−ノ.?−
361
シ.ユマ{一レンバッハ費用理論の展開
平 林 喜 博
Ⅰ問題の所在
さきに.われわれは.,シュマーレンバッハの場合,原価計算論と費用理論との 関係をどう理解しているのか,彼の経常価値計算論(=原価計算論)に密着さ
(1)
せながら考察した。しかしながら,シ.ユマーレンバッハの経営価値計算論紅あ まりにもひきよせたがために,彼の費用理論の展開過程をくわしく省察するこ
とができなかった。しかして−,本小文の目的はかかる不備を補う意図から,シ ュマ−・レ∵/バッハの費用理論に焦点をあわせ,その展開過程をくわしく考察す ることである。そ・れによって原価計算論と費用理論との関係−一川シュマーレン バッハの場合=鵬が−・層明確になると考える。
とこ.ろで,レユマーレンバッノ、の費用理論は,周知のように,1899年の論文
「エ場取引における簿記と原価計乱」に最初発表されで以来,1934年の著書『原
価計算と価格政策』(欝6版)に・■至るまで?長きにわたって原価計算論との関連
で論述されたものであるが,その内容ほ原価範疇論・数学的費用分解論等から なるものであって,このような理論構成は当初からほとんど変更が魂られない と一応いえる。しかし,彼の費用理論展開の過程を詳細に.検討してみぁと,その歩みはかならずしも担々としたものではなかったといえる。たとえば,い まおおまかに,レ.ユマ」−レ∵ソバッハの費用理論を19坤年までの費用理論−
「初期費用理論」と仮称したい−−・,それ以降1930年までの費用理論−「ヰ 期費用理論」と仮称したい仙・そして以降1934年までの費用理論−「後期費 用理論」と仮称したい−と3つに区分し,この3者を比較してみると,展開
目的なり内容についでそれぞれ相当のちがいをみることができる。
(1) 拙稿「シ′ユマーーレンバッハの原価範疇論および数学的費用分解論の意義」『香川大学 経済論叢』第亜巻第5号
篤43巻 彿4弓
h JIノ ー 36
以下われわれはシュマ−レ∵/バッハの費用理論の展開過程をその展開目的に
琵意をむけつつたどり,もって魔の費用理論のダイナ・ミオムを明らかにしたい
と考える。なお,シュマーレ∵/バッハは原価と経常規模との関係も論じている
が,それについてほ必要なかぎり言及することに.し,もっぱらいわゆる原価と操業度との関係として−の費用理論に.力点をおきノート風に綴って−みたい。
ⅠⅠ シュマーレンバッハ費用理論の生成
1.シュマ、−レ∵/バッノ、ゐ費用理論の囁矢ほ,周知のように.「工場取引にお
ける簿記と鳳価計算」な、る論文に求められる。彼がそこで論じた費用理論の全 貌はつぎのようなものであった。すなわも,「われわれがいまあるエ場紅おい
すれば,それには.γマルクの原価が発生するであろう。ところが,尤個ではなく
2.芳個製造すると2.γマルク以下の,3.尤個であれぼ3γマルク以下の原価が 通常発生するのである。つまり,この種の原価鱒.生産塁とは同一渉調をとらないのである。公式で示せばつぎのように.なる。
方製品 γ原価
2.方 〝 く: 2.γ 〝
但し く=左辺より小
>=左辺より大
この原価をわれわれは虚減資という。さて,生産盈が原価の増大なくして増加するという例外的な場合を考える
と,そこでの原価ほ固痘費である。かかる事例はたとえば運河を経営する場合 である。そこでは船舶の航行数の多少は原価に.関係がないのである。公式で示
せばつぎのように.なる。
れ製品 γ原価
2一方 〝 γ〝
これに対して,普通の場合比例費が生じる。
ガ製品 グ原価
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レコマーレンバッハ費用理論の展開 ・一 7上;−
363
2.方製品
2.γ原価ところで,逓減費の対極としで逓増費が考えられる。これほ工業ではまれで あるが,農業でほ通例のものである。公式で示すとつぎのように・なる。
米製品 γ原価
2.方 〝
>2JJ〝
なお,逓減費と逓増費とはこれを固定的なものと比例的なものとに分解して あらわすこ.とができる。たとえば,
ガ製品 グ原価(%.γ+弘光)
2.焉〝 1%ヅ 〝(%ク+1.γ)
とすると,前項のそれぞれ兄畑瀾定費を,後項の%一γと1.γほ比例費をあらわ
(2) す。」
さて,かかるジュマー・レ∵/・バッハ費用理論について,われわれほ後の議論の うえから必要なものとしてつぎの4点を指摘したい。
まず欝1に注目しておきたいことは,シュマー・レ∵/バッハの費用理論の理論 構成に.ついてである。すなわち,後の彼の理論構成においても中心である原価範
(3) 疇論と数学的費用分解論とがすでに看取できることである。上に・みられるよう
に,彼は原価範疇として逓減費,固定費,比例費,逓増費の4原価範疇をあ げ,その本質,特徴等を論じている。また,数学的費用分解論として逓減費と 逓増費とが固定的なものと比例的なものに分解できるとしつつ,逓減費の分解 のみを述べている。
欝2に指摘しておきたい点は,シュマーレンバッハの費用理論展開の意図に ついてである。彼は「間接費の正確な配戚ほいまだ行なわれていない。それは
(2)E,Schmalenbach.,Buc々fおhrmg ztnd Kalkulaiionim Fabrikgesch4f−i,Nach・
血uck,1928.S.8.
闇 シュマ・−レンバッハを含めていわゆる伝統的費用理論の構成については.,山城章教授,
溝口ー・堆教授等の見解がある。山城教授によれぼ,費用範疇論,費用分解論,費用法則 論,費用補償論という4部門の構成である。(山城貴著『経営費用論』昭和ユ2年版,同文 館)溝口教授によれば,費用範疇論,費用法則論,費用補償および価格政策論という3 部門の構成である。(溝口一・雄著『費用管理論』昭和36年版,中央経済社)
シュマ・−レンバッハの場合,上の基本枠遠からいえば費用範疇論,数学的費用分解論,
管用補償論および価格政策論,経営規模論という寛4部門からなるといえよう。
彿43巻 緒4号
364
− 7くi一・
まず,間接費の十分な研究,つまり生産還の増大または減少との関係において
(4)
研究することによって達成される」′、と述べ,既記の費用理論の論述に入ってし、
るのである。つまり,間接費の十分な研究に.不可欠なものとして費用理論を位 置づけて.いるといえよう。ただしかしながら,かかる目的のため費用理論を展 開しながらも結果的には彼がこ.れを原価の補償計算に・連結させたことは看過し てはならない。彼は数学的費用分解を説いた後,これが「禰償において二大きな
(5)
役割をはたす」と述べ,具体的に原価の嫡償について−論述しているのである。
第3に,原価範疇論についていえば,形式的なことであるが,4原価範疇の
論述−−配ち叶一順序が逓減費,固定費,一比例暫,逓増費となってV、、ることは
興味深い。後にみられるようなスマー・トな順序にはなっていない。当時の経営における総費用の態様パタ・−・ンのうち,もっとも多く典型的に.みられるものを
まず述べ,つぎにその逆つまりまれにしかみられないものを示し,最後にそれぞれさらに論理的に.対極になるものをあげたと推察される。また,これら論述
において,その例示に用いる数値が価額ではなく文字ないし分数であることも 興味深い点である。ところで,原価範疇論の内容についていま少しみて葬ると,この原価範疇が 総費用の操業度変動に対応した4範疇すなわち総費用経過の範疇であることは 否定しかたいように思う。しかし,ここでほその断定を留保し,したがって,
個々の原価要素における4範疇すなわち原価要素的範疇であるのか,総費用の 4範疇なのか,これについてほ詮索しないでおきたい。それゆえに・また,これ ら原価範疇をもってただちに.経営の4つのタイプと判定することもつつしみた
(6)
い。すべてはこの段階においては曖昧であり判然としないのである。ただシ.ユ マl−レソバッハが4原価範疇を説いたことのみを銘記しでおきたい。
さて,第4点として数学的費用分解論紅移ると,逓増費甲数学的費用分解の
(4)E,Schmalenbach.,a.a.0.,S.7.
(5)DeIS叫,a.卑.0り,S.8.
伯)周知のよう紅山城教授は,シュマ−レンバッハの原価範疇論が経営範略論と同義であ ること指摘されている。(山城章著,前掲苔,13ぺ−ジおよび103ぺ−ジ以下参照。)
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ンコマ−レンバッハ費用理論の展開
365 −J7 −
マイナス
例示がないこと紅,注意を要する。おそらく消極的固定費,あるいは後にみ.る
計算上の収益という考え方に.まで到達せず,逓増費を漠然と比例費と固定費と の混合と考.えていたのであろう。しかし,ここでもまた事実の指摘のみにとど
めたいと思う。なお,小さな事柄であるが,数学的費用分解という言葉もこの段階でほみら
れないし,そもそも分解という表現もないのである。つまり「固定的なものと
(7)
比例的なものとでもって表現できる」というのが原文に忠実な訳文である。
2.さて,以上のことをふまえた上で1902年論文「工場の原価計静」を吟味 してみると,基本的に変化ほない0すなわち,シュマーレンバッノ\は
に・おいて間接費の問題はど大きなものはないに.もかかわらず,そ・の間接費に.つ いての十分な研究がなされていない。特に間接費を比例睦の有無から,つまり操 業度との対応関係から検討↓て−厳密に概念区分することに欠け,間接費と固定
(8)
費とを混同し同じように考える誤りを犯していると批判する。こ.こ.に.彼の原価
範疇論展開の起点がある。したがって,費用理論展開の目的が増大する間接費 問題の解決にあったことは以前と相違はないといえよう。しかしながら,問題の原価範疇論についてシゴマ−・レンバッハは固定費,比
/
例費,逓減費,逓増費の4原価範疇をあげ,・それぞれの性格,特質等を文字・
記号を用いて説明している。いま,その緒論紅あたる部分を訳出すれば,つぎ のとおりである。
すなわち,「いままでの論述全体を要約すると,われわれほ4つの原価要素
(Unkostenarten)を指摘することができる。それを公式で示せばっぎのよう
に.なる。
I.比例 .先の生産でグ原価,2.方の生産で2.γ原価 2.固定 .霊の生産で一γ原価,2.芳の生産で プ原価 3.逓減 ∬の生産で.γ原価,2.先の生産でく2.γ原価
(7)E,Schrdalenbach..,a.a.0.,S,8.
18)E,Schmalenbach,Gewcrbliche Kalkulaiiron,Z.f.das gesa叫e kaufm去nnische UnterIichtswesel】,5Jahrg.1902/03,Heft6,7u.8(1902),Nachdruck,ZfhF.1963,
SS.376−378.
簡43巻 寛4号 366 ー ヱβ−−
(9)
4.逓増 .方の生産で.γ原価,2.先の生産で>2.γ原価」
ここで留意すべきほ以下の3点であろう。
●●◆■
まず,4つの原価要素という表現である。この表現から推論するに,とこで は4原価範疇が総費用と操業度との対応関係としての4タイプよりも,個々の 原価要素に.おける4タイプと考えられる。というのは,これを傍証するものと
してシュマーレンバッハのこの論文においては,4原価範疇を経営のタイブと 閑適づけて説明することが,逓増費の説明のさいを除いてみられないことであ る。シュマー・レ∵/バッハの場合,総じて4原価範疇を経営のタイプと関連づけ て説明する場合,それほ総費用の4タイプを述べていると判断できるのである0
つぎに注目すべきほ,逓増費を逓減費の延長線上のものと考えていることで ある。シ′ユマーレ∵ノバッハはいう「逓減費ほヨリ進めば進むはどその対極の逓
く10) 増費が生じる」と。つまりさきの1899年論文では逓増費と逓減費とのつながり
については,かならずしも明確でなかった。しかしこ・こでは同一・線上の対極と 理解されているのである。そして,逓増費発生の原因を生産能力の過剰利用に 求めていることも閑却してはならない。逓減=不完全操業度,逓増=超過操業 度,したがっで比例=完全操業度というシェーマはすで紅この時代紅その萌芽 をみるのである。
最後に,数学的費用分解論についていえば,1899年論文と同様である。た
だ,分解(ZeI・1egung)という′表現が使われ始めているこ.と,また数学的費用
分解の非現実性を「実務でほこのような分解(Darstellung)が常把.実行され
(11) ているとは限らない」と述べ,現実に.ほ帳簿技術的費用分解が採用されている
こ.と示唆している。
3.さて,以上に.述べたようなシュマ−レ∵ンバッハ費用理論の内容は,1908/
09年論文「生産費算定の理論」匿おいセヨリ総括され,彼のいわゆる初期費用 理論な形成する。
(9)E,Schmalez)bach,a.a.0.,S.379.
(10)Ders.,a.a.0・・,S.378.
(11)DeIS.,a.a.0小、S.378.
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ンコマーレンバッハ費用理論の展開ノ
ーー j8・−367
いま,従来と比較し相違点に力点をおいてみると,全体的には費用理論展開 の目的が従前とは微妙に変化している。つまり,費用理論がたんに間接費問題 の解決という観点,そして結果的にほ原価の回収・補償中心主義という思考か ら,どちらかといえば間接費,とりわけ固定的間接費を構成する生産能力の利 用可能性を探ぐるものとしての操業度理論と直結し,それを媒介しての原価の 回収・補償が志向されているのである。ミ/ユマ−レ∵ンバッハのつぎのような論 述はそのような思考を端的に.示していると考える。すなわち,「経営の指揮者に とってはそ・の経過の原価が国東的か逓減的か逓増的であるか紅ついて吟味し,
もってその性質をよく知っておく必要がある。また,原価が固定的で逓減的で ある経営部門を強く働かせ,逓増的な部門を軽く働かせることを考えねばなら
(12) ない」。「価格決定の目的のため原価算定の方法の選択に.ついては,価格が注文
の質と塁の上で最高の経済的作業を持ちきたらすように決定されねばならない
(13) ということから出発する」。「実際上,かかる原価決定法ほきわめてまれな場合
にしか行なわれない。もっともこの主義に近づきうる方法ほナ原価をできるだ け詳しく分類して,原価構成部分を比例費,固定費,逓減費,逓増費の各性質
(14)
に正確に.認識することである」。
かくして,誤解をおそれずにいえば,原価の回収・補償中心のいわゆる価格 政策への費周理論の導入から最適操業度実現の横粁として−の費用理論に重点が 移っていると考える。
ところで,原価範疇論に.限定し\て考察すると,3点はどの変化をみるこ.とが できる。欝1は,4原価範疇が個々の原価要素牲.おけるそれであることをうらづ ける論述がみられる。たとえば比例費紅ついて「生産患の増減に比例して−増減 する費用である。・‥・‥……主要原料や直接費金は通常比例費に属する。しかし ながら補助材料や道具の減耗のような,また電力を使用するところでは動力費
(15)
も比例的性質を有するを常とする」とシュマーレ∵ソバッハはいう。ただ問題が
(1コIDers.Theori(dcl・P)−OdtLh(iollSkost(]t 1rl]Zi(tc[LLltg、ZfhF、1908 O9.S.46.
(13)Dersい,a.a.0い,S.61.
(14)Dersい,a.a.0.,SS.6l−62.
(15)Ders.,a.a.0..,S.42.
′
駕43巻 第4号
−20 → 36J
残るのほ,逓減費,逓増費に.、ついてかかるはっきりした論述のないことである。
しかしながら,逓減賛と逓増費は混合費であること,逓増費は逓減費の同一 線上のものであることを考慮に入れれば,「間接費とされる原価の大部分は原則
く16)
として逓減的な性質をもつ」という論述で満足すべきであろう。
第2ほ,いわゆる単一・生産能力概念が看取できる。周知のように,ハイネン
が生産能力概念紅ついて3つの異なった見解があると述べ,単一・生産能力概念,
(17)
附加的生産能力概念,部分的生産能力概念を挙げているが,シュマーレンバッ
ハの場合,、そのもっとも原初的な単一・生産能力概念を前提紅し,そ・の利用ない
し使用度合を示すものとして操業度概念一一−一具体的にはその尺度としての生産
鼠椚を用いているのである。たとえ.ば彼は「■原価の逓減はある生産能力限界
(Produktionsgrenzen)に結びつけられた個々の経営の一現象である。との 生産能力限界は経営設備の範開によって与えられる。経営設備をある標準点を 越えて緊張せしめると,原価の逓増紅変化するに至る。こ.こに強度の限界があ
(18)
る」という。かくしてシュマ−・レ∵/バッハのかかる認識は重要である。なぜな らば,この圃故によって初めて厳密な意味での原価と操業既との関係が考察可 髄となるからであり,また当然原価と経営規模との関係も考察の対象にうかび
あがってくるからである。
第3は,突発的逓増(ruckweise erfolgehdeProgres$ion)費の考え方であ
る。これは後の飛躍費に類似するもので,シュマーレ∵ソバッハによれば「特に
逓増費でほその逓増が階段的になることがある。この原価はある生産能力限界 紅達するまで比例的に.進み,それから突然飛び上り,それからまた再び比例的 に進むのである。たとえば,あのエ場では過剰作兼は高い賃率をもって行なわ れるのである。日中の作業で生産される生産量償安く上るが,生産患を増加すると高くついてくるがそれほ漸次に.高くなるのでなく突飛的に高くなるのであ
(16)DeIS.,a.a.0.,S.43.
(17)E,Heinen.,BeiriebswiンischqfilicheKosienlehYe,1.Aufl.,Bd.Ⅰ.Grundiagen,
Wiesbaden,1959.SS.124−125.宮本・小林共訳『原価理論』(昭和39年版,中央経済社)
45ぺ一汐。
㈹ E,Scbmalenbach・,a.a.0・,S.45,
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レユ.マーレンバッノ\蟄用理論の展開
−2J・−369
(19)
る.」と説明する。したがって,4原価範疇ほ正確にん、えは以後5原価範疇,さ らには6原価範疇となっていくのである。
ところで,数学的費用分解論について−みると,形式的な事柄でほあるが数学 的費用分解と命名するにふさわしい文言と例示が示されてV、る。すなわち「■逓 減費は計算上比例的なものと固定的なものとに分解することができる。いま例
(20)
をあげてこの分解を示す.」と述べている。われわれほここで計算上という言葉 の挿入の意味は大きいと考える。その言葉が, もちろん内容面からも明らかで あるが,シ.ユマーレンバッノ、の費用
分解をして数学的であるといわせる誘因に
なってヽ、ると思うからである。なお,熔鉱炉における銑鉄生産患とコークス消(21) 費患との関係を用いての具体的例述も,従来が分数紅よる分解例示であったこ
とを思えば格段の進展である。
さて,従来に、比して格段の進展がみられるといえは,逓増費の数学的費用分 解が本論文に.おいて初めて主張された事実は大きな意義をもつといえる。シュ マーレ∵ンバッノ、は「■逓増費もまた固定的なものと比例的なものとに分解するこ
マイナス
とができる。この場合固定的原価部分ほ消極となる。ここでも同様に1例を示
22)
してみる」と述べ,ある石切場での採掘患とその原価とでもって分解例を示
(19)Ders.,a.a.0.,S.46.
(20)I)ersい,a.a.0 ,S.43・
佗1)余言のようであるが,数学的費用分解の例示をつぎに示して.おこう。以前の数学的費
用分解と比較されたい。
ある熔鉱炉が200トンの銑鉄を生産し,この生産段階で212トンのコー・クスを使用する事 とする。また,生産鼻を250トンに.するとコ−クスの消費は236トンに・なるとする。銑鉄 生産量200トンー250トンの間は生産量を重盛で出すと,固定費,マークス116トン,比
例費,1トンの銑鉄粧つきコークス崇トンとなる。
銑鉄200トンの際にぬ原価はつぎのとおりになる。
116トンコ」−クス
96トンコ−クス 合計 212トンコークス
116トンコーークス
120トンコークス 合.汁 236トンコ−クス
固定費比例戟×2do
銑鉄250トンの際には原価はつぎのとおり紅なる。
固定費 比例費慧×250
(E,Schmalenbach小,a.a.0,S,43.)
但a DeIS.,a.a.0い,SS.45.
ヽ
貨43巻 籠4弓
−22・−・ 370
(231 している。従来は数学的費用分解論とほいえ,濁減費の長の分解がきわめて簡
単に論述されているといういわば片儒飛行であった。しかし,と.こに至り名実 共に数学的費用分解論が成立するのである。
以上,シュマーレンバッハの初期費用理論を形成する3つの論文を総指する と,理論構成としてほ原価範疇論と数学的費用分解論の2支柱から成立してい るこというまでもない。また,費用理論の展開目的としては間接費問題が糸始 底流に.あるが,表面上は原価の回収・補償計算(ニ価格政策論),あるいほ操業 度政策論と密着して論じられている。そしてどちらかとい.えは費用理論と操業 度政策との関係が前面で,費用理論と価格政貨論との関係が塞面ないレ結果と
して顕現する傾向が察知できる。
なお⇒ 原価範疇論についていえ.ば,原則として4原価範疇であり,しかもど ちらかといえば個々の原価要素に」おけるそれであり,それらを単一・生産能力ー 定のものとで考察しているようである。また,数学的費用分解論についていえ
は,逓減費,逓増費についで比例費と固定費(消極固定費)に計算上分解でき ることを明示し,もって操業度政策あるいほ価格政策の指凛にせんとする意 図が看取できる。
ⅠⅠⅠ シュマーレンバッハ費用理論の成立
さて,1919年シュマーレンバッハは『原価計算と価格政策の原理』を発表し,
そ七において彼の費用理論を叫層発展させている?われわれはこれ以降1930年
『原価計算と価格政策の原理』第5版までにみられる費用理論をもって,シュマ
ーーレ∵ノバッハの中期費用理論と・一応名付けておきたい。その理由は,たしかに
初版より4版(1927年)まで−叫この間全く改訂ほない一札←と5版とでは癒々の 点において相違がある。しかしながら,費用理論紅限定し,とりわけ費用理論展開目的に澄目してみると,そこでほ同・・・・・・思考に立脚していると考えられる。
すなわち,シュマ・−レ∵/バッハは「実際上の計算方法において−,操業度の影響 β
e3)DeIS.,a.a.0.,SS.A5−46.
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シュマーレンバッノ、費用理論の展開
371 ー 2∂ −
が原価に及ぼすこ.との少なけれほ少ないほど,これを敏感に評定し,その作用 を明らかにし,経営者をして,いずれの経営も逓減費と逓増費を包蔵するもの であるゆえ,これを開明するのは原価計算の主要問題であり,逓減的に作業 される部分を飽満せしめ,逓増的紅作業さるる部分を軽減す−ることほ,製造計 画の選択や価格政策の根本問題であること充分に説得せしめるため努力せねば
(24) ならない」と論じ,費用理論を第一・義的には操業度政策を通しての価格政策に
関連させている。そして−その意味でほ彼の初期費用理論ともまたつながりをも
(25)
っている。しかし他面,計算価値論−−後の纏営価値論−を展開している点 では初期費用理論と異なる。もっとも,こめ計算価値論が費用理論とどう関連
○ するのかに.ついては後の第6版(1934年)に比して不明瞭である。
ところで,中期費用理論全般について指摘できることは,1、つにほ論述が一 段と詳細に.なったということ,とくに具体的な価額数字を用いての説明が顕著 である。しかし実質南からいえば,累層的思考の導入といわゆる経営規模論の 展開との2つが重要である。前者ほ.計算価値論の根底をなす限界価値法則に照 応する考え方であり,後者は経営規模と原価との関係が論じられることを意味
し,したがって,シュマーーレンバッハの費用理論体系が原価と操業度との関埠 一兵体的には原価範疇論と数学的費用分解諭そし七費用補償論および価格政
溺 DelS.Grtutd[ 1gC〃d S 1!bs抹osf川,ぐ(加′川g Z Ld PTCis♪ohItk,2・Aufl・1925・
S.20.
鍋ここでシュアーレンバッハのいう計算価値論について若干解説しておきたい0彼によ れば,経済することは選択することであるという。具休的には給付との間の選択,給付
と原価′との間の選択,原価と原価との間の選択が考えられる。しかし,このような選択 過程は評価を前提とする。つまりその対象物に・貨幣単位で定めた数値を与え.ることが必 要不可欠である。そ・れによって−経営の実体もまた比較されるのである。しかして,この 与えられた価値をシュマ−レンバッハほ計界価値と名付けるのである。かくして,計算 価値とは,その数字的決定が経営の経済的選択過程を正しく導く目的を有するところの
価値である。数字的に定められた計算価値はこれ軋役立つためにはある事物が経営に対して有する価値と等しくなければならないのである。(Ders・,a・a・0巾,2・Aufl・,SS・12ff・
und Dersい,a.a.0り,5.Aufl..,SS.13ff.)
ところで,シュマーーレンバッハの計算価値思考の原点は何か。それは原価計算におけ る比較性原則の主張であり,その基底に共同経済的経済性思考がある点であろう。逆に いえば,共同凝済的経済性→比較性→計堺価値による評価という図式がレ・1マーレンバ
ッハにほ実在して1いるのであろう。そして重要なことはかかる詔乳監考を通して実は固
定費を形成する生産能力賀の利用・回収が貫徹することである。幾43巻 箆4宅
ー・2尋−
372
策論−−− と原価と経営規模との関係とからなり,彼の費用理論体系が成立した ことを意味する。
1.さて,いま少しくわしく検討してみよう。まず4版までの原価範疇論につ
いて。
ここでほある「経営」の「総原価」が操業度と対応せられ,比例資,固定費,
逓減費,逓増費の4範暗に類別できるとしている。たとえ.ば,比例費につい て,「ある経営では経度価沌操業度に…………・順応することがある。操業度が半 分になれば原価も半分に.なる。生産量が倍加すると原価もまた倍加する。……
偽(26) ……われわれほかかる経営をもって−比例費を有する.」と述べている0しか
(27)
これら4原価範疇を粗描して:つぎのような数値を示している。
年
生産屋P
度侶1単位原価 1908 500
1909 800 1910 1,000 1911 1,200 1912 1,600 1913 2,000 1914 2,400 1915 2,800 1916 3,200 1917 3,600 1918 4,000
100,000 100,000 100,000 108,000
\〜11ノ
00 25 ㈹
2 1 1
逓減費
128,000 80
150,000 75
180,000 75 210,000 75 256,000 80 324,000 90 400,000 100
比例費
逓増幾
みられるように,4原価範嘩は総費用経過の範疇である0した
費用理論とはいわば対照的であるといえる。しかしながら,シコ.マ−レ∵/バッ
ノ、は他方,「個別費用と操業度との関係」の小題において「総原価は個々の原 価からなっている。これら個別費用もまた比例性,同定性,逓減性,逓増性のC26)Ders,a.a.0。,2.Auflい,SS.20−21.
De工S,a.a。0、,S.26
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シュマーレンバッハ盛用理論の展開 ・−25−−
373
(28) 特質を有するものである」と述、ぺ,原価要素的原価範疇をも示唆しているので
ある。さらにん、えほ,個々の個別費用としての4範疇の組合わせいかんによっ
(29)
て総費用経過の諸範疇が出てくるとも論じている。かくみると,シュマーレン
バッノ、においては4原価範疇が原価要素的範疇であると同時に.総費用経過の範 疇でもあることが判明する。ただ,それが明確に.区分されていない点が問題な
●
のであり,この段階払おいては,原価要素的範疇としてはとんど論ずることが
ないのである。ここに.まさに.種々の批判がまき起り,ついに.あの「費用範疇論
争」が始まるのである。ところで,原価範疇論に関連して操業度概念がヨリ明確に.なったことも注目
紅値する。もちろん,これに.ついての定義があるわけでほない。ただ,経営規模との峻別がみらることを通して理解されるのである。すなわち,
「■原価の逓減に.はずいぶん誤った見解がみられる。時に犠仝ぐ性質の異なっ た他の逓減現象と混合されることがある。われわれのここに.問題とするめはあ る与えられた経営設備をもつ経営に.現われる逓減である。つまり,こ.こでいう 逓減を経営設備利用による逓減と名付けたい。規模拡大に.よる逓減と名付けう
(3()1
る逓減とは全然異なったものである」とシ.ユマーレ∵/バッノ、ほ論じている。と
もあれ操業度と経営規模とを区別し,両者を原価影響要因としたことほ銘記し ておいてよいであろう。さて−,4原価範疇のうち固定費について−は閑却できない論述がある。それら
は全ていまだドロドロしたものであって固まった観念とはなっていないが,重 要な発言である。すなわち,固定費の本質規定,それとの関連に.おける絶対的 固定費概念の暗示と飛躍費の示唆である。固定費の本質について,シュマーーレンバッノ、は「−安定性があって変動性甲な
(31)
いことがその本質をなす」,「たんに.原価が操業度の変動に.よって影響されない ことに.存する。………
…したがって,固定費をもって確固不変のものと解して佗8)Ders.,a.、a.0,S.27.
(29)DeIS.,a.去.0い,S。27ff 冊I)ers.,a.a=0.,SS.24−25
(31)DeISい,a.a.0.,S.22.
第43巻 第4号 374
−−26 −
(32) はいけない.」という。かくして「∵固定費をもつ企業でほその給付能力は決して
無限のものではない。…u………
しかし給付能力が適当な準備に与って高まり得る企業がある。………・‥・この場合,原価ほこの設備のため急激に.増加し再び固
(33)
定費となるム「同じ現象ほ他の場合にもある。たとえば・・……‥・‥作業停止のさ
い,………‥・・ ・完全に作菓が止うても減価償却費,利子,維持費というものが経
($4)● 常設備には必要である」。みられるように,固定費の本質,絶対的固定費,飛躍
費が察知できるのである。
ところで,数学的費用分解論についでほ,・その前提とも考えられる混合費概 念の明示ほ重要である。もちろん,従来から数学的費用分解を主張しているシ
ュマーレンバッノ1である以上混合費概念が突然うかびあがったわけでほない。
むしろ既に久しくこの観念が潜伏していたとみるのが正当である0ただ,この 時期鮮明軋その根拠をも付して示されたといえよう。彼ほまず「−逓減費,逓増 費においてほ.……‥‥…生産の変動と共に・,それ準順応して一変動するものではな
く,また静止しているのでもない。しかも逓減ならびに.逓増の強度は全く区々
(35) である」と理由を示し,「この困難を克服するためには逓減資, 逓増費を混合
費として考えるのが適当である。すなわち,逓減費ほ眉定費と比例顔との混
(36) 合,逓増費は固定的収益と比例費との混合とみるべきである」と主張する。数
学的費用分解は実にここにその起点をもっていることを思わざるを.えない。
しかしながらシュ.マーレ∵/バッノ\が示した数学的費用分解それ自体は多少叙 述が豊富になったとはいえ1つのことを除いては以前と実質変化はない。その
1つとほ,逓増費の分解濫.より生じる消極的固定費を計算上の収益と表現した ことである。こ.れはたんに表現の変更ではなく,消極的固定費に.対する内容解 釈を示すものであって看過できない。しかし残念ながら4阪まではその解釈を 示すには至らず,・それほ第5坂まで待たなければならないのである。
B勿 DeIS.,a.a.0.,
脚 DeIS..,a.a.0‖,
(弛 DeI S.,a.a.0.。
(35)DeI■S‖,a.a.0.,
86)DeISハ,a.a.0一,
3 2 2 8 ︵X︶
2 2 2 2 2
S S S S S
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ソ.ユマーーレンバッハ償用理論の展開
ー・27−375
2.ところで,問題の第5阪であるが,顕著な特徴は「層用範疇論争」および 数学的費用分解をめぐる論争の影響を受け,ある場合には反批判を,ある場合 に.は修正加筆を行なっていることである。
反批判ないし反論としては,固定費と資本費との混同について,および数学 的費用分解と帳簿技術的費用分解との関連について,であろう。前者の問題に
ついて∴ンユマーレ∵/バッハは「数多くのしかも根絶することの困難な誤謬が行
なわれているので,特に強くいっておかなければならないことは,固定費ほ資(37)
本費と同−・ではなく決して固定資本の費用と同一・でほないこ・とである」という。
そ・してその理由として「固定費部分ほ作業と共紅著しく変動するが資本は同一
(38)
に止まっている」こ.と,また「資本費は唯一・の固定費でなくまた決して主要な る固定費でないのみならず,反対に資本費もまたかならずしも常に固定喪とは
(39)
限らない」こと等をあげて論駁して−いる0
後者の数学的費用分解と帳簿技術的費用分解との関連についてほ,「総原価が たんに.固定費と比例費との2種からなっていて−,相互に容易に分離することが できるならばこれを限界費で分けようが(数学的費用分解の意一平林註)指定
(40) に.よって分けようが(帳簿技術的費用分解の患一平林註)同じことである」と
して,1つの例を示し実証している。ただ両者が異なるのは「逓減皮が整−で
(41)(41) ない場合の原価」と「それに限界費が上る時とヰ■る時との2つの場合」である。
しかしながら「この相異ほ認識の困難に由来するものであって,方法の根本的
(48)
相異に存するものではない」とシュマーレンバッハは論結している。したがっ てシュ.マーレ∵/バッハほ数学的費用分解と共に帳簿技術的費用分解をもここに おいて承認したといえる。しかし,彼の本心をさぐれば承認とほいえ,帳簿 技術的費用分解を積極的に・支持する姿勢にははど速いといわねばならない。む
(37)Ders,a.a.0.,5.Aufl‖,S.84,土岐政蔵訳『原価計算と価格政策の原理』(昭和10年 版,東洋出版社)67ぺ一一汐。
(38)Ders.,a.a.0、,S.35.土岐政蔵訳,前掲書,68ぺ一汐。
(39)DeIS.,a.a.0.,S.35.
〝
〝 69ぺ一−ジ。(40)Ders,.,a.a.0,S.48.
〝
〝 93ぺ]一汐。(41)Ders,aa.0,Sり49
95ぺ・−i7。
(42)Dersり,a.a.0‖,Sい49.
〝
〝 96ぺ一汐。塊43巻 鵠4号
叫2β−
376
しろ,帳簿技術的費用分解が最後のツメで数学的費用分解の手法を借りざるを えないこと,また逓減の不均斉の時は数学的費用分解が適当であること等を理 由にして,数学的費用分解の優位性を主張している0牟くみると,シュマ−レ シバッハの考え方、に.種々の批判がよせられ花々しい論争が展開されたのではあ るが,当のレコマ−レンバッハ自身は案外冷静であり,自己の主張をまげなか
ったことが判明する。しかしてわれわれが思いめぐらすことは何故かくまで冷 静であり首尾一・賞した主張が可能なのか,そのよって立つ原点ほ何んであるの
か,ということである。われわれほそれを彼の著書『原価計算と価格政策』(籍 6坂)をみることによって理解するのである。
しかしその前に.欝5坂たおいて追加された論点を指摘しておきたい。それは 低下費(Regressive Kd$ten)を原価範疇に追加したことであり,数学的費用
分解論では消極的固定費=計算上の堺益に・ついての説明が加筆されたことであ
り,さらに.は時間的原価(Zeitkosten)および壷的原価(Mengenkosten)概 念の導入である。
(43)
低下費に.ついてレユマー・レ∵/バッハは「この種の原価はあまり重要でない」
としつつ,「たんに論理の発展のために,また逓減費の概念を誤って論ずること
(43) を防ぐために.」低下費を指摘したいと述べ,つぎ′のように.いう。「こ.の原価ほ操
共皮の上昇紅.さいしてその絶対額に‥おいて−降下するものである。かかる特異蚕 例ほ事実上非常紅.高熱に耐える,しかもその変化に.対∴し非常に敏感な耐火石で できた高熱炉に生じる。炉を休めたり,生産制限をするとこの石に非常な損害
(43−) を起すものである」と。
つぎに消極的固定費については「これは対比の便利から釆た用語にすぎない。
消極的固定費なるものは存在する一ものではない。実際において高価な生産方法 の使用のため,およびこれによって高められ限界費率の使用によって,ヨリ安
(4ヰ) 価な生産方法に.対し利益の生ずる場合を問題にしたものである」と説明してい
る。つまりここでは計静止の収益に・実質的意味を加え,かかる消極的固定費=
(43)De工・Sl,a..a.0.,S.40.土岐政蔵訳,前掲沓,80ぺ−ジ。
㈱ Ders.,a.a.0小,S.47.,
92ぺ」一汐。OLIVE 香川大学学術情報リポジトリ
レコ.マーレンバッハ常用理論の展開
剛 2ク ーー377
計算上の収益の正当性を主張しようとしている。‖そして,このいきついた思考 は欝6仮にみるのであるが,そこでは経常価値との関連で重大な意味をもって いるのである。ここではたんなる消極的固定費といわれていたものが計算上の 収益といわれるようになり,さらにそれにある・−・定の意味が含められるように なったことを認識しておきたいと思う。
最後に時間的原価および量的原価に.ついでであるが,これは現実には比例費,
固定費の認識が困難であるところから時間的原価(=固定費),量的原価(=比 例費)を導入することを提唱しつつ,比例費計算の主張を買こうとするもので ある。すなわち,原価計静ほ「常にかならずしも原価の全体を個々の生産物,
つまり給付単位の上に.計算するものでなく,むしろ屋的原価計静においてある 特定の原価のみを計算し,景気さえ許せほ計算されなかった部分の原価をも総
(加) 利益の中に引入れる」ぺきである。もちろん,「計算される原価と計算されない
原価との分離ほ随意的ではない。‥…‥…・‖原価計算において各個の生産物に・計 算されるものほ可及的比例費の部分であり,固定費の部分は.各個の生産品に計
(45)
辞されるこ.と要しない」という原則を立てるのである。しかし現実に.はこの分 離の原則を完全に.正確に賢くことは不可能である。そ・こで比例費と固定費の概 念の外に,実際的な方法として別の概念,すなわち「盈的原価と時間的原価の
(46) 概念」を入れるのである。ここで「患的原価とはその時の原価計算において給
付単位に計辞される原価であって,時間的原価とは各個給付への分割のなされ
(47) ない原価である」。したがって,「1方の患的原価は比例費に,他方の時間的原価
(4り
は固定費に対応する」。
以上,く/ユマー・レンバッハの中期費用理論をまとめると,初期費用理論紅比 して顕著な相違は費用理論の体系が原価範疇論,数学的費用分解論,費用補償 論および価格政策論,経営規模論の4理論構成からなり,シュ.マー・レンバッハ なりにその体系を樹.宜したことである。また,シュマー・レンバタハの費用理論
匿)Ders..,a.a.0。,S.51.土岐政蔵訳,前掲雷, 199−200ぺ.汐。
鵬IDersい,a.a.0りS.51. 〝 〝
100ぺ−ジ。(47)DeIS..,a.a.0りS.51. 〝 〝
101ぺ」−ジ。貨43巻 第4号
ー 30 − 378
紅対する批判,反批判等論争がまき起ったが,彼自身ほ直接参加することなく むしろ論争を静観しつつヨリその理論を精緻なものに.したといえ.る。もちろん,
論争の影響を全く受けなかったというのでほ.ない。しかし,どちらかといえば 論争の嵐に向うことなく従来の主張を確認し展開するという傾向が強い。そ・し ていきついた結論ほ比例費計算虻よる1方における操業度政策を通しての価格 政策という側面と,他方における計算価値与しての比較。選択・決定という側 面であり,前者に.やや傾斜しているのである。しかもこの比例費計算の正当性 を根拠づけるものとして費用理論が位置づけられ,従来に比してヨリ深く広く 展開され多くの不備が補なわれているのである。
ⅠⅤ シュマーレンバッハ費用理論の確立、
さて,シュマ−・レ∵ノバッハ費用理論はその著『原価計算と価格政策』(第6 阪)において確立する。そこでほ費用理論が彼のいう経営価値計算論とヨリ密 着したものとして展開されている。この点が第5阪までとほ同一一・視できない理 由である。つまり,第5坂までは費用理論を展開している章題が「操業度と原 佑」であり,しかもそれはそれ以後の各章の基底となり,具体的には価格政策 論につながっているのである。それに対して第6阪でほ「経営価値と操業度と の関係」という章題で費用理論が論述されているが,それはそれ以前の各章の 論理的基礎として経営価値計算論につながっているのである。したがって,か かる推論が正しいとすれぼ,これをもってシュマーレンバッハの費用理論展開 目的ほ第5坂までと欝6坂とでは相当の差異があるといえる。事実欝5坂管で は冒頭紅みられた,そして先に引用したあの操業度政策を通しての価格政策と 費用理論の目的という考え.方が欝6版の該当章のほじめ紅はみられない。また 章題が「経営価値と操業度との関係」となっているのもたんなる言葉のアヤで はなく実質内容を示唆していると推察できる。かくしてこれが後期費用理論と 名付け中期費用理論と区別する理由である。
で特異体的に後期費相理論ほどこにその特徴を見出せるであろうか。少なく ともつぎの3点ほ指摘できると考える。
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シュマー1/ンバッハ常用理論の展開 一−−、 り −l 379
第1は,レユマ、−・レンバッノ\が原価と操業度との関係軋考察を限定すること を強調している点である。−・般にシュマーレンバッハほ近代的費用理論を支持 する人々からグーテンベルクのいう孤立化の方法が無視されているといわれる
。つまり,原価と操業度との関係を考察するにさいして,要素価格,要素質等 をも混入させ,いわば複数の原価影響要因の相互作用のもとでの原価態様の考 察が行なわれていると批判されるのが−・般である。しかし,結果的に腰ともか
く,ミ/ユマーレンバッノ、はその意図としてはグーデンベルクが採用した孤立化 の方法を志向しているといえる。たとえば,「現に存在する誤解を避けるために いっでおきたいことは,以下軋述べる比例費,固定費等の諸概念は操業度との 依存関係という見地の下に.おいてのみ解釈すべきものであるということであ
(48)
る。原価の高さに作用する他の影響ほ除外して考えるべきである」とシュ.マーー レンバッハは断つでそれ以降の論述を始めている。
第2は,原価範疇に.飛躍費と経営収益とを追加した点である。前者は固定費 との関連でうかびあがった概念で,「ある限界内においては操業度に依存せず,
その限界を越えた時に急激にある高さ紅飛躍し,それから以後再びある期間固
(49)
定的となる.」ものであるという。すで紅こ.のような考え方は以前にも散見でき たことについてほ本文でも指摘した。しかし,ここに「飛躍費」概念として誕 生するのである。もっともシュマー・レンバッハほこれを独立の原価範疇に・まで 格上げするこ.とを躊躇したようである。しかし,この概念がグーテンペルクの いう区間固定費概念と極めて類似し,しかも彼がこの概念を重要視したことを 想起すれば,シュマー∴レ∵ンバッハの上のような取扱いは軽視できないであろう
と考える。
さて,経営収益についでであるが,これはつぎに第3点として論じるのでら こではいっさい割愛する。しかし,原価範疇論に混乱が生じているようであ る。というのは,経営収益がいわゆる原価範疇論として論じられているのであ るが,本来経営収益はたしか紅計算上の消極的固定費であるゆえ,形式的紅は
旬8)Ders,ぶg/ね′点♂∫J♂折グ♂ぐカ〝〝〝g〟〝dメサ♂g.浄班烏点,6.Auflィr,1934.SS.29−30.
土岐政蔵訳『原価計算と価格政策』(昭和鎚年坂,森山書店)46ぺ−ジ。
極9)Ders,a.a.0。,S.41.土岐政蔵訳,前掲書,55ぺ′d汐。
■− g2 −
第43巻 第4弓
380原価範疇かもしれないが実質的にほ全く次元の異なる範疇である。比例費,固 定費等とほ同列に扱いえない 質的に相違する側面をもっヱいると考えられる。
そ・こで第3点であるが経常収益に関する論述が問題となる。周知のように逓 増費の数学的費用分解に.よれば,消極的固定費が生じ,これを計算上の収益と も称していた。しかし簿6坂において−ほこの計算上の収益を経営収益と変称し
,「以前の生産層を包含する全生産の経営価値ほ限界費用によって決定されるの
(50)
である」が,「逓増の生じた時の全生産の経営価値ほ実際発生した原価の全体よ
(50)
り高くな一る」にちがいない。かくしてこの余剰価値を経営収益と称するのであ る。つまり,経営収益は固定費を含むいっさいの費用の超過部分であるという のである。ところが,シュマ−ル/ンバッハは「操業度が増進するにつれて固定 費が減少するけれども,それは原則としては固定費が実際に蘭少するのではな
くて,たんに周定費と経営収益との差が減少するにすぎな・いのである。固定費
(61) の額が消極となる時,経営収益が固定費を超過するものと推論してよい.」とも
述べている。つまり,ここでは経営収益が比例費部分の超過部分であるという のである0 したがって−,ここには論理上矛盾がみえる。しかしともあれ,消極 的固定費という計算上の概念が経常収益として内容・実体概念となったことほ 銘記してよいと思う。
以上,後期費用理論の主として追加論述部分の指摘を行なぅた。この他にも 部分的紅訂正なり加筆は行なわれている。しかしながら,シュマーレ∵/バッハ 費用理論の35年間紅わたる歩みを概観する阻必要な論点は一応瞥見したつもり である。残された課題はかかる費用理論と原価計算との関係,シュマーレンバ
\ ッノ、の場合経営価値計算との関係であ為。多少は費用理論の展開目的との関連 において指摘したのであるが,総領的に論究し結びとしたい。
Ⅴ 結 び
まずれわわれはレユマーレンバッハの原価計算とは経営価値計算であり,経
60)DeISn,a小a.0小,S.41.土岐政蔵訳,前掲書,63−64ぺ−ジ。
(51)DeIS・,a,a,0・,S・僻・ 〝 〝 7さぺ・−㌢9
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シュマ−レンバッハ費用理論の展開
381 − 33 −−
営価値言1辞とほ㌧比例費計算ないし限界費用計算であることを確認しておかなけ
ればならない。すでにみたように,1899年論文以丸 彼ほ「比例費計算の優越 性」を主張してやまないのであるが,1934年・の既言己の著書欝6阪においても「経 営価値計算の本質ほ,原価逓減の段階においてほ原価を固定費と比例費とに 分ち,しかして給付単位の上に.比例費のみを計算し,固定費を計算しないとい(62)
うことに存する」と論じ,経営価値計算が比例費計算と同義であることを是認
している。
しかしながら,比例費計算がただちに.経営価値計凱 つまり経営価値の計算 となったわけではない。すでに.多少ともみたように比例費計算ほ当初原価の回 収・補償計算と連接的紅ほ関連していたのであって,経営価値計算本来の目標 である比較・選択・決定のための評価計算方法としででほなかったといえる。
ただ,これまたすで紅指摘したように,当初より固定的間接費を形成する生産能 力の利用がシュマー・レ∵ンバッハには1つの大きな関心事であり,それがために 逆説でほあるが比例費計算を主張する側面をも同時に.もっていたことはたしか である。むしろ,この側面がやがて最適操業度の達成=最高の経済作業の実現
というかたちでの操業度政策論とのつながりを濃厚なもの忙し,さらに.は共同 経済的経済性の昂揚とからみあって資本と財との浪費防止,いいかえれば資本
と財とをその効用が最高の水準で発揮できるよう紅利用するための計算用具と しての.比例費計算=経営価値計算へと発展するのである。したがって,シュマ ーレンバッハのいう比例費計算の目的は大きくほ原価の回収・補償計穿と原価 の利用・管理計静との2つであったと推論できる。
とこ・ろで,シュマ−レ∵ノバッハ「比例費計算の優越性」の根拠は限界価値思 考にある。彼によれば,この思考によると「最後の生産層の附加的原価紅は総 生産の変動に対しなお需要充足のために.引き入れられる生産者の最高の原価
(ヘルマン),あるいは全消費盈紅対する最後の消費層の限界利用(ウィー・ン学 派),あるいほ.よき土地の地代に対するもっとも悪い土地の原価(タカ−ド)ま
佑2)DeI■S・,a.a.0・,S.174. 土岐政蔵訳,前掲諷 262ぺ・−汐。
寛43巻 籍4弓
ーー・34 − 382
〈53)
たはこの土地の全体の価値と同様な意義が来るのである」と。したがって−「最後
(54)
の生産層のために追加的に生じた原価を全生産に対する比例費とみることは」
是認できるという。
つまり,レユ.マーレ∵/バッハは限界価値思考に立脚して経営価値計算を主張
丸するのであり,具体的にほ「最後の生産層の附加的な原価が全生産層の,すなわ
‖柑)
ち総生産患の比例費」として経営価値となり計算されるのである。ところが「あ る固定費を発生せしめていた給付が能力の限界に達し,ここで前に蓮べた原則
(56)
にしたがって−経常価値は限界費用率から限界利用率に飛躍する。」とも述べ,「こ
(56) の作用によって生じた収益は原価の固定分を滅ずる」として−さきの経営収益発
生原因を説明している。かく魂ると,経営価値は限界費用でもあり限界利用でもありながら,ともに比例費計算として現実には具現するわけである。
さて−,以上のような経営価値計算の主張ほ費用理論,とりわけ原価範疇論を 前提に.した数学的費用分解論と関係する。たとえば,「逓減費を固定部分と比例
部分とに分解する方法ほ.,最後の生産層の附加的な原価が全生産層の,すなわ(56)
ち総生産患の比例費に対し基準を与えるという想定に・もとづいたものである」
(56)
と。「この憩定は大体において限界価値観念に相似点をもつ.」。そして限界価傍観
念ほ経常価値計算となる。かくして,シュマーレジバッハのいう比例費計算を具体的軋展開するうえ
に.は費用理論が不可欠であることが察知できる。さらにいえ.ば,少し視点は異 なる′が,いままでの考察から推察されるように,シュマーレ∵/バッハ経営価値
計算の2つの目的ほ費用理論準.郷導されているといえる。その意味でも費用理 論と原価計算とは交渉をもっているのである。(53)Ders.,a.a.Ou,S.47.ニヒ岐政蔵訳,前掲書, 71ぺ・−I汐。
64)Dersり,a.a.0.,S.47. 〝 〝
72ぺ,・iy。(55)Ders.,a.a.0.,S.47. 〝
〝
71ぺ−ジ。(誠 DerS.,a.a.0.,S.47. 〝