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(1)

平成 23 年度中小企業事業継続計画(BCP)

に関する調査

報告書

2012 年 3 月

(2)

― 目次 ― 1 事業概要... 1 (1) 本事業の背景及び目的... 1 (2) 本事業の内容... 2 2 中小企業の現状分析及び各種課題の整理... 4 (1) 中小企業の現状分析及び各種課題の整理 ... 4 ア BCP 認知状況、策定状況... 4 イ BCP を策定していない理由 ... 5 ウ 業種別の BCP 策定状況... 5 エ 規模別の BCP 策定状況 ... 6 3 中小企業 BCP 策定運用指針(第2版)の作成 ... 8 (1) 全体フレームの検討 ... 8 (2) 中小企業 BCP 策定運用指針(第2版)の作成 ... 10 ア 中小企業 BCP 策定運用指針(第2版)における導入部の作成 ... 10 イ 中小企業 BCP 策定運用指針(第2版)における入門コースの作成... 10 ウ 連携(共助)による事前対策に係るコラムの作成... 13 エ 事例調査の実施 ... 13 4 中小企業への BCP 普及策の検討... 18 (1) 今後の BCP 普及策のあり方... 18 (2) 今後の BCP 普及策の具体的な内容 ... 20 ア BCP の広報 ... 20 イ BCP 策定研修会の開催 ... 22 ウ インセンティブの検討 ... 23 エ BCP のベンチマークの作成・利活用 ... 24 終わりに... 26 参考文献... 27 巻末資料... 28 (1) 現行指針と改訂指針の新旧対照表 ... 29 (2) 中小企業 BCP 策定運用指針(第2版) ... 31 (3) 作業部会構成員名簿 ... 132 (4) 作業部会審議一覧 ... 133 (5) 現地事例調査結果の詳細 ... 134

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1 事業概要

(1)本事業の背景及び目的 平成23 年 3 月 11 日発生した平成 23 年東北地方太平洋沖地震(M9.0、最大震度 7)は、 被害が甚大で、かつ被災地域が広範にわたる等極めて大規模なものであるとともに、地震、 津波、原子力発電施設の事故による複合的なものであり(東北地方太平洋沖地震による災 害及びこれに伴う原子力発電所事故による災害については、「東日本大震災」と呼称。)、 かつ、震災の影響が広く全国に及んでいるという点において、正に未曾有の国難である。 これに関し、政府等において震災からの復興に向けた取組を、総力を挙げて順次進めて いる中、今般の震災を契機として、大規模自然災害等の緊急事態が発生した場合における 企業の事業継続に係る取組の重要性が再認識されている。 中小企業における事業継続の取組については、自社の事業・雇用(生命・財産)を守る 観点から重要であることはもちろんのこと、中小企業が我が国企業数の99.7%、雇用の約 7 割を占めているとともに、サプライチェーンの中核を担う等、我が国の産業の基盤を支 えていること、また、生活必需品の供給者や地域コミュニティを中心として地域の消費や 社会を支えているこという位置付けから、自社に限らず、地域経済ひいては我が国経済全 体の観点からも重要である。 中小企業庁では、中小企業における事業継続計画(BCP)の策定を支援し BCP の普及 促進を図るため、2006 年「中小企業 BCP 策定運用指針」(以下、現行指針という。)を策 定・公表等しており、現在5 年が経過しているが、中小企業の BCP 策定の取組状況につ いては、一部の中小企業に限られていると考えられる一方、東日本大震災の発生に伴い、 BCP に関する関心が高まって来ている。 現行指針は、基本的に地震等あらゆる災害等を想定し、事前に備えておくべき事項等を 取りまとめていることから、今般の震災等により大きくその内容が変わる性格のものでは ないものの、その内容を拡充・充実していくことでより中小企業にとって活用しやすいも のにできると考えられる。 そこで、本事業は、東日本大震災や近年の台風・豪雨災害を始めとする各種災害からの 早期事業復旧・復興の事例等を調査するとともに、調査結果を現行指針へ折り込む等、被 災現場の事例を踏まえた指針等の内容を拡充・充実を図る見直しを行うことで、中小企業 がBCP をより円滑に策定できる環境整備を図ることを目的として実施した。

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(2)本事業の内容 中小企業にとってBCP とは、企業“自ら”が想定する事態や安否確認の方法等を検討 し、策定・運用することで、初めて意味を成すものであると考える。すなわち、こうした 取組を行うことで、突発的な想定外の災害発生等、危機的な状況下においても企業は平時 から培った災害対応に対する瞬発力や応用力(事業継続のための力)を活用し、自社の事 業継続に向けた適切な経営判断・対応が可能となると考えられる。 一方、BCP の策定自体を外部に依頼した場合、平時の社内啓発・徹底のみならず災害 時の事業継続に対する組織的なモチベーションを向上することができない。また、BCP の運用(訓練・見直し)も継続的に取り組めていない場合が多い。このような状況では、 例えBCP を策定したとしても、それが徐々に形骸化するとともに、突発的な想定外の災 害等に対して企業は適切な経営判断・対応を行うことが困難となる。実際に、今般の東日 本大震災においてもBCP は策定していたが、それが形骸化していたため、被害の広域化 や電力不足、人やモノの移動における制約等、様々な想定外の事象の発生により、適切な 経営判断ができずにBCP を機能させることができなかった例もある。 つまり、中小企業が有効なBCP、生きている BCP に取り組むためには「企業が“自ら” BCP を策定していること」、「企業が“自ら”BCP を運用していること」の 2 点を達成す ることが必要不可欠な条件となるのではないかと考える。

中小企業にとって有効なBCPとは

中小企業にとって有効な

中小企業にとって有効な

BCP

BCP

とは

とは

【重要なポイント】 まず、改めて自社を知る・把握する こと 指針等に基づいて検討し、身の丈に 合ったBCPを作ること 【重要なポイント】 まず、改めて自社を知る・把握する こと 指針等に基づいて検討し、身の丈に 合ったBCPを作ること 【重要なポイント】 訓練により災害に対する瞬発力、応 用力を身を持って学ぶこと 策定したBCPをよりレベルアップさせる こと 【重要なポイント】 訓練により災害に対する瞬発力、応 用力を身を持って学ぶこと 策定したBCPをよりレベルアップさせる こと 緊急時における経営判断の瞬発力、応用力を発揮することができる。

すなわち、企業の『事業継続のための力』が向上する。

企業が“自ら”BCPを運用している 企業が“自ら”BCPを運用している 企業が“自ら”BCPを策定している 企業が“自ら”BCPを策定している 図表 1 中小企業にとって有効な BCP

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しかしながら、中小企業にはBCP を策定・運用するためのノウハウがない、人的な制 約がある等、BCP の策定・運用に対する課題や問題点があり、これらが要因となって多 くの中小企業は有効なBCP に取り組めていないのが実情である。 こうした背景を踏まえ、本事業では、中小企業がBCP を自らの力でより容易に策定・ 運用できる環境を整備するために、学識経験者、損保会社・コンサルタント、政府系金融 機関、商工団体を構成員とした「中小企業BCP 策定運用指針等見直しに係る作業部会」 を設け、BCP 策定に関して、現在の中小企業が抱える課題や問題点を整理した上で、BCP の基本的な検討項目・運用の流れを取りまとめた現行指針をベースとして、中小企業BCP 策定運用指針(第2版)(以下、改訂指針という。)を作成した。さらに、改訂指針の活用 方法等を含めた中小企業へのBCP 普及策の検討を行った。 本報告書は、以降各項目について、「中小企業BCP 策定運用指針等見直しに係る作業部 会」において具体的に検討した内容をとりまとめたものである。

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2 中小企業の現状分析及び各種課題の整理

(1)中小企業の現状分析及び各種課題の整理 改訂指針の作成及びBCP 普及策の検討を効果的に実施するために、まずは中小企業が BCP への取組に対して抱えている課題や問題点等を明らかにした。 具体的には、公表されている中小企業のBCP への取組等に関する調査結果を基に、中 小企業の BCP の認知状況や策定状況等を把握した上で、現在の中小企業が BCP への取 組に関して抱えている課題や問題点等に関する分析を行った。その結果を以下に示す。 ア BCP 認知状況、策定状況 BCPを知っていた が、策定していな かった, 29.1% 分からない, 14.7% BCPを知らなかっ た, 49.7% BCPを策定してい た, 6.5% 中小企業 (n=9,861) 出所:帝国データバンク[2011]「特別企画:BCP(事業継続計画)についての企業の意識調査」 P.3 図表 2 BCP の認知状況、策定状況 BCP を策定している中小企業は一部の企業に限られている(図表 2) 約 3 割の企業が BCP を知っていたが、策定していない (図表 2) 過半数の中小企業は BCP を認知していない (図表 2)

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イ BCP を策定していない理由 中小企業 (n=2,865) 出所:帝国データバンク[2011]「特別企画:BCP(事業継続計画)についての企業の意識調査」 P.4 を基にNKSJリスクマネジメント作成 21.6% 6.9% 26.3% 33.1% 35.3% 42.1% 0.0% 10.0% 20.0% 30.0% 40.0% ノウハウがない 自社には不要 人手が足りない 時間がない コストがかかる その他 (策定方法がわからない) 図表 3 BCP を策定していない理由 ウ 業種別のBCP 策定状況 大企業、中堅企業含む (n=661) 28.6% 7.3% 23.8% 10.0% 10.7% 6.3% 0.0% 26.3% 0.0% 10.0% 20.0% 30.0% 製造業 サービス業 小売業 卸売業 建設業 港湾・運輸・倉庫業 金融・保険・不動産業 その他 中小企業が BCP を策定していない理由として、「ノウハウがない」、「自社には不要」、 「人手が足りない」、「時間がない」を挙げている中小企業が多い (図表 3) 中小企業の BCP 策定状況は、業種によって偏りが見られる (図表 4)

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エ 規模別のBCP 策定状況 中小企業 (n=441) 出所:静岡県[2011]「中小企業のBCP策定状況に関するアンケート調査」を基にNKSJリスクマネジメント作成 3.9% 9.2% 8.2% 9.6% 1.9% 3.1% 4.1% 13.9% 11.3% 3.9% 7.7% 16.5% 0.0% 10.0% 20.0% 30.0% 40.0% 1-19人  20-49人 50-99人 100人以上 BCPを策定済み BCPを策定中 防災計画の一部として、BCPを織り込んでいる 大企業、中堅企業含む (n=661) 0.0% 3.3% 2.2% 13.9% 11.3% 8.3% 1.7% 12.6% 0.0% 10.0% 20.0% 1-9人  10-49人 50-99人 100人以上 既に策定している 策定中である 出所:宮城県[2008]「宮城県内企業のBCP策定への取組に関するアンケート調査」P.8を基にNKSJリスクマネジメント作成 図表 5 企業規模別の BCP 策定状況 規模(従業員数)が小さい企業ほど、BCP の策定に取り組めていない (図表 5)

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こうした現状分析により把握された中小企業のBCP 策定・運用に関する課題が、以下 の7 つである。 ⑤中小企業がBCPを認知していない ⑥中小企業がBCP策定にインセンティブを得られない ①小規模企業ほどBCP策定に取り組めていない ②業種によりBCP策定状況に偏りがある ③中小企業にBCP策定のノウハウがない ④中小企業にBCP策定に割けるマンパワーがない 現状分析により把握された課題 BCP普及策の実施が必要ではない か BCP普及策の実施が必要ではない か ⑦策定したBCPの訓練・見直しを行っていない 中小企業BCP策定運用指針の見 直し・改善が必要ではないか 中小企業BCP策定運用指針の見 直し・改善が必要ではないか 3.中小企業BCP策定運用指針 (第2版)の作成 4.中小企業へのBCP普及策の検討 図表 6 現状分析により把握された課題 上図のとおり、現状分析により把握された課題は、現行指針の見直し・改善として解決 すべき課題、BCP 普及策の実施により解決すべき課題、若しくはその両者で解決すべき 課題の3 つに大別される。 本事業では、上記の各課題を解決するために、次章以降の「3.中小企業 BCP 策定運用 指針(第2版)の作成」及び「4.中小企業への BCP 普及策の検討」を実施した。

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3 中小企業 BCP 策定運用指針(第2版)の作成

(1)全体フレームの検討 改訂指針の作成に当たり、まずは現行指針の3 つのコース(基本、中級、上級)の位置 付けを整理した上で、中小企業のBCP への取組の課題を解決するために指針のあるべき 姿について検討を行った。 その結果、現行指針は、BCP 策定・運用のノウハウについて網羅的に解説されている 一方、導入を推進するうえでの改善点が指摘された(図表7)。 ⑤中小企業がBCPを認知していない ①小規模企業ほどBCP策定に取り組めていない ②業種によりBCP策定状況に偏りがある ③中小企業にBCP策定のノウハウがない ④中小企業にBCP策定に割けるマンパワーがない 現状分析により把握された課題 指針の導入部をより中小企業が関心を持つ内容に 修正する必要があるのではないか 小規模企業の経営の実態を踏まえ、より簡易な解説 が必要ではないか 様々な業種の企業がBCPの具体的なイメージを持て る要素を組み込む必要があるのではないか BCP策定のノウハウを、より少ないマンパワーで学 ぶことができる解説が必要ではないか 現行指針の改善点 図表 7 現行指針の改善点 これを踏まえ、本事業では、現行指針の導入部1において中小企業におけるBCP 策定・ 運用の位置づけをより明確化するとともに、中小企業(うち特に小規模企業)における BCP 策定・運用の拡大を図る観点から、新たに 4 つ目のコースとなる「入門コース」を 創設するとともに、より分かり易い解説を行う等、改善を行った。 なお、従来からの3 つのコースについては、原則として現状維持としている。 また、新たに創設した入門コースの指針における位置付け等を整理した(図表8)2 1 本報告書では、現行指針の「1.はじめに」のことを指針の導入部という。

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現行指針 改訂指針 基本コース 中級コース 上級コース ・・・・・・・・・ ・・・・・・・・・ ・・・・・・・・・ ・・・・・・・・・ 事業継続計画 初版 ・・・・・・・・・ ・・・・・・・・・ ・・・・・・・・・ ・・・・・・・・・ BCPの対象拡大、 分析深化しながら BCPを運用する ・・・・・・・・・ ・・・・・・・・・ ・・・・・・・・・ ・・・・・・・・・ 事業継続計画 初版 事業継続計画 改訂2版 新規に追加 入門コース 事業継続計画 初版 事業継続計画 改訂2版 事業継続計画 改訂3版

基本コース 中級コース 上級コース ・・・・・・・・・ ・・・・・・・・・ ・・・・・・・・・ ・・・・・・・・・ 事業継続計画 初版 ・・・・・・・・・ ・・・・・・・・・ ・・・・・・・・・ ・・・・・・・・・ BCPの対象拡大、 分析深化しながら BCPを運用する ・・・・・・・・・ ・・・・・・・・・ ・・・・・・・・・ ・・・・・・・・・ 事業継続計画 初版 事業継続計画 改訂2版 事業継続計画 改訂3版

事業継続計画 改訂3版

導入部 導入部 内容を修正 図表 8 現行指針と改訂指針 このように改訂指針では、まず入門コース、基本コース、中級コースのいずれかを選 択してBCP の初版を作成する。そして、入門コースを選択した場合は、策定した BCP 初版に基づき日常的にBCP を運用(定着、見直し)し、自社に合うよう BCP 改訂2 版、改訂3版へと改善するという流れで事業継続への取組を進める。 また、基本コース若しくは中級コースを選択した場合は、上級コースへステップアッ プし、BCP の対象拡大や分析を深化させながら BCP 改訂2版、改訂3版へと改善して いくというものである。

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(2)中小企業 BCP 策定運用指針(第2版)の作成 ア 中小企業BCP 策定運用指針(第2版)における導入部の作成 改訂指針の導入部は、現行指針の導入部をベースに加除修正した。主な修正点は、2 点ある。1 点目は、日々の経営の一環に BCP が位置することを明確にした。これによ り、BCP の策定・運用を特別なものとして考えている中小企業者に対し、BCP が日常 の取組として、より親近感を持てるよう改善が図られるものと考えられる。 また、2 点目は、BCP を策定することにより得られる平時のメリットを追加した。 現行指針では、BCP の策定・運用により、緊急時の対応力が強化されるというメリッ トについては盛り込まれていたが、日々の経営管理を再確認できる等、災害等が発生し ていない平常時から得られるメリットに関しては十分に言及されていなかった。しかし、 中小企業が大きく関心を持つメリットとは、平常時の経営に影響を与えるものであると 考えられる。このため、改訂指針では、導入部にBCP の策定により得られる平常時の メリットも盛り込んだ。これにより中小企業がよりBCP の必要性について理解が深ま ることが期待される。 イ 中小企業BCP 策定運用指針(第2版)における入門コースの作成 入門コースは、現行指針の3 つのコースを参考にしつつ、小規模企業を含めた BCP の初心者に対応するために作成したものである。そこで、入門コースの作成に当たり、 先述した現行指針の改善点を踏まえ、特に以下の3 点を重視した。 小規模企業を含めた初心者でも BCP の策定・運用方法がすぐに理解できるよう、解説 文を極力分かりやすく記載するとともに、図や絵を駆使し視覚的にも理解できるよう工 夫した。 製造業、サービス・小売業、運送業、飲食・宿泊業の 4 業種に関する BCP の記入例を 盛り込み、且つ記入例とあわせて過去の災害時における企業の対応事例を業種別に 盛り込むことで、指針を活用する中小企業者にとって参考となる情報を充実させた。 「入門コース」では、BCP を策定する上で、最低限必要とされる項目の解説や様式のみ を採り入れ、中小企業の必要とするマンパワーが極力少なくなるようにした。 こうして作成した入門コースの目次、イメージ等が以下となる。 なお、改訂した指針の具体的内容については、巻末資料「(2)中小企業 BCP 策定

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入門コースの目次 記載内容 2.平常時における BCP の策定と運用 (入門コース) 入門コースで必要となる様式及び入門コースの 実施方法の解説。 2.1 BCP を策定する (1)BCP の策定手順 (2)BCP の策定 ①基本方針の立案 ②重要商品の検討 ③被害状況の確認 ④事前対策の実施 ⑤緊急時の体制の整備 BCP の策定手順(①基本方針の立案、②重要 商品の検討、③被害状況の確認、④事前対策 の実施、⑤緊急時の体制の整備)の解説及び 各手順における様式類の記入方法の説明。 ※解説を読みながら、同時に様式類に記入することで、 BCP が策定できる形式をとっている。 2.2 BCP を運用する (1)BCP の運用手順 (2)BCP の運用 ①BCP の定着 ②BCP の見直し BCP の運用手順(①BCP の定着、BCP の見直 し)の解説及び各手順における様式類の記入 方法の説明。 ※解説を読みながら、同時に様式類に記入することで、 BCP の運用計画が作成できる形式をとっている。 2.3 BCP 様式類(入門コース) 【様式 1】BCP の基本方針 【様式 2】被害想定 【様式 3】重要商品提供のための対策 【様式 4】緊急時の体制 【様式 5】BCP の運用 【参考 1】新型インフルエンザ(強毒性)で想定 される影響 【参考 2】BCP 掲示板 入門コースにおける BCP の雛形を掲載。 新型インフルエンザ(強毒性)での被害想定を 参考資料として掲載。 商店街等での連携の取組の一つである BCP 掲 示板の雛形を参考資料として掲載。 2.4 BCP 記入例(業種別)及び企業の取組事例 製造業の記入例 サービス・小売業の記入例 運送業の記入例 飲食・宿泊業の記入例 BCP 掲示板の記入例 業種別(製造業、サービス・小売業、運送業、 飲食・宿泊業)の記入例及び各業種における企 業の復旧・復興事例を掲載。 BCP を策定するためのヒントを掲載。 BCP 掲示板の記入例を掲載。 図表 9 入門コースの目次及び記載内容

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図表 10 入門コースのイメージ 2.1、2.2 の BCP 策定・運用の

解説のイメージ

2.3 の BCP 様式類のイメージ

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上図のうち「2.4 BCP 記入例(業種別)及び企業の取組事例」における企業の対応事 例については、後述の「エ 事例調査の実施」において調査した事例を盛り込んだ。 ウ 連携(共助)による事前対策に係るコラムの作成 中小企業単独では、事業継続に係る取組が十分にできない場合が想定されること、ま た、同じ商店街内の企業や同じサプライチェーンに属する企業等と連携してBCP の策 定・運用にあたると効果的な場合があると考えられることから、現行指針の改訂に当た って、連携(共助)によるBCP に係る取組を BCP の一つのあり方として紹介した。 エ 事例調査の実施 これからBCP を策定しようとする企業にとって、過去の災害を耐え、復旧・復興を 果たした中小企業の経験・対応の事例が一番の参考資料となると考える。そこで、東日 本大震災等、過去の災害から復旧・復興を果たした中小企業に調査員(2 名 1 組)が直 接訪問し、過去の災害に対する具体的な対応事例を調査した。以下の9 社が本事業にて 事例調査を実施した企業の一覧である。 業種 リスク事象 所在地 実施日 ヒアリング対応者 製造業 A 地震 宮城県石巻市 2 月 7 日 専務取締役 技術部長 製造業 B 地震 宮城県石巻市 2 月 7 日 専務取締役 製造業 C 地震 鹿児島県鹿児島市 3 月 1 日 総務部長、総務部主任 卸売・小売業 A 地震 岩手県大船渡市 2 月 6 日 営業サポート部 総務課 マネージャー 卸売・小売業 B 地震 島根県松江市 3 月 9 日 代表取締役、常務取締役 運送業 A 地震 宮城県塩竈市 2 月 28 日 取締役 総務部長 運送業 B 新型インフルエンザ 大阪府大阪市 2 月 27 日 代表取締役 飲食・宿泊業 A 地震 岩手県宮古市 2 月 29 日 代表取締役社長 飲食・宿泊業 B 地震 宮城県仙台市 3 月 1 日 代表取締役 図表 11 調査先一覧 事例調査に当たっては、調査結果をより効果的なものとするため、及び各調査員によ る調査内容の均一化を図るために、以下のとおり、あらかじめ調査項目を設定し、この

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調査項目 ①災害による貴社の被害状況について ■自社や取引先の被害状況(人的被害、施設・設備被害等)についてお教えください。 ■今般の災害が貴社の事業へ与えた影響(売上減、利益減、事業停止 等)についてお教えください。 ■貴社における災害対応の方針についてお教えください。(人命安全、顧客の信用を守る 等) ②重要商品・サービスについて ■貴社において、復旧・継続の優先順位が高い商品・サービス(重要商品)を被災前から把握していましたか。 ■重要商品・サービスを選んだ根拠・理由についてお教え下さい。(売上高、市場シェア、取引先との関係 等) ③災害に対する意識や具体的な対策について ■被災前、貴社では災害に対してどのような認識をお持ちでしたか。 ■災害の発生前から、貴社では何か対策を実施していましたか。 次の項目で該当するものがあればお教えください。 ①安否確認手段、ルールの整備 ②代替要員の確保 ③設備の固定 ④代替方法の確保 ⑤適切なデータ・書類の保管 ⑥情報収集・発信手段の確保 ⑦運転資金の把握 ⑧資金調達手段の確保 ⑨取引先等との連携 ⑩その他( ) ■上記対策の具体的な内容についてお教えください。 ■災害発生当時を振り返って、上記のうち特に有効だった対策は何ですか。 ■災害を受け、課題と感じたこと、反省すべき点等はありましたか。 ④災害時における危機管理体制について ■災害時の意思決定及び対応指示は誰が行いましたか。(経営者 等) ■その意思決定や対応指示は、経営的な観点から見て適切でしたか。 ■従業員は指示どおりに動くことができましたか。 ⑤BCP の認識や必要性について ■貴社は防災と BCP の関係をどのようにとらえていますか。 ■BCP の必要性や意義について、どのように考えていますか。 ■BCP が必要、あるいは不要だと考える理由をお聞かせください。 図表 12 調査項目一覧 こうした事例調査により、得られた結果のポイントを取りまとめたものが、以下であ る。なお、事例調査結果の詳細については、巻末資料の「(5)現地事例調査結果の詳 細」に示す。

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業種 事例調査結果のポイント 製造 業 A ■自社の重要商品を守ることの重要性 自社の技術力に依存し、代替のきかない商品(重要商品)の生産を維持することは、自社の生き残りだ けでなく、取引先企業との信頼関係構築や海外への転注を防ぐことにも結びつく。そのため、自社の事 業活動の維持、あるいは災害からの復興は、made in Japan を守ることにもつながると考えている。 ■リスクファイナンスの重要性 今回の震災による被害総額は約 2,000 万円であったが、地震保険に加入していたため、被害額を保険 による資金調達で補填でき、建屋・生産設備の復旧に活用した。 ■緊急時の統括責任者若しくは代理責任者の指揮命令の重要性 被災時は、社長が出張中であったため、専務が代理責任者として意思決定及び対応指示を行った。専 務は、安全が確認できるまで従業員を帰宅させず会社に留めさせた。それによって津波の被害を避け えたという面もあったと考えている。 製造 業 B ■取引先との相互支援の重要性 震災により、設備は全損し、重要なデータは失われてしまったが、取引先が仮事務所の設置場所や使 用する工具を用意してくれたため、何とか事業を再開できた。取引先からの信頼を得ていたことが、窮 地に活きたと感じている。 製造 業 C ■自社の供給責任・社会的責任を果たすための BCP 全国に顧客を抱える食品事業者として製品の安定供給を果たすこと、従業員の安全のみならず雇用を 守ることが重要であり、そのために BCP の策定は必要不可欠であると考えている。 卸売 ・小 売 業 A ■自社の重要商品・サービスを継続することの重要性 災害時における当社の使命は、地域の人々が生きるため、食べるために、安定的に商品(生活必需 品、食料品 等)を供給することである。被災のなかった店舗では震災直後から地域住民の生命を支え る(食の)ライフラインを支えようと必死に営業を続けた。 ■災害時の対応力(組織全体の意思決定 等)の重要性 災害時の危機管理体制を整備していたが、今回は経営層や一部の責任者が不在で想定したような緊 急時の対策本部の設置・初動での運営が行えなかった。しかし、平時からの取組の成果もあり、各店舗 で対応した。本社に対策本部設置後は、会社全体の重要な意思決定と対応指示を行うとともに、各店 舗との連絡調整や商品・物資の輸送等を行った。 ■非常時に備えた平時からの取組(従業員教育 等)の重要性 地域社会のお客様に支えられて成長してきた企業として、非常時にも地域社会に貢献するという認識 が従業員まで浸透していた。平時からの教育が、災害時における的確迅速な避難誘導(周辺住民への 避難の呼びかけを含む)や、お客様の声を受けて仮店舗での営業を行う等の行動につながった。 卸売 ・小 売 業 B ■自社の社会的責任の自覚に根ざす BCP の必要性の認識 当社がお弁当類を宅配している施設(学校、養護老人施設等)の特性を考えると、製品を提供し続ける 責任を強く感じている。そのためにも BCP に取り組み、事業の継続を具現化させたいと考えている。

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業種 事例調査結果のポイント 運送業A ■サプライチェーン、地域経済等における自社事業の役割・位置付けに対する認識 当社が担う港湾運送サービスは海と陸の結節点である港湾の機能を維持し、物流を止めないことが最 重要であり、港湾機能を守ることが地域経済、地域社会の活力を守ることにつながる。 ■復旧時における同業他社との連携の重要性 平時から同業他社と協力関係にあり、災害時はロジスティクスセンター等の復旧作業で協力しあえた。 ■データ等の分散保管の重要性 サーバーは停電で止まったが、定期的にデータのバックアップをとっていたので請求や支払業務ができ た。 ■企業グループに所属している強みの活用 所属する企業グループ共通の資金管理システムを利用して、積立金の引出しや借入れ等を行った。 ■災害対応方針・指揮命令系統の確立 災害対策本部の立上げ、職務分掌、参集等を取り決めていたことが機能した。家庭を優先させるために 震災直後から全従業員に一律で休暇を与えて生活基盤の確保を図った後、全社で一斉に復旧に取り 掛かる等、組織的に意思決定し行動できた。 ■被災経験を踏まえた意識付けと教育訓練の強化 平時からの従業員の意識づけが重要であり、被災後防災マップ等の従業員に見てほしい資料は回覧し て内容確認後に押印するように取り決める等、教育訓練を強化している。 運送業B ■過去の教訓を踏まえた災害への備えの重要性 阪神淡路大震災の経験から災害対策に取り組み、お客様からの信頼確保等を目的として BCP を策定 した。 ■災害発生時の迅速・適切な対応 新型インフルエンザ(A/H1N1)流行時に、即座にライダーにマスク配布・着用義務付け等を徹底するよ う指示を出し、同社内での感染拡大防止を図った。 ■災害時の組織体制・命令系統等の明確化 災害時の意志決定及び対応指示の責任者(代表取締役)を定め、流行時はそれに従って行動した。ま た万一を想定して代理(サブリーダー)を決めており、責任者が対応指示できない場合でも対応指示で きるように定めている。 ■BCP の継続的な取組の重要性 BCP を策定し、必要に応じて BCP を改訂し続けることで実効性を維持している。 図表 14 事例調査結果のポイント(運送業)

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業種 事例調査結果のポイント 飲食・ 宿 泊業A ■自社の重要商品・サービス選定の重要性 日頃から宿泊客の安全・安心を守る事を最大の使命と考え、災害対応の方針としていた。この方針に 基づき、顧客が安心して泊まれる環境を提供できるよう、食事や滞在場所等の必要な対応を行った。 ■手元資金の確保と公的な資金補助制度の活用 当面必要な運転資金を確保していたことに加え、市の災害復興資金を活用して施設の修理費用を調 達した。 ■法定の訓練の有効性と役職員への徹底 消防法の定める避難訓練を毎年実施していた成果もあり、被災時に社長が不在だったにもかかわら ず、支配人や従業員が適切に意思決定や対応指示を行い、宿泊客の安全を確保すべく行動できた。 飲食・ 宿 泊業B ■安否確認手段の確保と代替手段の重要性 非常時の連絡体制は電話網の途絶等により十分に機能しなかったが、従業員が交互に職場の様子を 見に来ることを考慮して、マイクロバスに紙を貼って安否確認等の連絡手段(伝言板)として利用した。 ■代替手段の検討と確保の重要性 自社ホテルは宿泊機能に限定して食事は近隣のドライブインから取り寄せる等、様々なアイディアを災 害対応として検討した。最終的には併設のレストランの厨房を利用して食事を提供できることに気付き、 食事を含めてホテルとしての営業を再開した。 ■意思決定権者の代理者の重要性 平常時から災害時・火災時の意思決定権者は社長であることを定めていたほか、社長不在時には代理 で意思決定・指示を行う次席の者を定めていた。 図表 15 事例調査結果のポイント(飲食・宿泊業) また、本事業では、企業への直接訪問による調査に加え、例えば中小企業白書や地方 自治体が公開している報告書等の公的資料に関する文献調査を行い、改訂指針に盛り込 むべき災害への対応事例の拡充を図った。

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4 中小企業への BCP 普及策の検討

(1)今後の BCP 普及策のあり方 「2.中小企業の現状分析及び各種課題の整理」において、多くの中小企業がBCP を認 知していない、BCP 策定のノウハウがない、BCP 策定によってインセンティブが得られ ていない等の課題を抱えていることが把握できた。ノウハウ面等については、現行指針の 改訂により、解決できる可能性もあるが、例えばインセンティブの付与等、指針の改訂の みでは解決が困難となる課題もある。そこで、本事業では、改訂指針の作成とともに、 BCP 普及策のあるべき姿についてもあわせて検討した。 以下が、各種課題を踏まえて立案したBCP 普及策のあるべき姿の概要であり、作業部 会においてその具体的内容を検討した。 ⑦策定したBCPの訓練・見直しを行っていない ③中小企業にBCP策定のノウハウがない ④中小企業にBCP策定に割けるマンパワーがない ⑤中小企業がBCPを認知していない ⑥中小企業がBCP策定にインセンティブを得られない 現状分析により把握された課題 中小企業にBCP運用のノウハウを提供し、「事業継続 のための力」の向上に資する方策が必要ではないか 中小企業がBCPを知る機会を豊富に提供する必要が あるのではないか 中小企業がBCPを策定することによりインセンティブを 得られる制度等が必要ではないか 中小企業にBCP策定のノウハウを提供し、BCP策定率 の向上に資する方策が必要があるのではないか BCP普及策のあるべき姿 図表 16 中小企業への BCP 普及策のあるべき姿

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全3 回の作業部会における議論を踏まえ、本事業では、今後の BCP 普及策のあり方の 具体案として、「ア BCP の広報」、「イ BCP 策定研修会の開催」、「ウ インセンティ ブの検討」、「エ ベンチマークの作成等、ツールの整備」の4 つの方策を取りまとめた。 なお、これら4 つの方策のうち、ア~ウは、これから BCP を策定しようとしている中 小企業を支援するための方策であり、エは既に BCP を策定している企業がより BCP の 高度化を目指すことを支援するための方策となる。 そして、この4 つの方策の位置付けを整理したものが下図であり、以降各方策の内容に ついて考察した結果を概説する。 中小企業・団体※ 中小企業支援機関 商工会議所、商工会、 中小企業団体中央会、 (政府系・民間)金融機関、 弁護士、会計士、税理士 等 [エ] ベンチマークの 作成等、ツール の整備 [ウ] インセンティブの 検討 [ア] BCPの広報 [イ] BCP策定研修会の開催 中小企業庁 BCPの高度化 ※本報告書では、中小企業組合等、中小企業が集まった集団を「団体」と記載する。 図表 17 今後の中小企業への BCP 普及策のあるべき姿 また、作業部会における議論から、今後のBCP の一つのあり方として、例えば商店会、 業種組合等単位のいわゆる「集」の展開、各地域単位のいわゆる「面」の展開の必要性が 認識された。「集」及び「面」の展開は、以下にあるようなメリットが想定され、さらに は、サプライチェーンの確保、地域経済の維持・向上、ひいては我が国産業の競争力強化 の観点からも有効な手段と考えられる。

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【「集」及び「面」での BCP 策定のメリット】 商店会、工業組合等の団体単位で BCP に取り組むことにより、研修会、BCP の策定等 を個別企業で行うよりも効率的に行うことができる。 問題意識の共有化、問題解決に向けた切磋琢磨、各企業間、団体間の連帯が期待さ れる。 個人商店では BCP 策定が困難でも、商店会として BCP を策定する等、単独では BCP の導入が困難な個別企業も、同じ環境にある者が共同することにより策定、導入が可 能となる場合も想定される。 業種や規模にかかわらず、共通の課題(食料、電気、水道等のライフラインの確保、情 報収集、被災時の瓦礫の撤去等)について、共同して BCP を策定し、連携体制を構築 することで、策定した BCP がより実践的かつ効果的なものとなる。 団体で BCP の取組を行うことにより、スケールメリット、交渉力が期待できる。 複数の団体間、地域間、業種間における事業継続のためにネットワーク作り、連携体制 の構築が期待される。 (2)今後の BCP 普及策の具体的な内容 ア BCP の広報 先述のとおり、多くの中小企業がBCP を“知らない”という現状にある。実際に企業 へのヒアリングにおいても、東日本大震災を契機に、BCP という言葉を知っている企業 は増えはじめたものの、未だその数が少ないとの意見もあった。そのため、中小企業への BCP の普及を考える場合、まずは、中小企業が BCP を“知る”機会を豊富に提供するこ とに加え、“知る”ためのきっかけ作りを行う必要があると考えられる。 その具体的方策の一つとして、従来中小企業庁及び中小企業支援機関が実施してきた冊 子、ホームページ、メールマガジン等を用いた周知方法の改善が考えられる。改善内容と しては、例えば、専門用語や一般に分かりづらい表現を簡易な表現への置き換え、イラス トや事例を盛り込んだ利用できるツールの提供、並びにBCP 策定に係るインセンティブ に関する情報等の積極的な提供等が中小企業へのBCP の認知・理解を促す意味で効果的 であると考える。

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特に、東日本大震災の発生以降、中小企業における事業継続への取組に対する関心が高 まってきていることもあり、国において中小企業支援機関と共同での改訂指針の概要版作 成・配布等のBCP に関する広報を実施する場合は、いかに中小企業にとって分かりやす い広報を行うのかが重要となると考える。 さらにもう一つの方策として、国によるマスメディア等を通じた中小企業への周知が考 えられる。従来、現行指針や BCP のパンフレット等、冊子やホームページによる BCP の広報は実施されてきた。しかしながら、そうした広報のみでは十分にBCP が中小企業 に認知されていなかったのが実情である。したがって、従来の広報方法のみならず、例え ば新聞や雑誌の広告の他、インターネットCM、テレビ CM、ラジオ CM、携帯電話コン テンツ等、誰もがアクセスしやすいメディア媒体を通じた広報を行うことが今後必要であ ると考える。 中小企業庁 中小企業・団体 改訂指針(概 要版)の作成 改訂指針 (概要版)の 配付 BCPの認知 マスメディア等 を通じた広報 中小企業支援機関 図表 18 BCP 普及促進ツールの提供のイメージ

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イ BCP 策定研修会の開催 BCP を策定していない中小企業の多くが策定していない理由として、ノウハウがない ためとしていることが把握された。ノウハウ面の課題に関しては、改訂指針の作成により、 一定程度解決することができると思料する。 しかしながら、2008 年 9 月のリーマンショックを契機とする世界的な金融危機や東日 本大震災等をはじめ、企業経営に大きな影響を与える危機事象の度重なる発生等により、 企業をとりまく環境は厳しさを増しており、BCP の検討・策定に費やせる時間や人も限 られていると考えられる。また、ノウハウ面での課題の解決策として、外部のコンサルテ ィング会社にBCP 策定を依頼する等も考えられるが、こうした組織に依頼する資金的な 余裕がある中小企業は一部に限られるものと考えられる。 したがって、一般的に大企業に比べ経営基盤が脆弱な中小企業が、限られた経営資源の 中で、自社の実態(身の丈)に応じたBCP 策定をいかに支援するのかが重要となる。そ のため、改訂指針の作成に加え、BCP 普及策として、よりノウハウ面に係る支援の充実 を図り、中小企業が自らBCP を策定できる環境を整備する必要があるといえる。 その一つとして、中小企業庁による中小企業向けのBCP 策定研修会を開催することが 挙げられる。一般的にBCP の研修会といえば、講師が BCP の必要性や策定方法を一方 的に解説する形式が多いが、解説を聞いただけで独自にBCP 策定に取り組むことのでき る中小企業は少ないものと推測される。このため、研修の効果をより高めるためには、研 修会に参加することでBCP が策定できてしまう形式、つまり研修会の中で BCP を策定 してもらう研修会を開催することが効果的と考えられる。例えば、改訂指針の入門コース の記入方法を研修会の中で解説し、その解説を踏まえ、参加企業に入門コースの様式類に 記入してもらい、研修会終了後もこれを基に各自で見直しを行う等がその具体的内容とし て挙げられる。 また、このような研修会の中で、BCP 策定に主導的な役割を果たすリーダーとなる企 業(人材)を養成することができれば、より多くの中小企業にBCP の策定を促す意味で 極めて効果的であると考える。 さらに、日々中小企業と接する中小企業支援機関の相談対応担当者等の職員が、BCP に関する専門家(コンサルティング会社等)からの教育を受け、BCP 策定指導者として 中小企業のBCP 策定を支援することもノウハウ面での方策として重要であると考える。 その際、BCP 策定指導者には、中小企業支援機関の経営指導員はもちろん、BCP 策定実 務や指導に携わった経験を持つ弁護士、会計士、税理士、さらには組合の事務局で中小企 業診断士の資格を有する者等もその役割を担う者に適していると考えられる。 こうした人材がBCP 策定指導者としての役割を担うことができるよう、BCP 策定指導 者養成研修会の開催に加え、指導者養成用のツールの作成・提供が有効と考えられる。

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中小企業庁 中小企業・団体 中小企業 支援機関 向け研修 会の開催 BCPの策定 BCPの策定 指導者を 養成 中小企業支援機関 BCP未策定企 業からBCPリー ダー(企業)の 養成 企業向けBCP 策定研修会 の開催 指導者養成用 の動画(DVD)等 のツール作成 図表 19 BCP 策定研修会の開催のイメージ ウ インセンティブの検討 BCP とは、緊急時における対応力を向上するという効果がメインであり、平常時の経 営へのプラスの効果が見えにくいものである。このようなBCP の特性から、BCP を策定 することに対してインセンティブを見出すことができず、策定に踏み切れない中小企業も 存在するものと考えられる。このため、中小企業へのBCP 普及を考える場合、中小企業 がBCP を策定することにインセンティブを見出すことができる方策の実施が必要である と考える。 その一つとして、保険会社を含む金融機関や中小企業支援機関によるBCP 策定企業へ の優遇制度・商品等の積極的運用が挙げられる。株式会社日本政策金融公庫では、既に社 会環境対応施設設備資金として、BCP に基づき防災に資する施設等の整備を行うために 必要な設備資金を一定額まで特別利率で融資する制度を運用している。また、BCP 策定 企業に対して、火災等の事故により営業が休止または阻害された場合の利益減少等の休業

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を中小企業組合等に対して補助するという取組を行っている。このような制度や商品等は、 これからBCP を策定しようとする中小企業にとって、資金面でのインセンティブとなる と考えられるため、制度や商品の内容等が広く中小企業に認知されるよう、積極的運用が 望まれる。 また、中小企業のBCP 策定をさらに促すために、資金面でのインセンティブ以外にも、 中小企業支援機関によるBCP 策定企業への表彰制度の検討等の優遇策も必要であると考 える。現在、特定非営利活動法人事業継続推進機構や東京都等がBCP 策定企業の表彰を 先進的に実施しているが、中小企業支援機関にもこうした表彰制度を創設し、中小企業が BCP 策定にやりがいを感じる、すなわち中小企業へ BCP 策定に対するインセンティブを 与える支援を実施することが望まれる。

中小企業・団体

BCP策定にインセンティブ 優遇制度の 運用 優遇商品の 開発・運用 優遇策の 運用

中小企業

支援機関

保険会社

金融機関

図表 20 BCP 策定促進のためのインセンティブのイメージ エ BCP のベンチマークの作成・利活用 中小企業におけるBCP 策定・運用の実態を見ると、未だ BCP を策定していない企業、 いわゆる BCP の初心者の企業と、既に BCP を策定・運用している企業に二極化してい るのが現状である。したがって、これまでBCP を策定していない企業に対する普及策を

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中心に考察を述べてきたが、これに加えて、既にBCP を策定・運用している企業がより 自社のBCP を高度化するための方策も必要であると考える。 その方策の一つとして、策定したBCP を比較・評価するための指標(以下、ベンチマ ークという。)を作成し、中小企業への利活用を促進することが挙げられる。ここでいう ベンチマークとは、BCP 策定が比較的進んでいる特定地域に所属する複数の中小企業の BCP から他の中小企業の BCP 策定・運用にも一定程度活用できる共通の重要項目を抽出 し、比較・評価指標として取りまとめたものを想定している。そして、国がそのベンチマ ークを広く紹介し、又は中小企業支援機関がベンチマークを活用したBCP の策定指導を 行うことで、中小企業においては、自社の事業継続への取組の強み・弱みを把握すること が可能となる。さらに、中小企業が把握した自社の弱みを克服することで、策定したBCP の高度化を図ることができると考えられる。

中小企業・団体

中小企業庁

BCPの高度化 ベンチマークを 活用したBCP策 定の指導 BCPベンチマークの 作成・公開・利活用促進 相談等

中小企業支援機関

図表 21 BCP のベンチマークの作成・利活用のイメージ

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終わりに

これまで、中小企業の BCP 策定に係る現状分析を通じて把握された課題について、 その課題解決に資する方策を現行の中小企業BCP 策定運用指針の改訂並びに中小企業 へのBCP 普及促進策の検討の2つのアプローチにより取りまとめた。 中小企業に対するBCP 普及促進に当たっては、BCP を中小企業自らの自助努力によ り策定できる環境整備を基本としつつ、個々の中小企業がそれぞれの実態にあった BCP を自ら策定し導入するとともに、導入した後も見直しを図り改善を続けていくこ とが肝要である。また、策定したBCP は、緊急時は無論のこと、平常時においても経 営の一環として捉え、日常業務の中に取り入れ、実践することが重要である。 さらに東日本大震災等の被災による企業の事業停止が国内の製品等のサプライチェ ーンに大きな影響を与えた教訓や、津波被害により沿岸の地域経済一体が甚大な被害を 受けたこと等を踏まえれば、個社に限らず製品等のサプライチェーン全体における中小 企業の位置づけや地域経済における中小企業の位置づけ等も踏まえた、複数社の協力に よるBCP 策定に係る環境整備の検討も必要と考えられる。 複数社によるBCP 策定は、商店会、業種組合等の集団での展開、各地域単位での面 での展開に発展させること等が重要と考えられるが、そのためには、国、中小企業支援 機関等が連携したBCP 推進策が講じられることが望まれる。 本事業におけるとりまとめに加え、今後、複数社が協力した事業継続に係る取組の推 進等により、将来的にBCP 策定・運用への取組が我が国中小企業に広く浸透すること で、今後想定される災害等に対する中小企業者等の対応能力を高め、個別企業だけでな く、業種、団体等の集団的取組、さらには地域としての面の展開に発展させることによ り、サプライチェーンの確保、地域経済の維持・向上、ひいては我が国産業の競争力強 化へとつながることを期待したい。

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参考文献

■中小企業庁 [2006] 『中小企業 BCP 策定運用指針』 http://www.chusho.meti.go.jp/bcp/ ■中小企業庁 [2011] 『中小企業白書 2011 年版』 http://www.chusho.meti.go.jp/pamflet/hakusyo/h23/h23_1/h23_pdf_mokuji.html ■中小企業庁 [2011] 『平成 23 年度版中小企業施策利用ガイドブック<第 2 版>』 http://www.chusho.meti.go.jp/pamflet/g_book/h23/pdf/index.html ■内閣府 [2009] 『事業継続ガイドライン(第二版)-わが国企業の減災と災害対応の向上のために-』 http://www.bousai.go.jp/MinkanToShijyou/guideline02.pdf ■中小企業庁 [2011] 『中小企業の事業継続計画(BCP)」』 http://www.chusho.meti.go.jp/bcp/ ■中小企業庁 [2009] 『BCP 策定のためのヒント~中小企業が緊急事態を生き抜くために~』 http://www.chusho.meti.go.jp/bcp/guidebook/hint.html ■中小企業庁 [2009] 『中小企業 BCP 策定運用指針を用いた新型インフルエンザ対策のための中小企業 BCP (事業継続計画)策定指針』 http://www.chusho.meti.go.jp/bcp/influenza/index.html ■中小企業庁 [2009] 『新型インフルエンザ A(H1N1)対策のための事業継続計画』 http://www.chusho.meti.go.jp/bcp/influenza/download/A_H1N1_BCP.pdf ■中小企業庁 [2011] 『中小企業の事業継続計画(BCP)<災害対応事例からみるポイント>』 http://www.chusho.meti.go.jp/keiei/antei/download/BCPSaigaiJirei.pdf ■中小企業庁 [2007] 『中小企業に求められる災害対策の取組 組合を利用した BCP 取組事例集』 ■中小企業庁 [2011] 『被災地の復旧・復興に貢献された中小企業の皆様方の取組』 http://www.chusho.meti.go.jp/earthquake2011/110802EqJirei.html ■愛知県 [2008] 『中小企業向け事業継続計画(BCP)策定マニュアル「あいち BCP モデル」』

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(1)現行指針と改訂指針の新旧対照表 改訂内容 ※赤字が変更箇所 中小企業BCP指針の公開にあたって        中小企業BCP指針の公開にあたって        ■昨今の中小企業の状況等を踏まえ、記載内容を変更 1. はじめに  1- 1 1. はじめに  1- 1 ■図や絵の挿入による見せ方の変更及び文章を変更 1.1 中小企業BCP(事業継続計画)とは 1.1 中小企業BCP(事業継続計画)とは -    事業継続計画の概要説明    事業継続計画の概要説明 ■図や絵を変更及び文章を変更    BCPサイクルの説明 ■BCPサイクルの掲載場所を変更 (⇒ 3.1へ) 1.2 本指針の使い方  1.2 本指針の使い方  ■入門コースを追加し、3つのコースから4つのコースへ変更 1.3 入門診断 1.3 BCP取組状況チェック    ■名称の変更及びチェック項目を一部変更 2. 平常時におけるBCPの策定と運用(入門コース)  2- 1 2.1 BCPを策定する 2.2 BCPを運用する 2.3 BCP様式類(入門コース:記入シート) 2.4 BCP記入例(業種別)及び企業の取組事例 3. 平常時におけるBCP策定と運用(基本、中級コース共通)  3- 1 ■新規に基本、中級コースの共通項目として目次立て 3.1 BCP策定・運用の全体像(BCPサイクルの説明) ■1.1から掲載場所を変更 2. 基本方針と運用体制  2- 1 ■基本方針と運用体制を共通項目の中に取り入れ 2.1 基本方針の立案  3.2 基本方針の立案 2.2 策定・運用体制の確立 3.3 策定・運用体制の確立 3. 平常時におけるBCPの策定と運用(基本コース)  3- 1 4. 平常時におけるBCPの策定と運用(基本コース)  4- 1 3.1 事業を理解する 4.1 事業を理解する 3.2 BCPの準備、事前対策を検討する 4.2 BCPの準備、事前対策を検討する 3.3 BCPを策定する 4.3 BCPを策定する 3.4 BCP文化を定着させる 4.4 BCP文化を定着させる 3.5 BCPの診断、維持・更新を行う 4.5 BCPの診断、維持・更新を行う 3.6 BCP策定・運用の自己診断 4.6 BCP策定・運用の自己診断 3. 平常時におけるBCPの策定と運用(中級コース)  3-23 4. 平常時におけるBCPの策定と運用(中級コース)  4-23 3.1 事業を理解する 4.1 事業を理解する 3.2 BCPの準備、事前対策を検討する 4.2 BCPの準備、事前対策を検討する 3.3 BCPを策定する 4.3 BCPを策定する 3.4 BCP文化を定着させる 4.4 BCP文化を定着させる 3.5 BCPの診断、維持・更新を行う 4.5 BCPの診断、維持・更新を行う 3.6 BCP策定・運用の自己診断 4.6 BCP策定・運用の自己診断 3. 平常時におけるBCPの策定と運用(上級コース)  3-65 4. 平常時におけるBCPの策定と運用(上級コース)  4-65 3.1 BCPの対象拡大 4.1 BCPの対象拡大 3.2 BCPの分析深化 4.2 BCPの分析深化 4. 緊急時におけるBCPの発動  4- 1 5. 緊急時におけるBCPの発動  5- 1 4.1 緊急時におけるBCP発動フロー  5.1 緊急時におけるBCP発動フロー 4.2 フローに沿った実施項目 5.2 フローに沿った実施項目 4.3 緊急事態ごとの初動対応 5.3 緊急事態ごとの初動対応 5. 財務診断モデル(基本コース)  5- 1 5.1 復旧費用の算定 5.2 損害保険の整理 5.3 緊急時に使える資金 5.4 財務診断とキャッシュフロー対策 5. 財務診断モデル(中級コース)  5-14 5.1 復旧費用の算定 5.2 復旧費用の調達 5.3 緊急事態発生後のキャッシュフローの算定 5.4 事前対策の考え方 5. 財務診断モデル(上級コース)  5-46  5.1 資産損壊・事業中断の財務面への影響  5.2 緊急事態の種類ごとの財務影響  5.3 複数部門・複数事業所の復旧費用の推定  5.4 直接原価方式による損益計算書の作成・計算手順 6. 事前対策メニュー一覧  6- 1 6. 事前対策メニュー一覧  6- 1 ■変更なし 7. BCP様式類(記入シート)  7- 1 7. BCP様式類(記入シート)  7- 1 ■変更なし 8. BCP関連資料  8- 1 8. BCP関連資料  8- 1 ■変更なし 9. 用語集  9- 1 9. 用語集  9- 1 ■目次と連動しているため、目次に合わせ変更 10. 本指針の検討体制  10- 1 10. 本指針の検討体制  10- 1 ■改訂指針の検討体制を追加 【参考】財務診断モデル(基本コース)  参考- 1 1 復旧費用の算定 2 損害保険の整理 3 緊急時に使える資金 4 財務診断とキャッシュフロー対策 【参考】財務診断モデル(中級コース)  参考-14 1 復旧費用の算定 2 復旧費用の調達 3 緊急事態発生後のキャッシュフローの算定 4 事前対策の考え方 【参考】財務診断モデル(上級コース)  参考-46 1 資産損壊・事業中断の財務面への影響 2 緊急事態の種類ごとの財務影響 3 複数部門・複数事業所の復旧費用の推定 4 直接原価方式による損益計算書の作成・計算手順 改訂後の「中小企業B C P 策定運用指針(第2版)」 ■5.から掲載場所を変更 ■新規に入門コースを追加 ■全体の内容として、「2.1BCPを策定する」、「2.2BCPを運用す   る」の2つを追加 ■また、入門コース専用の様式を「2.3BCP様式類(入門コース)」   として追加 ■さらに、製造業、サービス・小売業、運送業、飲食・宿泊業の記   入例及び企業の取組事例を2.4に追加 ■全体の整合をとるために、文章の微修正及び目次番号を変更 ■掲載場所及び位置付けを変更 (⇒ 参考資料へ) 現行の「中小企業B C P 策定運用指針(第1版)」

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(2)中小企業 BCP 策定運用指針(第2版)

中小企業BCP策定運用指針

第2版

-どんな緊急事態に遭っても企業が生き抜くための準備-

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目 次

中小企業BCP 指針の公開にあたって 1. はじめに ··· 1- 1 1.1 中小企業 BCP(事業継続計画)とは 1.2 本指針の使い方 1.3 BCP 取組状況チェック 2. 平常時における BCP の策定と運用(入門コース) ··· 2- 1 2.1 BCP を策定する 2.2 BCP を運用する 2.3 BCP 様式類(入門コース:記入シート) 2.4 BCP 記入例(業種別)及び企業の取組事例 3. 平常時における BCP 策定と運用(基本、中級コース共通) ··· 3- 1 3.1 BCP 策定・運用の全体像 3.2 基本方針の立案 3.3 策定・運用体制の確立 4. 平常時における BCP の策定と運用(基本コース) ··· 4- 1 4.1 事業を理解する 4.2 BCP の準備、事前対策を検討する 4.3 BCP を策定する 4.4 BCP 文化を定着させる 4.5 BCP の診断、維持・更新を行う 4.6 BCP 策定・運用の自己診断 4. 平常時における BCP の策定と運用(中級コース) ··· 4-21 4.1 事業を理解する 4.2 BCP の準備、事前対策を検討する 4.3 BCP を策定する 4.4 BCP 文化を定着させる 4.5 BCP の診断、維持・更新を行う

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4. 平常時における BCP の策定と運用(上級コース) ··· 4-63 4.1 BCP の対象拡大 4.2 BCP の分析深化 5. 緊急時における BCP の発動 ··· 5- 1 5.1 緊急時における BCP 発動フロー 5.2 フローに沿った実施項目 5.3 緊急事態ごとの初動対応 6. 事前対策メニュー一覧 ··· 6- 1 7. BCP 様式類(基本、中級、上級コース:記入シート) ··· 7- 1 8. BCP 関連資料 ··· 8- 1 9. 用語集 ··· 9- 1 10. 本指針の検討体制 ··· 10- 1 【参考】財務診断モデル(基本コース)··· 参考- 1 1 復旧費用の算定 2 損害保険の整理 3 緊急時に使える資金 4 財務診断とキャッシュフロー対策 【参考】財務診断モデル(中級コース)··· 参考-14 1 復旧費用の算定 2 復旧費用の調達 3 緊急事態発生後のキャッシュフローの算定 4 事前対策の考え方 【参考】財務診断モデル(上級コース)··· 参考-46 1 資産損壊・事業中断の財務面への影響 2 緊急事態の種類ごとの財務影響 3 複数部門・複数事業所の復旧費用の推定 4 直接原価方式による損益計算書の作成・計算手順

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中小企業

BCP 策定運用指針(第 2 版)について

(中小企業

BCP 策定運用指針(第 1 版)の改訂)

我が国の中小企業へのBCP 導入については、平成 18 年に「中小企業 BCP 策定運用指針」を公表し普及 促進に努めてきましたが、未だに中小企業におけるBCP の認識は高いとは言えず、BCP 策定企業は一部に 留まっています。 一方、平成23 年(2011 年)は東日本大震災をはじめ大規模災害等が頻発し、直接被害はもとよりサプライ チェーンに大きな影響が出る等の経験から、「防災」及び「緊急時における事業継続」の重要性が再認識され ました。 我が国企業への BCP の導入を図るためには、99%を占める中小企業への普及促進が必要不可欠であり、 そのためには特に太宗を占める小規模事業者への導入を含めた対応が求められています。 このため、平成18 年に公表した「中小企業 BCP 策定運用指針(第 1 版)」を一部見直し、小規模事業者を 含めた初心者を念頭に「入門コース」を新たに加えるとともに、業種別の事例を追加する等、分かり易い内容 に改訂しました。 BCP は、単に知識として習得するものではなく、事業の継続を図るため、日頃の企業活動のなかで、リスク 管理経営の一環として、実践し、改良を図るものです。 したがって、BCP は、標準的なマニュアルどおりの計画を策定すれば良いというものではなく、各社の実態 にあわせ実践的な内容に工夫する必要があります。すなわち、業種・規模に関わらず、それぞれの事業実態 に合わせたオリジナルな事業継続計画を、経営者自らが率先し、従業員等と一丸となって検討・策定し、実践 することが肝要です。 BCP の検討・策定による効果は、大規模災害等の緊急時においては、企業の危機管理能力 を高め、事業活動の継続・早期復旧等により、取引先への製品・サービス等の供給責任を果 たすことで、顧客の維持・獲得、企業信用の向上が期待されます。また、平常時においても、 顧客管理、在庫管理、従業員管理等の経営の効率化、企業価値の向上に資する効果が見込ま れます。 さらに、個別企業の取組にとどまらず、商店会、業種組合等の集団での展開、各地域単位 での面の展開に発展させることにより、地域経済の維持・向上、ひいては我が国産業競争力 の維持・向上にも資するものです。 今回の東日本大震災等を貴重な教訓とし、企業の危機管理能力を高め、緊急時における事 業活動の継続を図り、サプライチェーンを遮断させることなく、地域経済の維持・発展を図 るため、各個別企業はもとより、支援機関を含めた地域単位での BCP の本格的な導入に向け た取組が期待されます。 平成24 年 3 月 経済産業省中小企業庁

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1. はじめに

大地震、集中豪雨や洪水等の水害、新型インフルエンザ、テロ等の不測の事態に見舞われた状況で、あな たの会社は生き残ることができますか。従業員やその家族を守れますか。お客様からの信頼を維持できます か。 経営者であるあなたは、こうした緊急事態に遭っても、何とかして自社の製品・サービスを供給して会社を 存続させたいと考えるはずです。しかし、いざ緊急事態という時に、あなたが普段と同じように判断し、的確な 行動ができるでしょうか。 緊急事態で的確に判断し行動するためには、緊急時に行うべき行動や、緊急時に備えて平常時に行うべき 行動をあらかじめ整理し取り決めておく「事業継続計画(BCP)」の策定・運用が有効です。 また、BCP は、あなたにとって決して特別なものではありません。例えば、あなたが病気で入院したら会社 をどのように続けていくか等、あなたが日々の経営の中で考えていることを、計画として「見える化」すれば、 それが最高意思決定者不在という緊急時のBCP になるように、BCP は日々の経営の延長にあるものと考え られます。 本指針3は、中小企業の経営者の方々がBCP の必要性を認識し、BCP を策定し、そして策定した BCP を 日常的に運用(教育訓練や計画の見直し)していくことを支援させていただくためのものです。 従業員や家族の安全・・・ 顧客からの信用・・・ 売上げの維持・・・ 本当にうちの会社は大丈夫 だろうか? 風水害 テロ 火災 交通事故 地震 感染症

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1.1 中小企業 BCP(事業継続計画)とは

東日本大震災(平成23 年 3 月 11 日発生)において、中小企業の多くが、貴重な人材を失ったり、設備を失 ったことで、廃業に追い込まれました。また、被災の影響が少なかった企業においても、復旧が遅れ自社の製 品・サービスが供給できず、その結果顧客が離れ、事業を縮小し従業員を解雇しなければならないケースも 見受けられました。 このように緊急事態はいつ発生するかわかりません。BCP とは、こうした緊急事態への備えのことをいいま す。 ただし、突発的な緊急事態がBCP の想定どおりに発生するはずもありません。また、BCP を策定していて も、普段行っていないことを緊急時に行うことは、実際には難しいものです。緊急事態において的確な決断を 下すためには、あらかじめ対処の方策について検討を重ね、日頃から継続的に訓練しておくことが必要なの です。 BCP を策定する際は、最初から理想を追求し完全なものを目指しても、実現は困難な場合が多く、かえっ て導入を躊躇することにもなりかねません。そのため、まずは身の丈にあった実現可能なBCP を策定し、そし て、それに改善を積み重ね、平常時から突発的な緊急事態への対応力を鍛えていくことが「中小企業 BCP」 の真髄であるといえます。

緊急事態

経営の悪化

顧客の流出

経営の

安定・向上

BCPを策定・運用している企業 ■事業の早期復旧・継続 BCPを策定・運用していない企業 ■事業縮小、廃業

中小企業BCP ⇒ 緊急事態への対応力の向上

図表 10  入門コースのイメージ   2.1、2.2 の BCP 策定・運用の

参照

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