審 査 論 文 要 旨(日本文)
論文提出者氏名: 三浦 悠里 審査論文
題 名:Epidemiological trends observed from molecular characterization of MRSA isolates from blood cultures at a Japanese university hospital, 2012 to 2015
(2012年から2015年に血流感染症から分離されたMRSA株の遺伝子型の 変化に関する検討)
著 者:Yuri Miura, Tetsuo Yamaguchi, Itaru Nakamura, Shinobu Koyama, Kiyoko Tamai, Takashi Okanda, Tetsuya Matsumoto
掲載誌:Microbial Drug Resistance (in press, 2017)
【背景と目的】
近年、本邦では基礎疾患のない健常人に感染しやすい市中感染型 MRSA(CA-MRSA)の 報告が皮膚・軟部組織感染症を中心に増加している。しかし CA-MRSA が敗血症などの侵襲 性感染症にどの程度関与しているのかについてはまだ十分に解明されていない。そこで本研 究においては、侵襲性感染症を引き起こしていると考えられる血液培養から分離された MRSA株を対象に各種の解析を行った。
【対象および方法】
2011 年に全国の医療機関 53 施設から外注検査センターに提出された血液検体より分離さ れた MRSA151 株および、2012 年〜2015 年に東京医科大学病院において血液検体から分離 されたMRSA66株を対象とした。SCCmec typingおよび病原遺伝子(TSST-1遺伝子:tst-1, PVL遺伝子:luks-pv)の検出はPCR法を用い、パルスフィールドゲル電気泳動(PFGE)、
および微量液体希釈法による薬剤感受性の測定を行った。
【結果】
全国から分離されたMRSA151株のうち、院内感染型に属するSCCmec type IIは115株
(76%)、市中感染型に属するtype IVは30株(20%)であった。一方、東京医科大学病院で 分離されたMRSA66株のうち、SCCmec type IIは43株(65%)、type IVは20株(30%)
で、CA-MRSAの比率が高い傾向が認められた。病原遺伝子のTSST-1陽性株は全国の91株
(60%)に対し、東京医科大学病院は 32株(48%)とやや少なかった。しかし PVL 陽性株 は全国の 2 株(1%)に対し、東京医科大学病院は 3 株(5%)分離され、株数そのものは少 ないものの、病原性が強い株が占める割合が多い傾向が認められた。SCCmec type IVの市中 感染型MRSA株の経年的な解析では、2014年まではTSST-1 (-)の株が最も多く検出されてい たが、2015年にはそれまでほとんど検出されなかったTSST-1 (+)の株が最も多く検出され変 化が認められた。PVL (+)の株は2013年に1株、2015年に2株検出され、この2株のPFGE タイプは世界各地で流行しているUSA300とUSA1100であった。
【結論・考察】
本研究により、国内のMRSAによる侵襲性感染症においても市中感染型MRSAが20%以 上分離されていることが明らかとなった。また、TSST-1 や PVL の病原因子を有する株が増 加傾向にあることや、海外で流行しているクローンが国内に入ってきている可能性を示唆す る結果が得られた。これらの結果から、引き続き国内におけるMRSA株の分離状況を把握し 解析する必要性が示唆された。
東 京 医 科 大 学