→魏
グ教授に従えば﹁経営者の仕事のどれをとっても︑タイミングは実質的にみて︑決定的なことは明白だ︒全ての経営 90 1者は︑行動を起す場合に︑作業を早く進め︑イニィシァティブをつかみ︑あるいは︑混乱を避けるために︑仕事の進度 ︵5︶をおくれさぜたりすることの効果について︑必然的に考慮している﹂にも拘らず︑ ﹁経営学文献の一八三点のうち︑
タイミングの問題について書かれたものは一〇点以下に過ぎなかった﹂という︒タイミングの行為は︑時間概念から
いって連鎖性を離れたもので︑臨機的な感覚︑判断にもとずいたものと考えられ︑正に右半球的思考から生じる政策
手段といえよう︒
8︑6・7に述べられた戦略的意思決定の問題であるが︑経営者が︑意思決定のために用いる次の三つの基本方
式︑すなわち︑分析︵⇔§蔓ω芭︑判断︵甘O◎qヨ①巨︶︑交渉︵σ費αq巴三昌αq︶のうち︑最も多く用いるのはどれかという
問題について述べられる︒第一の﹁分析﹂は所与の組織目標に対して︑複数手段とその効用をシステマティックに評
価することであり︑第二の﹁判断﹂は︑意思決定者個人の精神過程の問題である︒そして︑第三の﹁交渉﹂は異なっ
た意思決定者間の作業である︒
一体︑これら三つの選択方法のうち︑実際には︑どれが用いられているかをみた実態調査によれば︑ ﹁判断﹂が最
も多く︑ついで︑﹁交渉﹂︑﹁分析﹂という順序であったといわれる︒典型的な場合についていえぽ︑経営者が種々の
代替案︵8二8ω︶とそれらに関連するデータを考慮に入れ︑その後において何らかの手で一つを選ぶという方法をと
る︒それでは︑如何なる手段方法に依ったかという問題の説明はなされていないし︑また︑文献で説明したものもな
︵6︶いという︒本節2の箇所で述べたように︑﹁判断﹂という言葉は﹁説明できない思考過程を知的に表現した単語﹂で︑
﹁判断力がすぐれている﹂というのは︑まさに︑ ﹁良い右半球をもっている﹂ことに通じるものといえよう︒
セールスマンの機能と精神過程についての研究
9︑ミンツバーグ教授によれば︑﹁戦略形成﹂︵ωけ量8αq団8﹁ヨ巳曽江︒昌︶は︑プランニングの文献に述べられている
ような︑連続的︑正規的︑系統的なものではないといわれる︒むしろ︑非連続的な仕事であり︑雑然としていて︑手
あたり次第に発作的に︵一﹈P h陣練ω 9昌α ①け9目けω︶進められるものと考えている︒
﹁環境﹂は動的で︑その変化は一定パターンで示し難い︒ ﹁戦略﹂とはこの動的な環境と安定的作業システムの調 ︵7︶整力と考えることができ︑ ﹁一定期間内において環境とどう対処するかという組織の〃思想である﹂と見ることが
できる︒ところが︑この戦略も︑人為的︑計画的に﹁ある日当然⁝⁝﹂というように︑発作的.不規則的な動きにお
いて︑変化することがある︒それ故︑ ﹁環境﹂も﹁戦略﹂も︑一定パターンで変化するものではなく︑発作的な動き
をみせるのである︒
そこで経営者は﹁戦略形成﹂のために︑環境の不規則・不安定要因に対処できるよう︑直観を働かせて︑経験的な
精神活動能力を発揮しなけれぽならない︒
10︑環境安定下の企業戦略は︑他企業のそれに類似したり︑あるいはそのコピーに近いものであっても良いだろ ︵8︶う︒だが︑変動きわまりない環境に対しては︑どうしても︑ ﹁創造的統一的戦略﹂︵自$江くρ冒8αq鑓80ω訂9︒8σq鴇︶︑
いわゆる﹁ゲシュタルト戦略﹂︵αq①ω冨=ω#讐Φσq楓︶が望ましい︒﹁戦略的計画﹂は連鎖的分析を不可欠とするが︑さら
に︑全体的︑相関的な思考をもって発展させたものがゲシュタルト戦略である︒
ミンツバーグ教授は︑一九五〇年代のフォルクスワーゲンの戦略を創造的な統一的ゲシュタルト戦略としてとりあ
げ︑他方︑フォードやクライスラー社が︑基本的なゼネラル・モータースの戦略を用いてきたのを︑系統的計画策定
ル ︑ートに準拠する﹁幹線﹂戦略︵.︑ヨ巴旨一ぎ①..ω霞讐︒σq団︶だと指摘した︒
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要するに︑組織における戦略は︑創造的な統一的戦略が第一だとする︒それは右半球の力に大きく依存するため︑
経営者は全体的理解に立つことが必要で︑個々の観察︑調査だけを重視して︑全体性︑相関性を無視するといったや
り方では創造性を産出することはできない︒この創造性こそ︑ただ一人の人間の︑単一の右半球により創出される︒
192
かくして︑彼が最初に掲げた仮説広組織の重要事項についての政策決定過程においては︑脳の右半球活動に代表さ
れる資質の働きに依存するところが大である﹄は︑以上のような十項目にわたる︑コミュニケーション︑意思決定︑
戦略計画などの諸問題を説いた実証理論によって裏付けられた︒
ここで注意を要することは︑ミンツバーグ教授自身が述べるように︑﹁優れた経営者とは︑右半球の有効な活動︵予 ︵9︶感︑判断︑統合性など︶と左半球のそれ︵明示性︑論性︑分析など︶と結びつける能力者﹂だということである︒経
営者にとって︑決して︑左半球機能が重要でないというわけではない︒
ところで︑一方の計画策定者︵℃一き器﹃︶に対する彼の見解は次の通りである︒
環境の不安定な時期に戦略を樹立しようとするとき︑また︑創造性を盛り込んだ戦略を必要とするときには︑連鎖
的分析を特徴とする﹁戦略的計画﹂は︑組織戦略を作るためのベターな方式ではない︒そして︑計画性をもって︑分
析︑論理の手順で進められる﹁戦略的計画方式﹂こそ計画策定者の得意とする方式である︒それゆえに︑不安定環境
下にあって︑また︑創造的戦略の作成を志す場合においては︑計画策定者は︑その機能性を失い︑無用な存在にな
る︒ そして︑政策レベルでの有効な意思決定には︑分析的インプットが必要である︒計画策定者はトップ・マネジメソ
セールスマンの機能と精神過程についての研究
トがそれを入手しやすいように仕向けていくように努める︒実は︑経営者は︑とかく︑不確定なソフトな情報を入手
するには有能であるが︑インプット情報とかインテリジェンス情報を過小評価する傾向をもつ︒そこで︑計画策定者
は︑場合によっては︑入手した情報を暫定的に分析して︑これを経営者に口頭で説明し︑これによって︑政策決定に
関連づけるよう配慮していかねぽならない︒
だが︑計画策定者の必要とする情報は︑絶対︑インプット情報だけに限定されるかといえば︑決してそうではな
い︒ソフトな情報も同様に不可欠であることを︑計画策定者自身が認識していなけれぽならない⁝⁝という︒
ミンツバーグ自身︑計画策定者は左半球と離れて存在すべきだというものではない︒この辺りの事情について彼は
このように述べている︒ ﹁計画策定者や経営学者がその技術を捨てて経営の分野を去るべきだ︑あるいは彼らが余暇 ︵OL︶に竹かごを編んだり︑妄想にふけるべきだと主張しているわけではない﹂︒左半球をフルに活用する分析的人間集団
︵き巴讐888ヨ§一ξ︶は︑固く結成され︑ことに︑実務部門︑中間層集団では欠くことができない︒政策決定レベ
ルにあって︑右半球要因としての〃直観をいたずらに軽視したり︑無視したり︑また︑拒否することは大変︑恐ろ
しい結果を招くことになる︒政策決定レベルにおける理論的分析を︑直観と併置して︑あるいは︑直観をそれ以上に
優先させていくことを強調しているのである︒それはミンツバーグの﹁経営の有効性は〃合理性という偏狭なコン ︵11︶セプトの中には存在せず︑冷静な分析と強力な直観との配合の中にある﹂のことばがそれを示唆している︒
193
194
H
各種職業に必要とされる精神過程一.バーナードの所説をめぐって一
バーナード︵OげΦω8同一.ゆ9︒B舘FH︒︒︒︒①山OO一︶は︑﹁若い人たちの職業について︑忠告したり︑あるいは︑多くの ︵12︶経営問題とか公共問題について説明する﹂ことを目的に︑プリンストン大学工学部の教授・学生一同に︑サイラス・フ
ォッグ・ブラケット講演︵>O貿器聞︒σqσqゆ鑓︒吋Φ詳ピ①9⊆お︶を行った︒それは一九三六年三月十日のことである︒
彼は︑日常業務における精神的側面を︑彼の実務経験を通して︑また︑多くの人々との交友経験を通して追求す
る︒管理者行動の側面である﹁精神過程﹂に興味と関心をいだいたことはいうまでもない︒
バーナードは︑体験的に︑常に二つの困難をもっていたという︒一つは︑ ﹁新しい仕事とか新しい地位への適応﹂
をめぐる困難さであり︑他の一つは﹁個人問︑あるいは集団間に生じる相互理解﹂の困難さである︒ ︵13︶ 精神過程︵ヨΦ三巴嘆08ωω①ω︶は︑二つのグループから成立していて︑一つは﹁論理的過程﹂︵δひqざ巴冒08ωω︶︑
他の一つは﹁非論理的過程﹂︵ぎ口⊥oσqざ巴買08ωω︶である︒
前者は言葉や記号で表示される意識的思考のことで︑ ﹁推理﹂︵﹁$ωo巳昌σq︶を意味している︒推理を示現する気持
は︑要求として︑入間の心の底から生起するもので︑事実︑個人的機能というよりも︑社会的機能としての色彩が濃
い︒バーナードは講演︵講演者と聴衆︶や書物︵著者と読者︶の例をあげ︑講演にあっては︑その双方の心理を含む
ものであるし︑また書物にあっても︑その双方の心理を含むものとしている︒そして︑社会的機能の発揮される社会 ︵14︶関係を表現する重要な用具は言語で︑それは反応的に行為をさせる手段として有用かつ有効だと考えている︒
セールスマンの機能と精神過程についての研究
後者の﹁非論理過程﹂は︑随時︑﹁直観﹂とか﹁良い判断﹂︑﹁インスピレーション﹂︑﹁ひらめき﹂︑﹁良識﹂︑﹁判
断﹂︑﹁明察﹂などと呼ばれている︒この過程は︑言葉では表現できない過程で︑また︑判断や決定︑行為などによっ
て知ることができるものである︒そして︑この過程の特徴として考えられることは︑絶えず使用されているにも拘わ
らず︑それが無意識で︑当然のこと〜思われ勝ちな点である︒例えば︑ゴルフや投球の際の距離判断iこれは正
確︑迅速さが求められるが一のために直観的に読み取り︑それに応じた身体の動きを示す︒また︑会計士が貸借対
照表をとりあげて︑数分︑ときには数秒のうちに︑事実判断を行い︑見究める︒
さて︑バーナードは職業別に︑精神過程の二つ1論理的過程と非論理的過程一のうち︑いずれを必要とするか
について述べる︵表1を参照のこと︶︒但し︑O
h必要とするもの︑◎n絶対必要の意味で︑筆者
職 いが・科学的・意識的推理過程をもって・直観的
数 学的な仕事の分野ほど薯に望まれるわけではな
決定ないし説得の正しさが目的とされるから︑工腰
な 精 概念的にみて︑実務︵ビジネス︶の社会では︑ 神 過 が作成したもの︶︒ 程 の過程を是正したり︑補足していったりすることが
表
︹ 大切だとする︒
また︑反対に最も厳密な科学的作業においてす
論理過程 非論理過程
1,科 学 者 ◎
(1)数学者 ◎
②有能かつ偉大な科・学者 ◎ ◎
2,弁 護 士
(1)法延専門
G
◎(2)上訴専門 ◎
(3)顧問弁護士 ◎ ◎
3.政 党 人 ○ ◎
4.政 治 家
c︑ ◎
5,会 計 士
(1)管:理職 ◎
C
②そ の 他 ◎
6.エンジニア
(1)上 級 C ◎
(2)そ の 他 ◎
7.販 売 員 むしろイ店 ◎
8.管 理 者
(1)上 級 ◎ ◎
②下級〔技能を要する入〕 ◎ ◎
(3)下級〔技能を要しない人〕 ◎
195
ら︑非論理過程が必要とされ︑ ﹁すべての帰納的研究には︑常識︑蓄積された経験と知識︑独創性︑冒険心などが欠 96 1くべからざるもの﹂とされる︒要するに︑どのような職務や職業において︑絶対的に︑論理的過程と非論理的過程の
いずれか一方のみで事足りるというわけではなく︑論理的過程を主とするが︑一面において︑非論理的過程をもっ
て︑是正・補足・強化していく必要を強調するものである︒それと同様に︑非論理的過程をもってする職務や職業に
おいても︑論理的過程を通して︑是正・補足・強化を図ろうとする必要を強調するものである︒
﹁全体はときとして︑部分の総計より多くもあり︑少なくもある︒人間が関与する限り︑全体はむしろその部分の ︵15︶総計とは別のものであることが多い﹂︒これはバーナードがコフヵ︵メ・区︒浦百︶によるゲシュタルト心理学︵O①・・回訓
犀勺塁︒げ巳ooqδ︶一心理現象は︑要素の総和以上の全体的構造 の立場にたって表現を変えたものである︒このこ
とは︑とりも直さず︑新しい実体を見きわめようとするには︑単なる部分を合計しても︑全体が決して旦ハ現されない
ことをいっている︒ ﹁部分の合計が必ずしも組織の全体を生み出さない﹂のであるから︑単に論理と分析をもってす
る方法だけでは︑全体性を見失うことになり︑論理的心理のとりことなってしまうことをいっている︒
バーナードは︑さらに︑精神過程での反作用︵おpao旨︶の問題に注視し︑﹁科学的な仕事と他の仕事との間の最重
要な差異は︑必要な精神過程の構成いかんにあるのではなく︑精神過程とそれが適用される問題との間に反作用があ
るか︑ないかによる﹂と考えた︒そのことは︑例えば︑純粋物理学の目的は︑物質的世界の変化を目指すことではな
く︑その真理を確かめることにある︒
ところが︑現実的な人間社会においては︑意見の表明︑情況の叙述︑法律の制定︑あるいは行為の決定などが︑こ
セールスマンの機能と精神過程についての研究
の社会を変化させる︒これが︑純粋物理学などの目的と相違するところといえよう︒
かって︑禁酒令のあと︑以前の需要を緩和する結果とならないで︑反対に増加させた例のように︑政治機構や商業
組織にあっては︑政策上の特定問題に対し︑強い反対意見とそれに同調しないグループの生起することが必然的にみ
られる︒政治家や企業組織の管理者は︑特定問題について︑ ﹁握りつぶし﹂とか﹁回避﹂の方針を貫徹することも問
々見られることであろうが︑市民や消費者に対して︑無用な道徳的︑倫理的緊張を生じさせぬよう説得を重視しなけ
れぽならない︒
そこで︑バーナードは︑ ﹁真実は正確に述べては.一般に伝えられない﹂という広告宣伝の専門家の言葉を容認し︑
また︑ ﹁言葉は人により︑あるいは事情により︑異なることを意味するぽかりでなく︑また︑無意識に声明を割引い
たり︑あるいは︑そこに意図されないものを読みとるという傾向﹂の存在を認めた︒そこで︑著者や講演者に例をと
るならば︑たとえ︑自分が正しくないという見解を持っていても︑相手︵読者や聴衆︶が正しいと認識する形で意見
を述べることが必要だとした︒
さきの表1に示したように︑純粋物理学や数学の研究者たちが厳密な論理的推理の技術を必要とすることは︑誰も
が肯定することである︒ ﹁それにも拘らず︑有能で偉大な科学者は︑すべて︑非論理的にして高度に直観的な精神過 ︵16︶程をもっている﹂と論じる︒
弁護士の場合︑法廷専門弁護士は合理化と説得︑迅速な精神過程を必要とされるので︑論理的推理のほか︑それに
劣らない非論理タイプの心理が求められることになる︒しかし上訴弁護士の場合は︑法廷専門弁護士とは違って︑論
理的過程を絶対に必要とする︒だが︑顧問弁護士の場合は︑非論理過程に重点をおく精神過程が必要だとしている︒
197
政治家は直観的過程に重点がおかれ︑政党人もこれに類似して︑非論理過程が何よりも大切だとする︒その理由は 98 1﹁巧みな合理化︵推理ではない︶が必要とされる﹂からである︒
会計士の場合は︑論理的過程を何としても重視しなけれぽならない︒だが︑管理職にある会計士の場合には︑非論
理的過程が必要となる︒
エンジニアの場合︑前述の科学者と同様に︑論理的思考︑線型的思惟を必要とする︒しかし︑上級職になると﹁商
業的︑経済的調整が非常に重要となり︑説明と説得がしぼしば基本的要件となるから︑むしろ︑直観的過程が優先と ︵17︶なることが必要だろう﹂といわれる︒
セールスマンには︑そして﹁多くの販売業務⁝⁝あるいは経営者︑管理者の仕事の多くでは︑推理はほとんど見当
︵18︶ ︵19︶らない﹂し︑﹁論理的過程はしばしぼ有害︵仙Φ一①一①H一〇一﹂ω︶ですらある﹂と考えられている︒それは﹁推理﹂や﹁合理
化﹂を超越して︑説得︵必ずしも︑正当なもの︑論理を貫いたものだけに限定されるものではない︶︑判断︑決断︑
予感︑タイミングをみた行動をしなければならないからである︒また︑見込み客などの相手の精神過程︑精神状態を
識別し︑ニーズを探究し︑同じ心的状態に立って取引を進めねばならないからである︒
さらに︑管理職の人たちのうち︑下級管理職には︑非論理的過程が必要となる︒但し︑高度な技術職の人を除外す
る︒上級管理職には︑論理的推理過程がますます必要となる︒それも高度に発展した直観的過程を尊重する限りにお
いてである︒
以上のように︑職業別に必要視される精神過程をみると︑意外にも非論理過程に傾斜しているのに気付くわけであ
る︒このことについて︑バーナードは﹁私の述べたことがそのまま推理過程の重要性を軽くみていると解釈されない
︵20︶ように希望するしと前置きして︑ ﹁論理的過程を精神的エネルギーや精神的熱意をあらわす非論理的︑直観的︑さら ︵21︶には霊感的過程と︑知的に調整しつつ発展させるのが望ましいということ﹂を強調する︒
﹁釣合いのとれた心理﹂︵び餌一PづOΦ傷 筥鮎並山ω︶︑これは社会が複雑化し︑技術や組織の精緻化が必要となるにつれて︑
さらに有効となることは明らかである︒推理はそれを強化するために非論理的心理をいっそうよく利用しなけれぽな
らない︒
皿 セールスマンの精神過程−左右脳の機能差をめぐってー
セールスマンの機能と精神過程についての研究
コミュニケーション機能︑これは人的販売を担うセールスマンにとって︑必要欠くべからざる大切な機能である︒
販売実現への刺激を加えるために︑顧客や見込み客に対して﹁説得的なコミュニケ:ション﹂を徹底させることで
ある︒ 人的販売︑広告︑狭義の販売促進などは︑販売を支援するビジネス・コミュニケーションの主要形態で︑これは広
告に例をとっても︑多くの企業が︑毎年巨大な広告費を支出し︑それに数倍の人的販売に要する費用を支出している
実情からしても︑ これらがマス・コミ︵筥9ωω OO筥5P仁昌一〇帥け一〇昌︶主要形態であるといわれることがよく理解できる︒
実に︑﹁マス性﹂をもった人的販売活動すなわちセールスマン活動は︑限りない強力な﹁説得的コ︑ミュニケーション﹂
によって支えられている︒
コ︑ミュニケーションはラテン語の8B日二巳ω︑つまり英語のoo日日8から生じた語で︑コミュニケートされる目 鵬
図1 0sgood−Sebeokのコミュニケーション・モデル
アウトプット
(A)
発信機 情報源
機受 信 1」的地
インプット
醗
一ドバツク デコーディング
(記.り一解読)
フイ
(B)
アウトプット.
蕪 「
競
「
。豆単,評緯=[rF幌音響鋳、単位
受信機→媒介過程一,発信機 メッセージ 受信機→媒介罎程→発信機
エン繍6ングアウトプ・ト・イ・プ・ト ㌃思念グ
心理言語学 社会科学 コミュニケーション「
インプット 1噛
的は︑コ般的共通性﹂︵8ヨヨ︒目①のω︶を創造しようとする oo 2ことにある︒これを市場における︑マーケターに例をとれ
ば︑彼らは︑販売しようとする銘柄の特徴や︑使用者の受け
る利益についての情報を共有しようとする︒
コミュニケーションの基本的要素には︑発信源︵ωo霞︒Φ︶︑
メッセージ︵ヨΦωω⇔σq①︶︑メッセージ・チャネル︵ヨΦωのρ◎q①
︒冨昌口色ω︶︑受信者︵円①OΦ一く①円︶があり︑これらの要素には次
のようなものを所属させることができる︒
発信源⁝⁝企業︑セールスマン︑テレビ放送⁝機構︑新聞︑
雑誌︑その他のコミュニケーション組織など︒
メッセージ⁝⁝ダイレクト・メール︑ラジオのCM︑絵
画︑記号など︒
メッセージ・チャネル⁝⁝人的販売︑広告︑パブリシテ
ィ︑狭義の販売促進など︒
受信者⁝⁝個々の消費者︑テレビ視聴者︑集団メンバー
︵料理教室︑電子レンジ実習などの︶など︒
コミュニケーション過程の一般モデルとしては︑通信系の
︵雅︶シャノン︵O●ω冨§o旨︶のものをあげうる︒また︑この作動モデルとしてのダイヤグラフは図1のAによって説明
できる︒これは単純な図であるが︑より複雑でインターディシイプリナリーなモデルを掲げると図1のBのようにな
る︒いずれも︑O冨ユΦω国・○ωαqooO曽口住日.﹀.ωΦげ①o困の作製したものである︒
セールスマンの機能と精神過程についての研究
T・R・ブレークスリー︵一門げOヨ鋤ω 図・ ゆ一騨吋①ω一Φ①︶は︑その著︑︑↓ミ肉茜ミ切ミき︑.一九八○年において︑直観力
が創造的思考の要件で⁝⁝セールスマンの場合︑いくら文献的に学習しても︑応酬活法をどれほど暗記しても︑天賦
の営業センスがなければ︑トップセールスマンにばなれないと語っている︒
本稿−節において紹介したミソツバーグは︑マネジャーと称される管理者や経営者の立場にある人たちが︑日常の
行動側面から考察して︑相当程度の右半球機能に依存することを実証した︒また︑H節におけるバーナードも︑人間
の大脳機能の明細が︑いまだ︑実験的︑実証的に浮き彫りにされていない一九三〇年代において︑社会科学者には珍
らしい自然科学︑ことに脳外科学︑同生理学的識見を︑表面にあらわすことなく︑精神過程と各種職業従事者との関
連を論述した︒バーナードによれぽ︑殆んどの職業に右半球機能の働きが不可欠であって︑直観とか全体的なアスペ
クトが必要であることを強調し︑また︑ ﹁クリエイティブ﹂という語を尊重した︵.バーナードは決して左右半球とか
左右脳とかの語を用いていないことを明言しておく︶︒
私はこの論文の皿節で︑多分︑セールスマンや営業マン︑そして場合によっては店員の人たちに︑果たされるべき
機能の上からいって︑同じような右脳依存の必要性を主張しなけれぽならないことを猛省の記述のはじめに述べてお 01く︒︑ 2
セールスマンや営業マンは︑社外の一般消費者︵見込み客や顧客︶に対して︑また︑社内の組織に対して︑常時︑ 02 2必要に応じて︑コミュニケーションを果たさねぽならない︒ことに社外の一般消費者に対しては︑ 〃説得的コミュニ
ケーション︵OΦ房奉ω一く①買霧①馨讐一8︶の努力を続けることが本務とされる︒
この場合︑伝達の方法は︑口頭や書面による言語が中心になる︒セールスマンによる言語をもってするコミュニケ
ーションは︑その職能の上からいっても︑分析手段として用いる言語というより︑むしろ︑売手と買手という社会関
係における反応的行為を生じさせる手段として用いられる︒
口頭や書面によるコミュニケーションは︑確実に論理に結び付くもので︑大脳における左・右半球機能の上からい
って︑正に︑左半球に優先される﹁線型的伝達﹂の性格が強い︒しかし︑口頭を以てする情報伝達のみに終始するか
といえば︑そうでなく︑そこには︑顔の表情︑身ぶり︑手ぶり︑声の調子が表現され︑口頭によるコミュニケーショ
ン効果を補足的︑付加的に増大させようとする︒これらは︑相関的︑同時並行的な右半球機能として指摘されるもの
で︑ ﹁直観的コミュニケーション﹂としての色彩が濃い︒セールスマンや営業マソは︑コミュニケーションによる意
思伝達を全うすると同時に︑先方よりの即時的な情報を確保し︑吸収しなければならないのであるが︑身ぶり︑手ぶ
りなどを頻繁に使用することは︑交渉を和らげる目的をもち︑円滑に目標到達を実現させる助けにもなり︑右半球機
能として考えられる予感︵ゴ信昌6げ︶や判断︵三眠σqヨ①葺︶を︑一層︑助長︑強化させることになる︒ ︵23︶ このほか︑非言語によるコミュニケーション手段として︑ナブザベーショナル・フィーリング︵oσω興く曽江8巴h①−
o犀轟︶がなされるという主張が︑バーナードによって唱えられた︒これは︑ 〃以心伝心と邦訳され︑決して︑﹁神
秘性﹂を含むものではなく︑ ﹁なんらかの明白な伝達︑あるいは言葉による伝達によってはうまく鼓舞されない集団
セールスマンの機能と精神過程についての研究
行為のなかに︑それが少なくとも一部は合まれているしとする︒バ:ナードのあげたこの以心伝心の実例は︑ ﹁止め
ようなどということは一言もいわずに︑会議に出ている人々が満場一致で議論を止めるという決定に至った場合を私
は多く見ている︒しばしばその行為は︑明らかに︑誰かの起立を契機として生じる︒しかし︑閉会の言葉がなくて ︵24︶も︑か︾る集団のなかで︑このことが生ずるから︑単なる起立という動作以上のことがそれには含まれている﹂と︒
こうした以心伝心は︑相手に対し︑言葉を用いないで理解させていく能力のことだから︑直観的・臨機的な性格を
もつ︒また︑これは︑視覚イメージの理解につながる方法であり︑﹁手ぶり﹂や﹁身ぶり﹂と類似する非連鎖的な同
時的方法といえよう︒
日本での以心伝心は禅宗に用いられた語で︑ことばや文字を使用しないで︑伝法の神髄を伝えようとすることから︑﹁こと
ぽに出さないで気持が通じる﹂ことをさす︒バーナードは︑社会科学者としては︑珍しい左右脳バランスタイプの素晴らしい人
物だったと考えられる︒バーナードはその生涯のほとんどを︑アメリカ︑ニェージャージー・ベル・テレホンの社長︑ロヅクフ
エラー・ファンデーションなどの経営老活動に費やした︒音楽愛好家で︑ニュージャージーの︒バッハ協会の創設者でもあった︒
セールスマンや営業マンの示す以心伝心は︑同僚間に︑部下に︑時には顧客に対して間々︑みられるものである︒
次に︑セールスマンや営業マンの業務内容は数多く︑質的内容面から表現すれぽ︑雑多な仕事の連続に終始する︒
書物を読みながらあるいは報告書を書きながら商談・受注をするところまでいかなくても︑複雑で無秩序な行為を強
制される︒休息らしい時間配分も不可能で︑昼食を外で済ませて︑時をおかずに︑次の訪問場所に移動をはじめる︒
その訪問場所で目的の見込み客と会うまで︑待たされて︑その﹁待ち時間﹂の間︑訪問結果をまとめてみたり︑感情
移入︵Φヨ冨一冨︶がなし得るよう自問して考えてみる︒
セールス;書業マンは﹂盤・エグゼクテ・ブと奪ネジ・−と呼ばれる人たちが遂行しなければならない鵬
問題解決ほど︑大きく重要でないにしても︑四六時中︑取引とそれを進捗させる過程で︑神経を使っていくことに間 04 2違いない︒外勤の間︑自社のマネジャーと電話連絡することを忘れない︒やっと帰社しても︑日報記載が待ち受け
ているし︑昼間きいたアフター・サービスを実行するためにも︑関係部課への連絡をしなければならないといったよ
うに︑セールスマンの場合には︑一日の仕事に決定的なパターンはみられない︒セールスマンのコミュニケーション
は︑雑多な行動に結びついていて現われるものである︒そして︑顧客主導を崩すことなく︑顧客側の言動に即時対応
してなされる︒従って︑セールスマンによるコ︑・・ユニケーション機能は︑直観性に基づくところが大であり︑相関
的︑同時並行的︑体験的であって︑右半球の特質に基づくところが大きい︒
第二にあげられるセールスマンの適合機能︵巨δユ轟皆琴けざ⇔︶は︑見込み客の問題解決に役立つ製品の選定・提
示を意味する︒
かなり高額な生産財はもち論︑耐久消費材︑一般の消費財においても︑あるいは︑アウトサイドのセールスマンの
みならず︑店内に職場をもつ店員においても︑この適合機能は大切なものだといえよう︒
例えば︑オーダー・メードのファッション・デザイナーの場合︑商品の生産と販売を同時に行うことになる︒顧客
のニーズを手早く把握し︑その好みやセンスを見抜き︑顧客の個性や美しさを少しでも引き立てられるよう︑素材を
選び︑デザインを考える︒縫い上げられた作品を︑鏡の前に着せ︑スタイリストとしての着こなしを顧客にアドバイ
スしたりする︒
見込み客が︑ある特定品目︵あるいは銘柄︶を指定して購入を求める場合︑当然︑売手の苦労も少くてすむ︒多様
セールスマンの機能と精神過程についての研究
〔図2〕ニード・遂行販売における三つのステップ
ベニフィット を供給するよ う試みる ニーズ満足に求
められるベニフ ィ・ットの決定 見込み客ニード
の決定
A.質問 B.聴取 C.観察
Robin Peterson:Pω写ωπτ!S(ゾ1〜ηg, p.173,1978.
化した販売ラインのもとで︑ ﹁この客の望んでいるものは︑一体︑どれだろうか﹂というセ りよールスマン側の顧客ニーズへの配慮も大きい︒見込み客の陳列商品や在庫商品に対する目の
動き︑カタログに向けられる注視の状況を見抜いて︑見込み客の購入希望品目を確認しよう
とする努力も必要となる︒
セールスマンは︑当然︑販売へのパワーを発揮しなければならない︒家庭における主入と
して︑あるいは主婦としての生活体験が︑話題を豊富にし︑顧客や見込み客に親近感と信頼
感をいだかせることになる︒こうした生活体験は︑商品の推奨力︑説得力を大きく左右する
ものである︒
﹁ニード・遂行販売法﹂︵器Φ位h巳h一=ヨ①巨のΦ=一回αq︶︑この方法は見込み客のニーズを見付
け出そうと努力し︑要求されている利益を供給することによって︑見込み客のニーズにこた
えようとする販売仕法である︒
図2が示すように︑この方法の第一ステップは︑質問や意見聴取︑また観察によって︑見
込み客ニーズを決定することにある︒ついで︑ニーズに合致するメリットをもった製品を決
定し︑最終の第三スチップでは︑その製品メリットを﹁真に満足されるベネフィット﹂に転
化されるよう試みる︒
一般に︑見込み客は自分のニーズに気付いていない場合も多いし︑気付いていても︑他人 05に知られるのを嫌っていたり︑明言できないような傾向が強い︒そこで︑売手側では︑質 2
〔図3〕 セールスマンの理想的行為
望まれる状況 セールスマンの行為
現実の状況
R.Peterson:.P87soηθ1 Sρπ1ηg, p.175,1978.
一問題視されるlしとの問に︑
を意味する︵図3︶︒
のである︒
セールスマンには︑共感能力や感受性が強く備わっていることが望ましい︒これらが増幅されるよう︑トレーニン
グの力に依存することも肝要だと思う︒〃感情移入︵①ヨ二一ξ︶とは︑﹁自分自身を︑心の中で︑他人の立場に置く 問︑聴取︑観察に頼ることになる︒この場合︑セールスマンは︑たとえ︑論理的なハードな 情報を内蔵しているにしても︑人間的な豊かさ︑つまり人間的な波長の暖かさをもって接 し︑短時間のうちに相手のニーズを把握してゆく︒これは見込み客側の示した成文のデータ 一を時間をかけて分析するというものではなく︑即時的︑かつ︑直観的な判断によるものと いえよう︒ とも角︑セールスマンは︑見込み客ニーズの存在について︑その性格と実態を正確に掴む よう努力することが必要である︒ニーズの内容を適確にキャッチすることによって︑顧客二 iズにマッチした商品を︑多くのラインの中から選定し︑提示をすることができる︒そし て︑このことが︑見込み客のいだく﹁問題﹂を﹁解決﹂していくことにつながるとともに︑ ﹁創造的なセールスマン﹂︵自8暴く①ω巴Φω巳⇔昌︶の本領を発揮させる結果となる︒ この﹁創造性﹂は︑セールスマンの側で︑容易に明瞭とならない問題解決の方法を考えつ こうとする努力を指すものである︒ セールスマンが﹁望ましい理想状態﹂と﹁現実の状態 ︵25︶ ガルフー1隔りの存在することを認め︑問題解決者として︑その間に架橋することこの創造解決能力こそ︑直観的な思考能力から現われる右半球による〃無意識過程を含むも
206
セールスマンの機能と精神過程についての研究
プぼセス﹂のことである︒感情移入は︑販売過程にあって重要な意義をもつセールス・プレゼンテーションを立案し
たり︑実行したりする場合にも大切であるが︑セールスマンを創造的な問題解決者として︑有効に職務遂行させる場
合にも不可欠なものである︒
さらに︑感情移入は︑セールスマンに︑緊張感を減じさせ︑逆に︑仕事への興味を増殖させる︒そして見込み客と
の間の感情的な相関関係を改善させるのに役立つ︒
ファッション衣料の女性セールスマンであるマリー・ラースンは︑訪問の前に︑つぎの諸項目について自問する︒
ω もし自分が見込み客だとしたら︑私の主目的は何か?
② 主要な問題点は何なのか?
㈹ 私が得ようとする購買上のべニブィットは何か?
㈲ 私の応接するセールスマンはどんな人なのか? ︵26︶ ㈲ 私が特定業者から購入する理由は何か?
セールスマンは︑このようにして︑説得対象である見込み客の納得がゆくように︑相手の精神状態やそのプロセス
を識別し︑その心的状態︵∋①三訂一一身︶を採択し︑それに自己を組み入れてしまう︒自分自身を精神的に他人の立場に
同化させてしまう︵δ夢①b﹁ooΦωωo︷ヨ①葺鋤一ぐb;けけぎoqo昌Φω巴h貯9⑦ωげ︒①ωoh琶︒夢巽︶のである︒そして︑見
込み客の視点から︑何が正当であるかを感じとる︒もし︑それが不合理ないしは誤謬であることに気付いても︑分別
ある道理のとおった対応が必要となる︒
右脳主導のセールスマンの特色とするところは︑相手の顧客や見込み客と互いに交流ができ︑反応し合うことがで
きる利点をもっている︒それは︑顧客や見込み客がこちらの説明などに対して︑どういつだ受け取り方︵感受性︶を 餅
したか︑また︑どのような反応を示しているかなどについて敏感に読みとるわけである︒セールスマンの適合機能 08 21見込み客の問題解決に役立つ製品の選定・提示−は︑感情移入が巧くなされない限り︑上手に果たされること
は不可能で︑従ってこの機能は︑大脳右半球による活動に依存するところが大きい︒
インテリジェンス機能︵一三①≡αqΦ⇒8h毒9繭︒づ︶︑これは顧客・製品・市場などについての情報を収集・評価・提供
する機能のことである︒
セールスマンは︑口頭によるコミュニケーションをなすことによって︑反対に︑相手から即時的に情報を集めるこ
とができる︒事実︑セールスマンの情報伝達はコミュニケーションに主眼を置くから︑インテリジェンス機能の効果
こそ︑コ︑ミュニケーション活動に依存するところが大きいといえよう︒この方法は︑相関的で︑同時的方法を望むも
のと考えられる︒
それに︑セールスマンの受け容れる情報は︑ソフト︵不確実︶な︑末節的・想像的なものが多く︑端的にいって︑
風聞や推測に過ぎないものが多い︒その上︑ハードといわれる分析的情報にはあまり関心がもたれていないとするな
らば︑これを分析にまわす機会や余裕もあまりみられない︒
セールスマンは︑日常の仕事における取引先に対して︑また︑社内の上司︑同僚に対して︑﹁予感﹂とか﹁判断﹂と
いう言葉をよく用いる︒前者の﹁予感﹂は﹁もし当社が値上げすれぽ︑ライバル企業も値上げに向うように思う⁝⁝﹂
という意味の﹁予感﹂で︑それはまさに想像的であり︑分析と合理性によって結果的に確認されたものではない︒ ︵幻︶ いっぽう︑後者の﹁判断﹂は直観性が強く︑﹁言語的知性が︑明瞭に話すことのできない思考過程を説明した語﹂
セールスマンの機能と精神過程についての研究
と解釈することができよう︒そこで︑この﹁予感﹂や﹁判断﹂は︑右半球の有効な活動で︑セールスマンがよく好む
言葉でもある︒
最も進歩的な販売仕法とされるものに専門的販売法︵買ohΦωω凶8巴ωΦ=ぎσq︶が考えられる︒その要件の一つは︑
﹁顧客と共同して︑問題解決に努力していく姿勢を維持すること﹂だといわれている︵専門的販売については別の場
所で考察する予定︶︒だが︑﹁顧客と一緒になって﹂問題解決に向うための前提には︑まず﹁情報をうまくキャッチす
る﹂ことが当然︑なされねばならない︒しかも︑セールスマンと顧客︵あるいは見込み客︶との対立過程にあって情
報を︑相互に収集することが肝要となる︒
プレゼンテーションの過程で情報を収集する際︑注意を要することは︑セールスマンや営業マンは︑多くを伝達し
さえずれば︑買ってもらえるというものではない︒ロサンゼルスのJ・バーマン販売研究所では︑ ﹁いかにセールス
マンが説得的コミュニケーションに湛進ずる必要があっても︑あくまで﹃黙って﹄﹃親しげに﹄﹃問いたげな目差し ︵82︶で﹄相手をみつめるような態度・表情をしなければならないと主張する︒
﹃黙って﹄は顧客の言葉に傾聴すること︵一一ω8づぎσq︶を意味する︒聴くことは︑相手の心をこちらに向けさせる最 ︵29︶も強力な手段でポジティブ・ストロークの典型的なものといえる︒﹁相手を認め﹂︑﹁相手に気をかけている﹂ことを
示すことになる︒そこで反対に︑相手から好感がもたれるということになる︒これは単に口から出た言葉を聞くので
はなく︑顧客の立場に立って︑ ﹁言葉に寄せられた心﹂を聴くようにすることだ︒もち論︑人の言葉を聴くことは脳
の左半球に刺激付けることになるが︑相手の顧客からのインフォーメーションを収集するためには︑相手の主張を適
切に・﹁判断﹂し︑顧客の望む﹁問題解決﹂に志向して﹁全体性﹂を主なうことなく努力していかねばならない︒その ㎜
〔図4〕 富,士ゼロックスの満足度調査票
撫謄二二三二獣 華美騨1
鮪ミ社員のお客席に対する電話や訪問時の 良い 普通 悪い 梠ホ態度はいかがでしょうか 営業担当者
@お気づきの点がありましたらお聞かせ下さい サービスマン
@ 故障の受付者
@ 消耗品受注者
@ 料金請求担当者
@ 商品配達員 、 少し
サ在のゼロックス複写機の状態に満足されていますか 満足 不満足 不満足
多い 普通 少ない現在ご使用中の機械( 型)の故障度はどの程
xですか (月間_回位)
コピーの写り具合はいかがでしょうか 良い 普通 悪い ,
@械が故障した時はサービスマンがすぐ修理にうかがって 早い 普通 遅いおりますか(特に他社 と比べた場合)
堀け鯛駕犠俘鍛請求書をお届けする期日や内容はお約束
ハりに実施きれていますか 請求内容し1鍛 認うき鵜島
ご使用中の製品はよくご覧になった上で納得されて よく 少しは 営業マン イ契約いただけましたでしょうか 見た 見た 唯せた iどこでご覧になりましたか 1.ショールーム 2.試し使用時3.その他( )
用紙や機械のいろいろな応用、活用事例を よく知っ多少知っ何も知 らない ている ているご存知ですか ,
今後、新型のゼロックス製品を開発していく上でご要望の点が
?りましたらぜひお聞かせ下さい i次期複写機に期待される性能等について)
@ .イ協力大変ありがとうございました。今後ともゼロックス製品をご愛用下さいま
キようよろしくお願い申し上げます。
210
セールスマンの機能と精神過程についての研究
ためには︑右半球機能に期待されるところが大きい︒顧客本位の接し方をすれば︑相互に緊張も緩和され︑アイディ
ア︑欲望︑ニーズ︑不平などを素直に語り合うことになる︒
それに︑生産財や耐久消費財の場合︑品質・性能・販促・配送・故障時などの諸サービスについて︑比較的︑単純 ︵30︶に︑労を小さくして回答のできる図4の﹁満足度調査﹂を実施して︑顧客情報収集の一助にするところも少くない︒
この調査のやり方は︑分析的︑原因追求的なもので︑まさに左半球の力に負うところが大きい︒
これとは別に︑訪問販売や店頭におけるプレゼンテーションや商品説明のプロセスで︑相互の会話がどのような情
報的意義を持つかについて︑平素からよく認識しておくことが大切だと思う︒
顧客︵見込み客をふくめて︶のニーズやバイイング・ポイントの真相を明確に掴むことが大切であるが︑それを適
確に知るには︑何らかの質問︵顧客による︶と説明︵売手側の回答︶が幾度か繰返えされることになる︒反対に︑売
手側が質問して︑顧客が答えるような会話も必要であることはいうまでもない︒
このことは︑結果的には︑買手側のニーズやバイイング・ポイントが売手側のセールスマンや営業マソに︑相互的
対話のうちに把握され︑さらに︑買手の現有商品の使用状況︑潜在・顕在ニーズ︑買替希望状況などの諸情報が短時
間のうちにキャッチされるわけである︒いっぽう︑買手側の顧客も︑メーカ:や売手側の当該製品の商品化態度︑製
品特性︑製品推奨の理由などについて︑明確に意見をきいて理解するように努める︒相互に︑売手と買手が情報交換 ︵31︶することは﹁相互交流的﹂で︑﹁ギブ&テークの情報収集法﹂ともいえよう︒
要するに︑この場合︑セールスマンや営業マソは︑予定された計画的・連鎖的情報伝達に終始するというよりも︑
顧客側の基調にそった相関的臨機即発言が望まれる︒このことは︑まさに︑〃直観とか〃判断〃という意識下の活
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動に︑一層︑補強されることになる︒セールスマン機能としてのインテリジェンス機能は︑
や適合機能と同様に︑右半球優位により完遂されることを再認識されるべきである︒
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お刈①・7・
̲谷美恵子﹁人間であること﹂﹃朝日新聞﹄︑一九七六年一月二十一日夕刊︒
8・
p田忠信﹁脳の左と右﹂︑﹃生産と運搬﹄︑一九七六年二月号︒
9 角田忠信﹁脳における情動の局在﹂︑﹃言語﹄一九七六年十一月号︒
左右両半球の機能差
大脳左半球大脳右半球
・テクノロジー