解析学序論講義ノート (2013 年前期 )
福井敏純
2013
年7
月17
日目次
1
微分方程式とは2
1.1
微分方程式を作る. . . . 2
1.2
応用. . . . 4
2
求積法10 2.1
変数分離形. . . . 10
2.2
完全微分方程式と積分因子. . . . 11
2.3 1
階線形常微分方程式. . . . 13
2.4
特異解を持つ微分方程式. . . . 14
2.5 2
階線形常微分方程式. . . . 16
3
常微分方程式の解の存在と一意性20 3.1
高階の微分方程式の1
階の微分方程式への還元. . . . 21
3.2
解の存在と一意性. . . . 21
4
行列の指数関数26 4.1
行列の指数関数. . . . 26
4.2 2
次行列のスペクトル分解. . . . 29
4.3 n
次行列のスペクトル分解. . . . 30
4.4 2
次元線形方程式の解軌道. . . . 34
5
線形常微分方程式36
5.1 n
階線形微分方程式. . . . 36 5.2
線形常微分方程式. . . . 37
6
自励系40
7
級数解42
7.1
確定特異点. . . . 43
1 微分方程式とは
関数とその導関数を含む関係式を微分方程式という。関数の独立変数が
1
個のとき、常 微分方程式、複数個あるとき偏微分方程式という。微分方程式が与えられた時、それを満 たす関数をすべて求めることを、微分方程式を解くという。常微分方程式を解くこと、ま たその解の性質を調べることが本稿の主題である。1.1
微分方程式を作る微分方程式
y
′= f (x)
を解くにはf(x)
を積分すれば良い。その解の表示には積分定数 と呼ばれる任意定数が含まれる。微分方程式を解くと、このようにその解の表示ははいく つかの任意定数を含むことが多い。一般に微分方程式が与えられた時、どのような関数が解になるかを予め知りうることは 滅多にない。しかしながら、いくつかの任意定数を含む与えられた関数を解にもつような 微分方程式を作って見ることは、微分方程式を考察する際のヒントになることが多い。こ こでは与えられた関数を解に持つような微分方程式を作ることを考えてみる。
■
1
階線形微分方程式 関数y = cf(x) (c
は定数)
を解に持つ微分方程式を作ろう。微分 して得られる式y
′= cf
′(x)
と元の式からc
を消去して次を得る。f(x)y
′− f
′(x)y = 0
例
1.1. y =
1−cx, c
は定数,
を微分すると、y
′=
(1−cx)2 を得る。よってこれらからc
を 消去するとy
′/y =
1−x1 を得る。少し一般化して
y = g(x) + cf (x) (c
は定数)
を解に持つ微分方程式を作ろう。y
′= g
′(x) + cf
′(x)
と連立させてc
を消去すれば、次の微分方程式を得る。f (x)y
′− f
′(x)y = g
′(x)f (x) − g(x)f
′(x)
例
1.2. y = x +
1−xc, c
は定数,
を微分すると、y
′= 1 +
(1−x)c 2 を得る。よってこれらか らc
を消去すると yy′−−x1=
1−1x を得る。■
2
階線形微分方程式y = c
1f
1(x) + c
2f
2(x) (c
1, c
2 は定数)
を解に持つ微分方程式はy − c
1f
1(x) − c
2f
2(x) =0
y
′− c
1f
1′(x) − c
2f
2′′(x) =0 y
′′− c
1f
1′′(x) − c
2f
2′′(x) =0
から定数c
1, c
2 を消去すれば良い。即ち
y f
1(x) f
2(x) y
′f
1′(x) f
2′(x) y
′′f
1′′(x) f
2′′(x)
1
− c
1− c
2
=
0 0 0
と書けるので求める微分方程式は次の形になる。
y f
1(x) f
2(x) y
′f
1′(x) f
2′(x) y
′′f
1′′(x) f
2′′(x) = 0
例
1.3. a > 0
として、y = c
1cos ax + c
2sin ax (c
1, c
2 は定数)
を解に持つ微分方程式を 作ろう。y
′=a( − c
1sin ax + c
2cos ax) y
′′= − a
2(c
1cos ax + c
2sin ax)
より、求める方程式は次のようになる。y cos ax sin ax y
′− a sin ax a cos ax y
′′− a
2cos ax − a
2sin ax
= a(y
′′+ a
2y) = 0
y = g(x) + c
1f
1(x) + c
2f
2(x) (c
1, c
2 は定数)
を解に持つ微分方程式を作りたければy − g(x) − c
1f
1(x) − c
2f
2(x) =0
y
′− g(x) − c
1f
1′(x) − c
2f
2′′(x) =0 y
′′− g(x) − c
1f
1′′(x) − c
2f
2′′(x) =0
から定数c
1, c
2 を消去すれば良い。即ち
y − g(x) f
1(x) f
2(x) y
′− g
′(x) f
1′(x) f
2′(x) y
′′− g
′′(x) f
1′′(x) f
2′′(x)
1
− c
1− c
2
=
0 0 0
なので次を得る。
y − g(x) f
1(x) f
2(x) y
′− g
′(x) f
1′(x) f
2′(x) y
′′− g
′′(x) f
1′′(x) f
2′′(x) = 0
■曲線群を解に持つ微分方程式 曲線の
1
径数族f (x, y, c) = 0
を解に持つ微分方程式 は、微分して得られる式f
x(x, y, c) + f
y(x, y, c)y
′= 0
と連立させてc
を消去すれば良い。例
1.4. x
軸に接する放物線の族y =
14(x + c)
2(c
定数)
を解に持つ微分方程式を求めよ う。この式を微分するとy
′=
12(x + c)
なので、微分方程式(y
′)
2= y
を得る。この微分 方程式の解はy =
14(x + c)
2 の形に書けるもののみではない。y = 0
もこの微分方程式を 満たす。上述のように常微分方程式は、未知関数とその導関数、または高次導関数の間の関係式 として与えられる。微分方程式に含まれる最高次の導関数の階数をその微分方程式の階数 という。
n
階の微分方程式が与えられた時、n
個の任意定数を使って表された解をその微 分方程式の一般解という。一般解の定数に特殊な値を代入して得られる解を特殊解とい う。一般解の形で表せない解をその微分方程式の特異解という。例1.4
は特異解を持つ微 分方程式の例を与えている。1.2
応用微分方程式は多くの応用を持つ。幾つか簡単な場合を説明する。
■脱出速度 地上から物体を打ち上げて、地球から脱出するための最小の初速度
v
0 を求 めたい。時刻t
における物体と地球の中心との距離をr = r(t)
と書く。その時の物体の 速度をv = v(t)
とすると、v =
drdt.
万有引力の法則よりa = dv dt = k
r
2(k
定数)
r = R (R
は地球の半径)
としたとき、a = − g (g
は重力加速度)
なのでk = − gR
2 であ る。よって 次を得る。dv
dt = − gR
2r
2ここで
v
をr
の関数と見ると dvdt=
dvdrdrdt=
dvdrv
なので、v dv
dr = − gR
2r
2(
つまりvdv = − gR
2r
2dr)
両辺を積分して
v
22 = gR
2r + C C
は定数r = R
のときv = v
0 なのでC =
v220− gR
v
2= 2gR
2r + v
02− 2gR v = 0
となれば物体は静止し(このときr = −
v22gR20−2gR で)以後は地球に戻ると考えられ る。よって
v
02− 2gR > 0
ならば物体は地球に戻らず、この時v
0> √
2gR = √
2 × 9.8(m/s
2) × 6372(km) = 11.2(km/s)
を得る。 脱出速度は、物体の高度が高いほど小さくなる。実際にロケットを飛ばす時地 球から脱出させるには、十分高い高度でその高度での脱出速度に到達すれば、後は慣性飛 行で重力圏を脱出することができる。
■電気回路 電圧
E = E(t)
の電池に、R
オームの抵抗と、C
ファラドのコンデンサーとL
ヘンリーのコイルを直列につなぐ。コンデンサーに蓄電された電気量をQ
クーロンと すればこの回路に流れる電流はI =
dQdt アンペアで、•
抵抗での電圧低下はRI
ボルト、•
コイルでの電圧低下はL
dIdt ボルト•
コンデンサーでの電圧低下はQ/C
ボルトである。キルヒホッフの法則より次の微分方程式を得る。
L dI
dt + RI + Q
C = E (t)
よってL d
2Q
dt
2+ R dQ dt + Q
C = E (t)
またはL d
2I
dt
2+ R dI dt + I
C = E
′(t)
を得る。■放射性同位元素の崩壊 時刻
t
における放射性同位元素の数をx(t)
と書くと崩壊過程 は次の方程式で表される。dx
dt = − λx
λ
は崩壊係数と呼ばれる定数である。x(t) = x
0e
−λt なので半減期T
は1
2 x
0= x
0e
−λTを解いて得られ
T = log 2/λ
となる。以下、ウラン系列の崩壊過程を示す。238
U
ウラン238
は半減期4.468 × 10
9年でα
崩壊してトリウム234
に234
Th
トリウム234
は半減期24.10
日でβ
崩壊してプロトアクチニウム234m
に234m
Pa
プロトアクチニウム234m
は半減期1.17
分で99.34%
の確率でβ
崩壊してウラン234
になり、また0.16%
の確率で核異性体転移を起こしプロトアクチニウム234
に234
Pa
プロトアクチニウム234
は半減期6.7
時間でβ
崩壊してウラン234
に234
U
ウラン234
は半減期2.455 × 10
5でα
崩壊してトリウム230
になり230
TI
トリウム230
は半減期7.538 × 10
5 年でα
崩壊してラジウム226
になり、226
Ra
ラジウム226
が半減期1600
年でα
崩壊して、ラドン222
になり、222
Rn
ラドン222
は半減期3.824
日でα
崩壊して、ポロニウム218
になり、218
Po
ポロニウム218
は半減期3.1
分で、99.98%
の確率でα
崩壊して鉛214
になり、0.02%
の確率でβ
崩壊してアスタチン218
になり218
At
アスタチン218
は半減期1.6
秒で、99.9%
の確率でα
崩壊してビスマス214
にな り0.1%
の確率でβ
崩壊してラドン218
になり218
Rn
ラドン218
は半減期3.5 × 10
−2でα
崩壊しポロニウム214
に214
Pb
鉛214
は半減期26.8
分でβ
崩壊して、ビスマス214
になり214
Bi
ビスマス214
は半減期19.9
分で, 00.21%
の確率でβ
崩壊して、タリウム210
に なり,
、99.979%
の確率でα
崩壊して、ポロニウム214
になり214
Po
ポロニウム214
は半減期1.643 × 10
−4 でα
崩壊し鉛210
に210
TI
タリウム210
は半減期1.3
分でβ
崩壊して鉛210
に210
Pb
鉛210
は半減期22.3
年で1%
の確率でα
崩壊し水銀206
になり99%
の確率でβ
崩壊して、ビスマス210
になり210
Bi
ビスマス210
は半減期5.013
日でβ
崩壊して、ポロニウム210
になり,
、210
Po
ポロニウム210
は半減期138.76
日でα
崩壊して鉛206
になり206
Hg
水銀206
は半減期8.15
分でβ
崩壊してタリウム206
になり206
TI
タリウム206
は半減期4.199
分でβ
崩壊して鉛206
になり206
Pb
鉛206
は安定である(
実は非常に長い半減期を持つ放射性核種でα
崩壊して水銀202
となって安定するのではないかと言う説もある)。以上すべてを考慮して微分方程式作るのは複雑なので、ここではラジウム
226
からラドン222
を経てポロニウム218
に崩壊する過程を微分方程式にしてみる。時刻t
におけるラジ ウム、ラドン、ポロニウムの原子数をそれぞれx
1, x
2, x
3 で表し、それぞれの崩壊係数をλ
1, λ
2 とすれば、次の微分方程式を満たす。dx
1dt = − λ
1x
1dx
2dt =λ
1x
1− λ
2x
2dx
3dt =λ
2x
2■振動の方程式
Hooke
の法則よりバネ(発条)の弾性力はバネの変位に比例する。この 比例定数をバネ定数といいk
で表す。バネに質量
m
の物体をつけ変位s
0 で釣り合ったとする。すると重力と弾性力が釣り 合っているのだからmg = ks
0.
物体を振動させたとき、時刻t
に於ける釣り合いの状態 からの変位をy = y(t)
とすると、物体に加わる力は(
重力) − (
弾性力)
なのでm d
2y
dt
2= mg − k(s
0+ y) = − ky
よって、振動を記述する方程式は次で与えられる。m d
2y
dt
2+ ky = 0
これを解くとy =A cos ω
0t + B sin ω
0t = C cos(ω
0t − δ)
但しω
0=
√ k
m , C = √
A
2+ B
2, tan δ = B A
この振動の周期はT =
2πω0 で、振動数は
f = 1/T =
ω2π0 で与えられている。この振動は未来永劫続く非減衰な振動であるが、実際の振動はしばしば摩擦などで減 衰してやがて止まってしまう。この現象を説明するため、速度 dydt に比例する減衰力
c
dydt(c > 0)
が物体に働くと考える。このときの運動方程式はm d
2y
dt
2= − ky − c dy dt
となるので、減衰振動の方程式はで与えられる。m d
2y
dt
2+ c dy
dt + ky = 0 (1)
特性方程式
λ
2+
mcλ +
mk= 0
は1. c
2> 4mk
のとき異なる2
実解で、(1)
の解はy = c
1e
−c+√
c2−4mk
2m t
+ c
2e
−c−√
c2−4mk
2m t
2. c
2= 4mk
のとき実重解で、(1)
の解はy = (c
1+ c
2x)e
−2mc t3. c
2< 4mk
のとき共役複素解で、(1)
の解はy = e
−2mc t(A cos
√ k
m − c
24m
2t + B sin
√ k
m − c
24m
2t)
与えられる。強制的に物体にある力
r(t)
を加えて、振動を続けさせたいとしよう。強制 振動の方程式は次で与えられる。my
′′+ cy
′+ ky = r(y)
例えば
r(t) = F
0cos ωt (F
0> 0, ω > 0)
としてみよう。y
p= a cos ωt + b sin ωt
とおい て、特解y
p を求めてみる。y
p′= ω( − a sin ωt + b cos ωt) y
p′′= − ω
2(a cos ωt + b sin ωt)
なので、[(k − mω
2)a + ωcb] cos ωt + [(k − mω
2)b + ωca] sin ωt = F
0cos ωt
となり、k = mω
20 に注意すれば、これを満たすa, b
は次で与えられる。a = F
0m(ω
02− ω
2)
m
2(ω
02− ω
2)
2+ ω
2c
2, b = F
0ωc
m
2(ω
20− ω
2)
2+ ω
2c
2c
∗= √
a
2+ b
2 とおきtan η =
ab なるη
をとればy
p= c
∗cos(ωt − η)
となる。
c
∗= F
0(m
2(ω
20− ω
2)
2+ ω
2c
2)
−1/2 である。c → 0, ω → ω
0 のとき振幅(c
∗)
が∞
となり、共振*1と呼ばれる現象が起こっている。dc
∗dω = ωF
0[c
2− 2m
2(ω
02− ω
2)][m
2(ω
20− ω
2) + ω
2c
2]
−3/2*1固有振動数√
k/m に近い周期で振動を与えると、振動の振幅が非常に大きくなる現象。
なので
c > 0
のときはω =
√
ω
20−
2mc22 でc
∗ は最大値 F0c
√ ω20+ c2
4m2
をとる。
c > 0
が非 常に小さいとして、一般解を書くと次のようになる。y = e
−2mct(A cos
√ k
m − c
24m
2t+B sin
√ k
m − c
24m
2t)+ F
0(m(ω
02− ω
2) cos ωt + ωc sin ωt) m
2(ω
20− ω
2)
2+ ω
2c
2 ここでc = 0, A =
m(ωF200−ω2) とおくと
y = F
0m(ω
02− ω
2) (cos ωt − cos ω
0t) = 2F
0m(ω
20− ω
2) sin ω
0+ ω
2 sin ω
0− ω 2 t
を得る。
ω → ω
0 のとき 振幅が∞ , sin
ω02−ωt
の振動数が0
に近くなりうなり*2と呼ば れる現象が起こる。■
1
次元格子振動n
個の質量m
の質点がバネでR
上繋がれている。i
番目の質点の位 置をx
iと書くと、x
i とx
i+1 を結ぶバネのバネ定数をk
i とすると、運動方程式は次のよ うに書かれる。m d
2x
idt
2=
k
1(x
2− x
1) (i = 1)
k
i(x
i+1− x
i) − k
i−1(x
i− x
i−1) (i = 2, . . . , n − 1)
− k
n−1(x
n− x
n−1) (i = n)
■ロジスティック方程式
x
を生物の個体数としa
をその生物が実現しうる最大の増加 率、b
をその環境における生物の最大の個体数とする。1838
年にピエール=フランソワ・フェルフルストは個体数の増加率は
•
個体数0
では増加率も0
•
個体数が増加するに連れて増加率は減少する。•
その環境における生物の最大の個体数では増加率は0
を満たすべきと考え、次の微分方程式を考案し、ロジスティック*3方程式と名付けた。
dx
dt = ax(1 − x b )
この方程式は変数分離形であり、容易に解ける。まず変数を分離すると
dx
x(1 −
xb) = a dt
*2振動数がわずかに異なる二つの音が鳴っているとき、各々の基音の振動数の差に相当する周期で音の強弱 が聞かれる現象。
*3日本語では「兵站」、戦闘地帯から後方の、軍の諸活動機関諸施設を総称である。ピエール=フランソワ・
フェルフルストは兵站学の教官であったのでこの名がある。
となるが、左辺が
(
1x
+
b−x1)
dx
となるので、積分するとlog x − log(b − x) = at +
定数を得る。よって b−xx
= Ce
at となり、書き換えて次のような解の表示を得る。x = bCe
at1 + Ce
atバクテリアの増殖、伝染病感染者数などもこの方程式でモデルを作ることができる。
2 求積法
不定積分を用いて微分方程式を解くことを、微分方程式を求積法で解くという。この章 では、求積法の基本事項を説明する。
2.1
変数分離形y
′= f(x)g(y)
なる微分方程式を変数分離形の微分方程式という。これを1
g(y) dy
dx = f (x), (
またはdy
g(y) = f (x)dx)
と書き、x
で積分して∫ 1 g(y)
dy dx dx =
∫
f (x)dx (
または∫ dy g(y) =
∫
f (x)dx)
を得る。■同次形
y
′= f (
yx)
のタイプに書ける微分方程式を同次形の微分方程式という。このと きy = ux
とおくと、y
′= u
′x + u
なのでu
′x + u = f (u)
となりu
′= f (u) − u
x (
またはdu
f (u) − u = dx
x )
変数分離形に帰着する。2.2
完全微分方程式と積分因子全微分方程式
P dx + Q dy = 0
が完全であるとはP = u
x, Q = u
y となる関数u(x, y)
が存在する時を言う。このときdu = P dx + Q dy = 0
なので、u(x, y) = C (C
は定数)
が解曲線となる。定理
2.1. P dx + Q dy = 0
が完全微分方程式である事の必要十分条件は次で与えられる。∂P
∂y = ∂Q
∂x
証明
.
完全微分方程式ならばu
x= P , u
y= Q
となる関数u = u(x, y)
が存在するのでP
y= (u
x)
y= (u
y)
x= Q
xとなる。逆に
P
y= Q
x であれば、完全微分形であることを示す。x
を定数と見たときQ(x, y)
の変数x
による不定積分f (x, y) =
∫
P (x, y)dx, C(x)
はx
だけの関数を考える。
f
x= P , f
xy= P
y= Q
x なので。(f
y− Q)
x= 0
となり、g(y) = f
y− Q
は、x
に依存せず、変数y
だけに依存する関数である。G
′(y) = g(y)
となる関数G(y)
をと ればP dx + Q dy = f
xdx + (f
y− g)dy = df − g(y)dy = d(f(x, y) − G(y))
を得るのでu = f (x, y) − G(y)
と置けば良い。演習
2.2. P dx + Q
,dy = 0
が完全微分方程式ならばP dx + Q dy = du
なる関数u
が 存在するが、このときH(u)(P dc + Q dy) = 0
も完全微分方程式である。解
:
仮定よりP
y= Q
x, u
x= P , u
y= Q
なので(HP )
y= H
′u
yP + HP
y= H
′P Q + HP
y= H
′u
xQLHQ
y= (HQ)
xP dx + Q dy
が完全微分形でなくてもλ(P dx + Q dy) = 0
が完全微分形であることが ある。そのようなλ
を積分因子という。例
2.3. x dy − y dx = 0
は完全微分方程式ではないがx dy − y dx
x
2= d ( y
x
)
なので、x12 が積分因子となる。積分因子は他にもある。例えば
x dy − y dx
x
2+ y
2= d tan
−1y x
なので1/(x
2+ y
2)
も積分因子である。積分因子の満たすべき条件は、
∂(λP )
∂y = ∂(λQ)
∂x
であるので、∂λ
∂y P + λ ∂P
∂y = ∂λ
∂x Q + λ ∂Q
∂x (
または移項して
∂λ
∂x Q − ∂λ
∂y P = λ( ∂P
∂y − ∂Q
∂x ) )
となる。
系
2.4.
全微分方程式P dx + Q dy = 0
について次が成り立つ。1. x
だけの関数の積分因子を持つ必要十分条件は Q1(
∂P∂y−
∂Q∂x)
がx
だけの関数にな ることである。2. y
だけの関数の積分因子を持つ必要十分条件は P1(
∂P∂y−
∂Q∂x)
がy
だけの関数にな ることである。微分方程式
P dx + Q dy = 0
の解と微分方程式λ(P dx + Q dy) = 0
の解は完全に一致 するとは限らない。実際、λ = 0
なる点があれば後者の解で前者の解でないものがあるか もしれない。またλ
が定義されない点があれば前者の解で後者の解でないものがあるか もしれない。例
2.5. (x
2sin x − 2y)dx + 2xdy = 0 (x
2sin x − 2y)
y− (2x)
x(2x) =
−42x= −
x2 はx
だけの式なのでe
−∫ x2dx= x
−2 が積分因子。(sin x − 2y
x
2)dx + 2
x dx = d( 2y
x − cos x)
より 2yx− cos x = C
が解。書き直すとy = Cx +
x2cos x
を得る,
2.3 1
階線形常微分方程式■斉次
1
階線形常微分方程式1
階常微分方程式y
′+ p(x)y = 0
を斉次線形1
階微分方 程式という。この方程式は変数分離形であり簡単に解くことができる。。実際dy
y = − p(x)dx
なので、積分してlog | y | = −
∫
p(x)dx
となり、次を得る。y = Ce
−∫p(x)dx
, C
は任意定数演習
2.6.
方程式を次の形に書き直し積分因子を探して解け。dy + p(x)y dx p(x) dx +
dyy= 0
と見ると完全微分方程式でd( ∫
p(x)dx + log | y | ) = 0
となる。■
1
階線形常微分方程式 次の形の微分方程式を非斉次形1
階線形微分方程式というが、これは求積法で解くことができる。
y
′+ p(x)y = q(x)
y
′+ p(x)y = 0
の解はy = Cy
0, y
0= e
−∫p(x)dx,
であった。定数C
を関数u
に変えたy = uy
0 の形をした解を探す方法を定数変化法というが、ここではこれがうまくいくこと を示す。y
′+ p(x)y = u
′y
0+ uy
′0+ p(x)y = (u
′− up(x) + p(x)u)y
0= u
′y
0なので、これが
q(x)
に等しいいとすると、整理してu
′= q(x)y
0−1 を得る。よってy
0= e
−∫p(x)dx を考慮すればu =
∫
q(x)e
∫p(x)dx
dx + C
を得る。よって解は次のように表示される。
y = e
−∫ p(x)dx
[∫
q(x)e
∫ p(x)dx
dx + C
]
■ベルヌーイの微分方程式 次の形の微分方程式をベルヌーイの微分方程式という。
y
′+ p(x)y = q(x)y
n(n ̸ = 0, 1) (2) u = y
1−n とおくと dudy= − (n − 1)y
−n.
これを(2)
の両辺にかけるとy
′du
dy − (n − 1)p(x)y
1−n= − (n − 1)q(x) y
′dudy= u
′ なので、次の1
階線形微分方程式を得る。u
′− (n − 1)p(x)u = (1 − n)q(x)
■リカッチの微分方程式 次の形の微分方程式をリカッチの微分方程式という。
y
′+ p(x)y
2+ q(x)y + r(x) = 0
この方程式の解
y
1 が1つ分かったとして、一般解を求める。y = y
1+ u
とおくとy
1′+ u
′+ p(x)(y
1+ u)
2+ q(x)(y
1+ u) + r(x) = 0
すると
y
1′+ p(x)y
12+ q(x)y
1+ r(x) = 0
よりu
′+ p(x)(2y
1u + u
2) + q(x)u = 0
これは次の形のベルヌーイの微分方程式に還元される。u
′+ (2p(x)y
1+ q(x))u = − p(x)u
22.4
特異解を持つ微分方程式c
を定数としてF (x, y, c) = 0
の定める曲線の族の包絡線はF (x, y, c) = F
c(x, y, c) = 0
からc
を消去して得られる。F (x, y, c) = 0
をx
で微分するとF
x(x, y, c) + F
y(x, y, c)y
′= 0
これと
F (x, y, c) = 0
からc
を消去すると曲線族F (x, y, c)
が満たす微分方程式を得る。F
xc(x, y, c) + F
yc(x, y, c)y
′̸ = 0
ならばF
x(x, y, φ(x, y, p)) + F
y(x, y, φ(x, y, p))p = 0
なる関数
φ(x, y, p)
が存在する。求める方程式は次の形をしている。F (x, y, φ(x, y, y
′)) = 0
曲線族に包絡線が存在すれば、包絡線は曲線族の各曲線に接するのでこの微分方程式の解 になる。
例
2.7 (
クレーローの方程式).
曲線y = f (x)
の接線の方程式は次で与えられる。y = f
′(c)(x − c) + f(c)
これを
x
で微分するy
′= f
′(c)
を得るので、連立させてc
を消去する。f
′ の逆関数をg
と書くと、y = f
′(c)
よりc = g(y
′)
と書けるので、y = y
′(x − g(y
′)) + f (g(y
′)) = xy
′+ F (y
′), F (y
′) = f(g(y
′)) − y
′g(y
′)
を得る。微分方程式y = xy
′+ F (y
′) (3)
をクレーローの微分方程式という。
(3)
を微分するとy
′= y
′+ xy
′′+ F
′(y
′)y
′′ なので整理するとy
′′(x + F
′(y
′)) = 0
y
′′= 0
とすると、y = c
1x + c
2(c
1, c
2 は定数。)
その解はy = cx + F (c)
である。これ を(3)
に代入すると、c
1x + xc
2= c
1x + F (c
1)
なのでc
2= F (c
1)
を得る。よって
y = cx + F (c)
が(3)
の一般解である。一般解の式をc
で微分して零と置くとx + F
′(c) = 0
であるが、この式と一般解の式からc
を消去すると包絡線の式(
特異解)
を 得る。(t, x), x = (x
1, . . . .x
n),
を座標系とするR
n+1 内の超曲面t = f (x)
とその上のベク トルv = ∂
t+ v
1∂
x1+ · · · + v
n∂
xnが与えられた時 点
(f (c), c), c = (c
1, . . . , c
n),
を通り(1, v(c))
方向の直線の方程式はx(t) = c + (t − f (c))v(c) (4)
で与えられる。x ˙ = v(c)
なのでこれをc
について解いてc = φ( ˙ x)
と書くとき,
次の微分 方程式を得る。x = φ( ˙ x) + (t − f(φ( ˙ x)))v(φ( ˙ x))
p( ˙ x) = v(φ( ˙ x)), q( ˙ x) = φ( ˙ x) − f (φ( ˙ x))v(φ( ˙ x))
と置けばx = tp( ˙ x) + q( ˙ x)
(4)
はこの方程式の解であるが、v
の積分曲線もこの方程式を満たす。2.5 2
階線形常微分方程式■斉次線形常微分方程式
定理
2.8.
斉次線形常微分方程式y
′′+ p(x)y
′+ q(x)y = 0 (5)
の
1
次独立な解をy
1, y
2 とすると、y = c
1y
1+ c
2y
2c
1, c
2 は任意定数(6)
は(5)
の解である。逆に、(5)
の任意の解は(6)
の形に表すこと事ができる。このとき
y
1, y
2 は(5)
の基本解であるという。証明
. y
0, y
1, y
2 が(5)
の解であるとするとy
i′′+ p(x)y
i′+ q(x)y
i= 0 (i = 0, 1, 2)
が成り立つ。
(
y
1′y
1y
2′y
2) ( p(x) q(x)
)
= − ( y
′′1y
′′2)
なので、
w
0= y
1y
2y
1′y
2′と書くと、
Cramer
の公式よりp(x) = −
y
1′′y
1y
2′′y
2y
1′y
1y
2′y
2= − w
′0w
0 となりp(x) = − w
0′w
0つまり
w
0= A
0e
−∫p(xd)dx
A
0 は定数同様にして
w
1=
y
0y
2y
′′0y
2′とおくと、
p(x) = −
ww′11 でw
1= A
1e
−∫p(x)dx, A
1 は定数w
2=
y
0′y
0y
1′y
1とおくと、
p(x) = −
ww′22 でw
2= A
2e
−∫p(x)dx, A
2 は定数.
よって
0 =
y
0y
1y
2y
0y
1y
2y
′0y
1′y
2′= y
0w
0− y
1w
1+ u
2w
2= (y
0A
0− y
1A
1+ u
2A
2)e
−∫p(x)dx
より
y
0=
AA10
y
1−
AA20y
2. y
0 はy
1 とy
2 の1
次結合で表された。証明中に現れた
y
1y
2y
1′y
2′を
y
1, y
2 のロンスキアンといいW (y
1, y
2)
で表す。y
1, y
2 が(5)
の解ならば、上の証明中に示したようにW (y
1, y
2) = Ae
−∫p(x)cx
, A
は定数となるので、
W (y
1, y
2)
がある点で0
となる事はA = 0
であること、即ちW (y
1, y
2)
が 恒等的に0
であることと同値であり、これはy
1 とy
2 が1
次従属であることと同値であ る。したがって、(5)
の解y
1, y
2 が基本解であるための必要十分条件はW (y
1, y
2)
が恒等 的には0
でないことである。定理
2.9.
非斉次線形常微分方程式y
′′+ p(x)y
′+ q(x)y = r(x) (7)
の1
つの解をy
0,
斉次線形常微分方程式y
′′+ p(x)y
′+ q(x)y = 0 (8)
の
1
次独立な解をy
1, y
2 とすると、y = y
0+ c
1y
1+ c
2y
2c
1, c
2 は任意定数(9)
は(7)
の解である。逆に、(7)
の任意の解は(9)
の形に表すこと事ができる。証明
. y
を(7)
の解とすると、y − y
0 は(5)
の解なので前定理よりy − y
0 は基本解y
1, y
2 の1
次結合で表せる。■