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データから見た日本の証券化市場の展開 -集約化・二極化・機関化―

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データから見た日本の証券化市場の展開 -集約化・二極化・機関化―

長崎大学 深浦厚之 1. はじめに

サブプライム問題の元凶としてにわかに注目されるようになったのが、住宅ローンを原 債権とした証券化商品 (とりわけ再証券化商品としての

CDO)

のパフォーマンスであった。

しかし、証券化商品が具体的にどのような形で、どういった規模で影響を与えているのか という点になると必ずしも明確ではない。実際、証券化商品の固有の問題ではなくアメリ カ住宅市場を鎮静化させようとした利上げの効果(つまり通常の金融政策の結果)である との議論がある。あるいは、銀行のバックアップファシリティの機能不全を問題視する見 方、現在は延滞債権が発生している段階でありデフォルトするかは2-3年たたないとわ からないという見解など、問題の所在の特定においても議論が百出している。そのことも また、証券化市場に対する漠然たる不信感を醸成するのに一役を担っているようだ。

翻ってみれば、証券化市場に対する客観的な観察は必ずしもち密なものではなかったき らいがある。日本においてもそれは同様であり、市場規模がいくらなのかという単純な測 定という点に限ってみても、なかなか明確な数値を提示しにくいというのが実情だろう。

このため、市場関係者が証券化市場について何かを語るとき、依って立つ定量的基盤は決 して頑健ではなかったのである。

しかし、最近になってこのような状況に少しずつ変化が見られるようになった。第一に 各種の法整備がほぼ完了し、証券化市場の制度・構造がほぼ固まったこと、第二に日本の 金融システムを理解する新たな概念として登場した市場型間接金融という概念が登場した こと、を指摘しておこう。これらの要因が証券化市場の機能に新たな光を投げかけ、金融 システムにおける証券化市場の座標を明確にするのに寄与している。

こうした中で、証券化市場についての基礎的な観測体制が、日本証券業協会を中心に進 められている。すなわち、日本銀行から公表されていた資産担保証券に係るデータを引き 継ぐ形で公表項目等を整理し、さらに全国銀行協会とも連携し、2004 年から個別の証券化 案件ごとの基本的な情報が公表されるようになった。

このデータベースは、民間金融機関からの申告に基づき、証券化プログラムの情報を月 次ベースでまとめたものである。2004 年

4

月分から公表を始め、若干の書式変更を伴いつ つ現在に至っている。プログラム実施日、プログラム名、アレンジャー、オリジネータ、

原債権の種類、トランシェ構造、期間、格付け結果、金利など証券化プログラムにとって 重要な情報がほぼ網羅されている。現時点では最善のデータベースであり、格付結果も公 表されているため、格付け機関の公表資料とのクロスチェックも可能である

1

1 オリジナルのデータは日本証券業協会のサイト(http://www.jsda.or.jp/index.html)から入手できる。

同協会が直接データを取り扱っているのは 2006 年 4 月からであるが、それ以前のデータに関しては日本銀

(2)

2

本稿はこれらのデータを用いて、日本の証券化市場の最近の展開過程を検討するもので ある。証券化市場の全体規模、原債権の種類や期間(これらは資金調達者、つまり、需要 サイドを反映する) 、アレンジャーの動向(証券化市場の供給サイドを反映する) 、最近に なって事例が増えている

ABL

を併用したプログラムの状況、 などを順次検討する。 そして、

最近の日本の証券化市場の特徴を集約化・二極化・機関化という3つのキーワードで表現 する。さらに、市場型間接金融システムにおける証券化市場の役割に関する若干の含意、

すなわち、現在の日本の証券化市場はオリジネータのリスクを広く資本市場に分散させる という市場型間接金融の議論から期待されるような機能を十分に果たすには至っていない こと、を論証するものである

2

。なお、今回は、基準金利・クーポンレート・スプレッドな ど金利・価格要素については考慮に含めていない。

2.データから見た証券化市場 2-1 証券化市場の市場規模

図1は証券化プログラムの規模(金額)の推移である。

行のデータを引き継いでいる。調査対象は「日本国内に所在する資産を主たる裏付けとして、2004 年 4 月 1 日以降に発行される債券、信託受益権、CP等」、調査・公表頻度は「月次(原則として、当月初め第 5 営業日までに報告を受けたものを取りまとめて、第 12 営業日を目途に公表)」、データを提供する報告者 は「上記調査対象となる証券化商品のアレンジャー等及び格付を行った格付機関」となっている。

2証券化市場についてはアカデミズムサイドからはもちろんのこと、創成期の金融市場について広く当ては まるように実務界からの発言・提言が多い。それらを個別に検討すると、論者の置かれた立場が強く反映 されるためか主張に多少の誇張が含まれることもあるのだが、総じて見た場合、その時点時点で対象とな る市場についてどのような共通の理解が持たれていたのかということを知ることができる。証券化市場に ついても全く同様であり、およそ次のような理解が一般的であった。

① 証券化市場の規模(特に金額)は傾向的に増大する。

② 対象となる債権(原債権)の種類は増加し、市場の多様化が進む。

③ 銀行による貸付債権の流動化が増加するが、その一方、住宅ローン関係の流動化は進まない。

④ 信託方式の利用が普及する。

⑤ 証券化商品の流通市場はそれほど発展しない。その結果、証券化商品の極端な短期化は進まずむしろ バイアンドホールドは中心になる。

①については、2002年当時、法的側面を中心に市場インフラの整備が行われたことは先述の通りでるが、

特定債権法以来の経験に照らしてユーザーフレンドリーな方向性を持った整備が行われている。そうした 中で市場関係者の市場の展開に対する期待がそれなりに強かったことがこうした予測の背景にある。②と

③は多少矛盾するかもしれないが、貸付債権や住宅ローンなどが典型的な原債権として認識されていたと 同時に、金融スキームとしての証券化の認知度の高まりや、貯蓄から投資へという風潮のなかで新たなタ イプの原債権が証券化されるという期待が存在したことは事実である。④はすでに特定債権法施行当時か らよく指摘されてきたことであり、スキーム組成費用面における信託方式の優越性は早くから認識されて いた。⑤は債権を流動化するというプロセスそのものが、長期にわたるチャッシュフローや収益機会の現 在価値を実現させるものであり、原理的に流通市場を明示的に想定するものではないという当時の認識、

金融機関や企業財務部門の運用担当者が証券化商品を短期運用するノウハウを探しあぐねていたという状 況もある。以上を総合すると、2002年当時の証券化市場の将来像についての予測は次のようになろう。低 コストスキームである信託方式の定着・証券化スキーム自体の認知度の高まりから、新たな金融手法とし て質量両面から証券化市場は拡大をつづける。その過程において、貸付債権の流動化が進み銀行のバラン スシートのスリム化が図られる。また、原債権の開発が加速され、資本市場に対するアクセス経路が増え るということになるだろう。

(3)

3

図 1 証券化総額

3-4

ヶ月ごとの規則的変動が見られるので、3 ヶ月移動平均によるスムージング結果も 記入されている

3

。3 か月移動平均値に関する線形トレンドを推計すると、slope=134.546

(t=4.40) 、intercept=3560.25

(t=5.48)となり(図1には未記入)

、この期間、金額ベー スで見た市場規模が拡大傾向にあることが確認できる。ちなみに他の方法(たとえば

EPA

法など)でトレンドを推計しても、ほぼ同様の結果を得ることができる。

しかし、もとのデータを一つ一つ見ていくと、証券化プログラムの種類によって実施規 模はさまざまである。たとえば、2006 年

11

月に見られる突出部分は、Softbank 社による 携帯電話会社

Vodafone

買収に伴う証券化案件

1

件のみ結果である。したがって、単純に金 額を総計しただけでは、得られる知見は限定的なものと考えざるをえない。そこで、もと のデータの傾向から、特に金額において顕著な傾向のみられる不動産関連の証券化プログ ラム(住宅ローン・商業用不動産・商業用不動産ローンを対象としたプログラム)と、そ れ以外のプログラムに分けて、図

1

と同様に総額の推移を示したのが次の図2と図3であ る。表1は図1・図2・図

3

のデータ間の相関係数であるが、総額と不動産関連証券化額 の相関が相対的に高いことが見て取れよう。

なお、以下の図表にも共通することであるが、毎年

4

月の数値が小さくなるという傾向 がある。これは証券化商品の属性というよりは、年度末に伴う業務の繫閑によるものであ ろう。

3 厳密には変動のパターンを別途検証し、おそらくより長い期間による移動平均をとることが必要であろ う。ただ、データのカバレッジが3年程度と短いため、全体の変動の傾向を見るという目的に限って言え ばこの操作でほぼ目的は達成できる。

0 5000 10000 15000 20000 25000

M a y - 0 4

J u n - 0 4 J u l - 0 4

A u g - 0 4

S e p - 0 4

O c t - 0 4

N o v - 0 4

D e c - 0 4 J a n - 0 5

F e b - 0 5

M a r - 0 5

A p r - 0 5

M a y - 0 5

J u n - 0 5 J u l - 0 5

A u g - 0 5

S e p - 0 5

O c t - 0 5

N o v - 0 5

D e c - 0 5 J a n - 0 6

F e b - 0 6

M a r - 0 6

A p r - 0 6

M a y - 0 6

J u n - 0 6

J u l - 0 6

A u g - 0 6

S e p - 0 6

O c t - 0 6

N o v - 0 6

D e c - 0 6

J a n - 0 7

F e b - 0 7

M a r - 0 7

A p r - 0 7

M a y - 0 7 総額 移動平均値(3)

(4)

4

表 1 データ間の相関係数

図 2 不動産関連証券化総額

図 3 不動産関連以外の証券化総額

図2・図3の

3

か月移動平均についての線形トレンド推計は次のようになる。

2(不動産関連)

: slope=107.77(t=4.70) intercept=2204.58(t=4.65) 図

3(不動産関連以外)

: slope=-3.08(t=-0.37) intercept=1766.37(t=10.28)

不 動 産 関 連 不 動 産 以 外

0.952 0.692

不 動 産 関 連 0.437

不 動 産 以 外

0 2000 4000 6000 8000 10000 12000

M a y - 0 4 J u n - 0 4

J u l - 0 4

A u g - 0 4

S e p - 0 4

O c t - 0 4

N o v - 0 4

D e c - 0 4

J a n - 0 5

F e b - 0 5

M a r - 0 5

A p r - 0 5

M a y - 0 5

J u n - 0 5 J u l - 0 5

A u g - 0 5

S e p - 0 5

O c t - 0 5

N o v - 0 5

D e c - 0 5

J a n - 0 6

F e b - 0 6

M a r - 0 6

A p r - 0 6

M a y - 0 6

J u n - 0 6

J u l - 0 6

A u g - 0 6

S e p - 0 6

O c t - 0 6

N o v - 0 6

D e c - 0 6

J a n - 0 7

F e b - 0 7

M a r - 0 7

A p r - 0 7

( 億円)

総額(不動産関連) 移動平均(3)

0 500 1000 1500 2000 2500 3000 3500 4000 4500

M a y - 0 4 J u n - 0 4 J u l - 0 4 A u g - 0 4

S e p - 0 4

O c t - 0 4

N o v - 0 4

D e c - 0 4 J a n - 0 5 F e b - 0 5

M a r - 0 5 A p r - 0 5

M a y - 0 5 J u n - 0 5 J u l - 0 5 A u g - 0 5 S e p - 0 5

O c t - 0 5

N o v - 0 5

D e c - 0 5 J a n - 0 6

F e b - 0 6

M a r - 0 6 A p r - 0 6

M a y - 0 6 J u n - 0 6 J u l - 0 6 A u g - 0 6

S e p - 0 6

O c t - 0 6

N o v - 0 6

D e c - 0 6 J a n - 0 7

F e b - 0 7

M a r - 0 7 A p r - 0 7

M a y - 0 7

( 億円)

総額(不動産関連以外) 移動平均(3)

(5)

5

ここから、上昇傾向にあるのは不動産関連の証券化金額であり、それ以外のものは(統計的 に有意ではないが)下降気味であることがわかる。また、全プログラムの単純平均値は

5752

億円(図

1)

、不動産関連のそれは

4102

億円(図2)、それ以外は

1651

億円であり(図

3)

、 次のような有意な差が存在する。

不動産と不動産以外 =4102 億円 – 1651 億円=2451 億円(t=4.954)

全プログラムと不動産関連=5752 億円 – 4102 億円=1650 億円(t=2.265)

全プログラムと不動産関連の平均値の差のほうが小さいということは(1650 億円<2451 億円) 、全体の規模に対して不動産関連プログラムの規模がより全プログラムの規模に近い ということを示している。こうしたことから考えて、不動産関連証券化プログラムは証券 化市場全体の動向に強く関連しているといえそうである

4

2-2 証券化プログラムの件数と原債権の種類

図4は、毎月、市場に登場する証券化プログラムの件数、およびその裏付けとなる原債 権の種類を数え上げたものであり、証券化市場全体の推移を質的な側面から評価しようと するものである。

図 4 証券化プログラムの件数

前と同様、図4を使って線形トレンドを求めると次の値を得るので、市場に登場する案 件数は微増(4 ヶ月に

1

件程度)しているといえる。

4 このことは住宅ローンの証券化がそれほど進展しないという注2に記した予想に反するように見える。

実際、住宅ローン債権は典型的かつ代表的な証券化対象債権となる。

0 10 20 30 40 50 60

M a y - 0 4 J u n - 0 4 J u l - 0 4

A u g - 0 4

S e p - 0 4

O c t - 0 4

N o v - 0 4

D e c - 0 4 J a n - 0 5

F e b - 0 5

M a r - 0 5

A p r - 0 5

M a y - 0 5 J u n - 0 5 J u l - 0 5

A u g - 0 5

S e p - 0 5

O c t - 0 5

N o v - 0 5

D e c - 0 5 J a n - 0 6

F e b - 0 6

M a r - 0 6

A p r - 0 6

M a y - 0 6 J u n - 0 6 J u l - 0 6

A u g - 0 6

S e p - 0 6

O c t - 0 6

N o v - 0 6

D e c - 0 6 J a n - 0 7

F e b - 0 7

M a r - 0 7

A p r - 0 7

M a y - 0 7 種類 総件数

(6)

6

件 数 : slope=0.26(t=3.74) intercept=17.47(t=12.21) 種 類 : slope=0.009(t=0.53) intercept=9.75(t=25.58)

原債権の種類も毎月

10

種類程度と安定している。 しかし、 係数はきわめて小さく(0.009) 、 単純に考えれば

100

カ月に

1

種類増加するかしないかといった程度である。ただ、ここで 扱った数値は月ごとの“差分”を表すから、過去に一度でも証券化された実績を持つ原債 権の累計は増加していく(もちろん、新しい原債権が開発される一方で、市場から消えて ゆく原債権もあるだろう) 。しかし、常時、メニューに掲載される原債権の種類は限られて いることになる。こうした意味では、バラエティに富んだ市場とは言えそうもない。実際、

種類がほぼ一定である中で、件数が増えていくということは、同じ種類の原債権を使った 証券化プログラムが同じ月に多数登場するということであり、この点からみても原債権が 多様化したとは言いにくい。

2-3 発行形式

発行形式としては、信託受益権方式が過半を占める(図5)。このことは、信託が持つ課税 上の有利性などから従前から指摘されていいたことである。

データからは必ずしもはっきりと確認できないが、国内公募債以外は私募形式であるこ とが多いという一般的な傾向を考え合わせれば、証券化市場はオープンな市場というより は、限られた参加者あるいは限られた発行形式によって特徴づけるという閉鎖的な側面を 持っているといえる。この帰結として、アレンジャーの役割の増大や投資家の機関化とい ったことが想像されるのだが、これらについてはのちに検討する。

図5 発行形式

信託受益権方式は全期間にわたって主流の発行形式であるが、それ以外の形式について の推移は図7に示される。信託受益権以外の発行方式は

2006

年前半までは毎月

10

件程度 にとどまっていたということ以外、特に明確な傾向は見いだせないが、直近では

ABL

方式

(Asset Based Lending)を利用した事例が増加している(ただし、のちに見るように、発

信託受益権

A B L

国内公募債

0% 20% 40% 60% 80% 100%

(7)

7

行金額が大きいということに直結するわけではない)。なお、

ABL

方式による証券化につい ては若干の留意が必要であるため、後節においてあらためて検討したい。

図 6 発行形態の推移(信託受益権以外)

2-4 原債権の種類・オリジネータの数

次に、原債権のタイプに注目してみよう。金額順に原債権を並べ、合わせて累積割合を 示したのが図7である(*を付した原債権は、それぞれの債権に基づく信託受益権を原債 権とするスキームの数値。スキームとして信託受益権方式を採用しているわけではない)。

なお、ここでは事業

CF

に基づく証券化プログラム

1

件を除いているが、それはその金額が 異常値ともいえるほど突出して大きいからである。平均値を用いたのは、原債権によって 実施金額に二桁を超える違いがあるからであり、表示上見にくくなるからである。

図7からわかるように、不動産関連のプログラム、典型的・代表的と思われるプログラ ム(たとえばオートローン債権、消費者ローン債権、カードローン債権など)が上位を占 めている。不動産関連

6

種(住宅ローン債権およびその受益権、商業用不動産およびその 受益権、商業不動産ローンおよびその受益権)の平均値の合計は

2769

億円であり、事業

CF

を除く総証券化額のおよそ

45%に相当する。他方、診療報酬や売掛債権など比較的最近

になって登場した原債権(おもに中小企業の利用が多い原債権)はサイズが小さく、量的 な意味で市場全体の流れを左右するほどのモメンタムは持っていない。手慣れた債権を用 いた証券化が依然として主流になっているようだ

5

5売掛債権証券化は、一部地方銀行などがリレーションシップバンキングの一環として積極的に進めようと しているほか(西日本シティ銀行など)、事業会社が独自に金融子会社を設立して証券化する動きもある(日 通など)。ただ指名金銭債権であること、債務者対抗要件具備の手続きが煩雑であること、譲渡禁止特約が 措置されることが多いなど証券化しづらい固有の要素もある。

0 2 4 6 8 10 12 14 16 18 20

M a y - 0 4

J u n - 0 4

J u l - 0 4

A u g - 0 4

S e p - 0 4

O c t - 0 4

N o v - 0 4

D e c - 0 4

J a n - 0 5

F e b - 0 5

M a r - 0 5

A p r - 0 5

M a y - 0 5

J u n - 0 5

J u l - 0 5

A u g - 0 5

S e p - 0 5

O c t - 0 5

N o v - 0 5

D e c - 0 5

J a n - 0 6

F e b - 0 6

M a r - 0 6

A p r - 0 6

M a y - 0 6

J u n - 0 6

J u l - 0 6

A u g - 0 6

S e p - 0 6

O c t - 0 6

N o v - 0 6

D e c - 0 6

J a n - 0 7

F e b - 0 7

M a r - 0 7

A p r - 0 7

M a y - 0 7

(件数)

ABL 国内債券 国外債券

(8)

8

図 7 原債権別証券化平均金額

図8 原債権と発行形式(住宅ロ-ン以外)

図8は住宅ローン以外 ..

の原債権を対象とした証券化プログラムの発行形式を表す(住宅ロ ーン証券化の総金額が他を圧倒しているため)。やはり、信託受益権の優位性が明らかであ る。なお、事業の証券化(図の中では事業

CF

と表示)は先述の

Softbank

のケースである。

0 10 20 30 40 50 60 70 80 90 100

0 100 200 300 400 500 600 700 800 900 1000

(億円) (%)

金額 累積%

0 5000 10000 15000 20000 25000

( 億円)

サムライ私募 ユーロ債 ABL 国内私募債 国内公募債 信託受益権

(9)

9

なお、本稿が取り扱った期間の直後、サブプライム問題が表面化した。このため、2007 年上半期を通してみると、住宅ローン債権の証券化プログラムの実績は前年同期に比べて 大きく落ち込んでいる。ただ、商業不動産ローンの証券化プログラム数は逆に増加してい る(平成

19

12

31

日日本経済新聞)。一般に、商業用不動産は個人向け住宅ローンに比 べて貸し倒れ率が小さいこと、開発型不動産融資に対して金融機関の関心が集まりつつあ ること非連結

SPC

による不動産証券化手法が開発されていること、などが背景にあろう。

図9は証券化市場の需要サイドを表象する要素として、オリジネータの数の推移を不動 産関連証券化とそれ以外の証券化プログラムに分けて表示している。図4とほぼ同調して おり、一つのオリジネータが複数の証券化プログラムを立ち上げるということは多くない ように思われる。

図 9 オリジネータの数

表 2 トレンドの係数(括弧内は

t

値、有意の場合には水準)

全体を通して見ると、2006 年

4

月を境に微減傾向が微増傾向に転換しているようにみえ る。このことを確かめるために、全期間と

2006

4

月後のトレンドをそれぞれ求めてみた

(表2) 。この結果、不動産関連の証券化を行うオリジネータの数は、全期間を通して若干

0 5 10 15 20 25 30 35 40

M a y - 0 4

J u n - 0 4 J u l - 0 4

A u g - 0 4

S e p - 0 4

O c t - 0 4

N o v - 0 4

D e c - 0 4 J a n - 0 5

F e b - 0 5

M a r - 0 5

A p r - 0 5

M a y - 0 5 J u n - 0 5

J u l - 0 5

A u g - 0 5

S e p - 0 5

O c t - 0 5

N o v - 0 5

D e c - 0 5

J a n - 0 6

F e b - 0 6

M a r - 0 6

A p r - 0 6

M a y - 0 6

J u n - 0 6

J u l - 0 6

A u g - 0 6

S e p - 0 6

O c t - 0 6

N o v - 0 6

D e c - 0 6

J a n - 0 7

F e b - 0 7

M a r - 0 7

A p r - 0 7

M a y - 0 7

( 個)

不動産関連 不動産以外 総数

0 6 / 4

不 動 産 関 連 0.054 (2.91、90%) 0.118(4.19、99%) 不 動 産 以 外 0.03(0.68) 0.131(2.61、85%)

全 オ リ ジ ネ ー タ 0.08(1.53) 0.249(3.64,90%)

(10)

10

の増加傾向がある(0.054)。しかし、全体的には同様の傾向は把握できなかった(0.083) 。 しかし、2006 年

4

月以降に限れば、不動産関連のオリジネータの増加傾向が観察され

(0.118)、さらに不動産以外の証券化に関するオリジネータも増加傾向にある(0.131) 。こ の結果、全体的にオリジネータが増加する傾向が生み出されている(0.248)。先述の点と 併せ、直近の証券化市場の動向(特に全体的な市場の動向)を検討する際には、不動産関連の 証券化の実績(金額とオリジネータの双方)に注意を払う必要があることを意味する。

2-5 証券化商品の期間

次に証券化商品の時間的側面を知るために、平均的な満期期間を見てみよう。原データ を見ると平均残存期間、法定最長期間など複数の期間についての数値が示されている。ま た、住宅ローン債権等に顕著に現れるが、期前償還が行われることの多い債権については 明示された期間と実際の期間には相当のずれが生じるのが通常である。加えて、複数のト ランシェに分割される場合にはトランシェごとに満期が設定され、さらに最長期部分はオ リジネータによって(劣後部分として)保有されることも多い。

このような場合、ある証券化プログラムの満期を代表する数値は慎重に選択する必要が ある。本稿ではデータで示された数値のうち最長の満期をもってその商品の満期とした。

それは、最長の満期は裏付けとなる原債権の経済的な最長寿命を反映すると思われるから である。同時に、最劣後トランシェはその原債権の最大のリスクを含んでいるものである とすれば、最長満期は原債権が持つ非流動性の最大値を反映する数値としてとらえること ができるという判断である。言い換えれば、証券化市場の基本的機能はオリジネータが持 つ非流動性を投資家が持つ流動性と交換することであるという認識に基づいている

6

図10は各プログラムの満期の分布を示しているが、約半数が

5

年以内であり、10 年以 内のプログラムで全体の約

8

割を占めることがわかる。つまり、現在の日本の証券化市場 を、非流動性の流動化機能という点から見ると、10 年弱程度にわたって固定された非流動 性に流動性を与えるという機能を果たしていることになる。若干、単純すぎる表現ではあ るが、10 年を超えるような非流動性に対して流動性を供給しようという投資家は少ないと いえるかもしれない

7

6 これはオリジネータの観点に立った見方である。逆に、投資家の観点からすれば、期前償還リスクの評 価、劣後部分の比率など必ずしも原債権それ自体のリスクとは異なる要素も考慮されるべきであり、この 点は本稿の分析では把握できない。オプション調整後スプレッドなど金利・価格に関する情報に反映され る部分もあり、この点は今後の検討課題としたい。なお、この点については福光寛氏(成城大学)の示唆 に負うところが大きい。

7 一般に、期間が長くなれば実質的に資金の取り手はさまざまなオプションを持つことになり、そうした 投資機会に対して投資家は消極的になる。

(11)

11

図10 期間の分布

しかし、個別の原債権ごとにみると、かなりの散らばりが見られる。図11は原債権ご との平均満期年数を示す。住宅ローン関連の二種が突出して長期であり、それ以外の原債 権はほぼ

10

年内に収まっている。その中でも新しい種類の原債権(売掛債権など)を用い た商品は概して短期である。それぞれの原債権が持つ固有の特質がストラクチャリングに 反映されている(逆にいえば、原債権の基本的な属性がストラクチャリングによって大幅 に変えられることは少ない)と解釈することもできよう。ただ、市場がこれをどのように 評価しているのかは今回のデータからは直接引き出すことは難しい。

図11 原債権別の平均年数

5年以内 5年以上10年未満 10年以上

0% 20% 40% 60% 80% 100%

住宅ローン債権 住宅ローン債権*

商業用不動産ローン 事業CF*

企業向け貸付債権*

リース料債権*事業CF 商業用不動産*

企業向け貸付債権 商業用不動産ローン*

オートローン債権*

消費者ローン カードローン債権 公社債消費者ローン*

証券化商品 オートローン債権 商業用不動産 カードローン債権*

リース料債権 運送委託料債権 将来債権*社債*

商業手形*商業手形 診療報酬売掛債権

0 5 10 15 20 25 30 35

裏付資

( 年)

(12)

12

したがって、実態としては、証券化プログラムは中期的な金融取引機会としてまず市場 に登場するといってよい。そのことが投資家や市場にどのように受け取られるかというこ とが次の問題であるが、この点についてはそうした評価が反映されるだろう金利や価格に ついての情報を組み込んだ分析が必要であるが、本稿ではそこまで至っていない。

参考になる情報としては、証券化商品への投資はバイアンドホールドを原則とするとい う認識が一般的だという証券業協会のアンケート調査(2006 年)がある。つまり、証券化 商品は短期的なキャピタルゲインを得るための手段としてはあまり用いられないというこ とになり、原債権の属性が投資家の行動にかなり強い影響を与えていることが一応想像で きる。ただ、これは単純に流通市場が未整備であるための結果にすぎないのかもしれない。

実態として、現状では流通市場は存在しないに等しい。証券という金融デバイスは、第 一に証券発行者に流動性を供給し、次いで、市場での取引を介して、証券を裏付けている 収益源泉のリスクをもっとも効率的に負担できる経済主体を探索することを機能とする。

したがって、流通市場を欠くということは、証券が持つ第二の機能が実現されないという ことを意味する。その場合、市場メカニズムによらない方法(何らかの相対取引き)によ ってリスク負担主体を見つけなければならない。そのことが結果的に(後述するように)アレ ンジャーの寡占化にもつながっている可能性がある

8

図12・図13・図14は、期間中に平均年数に変化があったかどうかを、全プログラ ム、不動産関連以外のプログラム、不動産関連のプログラムごとに表した図である。

全プログラムの平均年数は

7~10

年程度であり(図12) 、2006 年半ばから若干短期化 しているように見える。これは、売掛債権の証券化など

3~6

カ月程度の事例が増えてきた ことを反映するのだろう。不動産関連プログラム(図14)は長期(20~30 年)でほぼ安 定しており、それ以外のプログラム(図13)はおよそ2~3 年程度、特に最近1,2年の間 に短期の商品が増える傾向にある。

8証券化商品が長期にわたって保有されるならば、価格はファンダメンタル価格に近いものになる。このと き、証券化商品に投資するということは実物(原債権それ自体)への投資と無差別になる。言い換えれば、

流動性リスクを考慮する投資家にとって(=期前に売却できないリスクを考慮する投資家は)証券化商品 を購入するインセンティブは低いはずである。ところがこのことは、証券化商品はオリジネータの直面す る流動性リスク(原債権の貨幣価値を実現させる)を投資家に転嫁するという事実と正対してしまう。ア メリカ会計基準では、企業が法有する金融資産は「レベル1」(株式や債券など流動性の高い資産)、「レベ ル2」(時価評価可能な資産)、「レベル3」(格付けデータをもとに価格算定される資産、証券化商品やCDO も含まれる)に分類されているが、これは言い換えれば流動性の多寡によって順序づけられているといっ てもよい。そうした中で「レベル3」資産が過大評価されるという傾向(=それが流動性に転嫁できる可 能性を過大評価)は従来から指摘されていた。しかし、昨年11月に適用が始まった新会計基準では証券化 商品にもより厳格な時価評価額開示が義務づけられており、「レベル3」資産の流動性評価方法にも影響を 与えている。

参照

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