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漢語福清方言の記述言語学的研究

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Academic year: 2021

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神戸市外国語大学 学術情報リポジトリ

漢語福清方言の記述言語学的研究

著者 陳 学雄

学位名 博士(文学)

学位授与番号 24501甲第60号 学位授与年月日 2018‑03‑23

URL http://doi.org/10.11501/2017̲K60̲chen

Creative Commons : 表示 ‑ 非営利 ‑ 改変禁止 http://creativecommons.org/licenses/by‑nc‑nd/3.0/deed.ja

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論文内容の要旨

学位申請者氏名 陳学雄 漢語福清方言の記述言語学的研究

本論文は漢語福清方言を、現地調査によって採集したデータに基づき、共時的に記述した ものである。現在に至るまで、福清方言に関する先行研究は主に市の中心地である「融城鎮」

で話される福清方言を対象として取り上げられてきた。また、諸先行研究はほとんど音韻・

音声体系に中心を置かれるものであり、文法に関する記述はほとんど行われてこなかった。

本論文は「海口鎮」で話される福清方言を対象として挙げる。筆者が独自に調査したデー タに基づき、福清方言を共時的かつ全体的に記述した。本論文は現時点で福清方言の全貌を もっとも詳細に記述し、その共時的体系の特徴を明確に論じた研究である。

本論文は本論と付録から構成される。以下に論文の構成と各章の内容をまとめる。

本論では、福清方言の共時的体系を音韻・形態統語論の各側面から7章に分けて記述した。

各章について内容を要約する。

最初に序章「はじめに」を置き、福清市の地理概況、言語使用状況、福清方言の位置づけ について簡単に説明を行った。福清方言の先行研究について、冯爱珍(1993)を中心に概観し た。また他の先行研究における記述との違いについても指摘した。内容に関しては、子音、

韻母、声調に関する諸先行研究の記述及び子音交替、声調交替の処理についてまとめた。続 いて本稿が扱う対象及びデータ、研究方法、論文の構成について述べた。

第一章は「音論」と題して、福清方言の音声・音韻体系を記述した。福清方言の音節構造

はCVV(V)C/Tと模式化できる (Cは子音、Vは母音、Tは声調を示す)。本章では豊富な語彙

例を提示しながら、子音・母音・声調の各部に分けて記述した。また、従来話題となる音声 実現の問題について、頭子音交替、母音交替、声調交替などのいくつかの音韻現象について 詳細に分析し、記述した。頭子音交替と声調交替についてはそれぞれの交替規則をまとめた。

福清方言における交替現象は非常に複雑で、本論文は「融城鎮」以外の地域を考察対象とし て取り上げることによって、福清方言における内部差異の存在が確認することができた。

第二章は「名詞句と名詞句にまつわる問題」と題して、福清方言の名詞句構造を記述して いる。名詞句は「指示詞+数詞+量詞+名詞」の4部分から構成され、各要素が順に記述さ れる。また、名詞を文の中に導入する機能とする前置詞もこの章で取り上げた。

「指示詞」は近称tsie43〈此〉と遠称hy43〈许〉の2種から構成され、それぞれ物や人、場 所、方向などの機能を表す際に用いられる。「数詞」については、基数、分数、概数などの表 現方法について述べた。「類別詞」を名詞類別詞と回数詞に分類し、それぞれよく用いられる ものを取り上げ、説明を行った。また、類別詞にまつわる重複形式、[蜀-類別詞]における「蜀」

の音声形式に注目し記述した。「名詞」に関しては、名詞の語構成手段として、接辞の付加、

重複、複合などを取り上げ、それぞれについて記述した。特に接辞について、よく用いられ る接頭辞と接尾辞を取り上げ、詳細に記述した。「名詞」は統語的には、主語・目的語・コピ

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ュラ文の補語の位置に生起することを確認した。福清方言における親族名詞は大変複雑な体 系を持っており、第一章では親族関係図を提示し、それぞれの名称と呼称をまとめた。「代名 詞」についてその種類と語構成をまとめ、またその基本的な機能を確認した。名詞修飾する 際に人称代名詞の音声形式の違いに注目し、詳細に記述した。続いて「前置詞」について記 述した。「前置詞」は動詞との違いはまだ明らかではない。本論文では、動作場所、起点、着 点、動作対象などを表すものに限定して取り上げた。それぞれについて、具体的な発話例を 提示しながら記述した。

第三章は「動詞句と動詞句にまつわる問題」と題して、動詞とその周辺にある助動詞とア スペクト助詞について記述した。「助動詞」について、o42〈有〉「ある」、ԑ42〈会〉「できる、

はずだ」など7つの助動詞を取り上げ、それぞれについて豊富な例文に基づき分析した。「動 詞」については動詞の語構成について重複と部分重複の形式について確認した。特に部分重 複において、頭子音の重複と母音の重複に分け、「衍生詞」と「切脚詞」について再分析を行 った。続いて動詞を意味的・統語的基準に基づいて分類し、動詞連続構造について、構成す る動詞の自他による組み合わせでパターンを示した。それぞれのパターンにおける動詞のタ イプ、主語の同一性などの観点から考察した。アスペクト助詞について、完了を表すlau43〈了〉、

o〈去〉、進行を表すle〈□〉の3つを取り上げた。特にlau43〈了〉とo〈去〉について、そ

れぞれ動詞としての用法が存在する。それぞれ動詞としての振る舞いの違いについて考察し、

アスペクト助詞としての機能について考察した。

第四章は「その他の範疇」と題して、福清方言の形容詞、副詞、疑問語、助詞について記 述した。形容詞は語構成及び統語的位置について記述した。また、大きさを表す形容詞の構 造、形容詞の重複問題について記述した。

副詞を意味的観点から程度副詞、範囲副詞、頻度副詞、時間副詞、否定副詞、モダリティ 副詞に分類し、それぞれ代表的なものを取り上げて、具体例とともに記述した。「疑問語」は 疑問代名詞と疑問副詞に分け、それぞれの疑問語を取り上げて、分析を行った。続いて「助 詞」について、属格助詞と文末・節末助詞について記述した。属格助詞に関しては修飾部の 種類に注目して分析した。文末・節末助詞について、収集した発話データから用いられる 4 つのものを取り上げ、実際の発話例を提示しながら、それぞれの文末・節末助詞の機能につ いて確認した。

第五章は「文法現象における諸問題」と題して、4 つの構文を取り上げて記述した。それ ぞれ、「〈有〉構文と焦点」、「疑問表現」、「受身表現」、「使役表現」である。

「〈有〉構文と焦点」においては、〈有〉と焦点の関係について論じた。〈有〉は焦点の位置 によって音声形式が分化する現象を指摘した。〈有〉に焦点がある場合では、〈有〉は o42 と して実現する。〈有〉以外の要素に焦点がある場合では、〈有〉はuʔとして実現する。このこ とを疑問文とその回答によって、焦点位置を確認し、検証を行った。

「疑問表現」では、疑問詞疑問文以外の疑問文について取り上げた。それぞれ真偽疑問文、

選択疑問文と文末疑問詞による疑問文である。真偽疑問文では、形式的に分類し、それぞれ の振る舞い及び機能について記述した。

「受身表現」では、まず〈乞〉を用いる構文を受身構文と認定した。動作主名詞と動作対

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象のタイプについて考察した。また述語のタイプから福清方言では他動詞による受身表現の みならず、自動詞によるものも存在することが確認できた。また、自動詞による受身表現の 使用状況について記述した。

「使役表現」では、用いる使役マーカーの違いによって、指示使役、容認使役、強制使役、

〈共〉使役に分類し、それぞれの使用状況、意味について述べた。また、〈共〉使役が他の3 つの使役との違いについて、詳細に議論した。

終章は「おわりに」と題して、論文について簡単にまとめ、今後の課題について述べた。

最後に付録として福清方言分類語彙集を掲げた。ここには約2000語が意味の分野別に配列 され、日本語と英語の意味も与えられている。末尾には日本語による索引を付してあり、検 索の便宜を図っている。

以上が本論文と付録の要旨である。

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