1.はじめに
文科省による調査によれば,高校 3 年生の平均的 英語力は,CEFR (Common European Framework of Reference for Languages:ヨーロッパ言語共 通参照枠)の A1 レベル(実用英語検定に換算す ると 3 級以下)であるという。同調査によれば,
「英語学習は好きですか」の問いに,「どちらかと いえば,そう思わない」「そう思わない」を合計 すると全体の半数を超える(文部科学省,2017)。
学習指導要領が定める英語科の到達目標が,高校 3 年生が実用英語検定準 2 級~2 級,中学 3 年生 が 3 級程度である(文部科学省,2016)ことを考 えると,日本の平均的高校生の実際の英語力は中 学卒業程度,しかも英語学習に抵抗を感じる生徒 が半数を超えるという実態が浮かび上がってく る。
高校 3 年生の半数以上が大学に進学する現況に おいて,この問題はそのまま大学での英語教育の 課題に直結する。つまり,高等教育における英語 力の大幅な欠如と,それを改善するための動機づ けに欠けている生徒が,大学生として入学してく るということだ。
このような状況に対応するために,本学では 3 年間をとおしてやる気を促しながら基礎力をつけ ていくカリキュラムを設置している。文法の教科 書を一からやり直したり,訳読を行ったり,総合 英語の教材を用いて形式的に整った枠組を提供す るのではなく,実際に英語を「使う」ことができ るようになるための枠組みを提供することを主眼
とするのである。具体的には,1 年次には,歌や 映画をつうじて音声インプットを取り入れ,絵本 や易しく書かれた学習者向けの本をつうじて文字 インプットを取り入れる。こうして,知識を習得 するのではなく,実際に英語が使われる文脈をと おしてアウトプットにつながる英語学習を,より 実際的にとらえ直す契機を提供しようとしてい る。2 年次では,知識の拡充をこれに組み合わせ,
3 年次において,社会人として求められる英語コ ミュニケーション能力の土台をつくる学習へと,
段階的なカリキュラムを構築している。
2.多読授業の内容
上記で述べたように,本学の基礎教養英語教育 では,前期の「英語 I(表現)」の音声インプッ トの取り入れを目的とした授業に引き続き,後期 は,文字インプットの取り入れを目的とした「英 語 II(多読)」を行っている。本学での「多読」は,
英語を母語とする英語圏の子ども向けの本や学習 用絵本 (Leveled Readers),英語学習者向けの本
(Graded Readers) を で き る だ け 多 く( ま た,
CD を利用して聴きながら)読むことをとおして,
英語のインプットを増やすことを目指す授業であ る。図書館には 3000 冊以上の多読用図書が設置 されており,また授業のために多読用図書カート をクラスごとに用意している。
この授業の最大の目的は,英語が苦手と感じて いる学生に「英語で読むのは楽しい」と感じても らうことである。楽しさを感じる多読の方法とし て,次のような多読 3 原則(酒井,2002)を採用
大学基礎教養英語教育の試み
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