言語センター広報 Lan gua geSt udi e s 第 4 号 ( 1 9 9 6 . 3 ) 小樽商科大学言語センター
大学一般教養英語 における
リサーチプ レゼ ンテー シ ョン導入の試み
‑ 小樽 商科 大学英 語 Ⅰ Ⅰでの実践報 告 ‑
小 林 敏 彦
本稿 は,平成 7 年度の小樽商科大学の‑般教養英語 Ⅰ Ⅰで一年間行われた リサーチプレゼ ンテー ションの報告 と今後 の展望 をまとめた ものであるO リサーチプレゼンテーションとは,発表者が 自由に選択 した話題 について, 詳細 な調査 を行 い,クラス全員の前で 1 5 分間 自由に英語で発表 し, その後質疑応答するものである。これ は,英語の口頭発表技能だけで はな く,リサーチす る技術, 人前で 自分の考 えを発表する技能,発表 を効果的に組 み立てる力,即興で質疑 に応 じる力 を養成 することを目標 としてお り, 初年度 の履修者 のほ とんど全員 に とって初 めての授業形態であった。
発表 は前期 と後期の一回ずつ行われ , 3 人 までのグループ発表 も許 され,いずれかの発表時に必 ず個人発表 をす ることが義務付 けられたO発表者の中には,黒板, ビデオ,テープレコーダーを 駆使 し, よ り効果的な説明 を試みた者 もいた。発表 は, 1)内容, 2)準備, 3)熱意, 4)英 語, 5) 反応 についてそれぞれ, 5 点満点で,合計 2 5 点満点の得点が与 えられた。英語力 自体 は, 評価全体 の 5 分 の 1 に過 ぎず,「 英語 によって他人 に内容のあるものを効果的に説明する能力の総 体」が評価 される仕組みになっている。 これ は将来,企業 に就職 した場合 の企画の説明や,その 他のビジネスの場面,並びに一般的な異文化 コ ミュニケーションの場 において英語 によってある テーマをきちん とまとめ上 げ説明する機会 に大 いに役立つ もの と考 えられ る。一通 りの英語の語 桑 と構文力 を習得 した大学生 に,彼 らの知的 レベ) I ,を尊重 し内容 のあることを一定時間英語で話 し続 ける技能 を習得 させ るには, リサーチプレゼ ンテーションは画期的な語学教授法の一つであ る。
1:l NTRODUCT1 0N
英語 は使わなければ習得で きないQ 日本国内のような外国語 としての英語 ( EF L)学習環境 の 中で は,英語 をアウ トプッ トす る機会が限 られているO‑通 りの英語の語嚢 と構文力 を身 に付 け た大学生 に,彼 らの知的レベルを尊重 し内容 のあることを英語で話 し続 ける技能 を習得 させ るに はリサーチプレゼ ンテーションは画期的な語学教授法の一つ。 リサーチプレゼ ンテーシ ョンとは 従来のプレゼ ンテーションに加 え,準備段階である リサーチにより比点 をおいた教育活動であるO
今やプレゼンテーシ ョンは一般企業の中で重要な技能 と認 められているOプレゼ ンテー ション に関する解説書 は,現在 日本で数十冊 出版 されてお り,その関心の強 さを示 している。企業の中 で,英語 を話す機会 はます ます多 くなるにつれて,挨拶,儀礼や簡単 な情報交換 などの英会話 の レベルか ら,内容の伴 った しっか りした話題 について発表 した り意見交換,更 には討論 までする 英語力が求 められて きている 。Ki r kwol d( 1 994)らが行 った東京の外資系企業 の従業員 と人事担 当者のイ ンタビュー調査 の結果か らも,プレゼンテーションの重要性が明 らかになった。彼 らは プレゼンテーション能力の開発 として,「リサーチ」 , 「 作文」 , 「 発話技能」を 3 本 の柱 としたシラ バスの作成 の必要性 を強調 している。
大学 において学生 に リサーチプレゼンテーションの技法 を身 に付 けさせて上 げる意義 は,何 も
企業で必要であるとい う実利面 だけか ら考 えるべ きで はない。 リサーチプレゼ ンテーションは英
語 の習得 のための教育手法 として有効 である と同時 に, それ によって学生 たちに知識 を言葉で表 わす機会 を提供 して くれ る ( Lawr e nc e ,1 9 9 1 ) 。教室での教授 で は,討論 な どを取 り入れている ところもあるが,参加 す る学生数 は限 られ, また学生 の準備負担 は相 当な もの とな る と考 え られ るo それ に対 して, リサーチプレゼ ンテー シ ョンは決 め られたわずか なルール に基づ き,発表者 のペースで進 め られ,毎 回の授業で割 り当て ることによ りシラバ スの中に容易 に組 み入れ ること が可能 である。
一方,長年英語 のス ピーチ コンテス トや暗唱大会が 日本各地で行われて きているが, ある一定 の教育効果 は期待 で きるものの,大学英語 のレベルで は得 る ものが少 ない ように思われ る。 その 第一 の理 由 は,完成 された英文 を徹底 して丸暗記,復唱 しているだけで は音声面での教育効果 は 期待 で きて も,本来 のス ピーチの意義 である自己表現が画一的で,非創造的な ものに固定化 され て しまう危供があるか らである。わずかな分量 の同一 のス ピーチ原稿 を何 日か けて練習 して も, 演出に凝 ることはあって もその内容 を更 に発展 させ ることはない。毎 回手直 ししていて は,暗記 し切れず, また第一 テープ審査で出 した原稿 と大会 当 日の英文が大 き く違 って はな らないのであ る。 しか し, あるテーマ について何 日も時間 を充 て ることが可能 な らば,大学生 の知的 レベル に もなれ ば, よ り内容 を発展 させ,英文 を直 してい こうと思 うのは当然 である。 ス ピーチ は一度完 成 させて しまうと, もう最終生産物 ( f i nalpr od uc t ) として保存 されて しまうため,創造的変化 はで きないのである。第二 に, ス ピーチ は 「 聴衆 に向かって,一方通行 で話 しをす る, とい う意 味 あいが強 い 」( I wa mur a,1 9 9 5:6 ) 発表形態である とい う点である。
他方, リサーチプレゼ ンテー シ ョンで は,発表後 に質疑応答があ り,発表者 と聴衆 との間 に意 味交渉 で あるイ ンタラクシ ョン ( i nt e r ac t i o n) が ある。イ ンターラ クションの重 要性 は ,Lo ng
( 1 9 8 3 ) がイ ンタラクシ ョン仮説 ( I nt e r ac t i onHypo t he s i s ) の中で主張 してい る。 この仮説 で は, 聞 き手 の積極的な意味 の確認 な どの行為が言語習得 には欠かせ ない ことを強調 し,一方的なイン プ ッ トだけで は不十分 である としている。発表後 に質疑応答 の時間 を設 けることは習得 とい う観 点か ら不可欠である。 また, リサーチプレゼ ンテー シ ョンで はあるテーマについていか に効果的 に相手 に理解 して もらうかが重要 にな り," 感動的ス ピーチ〝な どとい う美的要素 は二次的な もの で あ り,適切 な配布物,機器 の効果的な使用,聴衆 の前 でのデモ ンス トレー シ ョンな どの要素が 主要な意思伝達 の媒体 として働 く。このため,口頭 の言語伝達 はこれ らを補佐 す るものに過 ぎず, 評価 について は, これ らの意思伝達媒体 の総体 に よる聞 き手 へ の メ ッセー ジの伝 達度 が良 い リ サーチプレゼ ンテー シ ョンと悪 い リサーチプレゼ ンテー シ ョンの別れ 目になる。 ゆえに,一字一 句 間違 えず に話 そ うとす る固定化 されたス ピーチ と比較 し,話 し手 はその媒体 の操作 を自由に任
されてお り,伸々 と創造的な発話 を行 うことが可能 になる。
1 ‑1 :言語の 4 技能
英語力 は,読 む ( r e adi ng) ,書 く ( wr i t i ng) ,聴 く ( l i s t e ni n g) ,話す ( s pe aki ng) の四つの技 能 に分 けられ,バ ランスの とれた習得が望 ましい。 それ はこれ らの四技能がお互 いに深 い係 わ り
を もった総合体 ( s ynt he s i s ) の ような ものだか らである。図 1 はこれ らの四技能 をその性質 に 基づいて分類 した ものである。
図 1
発信型 ( p r o d u c t i v e ) 受信型 ( r e c e p t i v e ) これ らの四つの技能 は 「 発話」 と 「 聴解」 の 話し言葉 ( o r a l ) 発話( S p e a k i n g ) 聴解 ( Li s t e n i n g ) 話 し言葉 と作文 と読解 の書 き言葉 に分 けられ る 書き言葉 ( 耶i t t e n ) 作文( Wr i t i n g ) 読解 ( Re a d i n g )
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大学一般教養英語におけるリサーチプレゼンテーション導入の試み
が,話 し言葉 は一瞬 に して消 えて しまう性質 の ものであるのに対 して,書 き言葉 は後 まで形が残 る性質 を持 っている。 また話 し言葉 は母 国語 の場合 は一般 に他人 に意識的 に教授 され ることな く 自然 に覚 えられ るが,書 き言葉 は他人か ら習わなけれ ばな らな らず意識的な学習が必要である。
外国語学習 の場合 は,書 き言葉 のみな らず話 し言葉 も意識 的に,更 に計画的 に学習 を進 めていか な くて はな らない。
更 に, これ らの四技能 は自分が実際 その言葉 を発す る側 であるか,言葉 を受 け取 る側で あるか によって,発話 と作文 は発信型技能 に,聴解 と読解 は受信型技能 に分 けられ る。 これ らの四つの 技能 は独立 して上達 してい くので はな く, お互 いに関連 しなが ら,特 に同 じ型 の技能間で は補強
しなが ら発達 してい く。
従来 の 日本の英語教育 は,中学,高校,大学のいづれの レベル において も受信型 の技能教育 が 中心であった。英文 を訳 し理解す る文法訳読教授法 ( t heGr ammar ‑ Tr a ns l at i onMe t ho d) が教 授法 の中心であ り,英文 の意味 の抽 出に学習者 はエネルギーが傾倒 してい るのである。音声面 に おいて も教科書付属 のテープを流す程度で,学習者 による積極的な参加 の場面が少 ない。言い替 えれ ば, 自己表現 の機会 を提供 した授業形態で はない と言 える。 これ は英語教育 だけで はな く, 他 の分野 において も, 日本社会 の中における " 控 え目な姿勢〝 に対 す る伝統的美徳観念が大 きな 障害 となってい ることは否定で きない。学校教育 のカ リキュラム,授業形態,教員 の生徒,学生 に対 す る接 し方 に至 るまで,全 てが集団主義 であ り,教室 内で は学習者 に十分 な自己表現 の場 を 与 え られていない。 この ような背景 の中で,母国語 で さえ人前で しっか りと自分 の意見 を述べ, 効果的な説得法 な どを習わず大学 に入学 した学生 にい きな り英語 でデ ィスカ ッシ ョンやデ ィベ ー トをさせ ることには無理が あるQ しか し機械的 に原稿 を暗唱す るだけのス ピーチで は大学生 に十 分な自己表現 の機会 を与 えることがで きない し,彼 らに知的満足 を与 えることも不可能である。
リサーチプレゼ ンテー シ ョンは,学習者 に リサーチ と自己表現 の機会 を与 え,英語 の発信技能 を 高める教育 的手法 として今後 もっ と注 目され るべ きである。
1 ‑2 :学生が求 めてい る英語力
平成 7 年 の小樽商科大学 の緑丘祭で英語の使用 と国際性 についてのシンポジウムが行われた。
これ に先立 って英語学習 に関す る意識調査が行われた。調査結果 はシンポジウムの際 に冊子 とし て参加者 に配布 された。質問事項 の中で 「 外国語 が話せ るか。 また,話せ るようにな りたい」か とい う問いに対 して ,2 5. 6 % の学生が 「 話せ る」 と答 え ,6 9. 0% の学生が 「 話せないが,話せ る ようにな りたい」 と回答 し,「 話せ るようにな りた くない」とい う消極的な学生 はわずか 5. 3% で あった。 この 「 話せ ないが,話せ るようにな りたい」 と廟 う学生 の うち ,4 8, 7 % の学生が話せ る ようになるための対策 として,特 に何 もしていない と答 えたC また この話せ るようにな りたい と 願 う学生の話せ ない原因 自己分析で は,「 勉強不足,努力不足」 , 「 使 う機会がないか ら」 , 「 学校 ( 語 学教育)が悪 い」 , 「 耳が慣れていない」 , 「 積極的になれない」 , 「 恥ずか しい」 , 「自分 の語学力 に 自信が持 てないか ら 」 「 思 い切 って話す勇気がない」 , 「 難 しいか ら」 , 「 会話 の練習不足」な ど多様 な分析が なされてい る。 この自己分析で はそれぞれの分析項 目に対 して どれ ぐらいの数 の該 当者 がいたのか量的なデータが明 らかにされていないので どの程度 の一般化で きるか は疑 問である.
しか し,「 勉強不足,努力不足」 , 「 会話 の練習不足」 な どは的 を得 ている と思われ る一方で,「 学 校 ( 語学教育)が悪い」 とい う回答 も当然の ことなが らあった ことは無視 で きない。
同調査で は語学授業 に対 す る学生側 の評価 も行 ったが,「とて も良い ( お もしろい) 」 とい う回
答 もあったが,その多 くが「 高校の授業の延長のようだ 」 「 英文を訳すだけで英語が話せ るように なる訳がない」 という教授法に対する不満 を上げる回答が多かった。 この結果 は,同調査に先駆 けて 3 年前に結果が まとめられた大学英語教育学会 ( J ACET) による 「 職業人か ら見た英語教育 に関する実態 と将来像の総合的研究 ( 研究代表者 :小池生夫)の中の質問項 目の結果で も裏付 け られているO同報告では,大学時代 における英語授業への横極度 に関する質問 ( 2 9 ページ)で, 3 0. 7% の回答者が 「 消極的に授業 に臨んだ」と答 え,その理由として 51. 6 % の回答者が 「 授業が つまらなかったか ら」 と答 えている。
1 ‑3:リサーチプレゼンテーションの実践例
リサーチプレゼンテーションの研究報告例 として,第 3 3 回大学英語教育学会全国大会 ( 1 9 9 4 , 愛知淑徳大学)にて,慶応大学の霜崎教授 らがたいへん興味深い報告を行 っている。その発表で
は,慶応大学湘南沢キャンパスで実践 されているリーサーチプレゼンテーションについてビデオ を交えて,いかに学生たちが準備 をし,発表 してい く様子が報告されたb報告の中で強調 されて いる理念 は,文法や語桑などの英語そのものについての知識 を教 え込むことではな く,既に持 っ ている英語の 「 蓄 え」 を生かし,コミュニケーションをする場 を与 えることが大学英語教育では 重要であるという点であるO また大学生には自己主張する機会が少ないことを指摘 し,学期始め は, まず日本語でお互いに自己紹介 し合いクラス̲ の雰囲気に馴染んでい くことか ら始めている 。
2:METHODOLOGY 2 11 .Ob j e c t i v e s
本研究論文の目的は, リサーチプレゼンテーションが大学生の英語学習及び自己表現能力 を身 に付 けさせる教育手法 として どのような効用があるのか,その可能性 について仮説 を立て,小樽 商科大学の平成 7 年度の英語での実践及び学生 によるアンケー トを基に,それぞれの仮説につい て可能な限 り検定 を行い,大学英語教育の枠内で リサーチプレゼンテーションが どのような位置 付 けで今後実施普及 されるべ きかを検討 し,提言 を行 うことである。
2 ‑2. Su b j e c t s
この研究の対象 となったのは,平成 7 年度に小林担当の小樽商科大学商学部英語 Ⅰ Ⅰのコースで ある E2 2 0 と E2 2 1 を履習 した計 9 5 名の学生である。履習者の 9 0 % 以上 は 2 年 に在学す るもの で男女比率 はほぼ同 じ,平均年齢 2 0. 1 9 歳である0
2 1 3 . Pr o c e d u r e s
2 ‑2 ‑1 :リサーチプレゼンテーションの 目的 と手順の説明
授業の初 日には, まず教科書,授業の進め方,評価法について次ページにある授業メニュー表 を配布 し説明 した。そして, リサーチプレゼンテーションの目標 と手順 を口頭で説明する代わ り に,霜崎教授 らの慶応大学湘南沢キャンパスでの リーサーチプレゼンテーションを描いた市販 ビ デオ 「 Ac t i vat i ngCol l e geEngl i s h:Ⅰ nt r oduc t or yCour s e . Tokyo:I kubundo. 」 をモニターでま ず見せた。 このビデオには, リサーチプレゼンテーションの日的,手順 と発表の実例が克明に説 明されている 。1 5 分程度の長 さのビデオが終了 し,多少の補足説明をした後 に当クラスで どのよ
うに実践 してい くかを説明 した。小樽商科大学の 3 0 8 番教室で使用可能な視聴覚器具や履習者の
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大学一般教養英語 における リサーチプレゼンテー ション導入の試み
数 に合わせた手順 やルールの説明 を行 った。
講 義 メ ニ ュ ー 1 :単語小 テス ト ( voc a bul ar yqui z):5 分 .
前週 に指摘 された語群 の中か ら 1 0 間出題, "F〟 は遅刻扱い とす る。
1 0 ‑ 8 点 A ( 倭) 7 点 B ( 良) 6 点 C ( 可)
5‑ 0 点 F ( 不可)
2 :歌詞聞 き取 り演習 ( f i l l ‑ i n‑ t he ‑ bl anke xe r c i s et hr o ughmus i c ):1 0 分 3 :発声演習 ( s i ngi ngt hes on g):5 分
4 :リサーチプレゼ ンテー ション ( or alpr e s e nt at i on):1 人 20 分 ×2‑40 分 5:プ リン ト演習 「 世界 q )中の 日本人
」 :30分
必ず前 もって演習の解答 を済 ませてお くこと 。 作文 は板書 し公開添削す る。
成績評価法 ( 1‑1 0 0 絶対評価) 出席点
講義姿勢
プレゼ ンテーシ ョン 前期試験
後期試験
20% ( 欠席 5 回で不可,遅刻 とFは2 回で 1 欠席) 20% ( 授業中の私語,宿題,な どを考慮)
1 0×2‑20% ( 前期 と後期 に一回ずつ行 う) 20% ( 前期で出題 された単語, プ リン ト演習か ら) 20% ( 後期で出題 された単語, プ リン ト演習か ら)
2 ‑2 ‑2:リサーチ プレゼ ンテーシ ョンの割 り当て と進行
授業初 日には40 名 を超 える学生がいた。全員 に リサーチプレゼ ンテーシ ョンのテーマ,内容, 使用す る視聴覚機器 に関す る調査表 を配布 した。受講生 は
,1 学年期 に前期後期 1 回ずつの発表
を行 って もらうように指示 し, 2回の発表の内,片方 を 2‑ 3名か らなるグループ発表 にして も いい ことを伝 えた。 もちろん 2 回 とも一人 で発表す る個人 プレゼ ンテー ションで も構 わなかった のである。一 つの発表 は 1 5 分 とし,その後,聴衆である他学生及 び指導教官 との質疑応答 を 5 分 間入れ ることも伝 えた。 リサーチプレゼ ンテー ションでは毎回,ハ ン ドアウ トを用意 し, クラス 全員の分 をコピー して くるように指示 した。 また必要 に応 じて英和 また和英 の語桑対照表 を付 け るように指示 した。 このクラスでの リサーチプレゼンテー ションでのルールの特徴 は,慶応大学 での例 にな らい,発表者 の発す る言語が英語であれば,配布物,板書,使 うビデオやテープは何 語 の ものを使用 して もいいようにした点である。 また発表用の原稿作成 に役立つように リサーチ プレゼンテー ションで よ く使われ る表現 をまとめたハ ン ドアウ ト ( Appe ndi x l参照)を全員 に 配布 した。実際, ここか らの表現 をほ とん どの学生が発表 の時 に使用 した。
調査表 は翌週 に回収 されたが, 2 回日の発表 のテーマを決めかねていた学生が多数 いた。回収 直後 に,回収 された調査表 の束の上か ら順 に発表の順番が割 り当て られ本人 に口頭で伝 えられた。
毎回 2 つの発表が行われ るように, とりあえず は前期分 の発表割 り当てを行 った。
毎回の授業 は単語小 テス トか ら始 まり, その後 リラックス とリスニ ング演習 を兼ねた英語ポ ッ プス音楽の歌詞聞 き取 りを行 った。一度歌詞 を聞いた後 に,音 の リダクシ ョンを解説 しなが ら空 欄 の単語の解答 と解説 を行 った。 その後全員起立 し音楽 を再生 しなが ら全員で合唱 した。次 に, 英字新聞のニュース記事 を使用 した読解,作文演習のプ リン トを解説 し,残 りの 4 0 分間で 2 つの
1 )サーチプレゼンテーションが行われた。
2 ‑2 ‑3 :発表テーマの選択
2 つのクラスの履智者 は,表 1 にあるように,彼 らの最近最 も関心のあ' るテーマについて発表 を行 った。 1 回目と 2 回 目にそれぞれ英語 E2 2 0 で は 2 2 テーマ と 2 8 テーマ,英語 E2 21 で は 2 1 テーマ と31 テーマについての リサーチプレゼ ンテー ションが行われた。両 クラス共 に 2 回日の方 が テーマが多いのは, 1 回目で は不安 もあってかグループ発表 した者が多かったためである。 ど ち らか一方 を個人発表す るように指示 していたので ,2 回 目に個人発表が集中す る結果 となった。
表 1:受講生が選んだテーマ
英語 E2 2 0 1 回目
「がんは食生活か ら 」 「 パスタ 」 「ヨッ トについて 」 「 化学 」 「ジュース等の噂好品 」「 I nt e r e s t i ng Pl ac e s i n Ot ar u」 「 南 アフリカでの人種差別 」 「日本 のプロレス史 」「 1 0 0 年前の 2 0 世紀」
「 GOGH について」「 男女差別 について 」 「 環境破壊 について」 「 W h atwi l lyoudoi fabi g e ar t hq uakeoc c ur s?」 「 映画の歴史 について 」 「ダイエ ッ トについて 」 「ボー トについて 」 「サ ッ
カー ワール ドカ ップの歴史 」 「 関東大震災 について 」 「 映画 について 」 「 交通問題 について 」 「ダ イエ ッ トについて」「ホームステイ して」 ( 合計 2 2 テーマ)
2 回目
「 交通事故 を考 える 」 「アメ リカの四大スポーツ 」「 Que e n について 」 「日本 の武道合気道 」
「 紅茶 」 「 高齢出産 」 「 北 の国か ら 」「 Myho bby」 「 遺伝 」 「 ハ ン ドボール について 」 「 第 2 の心 臓 :足 と身体 の関係 」 「 富良野 について 」 「アメ リカ と日本 の陪審制度 の違 い」「 バスケ ッ トボー ル」「 人相 」 「 外国 ドラマ を見て ヒヤ リング 」 「 堕胎 」 「 競馬 について :僕 の愛 したお馬 さん」
「 修学旅行 」 「 虐殺 :第二次世界大戦が もた らした史上最大 の悲劇」「タイについて 」 「 英文 レ ターの書 き方 」 「 東京への行 き方 」「 wa t e r 」 「 手相 について 」 「リンゴースターについて 」 「ホッ
トケーキの作 り方 」 「 大学生活 について」 ( 合計 2 8 テーマ)
英語 E2 21 1 回 日
「テニスについて 」 「ダイエ ッ トについて 」 「 ハ ン ドボールについて 」 「日本 の伝統的なスポー ツと遊 び 」 「 私 のお気 に入 りの もの 」 「ラボについて 」 「 愛知県 について 」 「ダイエ ッ ト 」 「ポー トについて 」 「 剣道 について 」 「 栃木県の紹介 」 「 バ レー 」 「 京都 の名所 について 」 「わが街札幌 」
「ビール 」 「 卓球 について 」「 AI DSPr o bl e msi n J apa n」 「 サ ッカーについて 」「 Mus i cSc e ne
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大学一般教養英語におけるリサーチプレゼンテーション導入の試み i nSa p po r o 」 ( 合計 1 9 テーマ)
2 回目
「モスバーガーについて」「イタ リアについて」「 おせち料理」「 バ レーボールについて」「 全 国のお経煮」「ジャックーブルースについて 」「 Ho w t op l a ywi t hr e c o r d s 」「 原辰徳 につい て」「サザエ さんについて 」「 Me e tt he 東京 ビー トルズ」「 札幌一小樽 のおすすめスポッ ト」
「 太陽について」「日本酒 について」「 ハゲについて」「四季 について」「 温泉 について」「アメ リカンフッ トボール」「 猫の歴史」「サルで もわか る野球」「コンビニエ ンスス トア」「 星座 に ついて」「マージャンについて 」「 I na ndAr o undCa mbr i d ge 」「スノーボー ドについて」「 音 楽 とギター」「 青森県」「ジー ンズについて」「ミネラルウオーターについて」「グレーシー柔 術」「日本茶 と健康茶」「 北海道版 ミステ リースポッ ト 」 ( 合計 3 1 テーマ)
2 ‑ 2 ‑ 4 :テーマの選択傾 向
テーマの選択 は全 くの自由であるが,彼等の選択 したテーマを見れば,現在 の大学生像が見 え るC この 1 年間 に発表 された 1 0 0 のプレゼンテー ションのテーマ はその内容か ら大 きくい くつか のグループに分類で きる。
まず,圧倒的に多かったのが発表者 の個人的な噂好や趣味,思想 に関す るテーマである。「 紅茶」
「 サザェ さんについて」な どがその代表例である。
次に,発表者の属する部活動 とアルバ イ ト体験 な ど,一定の時間をさいて反復的に体験 してい る行為 についてである。部活動 に関す るもののほ とん どは運動部系のテーマが多 く,文化系 クラ ブの ものが少なかったのが特徴 としてあげられ る。「 サ ッカーについて」「ボー トについて」「ヨッ トについて」な どはその例であるが,男子選手 と女子マネージャーが一緒 に発表するグループプ レゼンテー ションが多かった。
また, 自分 の出身地 の観光案内や歴史 を紹介するプレゼ ンテーションもあった。道外出身者た ちによる「 愛知県について」「 栃木県の紹介」「 青森県」,道内出身者たちによる「 わが街札幌」「 富 良野」 についてな どである。
最後 のグループはかな り内容 の高度で細かな 1 )サーチを要す るテーマであるo「 堕胎」「 虐殺 : 第二次世界大戦が もた らした史上最大 の悲劇」な どは詳細 なハ ン ドアウ トが配布 され,生々 しい
ビデオが見せ られ,聞いている学生か らため息が漏れた場面が見 られた発表 もあった。
2 ‑ 2 1 5 :リサーチ プ レゼ ンテーシ ョンの採点法
リサーチプレゼ ンテーションの採点 にあたっては, 1)内容, 2)準備, 3)熱意, 4)英語, 5 )反応 の 5 つ を基準 に行 われた。毎回発表 の際 に,発表者 はあ らか じめ配布 していた採点表 ( Ap pe n di x I I参照)を必要事項である 「 氏名」「日付」「テーマ」を記入 し,審査す る指導教官 に 提出 した。
「内容」は,大学生 としてふ さわ しい内容 のテーマを選定 し,適切順序で発表 を進 め,質疑応答
併せて 1 5 分か ら20 分 の間 に発表 を終了 させたプレゼ ンテー ションか どうか を基準 とした。「 準
備」 は,教室内で使用可能な,器材である黒板,テープレコーダー, ビデオデ ッキを十分 に活用
し,かつテーマ,氏名,学生番号, 日付 を記 した配布物 と採点表 を持参 し,発表 のための練習 を
重ねた成果が表われていたか どうかを基準 としたO「 熱意」は,聴衆 と十分 なアイコンタク トをは か り,原稿 の棒読みで はな く,相手に話 しかけるように発表 を進 め,かつ話の内容 を熱心 に伝 え ようとする姿勢が感 じられ るか どうかを基準 とした。「 英語」は,発音,アクセ ン ト,イン トネー ションが十分理解可能 な範囲であ り,適切な語秦 と構文で話 し,かつ文法的にも適切で自然な話 し方 をしていたか,更 に質疑応答の場面 において,質問者の英語 を正 し く理解 し,適切な回答 を したか どうかを基準 とした。反応 は,聴衆が発表 に熱心に耳 を傾 仇 かつ質疑応答の場面 におい て,質問が出されたか どうかを基準 とした。 またそれぞれの基準 ごとに, " e xc e l l e nt 〟(5 点),
" good〝(4 点) , " ave r a ge 〝(3 点) ) , " no te no u g h〝(2 点), " poo r 〝(1 点)が与 えられた。 こ れ らのポイ ン トは合計 され ,2 5 ‑2 3 点 を A ( 倭) ,2 2 ‑2 0 点 を B ( 良) ,1 9 ‑1 5 点 を C ( 可) ,1 4 点以下 を F ( 不可) とし,採点表 に発表者にわかるように記入 され渡 された。 " exc e 】 l e nt 〝 とは, 学生の発表 としては, もう十分 に満足 のい くレベルで, " goo d 〝とは,学生 の発表 として,満足の 行 くレベル, " a ve r age 〝とは,学生の発表 として, ほぼ満足の行 くレベル, " note nou gh〝 とは, 学生の発表 として,満足の行かない レベル, " poo r 〟とは,学生の発表 として, まった く評価の対 象にもな らないほど劣 るレベルを意味す る。 またコメン トとして,英文でアイコンタク トなどに ついて詳 し く書いた。
2 ‑4.Hy p o t h e s e s
リサーチプレゼンテーションには,様々な教育的効用があると仮説す る。その教育的効用 は以 下のように分類することが可能である。ここではそれぞれの仮説 とその根拠 を交 えて説明 を進 め, 後 にそれぞれの仮説検定 を年末 に行 った学生のアンケー トと 1 学年期 にわたる授業 の観察 に基づ いて行 う 。
2 ‑4 ‑1 . 仮説 1 :調査能力,資料の整理能力が強化 され る
リサーチプレゼンテーションは,「 準備」 ,「 発表」,「 質疑応答」の 3 つの段階 に大 きく分かれる。
準備 には数週間の準備が必要 と考 えられ る。発表時間 は 1 5 分, 質疑応答 に 5 分 という規定であっ たが,充実 した 1 5 分間の発表のためには,もちろんその何倍 もの時間 を費や し調査 を行 い,資料 を収集 し,発表原稿の作成の段階 において様々な考慮 のために収集 した資料 を選抜する作業が含 まれ る 。 これ らの リサーチの諸段階での作業 は,当授業の リサーチプレゼンテーシ ョンのみな ら ず一般の開講科 目やゼ ミの課題な どにも必要な ものであ り,既 に経験 したことがある学生 も多い はずである。 しか し,英語 という一般科 目の中で経験 した学生 は少ない と考 えられ る。
リサーチプレゼンテーションのための調査 とは,図書館で文献 を調べ るライブラ リー リサーチ や,新聞,雑誌な どに日を通 した り,場合 によってはアンケー トやイ ンタビューな どの行為 も含 まれ る。 また最近のマルチメディアの発達のため,イ ンターネッ トを活用 した資料収集 も大いに 考 えられ る。ただ し, リサーチプレゼンテーシ ョンのテーマを発表者が自由に選択することがで きるために,学生の中には客観的な資料 の収集 を必要 としない, または収集不可能 なほ ど特異な テーマを選択することが考 えられ る。 そうした t )サーチプレゼンテーシ ョンは, リーサーチの要 素 を欠 いた もの となる。 これ はリサーチプレゼ ンテーションの教育的効用の中で調査能力,資料 の整理能力 をどの程度重視す るかの間恵 にかか っている。 これ らの技能重視 の観点 に立てば, リ サーチプレゼンテーシ ョンのテーマ選択 に何 らかの制限 を加 えることは避 けられないであろう。
しか し言語能力開発の中に自己表現能力向上が不可欠な要素であるとい う観点 と将来何 らかの形
‑ 4 8
‑大学一般教養英語 における7 )サーチプレゼンテーシ ョン導入の試み
態であるテーマについて英語 で発表す るような必要性が あるとい う実用性 の観点 の双 方 に立 て ば, リサーチプレゼ ンテー ションのテーマ選択 は自由のままであった方が適切であると考 えられ る 。
2 ‑4 ‑2 . 仮 鋭 2: 英文資料読解 力が強化 され る
資料 の収集及び選抜 の段階で は, もちろん資料 に目を通す作業が含 まれ る。資料 は情報 の収集 であるか らそれ は日本語で も英語で も何語で も構わないが,収集 した資料が英語 の場合 は,多 く の英文 に接す ることになる 。 このため一字一句和訳 しなが ら英語 を理解 してい くのではな く,ス キャニ ング ( s c a n n i n g) のように短時間で大 まかな情報 を得,必要 に応 じてていねいに読 み進 め てい く技術が求 め られ る。 このような技術 を向上 され るためのタスク ( t a s k) を リサーチプレゼ ンテーションの準備の中に取 り入れ ることによ り,学習者 は目的意識 を持 ちつつ作業 を進 めてい くために,集中 した英文資料読解 の機会が与 えられ る。
2 ‑ 4 ‑ 3 . 仮 説 3 :英作文力が強化 され る
発表の内容が 日本的で, 日常的,個人的であればあるほど,英文資料 の入手 は困難 さを増 し, 学生 による作文 の作業が増 える 。 本年度 の学生のほとん どがあ らか じめ原稿 を英文で作成 し, そ れを読 み上 げる方法 をとったが,棒読みや聴衆 とのアイコンタク トを全 く取 らない発表 は大 きく 減点 され ることはあ らか じめ伝 えてあったので,多 くの学生 は,原稿 を部分的にで も暗記 しよう とした者が多かった。 また板書 した文や図表 を説明す る際に,即興 で英文 を作 って説明 していた 者 も若干 いた。 このように リサーチプレゼ ンテーシ ョンの準備段階で中心 となるのが発表原稿 の ための英作文作業 であ り, リサーチプレゼ ンテー ション導入 において,学生 に時間的にも豊富な 学習機会 を与 えることを可能 にして くれ る重要な要素である 。
教授法の視点か らもこの英作文 の段階に何 らかの教官か らのフィー ドバ ックがあることが望 ま しい。 しか し,発表原稿 にあ らか じめ目を通 し,使用語柔,構成上 の問題や文法的な誤文な どを 修正 してあげた り, また英文 の音読 まで をチェックす る時間的余裕 は,非常勤講師の場合 は極 め て困難である。原稿 を受取 り,翌週 に返却する方法 も考 えれ るが,多 くの学生 に早期の原稿作成 を強いることになる。今年 の発表者 に対す る調査で もほ とん どの学生が原稿 を書 き終 えたのが前 日である とい う状況が明 らかになった ことも考 えなければな らないO
しか し, よ り効果的で善意 の指導のためには, このような状況 において も,原稿 の締切 り等 を 早 くに設定 した り,受 け取 った原稿 を添削後,大学 にファックスで送 り,教務係 を通 して学生 に 返却する方法 も一案 として考 えられ る。 また発表後であって も,使用 した原稿 を提出させ,後 日 添削 し返却する方法 もある。
更に授業時間 に余裕があれ ば,発表原稿 の一部 を板書 させ,それ を 「 公開添削」する方法 もあ
るC この公開添削 は,私の授業 の中で は必ず行 っている教授法の一つである。プ リン トで配布 し
宿題 になっている時事英語 に関す る英文 を,学生 の 1 人 に板書 させ,更 に 1 名学生 の中か ら添削
者 を選び出 し,添削させ る方法である 。 これ には最初の学生 には, 白いチ ョークで英文 を書 いて
もらゎ,添削す る学生 は草色いチ ョー クを用いて添削 させ,最後 に私が赤いチ ョー クを用いて原
文 と添削 を比較 し,問題点 を指摘 し,更 に今後の対策法 を指導す る方法である 。 この方法で は選
ばれた学生 の英文 は懇切 ていねいに修正 され,いわば賛沢な指導 を得 られ るわ けである。 その他
の学生 は自分 の英文 を私の解説 に基づいて自己修正す ることになる。 これ に満足 しない学生のた
めに授業後ルーズ リーフに書いて きた英作文 を受 け取 り翌週返却す ることを伝 えたが,常 に 1ク ラスに必ず提出 して くる学生が 2 名 ほどいた。 しか し,提 出 された英作文 には,私が解説 した点 が全 く書 き込 まれてお らず,私 の添削に全面依存す る姿勢が見 られた ことに多少懸念が残 った。
2 ‑4 ‑4 . 仮説 4: 即興での 口喜 東進文能力が強化 され る
リサーチプレゼンテーシ ョンは,あ らか じめ綿密な リサーチ と発表原稿 の作成作業があるため に,発表時 には,各発表者 は完壁 に暗記 した, または部分的 に暗記 した原稿 を読み上 げる形態 を 取 る。中には実際の企業のプレゼ ンテーシ ョンで も原稿 をほぼ棒読 みす る場合 もある。 そのため 発表時 において,発表者 の口頭造文能力が生か され る, または鍛 えられ る場面 は,原稿 を部分的 に暗記 した場合での,暗記 していない部分の説明箇所や原稿 の一部 を失念 して しまった場合の応 急処置 として英文 を作 り上 げた り,語垂的な問題が生 じた場合 に使われ るコ ミュニケーシ ョンス
トラテジー,及び質疑応答場面 における質問への回答 の, 3 つの場面が考 えられ る。
2 ‑4 ‑5. 仮説 5 :聴解 力が強化 され る
リサーチプレゼンテーシ ョンで は,発表者 の聴解力向上 のための学習機会 は限 られている 。 そ れ は, リサーチプレゼンテーシ ョンが本質上,知識の発信行為 であるか らである。ただ し,準備 段階 において,発表者が英文 の音声資料 ( 映画, ビデオ資料 など) を探索 し,発表用 に編集す る 作業 な どで は,英語 を聞 く機会がある 。 しか も英語 のニュースな どで書かれた原稿 の入手 の不可 能 な ものについては聞 き取 る作業が必要 とな り,要点 をまとめた り,場合 によって は全文 を聞 き 取 るディクテーシ ョンをしなければならない こともあ り得 る 。 また,外国人 と対象 としたインタ ビュー調査な どが準備段階 にある場合な どは,生 の英語 のイ ンプ ッ トを十分 に受 ける機会 に恵 ま れる。
2 ‑4 ‑ 6. 仮説 6 :対人 コ ミュニケーシ ョン能力が強化 され る
ここでいう対人 コ ミュニケー ションの能力 には, ダイアローグ ( di al ogue ) にお けるイ ンタラク ションに限定 され るもので はな く. リサーチプレゼンテーシ ョンの発表の部分 にあたるモノロー グ ( monol o g ue ) における効果的な意味 の伝達能力 も含 まれ る。 リサーチプレゼ ンテーシ ョンに おいては,発表後 の質疑応答のセ ッシ ョン (5 分間) にてダイアローグがあるが,全体か ら見 る と大 きな部分 を占めているわけで はない。教室内におけるリサーチプレゼ ンテー ションにおいて は,発表者の一方的な意味 の伝達がその主要部分 ( 1 5 分間) を占めている。
モノローグにおける対人 コ ミュニケーシ ョン能力 は,一方的な意味伝達 を行 う技能で はあるが, 聴衆である他学生及び教官か らの発表中のフィー ドバ ックを全 く無視 した もので はない 。1 5 分間 聴衆 をいかに自分 の発表 に惹 き付 けてい られ るか は,発表のための準備 はもとよ り常 に聴衆 の様 子 を伺 いなが ら発表の手法,声 の大 きさ,音響機器 の音量調整,配布物 の確認 な どの作業 を行 う か否かにかかっている。 このためには, まず発表者 は聴衆 とのアイコンタク ト ( e yeco nt ac t ) を 適切 にはか ることが不可欠 とをるO聴衆 の方 を見なが ら話 し続 けるためには,原稿 を空で言 える
まで音読 と暗記が必要 となる 。
モノローグにおける対人 コ ミュニケーシ ョン能力 は,意味伝達 を英語で行 うための第二言語の 運用能力 とそれ を効果的に行 うためのアイコンタク トな どの非言語行為だけで はな く,人前で話 す度胸,勇気,落 ち着 き,な どの心理的な要素が含 まれ ることを忘れて はな らない。 リサーチプ
‑ 5 0‑
大学一般教養英語 におけるリサーチプレゼンテー ション導入の試み
レゼンテ‑ションは, これ らの資質を高める機会 も与 えて くれる。
2 ‑ 4 ‑ 7 . 仮説 7 :あるテーマについての知識 と教萱が身に付 く
r )サーチプレゼンテーションは,準備段階において,一つのテーマについて詳細な下調べが必 要 となるため,発表者 にとって周知 した内容であって も改 めて資料の探索す ることで更 にその テーマについて知識が高 まる。他人に伝 えるか らには, 自らがそのテーマについて詳細な知識が あることが求め られるという意識か ら, リサーチを徹底 し唆味な部分 を解明 し発表に備 えようと するC また発表の手法 を考える段階では,そのテーマについて全 く背景知識のない他学生や教官 にもわかるように説明するために,聴衆の立場 になって考 える機会が必然的に与 えられる。 この ため,そのテーマについて客観的な再認識が行われ ことになる 。
リサーチプレゼ ンテーションは,発表 中に も聴衆 の理解度 を示す表情 や私語 の発生 な どの フィー ドバ ックを受けるため,説明の仕方の適正 さを考察する機会が出て くる。その不適切 さが 発表者の知識不足 に起国するものであると判断 した場合 は,授業終了後 にで も,その発表者 は自 主的にリサーチ, または簡単な確認作業などをするはずである。発表 に引 き続 く質疑応答の段階 で も,思いがけない質問などのためi =,絶句 した り,知識の不足 を感 じる場面が出て くる. この ような聴衆か らのフィー ドバ ックにより話題 について再考す る機会が得 られ,徹底 した事後 リ サーチに励むようになることが期待 される。
2 ‑5 ・An al y s e s
2 ‑5 ‑1 . 学生からのフィー ドバ ック
2 回の リサーチプレゼンテーションを終 え, また数多 くの他学生の発表を見てきた彼 らは, こ の リサーチプレゼンテーションについて どう感 じたかを知 るため平成 7 年 1 2 月の最後 の授業で アンケー ト調査 を行った。調査 は質問形式 をとらずにある言明に対 して ,1 :まった くそう思わな い ,2: そう思わない ,3: どちらとも言えない ,4: そう思 う ,5: まった くそう思わない,のい ずれかを選択 して もらい,それぞれの項 目を 1 か ら 5 点に数量化 し統計 を求めた。更 に各項 目に 対 して何か意見があれば書 き込めるように空欄 を設 けたO本調査で提示 された言明は,以下の 2 6 項 目である ( 実際に配布 された調査用紙 は Appe ndi x l I Iを参照) 。
1 :リサーチプレゼンテーションとは何か,その手順 と目的を理解で きた。
2 :リサーチプレゼンテーションの準備 は完壁であった。
3 :自分 に与 えられた評価 は納得のい くものであった。
4:評価の五基準 ( 内容,準備,英語,熱意,反応) は十分であった。
5 :本番ではうま くやれたと思 う。
6 :他人の リサーチプレゼンテーションや評価が気 になった。
7:発表時間 ( 20分)は適切であった。
8 :リサーチプレゼンテーションに必要な機具や設備 は十分であった。
9 :グループプレゼンテーションでは十分協力 し合 うことがで きた。
1 0: 本番前に原稿の添削や音読について指導を受 ける機会があればいいと思 う 。
l l: 本番後 にも原稿の添削を受 ける機会があればいい と思 う0
1 2 :リサーチプレゼンテーションは自分の英語力 を高める上でいい機会 を提供 して くれた。
1 3 :リサーチプレゼンテーションで英作文力が高 まった と思 う 。
1 4 :リサーチプレゼンテー ションで調音,発音,強勢,イン トネーションが強化 された。
1 5:リサーチプレゼンテーシ ョンで即興での口頭造文能力が強化 された。
1 6:リサーチプレゼンテーシ ョンで聴解力が強化 された0
1 7 :リサーチプレゼ ンテーシ ョンで資料 の探索,整理,選抜技能が強化 された。
1 8 :リサーチプレゼ ンテーシ ョンで度胸 をつけることがで きたC
1 9 :) )サーチプレゼ ンテーシ ョンで発表 した話題 について理解が深 まった0 20 :リサーチプレゼ ンテー ションで人前で発表す ることの難 しさが実感で きた。
21 :リサーチプレゼ ンテーションを終 えて,人前で話す ことに抵抗がな くなった。
2 2:リサーチプレゼンテーションを終 えて, 自分 に自信がついた。
23 :リサーチプレゼンテーシ ョンはもうや りた くない と思った。
24 :リサーチプレゼンテーシ ョンは大学 の英語の授業 に導入 され るべ きだ と思 う 。
25 :機会があればまた この授業 を履習 したい と思 う。
26 :友人,知人 にこの程業 を勧 めたい と思 う 。
2 ‑4.Re s ul t saDi s cu s s i on s
2 ‑4 ‑1 . リサーチプ レゼンテーシ ョンの採点結果
2 つのクラスの全 リサーチプレゼンテーシ ョンのそれぞれの基準項 目と平均点 をまとめたのが 表 2 である。下 の数値 は記述的表記で,第 1 回 日と第 2 回目のそれぞれの基準 と合計 の平均値問 の統計的有意差 を求 める統計上 の処理 はしていないため,第 1回 目と第 2 回目との間に技能 の向 上があったか どうかの判断 はここで はつ きに くい。
平均値 を見 てわかるように, 全体的 にやや甘い採点であった印象 を受 けるので はないだろうか。
採点基準別で見て見 る と,「内容」については全ての リサーチプレゼ ンテーシ ョンに 5 点が与 えら れた。 これ はまずテーマ は各学生が 自由に選択 し発表するものであるか ら,採点者 のテーマにつ いての知識や個人的噂好 な どの主観的要素 を排除 し,採点の公平 さを確保す るために一律 5 点 を 与 えた。ただし, 5 分 ぐらいで発表 を終わった り大幅 な発表時間の超過 に対 してはこの内零点の
表 2
E2 2 0 E2 21
採点基準 第 1 回目 第 2 回目 第 1 回目 第 2 回目
容
備 意
語応
内 準
熟英 反
合
計
0 4 1 4 2 0 3 9 4 1 5 4 3 4 4 0 1 6 2 3 0 4 6 9 3 5 4 3 3 4 0 2 7 3 6 0 7 2 3 5 5 4 4 4 4 0 8 2 9 3 0 4 8 0 8 5 4 3 4 4 0 9 2 9 6 0 4 9 1 4 5 4 3 4 4
2 2. 0 5
大学一般教養英語 における ) )サーチプレゼ ンテーション導入の試み
部分で減点 しようと考 えていたが,実際 に発表者全員が時間 を厳守 したので減点対象 となった リ サーチプレゼンテー ションはなかった。
2 ‑4 ‑2 . ア ンケー ト調査の結果
両 クラスで合計 6 3 名か らの回答があ り,以下のようにまとめ られた。各項 目に対する同意 の程 度 は全体で平均値が出 され ,( 1 ) 量的 フィー ドバ ック ( quant i t at i vef e e dba c k) として小数点第 2
まで算出 した。更 に, コメン トを ( 2 ) 質的 フィー ドバ ック ( qual i t at i vef e e d ba c k) として まとめた。
ほぼ同一 の内容 のコメン トについては 1つに集約 したが,誤字脱字 を修正 した以外,文面 はその ままである0
2 ‑4 ‑2 ‑1 :リサーチプ レゼ ンテーシ ョンとは何か,その手順 と目的 を理解で きた。
( 1) quan ti t ati vef eedback 平均値 ‑3. 7 4
1 2 3
+ + + + + * + + + . + + * + + + + + + + + * * + + ^
全 くそう思わない そう思わない どちらとも言えない そう思 う
5
全 くそう思 う ( 2 ) qual i t ati vef eedback
[ ] ふつ うです。
[ ] かな り勉強 になった。
[ ] プレゼ ンテーシ ョンは物事 に対す る探究心 を養 って くれ ました。
[ ] 大学 らしい今 まで とは違 う授業で した。
[ ] 目的 は理解で きたが,手順 についてははっ きりとつかめていない部分 もある。
[ ] そ う思 うが,面倒 くさかった。
[ ] 英語だ と言いたい ことの半分位 しか伝 えられなか った。
2 ‑4 ‑2 ‑2 :リサーチプ レゼ ンテーシ ョンの準備 は完萱であった。
( 1 ) quan ti ta ti v ef eedback 平均値 ‑3. 4 0
1 2 3
+ + ■ ♯ ■ ● J I I * + + + + ' 事 * ■ * ■ + + + ■ ▲
全 くそう思わない そ う思わない どちらとも言えない そう思 う ( 2 ) qual i ta ti v ef ee dback
[ ] 読 みの練習が足 りなかったb
[ ] ハ ン ドアウ トな どは長かったが,読みの練習が足 りなかった。
[ ] や ったあ とか ら,「こうすればよかった」 な ど反省 した。
[ ] 自分 の表現 したい ことが上手 に英語 にす ることがで きなかった。
[ ] 言いたい ことを英語 に訳せなかった。
[ ] もっ とい ろい ろ考 えるべ きだった。
[ ] もっ と創意工夫 したかった。
[ ] テス ト前 に行 ったので準備期間がやや不足 していた。
5
全 くそう思 う
[ ] もう少 し準備 すればよかったです。
[ ] リスナーに与 える情報提供 が少 し足 りなか った。
[ ] テーマが難 しか ったため, うま く伝 えることがで きたか不安。
2 ‑4 ‑2 ‑3 :自分 に与 えられた評価 は納得の い くものであった。
( 1 ) quanti tati vef eedback 平均値 ‑4. 0 2
1 2 3 4 5
* * * * * ** * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * ▲
全 くそ う思わない そ う思わない どちらとも言えない そ う思 う 全 くそ う思 う ( 2) qual i tati vef eedback
[ ] 適 当だった と思 う。
[ ] あ りが とうござい ました。
[ ] 頑張 ったかいが あ りました。
[ ] 時間が予定 よ り短 くなって しまい失敗 した。
[ ] 和英で一生懸命単語 を調べた り受験参考書か ら構文 を調べ たのに 「 準備」が 4点 だった。
[ ] 予想 よ り良 くびっ くりした。
2 ‑4 ‑2 ‑4 :評価 の 5 基準 ( 内容,準備,英語,熱意,反応 ) は十分であった。
( 1 ) quanti tati vef eedback 平均値 ‑3. 9 3
1 2 3 4 5
* * a 〜 * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * ***^
全 くそ う思わない そ う思わない どちらとも言えない そ う思 う 全 くそ う思 う ( 2) qual i tati vef eedback
[ ] この ままでいい と思 う。
[ ] もっ と評価 の点数 の幅 を広 げるべ き。
[ ]
「内容」 は自由だか ら評価すべ きで はない と思 う。
[ ]
「 英語」 とい うの は文法上,発音 どち らが悪 いのかわか らず暖味 だ。
[ ]
「 表現力」 とい う項 目 も入れれ ばよかった と思 う。
[ ]
「 工夫」 を加 えれ ばよい と思 う。
[ ]
「 進 め方」 を入れ る といいO
[ ]