富 山大学 教 育学 部紀 要No.5 4:1 5‑2 8 ( 平 成12年)
難 民 問題 を 考 え る 社 会 科 の 授 業 方 略
‑
単 元 開 発
のた め
の教 材 理 解 と 授 業
づく り
の視点 に
つ い て ‑藤 原 孝 章
(1 9 9 9年1 0月1 4 日受理)
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i @ edu .toy a m a‑u.a c.J Pキ ー ワ ー ド: 難 民 問 題, 社 会 科 授 業, 単 元 開 発, 授 業づ く り
Key w o rds: r efuge eis s u e s,s o cialstud ie s,de v elopm e nt of le a r ning.u nit, m ak ingle s s o n s
は じ めに
(
課 題の設 定)
0.1. 難 民 問 題に対 す る 人 道 的 衝 撃
世 界の各 地で難 民が発 生し てい る1。 テ レ ビ映 像やメディ アを通し て伝え ら れ る難 民の状 況は,
国 内の激しい戟 火や紛 争に よっ て, あ るいは, 環 境の悪 化や飢 餓に よ って, 住む家や暮ら しの場 を 奪わ れ た人々 の姿で あ り, 難 民キャ ン プ で不 如 意
の生 活 を 強い ら れ ている人々 の姿で あ る2。 その ど れもが, 映 像と な って伝え ら れ る とき, 人 道 的 な衝 撃 を 私た ちに与え る3。
0.2. 学 校で の学 習 機 会の少 なさ
他 方, 学 校で の学 習 機 会につ いて は, 小・ 中 学 校は, 最 終 学 年のし かも 最 後の単 元に位 置づ け ら れ学ぶ機 会が少ない。 高 校で は, 国 境を越え る地 球 規 模の人口移 動 事 象の 1 つ と し て, ま た, 国 際 人 権や国 際 社 会の課 題 (Eg 際 的 保 護の対 象) と し て取り上げ ら れ ている が, その視 点は分 散してお り, 問 題の総 合 的な把 握を困 難に して い る。
0.3. 本 研 究の問 題 意 識
難 民 問 題 を 社 会 科の授 業と し て取り上 げるこ と は, 平 和や人 権な ど地 球 的 課 題 を 考え る重 要な単 元であ る にもか か わ らず, 今な お, その教 材理解 や授 業 実 践が断 片 的な知 識の提 供, 情 緒 的な段 階 で と ど ま って いること が多い。 難 民 問 題 を 通して,
地 球 的な視 野を身に付け, 問 題を総 合 的に 理解し,
冷 静に考え, 合理的に判 断し, 問 題 解 決へ の態 度 や社 会 参 加 への関JL、を育てる た めの単 元はできな い ものか, 本 研 究は, そのよ う な単 元 開 発の基 礎 と して の教 材理解と授 業づくりの視 点につ い て考 察 するもの であ る。
0.4. 本 研 究の内 容 構 成
以 上の問 題 意 識にもと づい て, 本 稿 を 次のよ う な順 序で記 述 する。
1. 難 民 問 題の内 容 的理解 ( 教 材理解) と し て,
現 行 社 会 科 教 科 書を取り上 げ, 分 析 する。
2. 同 様の分 析を, イ ギ リス の テキス トを 対 象に 行い, 日本と比 較 する。
3. 社 会 科の授 業に おいて難 民 問 題を扱う基 礎 的
視 点に つ い て考 察 する。
4. 難 民 問 題を考え る社 会 科 授 業の学習単 元 作 成
の指 針につ い て考 察 する。
0.5. 言 葉の定 義
本 論に はい る前に, 言 葉の定 義を しておきたい。
「 難 民」 とい う言 葉は,
一 般 的に 理解さ れて い る
意 味と国 際 法 上の 難 民 認 定に関わ る意 味と は開き が あ る。
一 般 的には 「 困 難な状 況, 窮 状に あ る個 人ま た は集 団」 という意 味で, その原 因は迫 害や 飢餓, 貧 困, 災 害な ど多 様であ る. 英 語の r efuge e は, 1 7世 紀に フ ラン スか ら イ ギ リス に逃れてきた
ユ グノ ー た ち がもた ら し た言 葉で, 「 逃れ て き た 人々」 という意 味を含んで いる。
し か し, 認 定や保 護の対 象と な る 「 難 民」 の意 味は, 第二次 世 界 大 戦の戦 後 処理の結 果や その後
の世 界の動 向か ら生ま れ たもの で, L3] 際 法 上 厳 密i
に決め ら れて い る。 1 9 5 1年 「 難 民の地 位に関 する 条 約」 (以下 「 難 民 条 約」 ) お よ び 「1 9 6 9年ア フリ カで の難 民 問 題につ い て の ア フリ カ統 一機 構 条 約」 ( 以 下 「O A U 条 約」) が代 表 的なもの であ る。
「 難 民 条 約」 では, 1) 人 種や宗 教, 政 治 的 意 見な どの理由で迫 害を受け る怖れ が あ ること, 2) 自 国の保 護を受け ら れ ないか そ れ を望ま ない こと,
3) 自 国の外に い るこ と, な ど が認 定 条 件 ( 難 民
の 定 義) で あ る。 「O A U 条 約」 で は, こ の 定 義に 加えて, 4) 「 内 乱, 内 戦, 外 国の支 配, 外 国に よ る占 領ま た は重 大な政 治 的 混 乱の 理由で」 「 国 外 に あ る者」 も 難 民と認め ら れ た。 個 人か ら集 団へ
と認 定 対 象が広が っ た。 さ らに, 現 在, U N H C R ( 国 連 難 民 高 等 弁 務 官 事 務 所) は, 「 国 外にあ る者」
だ けでは な く, 5) 上 記の理 由で国 内にあ る者 ( 国 内 避 難 民) も 援 助と保 護の対 象とする よ う に
な っ た4。
厳 密な定 義が な さ れ るのは, 受け入れ国が 「 認 定」 という制 度を使っ て, 難 民の流 入をコ ン トロ ‑
ル し た り, 資 金 提 供 国 ( 主に先 進 国) や国 際 機 関 が財 政 的な 理由で援 助や保 護に制 限をっ け よ うす る意 図と裏 腹の関 係に あ る か らであ る。
本 研 究で 「 難 民」 という言 葉は, 「 強い ら れ た 人口移 動」 とい う視 点か ら, 国 内 ・ 国 外を と わず 広い意 味で使うものとする。 国 際 的な認 定 制 度が
な か っ た歴 史 上の 「 難 民」 につ いても 「 迫 害」 な どの理 由, 「 自らの意 志に反して」 という 理由が あ る場 合に 「 難 民」 という言 葉を使う。 経 済 上の 理由でのIr 自らの意 志に よ る・移 動」 につ い て は
「 移 民」 とする。 自 然 災 害に よ る避 難は, 突 発 的 なもの なの で 「 難 民」 と し ない。 ( 経 済と災 害に よ る移 動は国 際 法 上 も 除 外さ れて いる)
1 .
現 行 社 会 科 (
地 歴科
・ 公民 科) 教 科 書
の中
の難 民 問
題1.1 小 学 校 社 会
1.1.1. 第 六 学 年 「 世 界 学 習」 の単元 の問題点 社 会 科 第6 学 年の最 後に, 同 心 円 拡 大の最 後の 単 元と して, いわ ゆ る 「 世 界 学 習」 の単 元が用 意
さ れて い る。 教 科 書な どで は, ユ ニ セ フな どの活 動の紹 介の中で, 難 民の子ど も た ちの写 真が掲 載 さ れ た り はする が, 難 民につ いての具 体 的 記 述は ない。 小 学 校 段 階で は, 難 民その もの の理解よ り も その背 景に あ る諸 課 題の解 決に取り組む国 際 機 関や 日本の役 割に つ い て の理解と 「 世 界の中の 日 本 人」 と し ての の自 覚が優 先さ れて いる。 難 民は その意 味で 一 事 例に過 ぎない。
問 題は, 同 心 円 的 拡 大の 内 容 編 成では, 世 界に
関 する学 習がいっ も最 後に回さ れ, 学 年 末の消 化 時 間に あて ら れ た り, 内 容 的に は, 国 際 機 関に つ い て の知 識や 日本 国 家の役 割の理解にと ど ま って いる点で あ る。 日本が果た して い る役 割につ い て
ら, 子ども ( 児 童) にとっ ては 「 選ば れ た偉い人 が遠い世 界で行っ て い る」 活 動と してし か受け と
め ら れ ない。
1.2. 中 学 社 会3 年 ( 公 民 的 分 野)
1.2.1 公 民 的 分 野に おけ る 難 民 問 題の と ら え万 国 際 人 権の課 題と して の難 民 問 題は, 中 学 校 社 会 科で登 場 する。 3 年 生の公 民 的 分 野におい て,
政 治 単 元 「 人 間の尊 重と 日本 国 憲 法の基 本 原 則」
の な か で, 世 界 人 権 宣 言やEEl 際 人 権 規 約な ど, 人 権 保 障の国 際 的な広が り, 普 遍 的な人 権に関 する 学 習の 中で取り上 げら れ る。 教 科 書に よ れ ば,
「 国 際 単 元」 の 「 世 界 平 和と人 類の福 祉の増 大」 の な か で, 世 界 的な人口移 動 現 象と し て外 国 人 労
灘 民問題 を考え る社会 科の授 業 方略
働 者と と もに難 民を取り上 げて いる5 。 難 民 問 題 は 「 経 済 難 民」 と して地 球 規 模の人口移 動に か か わ る概 念と して提 示さ れて いる よ う で あ る。 た し か に, 難 民 問 題の背 景に は, 紛 争, 環 境 悪 化, 飢 鶴, 貧 困な どさま ざ ま な要 因が あ り, 結 果と して
地 球 規 模の人口移 動と して現 象して い る が, 難 民 は政 治 的な要 因で発 生 すること が多く, 経 済 的 要 因の場 合は, 移 民や外 国 人 労 働 者にな る。 し た がっ て現 象 面か ら, 単 純に地 球 規 模の 人口移 動の1 つ
と して扱うこと は内 容理解を 一 面 的に してし ま う だ ろ う。
1.3. 高 校 地歴科
1.3.1. 日本 史に 「 難 民 問題 」 は な い ?
日本 史 上, 難 民を受け入れ た事 実はいくつ か あ る。 ロ シ ア革 命 後の 「 亡 命ロ シ ア人」 の受け入れ であ るo 洋 菓 子で有 名なモロ ゾフ ー 族な ど は その 例で あ る6。 中 国 革 命の 父, 孫 文も 日本に亡 命し
てお り, 現 在では難 民に該 当 する が, いずれ も教 科 書に記 述は ない。 ま た, 第二次 大 戦 直 前の ユ ダ ヤ人 難 民の受け入れ も杉 原 千 畝と ともに記 憶さ れ る べきであ る7。 日本 政 府が受け入れ を認 定 し た
ベ ト ナム ・ イ ン ド シナ難 民でさ えも, わずかの教 科 書にし か 3、れ ら れて い ない 8。
1.3.2. 世 界 史B一同 時 代の課題 世 界 史で は, B科 目におい て,
一部 教 科 書の最 終 章にイ ン ド シナ難 民が取り上げ ら れ た り, 冷 戦 後の世 界に お け る地 球 的 諸 課 題の 1 つ と して, 氏 族 ・ 宗 教 紛 争の噴 出や平 和へ の模 索の記 述の中に,
難 民 問 題が取り あ げ ら れて いる9。
難 民 問 題は, 地 域 的にも 歴 史 的に も ヨ ー ロ ッ パ の問 題で あっ た1 0。 ナ チ ス ・ ド イツ の ユ ダヤ人 排 斥に み ら れ る よ う な人 種 差 別や宗 教 的 迫 害か らの
自 由や, ソ連 支 配 下の東 欧 共 産 圏にお け る抑 圧か らの自 由を求め る人々 の受け入れ を め ぐ る問 題だっ
た か ら だ。
し か し な が ら, 現 在, 難 民 問 題は, 地 域 的には 開 発 途 上 国や 旧社 会 主 義 国まで全 世 界に拡 大して い る。 環 境 悪 化や国 内の紛 争, 混 乱, 戦 争な ど に
▲よ り他 国に庇 護を求め る人々が大 量に続 出して い
る。 こ の意 味で, 難 民 問 題は, 単な る地 域 紛 争の
二次 的 産 物では な く, 同 時 代 史 的な歴 史 認 識の事 例と し て扱わ れ るべ きであ る。 そ れ は, 困 難さ や 将 来を共 有 する人 類 史の課 題と して提 示さ れ るべ き なの であ る。
1.3.3. 地理‑ グロ ー カ ル ( global a nd lo c al) な現 象と し て の難 民 問 題
地理 A で は, 難 民 問 題を グロ ー カル に接 続さ れ た.現 代 世 界の課 題と して設 定して い る教 科 書が あ
る。 「難 民 問 題と国 連の役 割」 のな かで, 「大 量 難 民」 や 「 経 済 難 民」 の用 語と もに, 日本の受け入 れ や定 住へ の課 題を提 示して い る。 同じ教 科 書で は, 地 域 性の認 識と して, サ ‑ ラ地 域の 「 環 境 難 民」 や受け入れ国の事 例と して オ ー ス ト ラリアを 紹 介し, 多 文 化 社 会 への挑 戦が紹 介さ れて い る。
同 様に地理 B におい ても, 経 済 移 民, 外 国 人 労 働 者な ど グロ ー バ ルな人口移 動と して , 「 戦 争で生 ま れ る難 民」 や 「 環 境 難 民」 が取り上 げら れて い る11。
地理学 習は現 在の世 界にお け る空 間 認 識にか か わ る。 空 間 認 識は, 地 域 性お よ び地 域 性に よ る空 間の分 割や接 続, そこか ら生 ずる社 会 的 課 題な ど いくつ かの要 素か ら成り立っ。 特に, 人やモ ノ,
文 化の越 境 性, グロ ー カルな接 続 性こそ現 代 的 空 間の特 色で あ る。 地理学 習にお け る難 民 問 題ほ,
単な る地 域の事 例 的な事 象と して で は なく, 「 地 域」 (lo c al) にお け る戦 争や紛 争, 環 境 悪 化, 飢 餓が 「 地 球 規 模」 (global) の「 人口移 動」 を生み 出し, 移 動 先 ( 受け入れ先) の 「 地 域」 (lo c al) に影 響を与え る という文 脈の中でと ら えて こそ意 味が あ る。
1.4. 高 校公民 科
1.4.1. 「 現 代 社 会」 「 政 治 経 済」
公 民 科では, 「倫理 」 を除い て, 難 民 問 題は,
「 現 代 社 会」 「 政 治 経 済」 の2 つ の科 目で取り上 げ ら れて い る。
「現 代 社 会
ー」 にお け る難 民 問 題の取り上 げ 方は 教 科 書に よっ て異な っ て いる。 地理 と同 様に, 人 口移 動の項 目で関 連して取 り 扱わ れ た り, 民 主 主 義の原 則と して社 会 参 加や市 民 運 動の中で, 「 外 国 人との共 存 ・ 共 生の た めの政 治
̲」 の課 題と して
扱わ れて い る。 あ るいは, 「 人 権の 国 際 化」 の枠 組みで扱わ れ た り, 第三世 界の 問 題 点と して , 難 民 問 題の背 景に あ る人口爆 発や民 族 紛 争, 環 境 悪 化な ど が取 り 上 げら れ てい る1 2。
政 治 経 済におい ても, 難 民 問 題の取り上 げ方は,
人 権の国 際 化の観 点, 受け入れ社 会にお け る共 生 を願う社 会 参 加や市 民 活 動の観 点, 開 発 途 上 地 域
の困 難な問 題とい う観 点, 国 際 社 会の課 題, 国 際 協 力の観 点か ら な ど, 大き く わ けて 4 つ に分か れ
る13。
1.4.2. 公 民 科で の取り上 げ 万 一 世 界の現 状理解,
紛 争 解 決の行 為理解と社 会 参 加の態 度 育 成 公 民 科 教 科 書を概 観し た か ぎりで は, 難 民 問 題
に関 する政 治 経 済 的な内 容が社 会 科と して 初めて
網 羅 的に取 り 上 げら れ ている。 し か し, 各 教 科 書
レベ ル で見る と断 片 的で あ る。 唯 一 , 清 水 書 院
『新 政 治 経 済』 ( 平 成9 年 版) が, さ ま ぎ ま な観 点 を1 つ の教 科 書に盛り込んで い る, し か し そ れ と て, 単 元と してみ れ ば別 個になっ てい る。
公 民 科は, 生 徒の所 属 する社 会の政 治 的, 経 済 的 諸 制 度や機 能の理解を通して, 生 徒に当 該 社 会
の 一 員と な り社 会を創 造して いく た めの公 民 的 資 質 ( 能 力と態 度や関 心) を 育 成 すること を目 的と し たもの であ る。 その よ う な目 標に か ん が み れ ば,
難 民 問 題を取り上 げる場 合, 教 科 書にあ る よ う に さ ま ぎ ま な観 点か ら接 近で き る が, 難 民 問 題の背 景に あ る世界の現 状に対 する 理解や紛 争 解 決に取 り組む た めの法 的, 政 治 的 行 為の理解が重 要であ る。 と同 時に, 公 民 的 資 質の観 点か ら, 地 域に お け る受け入れ と共 生 ( 社 会 参 加) を め ぎす 態 度を 育て ること が望ま しい。 こ の こ と は, 社 会 科が本 来 持っ て いる総 合 的 観 点の必 要 性を教えて いる。
1.5. 社 会 科 教 科 書 分 析の結 論?総 合 的 単元 と し て の難 民 問 題
以 上の分 析か ら言え ること は 3 点あ る。
難 民 問 題は! 1) 高 校の公 民 科に おい て取り上 げること が内 容 的にも 適 切であ る が, その取り上 げ方は総 合 的であ ること。
し
か し な が ら, 2) チ レ ビやメディ アが伝え る紛 争や難 民 (の子どもた ち) の状 況は, 小 学 校か らの難 民 問 題の学 習を も根 拠あ る もの に して い る。 し た が って, 3) 小 ・ 中 学 校の 「 総 合 的な学 習の時 間」 の単 元 化と して
も 求め ら れて いる。
2 . イ
ギ
リス の テキストの場 合
2.1. イギリスの事 情と教 師 用テ キス ト ( 資 料 集 ・ 活 動 事 例 集)
社 会 科の 授 業と して難 民 問 題の 「 総 合 的 単 元」
化が求め ら れて い る が, 日本ではこ のよ う な試み は私 見の限りで は見つ け ること がで き ない。 イ ギ リス (U.K .) では, 歴 史 的にも 難 民 を受け入れ,
ま た現 在も, ロ ン ドン の多 くの学 校で は難 民の子 ど も た ち が学んで いる。 さ らに, ワー ル ド スタ ディ ー
ズ や開 発 教 育の伝 統が あ って, マ イノリテ ィ のた めの教 育や反 人 種 差 別の教 育が み ら れ る。 こう し た背 景か ら, 難 民 問 題 を 扱っ た 2 つ の教 師 用テキ
スト が最 近, 出 版さ れ た。
・ J ill Rut te r
,Refuge e s A R e s o u r c eBo okfo r PTli‑
m a ry Scho ols, Refuge e Co u n cil, Lo ndo n ,1 9 9 8
・ Jill R ut te r, Refuge e s We Left Be c a u s e W e Had to,A n E du c atio n al Bo okfo r1 4 J 8 Ye a rol ds,Ref
uge e Co u n cil,Lo ndo n ,Se c o nd E ditio n 1 9 9 6 いずれ も同じ著 者だ が, 前 者は小 学 校 用 ( 以 下
『Refuge e s 小 学 校 版』 と記 す), 後 者は中 等 学 校 用であ る ( 以 下 『Refuge e s 中 等 学 校 版』と記 す)。
難 民 問 題の単 元 化の事 例と して適 切なので, これ ら を分 析してみ る。
2.2. テキス ト のね らいと 留 意 点
難 民 問 題を扱う う え で の ね らい ( 目 的) が Te a che r
‑
s N ote s1 4 に記さ れて い る。 2 つ に共 通 す るの は,
1) 人 権や公 正, アイ デン ティティ, ニ ュ ‑ カマ ‑
といっ た概 念を明 確にすること,
2) 他 国との つな が りを理解 すること
3) 難 民が, 新しい社 会で何を必 要と して いる か に つ い て理解が できること
4) 難 民に対して, 地 域や国 家, 世 界の レベ ルに おい て, 共 感し支 援できる よ う に な ること 5) 難 民と は自 分た ち と同じ人 間であ る が, 極 端
な体 験をもっ た人た ちで あ ること を 理解できる
難民 問 題を考え る社 会 科の授業 方 略
こと
6) イ ギ リスという多 文 化 社 会で生 活 する た めの 準 備 ( 態 度) ができること
な ど社 会 科や国 際理解にか か わ る基 本 的な概 念や 態 度 育 成, 共 感や支 援のた めの難 民理解を目 標と して いることであ る。
遠いが見ら れ るの は, 多 文 化 社 会に対 する態 度 化の レベ ル で あ る。 『Refuge e s小 学 校 版』 では,
「 文 化 的 多 様 性に たい して肯 定 的な態 度を養い,
子どもた ち が, 自 分た ちの身 近な ところにあ る偏 見や人 種 差 別に対して立ち向か うこと が でき る よ う にする こと」 と さ れ るの に対し, 『Refug・e e s 中 等 学 校 版』 では, 「 難 民に対 する敵 対 心」 や 「 メ デ ィアや政 治 家によ る蔑 視」 が多 くな っ て いる中 で, メ ディ ア の報 道によ って喚 起さ れ た時 事 的な 関 心を探 求'L、 に発 展さ せ, 反 人 種 差 別と 「 多 民 族 民 主 主 義」 を, 学 校が教えて いくことの重 要 性を 強 調して い る点で あ る。
ま た, さすが に実 践に裏 付け れ ら れて い る と思 わ せ るの は, 教 室に難 民の子どもがいる場 合の留 意 点であ る。
1) 難 民の子どもた ち は, その避 難の中で家 族の 死や逮 捕な どの恐 怖 体 験に よ る'L、の傷 (トラウ
マ) をもっ て いる。 し た が っ て安 易な議 論を教 室で し て はい け ない。
2) 難 民の子どもた ち は, 母 国や故 郷の こと を話 し た が ら ない. 母Egに残し た家 族の こと や イ ギ リス で の 自 分の安 全や母 国 への帰 還に支 障が で る かもし れ ないと思っ てい る か らで あ る。
3) 難 民の子どもた ち は, 出 身 国に対 する偏 見や ステ レオ タ イ プ ( た と え ば ソ マ リアな ら飢 餓と 戦 争の 国とい っ も 見ら れ ること) を嫌う.
2.3. 学 習の内 容と方 法
難 民 問 題は, その受け入れをめ ぐっ て は国 内に 賛 否 両 論が あ る論 争 的 課 題で あ り, ま た教 室で取 り上げ る場 合 多くの配 慮がいる課 題であ る。 こ の こと を踏 まえ た う えで, 2 つ の テ キスト は, その
「ね らい」 を 達 成 する た めに, どの よ う な学 習 内 容と方 法を用 意し てい るの で あ ろ う か。
下に, 『Refuge e s 小 学 校 版』の 内容を示し た が,
その特 徴は 5 つ ほ ど あげら れ る。
1) 歴 史の中の難 民を取り上 げ, 難 民が イ ギ リス 社 会に大き な貢 献を してき たこと を取り上 げて
い る。
2) 難 民が迫 害や紛 争か ら難を逃れ, 住み慣れ た 土 地を離れ, 安 全を求めて他 国にや っ て来る と いう体 験 的プ ロ セ ス にそ っ て, 事 例を取り上げ て い る。
3) 受け入れ や定 住を めぐる支 援や自 分た ち が で きる取り組み を取り上 げている。
4) 多 様な出 身 地を持つ 難 民の豊 富な証 言 ・ 体 験 談を収 録し, その事 例に そ って 当 該 地 域の文 化
や紛 争の背 景と な る情 報を提 供して い る。
5) そ れ は, 難 民 一 般 への ス テ レオ タ イ プ化 を 防 ぎ, 多 文 化 社 会に対 する情 報 提 供に なっ て い るo
『Refugee s小 学 校 版』の内容 ( (A) は活 動 事 例, [Ⅰ] は 知 識・ 情 報, 〔T〕 は証 言 ・体 験 談の こ と)
第1 章 序
1.移 動 する こ と(A), 2.家 族の木 (A), 3. な ぜ人々 は 移 動 するのか? (A), 4.難 民は誰の こ と? [I], 5.世 界 の難 民 [Ⅰ], 6.こ とば探 し (A), 7,Sado の話 (ソ マリ ア 難 民) 〔T〕, 8.M a n u elの話 (チ リ難 民) 〔T〕, 9.E lm e rの
請 (コロ ンビア難 民) 〔T〕, 1 0.Re n o v atの話 (ブル ンジ 難 民) 〔T〕, l l.難 民の子どもた ちの謡 (A)
第2章 歴 史の中の難 民
1.隣 人のこと (A), 2.聖 典の な かの難 民 [Ⅰ], 3.聖 書の な かの難 民の話 (A), 4. イ ギ リス史1 1 0 0年 ‑1 9 7 0年の な かの難 民 [Ⅰ], 5.年 表づく り (A), 6.Jo s eの話 (ス ペ イン難 民) 〔T〕, 7.Ro n Bake r 教 授 〔T〕, 8.有 名な難 民
(A)
第3章 危 機 か らの脱 出
1.心の傷に共 感 する(A), 2.恐 怖と脱 出 (A), 3.出 身 国 を調べる(A), 4.W aliの話 (アフガン難 民) 〔T〕, 5.ア フガ ニス タン [Ⅰ], 6.ア フガン の食べ物の作 り 方 を 習 う (A), 7.De ng Yaiの話 (ス ー ダン難 民) 〔T〕, 8.ス ー ダ
ン [Ⅰ], 9.ス ー ダン の少 年た ちの逃 避 行 [Ⅰ], 1 0. ス ー ダ
ン の少 年たちの逃 避 行につ いての新 聞 記 事 を 書 く (A),
l l.わたしたちのく ら しの中の対 立 (A), 1 2.さ ま ぎ まな 対 立 (A), 1 3.Rajmo nda の話 (アル バニア難 民) 〔T〕,
1 4.アルバニア難 民 [Ⅰ], 1 5.アルバニアの数の数え方 [Ⅰ],
1 6.Jo s efの話 (スロバ キ アのロ マ難 民) 〔T〕, 1 7.ヨ ーロ ッ パのロ マ ( 「ジ プシ ー」) [Ⅰ], 1 8.ロマ の言 葉と インドの
言 葉 を 比べる(A), 1 9.キャラバン の絵 模 様 を 書 く (A),
2 0.ちがいが難 民 を生 む (A) 第4章 安 全 を 求 めて
1.持ち出 す もの, 残 して おく もの(A), 2.Arjun の話 (スリ ランカのタ ミ ー ル難 民) 〔T〕, 3.スリ ランカ[Ⅰ], 4.
老 人と象 (タ ミー ルの民 話) [Ⅰ], 5.Feys al の話 (ソ マリ ア難 民) 〔T〕, 6.ソマリ ア及びソマ リア共 和 国 [Ⅰ], 7.ソ マ1) アの遊 牧 民 [I], 8安 全への道のり ( ゲー ム) (A) 第5章 新 しい国で必 要 とす る もの
1.難 民が必 要とするもの (A), 2.宜 しい国に い る難 民 [Ⅰ],
3.難 民キャ ンプ (A), 4.難 民 を 支 援 す する組 織 [Ⅰ], 5.
難 民 を支 援 する組 織 を 調 査 する(A), 6.豊か な国にいる 難民 [Ⅰ], 7.ヨ ーロッ パに住ん でいる難 民 [Ⅰ], 8.ヨ ー ロッ パの地 図 (A), 9.スウェ
ー デンに住 む Quang Bu主(ベト