杉板を用いた折り曲げアーチ架構の開発研究 [ PDF
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(2) どちらの部材も板材を櫛状に組み合わせたパーツ ( 以. 形状ⅰ). 下櫛状パーツ ) で構成されている。工場制作された. 4,150. アーチ部材は、運搬後、現場にて構造体を形成する。. 形状ⅱ). 3.1 櫛状パーツ. 櫛状パーツは、外材、内材、床材の 3 組制作する。. 6,790. いずれの場合も設計寸法長に切断した杉材を並べ、通 し材を重ねて木ネジで接合するのみである ( 図3)。 【内材】. 【外材】. 【床材】 通し材(内材) 外材. w1. 4,000. w2. w1. w1. w2. 3,700.5. 3,600. 内材. w2. w(w 1 2) =290.5(320.5) w(w 1 2) =200(200) t=20 t=30. w(w 1 2) =170(200) t=30. 形状ⅲ). 図 3 櫛状パーツの種類と寸法. 3.2 アーチ部材. アーチ部材は、櫛状パーツの外材と内材、通し材 ( 足元 ) を重ねて端部をボルト接合する ( 図 4)。端部 のみ接合しているので、アーチ部材は 4,150mm から. 形状ⅳ) 3,640. 6,790mm まで可動する部材となる。従ってアーチ部 材は , 組み立て後全長 4,150mm、厚 80mm となり、 ボルト接合(φ12). 通し材(足元). 通し材(外材). 外材 内材. 4,000. 通し材(内材). 組み立て前. 図 5 アーチ部材の形状変化. の部材長さ. ン 4,695mm から設計値の 3,640mm まで足元を引寄. (4,000mm). せるのに必要な引張力は、0.85kN であった(図7)。. とほとんど. 3,200mm で載荷を終了したが、試験体の状況から、. 変わらない. まだスパンを狭めることができるように推定される。. 状態で収ま. 曲げ加工中、頂部の内材と外材の接点は、ほとんど移 動せず、安定していた。. る。. 図 4 アーチ部材. 内材に圧縮力が働くた. 3.3 アーチ部材の形状変化と曲げ加工試験. め、通し材 ( 内材 ) と外 ①床材を挿入する. アーチ部材は、アー チ架構を形成するにあ. 合にも関わらず、安定す. たり、図5のような形. ると考えられる。. 状変化を伴う。形状ⅲ) から引張力を加える過 図 6 曲げ加工試験状況. ②床板を接合し、 ワイヤーを取り外す. 程での応力と変形の. 3.3 床材. 床材は、アーチ部材の 復元力へ抵抗するための たが. 関係を曲げ加工実験により求めた(図6)。初期スパ. 箍として働き、最終的な ③アーチ部材の復元力により、床板がかみ合う。 アーチ架構のスパンを決. 1.2. 定する。仮固定の段階で. 1. は設計値より曲げ、アー. 荷重 P(kN). 0.85 0.8 0.6. 3,640. ④内法寸法が設計値の3,640mmとなる. 0.4. 設計値:3640 0 4695. チ部材の復元力により床 材が締め固められ安定す る ( 図 8)。. 0.2 0. 材の接点の位置は、未接. 200 4495. 400 4095. 600 800 1000 4395 3895 3695 変位 (mm) スパンL(mm). 1200 3495. 1400 3295. 3.4 小結. 載荷終了:3200. 1600 3095. ⑤残りの床板を接合する. 図 7 曲げ加工試験結果. 図8 床の取り付け. 33-2. 以上より本構法の特徴 として以下 3 点が挙げ ら れ る。 ① 板 材 を 組 み.
(3) 合わせた単純な櫛状パーツによって構成される。②. 常の木造軸組特有のスリップ型履歴曲線とは異なり、. アーチ部材は、折りたたみ可能であり建設時に折り曲. 水平力が 2 ヶ所で緩やかな勾配となる階段状の曲線. げることで立体化する。意匠的に曲面の空間が得られ. となっている ( 網かけ範囲 )。これは外材に直接加力. るとともに、曲げることで、未接合の頂点が安定する. していることが影響しており、網かけ以外の範囲では. 木材の弾性を生かした架構である。③床材は櫛状パー. アーチ部分の局所的な変位が架構全体の変位より卓越. ツにより自由にスパンの変更ができる。経年変化に. しているためと考えられる。. 伴いアーチ部材をさらに引寄せる必要が生じた場合に. 4.4 考察. は、床板の一部を取り外し床材をスライドさせ再度、. 福岡市における本架構の風荷重は 1.36kN となる. 床板をとりつけることでスパンの変更に追従可能である。. が、このとき見かけの変形角は、頂部引き加力時に. 4 水平加力試験. 1/67rad であった。この値は集中荷重によるものであ. 4.1 試験概要. り、実際に風が及ぼす分布荷重ではこれより小さい値. 風が及ぼす分布荷重を等価な集中荷重に置き換え、. を示すことが予想される。 しかし実建築の適応を考. 加力試験を行なった。押し加力及び引き加力試験では、. えると変形が大きいため、それに追従する仕上げ材の. 油圧式ジャッキにより見付の面積の 1/2 に強制変位. 検討が必要である。また、アーチ頂点部分の挙動は、. を与え、頂部引き加力試験では試験体の頂部にスリン. 2. グベルトを通し、加力冶具と連結させ、17.8°傾けた 油圧ジャッキにより頂部に強制変位を与えた。試験体 4.3 実験結果. 各試験から得られた履歴曲線を図 10- 図 12 に示す。. 水平力(kN). 1.5. の足元はピン支持とする(図9)。. 1 2.0 1.5 1.0. 0.5. 押し加力試験によって得られた履歴曲線 ( 図 10) は通. 0.5 0. 1/500 1/200 1/100. 1/75. 1/50. -0.5. 0 0. 頂点部引き加力試験. 5. 10. 15. 20. 見かけの変位角( 10-3). 図 10 押し加力試験の履歴曲線 -25. 見かけの変位角( 10-3). -20. -15. -10. -5. 0 0. 0.5 0. 1/75. -0.5. -0.5. -1.0 -1.5 -2.0. -1. 水平力(kN). 押し加力試験. 引き加力試験. 1/500 1/200 1/100. -1.5. -2. 図 11 引き加力試験の履歴曲線 -40. -35. -30. 見かけの変位角( 10-3) -25. -20. -15. 10. 5. 0. 0 -0.5 -1. -2 0 -1.0. 1/500 1/100 1/200. -2.0 -3.0 -4.0. 1/75. 1/50. 1/25. 1/20. 水平力(kN). -1.5. -2.5 -3 -3.5 -4. 図 9 試験概要. -4.5. 図 12 頂部引き加力試験の履歴曲線. 33-3.
(4) 押し加力及び引き加力試験とも頂点仕口は頂部はほぼ. りアーチ部材への挿入が容易になるとともに、片側同. 変形していないことが実測により確認できた。アーチ. 士が接するので精度よく取り付けが行なえた。中心部. 頂点部分は架構の変形後も剛であると考えられる。. の床板を床材に取り付け後、アーチ部材に仮固定して. 5 建方試験. いたワイヤーを取り外した結果、アーチ部材は復元力. 5.1 建方実験概要. により外側に開き、床材によりアーチ部材は安定した。. ① 材 料 の カ 5 ト. ② 櫛 状 パ & ツ の 制 作 + 外 材 ・ 内 材 ・ 床 材 1. ③ 櫛 状 パ & ツ の 接 合 + ア & チ 部 材 1. ④ ア & チ 部 材 の 折 り 上 げ. ⑤ ア & チ 部 材 足 元 の 引 き 寄 せ. ⑥ 足 元 の ワ イ ヤ & 固 定. ⑦ 床 材 の 挿 入 ・ 中 央 部 接 合. 実験棟施工. ⑧ 足 元 の ワ イ ヤ & 取 り 外 し. ⑨ 基 礎 施 工. ⑩ 基 礎 へ 固 定. ⑪ 床 板 の 取 り 付 け. ⑫ 完 成. 施工上の要. 床材と基礎と連結後、残りの床板を木ネジで接合した。. 点を確認する ため建方実験 を 行 な っ た。. 図 13 建設プロセス. ⑤. ④. ④. ③. 制作は全て学. ②. ②. 生の手により. ①. ①. 行 な っ た。 試 中庭施工. ⑤. アーチ部材を折り曲げた状態. 験体の奥行き. は 4,000mm である。作業員は主に 4 ∼ 5 名で運搬時. ③ 中央のユニットから 順に引き寄せる. ⑤. など必要に応じて最大 20 名動員した。建設期間は平 成 20 年 11 月 4 日∼ 9 日 (6 日間 ) である。パーツ制. ⑤. 作は学内実験棟で、建方実験は学内中庭にて行なった。. ④ ①. 5.2 櫛上パーツの制作. ③ ②. 櫛状パーツは、寸法長の製材を木ネジにより、通し. 設計値より短い 3,500mmまで曲げる. 材と接合した。このとき、曲げ加工時に発生する曲げ. ④ ③ ② ①. モーメントへの抵抗力を高めるため、曲げ引張側が木 裏となるように部材の向きを揃えた。部材の反りなど. 図 14 アーチ部材の曲げ加工. により材幅に誤差がある場合には、電動鉋で調整した。. 5.5. 小結. また外材において、応力が最も集中する内材との接点. 単純な加工により建方試験は支障なく完了した。. 部分では節を避ける工夫をした。. アーチ部材の頂点部分は、足元の引き寄せ前後で安定. 結果、寸法に遊びがないため材幅の調整、直角の接. し、部分的に曲げ加工が行なえること、床材が箍とし. 合が困難であり、高い施工精度が求められた。しかし、. て働きアーチ部材が安定することが確認できた。寸法. 施工方法が確立されてからは、作業スピードが上がり、. に遊びがあれば、木材の製材誤差を許容でき、速やか. 同じ作業を約半分の所要時間で完了した。. に建方が進むであろう。. 5.3 アーチ部材の建方. 6. まとめ. 建設場所は四方を建物で囲まれており、移動式ク. 本架構の仕口は、曲げることで安定し、外力に対し. レーンを搬入できないため、替わりに周囲の建物を利. ても剛な接合となる。仕口に接合金物や複雑な加工を. 用しチェーンブロックによって建方実験を行った。. 必要としないことが、折りたたみの可能性や施工性の. チェーンブロックで立ち上げ後、曲げる過程では、. 向上に寄与するものと考えられる。また本架構を構成. 左右 2 本ずつチェーンブロックで足元を引き寄せ、. する櫛状パーツは、製材を並べ木ネジで接合する簡素. たが. ワイヤーで仮固定した。アーチ部材の頂点部分の接合. な組み立てであり、解体. は、未接合でありながらも曲げ加工前後で形状が変化. 時には板材の再利用の可. しないため、通し材 ( 内材 ) がねじれることもなく、. 能性もでてくる。実建築. 曲げ加工が行なえた。その際、全体のバランスを考慮. への適用にあたっては、. し、中央部から順に引き寄せた ( 図 14)。. 変形に追従できる仕上げ. 5.4. 床材建方. やアーチ足元の剛性を高. 床 材 の 挿 入 は、 材 幅 200mm の 櫛 状 パ ー ツ で は、 製 材 誤 差 の た め 困 難 で あ っ た。 そ こ で 材 幅 を 片 側. 図 15 架構外観. める検討が必要である。. 【参考文献】. 30mm カットした 170mm とし、互いの櫛状パーツ. (1) 日本建築学会 (2006): 木質構造設計規準・同解説許容応力度・許容耐力設計法. のカット部分が向き合うように修正した。このことよ. (2) 建築物の構造関係技術解説書、全国官報販売共同組合、2007. 33-4.
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