『名語記』所収の音象徴語小見
著者 平 弥悠紀
雑誌名 同志社国文学
号 41
ページ 305‑313
発行年 1994‑11
権利 同志社大学国文学会
URL http://doi.org/10.14988/pa.2017.0000005135
﹃名語記﹄所収の音象徴語小見
平
ム小 改山 己己ノ イ一 糸はじめに
鎌倉期の語源辞書﹃名語記﹄︵経尊著︑文永五︹二一六八︺年初
稿本六帖︑建治元︹二一七五︺年増補本十帖完成︶には当時の俗語
が多量に収められており︑音象徴語についても︑岡田希雄氏は︑
﹁鎌倉期の語源辞書名語記十帖に就いて 上・中・下﹂一﹃國語・國
文﹄昭和十︹一九三五一年︑十;十二月︶の中で︑現代語と異なる 一1︶多くの珍しい用例を紹介しておられる︒又︑鈴木雅子氏は︑音象徴
語の類型の歴史的な推移を調べるにあたって︑﹃名語記﹄の例も考
察の対象に加えておられるのであるが︑本稿では﹃名語記﹄所収の
音象徴語について︑更に詳しく調査し︑﹃日葡辞書﹄とも比較して
みたいと思う︒
﹃名語記﹄所収の音象徴語小見
二 一般語と区別の難しい語
﹃名語記﹄は色葉分類語源辞書で︑第一帖は失われていたものの︑
第二帖︵不完全︶には一字名語︑第三︵不完全︶・四・五・六帖
︵不完全︶には二字名語︑第七・八帖には三字名語︑第九帖には四
字名語︑第十帖には五字名語を載せ︑墨付総数で八百三十三丁にも
及んでいる︒今回の調査では︑田山方南校閲・北野克写﹃名語記﹄
︵昭和五八︹一九八三︺年︑勉誠社︶を使用するが︑残念なことに
昭和二十年の空襲で焼失したため︑第七帖︵百三十六丁︶が欠けて
いるので︑七百丁弱になる︒第七帖については︑岡田氏が前掲の論
文の中に引用されたものを使用させていただく︒
以下︑本稿では︑ −@は第何帖かを︑その下の数字は何丁かを
表すことにする︒第七帖は︑勉誠杜発行の﹃名語記﹄でのぺージを
三〇五
﹃名語記﹄所収の音象徴語小見
示す︒ 音象徴語について調べていくとき︑いつも問題となることは︑一
般語と考えるべきか音象徴語と考えるべきか判断の難しい語がいく
つか存在することである︒現代語でも︑﹁うきうきと︑おずおずと︑
しみじみと⁝⁝﹂などは︑どこに境界線を引くかで︑音象徴語に含
めるかどうかが変わってくると思う︒以前︑﹃日葡辞書﹄と﹃和英 ︵2︶語林集成﹄について調べたとき︑認定の基準を示したが︑語源にと
らわれすぎて︑音象徴語に含めてよいものもいくっかはずしてしま
ったような気がする︒かといって︑﹁と﹂を伴って用いられ︑情態
の副詞として機能する畳語形式の語はすべて含めてよいというもの
でもない︒特に︑古語については︑当時の人々がその語をどうとら
えていたか︑即ち︑音感を重視していたのか意味を重視していたの
かを探ることは︑非常に難しいと思う︒
次に︑いくっか問題になるものを挙げてみることにする︒
現代語でも︑﹁なみなみ︑こなごな⁝⁝﹂のように名詞の畳語形 ︵3︶式が副詞として機能するが︑﹃名語記﹄の中にも同様の例がある︒
@91 問海ニスム エヒ如何答エヒハ海老トカケリ イテハリノ
反エヒ一イラくト一一ツノ︑アリ一手一ツケ一出針ノ反也
︵ は筆者による︒︶
黒次物イフヲクセくトイフトイヘル如何カスシケカスヘ
三〇六ソノ反
寮次詞ノコテメクコテく如何コレ一アマリコトヨキケ
シキヲイフ也 カヘツチヲコテニテヌリツクルヤウニトイフ義
也
@8︒次スルコト一ツメくトイヘル詞如何コノタルミテノ反ノ
心同シ︵ 33参照︒︶
@・問衣裳ノ中一入一ワタ如何答ワタ一綿也︑ワタくトア
ル一イヘル一ヤハくトアル一イヘル也
@4次コマカナル物ノ先ヲワラくトアルトイヘルワラ如何
コレ一藁ノ様一アヒニタレ一ワラくト云也又警ヲワラ
くトイヘル義一アルヘシワカテハノ反
本書には︑むやみやたらに︑語源を解釈しようとする特色があり︑
反切を用いて音を説明している部分でさえ︑語源に結び付けようと ︵4︶しており︑明らかにこじっけとしか思えないものも多く含まれてい
るので︑記述されたものをそのまますぐに信用する訳にはいかない
が︑﹁いら︵刺︶ーいらいら1−とげがたくさんある様子﹂︑﹁癖1く
せくせ11難癖をつけたり︑意地悪く言う様﹂︑﹁こて︵饅︶ーこてこ
て1−壁土を塗るように︑濃く厚く塗る様子﹂︑﹁爪ーつめつめH爪先
でつねること﹂︑﹁綿ーわたわた11綿のように柔らかい様﹂︑は妥当
だと思える︒しかし︑﹁藁−わらわら﹂はどうであろうか︒
動詞の畳語形式の語にも︑次のようなものがある︒
茅次目ノウルく如何小見ノナカム一スル時一目ノウルくト
ナリテ涙ノウカフ也有涙ミミ歎⁝⁝
目に涙の浮かんだ状態を﹁目のうるうる﹂という言い方をするが︑
﹁うるうる﹂は︑意味的には﹁ 37 ウルホフ﹂との関連性が考え
られる︒擬態語として扱ってよいだろうか︒
又︑現代語では︑﹁ぬるぬる︑ぬめぬめ﹂は﹁粘りがあってかつ
滑る状態﹂︑﹁ねばねば︑ねちねち︑ねとねと﹂は﹁粘り気のある状
態﹂を表す語である︒﹁ぬめぬめ﹂は﹁ぬめる︵滑︶﹂︑﹁ねばねば﹂
は﹁粘る︑粘い﹂との関係が考えられるが︑これら一連の語にっい
ては︑語源よりも︑むしろ︑な行音のもつ粘着性という音感の方が
強く感じられるようにも思える︒これらの語は︑現代語では擬態語
として扱ってよいと思う︒茗語記一の中にも︑﹁霊ニタく
一潤澤ヲニタトイヘル歎一一︑﹁竈ニヤく一ネハキ物一一︑﹁霊
ヌ︑一ヌ・トス一ル一一︑﹁費ヌメく一ヌメル⁝−ヌメ一ナメラ
カナリトイヘル滑ノ字ノヨミノハシメ歎一一︑﹁@脆ネチく一ヲソク
アユム一一︑﹁茅ネハく一ノリノ様ニネハく一アル義歎一一とい
う語が見られる︒これらも現代語と同様に扱ってよいだろうか︒
﹁霊タホく一タホくタホヤカノタホ如何一一︑﹁勇ニ
キく一ニキくニキヤカトイ一ルー−一︑@8ニキハフ一の
﹃名語記﹄所収の音象徴語小見 ような語については︑﹁タホく一︑﹁ニキく一から﹁タホヤカ一︑﹁ニキヤカ︑ニキハフ﹂ができたのか︑その逆なのか︑よくわからない︒
﹁冨.竃6肌フラく一︑﹁蟹ユルく一に対して︑
﹁茅フラリく一︑﹁需ユルリく一のように︑﹁二拍語基十
リ﹂の重複形がある︒﹁ABリ﹂︑﹁ABリABリ﹂は︑中古から用
いられるようになった︑擬音語・擬態語のタイプである︒このよう
に︑形態の変化した﹁フラリく一︑﹁ユルリく一は︑擬態語とし
てよいだろう︒
三 音象徴語一覧表
﹃名語記﹄の中にでてくる音象徴語をまとめると︑次の一覧表の
ようになる︒前節で︑問題のある語について述べたが︑それらは︑
表中の用例の欄の下段に示した︒
現代語の場合︑﹁子音では︑9zdbのような濁音は︑鈍いもの︑
重いもの︑大きいもの︑汚いものを表し︑一方︑清音は︑鋭いもの︑
軽いもの︑小さいもの︑美しいものを表す︒コロコロとゴロゴロ︑
キラキラとギラギラ︑サラサラとザラザラの対立などにそれが見ら
︵5︶れる︒﹂と言われているが︑﹃名語記﹄にも同様の記述のあることは
興味深い︒
三〇七
﹃名語記﹄所収の音象徴語小見
@次車ヲヤルヲトノカラくトキコユルカラ如何大キナル物 葦 ノヲトハ宗キコユ チヒサキ物ノヲトハスミテキコユ
︵葦は筆者による︒︶ ︵6︶ 山口仲美氏は︑中古の象徴詞について︑清濁や︑援.促.長音は
ある程度推定できると述べておられるが︑個々の語にっいての詳し
い検討は今後の課題とし︑今回は︑表記されたままの形によって分
類する︒ 又︑﹁サ・﹂は︑
@26次風ノサ・トフク如何奴ミヲイフニヤ音ノサ︑トキコユル
也⁝⁝
@26次水ノナカル・ヲトノサ︑如何︑
@90 問 小鳥ノ名ニサ・イ如何⁝⁝ナクコヱノサ︑トキコユレハサ︑
也⁝⁝
のように︑風の音︑水の流れる音︑小鳥の鳴く声を表すが︑一例と
して挙げている︒
拍
1
形 態A
AA用例数
n
8
一−一1←1 9
用 例ア・カ・キ・サ・シ・ソ・チ・
ツ・ハ・フ・ワ
ササ・スス・ツツ.ヌヌ.ノ
ノ・ヒヒ・フフ・ワワ チチ 三〇八
ABカシ・カフ・ガハ・キバ・ギ
ンヨ
イ・クサ・クバ・クブ・グツ・スイ?
ケイ・コソ・サツ・サハ・シスホ
ト・シハ・シホ・ジカ・スカ.スツ・チイ・ツハニアイ・テ
−ク・トブ・ハア・ハク・ハサ・
−ハタ・ヒシ・ヒヤ・フタ.フ
・ツ・フハ・ミジ・ムカ・ムズ
352一55
・︵Aウ︶ カウ・クワウ.コウ.
・シウ・チウ・チャウ・
ネウ・ヒウ・フウ.リ
ウ・ワウ
1 . ■ 1 一 1 1 ■ 1 1 . . 1 1 1 1
・︵Aン︶チム・ツム・ヅム
1 1 一 1 ︐ ■ − 1 1 1 − − 1 ︐ 1 1 1 I1 ︐ ■ 1 1 ︐ l 1 1 I ■ − 1 ■ 1 1 1 ■ 1 1︵Aラ︶サラ・タラ
1 ■ 1 ■ 1 1 1 一 1 1 1 1 −
・︵A口︶ ソロ
3
AAA1
・一1■︑ ︑ ︑ノ ノ ノAAB︵AAラ︶ ツツラシシラ
1 1− 11I l−■ ■ 11 1 ■− 11 −1 一− − 11 1 11
1
3一4 ・︵AA口︶ススロソソロ
ABBシトト
1 1 1 1 − 1 一 I I − − ■ 1 1 ・ 1 ■ 1
−
4 1一5
︵Aララ︶キララ.シララ︐■■■ ■.1−111■−1.・・1111111−1..11一.・1
・
.︵Aロロ︶ヒロロ・ホロロ ABCカイヨ
1 1 1 ■ ■ 1 1 . I l 1 1 1 − 1 1 1 I l 1 1︵ABラ︶ キハラ・クサラ.ウネラ・キヨラ クタラ・コカラ・スマラ・バサラ
−
シトラヒソラ・ミツラ
︵Aリラ︶ クリラ
︵Aロラ︶
メロラ32〇一31一3︵ABリ︶キイリ・サフリ・トスカリ
フリ
︵Aウリ︶ シウリ
︵Aラリ︶ クラリ・テラ
リ・ユラリ
︵Aルリ︶ クルリ・スルリ
︵Aレリ︶ スレリ
︵Aロリ︶キロリ・ヘロリケロリ・メロリ
︵AB口︶ カケロ・コケロ・シ
トロ・モトロ
︵ABン︶ コツム?・
4
AAAAシシシシ?ABABアフアフ・ウサウサ・オコオイライラ
コ・カクカク・カヒカヒ・カフエサエサ
カフ・ヵヤカヤ・ガイガイ・キカツカツ
イキイ・キカキカ・キシキシ・キハキハキタキタ・キチキチ・キフキキヒキヒ
フ・ギタギタ・クイクイ・クサキヤキヤ
クサ・クシクシ・クユクユ・グクセクセ
ハグハ・ケイケイ・ケシケシ・ケサケサケホケホ・コカコカ・コクコケソケソ
ク・コシコシ・コセコセ・コタコテコテ
コタ・コチコチ・コフコフ・コサイサイホコホ・サクサク・サハサハ・サメサメ
サフサフ・サヤサヤ・シクシンツシツ
﹃名語記﹄所収の音象徴語小見 11153 一4一cU ク・スハスハ・セイセイ・ソイソイ・ソフソフ・タフタフ・チタチタ・ツタツタ・ツフツフ・ニコニコ・ニタニタ・ニヤニヤニ不チネチ・ノエノエ・ヒサヒサ・ヒシヒシ・ヒタヒタ・ヒチヒチ・ヒヨヒヨ・ビクビク・フクフク・フサフサ・フタフタ・フチフチ・フツフツ・フハフハ・ヘエヘエ・ホシホシ・ホタホタ・ホヤホヤ・ミサミサ・ムクムク・ヤチヤチ・ユクユク・︵ユフユフ?︶・ワイワイ・ワコワコ・ワシワシ︵AウAウ︶ ガウガウ・ キウキウ・コウコ ウ・シウシウ・タウ タウ・ホウホウ・ミ ウミウ・リウリウ︵AラAラ︶ カラカラ・ ガラガラ・キラキ ラ・サラサラ・チラ チラ・ツラツラ・ナ ラナラ・ハラハラ・ フラフラ・メラメラ︵AリAリ︶ キリキリ・ クリクリ・コリコ リ・チリチリ・ヒリ ヒリ・フリフリ・ブ
三〇九 シトシトシホシホスカスカスクスクスホスホソヨソヨセカセカタホタホタワタワツケツケツマツマツメツメニキニキニゴニゴヌメヌメ︑イノ︑イノノトノトミソ一一︑ソムサムサメケメケモゲモゲモマモマモヤモヤヤニヤニヤハヤハユサユサユスユスユタユタユハユハ
﹃名語記﹄所収の音象徴語小見
リブリ・ムリムリワタワタ
−1・︵AルAル︶クルクル・ ワチワチ
スルスル・ツルツル・ 不ラネラ
一フルフル・ムルムル
︵AレAレ︶ムラムラ
︵A口A口︶オロオロ・ユラユラ
キロキロ・コロコ
口・ソロソロ・トロウルウル
トロ・ホロホロ・メユルユル
ロメロ・ヨロヨロツレツレ
ノロノロ
ヲロヲロ
ABCB︵AラCラ︶ヒラチラ?
5
ABCDE1
︵ABリDE︶ ヒチリコキ ABCABC6
コカヒコカヒ・ヒヨクヒヨククカナクカナ?一︵ABラABラ︶ウツラウツラ.
ワクラワクラ
111一1︵ABリABリ︶コオリコオリ・
サフリサフリ・
サヤリサヤリ・
シトリシトリ・
スハリスハリ・
ソフリソフリ
1 − l l 1 ■ ・ . 1 − 1 ■ 1 ■ 1 1 ︐ 1 1 1 ■ 1︵AラリAラリ︶ フラリフラリ
︵AルリAルリ︶ ユルリユルリ
ABCDBC︵AB口DB口︶シトロモトロ? 三一〇
ABABCD︵AラAラCD︶サラサラリヤ?
そABAB︵ABAB+CAラ︶
の十CABカラカラコカラ
他一ABAB︵ABAB+Cロロ︶
十CDDケイケイホロロ
ABAB︵AンAン十CラCラ︶
十CDCDチンチンカラカラ
?・ヘコソく?ヘソコソく?マネカサくヒヨロリ?
422
70亙
?の付いた語は用例数に含まない︒
四 音象徴語から見た
﹃名語記﹄の歴史的な位置音象徴語は時代によって︑用いられる形態に違いのあることが︑
︵7︶鈴木雅子氏の綿密な調査によって明らかにされている︒本稿﹁三﹂
の表に基づいて︑﹃名語記﹄に現れる形態と﹃日葡辞書﹄︵注2参
照︶を中心にした中世のもの︑更に︑中古のものとを比較して︑考
察を加えてみたいと思う︒中古と中世の代表的な型については︑鈴 ︵8︶木氏の論文による︒そして︑中古については山口仲美氏の調査され
たものを︑中世のものにには﹃日葡辞書﹄の型を補った︒*は︑鈴
木氏が論文の中で付されたもので︑その時代に見られるようになっ
た新しい型である︒︵ ︶は﹃日葡辞書﹄
いた︒ ︿中古V ﹃名語記﹄
*A A
・・ウ ■? ︑AウAウ■い
Aン?・
同目︹オなフ︺
AA AA
因︹ハハハ一
︹〆・
AAB︹ツツラ︺
AB AB
ABB ⁝︹キ一〃乙
ABAB ABAB
AB口 AB口
ABラABラ ABラABラ
﹃名語記﹄所収の音象徴語小見 にないタイプに付けてお
︿中世﹀
−﹃日葡辞書﹄を中心にI A ︵Aウ︶*A− ︵AウAウ︶*A−A−*Aン*︵Aーン︶*AンAン*Aツ・・ツ・ツ︹鰐し AA AAツ︹チャチャッ︺*︵AAAA︶*AツA*AンA AB ABB︹キリリ︺*︵ABBABB︶ ABAB︵ABラ︶
AB口
︵ABラABラ︶
AB口含口 含口・・口︹ト︸口︺
*ABリ ABリ ABリ
*ABリABリ ABリABリ ABリABリ
? *ABン
*AツB
*AツBAツB
*︵AツBラ︶
*AツBリ
*AンB
*︵AンBラ︶
*AンBリ
・1・−?︹ト帥珂︺
ABC︹カヒヨ︺ ABC︹カイヨ︺
ABCB︹ヒラチラ?︺ *ABCB︹ボンボリ︺
ABCD︹フタカハ︺
ABCン︹ザラリン︺ AABCD 同旧固一ヒヨABBン一チリリン一
ABCABC ABCABC
︹鶉告ど
AABAAB
︑・・リ・・リ︹背刊リ︺
︑・・リ・・リ︹ヒ行リ︺
含︒CB口? ・・口・・口︹シ砧口︺ ︹シトロモトロ?︺ 中古の文献では︑援音の表記は不完全であったが︑﹃名語記﹄で
は︑援音は表記されている︵ほとんどは﹁ム﹂で︑中には﹁ン﹂も
ある︶︒ 三一一
﹃名語記﹄所収の音象徴語小見
34問モノ︑カタハシノチムトハネアカルチム如何答チム
ハツリメク ツリミユ等ノ反也
@78次ツムトタテトヲシフルツム如何タメツルタツマクモ
反セハツムトナル也
@78次五節ノ女房ノヘヲツムトヒリタレハトイヘルコトクサアリ
ソノツム如何 チリメル ツルメルヲ反セハツムトナル也
義ヲ音ニアラハス事例オホキ也
@78次ツムトコエヨトイヘルツム如何トフメクトフマスノ
oo 反ハツムトナル也 トヒコエヨトイヘル心ニアタレリ但し︑﹁む﹂も大部分の援音と同じように﹁ム﹂と表記されている
し︑右の例の反切を見ても﹁ム﹂ではあるが︑語末が﹁む﹂になる
音象徴語は非常に珍しいこと︑又︑﹃日葡辞書﹄には﹁↓O巨暮9
︵手早くする様︶﹂︑﹁s昌︷9︵物事をてきぱきとする様︶﹂という語
があるので︑﹁チン︑ツン︑ヅン﹂ではないかと考えたのであるが︑
更に調べる必要がある︒
﹁AンAン﹂は︑
霧次鳥ノ名ニシ・ウカラ如何コレハカノ鳥ノナク音ノチンく
カラくトキコユルヲシ・ウカラトイヒナセル也ヲハリノ
轟ヲ略シ一チウくカラトハカリイヘルヲシ︑ウカラト一
イヘル也 三二一
一例だけであるが︑﹁ン﹂と表記されている︒
﹁AAA﹂は中古にも﹃日葡辞書﹄にもない型である︒ ︶¢10 風ノハ・ハトフクトイヘルハ・ハ如何︑︑火ノハ︑ハトモユル 5
ー ママ
︵ 如何︑⁝⁝人ノハ・ハトタル如何﹁AAB﹂は︑﹁ツヅラ﹂であれば︑﹁ABラ﹂の形ということに
なる︒ ︶¢97 人ノイフ事ヲキカズシテ︑ツ・ラトアリトイヘル如何︑コレハ
ー4 ︵ツクくラカノ反
﹁AB口CB口﹂は
@岨 問 ミタレタルコトヲシトロトナツク如何︑
@卿 次 シトロ モトロトイヘル モトロ如何⁝.
﹁シトロ﹂と﹁モトロ﹂の問にスペースがあるようで︑﹁シトロモ
トロ﹂のように︑一語として使われていたかどうか疑問である︒
五 結び
﹃名語記﹄には数多くの音象徴語が載せられているが︑形態の面
からは︑中世のものよりも︑むしろ中古のものに近いように見受け
られる︒中世になって新しく現れるものの形態上の大きな特徴は︑
二拍語基に援音や促音の挿入された形であるが︑表記されたそのも
のの形から見る限り︑目新しいものはない︒促音については︑表記
しなかっただけで︑実際にはあったのかもしれない︒本稿﹁三﹂に
挙げた用例﹁ 26 サ・﹂は﹁サッサッ﹂であったかもしれない︒
﹃日葡辞書﹄には︑﹁苫婁撃ガC︒富︒︒箒胃戸﹂がある︒援音について
も︑
27次水ニオチイルヲトノトフトナル如何 00の﹁トブ﹂は﹁トンブ﹂のように発音されていたかもしれない︒清濁の問題になる語と併せて︑今後検討していきたいと思う︒ ︵6︶︵7︶︵8︶ b a ﹁中古象徴詞の語音構造−清濁に問題のある語例を中心に−﹂︵﹃國学學﹄第九十三集︑昭和四十八︹一九七三︺年︶︒ ﹁続中古象徴詞の語音構造−援音・長音・促音に関する問題をふくむ語を中心に−﹂︵﹃共立女子大学短期大学部︵文科︶紀要 第十四号﹄︑昭和四十八︹一九七三︺年一月︶︒
一1︶参照︒
一6一のaの︿表1﹀による︒補注︵1︶﹁6擬声語・擬音語・擬態語L一昭和五十九︹一九八四︺年︑明治
書俸一研究資料日本文室脇調編襯続調一離淋調一一︒
一2一拙稿﹁﹃日葡辞書﹄と﹃和英語林集成﹄に於ける音象徴語﹂一﹃同志
社国文学﹄第四十号︑平成六︹一九九四︺年三月一︒
一3一玉村文郎著﹃日本語教育指導参考書13 語彙の研究と教育一下一﹄
一昭和六十︹一九八五一年︑国立国語研究所︶︒
一4一次のような例は︑無理に語源を説明しようとしたものだと思われる︒
@90次田楽ヵモチタルサ・ラ如何鏡トモ編木トモカケリナル
ヲト一サフくリヤトキコユルヵ反リテサ・ラトナル也
@則問家ノイモノクキヲスイキトナツク如何答トリワクル時スイ ママ トナル故二名トセル也 キハカシノ反ケミノ反 又云 髄莇ノ
音ノスイキン歎 又食テ感歎スル随喜歎
一5一金田一春彦氏﹁擬音語・擬態語概説﹂︵浅野鶴子編﹃擬音語・擬態
語辞典﹄︑昭和五十三︹一九七八︺年︑角川書店︶︒
﹃名語記﹄所収の音象徴語小見三一三