自己肯定感 を育て る保 育
井 口 均
Te ac he r ' sEval uat i onEnc our agi ngI de nt i f i c at i on onPr e s c hoolChi l dr e n' S̀ Se l f '
Hi t o s hiI NOKUCHI I
.は じめ に今 日の青少年 に起 きてい る様 々 な問題現象 の背景 には 自己肯定感 の あ り方が深 く関係 し てい る。例 えば、 「普通の家庭」で育 て られ、 それ までに何 の問題 もなか った生徒 が起 こす
「い きな り型」の凶悪犯 罪は
、1 9 6 0
年代 以降に生 まれ た世代全般 に共通す る問題 として、家 族や学校 におけ る過剰 ス トレスの抱 え込み と 「社会 力」
の欠落が関与 してい る とい う指摘 が あ る。(1)雑 多で様 々 な人間 との出合 い、 自分・の弱 きや 自分が 抱 え きれ ない もの を 日常 生 活 の 中で出 し合 え る機会 を もてず、互 いの存在 と 「よさ」 を認め合 え る関係 を失 ってい る と言 う。 また小 学校6
年生 に も見 られ る攻撃性 には、 自己の存在感や実在感 を確 かめ よ う とす る意 図が あ るこ とを指摘す る教 師 もい る。(2)今や学校 が子 どもた ちの将 来 に対す る希 望や可能性 をひ き出す場 では な く、 「自己を傷 つ け る もの と化 して しまった」ため に、 そ こ か ら 「逃 げ出 してい く 『喜 び』なのか も知 れ ない」 と分析 す る。 「逃 げ る」こ と、つ ま り学 校 的規則や学校 的価値 に よって枠づ け られ た行動か ら逸脱す るこ とで危 機感や ス リル感 を 味 わ うこ とに よって、か りそめの充実感 を得 よ うとしてい る一面が あ る との こ と. その一 方 で逸脱行動 には しらない多 くの子 どもたちは、葛藤 を一 人 で抱 え込 み、「両親 の子育 ての 評価 の価値 をすばや く体 内化 す るこ とで、子 どもは愛 され る自己 をつ くり出 してい く」 自 分 の崩壊 を必死 で くい止め よ うとしてい る。そのため、ち ょっ としたこ とで傷つ きやす く、突発 的 な感情 の表 出 となって しま うこ とが あ る とも言 う。 しか も問題 なのは、 そ ういった 子 どもた ちが周囲 と様 々 な軌鞍 を経験す るこ とが、必ず しも自己の形成 につ なが らない現 実 を危倶 してい る。何 故 な ら、「試行錯誤や失敗 を受 け止め るおお らか な 自己へ の信頼 の基 盤」、つ ま り安心 して 自分 を出せ る対 人関係 (親 子関係 、仲 間関係、教 師 一生徒 関係 な ど) が ないため、 困難 な課題 に挑戦 してや り遂 げ よ うとす る意欲 が発揮 で きない状況 に置かれ てい るか らであ る。結果 として葛藤 を克服 して達成感 を味 わい、 自己肯定感 につ なが る 自 分 の 「よさ」 を 自覚 で きる機会 を失 ってい るのであ る。
しか し、今 日の子 どもの姿 は、犯 罪や非行 、学校 的規範か らの逸脱、 あ るいは哲屈 した 自己防衛 的 な生 き方 だけでは ない。一方 で、家庭や学校 での生活 をそれ な りに楽 し くす ご してい る姿 もあ る。受験 中心 の学校 生活 を考 えた場合 、 その姿 は 「適 当にや りす ごす術
」
とい う表現が最 も的 を射 た もの と感 じられ る。(3)頑張ればで きる とい う暗黙の強制 力が働 く中で、知 るこ とや覚 える事柄 が試験 との関係 で予め規定 され た学習 に取 り組 まねば な ら
12 長崎大 学教 育学部紀要 一教 育科 学 一 第62号
ない。 しか もその成果 は 自分 に とって とい うよ り、大 人や学校 的価値 に とっての意味が優 先す る場合 が 多い。学年が上 が るにつれ、授業 につ いていけ なか った り、頑張 って もで き
なか った りといった失敗体 験が点数や他 の評価 として積 み重 なってい く。繰 り返 され る失 敗 に深 く傷つけ られ ないためには、不必要 な頑張 りをやめ る以外 にない。 自分 が本 当に必 要 と感 じ、頑張 る意味 を兄 い出せ ることには力 を注 ぐが、 それ以外 は無難 な ところでや り す ごす こ とにな る。本 当に頑張ればで きる自分 を心 の どこかに温存す るこ とで敦命的 な傷 つ きを回避 し、仲 間 とも対等 にかかわ り一緒に楽 しめ る精神 的余裕 をつ くり出 してい る と 考 え られ る。
特定 の人物 との信頼関係 の形成 を模 索 し、大 人社会 の価値 基準 に適 った行動が で きるこ とを求め られ る状況 の下 で、 その要求や期待 に応 えよ うと不安 と葛藤 を一人で抱 え込み、
愛 され る自己を演 じる姿 は乳幼児に とって唯一 の選択肢 と言 える。様 々 な基礎 的 な力が発 達途上 にあ る乳幼児は、家庭や地域環境 の違 いの中で多様 な個 人差 をもって保育所 ・幼稚 園に通 って くる。親 と子 どもが地域 に居場所 とな る集団的交流の場 を失 った今 、親や子 ど
もと向 き合 える 「重要 な他者」 としての保育者の役割 は非常 に重要 な もの となってい る。
とりわけ、子 どもの集 団的 な交 わ り体験 を通 して、様 々 な葛藤 の克服 に よ り得 られ る達成 感や 自分 の 「よさ」 を実感 させ、 それに よって生 じる自己肯定感 な どを育 て る取 り組みが 求め られてい る。
小学校低学年 の学級崩壊 をは じめ、思春期 頃におけ る問題現象の原 因が乳幼 児期 の子育 てや保育方法の問題 に求め られ る状況 の下 で、保育者が抱 え る悩みは深刻 であ る。 と りわ け、仲 間 との交 わ りを楽 しませ ようとして も、 その前提 とな る諸力の未熟 さが あ るために トラブルへ の対応に振 り回 されて しまう状況が あ る。 あれ もで きない、 こんなこ ともで き ないな どと否定的 な見方 で子 どもを評価 して しまい、保育 を思 うよ うに進め られ ない 自分 に さえ限界 を感 じて しま う。 そ うした不満 が親 に対す る複雑 な思 い とな り、子育 て‑ の共 感関係 を結 びに くくしてい る場合 もあ る。
ここでは最近 の幼児につ いて保育者が問題視 す る行動現象 を整理 し、 そ うした否定的側 面 をもつ幼児に対す る発達 的見方 と保育者お よび幼 児が互 に 自己肯定感 を育 んでいけ る関 係づ くりを視 野 に入れ た保育実践 のあ り方 につ いて検討す る。
Ⅰ.気 にな る子 ともたちの姿 一保育者 との線輪 か ら一
保育者 に とって気 にな る子 どもの現象 は以前か ら話題 になってはいたが、最近 は年長 に なって も改善 されずに残 るこ とが 多い との こ と。 その現象 は年少 か ら年長 の各 クラスに 様 々 なか たちで表れ、 ここ2・3年 の間に保育者か ら報告 された内容 も多岐 に及んでい る。
今 回は、筆者が参加 してい る、保育者 との実践交流会 の中で論議 された内容 を中心 に、年 少か ら年長 クラスにかけて挙 げ られた問題現象 につ いて整理す る。(4)
1.
発達領域 ご とにみ た保育者が気になる幼 児の姿主 な内容 は身辺処理、身体操作、言葉、情緒面、対人関係 の5項 目に ま とめ られ る。 そ の中か ら、仲 間 との交 わ りに直接かかわ る言葉、情緒面、対人関係 の
3
つにつ いて、保育 者か ら出 された問題現象 を年齢 クラス別 に簡潔 に まとめ た。(1) 言葉 の使 用
言葉 に関 しては各 クラスに共通す る問題 として
3
つ の こ とが指摘 で きる。 第1は言葉 で 意思表す るこ とが少 ない子。 第2は喋れ て も発音 が不 明瞭 で聞 き取 りに くい子。 第3は喋 れて も会 話 としてのや りと りが成立 しない子 であ る。他 児や保 育者 との交 わ りを深め る上 で不 可 欠 な交流手段 であ る言葉 を多様 な対 人関係 の 中で償 い こなせ ないだけで な く、年齢 が上が るに従 って逆 に相 手 を傷つ け る手段 とな ってい る状 況 さえあ る0( D3
歳 クラス第1の場合 、 言 えて もオウム返 し、単語 だけ、 あ るいは二語文 のみ といった子が少 な く ない。 あ る子 の場合 、 「マ ンマ、ママ、パパ、 イタイ、 ウ ン コ」とい った語葉 しか な く、 あ
とは ジェスチ ャー との こ と。
第
2
の場合 、単語 が どれ もは っ き りせ ず、自分 の名 前 もきちん と発 音 で きない子 もい る。傾 向 として、 「サ シスセ ソ」 の発音が 「タチ ッテ ト
」
にな る場合 が 多い。第
3
の場合 、保 育者か らの言葉 か けは理解 で きるが、 自分 の意思 を言葉 に表現 で きず、単 な るオウム返 しや ち ぐは ぐな返答が返 って くる。 その ため、 し ぐさや表情か ら読 み取 る 以外 に方法が ない。友達 との会話 もオ ウム返 しが 多い。相 手 に 自分 の意思が伝 わ らない こ とが原 因で噛 みつ きや 手が 出 る とい った トラブル も生 じてい る。 さ らに 自分 の言葉 が周 り に理解 されに くい こ とを気 に して ます ます話 さな くな る子 もい る と言 う。 また 自分 か ら話 そ うとしない子 の 中には相 手 を選 ん で話 して い る場合 もあ る とい う。 園では全 く話 さない が家庭 では何 で もよ く話 してい る子。他 児 とは活発 に会 話す るが保 育者 の前 では殆 ど言葉 が 出 な くな る子 もい る。
②4歳 クラス
第1の場合 、幼 児語 の使 用や相 手 に気持 ち伝 え る時 に無言 で立 った ままの子 が 目立つ と 言 う。極端 な例 だが、年少 クラス以来 1回 も言葉 を発 していない子や 降 園時 に 「バー イ」
と言 うだけの子 もい る。伝 えたい こ とを 「これ見 て
」
「こっち来 て」と動作 で伝 え る子 もい る。第 2の場合 、 3歳 クラス と同様 、保 育者 の話 しかけ を理解 で きて も、不 明瞭 な発音 で聞 き取 れ ない。早 口で聞 きとれ ない場合 もあ るが、サ行 、タ行 、‑行 、マ行 が不 明瞭 で
、「
〜で スか」 が「
〜でツか」 とい った発 音 にな る。第
3
の場合 、場所や相 手 に よって会 話が 出 る場合 とそ うでない場合 が よ りは っ き りして くる子が い る。 それ以外 の こ ととして、喋 り出す と止 まらない子や 自分 の言 い分 だけ を一 方的 に話 して終 わ る子 もい る。保 育 者 は、 人の話 を聞 こ うとす る気持 ちが欠 けてい るので は ないか と感 じてい る。 また乱暴 な言葉遣 い をす る子が いて、気 に入 らない こ とが あ る と 奇声 を発 した り、 「ぶ っころす ぞ」 な どの言葉 を発 した りす る子が い る と言 う。③
5歳 クラス第1の場合 、漸 く二語文 になった子や 自分 の思 い を素 直 に表現 で きず に攻撃 的 な態度 を とる子、 あ るいは助詞 が使 えず幼 児語 が 目立つ子 もい る。 その場 に応 じた言葉 が 出て こな い と相 手 を叩 いた り、唾 を吐 きか け た りす るこ ともあ る と言 う。
第2の場合 、 3歳・4歳 クラス と同様 にサ行 が タ行 に な って 「テんテ
い 」「
〜チた ?」
な ど と発 音す る子が まだ い る。 また 「きゅ うしょ くオ うぽん」
な どと発 音 して友達 か ら笑 わ れ る子 もい る。 そ うい った発 音不 明瞭 な子 には再 度 聞 き返す こ とが 多 くな る と言 う。14 長崎大学教 育学部 紀要 一教育科学 一 第62号
第
3
の場合 、気 にな るこ とが さ らに増 え る。他 人の話が開け なか った り、 オ ウム返 しに なった りす る子 は依 然 として まだ い る. 問 いか けに対 して領 くだけの子 もい る.場所や相 手 を選 んで話す子 が誰か もは っ き りして くる。 身辺 の 自立 が で きて絵や リズム遊 びで も他 児 と同 じよ うにで きるのに、 入 園 して以来、保 育 者や他 児 と全 く口を きか ない子 もい る。その子 は家庭 では よ く喋 るが 園では全 く声 を出 さず誰 とも喋 らないのであ る。逆 に、 園で は誰 ともよ く話す が帰宅 す る と全 く話 さな くな る子 も同 じよ うにい る。乱暴 な言葉遣 い を す る子 の人数 は増 えは しないが言 い回 しが ひ ど くな る。気 に入 らない相 手 に 「家 を燃や し てや る」とか、 「お まえのお母 さん を殺す」な どの捨 て台詞 を吐 く子 もい る。家庭 にお いて も、 同居 してい る祖 母 に対 して 「くそばば あ
」
「あ っちいけ」な ど と言 ってい るこ とを聞 く こ とが あ る と言 う。親 か ら相 談 され保育 者が その子 に注意す る と、「幼稚 園 を燃や してや る」とか 「ドア を叩 き壊 してや る」 な ど と言 い返 して くる ら しい。
(2) 情緒面 につ いて
各 クラス とも共通 して、些細 な こ とです ぐ泣 いた り、一度機嫌 を損 ね る と長 引いた り、
注意散糧 だ った りす る子 ど もが 目につ く。年長 クラスにな る とあ る程 度減少す るが、 4歳 クラスで 多 くな る 「で きる ・で きない」 に こだわ る姿が行 動 現象 としてのみ で な く内面的 に も克服 されてい るのか疑 問 の余地 が あ る。
( 》3
歳 クラスす ぐ泣 くとい うのは、初 め て集 団 を経験 す る場合 な ど、この年齢 では当然か も知 れ ない。
しか し、 園生活が
3
年 日に な るのに登 園時や午睡 前 に必ず 「ママ‑」 と言 って泣 く子が い る。担任 が側 を離 れ ただけで泣 く場合 もあ る。しか も単 に泣 くだけでは な く所 か まわず ひ っ くり返 って暴 れ る子や 泣 きなが ら走 り回って壁 な どに頭 をぶつ けて大 泣 きす る危 険 な子 も い る。感情面 の立 ち直 りに もか な り手 間がかか る。少 し注意 を しただけ で泣 いて半 日近 く立 ち 直れ ない子 な どが 目につ くと言 う。 また ち ょっ とした こ と、例 えば着替 えの時 に シャツが 頭 に引 っ掛 か って抜 け ない とい うだけで、火がつ いた よ うに泣 き続 け る子 もい る。
落 ち着 きの無 さが指摘 され るのはや は り
3
歳 クラスが一番 多い。年齢 か らすれ ば当然か も知 れ ない。保育者 で も気 にす る人 とそ うでない人が い るが、問題 に な るのは2
つ の タイ プであ る。 第1の タイプは絶 えず移動 す る子。 クラス全体 で絵本や紙芝居 を見 た り、 食事 時 に室 内 をウロウ ロ した り、知 らない うちに室 内か ら出て行 った りす る子が それ であ る。第
2
の タイプは周囲 の子 を巻 き込 む子。整列 時 に、 ふ ざけて飛 び跳 ね た り、 わ ざ と皆が笑 う格好 を した りして周 囲 を巻 き込 む子 で あ る。後者 の タイプ には、 自分 に注意 を引 こ う と す る意 図 も読 み とれ る。②4歳 クラス
す ぐ泣 くとい うこ とは
3
歳 クラス と比較 して殆 ど目立 たな くな るが、感情 の立 ち直 りが 難 しい子 は逆 に多 くな る。立 ち直 りの難 しさにつ いては
3
つ の タイプ に分 類 で きる。 第1
の タイプ は、 とにか く自 分 の気 がす む まで泣 き続 け る子。友達 との喧嘩 で1時間 くらい泣 き続 け るこ ともあ る。 第2
の タイプ は、 自分・の言 い分 を相 手 に認め させ るため に泣 く子。例 え身勝 手 な こ とで も自 分 の言 い分 を通す ため に大声 で泣 くので あ る。 第3
の タイプ は、 自分 の不安 を泣 いてすねるこ とで ごまかす 子。 この時期 、 この第
3
が最 も多 くな る傾 向が あ る。 周囲の評価や 自分 の で き映 えが気 に な り、一 人 での作業 に不安 感 を持 つ よ うで あ る。 その ため か保 育 者 が ち ょっ と注意 を与 えただけ で落 ち込 む子 もい るら しい。 また、 人前 で話 をす るこ とが非常 に苦 手 な子 もい る。 泣 いてす ね る と、何 もしよ うとせ ず に部屋 の隅や テ ラスで じっ として い る子 もい る。製作場 面 な どでは毎 回 「で きない」 と言 いなが らす ね る姿 が何 人か に見 ら れ るの であ る。 そ うい った子 は少 し教 えてや る と一 人でで きるだけ に、 「で きない」と勝 手 に思 い込 ん でい る ところが あ る。 中には、一緒 に歌や 踊 りを しよ うと働 きかけ て も黙 って 立 ちつ くす ばか りで、注意 され る とむ くれて しまい、 それが3‑ 4時 間 に及 ん で しま う子もい る と言 う。
落 ち着 きの無 さは、 クラス全体 で瀞 的 な活動 をす る時 だけの場合 と四六時 中の場合 が あ る。朝 と帰 りの集 ま りの時、 あ るいは絵本 の読 み聞かせや 製作活動 の時 に必ず部屋 の外 で ウロウロ した り、 よそ見 した りして落 ち着 きの ない子が い る と言 う。 四六時 中の場合 は、
特定 の対象 に焦点が定 まるこ とな く動 き回 る子 であ る。 そ うい う子 は室 内で遊 ぶ時 は動 き が激 し く、遊具 を投 げ るこ ともあ る と言 う。
③5歳 クラス
泣 い た り、 いつ まで も ぐず った り、 落 ち着 きが なか った りとい う子 どもの数 は他 クラス と比較 して減少す る傾 向に あ る。 しか し数年前 ほ どには減 少せ ずに卒 園 を迎 えて しま うと い うのが保 育者 に不安感 を与 えてい る。
泣 くのは主 に保 育者か ら注意 を受 け た時 な どが 多い よ うで、注意 され る と言 い訳 を しな が ら泣 いて謝 った り、 おび えた感 じで泣 いた りす るこ とが あ る と言 う0
立 ち直 りの難 しさにつ いては場所や 活動環境 の変化 が関係 してい る場合 もあ るが、 で き そ うにない課題や 友達 との トラブル で生 じるこ とが 多い と言 う。め そめ そ した り、「ど うせ 僕 は」 となげや り的 な発 言 を した りして、誰 とも口を きこ うとせ ず に一 人 で泣続け るこ と
もあ る と言 う。
落 ち着 きの無 さは
4
歳 クラス と同 じ傾 向 を示 す子が 目につ くよ うであ る。( 3 )
他 児や保 育 者 との交 わ り保育 者か ら挙 げ られ る問題現象 で最 も多いのが この項 目であ る。他 者 との交 わ りに関 し ては、
3
歳・4
歳 クラスで見 られ る他 児 と交 わ る力の弱 きが加齢 とともに改善 され る場合もあ るが、一方 で顕在化や 固定化 が進行 す るよ うであ る。 自由遊 びにおけ る仲 間連 び、設 定的 な状況 におけ る集 団的活動、子 ども同士 間 での衝 突、 そ して保 育者 の働 きかけに対 す る子 どもの対 応 な どで様 々 な問題 が生 じてい る。 と りわけ 自由遊 び場面 での子 ども同士 の 交 わ り、 それに保 育者 と子 どもとの交 わ りにお いて対 立が深 まるよ うな傾 向 さえあ る。
①
3
歳 クラス i) 自由遊 び場 面自由遊 びでは一 人遊 びが主 で、他 児 とのかか わ りが比較 的少 ない。 しか し、 入 園 して半 年 を経 て も、他 児へ の恐怖感 み たい な ものが消 えずに近づ こ う としない子が い る と言 う。
あ る子 の場合 は他 児のみ な らず担任 が近づ くだけ で逃 げ 出 して しま う。 また別 の子 は近づ くと怖 が って叫ぶ とい う。 その ため に部屋 に入 れず、外 での一 人遊 びが続 いてい るケー ス もあ る。
16 長崎大学教 育学部紀要 一教 育科 学 一 第62号
i i
) クラス集 団で まとまって活動す る場面問題 にな る子 どもは
2
つの タイプ に分 類 で きる。第1
の タイプは、集団的活動 に無関心 と思 われ る行動 を とる子。保育者が促 して も無視 して言 うこ とを聞か ない。時折、保育者 に ま とわ りつ いた り、気 が向いた時 だけ皆 の中に入 った りす るが、 それ以外 はい ろん な場 所 を排掴す るこ とが 多い よ うであ る。第2の タイプは、参加 したいが他 児 と衝 突 してす ぐはみ出す子.製作活動 な どを共 同で す る時 な ど、他 児 と道具 の取 り合 いな どです ぐ衝 突 し部屋か ら出て行 って しま う。 また、
怒 って相 手 をつね った り、噛 みつ いた りして皆か ら浮 いて しま うこ とも多い。殆 どの場合 、 自分勝 手 な振 る舞 いが原 因で他 児 と交 わ るこ とが で きな くな るのであ る。
i i i
)他 児 との衝 突場面この時期 は他 児 との トラブルが珍 しいこ とではないが、 それ に して も目の離せ ない子 ど もが 多い との こ と。 それは危険 を伴 う乱暴 な行動 を とるため であ る。 トラブルの主 な原 因 は 自分 の思 い通 りにな らない こ とであ る。 問題 になる衝 突時 の対応 は、相 手に コップや椅 子 を投 げつ けた り、興奮 して力任せ に叩いた り、相手の髪 を力一杯 に引 っ張 った りす るこ
とであ る。保育者が注意 して も同 じ事 を繰 り返 し、 中には意 図的に相 手が嫌が るこ とをし よ うとす る子 もい る と言 う。
i v)
保 育者 と交 わ る場面保 育者 に対す る子 どもの対応 で も当然の こ となが ら困 るこ とが 多い。 まず、注意 しよ う と話 しかけ た時 になか なか 目が合 わない。都合 が悪 い時 に 目を合 わせ た くないのは分か る が、誰 と話す時 で もいつ も目が合 わないか ら心配 と言 う。 また既 に指摘 したこ とで もあ る が、注意 して も同 じこ とを繰 り返す のであ る。 そ うか と思 えば、保 育者 にべ った り依 存 し きって、 いつ も保 育者 の シャツを掴 んで どこにで もつ いて回 る子 もい る。 「抱 っこ して」を 要求 した り、手洗 いや着替 えの時 に側 に付 いて欲 しい と要求 した り、 自分・の思 いだけ を聞 き入れて くれ るまで大声 で泣 き叫んだ りす る子 もい る。 その一方 で、 この年齢 に しては心 配 なほ ど生真面 目な子 もい る。最後 まではめ をはずす こ とな く保育者 の指示通 りに した り、
他 児の悪ふ ざけに も同調せ ず に行儀 よ くしていた り、 自分 のわが ままも出 さずに礼儀 正 し く振 る舞 ってい る子が い る と言 う。
②4歳 クラス i) 自由遊 び場面
や は り他 児 と一緒 に遊べ ず に一人 にな る子が 多いこ と、 また特定 の遊 び相手 としか関係 をつ くれ ない子がい るこ とも指摘 されてい る。
一 人ば っちの子 は、他 児 と交 わ るこ とに不安感 を もってい る子の場合 と身勝 手 な子の場 合 とがあ る。前者の子 は、相 手か らち ょっ と押 されて もワ‑ ワ‑泣 き出す ほ ど過敏 で、誕 生会 で皆か ら祝 って もらうの も嫌 が る傾 向が あ る。後者 の場合、他 児 とす ぐに トラブル を 起 こ して相 手 を叩いた り蹴 った りして関係 が長続 きしない。 中には熱 中 して遊 ぶ他 児 を見 つ け る とち ょっか い (叩 くな ど) を出 して邪魔 す る子 もい ると言 う。
特定 の子 どもとしか結 びつ きが もてない子 どもの殆 どが、年下 の大 人 しい子や 自分の 妹 を相 手 として選 んでい る。 その相手 の顔 を触 った り頭 を撫 でた りしてい るが、一方的 な対 応が災 い して泣かせ て しま うこ とが 多い と言 う。 そ うした関係が 固定化 して同年齢 の子 ど
も達 の輪 に入 って こないの であ る。
ii) クラス集 団で ま とまって活動 す る場 面
問題 に な る子 ど もは よ り多様化 し4つ の タイプに分 類 で きる。 第 1の タイプ は無 関心 で 立 ちつ くす だけに な って しま う子。 第
2
の タイプ ははみ 出す子。 第3
の タイプ はふ ざけ る 子。 第 4の タイプ は周 囲の意 向や 評価 を気 に し過 ぎる子 であ る。第 1の場合 は、 それ ほ ど数 多 く存在 す るわけ では ない。皆 と一 緒の活動場面 では どん な 活動 で も横 で見 てい るだけ と言 う。 そ うい う子 ど もは一 人遊 びに も取 り組 め て いない様 子 で、 あ る保 育者 は 「成長が どこか の年齢 で止 まって い るよ うに感 じる」 とい った印象 を述 べ てい る。
第2の場合 は、殆 どが単独行動 を好 み、 自分 の したい こ とに しか注意が 向か ない傾 向が あ る。他 の クラスに行 ってみ た り、意 図的 に皆 と違 う活動 を した り、 自分・の思 い通 りに な
らない こ とへ の欝債 を他 児‑ の乱暴 な行動 に よって晴 らす こ ともあ る と言 う.
第
3
の場合 は、皆 の前 で何 か を演 じた り、歌 った りす る時 にその行動 が見 られ る。 で き ない振 りを してふ ざけ た り、 グルー プの仲 間 と違 った こ とを した り、大 声 で怒 鳴 ってみ た り、突拍子 もない こ とをす るのであ る。結 果的 には皆 を笑 わせ るな ど して注 目を集 め るこ とにな る。第4の場合 は、皆 で一 緒 にす る場面 で 自信 な さそ うに伏 し目が ち とな り、何 もで きな く な る子 であ る. 第1の場合 とは一 人遊 びや他 児 とも一 応遊べ る とい う点 で違 って い る.例 えば 自分 の好 きな場所 を見つ けて一 緒 に座 る とい った単純 な場 面 で も、 自分 で決 め られず に立 った ままにな る。他 児 との遊 びに も自分か らは入れ ない よ うで、他 児か ら命令 され る ままに動 いて しま うところが あ り、表情 もお どお どしてい る と言 う。
iii)他 児 との衝 突場面
衝 突時 の対 応 で もや は り問題 を感 じる子 どもが 多い との こ と.衝 突 原 因の殆 どが 自分の 身勝 手 さにあ るこ とは同様 であ る。 自分 が欲 しい もの を他 児か ら無理 矢理 に奪 い取 る場合 が最 も多い. その他 に も自分 が遊 びを リー ドで きない時や他 児 を突然 叩 くな ど して トラブ ルにな るこ ともあ る。 その際 の対応 も、玩具 な どを投 げた り、玩具 で叩いた り、噛 みつ い た りな どの乱暴 な行 動 を とる。保 育者 の 印象 として、気短 で 自分 の気持 ちを相 手 に うま く 伝 え よ うとす る姿勢 が感 じられ ない と言 う。
iv)保 育 者 と交 わ る場面
保 育 者 に対 す る子 ど もの対 応 に も問題 を感 じて い る保 育 者 が 多い。 その対 応 の仕 方 に よって4つ の タイプ に分 類 で きる。 第1の タイプ は意思 の疎通 が難 しい子。 第2の タイプ は 自分 へ の注意 を引 くため に困 った こ とをす る子。 第3の タイプは依 存心が強 い子。 第4 の タイプは保 育者 の評価 に敏 感 な子 であ る。 いずれ も
3
歳 クラスで問題 に され たい くつか の傾 向が よ り顕在化 したか たち とな ってい る。第 1の場合 は、 注意が散手蔓を ところ もあ るが、話す時 に視 線が合 わず に会話が成立 しな い子 で あ る。
3
歳 クラスで問題 にな った子 とほぼ 同 じ特徴 を持つ。第2の場合 は、腹 いせ 、反抗、悪戯 な どをす る子 であ る。腹 いせ では保 育者 が注意す る と年齢 の低 い子 の藻 て い るベ ッ ドをひ っ くり返 した り、顔 に布 団 をかぶせ て泣 くの をニヤ ニヤ見 ていた りな どが あ る。 反抗 では保 育者が注意す る と呪んだ り、逆 の こ とを した り、
あ るいは同 じこ とをす ぐ繰 り返 した りな どす る。悪戯 では歯磨 き粉 をた っぷ りつ け た り、
洗濯機 の スイ ッチ をわ ざ と切 った りな どして、保 育者 を困 らせ るの であ る。
18 長崎大学教 育学部紀要 一教育科学 一 第62号
第3の場合 は、活動 に取 り組 む時に必ず保育者 に依 存 しよ うとす る子。 身辺処理や製作 活動 な どで 「で きない
」
「して」を連発 す るこ とが 多い。 自信 が ない感 じで、 自分 です るこ とに不安 感 を持 ってい る。幼稚 さが残 っていて発達 面 での遅 れ を感 じさせ る子 もい るが、逆 に保育者 との会 話 に関す る限 り非常 に上 手にで きる子 もい る。
第4の場合 は、他 児 と衝 突時 には乱暴 な言葉 を相 手 に使 うが、近 くに保 育者が い るこ と が わか る と急 に優 しい言葉遣 いに変 わ った りす る子が い る と言 う。
③ 5
歳 クラス i) 自由遊 び場 面気 に なる子 どもは4つ の タイプ にほぼ分・類 で きる。 第1の タイプは他 児 と交 わ ろ うとせ ず、 自分 の したい遊 び も明確 でない子。 第2は他 児 との遊 びが長続 きしない子。 第3の タ
イプは一 人遊 び中心 の子。第4は特定 の遊 び相 手 としか遊 ば ない子 であ る。4つ の タイプ の 中で問題 に され るケー スが貴 も多いのは第3の タイプであ る。 これ らは4歳 クラスでみ られ た傾 向が よ り分化 し、顕在化 した もの と考 え られ る。 4歳 クラスでの他 児 と遊べ ず に 一 人にな る子が第 1、第2、第3の タイプへ、 また4歳 クラスで特定 の相 手 としか関係 を つ くれ ない子が第4の タイプ として固定化 してい る可能性 が あ る。保 育者の報告 に よれば 全 てのケー スが単純 に結 びつ いてい る とは限 らないが、半数 以上 のケー スでその推測 が 当 ては まるよ うであ る。
第1の場合 、大部分 の子が年 中か らの傾 向 を引 きず ってい る。他 児 との遊 びに誘 って も 入 ろ うとせ ず、相 手が 同年齢 の場合 にその抵抗 が よ り強 く出 る。特徴 として、 こ うした子 どもは、 同年齢 の遊 び相 手 と対 等 に交 わ る生活が 園以外 では全 くない家庭環境 で育 ってい る。 そのため、 同年齢 の他 児へ の違和感 だけ でな く、仲 間遊 び を知 らないため に参加 で き ない こ ともあ る と言 う。
第2の場合 、他 児 との遊 びが長続 きしない原 因が大 き く2つ に分か れ る。 1つ は 「入れ て
」
「貸 して」 といった簡単 なや りと りが で きず、活動 の発端 で頗 いて しま う場合 である。そ うい う子 に限 って大 人 との会 話 は上 手 にで きるため、「入れ て くれ ない」と保 育者 に泣 い て訴 え るこ とが 多い。 もう1つ は身勝 手 な 自分 の要求 を押 し通す ため、遊 んでい る途 中で 遊 び仲 間か ら脱 落す る場合 であ る。大体 が道具 な どの貸 し借 りがで きなか った り、 ルー ル や順番 を守 らなか った りす るこ とが 多い。
第3の場合 、気 の向 くままに一 人遊 びに熱 中す るこ とを楽 しんでい る様 に もみ え る。 そ の子 た ちは 日頃か ら口数 が少 な くて他 児 との会 話が ない。仲 の良 い友達 はいないが、苛 め や仲 間外 れ に されてい る様 子 もない と言 う。一 人遊 びの内容 はお絵 か きをは じめ、 ブ ラン
コ乗 り、 自転車乗 り、 ブ ロ ック、絵本 な ど様 々 であ る。
第4の場合 、保育者 は遊 び仲 間が 固定化 して しまってい るこ とに問題 を感 じてい る。遊 び相 手 の違 いか ら2つ のケー スが取 り出せ る。 1つ は年下 で、3歳未満 児の子 どもや年下 の クラスにい る 自分 の弟や妹 が相 手 とな る。 も
う1
つ は同年齢 で、 自分 に服従 して くれ る お気 に入 りが相 手 とな る。年下 としか遊 ばない子 は 自分 の遊 び相 手 を占有 したが り、 その相 手が他 児 と一緒 に遊 ん だ りしてい る とその子 を手離す まで側 で泣 き続け るこ ともあ る。 また遊 び内容 ではルー ル の あ る鬼 ごっこな どが で きない。 その一 方 で、文字や 計算が驚 くほ どで きる子 もい る と言
つ。ヽ
同年齢 の特定 の仲 間 としか遊 ば ない子 は、 リー ダー格や物知 りで何 で も上 手 に こなす子 であ るこ とが 多い。特定 の仲 間で構成 され るグルー プ を作 り、グルー プの活動 か らメンバー 以外 を排 除す る閉鎖 的傾 向が あ る。 グループ 内では仲 間に命令 口調 で作業 を指示 し、 それ が上 手 にで きない と厳 しい非難 を浴 びせ た りす るこ とが 多い。 また、保 育者の 目を気 に し て、保 育者が近 くにい る時 と仲 間だけでの時 とで態度 を180度変 え る子 どもが い るの も気 に な る と言 う。
ii)クラス集団で ま とまって活動 す る場 面
問題 とな る事例 は少 ないが集 団活動 で気 にな る子 はい る。 4歳 クラスで分 類 した タイプ に照 らしてみ る と、 第1タイプの子が 目につ くよ うであ る。 自分一 人が皆か ら遅 れていて も無関心 な子や保 育者が設定 した集 団活動 にな る と自由遊 び とは対照 的 に立 ちつ くして し ま う子 どもであ る。一応 クラスの集 団活動 に参加 はす るが皆 の テ ンポに合 わせ よ うとしな いマ イペー スの子 と最初 か ら活動 を放棄 す る子が い る。
i i i
)他 児 との衝 突場面衝 突原 因は4歳 クラス と同様 に殆 どが 自分 の身勝 手 さだが、 その時の乱暴 な対応がエ ス カ レー トしが ちな子が4歳 時 よ り多 くな る。 自分 の感情 を抑制 で きず に大声 で泣 き叫んだ り異常 な までに飛 び跳 ね た りす るこ ともあ るが、大部分 は殴 る蹴 るの暴 力 とな る。順番や 交代 な どを巡 って他 児 と衝 突 し、 カ ッとなって相 手 に暴 力 を振 る うのであ る。相 手が倒 れ る とさ らに踏 みつ け、 まるで嫌 な虫で も見 るか の よ うな冷 たい 目をす る子 もい る。側 にい た友達 も心配 して保 育者 に助 け を求 め に来 るほ どであ る と言 う。 中には、他 児の身体 や頭 を小 突 くこ とが挨拶代 わ りにな ってい る子 もい る。 日頃か ら乱暴 な子 は他 児か らも嫌 われ て避 け られてい る。 また特定 の子 に対 してのみ競争意識 を剥 き出 しに し、優位性 を示す た めか相 手が持 ってい る もの を力ず くで取 り上 げ た り、順番待 ち してい る時 にその相 手 の前 に割 り込 んだ りして暴 力沙汰 にな るこ ともあ る と言 う。
i v)
保育者 と交 わ る場面保 育者 に対す る子 どもの対応 で問題 に され るこ とは、4歳 クラスで分類 した4つ の タイ プが その まま当ては まる。
第1の タイプ は意思 の疎通 が難 しい子 であ るが、 4歳時 と同様 に視 線が合 わず会 話が で きない子が問題 となってい る。
3
歳 クラスの時か ら続 いてい るケー ス もあ る。 また、何 を す るに も保 育者 の評価 を過剰 に意識す る傾 向が そ うした子 どもに見 られ る と言 う。第2の タイプは 自分へ の注意 を引 くため に困 った こ とをす る子 で、4歳時 と同様 に無視 、 反抗、悪戯 な どをす る。 その 中で も悪戯が4歳時 と比較 して 多 くなってい る。無視 の殆 ど は保 育 者 の注意 を聞か ない こ とであ る。 注意 され て も自分 に関係 ない素 振 りでニヤ ニヤ 笑 って聞 き、 同 じこ とを繰 り返す のであ る。 反抗 では約 束事 を理解 した上 で禁 止 されてい るこ とをわ ざ とした り、 で きるこ とをわ ざ としなか った りす るこ とが 多い。悪 戯 で も様 々 な こ とを思 いつ いて保育者 を困 らせ る。午睡 中に藻 てい る女 の子のパ ンツ を脱 がせ た り、
金魚 の水槽 に輪 ゴム をち ぎって入れ た り、他 の クラスの保 育者 の持 ち物 を机 か ら勝 手 に持 ち出 した り、 とにか く他 児が嫌 が るこ と (例 えば、通せ んぼ、砂 かけ、 トイ レ中に扉 を開 け た りな ど) をして面 白が ってい る と言 う。
第
3
の タイプは依 存心 が強 い子 であ るが、 クラスの仲 間 とうま く遊べ ない子 どもが比較 的 多い。他 児 との間で困 った こ とが起 こる と相 手 に何 も言 えない まま保 育者 の所 に来 て し20 長崎大学教 育学部 紀要 ‑教 育科 学 一 第62号
まう。保 育者 とは上 手に会話 で きるの でつ いて回 り、他 児の遊 び をいろいろ と批評す るこ ともあ る。
第4の タイプは保 育者の評価 に敏感 な子 で、保育者 の前 では何 もで きな くな るが仲 間の 中では 自然 に振 る舞 える子や保育者の前 では良い子 に してい るが仲 間の中では乱暴 に振 る 舞 う子が い る。両方 とも保 育者の言動 に敏感 で、前者 は 自信 が ないのか どこか び くび くし てい る様 子が伺 える。後者 は 自分 が悪 くて友達 を泣か した時 な ど、相 手が言 いつけ ようと す る と 「ごめん !
」
と謝 り慌 てて 口止め した り、相 手に責任 を押 しつけ た りす るこ ともある と言 う。
Ⅲ.
保育実践 を見直す視点(1) 子 どもに対す る大 人の まな ざしは危険性 をは らむ
子 どもの発達 に対す る大 人の まな ざしの高 ま りは、子 どもの問題現象 に対す る関心 の高 ま りをもた らす一面 をもつo その際、一人の子 どもを丸 ご と捉 えて問題 にす る場合 と個 々 の行 動 のみ を問題 にす る場合 が あ る。 ま とめ られ た今 回の 内容 は後 者 の捉 え方 が 中心 と なってい る。 こ うした保育者の まな ざ しが強 まる背景 には、社会 におけ る大 人 一子 ども関 係 の歴史的変化や子 どもをとりま く生活環境 の変化 だけでな く、発達研 究̲の成果 が もた ら
した理解 の深 ま りが大 き く影響 してい る。
ここでは主 に乳幼児期 の発達 的理解 に関す る見方 をい くつか とり挙 げ、 自己肯定感 を育 て る保育実践‑ の若干の視 点 を提示す る。 ここでの 自己肯定感 は、 あ りの ままの 自分 を受 け入れ られ る とい う大 まか な把握 に とどめてお く。 自己肯定感 を問題 にす る理 由は、既 に 明 らか なよ うに、保育 の場 では保育者の まな ざしが主 に問題現象 に向け られ、負の評価 を もた らす場合 が 多いこ とにあ る。 そのため子 どもは保育者の意 向や期待 に応 えよ うとして 自らの内面 を束縛 した り、 それに応 え られ ない 自分を 否定的に見 て しまった りす る危険性 をは らんでい る。関西地域 を中心 に、発達相談 に取 り組 んでい る丸 山美和子は、最近 の子 どもにつ いて 「問題 の具体 的状 態」 と 「発達上 のア ンバ ランス
」
とい う2つの側面か ら捉 えた 「発達 の歪み」を分類 し、保育実践の課題 の1つ として「
F自分 は 自分』であ るこ とを 肯定的に理解」して もらえる大 人 (保育者)や仲 間 との関係づ くりを求めてい る。(5)保育者 に とって問題現象の原因や背景 を知 るこ とも大事 なこ とではあ るが、 問題現象の解釈や責 任転嫁 のための原因探 しではな く、 園生活 での実践 につ なが る課題把握 であって欲 しい。(2) 保育者 に求め られ る、子 どもの発達 に対す る見方
第 1にその子の今 を尊重す る姿勢が 必要 であ る。 あ りの ままの 自分 を受 け入れて もらえ る保育者が いて こそ子 どもは園生活 に安心 して取 り組め る。 その意味では、発達 的に何 ら かの問題 を もってい るか どうかに関係 な く、 その子が今生 きてい るこ と自体 を大事 に し、
生活 をよ り充実 した ものに しよ うとす る姿勢が まず求め られ る。 そのため には、 いわゆ る 発達研 究 な どにおけ る観察者 としてではな く、 園生活 を共 に過 ごす生活者の 目でち ょっ と した出来事 の中で見せ る子 どもの姿 に向 き合 えば よいのであ る。 そこには小 さな虫や石 こ ろに さえ心 を ときめか し、今 を楽 しもうとしてい る子 どもの姿が必ずあ るはずであ る。子 どものあ らゆ る生活行動が評価 に晒 されてい る中で、保育者 も評価 的 な視 線や意図的 な保
膏 に こだ わ る気持 ちか ら自分 を解放 し、子 どもと一 緒 に混 じり合 ってゆ った り 「暮 らす」
こ との意味 を もっ と味 わ う必要 が あ る。 自然 なや りと りの 中に相 手 をあ りの ままの姿 で受 け入れて い る自分 を発 見す るはず であ る。
第2に、 第 1と似 た まな ざ しではあ るが、一 人 ひ と りにつ いて よ り分析 的 にみ る見方 で あ る。 ただ し、従 来 の よ うな客 観 的 で正確 に記述 され た行動 内容 にでは な く、個 々 の行為 が どの よ うな意味 を もってい るか、 その子 の内面的意味づ け を理解 す るこ とに 目を向け、
その子 の発達 を評価 す るの であ る。(6)単 に
「
『で きる ・で きない』 ではな く、 その子が今 ど の よ うに生 きよ う としてい るか を問題 にす る。従 って 「で きるこ と」や 「で きない こ と」が もつ、 その子 に とっての意味 を とらえ るこ とが重要 とな る。
吉村真理 子 も同様 の視 点か ら発達 評価 の仕 方 を見 直す こ とを保 育 者 に求 め て い る。(7)従 来 の発達領 域 ご とに明示 され てい る各到達 度基準 (到達 目標)を もとに した評価 では な く、
一 人ひ と りの異 な った 「発達 の過程 」 とい う見方 で総合 的 に見 てい く必要性 を強調 す る。
今 回 ま とめ た問題現象 の 内容 も発達領域 ご との到達 度 を念頭 に、 その年 齢段 階 に相 応 しい レベ ルに達 していない もの を挙 げてい る場合 が少 な くない。保 育者 に必要 な見方 は、単 に 言葉 が どれ くらい出 るか な どではな く、「その こ とば を使 って何 を感 じ取 り何 を認識 し、誰 となか よ くなって い くか とい うプ ロセス」 を理解 す るこ とに 目を向けねば な らない と指摘 す る。 あ るこ とが で きない場合 で も、 それが何 か新 しい力の芽 生 えに よって生 じた過程 と
して前進 的 な意味づ け を行 な うのであ る。 そ こで意 味づ け られ た葛藤や興 味 ・関心 な どを どの よ うな活動 として伸 ばす か、 また保 育者や仲 間 との関係づ くりを どの よ うに変 えれば よいか を考 え よ うとす る。
こ うした見方 は 「で きない こ と
」
に対 して短絡 的 に負の評価 を与 え よ うとせ ず、 む しろ 積極 的 な意味 を付 与 しよ う としてい る。 しか も 「その子 に とっての意味づ け」 を問題 にす るこ とに よって、発達 の過程 を意欲や欲 求 とむす びつ け よ うとしてお り、発達領域 間にあ る発達 的 ア ンバ ランスや発達 におけ る停 滞や後退 とい った現象 につ いて も必要 以上 に深刻 に考 えないの であ る。 その点 で、様 々 な問題 現象 を もつ子 どもの姿 を保 育者が肯定 的 に受 け入れ るこ とを可能 にす る理解 の仕 方 を与 えて くれてい る。 ただ し、見落 としてはな らな い こ とは、子 ど もに とって 「で きるこ と」 はや は り嬉 しい こ となのだ と理解 してお くこ と であ ろ う。第
3
に乳幼 児期 に何 をどの程 度 まで達 成 しておけば よいか を実践 を通 して検 討 し、思春 期や青年期 を見通 した保 育 とい うもの に安易 に振 り回 され ない発達 的見方 を もつ こ とであ る。実 際 に 「見通 そ うとい う姿勢 は大切 な ものの、見通せ るに足 る充分 な事実 資料 を私 た ちは まだ もっていない」 との指摘 もあ る。(8) この こ とにつ いて は充分 深 め きれ て いないの で指摘 を挙 げ る程 度 に とどめ てお く。数年先 の こ とまで考 えて、「予測 され る必要 なこ と全 て」 を就 学前 までに効率 よ く達成 しなければ とい う強迫観 念 に囚われ た保 育 では、負の評 価 を もって互 いに相 手 をさいなむ状況 しか生 まれ ない。何 らかの弱 きや 未熟 さが あ って も、その後 の発達 にお いて 自覚 と目的意識 が生 じれば補償 され るであろ うと、長 いスパ ンで育 ち を捉 え るまな ざ しが必要 ではなか ろ うかO
(3) 保育 でイ可が で きるか
人 とかか わ る力が弱 く、 ルー ル遊 び を楽 しめ なか った り、 ボス的 な子 ども自体 が少 な く
22 長崎大学教育学部紀要 一教育科学 一 第62号
なる中で リー ダー‑ と自らを変 えてい く姿が卒 園 まで見 られな くなった りしてい る。また、
お互 いが衝 突 した時の解決方法 で も暴 力的 なや り方以外 で合 意 を形成す るこ とが容易 では ない。記録 資料 をま とめ た 「仲 間や保育者 との交 わ り」 (
Ⅰ ト( 3 ) )
の中で もそ うした姿が顕 著 に示 されてい る。 そ うした子 どもたちを前に して保 育者 にで きるこ とを、仲 間 と交 わ る 活動 に焦点 をしぼ って3
つの こ とを指摘 してお く。第 1は、子 どもの生活環境 の変化 を考 えた場合、規則正 しい生活の中で全 身 と手の力 を 能動的に使 う多様 な活動 をたっぷ りと経験 し、仲 間 との楽 しい交 わ りを味 わえる「暮 らし
」
を大事 にす るこ とであろ う。 いろんな子 どもが参加 で き、面 白 くて夢 中になれ る遊 び を保 障す ることが基本 となる。遊 びが よ り楽 しい ものになれば互 いに 自分 を出 し合 うし、衝 突 時の解決策 で も合 意形成 に もってい きやす い。 その結果 として、相 手の話 を聞 く力 をは じ め、 自分 の要求 を言葉 で伝 える力、遊 び を工夫す る力、 身体操作力や運動能力 な どの育 ち がひ き出 され る。 しか も、仲 間 として参加 で きるこ とが集 団へ の帰属意識 を高め、 自分 が 受 け入れ られ る活動 の場 と人間関係 を もつ こ とで情緒の安定 につ なが る可能性 もあ る。
第 2は子 ども一人ひ とりが主体 的に取 り組 んでい る活動 を認め るこ とである。 そこでの その子の主観 的意図や興味の所在 と個 々の行為 が もつ意味 を読み とり、一人ひ とりに応 じ た発達課題 を考慮 した保育者 の指導性が必要 となる。 その子が 自発的にかか わ る特定 の仲 間関係や遊 び活動 を前提 に保育 の手だて を工夫す るこ とにな る。 しか し実際は沢 山の子 ど
もを一人で担任す る保育者 に とって、一人ひ とりに応 じた指導 はそれほ ど簡単 なこ とでは ない。 その ため その指導性 は、 クラス全体 の課題 を念頭 において、対象 とな る子 をあ る程 度 限定 して発揮 され る必要が あ る。 同時に、一人ひ とりの 「発達 の過程」の理解 と課題 に 対す る指導が重視 され る点 では単 に 「見守 る」対応 ではな くなるが、個 か ら出発す る 「自 由保育」 の枠 を超 えるものではないこ とを自覚 しておかねばな らない0
第3は保育者の意図的働 きかけに よる新 たな生活体験 を子 どもと一緒 に取 り組 む必要が あ る。子 どもたちはⅠⅠ‑(3)にあ るように、他 児 とかかわ るこ と自体 に無関心 であった り、一 人遊.びや 自分 が思 い通 りにな る相 手 との遊 びに しか興味が なか った りす る傾 向 をもってい る。 そこには、 自分 さえよければ よい、 自分 さえ楽 しめれば よい とい う姿勢が含 まれてい る。 そ うであ る限 り、例 え仲 間遊 びに参加 で きて も関係 の深 ま りや活動 の高 ま り、 そ して 遊 び を通 して育つ力 を期待 す るこ とは困難 である。
「自分 さえよければいい とい う態度 を許 さず、みんなの こ とを自分 の こ ととして とらえる こ とになる」 には意図的 な指導が必要 であ る。例 えば、遊 びの充実 を補助す る目的で 「保 育 の意図に もとづ いた小集団」づ くりに取 り組 んだ中山昌樹 の実践 はその一つの方法 と言 える。(9)詳細 な説明は省 くが、「生 きもの との生活や仕事 的活動」に取 り組 ませ、「グループ で協 力 し合 わなければな らない状況 におかれ るこ とで "合意の形成"に至 り、一つの こ と をみんなでや り遂 げ る」体験 をさせ てい る。 その際、 自由遊 びで成立 してい る仲 間関係 (仲 良 し関係) を考慮 して、 グループの構成 メンバー を決め、安易 な合意形成 をさせ ないよう に工夫 した こ とが重要 なポイン トとなってい る。 その中で 「周囲か ら
『 ○
○ ちゃんはウサ ギの世話 をよ くす るね』 な ど認め られ る」 こ とが 「子 どもの 自信 になる と同時に、 クラス の中での 自分 の位 置づ け」 をもた らす と指摘 してい る。 その こ とが グループで決め た課題 を達成す る時に、各児が役割 を自覚 し仲 間 と力 を合 わせ て取 り組め る姿 となってい る。 こ れ も仲 間に認め られ るこ とに よる自己肯定感 と密接 に関係 してい る。Ⅳ.
まとめ今 日の青 少年 に共通 す る問題 として 自己肯定感 の あ り方 を問題 し、 「い きな り型」の凶悪 犯 罪だけ でな く逸脱行 動 を とらない子 どもにつ いて も自分 の 「よさ」 を自覚 で きる機会 を 失 ってい るこ とにつ いて まず論 及 した。
乳幼 児 も同様 の状況下 におか れてい るが、 それ だけに、子 どもの集 団的 な交 わ り体 験 を 通 して 自己肯定感 を育 ててい く保 育者 の役 割 は非常 に重要 な もの とな ってい る。ところが、
既 に様 々 な発達上 での問題現象 を もつ子 どもを前 に、否定 的 な見方 を子 どもに対 して とっ て しま う状 況 もあ る。
そ こで最 近 の幼 児 につ いて保 育者が問題視 す る行 動現象 を整理 した ものか ら、 言葉 、情 緒面、対 人関係 の3項 目を と り出 して整理 を行 な った。 言葉 の面 では言葉 に よ る意思、発 音不 明瞭、会 話不成立 の現象が あ るこ と。情緒面 では泣 きやす い こ と、立 ち直 りの難 しさ、
注意散漫 な どの現象 が 目立つ こ と。 対 人関係 の面 では仲 間 と交 わ る力 の弱 き、集 団的活動 場面 での衝 突、保 育者 に対す る無視 な どの現象が生 じてい るこ とをま とめ た。
その よ うな実 態が あ るか らこそ、肯定 的 に理解 で きる保 育 者 の存在 が重要性 で あ るこ と を指摘 し、保 育者 に求 め られ る発達 に対 す る見方 として、子 どもの今 を尊重す る姿勢、 そ の子の主観 的意味づ けに よる発達 的理解 、 自覚化 な どに よる発達 的補償 の可能性 を視 野 に 入れ た見方が必要 であ る とした。保 育活動 では、面 白 くて夢 中に なれ る遊 び、一 人ひ と り の主体 的 な活動 、意 図的 に組織 され た生 活体 験 が重要 な こ とを指摘 した。
引用 文献
(1) 「現代 の子 どもが わか る本」久富善之、 門脇厚 司編 F現在 の子 どもがわか る本」6‑29 学事 出版 2000 (2)同上、32‑56
(3)浜 田寿美男 『い ま 子 どもた ちの生 きるか たち』98‑105 ミネ ル ヴ ァ書房 1998
(4) 1998年4月か ら2000年6月 までに開催 され た 「保育実践交流会 」 での記録 資料 に よる。 ほぼ 月1回の ペー スで3時間か ら 4時 間の会合 を長崎大学教 育学部 内で開催.参加 者 は少 ない場合 で 6名程 度、多い場 合 が15名程度 であ る。参加 メンバー はほぼ 同 じ顔 ぶれ で、長崎市 内の公 立お よび私 立保育所 に勤務 す る保 育者が殆 どで、年齢 層 は20代 後半か ら40代 。
(5)丸 山美和 子 「最近 の子 どもに見 られ る発達上 の歪みに関す る一考 察」保育 の研 究 No.17 52‑62 草 土文 化 2000
(6)森上 史郎 「最近 におけ る発達観 の変化 と保 育」発達86.22 2‑8 ミネ ル ヴ ァ書 房 2001 (7) 吉村真理 子
「
F発達段 階」か ら F発達 の過程j‑」発達86.22 9‑16 ミネ ル ヴ ァ書 房 2001(8)加 用 美知 子 「子 ど もた ち‑ の まな ざ しに て いね い さ とお お らか さ を」季 刊 保 育 問題 研 究 No.169 100‑111 新読書社 1998
(9)中山昌樹 「探検 ・料理 ・みんなの前 で出 し物」季刊保 育 問題研 究 No.177 46‑53 新読書社 1999