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3.1 BCP 策定・運用の全体像

BCP の特徴は、①優先して継続・復旧すべき中核事業を特定する、②緊急時における中核事業の 目標復旧時間を定めておく、③緊急時に提供できるサービスのレベルについて顧客と予め協議してお く、④事業拠点や生産設備、仕入品調達等の代替策を用意しておく、⑤全ての従業員と事業継続につ いてコミュニケーションを図っておくことにあります。

企業が大地震などの緊急事態に遭遇すると操業率が大きく落ちます(図3.1-1参照)。何も備えを行 っていない企業では、事業の復旧が大きく遅れて事業の縮小を余儀なくされたり、復旧できずに廃業に 追い込まれたりするおそれがあります。一方、BCP を導入している企業は、緊急時でも中核事業を維 持・早期復旧することができ、その後、操業率を 100%に戻したり、さらには市場の信頼を得て事業が 拡大したりすることも期待できます。

BCP

(3)作業部会構成員名簿

【構成員】

氏 名 読みがな 所 属

荒木 時雄 あらき ときお 東京商工会議所 地域振興部長

梅田 晃士郎 うめだ こうしろう 株式会社商工組合中央金庫 組織金融部長 及川 勝 おいかわ まさる 全国中小企業団体中央会 政策推進部長

大窪 正剛 おおくぼ せいごう 株式会社日本政策金融公庫 中小企業事業本部 営業推進部 副部長

苧野 恭成 おの やすまさ 全国商工会連合会 企業支援部 部長

桂 浩晃 かつら ひろあき 株式会社損害保険ジャパン 企画開発部 課長 木根原 良樹 きねはら よしき 株式会社三菱総合研究所 科学・安全政策研究本部

社会イノベーショングループ 主席研究員 指田 朝久 さしだ ともひさ 東京海上日動リスクコンサルティング株式会社

経営企画室 企画グループ 主席研究員 高橋 孝一 たかはし こういち NKSJ リスクマネジメント株式会社

取締役 リスクコンサルティング事業本部長

渡辺 研司 わたなべ けんじ 名古屋工業大学大学院 工学研究科社会工学専攻 教授

※ 敬称略、50 音順

【中小企業庁】

氏 名 読みがな 所 属

横尾 浩一郎 よこお こういちろう 中小企業庁 事業環境部 企画課 経営安定対策室長 成瀬 輝男 なるせ てるお 中小企業庁 事業環境部 企画課 経営安定対策室

課長補佐(企画調整担当)

永野 喜代彦 えいの きよひこ 中小企業庁 事業環境部 企画課 経営安定対策室 企画調整一係長

※ 敬称略

【事務局】

NKSJ リスクマネジメント株式会社

(4)作業部会審議一覧

「中小企業BCP策定運用指針等見直しに係る作業部会」(全3回)の審議内容は以下のと おりである。

日程 主な審議内容

第 1 回

(2012 年 1 月 13 日)

(1) 『中小企業 BCP 策定運用指針』の改訂

・ 改訂指針(第一案)の検討

(2) BCP 策定促進策

・ 策定促進策の検討

第 2 回

(2012 年 2 月 23 日)

(1) 『中小企業 BCP 策定運用指針』の改訂

・ 改訂指針(第二案)の検討

・ 現地事例調査結果の中間報告及び活用方法の検討

(2) BCP 策定促進策

・ 提言(最終案)に向けた検討

(3) BCP 運用促進策

・ 運用促進策の検討

第 3 回

(最終)

(2012 年 3 月 13 日)

(1) 『中小企業 BCP 策定運用指針』の改訂

・ 改訂指針(最終案)の検討

・ 現地事例調査結果の最終報告及び活用方法の検討

(2) BCP 普及策

・ 提言(最終案)に向けた検討

(5)現地事例調査結果の詳細

業種 製造業A 従業員数 53 名

企業所在地 宮城県石巻市 被災した

災害 東日本大震災(東北地方太平洋沖地震)

実施日時 2012 年 2 月 7 日(火)

面会者 専務取締役 技術部長

内 容

(1) 災害による被害状況

①自社及び取引先の被害状況(人的被害、施設・設備被害等)

・ 本社工場の建屋が半壊したものの、生産設備には大きな被害はなかった。地下の 浄化槽が損傷し、今も修理中である。

②災害による事業への影響(売上減、利益減、事業停止 等)

・ 被害総額は約 2,000 万円であり、事業活動の中断も約 2 週間に及んだ。ただし、こ の事業中断は電気や水等のインフラの途絶によるものであり、事業自体は再開でき る状況にあった。

・ 前年同時期はリーマンショック後の需要急減期に該当するため、対前年比での被害 把握は困難である。

③災害対応の方針(人命安全、顧客の使用を守る、地域経済の活力を守る 等)

・ 事業活動を継続することで、地域社会に貢献することである。そのためにも、顧客

(取引先企業)の要望に応えて信頼を守ること、また当社の事業や生産活動を維持 して地域の雇用を守ることが重要だと考えている。

(2) 重要商品及びサービス

①復旧・継続の優先順位が高い商品やサービス(重要商品)の事前把握

・ 代替生産のきかない当社の技術に依存する商品(光ピックアップ部品 等)

②重要商品・サービスの選択理由(売上高、市場シェア、取引先との関係 等)

・ 取引先企業との信頼関係を維持するためである。この取引先企業には、当社が業 務を受託している企業、委託している企業の双方が含まれる。

・ 現状における取引先(特に業務を受託している企業)からの信頼喪失は、業務の転 注を意味し、その転注先はおそらく海外になるだろう。自社の事業活動の維持、ある

(3) 災害に対する意識や具体的な対策

①被災前における災害に対する認識

・ 地震をはじめとした災害に対して、特に強い警戒感や認識はなかった。宮城県は地 震の頻発地域で過去にも大地震を経験している(8 年前の宮城県北部地震 等)。

過去の復興経験もあって、地震が発生しても何とかなるはずだという意識、地震に対 するある種の慣れがあったのではないかと思う。

②災害発生前の実施済み対策とその具体例 1)安否確認手段、ルールの整備

・ 対策済みだった。全社での訓練等も実施していた。

2)代替要員の確保

・ 対策していなかった。

3)設備の固定

・ 生産設備をアンカーボルトで固定したり金型等の重量物を鎖でつないだりして対策し ていた。8 年前の地震発生時には、生産効率向上を図って適宜ラインを変更するた め、生産設備を固定していなかったので大きな被害が出た。また、配管類が金属製 のパイプ等だったため被害が大きかったので、フレキシブルなタイプに変更した。

4)代替方法の確保

・ 契約等の明確な手続きをしてはいないが、遠隔地で親族が経営する工場と非常時 の協力体制について相談していたほか、加盟する業界団体で「困ったときは互いに 助け合おう」と申し合わせている。

5)適切なデータ・書類の保管

・ 対策していなかった。

6)情報収集・発信手段の確保

・ 対策していなかった。

7)運転資金の把握

・ 把握していたが、災害を前提としたものではない(通常の資金繰り)

8)資金調達手段の確保

・ 地震保険に加入していたほか、取引先の金融機関との信頼関係を構築しており、今 後も支援を受ける見通しを立てられた。

・ 被災後には、行政から資金面での支援も得られた。

9)取引先等との連携

・ 事前の取り決めはなかったが、供給は材料メーカーから支援を得られた。

・ 当社にとって最も辛いのは、被災を理由に転注されること。それならば、同じ行為を 当社の取引先に行ってはならないと考え、再起の意思があるならば可能な限り支援 しようと思い、行動した。

10)その他

・ 商品在庫を保管する容器を台車に載せた可動式の形式に変更した。災害発生時 は台 車が動きはしたものの、容器や製品は損傷しなかった。

③上記のうち、災害発生時に有効だった対策

・ 生産設備の固定及び耐震化措置と、地震保険の加入である。特に後者について は、今回の被害額(復旧費用)を保険金で賄うことができた。

・ また、業界の勉強会で得た知己や知人の会社等、様々な人脈を通じて食料品や燃 料の支援が寄せられたのが有難かった。

④被災経験を通して認識した課題及び反省点

・ 通信手段を確保していなかった。PHS 等、電話(固定及び携帯)以外の通信手段を 確保しておくべきだった。前回の被災経験から、内陸部に移動すれば電話は使用で きると考えていたが、今回は全く通話ができなかった。

⑤災害対応時に感じた困難や事前準備しておくべきだった資材・備品等

・ 工場修理に必要な備品類、例えば手袋やウェス等の消耗品類が多めにあれば役に 立ったと思う。

・ 燃料の重要性を感じた。特に、移動手段の車に必要なガソリンや生産設備の運転に 必要な灯油などである。灯油は、帰宅する従業員に持たせて暖房用としても利用で きた。

⑥行政または民間(業界団体、他企業 等)から受けたかった支援

・ 特になし。

(4) 災害時の危機管理体制

①意思決定及び対応指示の担当者

・ 社長が出張中だったため、経営層である専務を中心に対応した。

②意思決定及び対応指示の経営面からみた妥当性

・ 適切に判断・指示できた。被災時には、一般の従業員でも判断や対応ができる局面 もある。しかし、事業の中断や休業の是否といった重大な決断は経営者にしかでき ないと思われる。

③指示に対する従業員の対応

・ 混乱無く指示に従い、冷静に対応できた。発災直後に避難した際、安全が確認でき るまで従業員を帰宅させず会社に留めた。それによって津波の被害を避けられたと いう面もあったと思う。

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