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論 文
KIPの実践的な展開に向けた予備的研究:
ブルー・オーシャン戦略を手がかりに 1
加藤 淳一
1.目的
本研究の目的は、ブルー・オーシャン戦略を用いてKIPをより実践的な手順としていく ために、次の2点について検討を行うことである。1点目は、これまでに提案してきた内 容を改めて整理し、現在の到達点を確認することである。2点目は、今後の研究で解決さ れねばならない問題点を明確にし、現在可能な範囲でその解決の方向性を示すことである。
これら2つの目的を達成するために、以下4章構成で論を進める。第2章は、本研究の 目的の1点目に対応している。つまり、ブルー・オーシャン戦略を用いてKIPを実践的な 手順としていく研究の現在の到達点を確認する。第2章は、4つの節で構成される。第1 節で、ブルー・オーシャン戦略の概要を整理する。第2節で、提案した手順の概略を示す。
第3節で、競合市場(商品)の多次元空間上への布置の方法を説明する。最後の第4節で、
競合市場(商品)の相互の距離の定義を説明する。
第3章は、2つ目の研究目的に対応する。つまり、今後の研究で解決されねばならない 問題点を明確にする。第3章は、4つの節で構成される。第1節で、1つ目の課題として ブログデータの収集にかかる時間の問題を取り上げる。第2節で、2つ目の課題として質 問項目の作成方法について言及する。第3節で、3つ目の課題として可視化方法について 説明する。第4節で、4つ目として主成分分析という分析方法の適切さの問題について、
最後に5つ目の課題として競合市場(商品)の多次元空間上への布置の方法について述べ る。以上、4節で5点の未解決課題について言及する。最後に第4章は、本研究の目的に 戻り、簡潔に本研究の結論を整理する。
2.既発表研究
本章の目的は、これまでの研究の整理を通じた、現時点の到達点の明確化である。第1 に、加藤(2017a、17頁−29頁)に基づいて、ブルー・オーシャン戦略の概要をまとめる。
第2に、加藤(2017a、30頁−37頁)や加藤(2017c、20頁)に基づいて、提案手順の概略
をまとめる。第3に、加藤(2017a、31頁−33頁)や加藤(2017b、4頁−7頁)に基づい
て、自市場(商品)と競合市場(商品)の主成分分析結果を、消費者ニーズを軸とした共 通の多次元空間上に布置する方法について説明する。この多次元空間上に布置することに より、市場(商品)相互間の競合の程度を考える扉を開く。
第4に、提案手順の中でもとりわけ重要となる、競合市場(商品)の特定の指標、つま り競合市場(商品)の距離の定義についてまとめる。これらは、加藤(2017a、33頁−34 頁)で基本的なアイデアを示し、加藤(2017b、7頁−8頁)で数式を示しつつ説明して ある。だが、ここでもとりわけ重要な数式に限定して整理しておく。これらが本章の構成 となる。では引き続いて、各項目について取り上げる。
2.1 ブルー・オーシャン戦略の概要
本節で、加藤(2017a、17頁−29頁)に依拠して、ブルー・オーシャン戦略の概要を整 理する
2。ブルー・オーシャン戦略は、次の4段階に整理できる。第1段階は、覚醒であ る。覚醒は、戦略キャンバス
3を描くことで、自市場(商品)と競合市場(商品)との比 較を行い、現状を理解し、自市場(商品)が変えるべきファクタ(競合市場(商品)が重 視する競争要因)を見いだす。第2段階は、現地探索である。現地探索は、非顧客層(つ まり、現在の既存顧客以外)にも注目しつつ、自ら現場に出向き、インタビューなどを通 じて、6つのパス(視点)から現場を観察することで、新しい市場(商品)の方向性を探 る。この観察に基づいて資源配分を再考し、何度も戦略キャンバスを描き直す。
第3段階は、戦略の見本市である。戦略の見本市は、第2段階の「現地探索」で描き直 された戦略キャンバスを様々なステークホルダーの視点から検証し、フィードバックを得 て、練り上げる
4。この段階を経て、新しい戦略は、独りよがりでなく、誰にでも理解で き、そしてシンプルになる。第4段階は、コミュニケーションである。コミュニケーショ ンは、社内外のステークホルダーに対して新しい戦略について説明を行い、新しい戦略を ステークホルダーに浸透させ、社内外の合意形成を行う。合意形成は、新しい戦略が特許 などで保護されていない場合に、自社が迅速に需要を充足させ、他社の模倣を防ぐ上で重 要となる。
ブルー・オーシャン戦略は、以上の4つの段階に整理できる。これらの段階で、4つの ツールが用いられる
5。第1のツールが、戦略キャンバス(フォー・アクション・フレー ムワーク
6、ERRCグリッド
7)である。戦略キャンバスは、横軸にファクタ(競合市場
(商品)が重視する競争要因 )、 縦軸に各ファクタに関して顧客が受け取るレベルをとっ た、2次元の折れ線グラフである。一枚の折れ線グラフ内に描かれた複数の折れ線
8の形 状の比較により、自市場(商品)の戦略の独自性(ブルー・オーシャンになっているか)
を視覚的に判断できる
9。
第2のツールが、6つのパス(視点)である。パス1は、オルタナティブを見渡すであ
る
10。パス2は、戦略グループを見渡すである
11。パス3は、購買者グループを見直すであ る
12。パス4は、補完的商品を見渡すである
13。パス5は、機能あるいは感性の方向性を問 い直すである
14。パス5は、将来にわたって外部のトレンドの形成に関わるである
15。以上 の6つのパス(視点)から、戦略キャンバスを描き直し、新しい戦略を生み出す。
第3のツールが、バイヤー・ユーティリティ・マップ(バイヤー・エクスペリエンス・
サイクル、6つのユーティリティ・レバー)である。バイヤー・ユーティリティ・マッ プは、横軸に6つのバイヤー・エクスペリエンス・サイクル
16をとり、縦軸に6つのユー ティリティ・レバー
17をとる2次元(36マス)の表である
18。この表(バイヤー・ユーティ リティ・マップの)中に、自社が現在考えている戦略と競合他市場(商品)とを書き込む。
もしも両者が同じマスに入るならば、現在考えている自市場(商品)の戦略がブルー・
オーシャン戦略の可能性は低い。
第4のツールが、プライス・コリドー・オブ・ザ・マスである
19。プライス・コリ ドー・オブ・ザ・マスは、次の2つのステップからなる価格設定に関するツールである。
ステップ1は、3つの商品タイプ
20ごとの顧客数の把握である。ステップ2は、最も顧客 が密集する価格帯に価格を決めるである。こうしたツールにより、顧客にとって魅力的な 価格を設定する。
以上で、4段階と4つのツールの説明を通じて、ブルー・オーシャン戦略の概要をまと めた。大まかに整理すれば、ブルー・オーシャン戦略は、次のような戦略的打ち手
21であ る。⑴上述の4つの段階で、4つのツールを活用して、コストを下げつつ顧客にとっての 商品・サービスの価値を高めていく。⑵それにより、競合市場(商品)とは異なる自社独 自の市場(ブルー・オーシャン)を切り開く。
2.2 提案手順の概略
本節で、加藤(2017a、30頁−37頁)と加藤(2017c、20頁)に依拠して、ブログ記事の 分析から出発してブルー・オーシャン開拓に向けた提案手順を整理する。KIPは、ブログ 記事から消費者ニーズを主成分軸として明らかにした。これを以下の出発点とする。その 上で、提案手順は、次の2つに整理できた。
第1は、競合市場(商品)の特定手順である。第2は、ブルー・オーシャン開拓の手順 である。競合市場(商品)が特定されていることにより、競合市場(商品)とは異なる自 社独自の市場(ブルー・オーシャン)の開拓へと結びつく。よって、まず自市場(商品)
と競合している市場(商品)を特定しなければならない。
第1の手順は、競合市場(商品)の特定手順である。まず自市場(商品)と競合してい
る可能性のある複数の候補を列挙する。例えば、自市場(商品)を含む3つの市場(商
品)が相互に競合している可能性のある候補とする
22。次に自市場(商品)と複数の競合
市場(商品)の候補(例えば、自市場(商品)を含めて3つの市場(商品))が、共通の 多次元空間上に布置されているとする。例えば、5次元空間(
5)上の3つの点(各点が 各市場(商品)を表す)でもよい
23。
この多次元空間(例えば、5次元空間)の軸は、(メタな)消費者ニーズである
24。す ると、軸が(メタな)消費者ニーズなのだから、これら3つの点(各点が各市場(商品)
を表す)の中で、共通の多次元空間上でより近い距離に位置づけられる市場(商品)は、
より遠くに位置づけられる市場(商品)と比べて(メタな)消費者ニーズに関してより近 いと言える。
(メタな)消費者ニーズがより近いというのは、相互に同じような消費者ニーズを充足 する商品、別言すれば競合している市場(商品)といえる。よって、競合市場(商品)を 特定するには、次の手順を踏む必要がある。⑴消費者ニーズを軸とした共通の多次元空間 上に、競合市場(商品)の候補を布置する。そして、⑵多次元空間上に布置された、競合 市場(商品)候補の相互の距離を求める。⑶相互の距離がより近い市場(商品)ほど、競 合市場(商品)である。これが、第1の競合市場(商品)の特定手順である。距離の定義 は、次節で取り上げる。
第2の手順は、3つの質問紙調査を通じたブルー・オーシャン開拓の手順として整理で きた。第1の質問紙調査は、回答者の属性ごとに、自市場(商品)と競合市場(商品)の 価値の高低を明らかにする。回答者の属性は、次の2つを尋ねる。1つ目は、6つのパス のうちパス3の⑴購入者、⑵利用者、そして⑶影響者のうち、該当市場(商品)の購入に おいて最も多く当てはまる機会の多い立場を尋ねる。2つ目は、現在の既存顧客と非顧客 とを分けて分析する目的で、RFM分析の枠組みで該当市場(商品)について尋ねる。ま た、自市場(商品)と競合市場(商品)の価値は、自市場(商品)と競合市場(商品)の 価格とブログ分析結果として明らかになる消費者ニーズ(主成分軸)である。
次が、第2の質問紙調査である。第1の質問紙調査結果の中央値が完全に一致した消費 者ニーズ(主成分軸)のうち、分析者が増加、創造、削除、あるいは減少可能と判断した 消費者ニーズについて、第2の質問紙調査を行う。第2の質問紙調査は、分析者が変更可 能と判断した消費者ニーズについて、高・中・低の3レベルの離散選択モデルを仮定した コンジョイント分析を行う。限界支払意思額の高い消費者ニーズは増加や創造の対象とし、
限界支払意思額の低い消費者ニーズは減少や削除の対象とする。
第3の質問紙調査は、バリュー・ユーティリティ・マップの描画に必要なデータの獲得
の目的で行う。第3の質問紙調査は、バイヤー・エクスペリエンス・サイクルの6つを
ユーティリティ・レバーの6つで分けた、合計36個の質問を、第2の質問紙調査で用いた
消費者ニーズで構成される自市場(商品)および競合市場(商品)について尋ねる。この
結果が、36個のマスのうち多くで重複しているか否かを見ることで、自市場(商品)が第
2の質問紙調査を通じた増加、創造、減少、削除により、独自の市場(商品)となってい るか否かを判断する。
以上のように、第1の手順で、自社市場(商品)にとっての競合市場(商品)を特定し た。次に第2の手順で、その競合市場(商品)との比較でコストを抑えつつ商品・サービ スの価値を高め、ブルー・オーシャンを開拓する手順を示した。これが提案手順であった。
2.3 競合市場(商品)の多次元空間上への布置
前節での提案手順の概略を受けて、本節の主題は、加藤(2017a、31頁−33頁)や加藤
(2017b、4頁−7頁)に依拠して、消費者ニーズを軸とした共通の多次元空間上への布 置についてである。KIPは、消費者ニーズとして消費者(分析対象としたブログ記事を書 いたブロガー)のグループを捉える主成分軸を抽出する。この主成分軸は、ブログ記事由 来の膨大な単語群と、その各単語の固有ベクトルの各要素により解釈される。
主成分分析は競合市場(商品)の候補の数だけ独立に繰り返され、競合市場(商品)の 候補ごとに複数の主成分軸が抽出される。例えば、自市場(商品)を含めて3つの競合市 場(商品)の候補の主成分分析は、各競合市場(商品)の候補の数(この例だと3回)だ け、他の競合市場(商品)の候補とは別に繰り返し(この例だと3回)実行される。仮に 1回の主成分分析により、主成分軸が3軸抽出されるとすれば、(この例だと3回なので、
1回で3軸抽出される分析が3回だから)9軸が求められることとなる。例えば、主成分 軸1から主成分軸9で表すとする。
さて、この主成分分析結果を出発点として、これら主成分軸を共通の多次元空間上に布 置したい。まず、次のような表形式のデータを準備して、その表へ更に主成分分析を実行 する。ここで表形式とは、主成分軸9軸(主成分軸1, 主成分軸2, 主成分軸3,…, 主成分 軸9)を表頭項目に、各主成分軸を特徴付けるブログ記事由来の単語を表側項目に、そし て表の各セルに各単語の固有ベクトルの要素の入った表である
25。
この表へ主成分分析を実行して、表頭項目の数(主成分軸1, 主成分軸2, 主成分軸3,
…, 主成分軸9の9軸)に比べて少数の主成分軸(例えば、主成分軸 の5軸)
により、表頭項目(主成分軸1, 主成分軸2, 主成分軸3,…, 主成分軸9の9つの主成分 軸)を捉える。すると、表頭項目(主成分軸1, 主成分軸2, 主成分軸3,…, 主成分軸9の 9軸)は、主成分軸(例えば、主成分軸 の5軸)により張られた多次元空間
(この場合、5次元空間)上の点(例えば、点1, 2, 3, …, 点9の9つの点)として布置 される。こうして、(メタな)消費者ニーズを軸(例えば、主成分軸 の5軸)
とした共通の多次元空間(この場合、5次元空間)上に、点(例えば、点1, 2, 3, …, 点
9の9つの点)として布置した。以上が、消費者ニーズを軸とした共通の多次元空間上に
布置する方法である。
2.4 競合市場(商品)の距離の定義
本節の主題は、加藤(2017a、33頁−34頁)や加藤(2017b、7頁−8頁)に依拠して、
共通の多次元空間上での競合市場(商品)の相互の距離の定義についてである。ここで多 次元空間(例えば、主成分軸 の5軸)上に布置された点(例えば、点1, 点2, 点3, …, 点9の9つの点)のうち任意の1つの点を座標表示(例えば、点1=(
⑴,
⑴,
⑴
,
⑴,
⑴)と)する。
先に「例えば、自市場(商品)を含めて3つの競合市場(商品)の候補の主成分分析は、
各競合市場(商品)の候補の数(この例だと3回)だけ、他の競合市場(商品)の候補と は別に繰り返し(この例だと3回)実行される。仮に1回の主成分分析により、主成分軸 が3軸抽出されるとすれば、(この例だと3回なので、1回で3軸抽出される分析が3回 だから)9軸が求められることとなる。」と述べたのを思い出す。
すると、多次元空間上の9つの点(例えば、点1, 点2, 点3, …, 点9)は自市場(商 品)を含めた3つの競合市場(商品)の候補から出てきたものであり、1つの市場(商 品)から3つの点(例えば、点1, 点2, 点3
26)が計算されていた。
そこで、3つの点(例えば、点1, 点2, 点3)の座標(例えば、点1=(
⑴,
⑴,
⑴,
⑴
,
⑴)、 点2=(
⑵,
⑵,
⑵,
⑵,
⑵)、 そして点3=(
⑶,
⑶,
⑶,
⑶,
⑶))を算術平 均することで、1つの競合市場(商品)を代表する平均座標を求める。平均座標は、3つ の点(例えば、点1, 点2, 点3)の各座標の値を軸(軸 から軸 までの軸)ごとに足し て(例えば、点1, 点2, 点3について、軸 の値の和ならば、
⑴+
⑵+
⑶となり、これ を)3で割り求められる。式で書くと、次のようになる。
平均座標=( ( ⑴+
⑵+
⑶) /3, (
⑴+
⑵+
⑶) /3,…, (
⑴+
⑵+
⑶) /3)
こうした平均座標は、自市場(商品)を含めた3つの競合市場(商品)の候補ごとに求 められる。例えば自市場(商品)を含めた3つの競合市場(商品)の候補を競合市場(商 品)候補α、競合市場(商品)候補β、そして競合市場(商品)候補γで表現する。そし て、例えば、競合市場(商品)候補αから点1, 2, 3が求められたとする。例えば、競合 市場(商品)候補βから点4, 5, 6が求められたとする。そして、例えば、競合市場(商 品)候補γから点7, 8, 9が求められているとする。すると、各競合市場(商品)候補α、
β、γについての平均座標α、平均座標β、平均座標γは、次の式で求められる。
平均座標α=( ( ⑴+
⑵+
⑶) /3, (
⑴+
⑵+
⑶) /3,…, (
⑴+
⑵+
⑶) /3)
平均座標β=( ( ⑷+
⑸+
⑹) /3, (
⑷+
⑸+
⑹) /3,…, (
⑷+
⑸+
⑹) /3)
平均座標γ=( ( ⑺+
⑻+
⑼) /3, (
⑺+
⑻+
⑼) /3,…, (
⑺+
⑻+
⑼) /3)
これら平均座標α、β、そしてγは、競合市場(商品)の候補3つのそれぞれを代表し ている座標であると見なせる。すると、平均座標α、β、そしてγの相互のユークリッド 距離は、競合市場(商品)の相互の間の近さを表している。例えば、平均座標α、βそし てγの3つとして、平均座標αとβとの間のユークリッド距離をα‑β距離と表せば、α‑
β距離、β‑γ距離、γ‑α距離の3つのユークリッド距離が考えられる。例えば平均座標 αの 軸座標を平均座標α = ( ⑴+
⑵+
⑶) /3のように表記すると、一例としてα‑β距離 は次式のようになる。
α‑β距離=(平均座標α −平均座標β )
2+…+(平均座標α−平均座標β)
2先に「(メタな)消費者ニーズを軸(例えば、主成分軸 の5軸)とした」の であるから、その距離は消費者ニーズの近さを表すと解釈できる。つまり、このユーク リッド距離は、競合市場(商品)の間の消費者ニーズの観点から見た競合の程度を表現し ている。
以上のように、仮に共通の多次元空間上に布置できるならば、その多次元空間上での市 場(商品)相互の距離の近い・遠いにより、任意の2つの市場(商品)の相互の距離が近 ければ近いほど強く競合している市場(商品)であると定義される。とりわけ、自市場
(商品)と任意の市場(商品)との距離により、自市場(商品)と任意の市場(商品)と の競合の度合いを定義できる。
3.考察
本章の目的は、未解決問題の洗い出しである。ここまででブルー・オーシャン戦略の考 え方を基礎にして、KIPを用いた分析のより実践的な展開について現時点での考えを整理 してきた。こうした実践的な展開のアイデアは未解決の問題を残している。その問題への 解決方法が見つからない限り、現状では実際に用いられない。
よって本章は、現時点での未解決問題を洗い出す。本章で取り上げる課題は、大きく5 つである。1つ目の課題が、ブログ記事の収集にかかる時間の問題である。近年、これま で以上にブログ記事の取得が難しくなっている。こうしたところから、他の情報源を含め てテキストの収集方法を再考しなければならない。
2つ目の課題が、質問項目の作成方法についてである。ブルー・オーシャン戦略におい て、本研究は3つの質問紙調査を行いたい。ところが、質問項目について今のところ詳細 に規定されていない。3つ目の課題が、可視化方法についてである。3つの質問紙調査の 結果の可視化を行いたい。だが、これらの方法についても未確定な部分が残っている。
そして4つ目の課題が、分析方法は主成分分析が適切なのかという問題である。先に主
成分分析した結果に対して、更に主成分分析を行うとした。だが、分析の目的が(メタ)
な消費者ニーズを明らかにすることならば、主成分分析よりもむしろ探索的な因子分析が より適切な方法ではないのかという問題がある。
最後に5つ目の課題が、競合市場(商品)の多次元空間上への布置の方法である。先に 主成分分析した結果に対して、更に主成分分析を行うとした。だが、独立に行った主成分 分析結果の固有ベクトルの要素を、そのまま主成分分析のデータとすることは理論上問題 が無いのかについて再考しなければならない。
これらが実際にブルー・オーシャン戦略の考えを基礎にしたKIPの実践的展開において 解決の必要な課題となっている。では、以下でより詳細に説明する。
3.1 比較候補のデータ収集にかかる時間
「2.2 提案手順の概略」の第1の手順は、自市場(商品)と競合している市場(商 品)の特定であった。本節で取り上げる未解決問題は、この競合市場(商品)の特定の2 つ前の段階についてである。
自市場(商品)と競合している市場(商品)の特定のためには、その1つ前段階で、自 市場(商品)と競合している可能性のある候補について、データを収集しておかなければ ならない。この収集された競合市場(商品)候補のデータを用いて、複数の候補から実際 に競合市場(商品)が特定される。そのデータは、KIPの結果(主成分分析の結果)つま り固有ベクトルの要素である。よって、更に前(つまり、2つ前の段階)として、各競合 市場(商品)候補についてブログ記事をデータとして収集しなければならない。
整理すれば、競合市場(商品)の特定は、⑴競合市場(商品)候補のブログ記事の収集、
⑵収集したブログ記事を用いたKIPによる分析、⑶KIPの分析により競合市場(商品)候 補ごとの主成分軸及び固有ベクトルの要素の獲得となる。こうした⑴から⑶までのステッ プを踏むためには、最初に競合市場(商品)のブログ記事の収集をしなければならない。
だが、ここに未解決な問題がある。それは、近年ブログ記事の獲得がより困難になって きていることである。ブログサイト側も、容易にはブログ記事を取得できないようにして いるようである。加えて、ブログ記事の取得に、これまで以上の時間がかかっているよう でもある。こうした課題は、短時間で膨大な数の競合市場(商品)候補についてデータを 収集分析して、探索的に競合市場(商品)を見つけ出す分析を実現する上で阻害要因と なっている。
現在のところ、これへの解決策は見つかっていない。ただし、徐々にブログというメ
ディア自体が影響力を失いつつあるのであれば、ブログサイトに変わるソーシャルメディ
アの分析の可能性も考慮に入れるべき可能性も否定できない。
3.2 質問紙調査の質問項目作成
本節で、質問紙調査の質問項目の作成について課題を整理する。「2.2 提案手順の概
略」の第2の手順は、便宜的に3つの質問紙調査を通じたブルー・オーシャン開拓の手順として整理できた。ここでの3つの質問紙調査では具体的にどのような質問項目で調査を 実施するのかについて未解決である。
1つ目の質問紙調査は、大きく3つの質問項目により構成することが考えられる。1つ 目の質問項目は、消費者ニーズの充足と、それによる価値提供の程度である。先に「2.3
競合市場(商品)の多次元空間上への布置」の説明の末尾において、「(メタな)消費者ニーズを軸(例えば、主成分軸 の5軸)とした共通の多次元空間(この場合、
5次元空間)上に、点(例えば、点1, 2, 3, …, 点9の9つの点)として布置した。」
と述べた。この消費者ニーズの軸(例えば、主成分軸 の5軸)のそれぞれにつ いて消費者ニーズを解釈する。そして、自市場(商品)と複数の競合市場(商品) との
(例えば、自市場(商品)を含めて3つの市場(商品))のそれぞれが、その消費者ニー ズを充足し消費者へ価値を提供している程度を質問する。例えば、5点尺度で、提供して いる価値の大きさを尋ねる。2つ目の質問項目は、購入時点での立場である。質問紙への 回答者が当該市場(商品)を購入するときに、購入者、利用者、影響者の3つのうち、最 も立つ回数の多いと思われる立場を一つ選択する。3つ目の質問項目は、自市場(商品)
と複数の競合市場(商品)(例えば、自市場(商品)を含めて3つの市場(商品))につい て、RFMについて尋ねる。以上が、現時点で考え得る、1つ目の質問紙調査の3つの質 問項目となる。
2つ目の質問紙調査は、次の手順で質問項目の設定を考えられる。1つ目の質問紙調査 の結果から、自市場(商品)と複数の競合市場(商品)(例えば、自市場(商品)を含め て3つの市場(商品))について、価値提供の程度の中央値の一致した質問項目のみを選 択する。調査主体が、それら中央値の一致した質問項目のうち、変更(増加、創造、減少、
あるいは削除)可能と判断した質問項目のみを残す。この残された質問項目に「価格」を 加えて、それらをコンジョイントカードの要因とする。そして、それぞれの要因につい て、レベル(例えば、高・中・低の3水準)を水準として設定する。こうして、離散選択 モデルを仮定したコンジョイント分析を実行する。価格は数値で選択肢を作成して、限界 支払意思額を計算できるようにしておく。そして、限界支払意思額の高い方から、創造や 増加の対象とする。他方で、低い方は減少や削除の対象とする。これを一つの基準として、
増加と創造では6つのパスのうちの機能と感性の切り替えを手がかりとしつつ、ERRCグ リッドのマスに当てはめながら、変更(増加、創造、減少、あるいは削除)可能性を検討 する。これが、現時点で考え得る、2つ目の質問紙調査の質問項目となる。
3つ目の質問紙調査は、バリュー・ユーティリティ・マップ作成に必要となるデータ
を入手する目的で計画・実行される。自市場(商品)と複数の競合市場(商品)(例えば、
自市場(商品)を含めて3つの市場(商品))とのそれぞれ対して(バイヤー・エクスペ リエンス・サイクルの6項目をユーティリティ・レバーの6項目で細かく分けた)36項目 について問うことになる
27。すると、3つ目の調査の質問項目は、{自市場(商品)+競合 市場(商品)}×36項目から構成される。仮に、市場(商品)の数が自市場(商品)を含 めて3つならば、3つ目の調査の質問項目は3×36=108項目からなる。これら質問ごとに、
例えば5点尺度で当てはまる程度を回答してもらう。各質問項目の算術平均値を求め、そ の大きさで仮に5点尺度なら1から5までの5段階でバリュー・ユーティリティ・マップ へ書き込む円の大きさを変えることも考えられる。仮に自市場(商品)と多くのマスで重 複する競合市場(商品)があれば、自市場(商品)はその多くのマスで重複した競合市場
(商品)とは別の市場を開拓できていないと理解できる。
以上のように質問項目の大まかな方向性は暫定的にでも規定されている。だが、詳細な 質問項目の文言までは規定されていない。とりわけ、4つのツールのうちの第2のツール として紹介した「6つのパス(視点)」を、具体的に質問項目へ反映させていく方法が未 解決のままである。これら詳細を詰めていくことが未解決問題となる。
3.3 質問紙調査結果の可視化法
本節で、分析結果の可視化法についての課題を整理する。ブルー・オーシャン戦略では 4つのツールそれぞれで、分析の結果は常に目視で確認できるように可視化されている。
その可視化方法についても、ブログ分析を出発点とした本研究の手順では明確に規定され ていない。
第1のツールが、戦略キャンバス(フォー・アクション・フレームワーク、ERRCグ リッド)であった。戦略キャンバスは、横軸のファクタ(競合市場(商品)が重視する競 争要因)が多くなりすぎないようにしなければ、巨大なグラフになってしまい目視で理解 できなくなる。加えて、競合市場(商品)の個数が多くなりすぎた場合にも、やはり目視 で理解できなくなる。これらをどのように常に絞れるようにするのかを検討しなければな らない。フォー・アクション・フレームワークとERRCグリッドは、先に述べたようにコ ンジョイント分析の結果から限界支払意思額の高いものを増加と創造の対象とし、低いも のを減少と削除の対象とする。この考え方で対処可能であると考えられる。
第2のツールの6つのパス(視点)については、既に質問項目の作成において未解決
の問題であると指摘した。第3のツールが、バイヤー・ユーティリティ・マップ(バイ
ヤー・エクスペリエンス・サイクル、6つのユーティリティ・レバー)であった。これに
ついては、既に3つ目の質問紙調査で取り上げた。36個のマスに5点尺度で当てはまる程
度の算術平均値を求め、その大きさでバリュー・ユーティリティ・マップへ書き込む円の
大きさを変えることも考えられる。こうした描画方法が現在提案できる範囲である。第4 のツールが、プライス・コリドー・オブ・ザ・マスであった。このツールについても、現 時点で質問紙調査には全く反映されていない。どのようにして質問紙へ反映し、そのデー タをどのように可視化していくのか具体的に方策が決まっていない。こうして整理すると、
第2のツールの6つのパス(視点)と第4のツールのプライス・コリドー・オブ・ザ・マ スについては、全く使用方法が具体的に決められておらず、今後解決しなければならない 未解決問題である。
3.4 比較候補を共通の空間に布置する方法
「2.3 競合市場(商品)の多次元空間上への布置」として、主成分分析の結果として 得られた固有ベクトルの要素に対する主成分分析により、共通の多次元空間上へ布置する 方法を説明した。ただ、この方法には疑問が残る。それは、独立に求めた固有ベクトルの 要素に対して主成分分析を実行することは適切なのかという疑問である。
より具体的にすると、例えば市場(商品)α、市場(商品)β、そして市場(商品)γ の3つがあるとする。例えば、これらの3つの市場(商品)について、主成分分析結果と して各市場(商品)につき3つの主成分軸が抽出されたとする。すると、3つの市場(商 品)×3軸ということで、合計9軸の主成分軸が見いだされる。例えば、これら9軸を表 頭項目として、それぞれの軸を特徴付ける単語を表側項目として、主成分分析の結果とし て得られた固有ベクトルの要素をセルに記入した表を考える。
すると、その固有ベクトルの要素は、身近な例で示せば、同じ人物(表側項目の同じ単 語に相当)に対応していたとしても、その人物(同じ単語に相当)の体重の値(表頭項目 の市場αから1つの軸に相当 )、 その人物(同じ単語に相当)の50m走のタイム(表頭項 目の市場βからの1つの軸に相当 )、 そしてその人物(同じ単語に相当)の数学のテスト の得点(表頭項目の市場γからの1つの軸に相当)のような関係ではないかということで ある。
つまり、身近な例を示せば、同じ人物(表側項目の同じ単語)ではあっても、(各表頭 項目の)固有ベクトルの要素は、相互に関連しないテーマについての値ではないのかとい うことである。仮にこのように相互に関連しないテーマの値ならば、はたしてそれら市場
(商品)α、市場(商品)β、そして市場(商品)γの主成分分析の結果の固有ベクトル の要素の並んだ表に対して、再度の主成分分析の実施は適切なのかという疑問である。
ここで、再度の主成分分析は、市場(商品)α、β、そしてγを特徴付ける多数の単語
(例えば、単語1から単語 までの 個の変数)から、(先に実行された主成分分析結果と
して得られた主成分軸1, 主成分軸2, 主成分軸3,…, 主成分軸9の9軸より少ない)主成
分軸(例えば、主成分軸 の5軸)を求める。よって、表側項目(例えば、単語
1から まで)同士の相関行列を用いる。
このように整理し直すと、2点の未解決問題が浮かび上がってくる。1点目は、表に対 して実施する分析方法は主成分分析が適切なのかという疑問である。分析の目的は、市場 α、βそしてγを捉える共通の抽象的な概念を見つけ出し、その共通の概念を(メタな)
消費者ニーズと理解することにある。だとすると、主成分分析のような方法よりもむしろ、
探索的な因子分析により共通因子を求めることがより適切なのではないかという疑問であ る。この疑問は、分析目的と主成分分析及び探索的な因子分析とを照らし合わせて吟味す ることで解決に結びつける必要がある。
2点目は、主成分分析にしろ、探索的な因子分析にしろ、その分析が相関行列に対する スペクトル分解ならば、結局のところ先に説明したデータにまつわる疑問は相関行列を求 めることが合理的なデータなのかどうかに帰着できるのではないだろうか。仮にこのよう な問題に帰着できれば、身近な例として示した、別の人物(表側項目の別々の単語に相 当)の間の相関行列のスペクトル分解は合理的なように思える。以上の2点について、解 決しなければならない。
4.結論
本研究の最後に、目的に立ち返り本研究の結論を示す。本研究の目的は、次の2点で あった。1点目の目的は、ブルー・オーシャン戦略を用いてKIPをより実践的な手順とし ていく上で、これまでに提案してきた内容を改めて整理し、現在の到達点を確認すること であった。
これまでの研究の整理により、現在の到達点は次のように確認できた。第1に、KIPに より自市場(商品)と競合市場(商品)の候補の消費者ニーズを主成分軸として明らかに する。第2に、それぞれの主成分軸を特徴付けている固有ベクトルの要素をデータとして、
更に主成分分析を行う。その更なる主成分分析の結果として、自市場(商品)と競合市場
(商品)の候補の主成分軸の個数に比べて、少数の主成分軸を(メタな)消費者ニーズと して抽出する。別言すれば、この少数の主成分軸で張られる空間に、自市場(商品)と競 合市場(商品)の候補の主成分軸を点として布置する。第3に、この少数の主成分軸で張 られた空間内でのユークリッド距離を計算することにより、より近い距離の市場(商品)
は相互に近い消費者ニーズを充足しようとしており、競合関係にあると理解できる。こう して自市場(商品)と競合している市場(商品)を特定する。
次に、一端自市場(商品)と競合している市場(商品)が特定できれば、自市場(商
品)が競合市場(商品)と比較して独自の価値を提供できるように、ブルー・オーシャン
の4つの段階を反映させた3つの質問紙調査を提案した。第1の質問紙調査は、回答者の
属性ごとに、自市場(商品)と競合市場(商品)の価値の高低を明らかにする。この第1
の質問紙調査結果の中央値が完全に一致した消費者ニーズ(主成分軸)について、第2の 質問紙調査は高・中・低の3レベルの離散選択モデルを仮定したコンジョイント分析を行 う。限界支払意思額の高い消費者ニーズは増加や創造の対象とし、限界支払意思額の低い 消費者ニーズは減少や削除の対象とする。第3の質問紙調査は、バリュー・ユーティリ ティ・マップの描画に必要なデータの獲得の目的で行う。現在の到達点は、このような大 きく2つに整理できた。
2点目の目的は、この方向でより実践的な手順として提案可能にする上で、今後の研究 で解決されねばならない問題点を明確にし、現在可能な範囲でその解決の方向性を示こと であった。現時点の問題点は、次の5点に整理できた。
第1に、ブログ記事収集の困難さと他のデータ源を含めたデータ収集方法の再検討の必 要性である。第2に、質問項目の大きな方向は決まっているものの、詳細な文言までは規 定していない。特に、質問紙調査において、ブルー・オーシャン戦略の6つのパス(視 点)の反映の仕方は決められていない。
第3に、質問紙調査によるプライス・コリドー・オブ・ザ・マスの可視化法について規 定されていない。第4に、主成分分析結果の固有ベクトルの要素に対する分析手法として、
主成分分析が適切か、あるいは探索的な因子分析が適切かの結論を出していない。第5に、
主成分分析または探索的な因子分析のどちらの分析手法の場合でも、これら分析のデータ として、固有ベクトルの要素を用いることの適切さについて結論が出せていない。これら 5点が未解決の問題といえる。
第1の問題の解決は、他のデータ源としてtwitterやFacebookのような他のソーシャル メディアや旅行専用のサイトとして、TripAdvisorなども考慮の対象とすることで可能か もしれない。また、テキストデータに限らず、動画データ
28を対象とした消費者ニーズの 解明の可能性もありえる。
第2の問題の解決は、実際の質問紙作成と小規模の集団を対象としたプレテストの実施 により、さらに考察を深めることで可能と思われる。よって、出来るだけ早期に、実際の 質問紙作成と小規模集団へのプレテストの実施を試みたい。
第3の問題の解決は、プライス・コリドー・オブ・ザ・マスだけを取り上げて、改めて 議論を深めたい。第4と第5の問題の解決は、主成分分析と探索的な因子分析の手法自体 を改めて整理し、固有ベクトルの要素をデータとして用いた、相関行列へのスペクトル分 解という理解の確認により可能かもしれない。以上、現時点では未解決ではあるものの、
当座の向かうべき方向性は示せた。それぞれの方向で解決を目指したい。
参考文献
安部義彦・池上重輔(2008)、『日本のブルー・オーシャン戦略』、ファーストプレス。
加藤淳一(2017a)、「KIPの実践的展開に向けた試論:ブルー・オーシャン戦略から」、『久留米大学 ビジネス研究(久留米大学ビジネス研究所)』、第2号、15‑50頁。
加藤淳一(2017b)、「Exploring and comparing customers needs for cities by using articles of blogs as communication media」、『第54回(2017年)年次大会学術発表論文集(日本地域学会年次大 会)』、2017年10月6日、於:立命館大学、全8頁。
加藤淳一(2017c)、「ブルー・オーシャン戦略に基づくKIPの実践的展開に向けた予備的研究」、
『「都市のOR」ワークショップ』、2017年12月9日10日、於:南山大学、20頁。
キム, W・チャン & モボルニュ, レネ(2015)、『[新版]ブルー・オーシャン戦略』、ダイヤモンド社。
────────────────
1
本研究の成果の一部は、平成29年度・平成30年度の久留米大学ビジネス研究所個人調査研究とし て研究費の支援を受けました。ここに記して感謝を表します。
2
本研究でのブルー・オーシャン戦略は、加藤(2017a、17−18頁)と同じく、バリュー・イノベー ションとほぼ同義で用いている。
3
戦略キャンバスは、加藤(2017a、18頁)によると、横軸にファクタ(競争要因)、縦軸に顧客の 受け取るバリューの高低をとった2次元グラフである。この横軸のファクタ(競争要因)は、加 藤(2017a、18頁)によると、左端に価格、それ以外にはERRCグリッドの「除去」「減少」「増 加」「創造」の対象となる競争要因の順で並べる。
4
戦略の見本市で、加藤(2017a、19頁)によると、具体的には現状の戦略キャンバスと現地探査を 経て新たに描いた戦略キャンバスについて、様々なステークホルダーに対してプレゼンテーショ ンをおこない、それを通して検証とフィードバックを得ていく。そのプレゼンテーションでは、
加藤(2017a、19頁)によると、戦略キャンバスの特徴と顧客へのメリットの2点は最低限度触れ なければならないとされる。
5
4つのツールそれぞれは、4つの段階の任意の1つと、一対一対応ではない。加藤(2017a、20頁、
表2‑1)では次のように対応関係を整理している。
注表1:バリュー・イノベーションの4段階とツールの対応表
1 覚醒 2 現地探索 3 戦略の見本市 4 コミュニケーション 戦略キャンバス
6つのパス バイヤー・ユーティ リティ・マップ プライス・コリドー・
オブ・ザ・マス
出典:加藤(2017a、20頁、表2‑1(原典:安部・池上(2008)、73頁、図表3‑6)を改変して、一 部分のみを使用)を使用
6
フォー・アクション・フレームワークは、 加藤(2017a、22頁)によると、現在の商品から削除
する要因、大きく減少する要因、大きく増加する要因、そして新たに創造する要因の4つについ
て自市場(商品)を見直すように求める質問である。
7
ERRCグリッドは、加藤(2017a、22−23頁)によると、フォー・アクション・フレームワークに より自市場(商品)のバリュー・カーブを見直すときの補助ツールである。これは以下のような 4つのマスを考えることで、メリハリのある独自な形状の戦略キャンバスにする。
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注図1:ERRCグリッド
出典:加藤(2017a、23頁、図2‑4(原典:安部・池上(2008)、107頁、図表5‑5))を使用
8
加藤(2017a、21頁)によると、一枚の折れ線グラフ内に、自市場(商品)の折れ線、競合市場
(商品)の折れ線、そして業界標準の折れ線など、複数本の折れ線を描ける。
9
加藤(2017a、22頁)によると、仮に類似の形状になっていれば、独自の価値の提供に失敗して おり、激しい競争から抜け出せない。そのときには、フォー・アクション・フレームワークと ERRCグリッドという補助ツールを用いて戦略を見直す。
10
オルタナティブは、加藤(2017a、24頁)によると、形態や機能は異なるものの顧客にとって同 じ目的の市場(商品)である。顧客はオルタナティブをどこで比較しているのかを考えることで、
除去あるいは減少させられる部分を検討する。こうして、顧客が本当に欲していることを見つけ 出す。
11
加藤(2017a、24頁)によると、戦略グループとは業界内で似通った戦略をとっている企業群であ り、自市場(商品)の属するグループを超えて見渡すことで、取り入れられるファクタや獲得可 能な顧客について検討する。
12
加藤(2017a、24−25頁)によると、購買意思決定に影響を与える人たちをチェーン・オブ・バイ ヤーズ(購買者、利用者、あるいは影響者など)という。彼らが別々のファクタ(競合市場(商 品)が重視する競争要因)を重視しているなら、その違いを含めて戦略キャンバスを描き直す。
13
加藤(2017a、25頁)によると、自社市場(商品)が他の市場(商品)と併用されるならば、自社 市場(商品)の使用前後を想像して、顧客の求めるソリューションを考える。
14
加藤(2017a、25頁)によると、自市場(商品)のアピールポイントを機能と感性で考えてみて、
逆をアピールするように切り替える。この切り替えにより、新しい価値の創造へとつなげる。
15
加藤(2017a、25頁)によると、規制や技術など影響を与え得るマクロ・ミクロで起きつつある事 柄の影響を中長期的に考える。そのときのポイントは、決定的な影響を与え、後戻りせず、予測 可能(はっきりとした軌跡を描き、着地点が明確)である。これらから将来を見定め独自の戦略 を策定する。
16
6つのバイヤー・エクスペリエンス・サイクルは、加藤(2017a、26頁)によると、購入、デリバ
リー、使用、併用、メンテナンス、そして廃棄の6つからなる。
17
6つのユーティリティ・レバーは、加藤(2017a、27頁)によると、買い手の生産性、シンプルさ、
利便性、リスク、楽しさや好ましいイメージ、環境への優しさの6つである。
18
バイヤー・ユーティリティ・マップは、加藤(2017a、26頁)によると次のようである。
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注図2:バイヤー・ユーティリティ・マップ
出典:加藤(2017a、26頁、図2‑6(原典:安部・池上(2008)、37頁、図表1‑7)を改変して、一 部分のみを使用)を使用
19
加藤(2017a、29頁)によると、プライス・コリドー・オブ・ザ・マスは、次のような図である。
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注図3:プライス・コリドー・オブ・ザ・マス
出典:加藤(2017a、29頁、図2‑8(原典:安部・池上(2008)、204頁、図表7‑8)を改変して使 用)を使用
20
プライス・コリドー・オブ・ザ・マスの3つの商品タイプとは、加藤(2017a、28頁)によると、
同じ形態の商品、形態は異なるが機能は同じ商品、形態と機能の両方とも異なるが目的な同じ商 品の3つである。
21
戦略的打ち手とは、キム&モボルニュ(2015、54頁)によると、新規市場開拓に伴う一連の行動 や判断を指している。
22
仮に、市場(商品)をMで表し、個別の市場(商品)をギリシャ文字で表せば、3つの市場(商 品)は M={α,β,γ} と書ける。
23
5次元上の3つの市場(商品)は、α=(
1⑴
,
2⑴
,
3⑴
,
4⑴
,
5⑴
), β=(
1⑵
,
2⑵
,
3⑵
,
4⑵
,
5⑵
), γ=(
1⑶
,
2
⑶
,
3⑶
,
4⑶
,
5⑶
)と書ける。
24
なぜならば、次のように考えられる。KIPは、ブログ記事から消費者ニーズを主成分軸という軸 として明らかにした。それら主成分軸を点として位置づける多次元空間(例えば、5次元空間)
の(例えば、5次元空間なら5つの)軸は(メタな)消費者ニーズである。
25
表を具体的に例示してみると、次のように示せる。表頭項目は、一例として、9つの主成分軸と し、表側項目はそれら9軸を特徴付ける単語であり、各セルは固有ベクトルの要素である。主成 分軸 を特徴付ける、単語 の固有ベクトルの要素を と表す。
注表2:主成分分析結果への更なる主成分分析のデータ
主成分軸1 主成分軸2 主成分軸3 主成分軸4 主成分軸5 主成分軸6 主成分軸7 主成分軸8 主成分軸9 単語1
単語2 単語3
… … … …
単語
出典:著者作成
26
なお、1つの競合市場(商品)から求められた3つの点が、点1, 点2, 点3であるというのはあ くまでも一例にすぎない。例えば、点2, 点7, 点9の3つかもしれない。一例であることを強調 しておく。
27
質問文は、加藤(2017a、36頁)によると、例えば、購入と買い手の生産性の組み合わせから、自 市場(商品)はすぐに購入できるか等が考えられる。
28