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強制的公開買付制度について

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経営 と経済 第83 巻 第 4号 2 004 年 3 月

強制的公開買付制度について

6 5

古 山 正 明

Abst ract

l n1 9 9 0,t het e nde ro f f e rr e gul a t i o ni nt heSe c ur i t i e sExc ha ngeLa w wa st ho r o ughl ya me nde di nvi e w o fa c c e l e r a t i nggl o ba l i z a t i o no ft he f i na nc i a lma r ke ta ndl e ga lha r moni z at i on.Buti twa snots of ul l y di s c us s e di nt hepr o c e s so ft hel e gi s l a t i o nt ha tweha ves o met r o ubl ei n e xe c ut i ngc ur r e ntr e gul a t i o n,es pe c i a l l ywi t ht hec o mpul s o r yt e nde r o f f e rr ul e s .

I nt hi sa r t i c l e,Iwi l lt r yt oa na l yz ec ur r e nti s s ue si nt hec o mpul s o r y t e nde ro f f e rr ul e s, a ndwi l la d vo c a t et oa me ndt her ul e s . Tho s ea r es um‑

ma r i z e da sf o l l o ws :

( 1 )I ft her e gul a t i o ni sa ppl i e do nl yt ot het e nde ro f f e rt ha ti so f f e r e d t oma nya nduns pe c i f i e dt a r ge ts ha r e ho l de r s ,t hec o mpul s o r yt e nde r o f f e rr ul e ss ho ul dbepe r mi t t e da so neo ft hepo l i c yo ft hes e c ur i t i e s r e gul a t i o nt ha ti nvo l ve st hepr o t e c t i o no fi nve s t or s .

( 2 )I ft her e gul a t i o ni sc o mpul s o r ya ppl i e dt ot het e nde ro f f e rt ha ti s o f f e r edt oas ma l lnumbe ro fs ha r e ho l de ra sf a ra st het e nde ro f f e r e ri s c o nc e r ne dwi t ht hec o r po r a t ec o nt r o l ,i ti sdi f f i c ul tf o rt her e gul a t i o nt o bec o ns i s t e ntwi t ht hedi s c l o s ur er e q ul r e me nt Sa ndt hes ubs t a nt i ve r e q ul r e me nt SO ft het e nde ro f f e rr e gul a t i o n.

( 3 )I ft hec o nt r o ls ha r ea c q ui s i t i o npr o vi s i o nsa r ede a l e dwi t ht he e f f e c to ft hes ha r e ho l de r ' sr i ghto fvo t i ng,i ti so uto ft hepur po s eo f t heSe c ur i t i e sExc ha ngeLa w.

Keywords:Te nde ro f f e r ,c o nt r o ls ha r e ,c o mpul s o r y 序.問題の所在

Ⅰ.強制的公開買付制度,殊に支配株取得条項の枠組 と立法趣 旨

Ⅱ. 著 し く少数の者からの買付 と公開買付規制

Ⅲ. 支配株取得条項 と公開買付規制

Ⅳ. 結論

(2)

序 .問題の所在

わが国の証券取引法 は ,1 9 9 0 年 の改正で,いわゆ る強制的公開買付制度 ( 後述)を採用 している。 この ような規制が公開買付制度全体の枠組 と理論 的に矛盾 しない ものであるのか,また,実際問題 として,事業の再編や M&

A を行 うに際 して大 きな障害 となっていないのかが問題 となる。

この問題 をも含め,経済産業省は商事法務研究会 に公開買付に関する調査 研究を委託 し,黒沼悦郎教授を座長 とする TOB 研究会が 「 株式公開買い付 け ( TOB) に関する調査研究」 と題する報告書 ( 以下,報告書 と略す)を 2 0 0 2 年 3 月にま とめている1 ) 。そ こでは,強制的公開買付制度は廃止すべ き である ( 報告書三),仮 に廃止 しない場合は,制度の趣 旨に照 らして,強制 的公開買付制度の適用範囲を限定すべ きであ る ( 報告書四 ・五), と提言 さ れている。

黒沼教授はまた個人で,強制的公開買付制度の再検討を迫 る論文 も書かれ ている

2)

お りしも,金融庁はこの強制的公開買付制度の規制を緩和する方向で検討 する旨の報道がなされている

3)

0

ちなみに,私は ,1 9 9 2 年 に書いた公開買付規制の適用除外条項 をめ ぐる問 題 を扱 った論文の中で,強制的公開買付制度の中で も支配株取得条項 ( 後述) は,継続的な利害関係を有する組織構成員間での会社資産 をめ ぐる内的配分 を問題 としてお り,少な くとも相対取引に基づ く場合であれば,基本的には 商法で規制すべ き領域 に属 し,市場 メカニズムを通 じて資源配分の在 り方を 規制する証券取引法の領域 を超 えてい るのではないか と論 じ

4)

,また,同年 に開催 された 日本私法学会第 5 6 回大会で この問題 を も含めて公開買付規制の 在 り方について市場法の視点か ら報告 した

5)

0

本論文 は以上の経緯 を踏 まえ,強制的公開買付制度について正面か ら取 り

上げ,私見 を整理するものである。

(3)

強 制 的公 開 買付 制 度 に つ い て I ‑ 1 丁

なお,以下,特 に断 りがない限 り , 法」は 「 証券取引法」を , 「施行令」

は 「 証券取引法施行令」を , 「 府令」は , 「 発行者 である会社以外の者 による 株券等の公開買付けの開示 に関する内閣府令」を,それぞれ指す もの とする。

1)TOB 研 究会 「平成 1 3 年度我 が国経 済構造 に関す る競争政策的観 点 か らの調査研 究

『 株式公開買い付 け ( TOB) に関す る調査研究

」 ( 商事法務研究会 ,2 0 0 2 年)0

2 )黒沼悦郎 「強制的公開買付制度の再検討」商事法務 1 6 4 1 号 5 5 頁以下 ( 2 0 0 2 年)。

3 ) 日本経済新聞 2 0 0 3 年 1 1 月 1 日朝刊 1面。

4)拙稿 「公 開買付規 制 の適用除外 条項 について 一市場 法 の視 点 か ら ‑ 」経営 と経 済 72 巻 2 号 5 3 頁以下 ( 1 9 9 2 年)。

5 )報告 の概 要 については,拙稿 「公 開買付規制 について 一市場法 の視 点 か ら‑」私法

5 5 号 2 4 4 頁以下 ( 1 9 9 3 年)を参照 された

い 。

.

強制的公開買付制度,殊 に支配株取得条項の枠組 と立法趣 旨

1 990 年 に改正 された現行の証券取引法は,有価証券報告書を提 出 しなけれ ばな らない会社が発行者である株券等を取引所有価証券市場外で買い付ける 場合には,原則 として公開買付によらなければな らない, と定めている ( 法 2 7 条の 2 第 1 項本文) 。以下, この制度を強制的公開買付制度 とい う。

ただ し,著 しく少数の者か ら株券等の買付等を行 うもの として政令で定め る場合 における株券等の買付等については この限 りでない としなが ら ( 同項 但書 ・4 号), この場合は,当該株券等の買付等 を行 う者お よびその特別関 係者の株券等所有割合の合計が 1 / 3 を超 えない場合 に限 るとした ( 同括弧書) 上で,さらに,会社の総株主の議決権の5 0/1 00 を超 える株式を 自己の名義 を

もって所有する場合 における当該会社の発行する株券等q) 買付等は この限 り ではない としている ( 施行令 7 条 5 項 1号)。以下, この会社 の総株主の議 決権 に占める株式数の割合をもって公開買付規制の適用の有無 を定める条項

を,便宜上,支配株取得条項 とい う。

この強制的公開買付制度 に支配株取得条項が ミックスされた点にわが国の

(4)

規制の特徴が現われているといえよう。

では, この ような強制的公開買付制度や支配株取得条項は, どの ような趣 旨で制定 されたのであろ うか。当時の立法担当者は次の ように述べている

6)

0

まず,強制的公開買付制度については,不透明で, ともすれば一般株主に 不公平な取引 と見 られがちな市場外取引を,あ らか じめデ ィクローズ し広 く 一般 にオファーさせることによって,株券等の売付機会を全ての株主に平等

に保証す ることが必要 と考 え られたか らである, と述べる。

そ して,相対取引 と認め られる少数の者か らの買付であって も,対象会社 の支配権 に移動が生ず るような場合 には一般株主にも著 しい影響を及ぼす も の と考 え られることか ら, この ような買付には原則 として公開買付制度 に拠

ることを義務づけることが適当 と考 えた, と述べている。

以上の考 え方を踏 まえて,支配株取得条項については,相対取引に当たる 場合であ って も,買付後の所有割合が,発行済株式総数の1 / 3 を超 える場合

には,商法上の特別決議 を阻止で きる,一定の企業支配力を行使 しうる所有 割合であること等か ら,原則 として,公開買付に拠 らなければな らないもの

とする, としている。

ただ し,買付者お よび共 同買付者の所有する株券等の合計が1 / 3 超 となる ような買付であって も, 親会社が子会社の株式を買い増そ うとする場合には, 当該子会社の支配権に重大な影響を及ぼす とはいい難いこと,買付者本人が みな し共 同買付者か ら買い付ける場合 には,いわばグループ内の取引であっ て,グループ全体の所有株式数 に変動 がな く対象会社の支配権 に重大な影響 が生ずる とはいい難 い こ とか ら, これ ら買付行為 には1 / 3 ルールを適用 しな いこととした, と述べている。

なお, この ような取引であって も多数の者か ら買い集める場合には,株主

を公平に取 り扱 うべ きとの観点か ら ,6 0 日間で1 0 人超の者か ら買い集める場

合には公開買付制度によらなければな らないこととする, とも述べている。

(5)

強制 的公 開買付制度 について 6 9

以上の立法担当者の記述をま とめ ると,強制的公開買付制度は,株券等の 売付の機会を全ての株主 に平等に保証するために必要 と考 えられた結果であ ること,また,支配株取得条項は,対象会社の支配権 に移動が生ずるような 場合には一般株主に も著 しい影響 を及ぼす もの と考 えられることか ら必要 と 考 えられた結果であること,が窺 える。

私 自身は,強制的公開買付制度は,不特定かつ多数の者を相手 とする限 り, 証券取引法の究極 目的の一つであ る投資者保護 を図る上での選択肢の一つ と

して,立法政策 として これを是認す ることがで きると考 える

7)

0

問題 は,強制的公開買付制度が支配株取得条項 とセ ットになって盛 り込 ま れ,著 し く少数の老 か らの相対取引による場合であって も公開買付規制が強 制 され る点にある。

すなわち,一方 において ,「 『 公開買付』とは,不特定かつ多数の者 に対 し, 公告 に よ り株券等の買付 け等の申込みまたは売付 け等の申込 みの勧誘 を行 い,取引所有価証券市場外で株券等の買付け等を行 うことをい う」 ( 法27条 の 2 第 6 項) と定義 しておきなが ら,他方において,著 しく少数の者か らの 買付であって も会社支配権 に影響を及ぼす限 りで公開買付規制 を強制するこ

とが,不特定かつ多数の者を対象 とす ることを念頭に置いた現行の公開買付 規制の枠組 と論理的整合性が とれているのか,また,そ もそ も支配株取得条 項の ような規制は証券取引法の守備範囲を超 えているのではないか,が問わ れなければな らない。

以下,著 し く少数の老か らの買付 と公開買付規制,支配株取得条項 と公開 買付規制,の順で検討する。

6 )内藤純一 「 株式公開買付制度の改正」商事法務 1 2 0 8 号 2 頁 ,5‑6 頁 ( 1 9 9 0 年) . 7)強制的公開買付 とはいって も,対象会社の株式 を取得 しようとす る者 は,他 に流通

市場を通 じての取得 も選択肢 として残 されているか らである。

(6)

Ⅱ.著 しく少数の者からの買付 と公開買付規制

現行の証券取引法は,有価証券市場外で行われる公開買付に対 して,情報 開示を中心 とした手続的規制 に加えて,買付の条件 ・方法等に関する詳細な 実体的規制を課 している

8)

。著 し く少数の者か らの買付にこの ような規制を 課す必要があるのかが,まず もって問われなければな らない。そのためには, 開示規制や実体的規制の背景や趣 旨を明らかにしてお く必要がある。

まず,開示規制であるが, これは企業買収活動 に関する情報が対象会社株 主以外の当事者に偏在する傾向を是正する手段 として考 えることができる。

すなわち,公開買付は時間 と費用を節約する効率的な企業買収手段 として しば しば利用 されるが,2 0 日以上6 0 日以内 ( 施行令 8 条 1項) といった短期 決戦的性格や流通市場外での大量取得であるにもかかわ らず,対象会社株主 を直接の相手方 として行われる。 しか も,公開買付者 と対象会社株主 との関 係は通常,非継続的な取引関係であ り,公開買付者は機会主義的な行動を取 ることが可能である。一般の株主は流通市場に織 り込まれている情報だけを 頼 りに公開買付に応 じるかどうかの投資判断を迫 られるのであれば,公開買 付プレミアムを妥当なもの として受け取 るべ きか,それ とも持株を保有 した まま企業再編後の株価上昇 という形で利得を得た方が得かの判断す らできな いであろう

ここに開示規制の必要性が見出だせるのである9 ) 0

もっとも,公開買付を成功 させ ようとするのであれば公開買付者は法律に よって強制 されな くて も積極的に自主的な開示を行 うであろうとの反論があ るかもしれない。

しかし,公開買付者が虚偽の開示を行 うインセンティブを持つ可能性が否 定できない以上,開示の信頼性を確保するために,行政手続的な規制や達反

した場合の損害賠償責任等の民事責任や刑事責任を設ける必要性がある。

また,開示の内容について も,これを標準化することによって,競合公開

買付が発生 した場合に対象会社株主は両者を比較することが可能 となる。

(7)

強制的公開買付制度 について 7 1

さらに,多 くの公開買付が買付予定数 に達 しない場合には全部 の買付 を し ない こととしている実情を考慮する と,また,少 なか らざる公開買付が買付 予定数 を上回る応募 があった場合に按分比例 によ り買い付ける旨の条件 を付 している実情を考慮すると,少な くとも公開買付の成否 に関するような情報 は法が強行法的に開示 させ,対象会社株主 に公開買付 に伴 う不確実性を認識 させ る必要があろう。

ところで,企業買収活動 に関する情報 が対象会社株主以外の当事者 に偏在 す るか らといって,あ らゆる情報 を開示 させ る必要はない。企業買収 をめ ぐ る情報生産活動が企業再編や業界再編 に通 じるもので社会における効率的な 資源配分 を促進 し社会的に有益な ものである と考 えた場合,対象会社の詮索 等 に関する情報収集活動 に伴 うサン ク ・コス トの負担 に見合 うだけの利益を 享受で きるように制度設計 してお く必要がある (インセンティブの問題)

10)0

買付価格の算定根拠が開示の対象 とされているのは, この視点か ら見れば疑 問が残 る

11)

0

なお,開示規制はまた,有価証券市場 ( 流通市場)外で行われ る公開買付 において,対象銘柄の価格形成や流通状況の透 明性を高め,有価証券市場の 効率性や公正性 を確保する点で も有益である。

開示規制の趣 旨を以上の ような もの と理解 した場合,果た して著 し く少数 の者か らの買付 まで も規制の対象 とすべ きなのかが問題 となる。

思 うに, 公開買付者 が著 しく少数の者か ら相対取引で株式を取得す る場合, 情報 を共有することにより取引コス トが節約 され,いわゆる リスク ・シ ェア

リングが行われている場合が多いのではなかろうか。場合によっては,買付 価格の算定根拠 まで も示 されることがあろう

情報の偏在が生 じている とは 考 えに くいのである。

しか も,グループ企業内の再編の ように,株式取得の相手方が長年の取引

関係を通 じて信頼関係を築いて きたケース も見受け られるが, この ような場

合 に公開買付老側が機会主義的行動 を取 ることは想定 Lがたい。

(8)

市場に向けての情報開示 も,売付側 と買付側の双方が株券等大量保有報告 制度の適用を受けるので,ある程度補完できるのではなかろうか。

公開買付の開示規制はまた,流通市場を通 じて表裏の関係にある発行市場 における開示規制 とも整合性の取れた ものでなければな らない。発行開示に おいて有価証券の募集に該当 しない場合や適格機関投資家を対象 とする場合 は有価証券届出が免除される ( 法 4 条 1項) ことを考 えると,著 しく少数の 者か ら買い付ける場合にまで開示規制を強制する必要性がどれだけあるのか

は疑問である。

以上の検討を踏まえると,著 しく少数の者か らの買付に公開買付の開示規 制を課す必要性は乏 しい と結論付け られる。

次に実体的規制であるが,これは公開買付者 と対象会社株主 との間にある 交渉力の不均衡を是正する手段 として考えることができる

12)

0

すなわち,公開買付を合併や営業譲渡,資本参加等の他の企業買収手段 と 比較 した場合,対象会社ではな く,対象会社株主を直接の相手方 として行 う 点に特徴がある。 これを応募 しようとする株主の側か ら見た場合,公開買付 はいわゆる附合契約的性質を有するもので,市場 メカニズムが貫徹 されない 価格その他の買付条件 を基準 として投資判断を迫 られることにな り,交渉力 に関する当事者間の相対的な実力の差がそのまま契約内容に反映されるおそ れがある。そこで法は,単に公開買付の情報開示 という手続的規制だけでは な く,いわば市場 メカニズムが貫徹 されない側面を補完するもの として買付 の条件 ・方法等に関する詳細な実体的規制を定め,①公開買付者 と対象会社 株主 との間での実質的対等を確保するとともに,②対象会社株主相互間での 実質的平等を確保することにしたもの と考えることができる。

もっとも,①の点に関 しては,対象会社株主は買付価格その他の条件が悪 い と判断 した ら他に競合する公開買付を待ち望んでいれば良い, との反論が あるかもしれない ( いわゆる選択可能性の問題)

13)

0

しかし,実際問題 として,当初の公開買付の買付価格が低いか らといって,

(9)

強制的公開買付制度 について 服 競合す る公開買付が次 々と発生するような事態は,経験的に言 って想定 Lが たい。会社支配市場 における需要の価格弾力性は,アメ リカ以上 に低い もの

と考 え られる

14)

0

そ うであれば,対象会社株主は一致団結 して公開買付者 と交渉 して買付価 格その他の買付条件 を改善 させるこ とがで きるだろうか ( いわゆる交渉可能 性の問題)。 これは対象会社株主が不特定多数である場合 には,実際問題 と

してかな り困難であろうし,仮にで きた として もそれに要する費用 ( いわゆ るコーデ ィネーシ ョン ・コス ト)は相当高 くつ くであろう。

他方,( 彰の点に関 して も,応募株主の平等的取扱は公開買付規制の 目的で はな ぐ情報開示の確保等を達成するための手段 にすぎないのではないか との 反論 も考 え られる

15)

しか し, こと不特定多数を相手 とする限 り,並行 して存在す る流通市場で は株主の平等的取扱が徹底 されている点を看過 してはな らない。同 じ附合契 約的性質を有するといって も約款法 において見 られる相対取引の場合 と異な り,集中決済システムによる市場取引が並行 して存在することを念頭 に置 く 必要がある。

ところで,実体的規制は何 も対象会社株主 に有利な規制ばか りが存在する わけではない。公開買付者は,買付予定数を上回 る応募があった場合で も按 分比例 によることを条件 に当初の買付予定数通 りに買い付けることがで きた り,反対 に,買付予定数に満たない応募があった場合には全部 を買い付けな い こ とを条件 に入れ ることもで きるのである ( 法 27 条の 1 3 第 4 項 ・5 項)0 さ らには,一定の制約はあるものの ,1 9 9 0 年の改正で公開買付者は買付期間 中に買付条件 を一方的に変更することもで きるようにな り ( 法 2 7 条の 6 第 3 項 ・施行令 1 3 条),競合する公開買付 が発生 した場合等 に機動的 に対応す る

ことがで きる

16)

0

以上の検討を踏 まえると,実体的規制は,開示規制 と相侯 って,公開買付

に伴 う諸 々の リスク とリターンを公開買付者 と対象会社株主 とに効率的かつ

(10)

公正に配分 した もの と捉 え られ,公開買付規制は,公開買付 とい う一つの企 業買収形態を標準化 して取引 コス トを節約するために法が用意 した もの と考

えることがで きる。

それでは,著 し く少数の者 か ら相対取引で買い付ける場合にも,果たして 実体的規制を課す ことが妥当であろうか。

思 うに,売付側である著 し く少数の者は大株主である場合が多 く,一般投 資者に比べて買付者 を選択で きる可能性は高い もの と思われ る。 また,ま と

まった株式を保有 していること自体が,高い交渉力を有することに繋がるも の と思われる。 しか も,著 し く少数の者であれば,コーデ ィネーシ ョン ・コ ス トの負担 も低 くて済むはずである ( 売付側が単独の場合 には このコス トの 負担す らない) 。だ とすれば,実体的規制の趣 旨の うち①の問題 は,規制を 課 さな くて も克服 された といえる。

実体的規制の趣 旨の うち②の問題の背景には,で きるだけ多 くの対象会社 株主にで きるだけ多 くの公開買付プレミアムを与 えようとい う発想があるも の と思われるが, この公開買付プレミアムの源泉を考 える必要がある。

後述す るように公開買付 プレミアムの多 くは会社支配権プレミアムに由来 するもの と考 えられ るが,買付条件 に制限を設けて公開買付の成否が問題 と なるような事例では,公開買付の成否の不確実性に伴 うリスクプ レミアムも 公開買付プレミアムの中に相当含 まれているはずである。

しかるに,著 し く少数の者か ら買い付ける場合は,買付者側 に も十分な交 渉の余地があるので, この ような リスクプレミアムは相当に減殺 されるはず である

17)

0

以上の検討を踏 まえる と,著 しく少数の者か らの買付 に公開買付の実体的 規制を課す必要性は乏 しい と結論付け られる。

8 )わが国の規制は開示規制 と実体的規制が滞然一体 とな ってお り,多 くの証券取引法 の文献 も条文の順序に従って論述されている。

私が,開示規制 と峻別す る形で実体的規制を類型化す るりは,注4 ) の論文で述べた

(11)

強制 的公 開買付制度 について 75

ことの繰 り返 しにな るが,( ∋この ような規制形態 は,証券取引法の他の領域では見 ら れない特異な存在であること,②規制 内容 自体 も当事者間に存在す る 「交渉力の不均 衡」に由来する問題 を正面か ら取 り上 げてお り , 「 情報 の非対称性」や 「 市場の効率性」

等の開示規制 を検討す る際に用 い られ る視点だけでは もはや説明で きない部分があ る こと,③ に もかかわ らず,約款法の領域 に見 られ るような相対取引を前提 とした民商 法的な消費者保護立法 と異な り,並行 して存在す る有価証券市場 における取引 ( 集中 決済 システムによる市場取引)が常 に念頭 に置かれ,独 自の実体法 を形成 しているも の と考 えられること,に着 目しているか らである。

ちなみに,アメ リカで最 も権威のあ る証券取引法の研究書 も,公開買付規制 を開示 規制 と実体的規制 ( 要求 ,s ubs t ant i ver equi r ement s) に類型化 して解説 している。

5RE V.LRo s s & ∫. SE L I G MAN,SE C UR I TI E SRE G UL ATI O N2 20 7‑2 2 4 4( 3 de d., 2 0 0 1 ).

なお,私 自身はかつて,わが国の公開買付規制 を開示規制 と実体的規制 に類型化 し て体系的 に解説 した ことがある。堀 口亘編著 『改訂証券取引法 』 Ⅱ3 公開買付 ( 古山 正 明分担,学陽書房 ,1 9 9 4 年) 0

9 )開示規制の意義 を経済学的視点か ら検討 した もの として,松村敏弘 「デ ィスクロー ジャー問題」三輪芳朗 ・神田秀樹 ・柳川範之編 『 会社法の経済学 』3 6 5 頁以下 ( 有斐閣, 1 9 98 年)があるが, この論文では公開買付の開示規制は取 り上げ られていない。

1 0) もっ とも, この議論 を推 し進める と,公開買付その他の領域 において大量の情報開 示 を要求す る現行の証券規制 は,企業 が最適量の情報 を生産 しもし くは情報 に依存 す る最適量の活動 に取 り組む可能性 を減少 させ るもの として捉 え られ,公開買付の発生 頻度 を最大化す るためには公開買付 をめ ぐる規制の最適量はゼ ロである, との結論 に 至 りかねない 。S e e Ea s t e r br o o k & Fi s he l , Au c t i o n sa ndS u n kCo s t si nTe n d e r O f f e r s , 3 5St a n. L Re v. 1, 3‑ 7, 1 7( 1 9 8 2 ).

l l ) 府令第 2 号様式記載上の注意 ( 6 ) b は , 「算定の基礎」 には,買付価格の算定根拠を記 載 し,買付価格が時価 と著 し く異なる場合 には,その買付価格を決定 した理 由も記載 す ること, と規定 している。

しか しなが ら,買付価格の算定根拠 は,公開買付者 に とり,企業買収 に伴 う情報生 産活動 におけるいわば営業秘密 に相当す るものであ り,営業秘密が不正競争防止法 に おいて手厚 く保護 されている点 ( 2 条 1項 4 号ない し 9 号 ・3 条 ・4 条)を考 える と 疑問が残 る。

もっ とも, これまでに提 出された公 開買付届 出書の多 くを見 る限 り,実務では公開

買付 開始前何 か月間の平均株価 に何パ ーセン トプ レミアムを上乗せ した と書けば足 り

るようのなので,問題が顕在化 しなか ったのであろう。

(12)

1 2 ) ここで参考 となるのが 2 0 0 0 年 に制定 された消費者契約法である。 同法は , 「消費者 と 事業者 との間の情報 の質及び量並びに交渉力の格差」の問題 を正面 か ら取 り上げ (

1

条) , 「消費者契約の申込み又はその承諾の意思表示の取消 し」 ( 第 2 章)や 「消費者契 約の条項の無効」 ( 第 3 章)の章 を設けて実体的規制を課 している。

消費者契約法 におけ る消費者保護 と証券取引法 におけ る投資者保護 との異同は詳細 は今後 の検討課題 としたいが,消費者 と事業者 との間には地位の互換性 が見 られない のに対 して,投資者 においては買主に もな りうるし売主 に もな りうる点で地位の互換 性が見 られる点は大 きな着眼点にな りうるもの と思われ る。

この点に関 し,公開買付 においては公開買付者 と対象会社株主 との問 には通常は地 位の互換性が見 られないので,消費者契約法 と同様 に実体的規制 を課す理 由が見出だ

されるのかもしれない.

ところで,開示規制 は情報 の経済学等の経済学的視点か ら比較的容易 に説明するこ とがで きるのか もしれないが,実体的規制は経済学的視点か らは説 明す るのが困難で あるか もしれない。消費者契約法 に関する論文の中で,柳川助教授 は,情報の非対称 性 と情報提供義務 をめ ぐる問題 は詳細 に検討 されてお られ るのに比べて,実体的規制 をめ ぐる問題 に関す る論述は簡潔であ る。柳川範之 「消費者契約法 と経済学」ジュリ ス ト 1 2 0 0 号 1 5 3 頁以下 ( 2 0 0 1 年) 0

なお,消費者契約法 を も含め消費者法の諸問題 を体系的 に検討 した もの として,大 村敦志 『消費者法 [ 第 2 版 ] 』 ( 有斐閣 ,2 0 0 3 年)がある。

1 3 ) 前記私法学会で報告 した折 に,黒沼教授か らこの ような御指摘をいただいた。

1 4 ) 現在 までの ところ,唯一の例外 として国際デジタル通信 ( IDC) 事件 がある。 こ れは IDC 株 をめ く 中って,イギ リスの通信大手ケーブル &ワイヤ レス と NTT が買収 合戦を繰 り広げた ものである。

IDC 事件の詳細 については,堀 口亘 『 最新証券取引法 [ 新訂第四版 ] 』2 2 5‑2 2 6 頁 ( 商事法務 ,2 0 0 3 年)を参照。

1 5 ) 黒沼教授は,強制的公開買付制度 を再検討すべ きであ る とい う論述の中で この よう な趣 旨の ことを述べ られている。黒沼 ・前掲注 2 ) 5 6 頁。

1 6 ) この点を も含め ,1 9 9 0 年改正法 に対する私見については,拙稿 「改正公開買付規制 について 一市場法の視点か ら‑」堀 口亘先生退官記念 『現代会社法 .証券取引法の展 開 』3 7 1 頁以下 ( 経済法令研究会 ,1 9 9 3 年)を参照 されたい。

1 7 ) 現 に ,1 9 9 0 年 の改正以来,特定の者 を売付者 として念頭 に置いて市場価格を下回る 価格で公開買付価格が設定 されているのにもかかわ らず成功 している場合が しば しば 見 られ るが, この ような現象は,公開買付の成否の不確実性 に伴 うリス クプレミアム が減殺 されているか らだ と説明することもで きる。

なお ,1 9 9 0 年改正以降の公開買付の現状については,報告書 ・前掲注 1 ) 6 0‑7 4 頁を

参照。

(13)

強制的公開買付制度 について 仙

Ⅲ.支配株取得条項 と公開買付規制

Ⅱでは,公開買付規制を開示規制 と実体的規制に類型化できることを前提 とした場合,著 しく少数の者からの買付に公開買付規制を課す必要性が乏 し いことを明 らかにした。

Ⅲでは,支配株取得条項を公開買付規制に盛 り込む ことが果た して妥当で あるのかどうかを,証券取引法の視点に立 って検討する。

支配株取得条項は,総株主の議決権に占める割合をもって公開買付規制の 適用の有無を定めている。 Ⅰで述べたように,立法担当者は企業支配力の視 点か らこの規制を考えた ものである。

しか し, この ような規制は,果た して , 「国民経済の適切な運営及び投資 者の保護に資するため,有価証券の発行及び売買その他の取引を公正な らし め,且 つ,有価証券の流通を円滑な らしめることを 目的 とする」 ( 法 1条) 証券取引法の規制領域 として馴染む ものであろうか。

思 うに, 支配株取得条項は株式の持つ議決権の効力を問題 として してお り, 株式の持分証券的性質に着 目した規制 と言え,会社法ない しは組織法上の問 題を済 し崩 し的に証券取引法に導入するものである。

しかるに,証券取引法は株式譲渡 自由の原則を支える市場システムを提供 する法律 として,株式の流通証券的性格に着 目した規制であるはずであ り, 文字通 り証券の取引に関する法律である。社債や投資信託,資産担保証券等 の他の金融商品 も,商品設計に関わる規制は商法や投資信託法,資産の流動 化に関する法律等の他の実体法に委ねて,流通に関わる部分を証券取引法が 管轄 しているのである。

したがって,支配株取得条項が,株式の持つ議決権の効力を問題 とするの であれば,商法の立法管轄を侵害するおそれがある

18)

。流通市場 を通 じて株 式を取得する場合であれば株券等大量保有報告制度が適用 されるにすぎない

ことは この ことを端的に物語 っている。

(14)

支配株取得条項を証券取引法で正当化 しうる余地があるとした ら,対象会 社株主の株式売却の機会を確保することにあろうが,黒沼教授が指摘される

ように,流通市場で当該株式を売却することがで きる限 り,会社支配権の移 転を伴 う取引に一般投資者の参加を認める必要性はない

19)

0

会社支配権プレミアムの分配を一般株主にもすべ きであるという反論 も予 想されようが

20)

,この問題は会社支配権プレミアムの源泉を考 える必要があ

る。

会社支配権プレミアムの源泉が会社支配権取得者 による経営改善の効果や シナジー効果に由来するものである とすれば

21)

,これ らは会社支配権取得者 の資金 ・技術 ・人材等の経営資源 を投入 して初 めて実現 され るものでめ

22)

0

したがって,会社支配権取得者が任意に全株主に会社支配権プレミアムを 分配するのは一向に差 し支えないが,公開買付 という形でこれを強制するの は問題がある。

対象会社の経営改善や他の会社 とのシナジー効果が社会的に見ても望まし いもの と考 えられる場合,これを行 うのに相当な取引コス トをかけなければ な らず, 結果的に経営改善やシナジーのインセンテ ィブを殺 ぐような規制は, 国民経済の適切な運営 という視点か ら見て も望ましいものではない。

それに,会社支配権プレミアムの分配に与かれなかった株主 も,持株を保 有 し続けることにより,経営改善等による利得を株価上昇 という形で享受す ることがで きる点 も考慮する必要がある。

さらに,そもそも,会社支配権プレミアムの分配の問題は,継続的利害関 係を有す る会社組織構成員問での会社資産をめ ぐる内的配分の問題 として, 基本的には商法で規制すべき領域に属 し,市場 メカニズムを通 じて資源配分 の在 り方 を規制す る証券取引法の領域 を超 えているのではないか と思われ る

23)

0

か りに,商法に会社支配権プレミアムの分配に関する規制がないことをも

(15)

強制 的 公 開 買付 制度 につ いて 7 9

って して も,何 も証券取引法で強行法的に定める必要はな く,会社の定款 に 対応条項 を挿入するとい う会社 内部の 自治に委ねる方法 もある

24)

0

いずれにせ よ,支配株取得条項を証券取引法で定めることは相当問題があ る と言わざるをえない。

1 8) ア メ リカにおいては,企業買収 をめ ぐる規制 において,連邦証券諸法 と州の会社法 との間で立法管轄権 をめ ぐる厳 しい対 立 が見 られ るが,支配株取得条項 の ような規制 は会社の内部事項 ( c o r po r a t ei n t e r na la f f a i r s ) に関す る事項 として州の会社法の立法管 轄権 に属 す るこ とで,連邦最高裁判所 の判例 で決着 がついている。 この問題 に関 して は,拙稿 「州 に よる 『第二世代』企業 買収規制 に関す る一考察 ‑CTS 事件 を契機 と して ‑」経営 と経済 6 8 巻 3 号 1 2 3 頁以下 ( 1 9 8 8 年)を参照 されたい。

1 9 ) 黒 沼 ・前掲注 2 ) 5 7 頁。

2 0 ) 前 田教授 は,支配株式の譲渡 と株式売却 の機会均等 を扱 った論文の中で,支配株式 取 引 に際 して少数株主 に も支配株式 と同一価格 で株式 を売却 す る機会 を与 える とい う 方法 は,極 めて洗練 された解決方法ではないか と思われ る, と述べ られてい る。前 田 雅 弘 「支配株 式 の譲渡 と株式売却 の機 会均等 ( ‑) 」法学論 叢 11 5 巻 4 号 65 頁 ,67 頁

( 1 9 8 4 年)0

2 1 ) これまで行 われた多 くの公開買付で は,公開買付開始 公告の中で,経 営改善効果や シナジー効果が公開買付の 目的の項 目において記述 されてい る。

なお,西村総合法律事務所編 『 M&A 法大全 』6 ‑ 7 頁 ( 草野耕一分担 ,商事法務研究 会 ,2 0 01 年) も参照 されたい。

2 2 ) 同様 の問題 は第三者割当の場合 も生 じうるO企業再建 や企業提携 の手段 として第三 者割 当が行 われ る場 合 には,割 当先の技術 ・人材 ・資金等 に よる今後の支援 の見返 り

に市場価格 を相当下 回 る価額で発行 され る場合 も見受け られ るか らである.

有名 な ソニー ・ア イワ事件 では,ア イワが ソニー との提携 を強め るため発行済株式 総数 を倍 にす る増資 を取締役会で決定 し全株 をソニーに割 り当てたが,発行価額 は 7 0

円で前 日の市場価格

145

円の約半額 であ った。裁判所 は, 1

45

円の市場価格 は ソニー と

の企業提携 の見込 みを反映 して高騰 した結果 であ るか ら,企業提携 に影響 されない時

期の市場価格 ない し企業の客観的価値 を基準 として発行価額 が適正 に定 め られてい る

限 り,不公正 な発行価額 には該 当 しな い と判示 した ( 東京地判昭 47・4 ・2 7 判例時報

6 7 9 号 7 0 頁)が,提携先 以外の企業 に も同時 に同一の価額 で割 当が行われているような

場合 に同様の理論が成 り立つかは疑問であ る。

(16)

2 3 ) 注 4 ) の論文の中で述べた ことの繰 り返 しになるが,経済学的 に企業の金融活動 を分 析す る場合,金融論 と財務論 とい う異 なるアプローチが存在す るように,法律学的に 規制の在 り方を検討 する場合 に も,証券取引法は資金循環 ( 市場 を通 じての効率的な 資金配分)や市場管理の視点 か ら,商法は企業組織や経営の視点か ら,それぞれ分析 す るアプローチが妥 当 と思われ る。市場参加者の組織 内部 に関す る問題 も証券取引法 の規制対象 とすべ きである とい う議論 を推 し進めると,他の市場参加者,例えば政府 ・ 地方公共 団体等の公共部門について も,市場を通 じた資金の調達や運用 に関わる限度 で組織 内部 の問題 も証券取 引法の規制対象 とすべ きこ とにな るのではなかろうか。

この点で示唆に富むのは ,1 9 9 4 年 に証券取引法が改正 される以前の施行令 7 条 2 項 2 号である。同条は,商法 2 4 5 条の 2,3 4 9 条 1項 もし くは 4 0 8 条の 3 第 1項 もしくは有 限会社法 6 4 条の 2 第 1項の規定 による株式の買取 りの請求または法令上 の義務 に基づ き行 う株券等の買付等を,公開買付規制の適用除外 としていた。 これ らは継続的利害 関係 にある組織構成員であ る株主が会社 との直接交渉 を通 じて組織 か ら離脱す るとい う清算過程が問題 とされてお り,市場取引 との整合性 を理念 とした市場法的規制を適 用すべ きではない上,買取価格の決定 その他の手続 ( 商法 2 4 5 条の 3 参照)を中 山に, 交渉 力の不均衡 を是正す る手段が商法 その他の法令 において用意 されているか らだ と 説明することもで きる。

以上の ように解 した場合,発行者である会社 による上場株券等の公開買付 (自己公 開買付)の規制 を どの ように論理的に説 明す るかが問題 となる。詳細は今後の検討課 題 としたいが, 自己公開買付では,継続的利害関係にある会社組織構成員問での会社 資産 をめ く やる内的配分が問題 となるがゆえに,通常の公開買付 とは異な り,ダッチオー クシ ョンを認める余地があ った り,民事責任 を考 える上で一工夫す る余地があるので ある。 これ らの問題 については,拙稿 「自己株式取得 にかかる証券取引法の改正 につ いて ‑公開買付規制の整備 ‑ 」経理情報 7 3 0 号 4 頁以下 ( 1 9 9 4 年)を参照 されたい。

2 4 ) 種類株式や機関構成 をめ く やる最近の商法改正の動 向を見 る と, この定款で対応 し会 社内部の 自治に委ねる方法は,商法改正の傾向にも適合 した もの といえ よう。

Ⅳ. 結

以上の検討で明 らかなように,現行の強制的公開買付制度は相当問題があ ると言わざるをえない。

確かに,こと不特定多数を相手 とする限 り,強制的公開買付制度は,証券

(17)

強制的公開買付制度 について 81

取引法の究極 目的の一 つである投資者保護 を図る上での選択肢の一 つ とし て,立法政策 としてこれを是認することが七きる。

しかし,著 しく少数の者か らの買付であって も会社支配権に影響を及ぼす 限 りで公開買付規制を強制することは,不特定かつ多数の者を対象 とするこ とを念頭に置いた現行の公開買付の開示規制や実体的規制の枠組 と論理的整 合性を とることは困難である。

さらに,公開買付規制の中でも支配株取得条項は株式の持つ議決権の効力 を問題 としてお り,会社法ないしは組織法上の問題を証券取引法 に済 し崩 し 的に導入するもので,証券取引法の 目的か ら逸脱するものである。

支配株取得条項が会社支配権プレミアムの分配を問題 としているのであれ ば,これは,継続的利害関係を有する会社組織構成員間での会社資産をめ ぐ る内的配分の問題 として,基本的には商法で規制すべ き領域に属 し,市場 メ カニズムを通 じて資源配分の在 り方を規制する証券取引法の領域を超 えてい るのではな

か と思われる。

か りに,商法に会社支配権プレミアムの分配 に関する規制がないことをも って して も,何 も証券取引法で強行法的に定める必要はな く,会社の定款 に 対応条項を挿入するという会社内部の 自治に委ねる方法 もある。

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